説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】抵抗発熱体層を有する加熱回転体を備える定着装置において、給電部材と受電層との間でスパークが発生した場合に、受電層が破壊されるのを防止する。
【解決手段】通電により発熱する抵抗発熱体層513を有する加熱回転体51の外周面に、加圧回転体を圧接して定着ニップを形成し、未定着画像の形成された記録シートを当該定着ニップに通紙して熱定着する定着装置であって、抵抗発熱体層513と、前記記録シートの通紙方向と直交する方向において抵抗発熱体層513の両端部に受電層511、512を有する加熱回転体51と、受電層511、512を介して抵抗発熱体層513に給電する給電部材501、502を備え、各受電層は、単層で外部に露出された露出領域と抵抗発熱体層513と重複する重複領域とから成り、露出領域において対応する給電部材と接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗発熱体層を有する加熱回転体への給電により発生するジュール熱を利用して未定着画像の熱定着を行う定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写紙やOHP等の記録シート上に形成された未定着トナー像を熱定着する定着装置として、加熱回転体(発熱ベルト)に抵抗発熱体層を設け、この抵抗発熱体層に直接給電を行い、ジュール発熱させることにより熱定着を行う定着装置が提案されている(特許文献1参照)。
図7に示すように、上記の加熱回転体(発熱ベルト31)の軸方向の両端部には、受電層として、抵抗発熱体層312の上に集電極315が形成されており、集電極315を介して給電部材より給電を受けることにより、抵抗発熱体層312を流れる電流の電流密度の均一化が図られている。又、同図の符号311、313は、それぞれ第1及び第2絶縁層を、符号314は、離型層をそれぞれ示す。
【0003】
このような定着装置においては、熱源である抵抗発熱体層から被加熱対象物である記録シートまでの距離を非常に短くすることができるので熱効率が非常に高い。このため、短時間で定着装置のウォームアップを完了することができ、消費電力も節減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−109997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の定着装置においては、給電部材を受電層に接触させて給電が行われるため、受電層と給電部材との間に異物等が混入すると、給電部材と受電層との間に接触不良が生じ、これにより、両者の間にスパークが発生し、このスパークにより受電層の表面の一部が破損する場合が生じる。
そして、一旦受電層の破損が発生すると、その後、受電層が周回して当該破損部分が給電部材に近接した位置に来る度にスパークが発生し、受電層の破損が徐々に進行するとともに、スパークにより発生する熱が、受電層の下層の抵抗発熱体層に伝わり、スパークが発生した位置に対応する位置の抵抗発熱体層が熱膨張し、受電層の破損部分を下から突き上げるため、ついには、受電層が破壊されてしまうという不具合が生じる。
【0006】
図8は、加熱回転体の受電層がスパークにより破壊されるメカニズムをイメージ的に表した図である。同図において符号81は、加熱回転体を、符号811は、受電層を、符号812は、抵抗発熱体層を、符号813は、補強層を、符号814は、弾性層を、符号815は、離型層を、符号82は、給電部材をそれぞれ示す。同図に示すように、給電部材82と受電層811との間で繰り返し発生する、符号83で示すスパークにより、受電層の表面の一部が徐々に削れて行くとともに、スパークにより発生する熱により、白矢印Aで示すように、スパーク発生位置に対応する領域の抵抗発熱体層813が熱膨張し、その結果、受電層811が熱膨張した抵抗発熱体層813に突き上げられて受電層811が破壊される。
【0007】
本発明は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、抵抗発熱体層を有する加熱回転体を備える定着装置において、給電部材と受電層との間でスパークが発生した場合に、受電層が破壊されるのを防止することが可能な定着装置及び当該定着装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一形態に係る定着装置は、通電により発熱する抵抗発熱体層を有する加熱回転体の外周面に、加圧回転体を圧接して定着ニップを形成し、未定着画像の形成された記録シートを当該定着ニップに通紙して熱定着する定着装置であって、前記抵抗発熱体層と、前記記録シートの通紙方向と直交する方向において当該抵抗発熱体層の両端部に受電層を有する前記加熱回転体と、前記各受電層を介して前記抵抗発熱体層に給電する第1及び第2の給電部材を備え、前記各受電層は、単層で外部に露出された露出領域と前記抵抗発熱体層と重複する重複領域とから成り、前記露出領域において対応する給電部材と接触していることとすることができる。
