説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】低熱容量化及び小型化を図った構成においても長時間の安定した回転駆動が可能な定着装置を提供する。
【解決手段】定着ベルト21をその軸方向端部で支持するフランジ部材50Aにおいて、円筒部50aは、その外周面の円周方向に溝50mが形成されてなり、ドーナツ盤形状であって、溝50mにその内径部が回転可能に嵌め込まれ、盤面に定着ベルト21の軸方向端部が当接するスリップリング51を有しており、スリップリング51の回転軸51jを中心として、式(1)を満足する。
スリップリング51の内径ID51<フランジ部材50Aの円筒部50aの最小外寸OD50a<定着ベルト21の走行軌跡における最大外寸OD21<スリップリング51の外径OD51 ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱と圧力により記録媒体にトナーを定着させる定着装置及び該定着装置を備える電子写真方式、静電記録方式等を利用したFAX、プリンタ、複写機またはそれらの複合機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置として、像担持体である感光体ドラムの表面に静電潜像を形成し、感光体ドラム上の静電潜像をトナーなどの現像剤によって現像して顕在化し、このトナー像を転写装置により転写紙(記録媒体)に転写する電子写真方式の画像形成装置が知られている。この画像形成装置では、トナー像が転写された転写紙に対して熱及び圧力を加えることにより、転写紙上のトナー像が定着される。
【0003】
従来、前記定着を行う定着装置として、可撓性を有する無端状の定着部材と、その定着部材の外周面に対して加圧する回転体からなる加圧部材と、定着部材を介して加圧部材からの加圧を受ける加圧受け部材と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような定着装置では、定着部材が軸方向端部においてフランジ部材で支持された構成であり、長時間の運転に伴いフランジ部材が磨耗してその磨耗粉が定着部材の内周部に入り込み、定着部材の駆動トルクが上昇する問題が発生した。
【0005】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、低熱容量化及び小型化を図った構成においても長時間の安定した回転駆動が可能な定着装置及び該定着装置を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために提供する本発明は、回転可能な無端状ベルトの定着部材と、前記定着部材の外周側に該定着部材と圧接可能に配置される加圧部材と、前記定着部材の内周側に配置され、前記定着部材を介して前記加圧部材と圧接してニップ部を形成するニップ形成部材と、前記定着部材を直接または間接的に加熱する加熱手段と、当該定着装置のフレームに固設されるフランジ部、及び該フランジ部のフランジ面に立設され前記定着部材の軸方向端部の内周部に挿入されて該定着部材を直接または間接的に回転可能に保持する円筒部を有するフランジ部材と、を備え、前記フランジ部材における円筒部は、その外周面の円周方向に溝が形成されてなり、ドーナツ盤形状であって、前記溝にその内径部が回転可能に嵌め込まれ、盤面に前記定着部材の軸方向端部が当接するスリップリングを有しており、前記スリップリングの回転軸を中心として、次式(1)を満足することを特徴とする定着装置である。
前記スリップリングの内径<前記フランジ部材の円筒部の最小外寸<前記定着部材の走行軌跡における最大外寸<前記スリップリングの外径 ・・・(1)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スリップリングを用いるので定着部材の回転駆動に伴うフランジ部材の磨耗を防止でき、またフランジ部材の円筒部に溝を設け、式(1)の関係を満足することによりスリップリング配置部分と円筒部外周面と間に段差が形成され、スリップリングがフランジ面と摺動して磨耗粉が発生してもその段差が磨耗粉が定着部材側へいくことを防止するので、定着部材の駆動トルクの上昇を防止することができ、長時間安定した運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る定着装置の構成例1を示す断面図である。
