説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】用紙の種類の変更に係わりなく機構的に簡単な構成で用紙のトナー画像を常に適正に定着する定着装置及びその定着装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】回転カム56の回転に従って、保持回動部材54は回動し、保持回動部材54に保持された加熱定着ローラ43は定着位置と非定着位置とに移動する。一方、テンションローラ46は通紙路に近づく第1の位置と通紙路から離れる第2の位置とに移動する。定着ベルト45は加熱定着ローラ43が定着位置にあるとき、テンションローラ46が第1の位置のとき比較的広い範囲の弱いニップ圧の挟持部B1を形成し、第2の位置のとき比較的狭い範囲の弱いニップ圧の挟持部B2を形成する。テンションローラ46の移動位置は第1の位置から第2の位置までの間で所望の位置に設定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に係わり、更に詳しくは用紙の種類の変更に係わりなく機構的に簡単な構成で用紙のトナー画像を常に適正に定着する定着装置及びその定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーを用いて電子写真方式でトナー像を像担持体上に形成し、このトナー像を用紙に直接または間接に転写し、この転写トナー像を定着装置で用紙に定着して画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
このような画像形成装置は、例えば、給紙ユニット、ベルトユニット、トナー供給ユニット、現像装置、定着装置等の複数の内部装置を備えている。中でも定着装置においては、例えば普通紙とOHP(overhead projector)用紙というように使用する用紙の種類に変更があると、用紙のトナー画像を適正に定着するために、熱や圧力を、変更された用紙の種類に対応するように変更することが重要な課題となっている。
【0004】
一例として、普通紙と厚紙とが混在していても定着不良を発生させることなく定着させるために、定着ローラの温度調整の目標温度を単一の坪量の記録材のみを連続加熱処理する普通紙通常モードの場合よりも高く設定し、薄紙の連続加熱処理を通じて円筒形部材の温度が低下した状態で厚紙の連続加熱処理が始まったとき、定着ローラの表面温度は低下するが、定着不良を引き起すほどには低下しなくなるようにした画像加熱装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−181469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画像形成装置の定着装置では、必ずしも普通紙の連続加熱処理の後に厚紙の連続加熱処理を行うと決まっているものではなく、厚紙の後に普通紙、さらに続いて厚紙の加熱処理など、処理の態様は一定なものではない。
【0007】
上記の特許文献1に記載の技術では、画像形成装置のユーザは、最初に普通紙の連続印刷をし、その後に厚紙の連続印刷をするというように、予め印刷する順番の態様を設定することを強制されるので、使い勝手が悪く不便であるという解決すべき課題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、用紙の種類の変更に係わりなく機構的に簡単な構成で用紙のトナー画像を常に適正に定着する定着装置及びその定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、先ず、第1の発明の定着装置は、熱源を内蔵する加熱定着ローラと、他の熱源を内蔵する加圧ローラと、該加圧ローラとテンションローラとの間に掛け渡される定着ベルトと、上記テンションローラを通紙路に近づく第1の位置と上記通紙路から離れる第2の位置とに移動させるテンションローラ移動部材と、上記加熱定着ローラを保持し、支点周りに回動可能な保持回動部材と、該保持回動部材の上記支点に対し上記加熱定着ローラを保持する保持部より反対側端部に係合し、上記保持回動部材を介して、上記加熱定着ローラを通紙路に近づく加熱位置と上記通紙路から離れる非加熱位置とに移動させる回転カムと、を有して構成される。
【0010】