【0009】
ここで、前記各受電層の表面には、前記重複領域において孔が設けられ、前記抵抗発熱体層は、前記重複領域において、前記孔の内周面を覆うように前記各受電層と重複していることとすることができる。又、前記各受電層は、前記重複領域の断面形状がテーパー形状であることとすることができる。
又、前記定着装置は、前記加熱回転体に内包され、前記加熱回転体の外周面を介して前記加圧回転体を押し付ける押圧部材を備え、前記押圧部材の軸方向の長さは、前記両端部の前記各受電層が前記露出領域において対応する前記給電部材と接触する接触位置間の軸方向の長さより長くなっていることとすることができる。さらに、前記各受電層は、前記加熱回転体の全周において、前記抵抗発熱体と接触していることとすることができる。又、前記加熱回転体は、ベルト形状であることとすることができる。さらに、前記加熱回転体おいて、前記抵抗発熱体層は、前記抵抗発熱体層の強度を補強する補強層で被覆されていることとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の定着装置は、上述の構成を備えることにより、加熱回転体の各受電層が単層で外部に露出された露出領域において、各受電層と当該受電層に対応する給電部材とが接触するので、給電部材と受電層との間にスパークが発生しても、受電層の下層には何もなく、受電層が下層の熱膨張により下から突き上げられて破壊されるのを有効に防止することができる。
【0011】
さらに、各受電層は、重複領域において抵抗発熱体層と重なっているので、重複領域を介して抵抗発熱体層に給電部材からの給電を行うことができ、抵抗発熱体層をジュール発熱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プリンター1の構成を示す図である。
【図2】定着装置5の構成を示す斜視図である。
【図3】加熱回転体51の構成を示す断面図である。
【図4】リングコート法の具体例を示す図である。
【図5】加熱回転体51の変形例の構成を示す断面図である。
【図6】加熱回転体51の別の変形例の構成を示す断面図である。
【図7】従来の加熱回転体の構成を示す断面図である。
【図8】加熱回転体の受電層がスパークにより破壊されるメカニズムをイメージ的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一形態に係る画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンター(以下、単に「プリンター」という。)に適用した場合を例にして説明する。
[1]プリンターの構成
先ず、本実施の形態に係るプリンター1の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るプリンター1の構成を示す図である。同図に示すように、このプリンター1は、画像プロセス部3、給紙部4、定着装置5、制御部60を備えている。
【0014】
プリンター1は、ネットワーク(例えばLAN)に接続され、外部の端末装置(不図示)や図示しない操作パネルから印刷指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナー像を形成し、これらを多重転写してフルカラーの画像を形成することにより、記録シートへの印刷処理を実行する。
以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成要素の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
【0015】
画像プロセス部3は、作像部3Y、3M、3C、3K、露光部10、中間転写ベルト11、2次転写ローラー45などを有している。
作像部3Y、3M、3C、3Kの構成は、いずれも同様の構成であるため、以下、主として作像部3Yの構成について説明する。作像部3Yは、感光体ドラム31Yと、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、1次転写ローラー34Y、および感光体ドラム31Yを清掃するためのクリーナー35Yなどを有しており、感光体ドラム31Y上にY色のトナー像を作像する。
【0016】
現像器33Yは、感光体ドラム31Yに対向し、感光体ドラム31Yに帯電トナーを搬送する。中間転写ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラー12と従動ローラー13に張架されて矢印C方向に周回駆動される。又、従動ローラー13の近傍には、中間転写ベルト上に残留するトナーを除去するためのクリーナー14が配置されている。露光部10は、レーザダイオードなどの発光素子を備え、制御部60からの駆動信号によりY〜K色の画像形成のためのレーザ光Lを発し、作像部3Y、3M、3C、3Kの各感光体ドラムを露光走査する。
【0017】