【図2】定着ベルトにおける軸方向、周方向を示す概略図である。
【図3】図1の定着装置における定着ベルトとフランジ部材と側板の配置関係を示す断面図である。
【図4】本発明で用いる発熱シートの構成を示す断面図である。
【図5】面状発熱体と発熱体支持部材を組み立てた例を示す斜視図である。
【図6】面状発熱体、発熱体支持部材、端子台ステイを組み立てた例を示す斜視図である。
【図7】図6の端子台ステイ上の面状発熱体の電極端子と給電線の接続状態を示す斜視図である。
【図8】図1の定着装置における定着ベルト側の内部機構部の構成を示す断面図である。
【図9】フランジ部材にスリップリングを設けた参考例の構成を示す概略図である。
【図10】図1の定着装置の要部構成を示す概略図である。
【図11】図10の要部構成の変形例(1)を示す図である。
【図12】図10の要部構成の変形例(2)を示す図である。
【図13】スリップリングの構成例を示す正面図である。
【図14】図10の要部構成の変形例(3)を示す図である。
【図15】本発明に係る定着装置の構成例(2)を示す断面図である。
【図16】図15の定着装置で用いる回転支持部材の構成を示す斜視図である。
【図17】図15の定着装置における定着ベルト側の内部機構部の構成を示す概略図である。
【図18】図15の定着装置の要部構成を示す概略図である。
【図19】本発明に係る定着装置の構成例(3)を示す断面図である。
【図20】図19の定着装置の支持部材、外保持部材および内保持部材を分解した状態を示す中央縦断面図である。
【図21】図19の定着装置の支持部材を示す斜視図である。
【図22】図19の定着装置の支持部材の寸法を示す概略の正面図である。
【図23】図19の定着装置のフランジ部材を示す斜視図である。
【図24】図19の定着装置の支持部材とフランジ部材と側板とを示す断面図である。
【図25】図19の定着装置における支持部材へのフランジ部材の挿入の様子を示す斜視図である。
【図26】図19の定着装置に用いる一対のフランジ部材の外観形状を示す斜視図である。
【図27】図19の定着装置に用いるフランジ部材の詳細構成を示す斜視図である。
【図28】図27のフランジ部材における円筒部の形状及び寸法を示す正面図である。
【図29】図27のフランジ部材に支持部材等を組み付けた状態を示す正面図である。
【図30】図19の定着装置の要部構成を示す概略図である。
【図31】本発明に係る定着装置の構成例(4)を示す断面図である。
【図32】図31の定着装置の要部構成を示す概略図である。
【図33】本発明に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る定着装置及び画像形成装置の実施形態について説明する。
(構成例1)
図1は、本発明に係る定着装置の構成例1を示す断面図である。
図1に示すように、定着装置20は、回転する無端状ベルトからなる定着部材(定着ベルト21(定着回転体ともいう))と、前記定着部材の外周面と当接する加圧部材(加圧ローラ31(加圧回転体ともいう))と、前記定着部材の内周側に配置され、該定着部材を介して前記加圧部材と当接してニップ部を形成するニップ形成部材(ニップ形成部材26)と、前記定着部材の内周側に該定着部材と当接または近接して配置され、前記定着部材を直接または間接的に加熱する面状発熱体(面状発熱体22)と、前記定着部材の内周側に該定着部材との間に前記面状発熱体を挟むように配置され、該面状発熱体を所定位置で支持する発熱体支持部材(発熱体支持部材25)と、を備える。このとき、面状発熱体22の発熱面(後述する発熱シート22sである。)は定着ベルト21の内周面と当接し、直接加熱する。
【0010】
ここで、定着ベルト21は、軸方向が通紙される記録媒体Pの幅に対応する長さを有し、可撓性を有する円筒形状の無端状ベルトであり、例えば厚さが30〜50μmの金属材料等からなる基材上に少なくとも離型層を形成したものであって、外径が30mmになっている。なお以降、図2(a)に示すように、定着ベルト21のパイプ長手方向を軸方向と、図2(b)に示すように、定着ベルト21のパイプ円周方向を周方向と称する。
【0011】
定着ベルト21の基材を形成する材料としては、鉄、コバルト、ニッケル、又はこれらの合金等の伝熱性のよい金属材料を用いることができる。あるいは、耐熱性の樹脂を用いてもよい。