次に、第2の発明の画像形成装置は、上記第1の発明の定着装置を備えるように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、用紙の種類の変更に係わりなく機構的な簡単な構成で用紙のトナー画像を常に適正に定着する定着装置及びその定着装置を備えた画像形成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係るフルカラーの画像形成装置(プリンタ)の内部構成を説明する断面図である。
【図2】(a)は実施例1に係るプリンタの定着装置の構成を詳細に示す断面図、(b)は定着装置における用紙挟持領域のニップ圧力を模式的に示す図である。
【図3】(a),(b),(c)は実施例1に係るプリンタの定着装置の加熱定着ローラと定着ベルトの動作を説明する図である。
【図4】(a)は実施例2に係るプリンタの定着装置の断熱性筐体の一部を切り取って内面を示す正面図、(b) はその上面図、(c)はその側面図、(d)は(a)の丸eで囲んだ部分の拡大図、(e),(f)はそれぞれ(a),(d)の斜視図である。
【図5】(a)は実施例2に係るプリンタの断熱性筐体の内面の1個の凹部を取り出して示す正面図、(b)はその内部の反射面を1つだけ切り離して示す展開図、(c)は凹部の開口部を示す図、(d)は凹部への入射熱と反射熱を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係るフルカラーの画像形成装置(以下、単にプリンタという)の内部構成を説明する断面図である。
【0015】
図1に示すプリンタ1は、電子写真式で二次転写方式のタンデム型のカラー画像形成装置であり、画像形成部2、転写ベルトユニット3、トナー供給部4、給紙部5、ベルト式定着ユニット6、及び両面印刷用搬送ユニット7で構成されている。
【0016】
上記画像形成部2は、転写ベルトユニット3の転写ベルト8の下部走行部表面8aに接して同図の右から左へ4個の現像装置9(9k、9c、9m、9y)を多段式に並設した構成からなる。この画像形成部2は、図1に示す印刷実行時位置から、それより下方の保守位置に、昇降可能にプリンタ1本体のフレームに保持されている。
【0017】
上記4個の現像装置9のうち上流側(図の左側)の3個の現像装置9y、9m及び9cは、それぞれ減法混色の三原色であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色トナーによるモノカラー画像を形成し、現像装置9kは、主として文字や画像の暗黒部分等に用いられるブラック(K)トナーによるモノクロ画像を形成する。
【0018】
上記の各現像装置9は、画像を現像するトナーの色を除き全て同じ構成である。したがって、以下イエロー(Y)のトナー用の現像装置9yを例にしてその構成を説明する。
【0019】
現像装置9は、最上部に感光体ドラム10を備えている。この感光体ドラム10は、その周面が例えば有機光導電性材料で構成されている。この感光体ドラム10の周面近傍を取り巻いて、クリーナ11、帯電ローラ12、光書込ヘッド13、及び現像器14の現像ローラ15が配置されている。
【0020】
現像器14は、外部を覆う筐体16、内部に設けられた隔壁17、現像ローラ15、第1の攪拌搬送スクリュー18、及び第2の攪拌搬送スクリュー19を備えている。第1及び第2の攪拌搬送スクリュー18及び19は、特には図示しないが、スクリュー軸と、このスクリュー軸と一体に構成されて回転するフィンから成る。
【0021】
この現像器14には、トナー供給部4のリザーブタンク27(27y、27m、27c、27k)から、同図にはY、M、C、Kで示すようにイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれかのトナーが供給される。
【0022】
転写ベルトユニット3は、本体装置のほぼ中央で図の左右方向に扁平なループ状になって延在する無端状の上述した転写ベルト8と、この転写ベルト8を掛け渡されて転写ベルト8を図の矢印aで示す反時計回り方向に循環移動させる駆動ローラ21と従動ローラ22を備えている。
【0023】
上記の転写ベルト8には、一次転写ローラ20がユニットと一体に組み込まれている。一次転写ローラ20は転写ベルト8を介して感光体ドラム10に圧接し、下方を循環移動する転写ベルト8の下部走行部表面8aにトナー像を直接転写(一次転写)する。転写ベルト8は、そのトナー像を更に用紙に転写(二次転写)すべく用紙への二次転写部23まで搬送する。
【0024】
転写ベルト8には、ベルトクリーナ24が配置されている。ベルトクリーナ24は、転写ベルト8の駆動ローラ21に掛け渡されている表面に当接するクリーニングブレード25を備えている。また、ベルトクリーナ24の下方には廃トナー回収容器26が着脱自在に配置されている。
【0025】