この露光走査により、帯電器32Yにより帯電された感光体ドラム31Y上に静電潜像が形成される。作像部3M、3C、3Kの各感光体ドラム上にも同様にして静電潜像が形成される。各感光体ドラム上に形成された静電潜像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの各現像器により現像されて各感光体ドラム上に対応する色のトナー像が形成される。
【0018】
形成されたトナー像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの各1次転写ローラー(図1では、作像部3Yに対応する1次転写ローラーのみ符号34Yを付し、他の1次転写ローラーについては、符号を省略している。)により、中間転写ベルト11上の同じ位置に重ね合わされるように、中間転写ベルト11上にタイミングをずらして順次1次転写された後、2次転写ローラー45による静電力の作用により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に2次転写される。トナー像が2次転写された記録シートは、さらに定着装置5に搬送され、記録シート上のトナー像(未定着画像)が、定着装置5において加熱及び加圧されて記録シートに熱定着された後、排出ローラー71により排紙トレイ72に排出される。
【0019】
給紙部4は、記録シート(図1の符号Sで表す)を収容する給紙カセット41と、給紙カセット41内の記録シートを搬送路43上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラー42と、繰り出された記録シートを2次転写位置46に送り出すタイミングをとるためのタイミングローラー44などを備えている。給紙カセットは、1つに限定されず、複数であってもよい。
【0020】
記録シートとしては、大きさや厚さの異なる用紙(普通紙、厚紙)やOHPシートなどのフィルムシートを利用できる。給紙カセットが複数ある場合には、異なる大きさ又は厚さ又は材質の記録シートを複数の給紙カセットに収納することとしてもよい。
繰り出しローラー42、タイミングローラー44等の各ローラーは、搬送モータ(不図示)を動力源とし、歯車ギヤやベルトなどの動力伝達機構(不図示)を介して回転駆動される。この搬送モータとしては、例えば、高精度の回転速度の制御が可能なステッピングモータが使用される。
【0021】
記録シートは、中間転写ベルト11上のトナー像の移動タイミングに合わせて給紙部4から2次転写位置46に搬送され、2次転写ローラー45により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に2次転写される。
[2]定着装置の構成
図2は、定着装置5の構成を示す斜視図である。同図に示すように、定着装置5は、加熱回転体51と、定着ローラー52と、加圧ローラー53と、を有する。加熱回転体51は、無端状のベルトであり、その両端部に電極として機能する受電層511、512が設けられ、両受電層上には給電部材501、502がそれぞれ当接され、電源部500から給電部材501、502を介して両受電層に給電が行われる。給電部材としては、例えば、給電ブラシや給電ローラーを用いることができる。給電部材からの給電により、両受電層間に電流が流れて、加熱回転体51がジュール発熱する。
【0022】
図3は、加熱回転体51の詳細な構成を示す断面図である。同図に示すように、符号301で示す画像領域においては、加熱回転体51は、抵抗発熱体層513、補強層514、弾性層515、離型層516が、この順に積層されて構成されている。
ここで、「画像領域301」は、記録シート上の画像が通紙される範囲に対応する加熱回転体51上のベルト幅方向の領域を示す。なお、図2に示す画像領域についても同様である。
【0023】
抵抗発熱体層513は、受電層511、512を通じて給電されることにより、ジュール熱を発生する層である。抵抗発熱体層513は、耐熱性樹脂等の絶縁性材料中に導電性材料を分散させて構成される。抵抗発熱体層513の体積抵抗率は、導電性材料の量を調整することにより、所定の体積抵抗率に調整される。
耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリエチレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリエステル-イミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリ-p-キシリレノン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂などを用いることができる。抵抗発熱体層513に用いる耐熱性樹脂として、耐熱性、絶縁性及び機械的強度等に優れた特性を示すポリイミド樹脂を用いるのが望ましい。
【0024】