【0012】
定着ベルト21の離型層は、PFA等のフッ素化合物をチューブ状に被覆したものであって、その厚さは例えば5μm〜50μmになっている。離型層は、記録媒体P上のトナー像(トナー)Tが直接的に接する定着ベルト21表面のトナー離型性を高めるためのものである。
【0013】
また、定着ベルト21は、図3に示すように、その軸方向両端部が定着装置20の側板42の所定位置に固定されたフランジ部材30により回転可能に支持されている。詳しくは、フランジ部材30は、定着ベルト21の軸方向端部に当接するフランジ面を有するフランジ部30bと、フランジ部30bのフランジ面に立設された円筒部30aと、を有しており、フランジ部30bが定着装置20の側板42に固設され、円筒部30aが定着ベルト21の軸方向端部の内径部に挿入されている。円筒部30aの外形(断面形状)は、ニップ形成部材26に対応する箇所を除き、略円形の形状を有しており、その外径は定着ベルト21の内径と同じかわずかに小さくなっている。これにより、定着ベルト21の軸方向両端部の内径部に挿入された円筒部30aは、定着ベルト21を回転可能な状態で略円形状に保持する。したがって、円筒部30aの円の中心が定着ベルト21の回転中心Oとなる(図1)。
【0014】
加圧ローラ31は、アルミニウム、銅等の金属材料からなる芯金上に、シリコーンゴム(ソリッドゴム)等の耐熱性弾性層、離型層が順次形成されたものであって、外径が30mmになっている。弾性層は、肉厚が2mmとなるように形成されている。離型層は、PFAチューブを被覆したものであって、厚さが50μmになるように形成されている。また、芯金内には必要に応じてハロゲンヒータなどの発熱体を内蔵してもよい。また、加圧ローラ31は、加圧手段(不図示)により定着ベルト21を介してニップ形成部材26に圧接され、その圧接部が定着ベルト21側が凹んだニップ部を形成している。そして、このニップ部に、記録媒体Pが搬送されることになる。
【0015】
また、加圧ローラ31は、定着ベルト21に圧接した状態で不図示の駆動機構により回転駆動され(図1において時計回り方向に回転)、この加圧ローラ31の回転に伴って定着ベルト21が回転することになる(図1において反時計回り方向に回転)。
【0016】
ニップ形成部材26は、定着ベルト21の軸方向に長さを有し、少なくとも定着ベルト21を介して加圧ローラ31と圧接する部分が耐熱性を有する樹脂材料、例えば液晶ポリマー(LCP)やポリアミドイミド(PAI)などからなるものであり、コア保持部材28により定着ベルト21の内周側の所定位置に保持された状態で固定されている。また、当接部分26の定着ベルト21の内周面と接する部分はテフロン(登録商標)シートなどの摺動性及び耐磨耗性の優れた材料からなるものとするとよい。
【0017】
コア保持部材28は、金属などの板材が板金加工されてなり、定着ベルト21の軸方向の長さに対応する長さを有し断面がH型形状の剛性部材であり、定着ベルト21の内周側の略中心部分に配置されるものである。
【0018】
またコア保持部材28は、定着ベルト21の内周側に配置される種々の部材を所定位置に保持するものであり、例えばコア保持部材28のH型の一方(加圧ローラ31に対向する側)のくぼんだ部分にニップ形成部材26を収納保持し、ニップ形成部材26が加圧ローラ31により加圧されても大きく変形しないようにニップ部とは反対面側から支持している。また、コア保持部材28は、ニップ形成部材26を該コア保持部材28から加圧ローラ31側に少し突出するように保持しており、ニップ部でコア保持部材28(構成例2の場合には回転支持部材27)が定着ベルト21に接触しないように配置されている。
【0019】
また、コア保持部材28のH型の他方(加圧ローラ31側とは反対側)のくぼんだ部分に、定着ベルト21の軸方向の長さに対応する長さを有し断面がT字型形状の端子台ステイ24及び端子台ステイ24上に延設され外部からの電力を供給する給電線22Lを収納保持している。さらに、コア保持部材28のH型の外面に発熱体支持部材25を保持している。図1では、定着ベルト21の下方半周分(ニップ部の入側半周分)の領域で発熱体支持部材25を保持している。その際、組み立て性を勘案して発熱体支持部材25とコア保持部材28を接着してもよい。あるいは発熱体支持部材25側からコア保持部材28側への伝熱を防止するために、両者を非接着としてもよい。