ベルトクリーナ24は、クリーニングブレード25により転写ベルト8の表面に残留する廃トナーを擦り取って除去し、その廃トナーを搬送スクリューにより下方の廃トナー回収容器26に送り込んでいる。
【0026】
トナー供給部4は、転写ベルト8の上部走行部の上方に配置されている4個のリザーブタンク27(27y、27m、27c、27k)と、これらのリザーブタンク27の上にそれぞれ着脱自在に配置されたトナー補充用のトナーカートリッジ28(28y、28m、28c、28k)で構成される。
【0027】
4個のトナーカートリッジ28y、28m、28c、28kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナーを収容し、4個のリザーブタンク27(27y、27m、27c、27k)は、それぞれ上に装着されているトナーカートリッジ28からトナーを補充される。
【0028】
これら4個のリザーブタンク27は、図1では転写ベルトユニット3の向う側に隠れて見えないが、それぞれトナー供給路により対応する現像装置9の現像器14と連結されている。
【0029】
このトナー供給部4は、特には図示しないが、図1に示す印刷実行時位置から、それより上方の保守位置に、昇降可能にプリンタ1本体のフレームに保持されている。
【0030】
このトナー供給部4の左方には、ベルトクリーナ24の左方から駆動ローラ21の上方にかけて2つの電装部30が配設されている。電装部30には、複数の電子部品からなる制御装置が搭載された回路基盤を備えている。
【0031】
給紙部5は、上下2段に配置された2個の給紙カセット29(29a、29b)を備えている。2個の給紙カセット29の給紙口(図の右方)近傍には、それぞれ用紙取出ローラ31、給送ローラ32、捌きローラ33、待機搬送ローラ対34が配置されている。
【0032】
待機搬送ローラ対34の用紙搬送方向(図の鉛直上方向)には、転写ベルト8を介して従動ローラ22に圧接する二次転写ローラ35が配設されて、前述した用紙への二次転写部23を形成している。
【0033】
この二次転写部の下流(図では上方)側には詳しくは後述するベルト式熱定着ユニット6が配置されている。ベルト式熱定着ユニット6の更に下流側には、定着後の用紙をベルト式熱定着ユニット6から搬出する搬出ローラ対36、及びその搬出される用紙を装置上面に形成されている排紙トレー37に排紙する排紙ローラ対38が配設されている。
【0034】
両面印刷用搬送ユニット7は、外面(図の右方外側面)がプリンタ1の内部を側面から外部に開放又は遮蔽する開閉部材を兼ねている。
【0035】
この両面印刷用搬送ユニット7は、排紙ローラ対38の直前から図の右横方向に分岐する開始返送路39a、それから下方に曲がる中間返送路39b、更に上記とは反対の左横方向に曲がって最終的に返送用紙を反転させる終端返送路39cから成る返送路39を備えている。
【0036】
また、返送路39の途中には、5組の返送ローラ対41(41a、41b、41c、41d、41e)が配置されている。上記終端返送路39cの出口は、給紙部5の下方の給紙カセット29bに対応する待機搬送ローラ対34への搬送路に合流している。
【0037】
図2(a)は、ベルト式定着ユニット6(以下、単に定着装置6という)の構成を詳細に示す断面図であり、同図(b)は定着装置6における用紙挟持領域のニップ圧力を模式的に示す図である。
【0038】
図2(a)に示すように、定着装置6は、断熱性の筐体42(42a、42b)の内部に加熱定着ローラ43、加圧ローラ44、定着ベルト45、テンションローラ46、及び2組の巻付き防止爪47を備えている。加熱定着ローラ43と加圧ローラ44は、それぞれ内部に熱源48(48a、48b)を備えている。
【0039】
定着ベルト45は、加圧ローラ44とテンションローラ46とに掛け渡され、テンションローラ46に対し不図示の付勢部材から鉛直方向に加わる付勢力により、テンションローラ46によって常に張設されている。
【0040】
加熱定着ローラ43は(同図(b)も参照)、定着ベルト45を介して加圧ローラ44に圧接する強いニップ圧の挟持部Aと、この挟持部Aに連続する定着ベルト45のみに圧接する弱いニップ圧の挟持部Bとを形成する。
【0041】
搬入口49から定着装置6に搬入された用紙は、先ず、弱いニップ圧の挟持部Bに挟持されて予熱を加えられながら搬送され、続いて強いニップ圧の挟持部Aに挟持されて、強い圧力と紙面両側から加えられる熱により、トナー画像を紙面に定着される。
【0042】