導電性材料としては、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等の金属、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノコイル等を用いることができ、2種類以上の導電性材料(例えば、カーボンナノ材料と金属)を用いることとしてもよい。この場合、金属は、特に針状やフレーク状の銀(Ag)やニッケル(Ni)が好ましく、粒径は0.01〜10μmが良い。これにより、カーボンナノ材料と線状に絡み合うことで均一な電気抵抗を有する抵抗発熱体層513を成型することができる。金属が粒状や粉末状や塊状の場合、抵抗発熱体層513中に混在するカーボンナノ材料と絡み合わず、カーボンナノ材料と点接触することになるため、均一な電気抵抗を有する抵抗発熱体層513が得られにくくなる。
【0025】
抵抗発熱体層513の厚さは、任意であるが、5〜100μm程度が望ましい。抵抗発熱体層513の体積抵抗率は、1.0×10−6〜1.0×10−2Ω・m程度の範囲に設定することができるが、当該体積抵抗率は、1.0×10−5〜5.0×10−3Ω・mの範囲内であることが望ましい。
補強層514は、抵抗発熱体層513の強度を補強するための層であり、例えば、ポリイミド樹脂を用いることができる。補強層514の厚さは、任意であるが、5〜100μm程度が望ましい。弾性層515は、記録シート上のトナー像に均一かつ柔軟に熱を伝えるための層である。弾性層515を設けることにより、トナー像が押しつぶされたり、トナー像が不均一に溶融されたりするのを防止し、画像ノイズの発生を防止することができる。弾性層515の材料としては、耐熱性と弾性とを有するゴム材や樹脂材を用いる。例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性エラストマーを材料として用いることができる。
【0026】
弾性層515の厚さは、10〜800μm、さらに望ましくは50〜300μmの範囲内のものとする。弾性層515の厚さが10μm未満では厚さ方向の十分な弾力性を得ることが難しい。また、この厚さが800μmを超えていると,抵抗発熱体層513で発生した熱を加熱回転体51の外周面まで到達させることが難しく,伝熱効率が悪いので好ましくない。
【0027】
離型層516は、加熱回転体51の最外層をなし,加熱回転体51と記録シートとの離型性を高めるための層である。離型層516の材料としては、定着温度での使用に耐えられるとともにトナーに対する離型性に優れたものを使用することができる。例えば、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、PTFE(四フッ化エチレン)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化エチレン共重合体)、PFEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素樹脂を使用することができる。離型層516の厚さは5〜100μm、望ましくは10〜50μmの範囲内のものとするのがよい。
【0028】
一方、図3の符号302a、302bで示す両端部の非画像領域においては、加熱回転体51は、符号303a、303bで示す露出領域と、符号304a、304bで示す重複領域とから構成されている。
ここで、「非画像領域302a、302b」は、記録シート上の画像が通紙されない範囲に対応する加熱回転体51上のベルト幅方向の領域を示す。図2に示す非画像領域についても同様である。
【0029】
露出領域303a、303bにおいては、受電層511、512がそれぞれ単層で露出し、重複領域304a、304bにおいては、受電層511、512がそれぞれ抵抗発熱体層513で被覆され、受電層511と抵抗発熱体層513との両層、受電層512と抵抗発熱体層513との両層がそれぞれ、重なり合って重複するように構成されている。さらに、両層の上に補強層514、弾性層515、離型層516が、この順に積層されている。
【0030】
受電層511、512は、導電性の材料から構成される。受電層の材料としては、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、ステンレス(SUS)、真鍮、リン青銅等の金属を用いることができるが、電気抵抗率が低く、耐熱性、対酸化性に優れたニッケル、ステンレス、アルミニウム等の使用が望ましい。受電層の厚さは、
厚い方が剛性が高く、破壊に対して抵抗力が高いが、加圧部材により形成される定着ニップ部において変形し難くなるため、柔軟性とのバランスを考慮すると、10〜100μm、更には30〜70μm程度が望ましい。
【0031】
図3に示すように、給電部材501、502は、それぞれ、加熱回転体51の対応する露出領域において受電層511、512とそれぞれ当接されるので、給電部材と受電層との間にスパークが発生しても、受電層の下には何もないので、受電層が下層の熱膨張により下から突き上げられて破壊されることがない。さらに、受電層511、512は、重複領域において抵抗発熱体層513により被覆され、抵抗発熱体層513と重なり、重複しているので、重複領域を介して抵抗発熱体層513に給電を行うことができる。
【0032】
図2の説明に戻って、給電部材501及び502には、給電部材を加熱回転体51の周回経路内側の方向に押圧する付勢部材5011、5021がそれぞれ設けられている。