【0020】
発熱体支持部材25は、面状発熱体22の発熱面を定着ベルト21の内周面と当接させて配置するために該面状発熱体22を支持するものである。そのため、発熱体支持部材25は、断面形状を円形とした定着ベルト21の内周面に沿った所定の円弧の長さの外周面を有している。
【0021】
また、発熱体支持部材25における前記円弧の半径、すなわち定着ベルト21の回転中心Oから発熱体支持部材25の外周面までの距離は、定着ベルト21の内径Rとほぼ同じとなっている。これにより、発熱体支持部材25が支持する面状発熱体22の発熱面全面が定着ベルト21の内周面と密着して効率的に定着ベルト21を加熱するようになる。なお、発熱体支持部材25における前記円弧の半径(定着ベルト21の回転中心Oから発熱体支持部材25の外周面までの距離)は、例えば図1において、定着ベルト21の回転中心Oから発熱体支持部材25までの距離a(コア保持部材28の部分)と、定着ベルト21の半径方向への発熱体支持部材25の肉厚tの合計である。
【0022】
また、発熱体支持部材25は、面状発熱体22の発熱に耐えるだけの耐熱性と、回転走行する定着ベルト21が近接する面状発熱体22に接触した際に変形することなく面状発熱体22を支持するだけの強度と、面状発熱体22の熱をコア保持部材28側に伝えずに、定着ベルト21側に伝えるようにする断熱性と、を有することが好ましく、例えばポリイミド樹脂の発泡成形体であることが好ましい。なお、面状発熱体22が定着ベルト21の内周面と当接するとき、回転走行する定着ベルト21が面状発熱体22をニップ部側に引っ張る力が該面状発熱体22に作用するため、発熱体支持部材25は変形することなく面状発熱体22を支持するだけの強度が必要になるが、この場合にもポリイミド樹脂の発泡成形体が好適である。また、このポリイミド樹脂の発泡体の内部に補助的にソリッドの樹脂部材を設けて剛性を向上させるようにしてもよい。
【0023】
面状発熱体22の発熱面は、図4に示すように、絶縁性を有する基層22a上に、耐熱性樹脂中に導電性粒子が分散されてなる抵抗発熱層22bと、該抵抗発熱層22bに電力を供給する電極層22cと、が形成され、定着ベルト21の軸方向、周方向に対応して所定の幅及び長さをもち可撓性を示す発熱シート22sからなることが好ましい。また、基層22a上には、抵抗発熱層22bと隣接する別の給電系統の電極層22cとの間や発熱シート22sの縁部分と外部との間を絶縁する絶縁層22dが設けられている。なお、面状発熱体22は、発熱シート22sの端部で電極層22cに接続され、給電線22Lから供給される電力を該電極層22cに供給する電極端子22e(不図示、後述)を備える。
【0024】
また、発熱シート22sの厚さは0.1〜1mm程度であり、少なくとも発熱体支持部材25の外周面に沿って巻きつけることができる程度の可撓性を有している。
【0025】
ここで、基層22aは、PETまたはポリイミド樹脂などのある程度の耐熱性を有する樹脂からなる薄膜の弾性体フィルムであり、このうちポリイミド樹脂からなるフィルム部材であることが好ましい。これにより、耐熱性と、絶縁性と、ある程度の柔軟性(可撓性)を備える。
【0026】
抵抗発熱層22bは、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂中にカーボン粒子や金属粒子などの導電性粒子が均一に分散してなる導電性を有する薄膜であり、通電されると内部抵抗によりジュール熱として発熱する構成となっている。このような抵抗発熱層22bは、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂の前駆体中にカーボン粒子や金属粒子などの導電性粒子を分散させた塗料を基層22a上に塗布して成膜するとよい。
【0027】
また、抵抗発熱層22bは、基層22a上にまずカーボン粒子や金属粒子からなる薄膜の導電層が形成され、ついでその導電層上にポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂からなる絶縁性薄膜を積層して一体化したものであってもよい。
【0028】
なお、抵抗発熱層22bに使用するカーボン粒子は、通常のカーボンブラック粉末でもよいが、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイルの少なくともいずれかからなるカーボンナノ粒子であってもよい。