その後、用紙は、巻付き防止爪47により案内されて、加熱定着ローラ43や加圧ローラ44に巻き付くことなく搬出口51から搬出され、図1に示した搬出ローラ対36及び排紙ローラ対38により排紙トレー37上に排紙される。
【0043】
上記の弱いニップ圧の挟持部Bと強いニップ圧の挟持部Aとで定着を行う方式は、定着する画像のトナーの特性に係わっており、コールドオフセットとホットオフセットを生じない安定した定着範囲が狭いトナーに対して有効な方式とされている。
【0044】
特にホットオフセットに関しては、高温で強いニップ圧の挟持範囲が長い場合に顕著に現れ易いことが判明している。本例の定着方式のように、弱いニップ圧の挟持領域においてトナーを溶融状態としてから、強いニップ圧の挟持部で用紙へのトナーの定着を行う方式は、ホットオフセットの発生防止には有効な方式とされている。
【0045】
但し、近年の印刷スピードアップ、用紙の種類の多様性を考慮した場合、上記のコールドオフセットとホットオフセット防止を両立する範囲がますます狭くなり、従来からの温度制御及びスピード制御だけで高速を考慮して、全ての用紙種に対応することが極めて困難になってきている。
【0046】
そこで、本例では、上記のような問題を解決するために、両方向矢印cで示すようにテンションローラ46を通紙路(搬入口49から搬出口51に至る経路)に近づく第1の位置と通紙路から離れる第2の位置とに移動させる不図示のテンションローラ移動部材を備えている。
【0047】
また、加熱定着ローラ43と加圧ローラ44との圧接は、水平方向に行われるのではなく、加熱定着ローラ43側から見ると、同図(a)の両方向矢印bに示すように斜め左下から右上方向に離接可能に付勢されて圧接する。
【0048】
換言すれば、加熱定着ローラ43と加圧ローラ44とが圧接する位置は、加圧ローラ44の中心を通る水平面52よりも下方に設定されている。これにより、加熱定着ローラ43は、強いニップ圧の挟持部Aに続く上流側(図では下方)に、定着ベルト45のみに圧接する弱いニップ圧の比較的広い領域の挟持部Bを形成することができる。
【0049】
また、加熱定着ローラ43と加圧ローラ44は、比較的剛性が高く構成されている。そのため、この対のローラ間においては、挟持領域Aは比較的僅かな長さとなるように構成されている。
【0050】
図3(a),(b),(c)は、上記定着装置6の構成における加熱定着ローラ43と定着ベルト45の動作を説明する図である。尚、図3(a),(b),(c)には、図2に示した筐体42、熱源48、及び巻付き防止爪47の図示を省略し、代わって温度センサ53、保持回動部材54、及び回転カム55を新たに示している。
【0051】
図3(a)に示すように、加圧ローラ44には、定着ベルト45を介して温度センサ53が当接して、加圧ローラ44及び定着ベルト45の温度を検知している。一方、加熱定着ローラ43には、その中心軸43aに保持回動部材54の保持部54aが係合している。
【0052】
保持回動部材54は、保持部54aにより加熱定着ローラ43を保持すると共に、支点55を中心に回動可能に構成され、不図示の付勢部材により、定着ベルト45に近づく方向に回動するよう付勢されている。
【0053】
この保持回動部材54の、支点55に対して加熱定着ローラ43を保持する保持部54aより反対側端部のカム係合面54bに、回転カム56の平面部56aが当接して係合している。
【0054】
回転カム56は、カム軸57を支点にして回転するカムであり、カム軸57を中心にした円弧部56bと、この円弧部56bを直線状に切り欠いて形成された前述の平面部56aから成っている。
【0055】
カム軸57は平面部56aを、図3(a),(b)に示すように、保持回動部材54のカム係合面54bに接する位置に回転することにより、保持回動部材54が定着ベルト45に近づく方向に回動することを許容し、保持回動部材54を介して加熱定着ローラ43を加圧ローラ44に圧接する加熱位置に設定する。
【0056】
また、カム軸57は、円弧部56bを、図3(c)に示すように、保持回動部材54のカム係合面54bに接する位置に回転することにより、保持回動部材54を付勢部材の付勢力に抗して定着ベルト45から離れる方向に角度θだけ回動させ、保持回動部材54を介して加熱定着ローラ43を加圧ローラ44との圧接か解除する非加熱位置に設定する。
【0057】
一方、テンションローラ46が図3(a)に示す第1の位置にあって、テンションローラ46の中心と加圧ローラ44の中心を結ぶ線58がほぼ鉛直であるとき、定着ベルト45は、加熱定着ローラ43側に比較的近づいている。これにより、定着ベルト45は、加熱定着ローラ43との間で、比較的広い範囲の弱いニップ圧の挟持部B1を形成する。