付勢部材としては、例えば、圧縮ばねを用いることができる。付勢部材5011、5021の押圧力により、給電部材が露出領域において受電層に圧接される。
定着ローラー52と加圧ローラー53は、芯金522、532の軸方向両端部521、531が図示しないフレームの軸受部に回転自在に軸支される。加圧ローラー53は、駆動モータ(不図示)からの駆動力が伝達されることにより矢印B方向に回転駆動される。この加圧ローラー53の回転に伴って加熱回転体51と定着ローラー52が矢印A方向に従動回転する。
【0033】
定着ローラー52は、長尺で円筒状の芯金522の周囲を断熱層523で被覆されてなり、加熱回転体51の周回経路の内側に配され、軸方向の長さが、加熱回転体51の両端部の露出領域において受電層511、512がそれぞれ対応する給電部材と圧接する圧接位置間の軸方向の長さより長くなるように構成されている。芯金522は、定着ローラー52を支持する部材であり、耐熱性と強度を有する材料から構成される。芯金522の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等を用いることができる。
【0034】
断熱層523は、加熱回転体51が発熱した熱を芯金522に逃がさないようにするための層である。断熱層523の材料としては、熱伝導率が低く、耐熱性及び弾性を有するゴム材や樹脂材のスポンジ体(断熱構造体)を用いるのが望ましい。加熱回転体51のたわみを許容し、ニップ幅を広くすることができるからである。断熱層523を、ソリッド体とスポンジ体との2層構造にしてもよい。シリコンスポンジ材を断熱層523として用いる場合には、その厚さを1〜10mmとするのが望ましい。さらに望ましくは、2〜7mmとするのがよい。
【0035】
加圧ローラー53は、円筒状の芯金532の周囲に、弾性層533を介して離型層534が積層されてなり、加熱回転体51の周回経路外側に配置され、加熱回転体51の外側から加熱回転体51の外周面を介して定着ローラー52を押圧して、加熱回転体51の外周面との間に周方向に所定幅を有する定着ニップ領域が形成される。
芯金532は、加圧ローラー53を支持する部材であり、耐熱性と強度を有する材料から構成される。芯金532の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等を用いることができる。弾性層533は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体で、厚さ1〜20mmの範囲内の耐熱性の高い材料で構成される。離型層534は、離型層516と同様に、加圧ローラー53と記録シートとの離型性を高めるための層であり、離型層516と同様の材料及び厚さで構成することができる。
【0036】
[3]加熱回転体の製造方法
本実施の形態に係る加熱回転体51は、以下に示す(1)〜(10)の工程を経て製造される。
(1)受電層511、512の形成工程
受電層形成用の金属(例えば、ニッケル、ステンレス、アルミニウム)を加工して30〜70μmの厚さのリング形状の受電層(受電層511、512)を形成する。加工法としては、例えば、電鋳加工、へら絞り加工、プレス絞り加工等を用いることができる。又、受電層形成用の金属シートを用いて、レーザ溶接によりリング形状の受電層を形成することとしてもよい。
(2)円筒状金型への受電層511、512のセット工程
円筒状の金型の表面に離型剤を塗布して型離れを良くした後、(1)で形成したリング形状の受電層511、512をそれぞれ、軸方向に所定の間隔(画像領域のベルト幅方向の長さに相当する間隔)をあけて円筒状の金型に嵌めこむことにより、受電層511、512をそれぞれ円筒状金型にセットする。
(3)抵抗発熱体層513の前駆体の塗布工程
ポリイミド前駆体溶液中に導電性材料を混合することにより、抵抗発熱体層513の前駆体溶液を調製し、円筒状金型にセットされた受電層511、512の露出領域に相当する領域をマスクした状態で、調整した前駆体溶液を円筒状金型の外周面に塗布する。
【0037】
ポリイミド前駆体溶液は、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを有機溶媒中で、約90℃以下で反応させることにより得られる。又、抵抗発熱体層513の前駆体溶液は、ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体の固形重量に対して、導電性材料の重量が50〜300重量%となるように、各構成成分が混合されて調製される。導電性材料の重量は、定着装置5の発熱量が500〜1500Wの範囲内になるように、抵抗発熱体層513の電気抵抗値を調整するため、上記範囲に設定されている。
(4)抵抗発熱体層513の成形工程
塗布された抵抗発熱体層513の前駆体溶液をポリイミド前駆体が半硬化状態になるように加熱して抵抗発熱体層513を成形する。例えば、約100℃のオーブンで1時間程度加熱することにより、ポリイミド前駆体を半硬化状態にすることができる。
(5)補強層514の前駆体の塗布工程