【0029】
また、金属粒子は、Ag、Al、Niなどからなる粒子であり、その形状は粒状であってもよいし、フィラメント状であってもよい。
【0030】
絶縁層22dは、ポリイミド樹脂などの基層22aと同じ耐熱性樹脂からなる絶縁材料を塗布により形成するとよい。
【0031】
電極層22cは、導電性インクやAgなどの導電性ペーストなどを塗布して形成したものでもよいし、金属箔や金属網などを接着して形成したものであってもよい。
【0032】
面状発熱体22を構成する発熱シート22sは、厚みの薄いシートであることから熱容量が小さく、急速な加熱が可能であり、その発熱量は抵抗発熱層22bの体積抵抗率によって任意に設定できる。すなわち、抵抗発熱層22bを構成する導電性粒子の構成材料、形状、大きさ、分散量などにより発熱量を調整することが可能であり、例えば単位面積当りの発熱量35W/cmで、総電力1200W程度の出力が得られる面状発熱体22の実現が可能である。この場合、発熱シート22sは、例えば幅(軸方向)20cm、長さ(周方向)2cm程度のサイズとなる。
【0033】
また、面状発熱体としてステンレスなどの金属フィラメントからなるものを用いた場合、フィラメントの存在により面状発熱体の表面には凹凸が生じていることから、本発明のように定着ベルト21の内周面と摺動させると、表面が容易に磨耗してしまうが、本発明で使用する発熱シート22sは前述のように表面に凹凸がなく平坦であることから、定着ベルト21の内周面との摺動に対して優れた耐久性を示す。またさらに、発熱シート22sの抵抗発熱層22b表面にフッ素系樹脂をコーティングすると、定着ベルト21の内周面との接触に対する耐久性がさらに向上するので好ましい。
【0034】
なお、発熱シート22sの定着ベルト21内周面における配置領域としては、図1では、定着ベルト21の内周面のニップ部とは反対側の位置からニップ部手前までにかけて配置された構成が示されているが、これに限定されるものではなく、例えば発熱シート22sをニップ部の位置まで配置してもよいし、定着ベルト21のニップ部を除く内周面全周に配置してもよい。
なお、本発明においては、定着ベルト21の加熱源として面状発熱体22に限られるものではなく、例えばハロゲンヒータなどの加熱手段を用いてもよい。
【0035】
つぎに、定着装置20における定着ベルト21側の組み立ては例えば以下の手順で行う。
(S11) まず、発熱体支持部材25の外周面に沿って面状発熱体22の発熱シート22sを接着剤により貼り付ける(図5)。この際、接着剤は発熱体支持部材25への熱の流出を防ぐために熱伝導率の低いものを用いることが望ましい。
【0036】
なお、このとき発熱シート22sにおける定着ベルト21の周方向に対応する一方の端部に、前記電極層22cに接続される複数の電極端子22e(電極端子22e1,22e2)の全てを設けておく。図5では、発熱シート22sにおいて定着ベルト21の周方向に対応する一方の端部(加圧ローラ31(ニップ部)側とは反対側の端部)の辺(端辺)上であって、定着ベルト21の軸方向に対応する両端それぞれに電極端子22e1,22e2が1つずつ設けられている。
【0037】
(S12) ついで、電極端子22e近傍の発熱シート22sを発熱体支持部材25の縁に沿って折り曲げて、電極端子22eが円形の定着ベルト21の中央側に向かうようにした上で、電極端子22e1,22e2それぞれを、端子台ステイ24上で給電線22Lと接続固定する(図6,図7)。電極端子22e1,22e2の端子台ステイ24上での接続固定は、図7に示すようにネジ締結により行うとよい。また、発熱シート22sの電極端子22eが設けられる端辺の中央部から発熱シート22s固定用に延設された固定端子22fが設けられており、この固定端子22fも端子台ステイ24にネジ締結して固定する。
【0038】
(S13) つぎに、コア保持部材28をそのH型の一方のくぼんだ部分に端子台ステイ24が収納されるように装着し、さらにH型の他方のくぼんだ部分にニップ形成部材26を装着して定着ベルト21側の内部機構部を完成する(図8)。
最後に、この内部機構部を定着ベルト21の内周側に挿入して、図1のように配置して定着装置20における定着ベルト21側の組み立てを完了する。
【0039】