【0058】
これに対して、テンションローラ46が図3(b)に示す破線で示す第1の位置から実線で示す第2の位置に移動して、テンションローラ46の中心と加圧ローラ44の中心を結ぶ線58が加熱定着ローラ43から離れる方向に傾いたときは、定着ベルト45は、加熱定着ローラ43からやや離れることになる。これにより、定着ベルト45は、加熱定着ローラ43との間で、比較的狭い範囲の弱いニップ圧の挟持部B2を形成する。
【0059】
尚、図3(a),(b)では、テンションローラ46の第1の位置と第2の位置のみを示したが、テンションローラ46の移動位置は、温度センサ53が検知する温度が所望の温度となるまで、第1の位置から第2の位置までの間で、所望の位置に設定できることは言うまでも無い。
【0060】
このように、本例によれば、図3(a)に示す比較的広い範囲の弱いニップ圧の挟持部B1から、図3(b)に示す比較的狭い範囲の弱いニップ圧の挟持部B2までの間で、所望の弱いニップ圧の挟持部を形成することができるので、普通紙、厚紙、OHP(overhead projector)用紙等の用紙の種類に係わり無く、適切な加熱方法となるように弱いニップ圧の挟持部の範囲を設定して、用紙の種類に対応する適切な定着熱で加熱することに容易に対応することができる。
【0061】
また、図3(c)に示すように、テンションローラ46が第2の位置にあるときに、加熱定着ローラ43が非加熱位置に移動すると、図1に示した搬入口49から搬出口51に至る通紙路が開放され、加熱定着ローラ43と加圧ローラ44との圧接が解除される。
【0062】
これにより、プリンタ1が停止又は休止しているときは、加熱定着ローラ43と加圧ローラ44との圧接を解除して、同一位置における長時間の圧接で、加熱定着ローラ43、加圧ローラ44、定着ベルト45等に変形癖が残ることを防止することができる。
【実施例2】
【0063】
図4(a)は、実施例2に係るプリンタ1の定着装置6の断熱性の筐体42(42a、42b)の一部を切り取って内面を示す正面図であり、同図(b) はその上面図、同図(c)はその側面図、同図(d)は同図(a)の丸eで囲んだ部分の拡大図、同図(e),(f)はそれぞれ同図(a),(d)の斜視図である。
【0064】
筐体42の図4(d),(f)に拡大して示す内面59は、三角錐を逆さにした形状の三つの三角の面からなる凹部61の集合体から成っている。
【0065】
図5(a)は1個の凹部61を取り出して示す正面図であり、同図(b)はその内部の反射面62(62a、62b、62c)を1つだけ切り離して示す展開図、同図(c)は凹部61の開口部を示す図、同図(d)は凹部61への入射熱と反射熱を説明する図である。
【0066】
図5(a)に示すように、凹部61の逆三角錐の各稜線の開き角度δは同一の90°である。また、図5(c)に示すように、凹部61の開口部の各辺の開き角度は60°である。
【0067】
このような凹部61の構成で、図5(d)に示すように、凹部61に熱放射fが直線状に入射すると、第1の反射面(例えば62a)で反射され、その反射光は第2の反射面(例えば62b)で反射され、その反射光が更に第3の反射面(例えば62c)で反射され、反射熱gとなって凹部61の外に入射した熱放射fに平行して反射される。
【0068】
このように、定着装置6の断熱性の筐体42の内面59は、入射熱を乱反射することなく同一方向に反射するので、加熱定着ローラ43、加圧ローラ44、及び定着ベルト45から放射される熱は無駄なく定着熱として活用される。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
【0070】
熱源を内蔵する加熱定着ローラと、
他の熱源を内蔵する加圧ローラと、
該加圧ローラとテンションローラとの間に掛け渡される定着ベルトと、
前記テンションローラを通紙路に近づく第1の位置と前記通紙路から離れる第2の位置とに移動させるテンションローラ移動部材と、
前記加熱定着ローラを保持し、支点を中心に回動可能な保持回動部材と、
該保持回動部材の前記支点に対し前記加熱定着ローラを保持する保持部より反対側端部に係合し、前記保持回動部材を介して、前記加熱定着ローラを通紙路に近づく加熱位置と前記通紙路から離れる非加熱位置とに移動させる回転カムと、
を有することを特徴とする定着装置。
[付記2]
【0071】
前記テンションローラが前記第1の位置にあるとき前記テンションローラの中心と前記加圧ローラの中心を結ぶ線はほぼ鉛直であり、
加熱定着ローラと前記加圧ローラとが圧接する位置は、前記加圧ローラの中心を通る水平面よりも下方に設定されている、