ポリイミド前駆体溶液を補強層514の前駆体として、成形された抵抗発熱体層513の外面に塗布する。
(6)補強層514の成形工程
塗布された補強層514の前駆体を、(4)と同様にポリイミド前駆体が半硬化状態になるように加熱して補強層514を成形する。
(7)ポリイミド前駆体のイミド化工程
成形された抵抗発熱体層513及び補強層514中のポリイミド前駆体を加熱し、ポリイミド前駆体のイミド化を完了させる。ポリイミド前駆体の加熱は、例えば、約350℃で1時間程度加熱することにより、行う。これにより、両層のイミド化がほぼ同時に完了し、抵抗発熱体層513と補強層514との間の接着性を高めることができる。
(8)弾性層515の前駆体の塗布工程
補強層514の外面にプライマーを塗布して乾燥した後、さらに、シリコーンゴム前駆体溶液を塗布する。プライマーとしては、例えば、モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製の「XP81−405」を用いることができる。
【0038】
又、シリコーンゴム前駆体溶液としては、例えば、モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製の「XP81−A6361」を用いることができる。
(9)弾性層515の成形工程
塗布されたシリコーンゴム前駆体溶液を加熱して一次加硫を行い、弾性層515を成形する。一次加硫は、シリコーンゴム前駆体溶液を、例えば、約150℃のオーブンで10分程度加熱することにより行われる。
(10)離型層516による弾性層515被覆工程
弾性層515との接着性をよくするために離型層516の内面にシリコーンゴム前駆体の付加型液状シリコーンゴムを塗布した後、当該離型層516で弾性層515を被覆する。付加型シリコーンゴムとしては、例えば、モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製の「XE15−B7354−40K×2S」を用いることができる。又、離型層516としては、例えば、PFAチューブを用いることができる。
(11)接着工程
弾性層515及び離型層516に塗布されたシリコーンゴム前駆体を加熱して二次加硫を行い、両層を接着する。二次加硫は、シリコーンゴム前駆体を例えば、約200℃のオーブンで4時間程度加熱することにより行われる。これにより、加熱回転体51が形成される。
(12)マスク除去工程
円筒状金型にセットされた受電層511、512のマスクを除去し、円筒状金型上に形成された加熱回転体51を金型からはずす。
【0039】
(3)、(5)、(8)における各塗布工程では、塗布液の塗布を例えばリングコート法において行うことができる。「リングコート法」とは、円筒状金型の外周を取り囲む円筒状の塗布機構により円筒状金型の外周面に均一に塗布液を塗布する塗布方法のことをいう。図4は、リングコート法の具体例を示す図である。
図4(a)は、符号5で示す塗布液の塗布完了時の状態を示し、図4(b)は、塗布液5の塗布を行っている途中の状態を示す。両図に示すように、符号1で示す円筒状金型は、符号2、3で示す支持部材により鉛直に支持された状態で、符号4で示す塗布機構により円筒状金型1の外周面が均一に塗装される。塗布機構4は、上部ヘッド41と下部ヘッド42から構成され、両者の間には、塗布液5を吐出するための吐出路43が形成されている。なお、図4(b)では、各符号の付与を省略している。
【0040】
塗布機構4に塗布液5を供給しながら、円筒状金型1の一方の端部から他方の端部に所定の速度で移動させることにより、円筒状金型1の外周面に塗布液5が均一に塗布される。図4(a)の符号7、8は、円筒状金型にセットされた状態の受電層511、512をそれぞれ示し、両受電層の露出領域に相当する領域は、マスクされている。
[3]変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
【0041】
(1)本実施の形態に係る加熱回転体51では、受電層511、512を重複領域において、その外表面をそれぞれ抵抗発熱体層513で被覆することにより、各受電層と抵抗発熱体層513とを接触させることとしたが、抵抗発熱体層513との接触面積を大きくするために、図5に示すように各受電層(受電層511A、512A)の外表面に孔を開けて、各孔の内周面を抵抗発熱体層513で被覆するように構成することとしてもよい。孔の数は、少なくとも1つ以上であればよいが、例えば、各受電層の外表面に複数の孔を、レーザを用いて千鳥格子状に開けることとすることができる。図5に示す加熱回転体51Aおいては、受電層以外の構成要素については、図3に示す加熱回転体51の構成要素と同一であるので、図3と同じ符号を付与している。給電部材501、502についても同様である。
【0042】
これにより、抵抗発熱体層513との接触面積が大きくなるので、重複領域を介して抵抗発熱体層513により確実に給電を行うことができる。又、本実施の形態の加熱回転体51の場合に比べ、各受電層と抵抗発熱体層513との境界部における応力集中を緩和することができる。