このように構成された定着装置20は、次のように動作する。
まず、画像形成装置が出力信号を受けると(例えばユーザの操作パネルの操作あるいはパソコンからの通信などにより画像形成装置に印刷要求があると)、定着装置20において、加圧ローラ31が定着ベルト21を介してニップ形成部材26に押圧され、ニップ部を形成する。
ついで、不図示の駆動装置によって、加圧ローラ31が図1の時計回り方向に回転駆動されると、定着ベルト21も連れ回りして時計方向に回転する。このとき、面状発熱体22は発熱体支持部材25で支持された状態で、定着ベルト21の内周面と当接し摺動する状態となる。
そして、それと同期して外部電源または内部の蓄電装置から給電線22Lを通じて面状発熱体22に電力が供給され、発熱シート22sが発熱し、定着ベルト21は該発熱シート22sと接触していることから効率的に熱が伝達され、急速に加熱される。なお、駆動装置の動作と面状発熱体22による加熱は同時刻に同時に開始する必要はなく、適宜時間差を設けて開始しても良い。
このとき、ニップ部上流側であって、定着ベルト21の外側又は発熱シート22sの内周側の発熱体支持部材25内から接触又は非接触に配置された温度検知手段(不図示)で検知される温度により、ニップ部が所定の温度となるように、面状発熱体22による加熱制御が行われており、定着に必要な温度まで昇温された後、保持され、記録媒体Pの通紙が開始される。
【0040】
このように、本発明の定着装置では、定着ベルト21及び面状発熱体22の熱容量が小さいため、省エネを図りつつウォームアップ時間やファーストプリント時間を短くすることができる。また、面状発熱体22における発熱シート22sは樹脂ベースのシートであるため、加圧ローラ31の回転、振動に起因する応力が発熱シート22sに繰り返し作用して、発熱シート22sの屈曲が繰り返し行われても疲労破壊することがなく、長時間の運転が可能である。
【0041】
なお、画像形成装置への出力信号がない場合、通常は消費電力を抑えるために加圧ローラ31及び定着ベルト21は非回転で、面状発熱体22は通電を停止されているが、すぐに再出力を開始したい(復帰させたい)場合は、加圧ローラ31及び定着ベルト21が非回転の状態でも面状発熱体22に通電しておくことが可能である。この場合は、面状発熱体22に定着ベルト21全体を保温させておく程度の通電を行う。
【0042】
ここで、定着装置20では、加圧ローラ31の回転駆動に伴って定着ベルト21が回転すると、構成部品の寸法のばらつき等により定着ベルト21では軸方向への寄りが発生する。このとき、定着ベルト21の軸方向端部がフランジ部材30のフランジ面に直接当接するようにすると、回転する定着ベルト21の軸方向端部との摺動によりフランジ部材30のフランジ面が磨耗し、頻繁にフランジ部材30を交換する必要があった。また、フランジ部材30のフランジ面が磨耗すると、そのときに発生する磨耗粉が定着ベルト21の内周部に回り込み、フランジ部材30の円筒部30aに対する摺動抵抗が増加することにより回転トルクが上昇し、定着ベルト21の走行性(回転性)に問題が生じることになった。
【0043】
そこで、発明者らは、図9(a)に示すように、フランジ部材30の円筒部30aに、定着ベルト21の軸方向端部とフランジ面との間にドーナツ盤形状(内径部に穴を有する円盤形状)のスリップリング51を挿入することにより、該スリップリング51が回転する定着ベルト21の軸方向端部と当接するようにしてフランジ部材30のフランジ面の磨耗の防止を図った。なおこの場合、定着ベルト21の回転に伴ってスリップリング51が回転するようになり、スリップリング51の定着ベルト21とは反対側の盤面がフランジ部材30のフランジ面30fと摺動して磨耗するようになる。また、このときの各部材の回転中心における径の大小関係は、円筒部30aの外径OD30a≦スリップリング51の内径ID51≦定着ベルト21の内径ID21<定着ベルト21の外径OD21<スリップリング51の外径OD51であった(図9(b))。
【0044】
しかしながら、この場合にも定着ベルト21の回転トルクが上昇し、定着ベルト21の走行性(回転性)に問題が生じた。
発明者らは、その原因を調査したところ、スリップリング51から発生する磨耗粉がスリップリング51の内径部を通って定着ベルト21側に回り込み、該磨耗粉が定着ベルト21の内周部に入り込んでフランジ部材30の円筒部30aに対する定着ベルト21の摺動抵抗を増加させていることが分かった。また、前述のような各部材の回転中心における径の大小関係である場合に、スリップリング51の磨耗粉が定着ベルト21側に回り込みやすいことも分かった。