ことを特徴とする付記1記載の定着装置。
[付記3]
【0072】
前記加熱定着ローラが前記非加熱位置に在り、前記テンションローラが前記第2の位置にあるとき、前記通紙路は開放状態となる、ことを特徴とする付記1記載の定着装置。
[付記4]
【0073】
付記1乃至3記載の定着装置を備えた、ことを特徴とする画像形成装置。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、用紙の種類の変更に係わりなく機構的に簡単な構成で用紙のトナー画像を常に適正に定着する定着装置及びその定着装置を備えた画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 フルカラー画像形成装置(プリンタ)
2 画像形成部
3 転写ベルトユニット
4 トナー供給部
5 給紙部
6 ベルト式定着ユニット(定着装置)
7 両面印刷用搬送ユニット
8 転写ベルト
8a 下部走行部表面
9(9m、9c、9y、9k) 現像装置
9r、9r−1、9r−2 特殊トナー用予備現像装置
10 感光体ドラム
11 クリーナ
12 帯電ローラ
13 光書込ヘッド
14 現像器
15 現像ローラ
16 筐体
17 隔壁
15 現像ローラ
18 第1の攪拌搬送スクリュー
19 第2の攪拌搬送スクリュー
20 一次転写ローラ
21 駆動ローラ
22 従動ローラ
23 二次転写部
24 ベルトクリーナ
25 クリーニングブレード
26 廃トナー回収容器
27(27m、27c、27y、27k) リザーブタンク
28(28m、28c、28y、28k) トナーカートリッジ
29(29a、29b) 給紙カセット
30 電装部
31 用紙取出ローラ
32 給送ローラ
33 捌きローラ
34 待機搬送ローラ対
35 二次転写ローラ
36 搬出ローラ対
37 排紙トレー
38 排紙ローラ対
39 返送路
39a 開始返送路
39b 中間返送路
39c 終端返送路
41(41a、41b、41c、41d、41e) 返送ローラ対
42(42a、42b) 断熱性筐体
43 定着ローラ
43a 中心軸
44 加圧ローラ
45 定着ベルト
46 テンションローラ
47 巻付き防止爪
48(48a、48b) 熱源
A 強いニップ圧の挟持部
B 弱いニップ圧の挟持部
49 搬入口
51 搬出口
52 加圧ローラの中心を通る水平面
53 温度センサ
54 保持回動部材
54a 保持部
55 支点
56 回転カム
56a 平面部
57 カム軸
58 テンションローラの中心と加圧ローラの中心を結ぶ線
59 筐体の内面
61 凹部
62(62a、62b、62c) 反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源を内蔵する加熱定着ローラと、
他の熱源を内蔵する加圧ローラと、
該加圧ローラとテンションローラとの間に掛け渡される定着ベルトと、
前記テンションローラを通紙路に近づく第1の位置と前記通紙路から離れる第2の位置とに移動させるテンションローラ移動部材と、
前記加熱定着ローラを保持し、支点周りに回動可能な保持回動部材と、
該保持回動部材の前記支点に対し前記加熱定着ローラを保持する保持部より反対側端部に係合し、前記保持回動部材を介して、前記加熱定着ローラを通紙路に近づく加熱位置と前記通紙路から離れる非加熱位置とに移動させる回転カムと、
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記テンションローラが前記第1の位置にあるとき前記テンションローラの中心と前記加圧ローラの中心を結ぶ線はほぼ鉛直であり、
加熱定着ローラと前記加圧ローラとが圧接する位置は、前記加圧ローラの中心を通る水平面よりも下方に設定されている、
ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記加熱定着ローラが前記非加熱位置に在り、前記テンションローラが前記第2の位置にあるとき、前記通紙路は開放状態となる、ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の定着装置を備えた、ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220612(P2012−220612A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84359(P2011−84359)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】