(2)本実施の形態では、加熱回転体51において、重複領域における受電層511、512の抵抗発熱体層513との接触面の断面形状を平らにしているが、図6に示す各受電層(受電層511B、512B)のように、当該断面形状をテーパー形状とすることとしてもよい。具体的には、加熱回転体の製造方法において、リング形状の受電層を円筒状金型にセットした後、重複領域に相当する領域において、エッチング処理を行い、当該断面形状をテーパー形状とすることとしてもよい。これにより、本実施の形態の加熱回転体51の場合に比べ、各受電層と抵抗発熱体層513との境界部における応力集中を緩和することができる。
【0043】
(3)本実施の形態では、加熱回転体51において、抵抗発熱体層513と弾性層515との間に補強層514を形成することとしたが、補強層514を、抵抗発熱体層513と弾性層515との間ではなく、抵抗発熱体層513の下層に形成することとしてもよい。
又、加熱回転体51に補強層514を形成することなく、抵抗発熱体層513の上に、弾性層515、離型層516をこの順に形成することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、抵抗発熱体層への給電により発生するジュール発熱を利用して未定着画像の熱定着を行う定着装置に関する技術として利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 プリンター
3 画像プロセス部
3Y〜3K 作像部
4 給紙部
5 定着装置
10 露光部
11 中間転写ベルト
12 駆動ローラー
13 従動ローラー
14 クリーナー
31Y 感光体ドラム
32Y 帯電器
33Y 現像器
34Y 1次転写ローラー
41 給紙カセット
42 繰り出しローラー
43 搬送路
44 タイミングローラー
45 2次転写ローラー
46 2次転写位置
51 加熱回転体
52 定着ローラー
53 加圧ローラー
60 制御部
71 排出ローラー
72 排紙トレイ
500 電源
501、502 給電ブラシ
511、512 受電層
513 抵抗発熱体層
514 補強層
515 弾性層
516 離型層
5011、5021 付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する抵抗発熱体層を有する加熱回転体の外周面に、加圧回転体を圧接して定着ニップを形成し、未定着画像の形成された記録シートを当該定着ニップに通紙して熱定着する定着装置であって、
前記抵抗発熱体層と、前記記録シートの通紙方向と直交する方向において当該抵抗発熱体層の両端部に受電層を有する前記加熱回転体と、
前記各受電層を介して前記抵抗発熱体層に給電する第1及び第2の給電部材を備え、
前記各受電層は、単層で外部に露出された露出領域と前記抵抗発熱体層と重複する重複領域とから成り、前記露出領域において対応する給電部材と接触している
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記各受電層の表面には、前記重複領域において孔が設けられ、
前記抵抗発熱体層は、前記重複領域において、前記孔の内周面を覆うように前記各受電層と重複している
ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記各受電層は、前記重複領域の断面形状がテーパー形状である
ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項4】
前記加熱回転体に内包され、前記加熱回転体の外周面を介して前記加圧回転体を押し付ける押圧部材を備え、
前記押圧部材の軸方向の長さは、前記両端部の前記各受電層が前記露出領域において対応する前記給電部材と接触する接触位置間の軸方向の長さより長くなっている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記各受電層は、前記加熱回転体の全周において、前記抵抗発熱体と接触している
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記加熱回転体は、ベルト形状である
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記加熱回転体おいて、前記抵抗発熱体層は、前記抵抗発熱体層の強度を補強する補強層で被覆されている
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の定着装置
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の定着装置を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252067(P2012−252067A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123045(P2011−123045)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】