【0045】
発明者らは、定着ベルト21の回転トルクの上昇を抑えるべく、これらの知見を基に鋭意検討を行い、本発明を成すに至った。
図10に、その要部構成例を示す。
本発明の定着装置20は、図10に示すように、図1の構成と比較すると、フランジ部材50A及びスリップリング51を備えた点が異なり、それ以外は図1の構成と同じである。すなわち、定着装置20は、回転可能な無端状ベルトの定着部材(定着ベルト21)と、前記定着部材の外周側に該定着部材と圧接可能に配置される加圧部材(不図示、図1における加圧ローラ31)と、前記定着部材の内周側に配置され、前記定着部材を介して前記加圧部材と圧接してニップ部を形成するニップ形成部材(不図示、図1におけるニップ形成部材26)と、前記定着部材を直接または間接的に加熱する加熱手段(不図示、図1における面状発熱体22)と、当該定着装置のフレーム(側板42)に固設されるフランジ部(フランジ部50b)、及び該フランジ部のフランジ面に立設され前記定着部材の軸方向端部の内周部に挿入されて該定着部材を直接(または間接的)に回転可能に保持する円筒部(円筒部50a)を有するフランジ部材(フランジ部材50A)と、を備え、フランジ部材50Aにおける円筒部50aは、その外周面の円周方向に溝50mが形成されてなり、ドーナツ盤形状であって、前記溝50mにその内径部が回転可能に嵌め込まれ、盤面に前記定着部材の軸方向端部が当接するスリップリング51を有しており、前記スリップリング51の回転軸(51j、ここでは円筒部50aの円の中心であって定着ベルト21の回転中心Oでもある。)を中心として、次式(1)を満足することを特徴とするものである。
【0046】
前記スリップリング51の内径ID51<前記フランジ部材50Aの円筒部50aの最小外寸(ここでは外径OD50a)<前記定着部材の走行軌跡(ここでは真円形の軌跡)における最大外寸(ここでは外径OD21)<前記スリップリング51の外径OD51 ・・・(1)
【0047】
ここで、フランジ部材50Aは、スリップリング51の定着ベルト21とは反対側の盤面と当接するフランジ面50fを有するフランジ部50bと、フランジ部50bのフランジ面50fに立設された円筒部50aと、を有しており、フランジ部50bが定着装置20の側板42に固設され、円筒部50aが定着ベルト21の軸方向端部の内径部に挿入されている。また、円筒部50aの外形(断面形状)は、ニップ形成部材26に対応する箇所を除き、略円形の形状を有しており、その外径は定着ベルト21の内径と同じかわずかに小さくなっている。これにより、定着ベルト21の軸方向両端部の内径部に挿入された円筒部50aは、定着ベルト21を回転可能な状態で略円形状に保持する。
【0048】
また、円筒部50aにおいて、フランジ面50f側の外周面の円周方向に溝50mが形成されている。詳しくは、溝50mは、円筒部50aのニップ形成部材26に対応する箇所を除く外周面全周において、その外径(溝50mの底面部分の径)が円筒部50aの外径OD50aよりも小さくなるように形成されている。
【0049】
溝50mの幅は、スリップリング51の内径部の肉厚よりもわずかに大きい程度がよい。これにより、スリップリング51の内径部が溝50mに嵌め込まれ、該スリップリング51に回転する定着ベルト21の軸方向端部が当接したときにスリップリング51ががたつきなく回転することができる。
【0050】
また、溝50mの深さは、例えば0.7〜1.5mm程度でよい。これにより、フランジ面50fとの摺動により発生したスリップリング51の磨耗粉がこの溝50mを乗り越えて定着ベルト21の内周部に入り込むことを防ぐことができる。
【0051】
スリップリング51は、ドーナツ盤形状(内径部に穴を有する円盤形状、あるいはリング形状)の部材であり、内径部が溝50mに回転可能に嵌め込まれてフランジ部材50Aの円筒部50aにおいて、定着ベルト21の軸方向端部とフランジ面50fとの間に配置される。
【0052】
また、スリップリング51は、盤面がフランジ部材50Aのフランジ面50fと摺動した際に、フランジ面50fよりも該盤面側が磨耗しやすい材料からなる。スリップリング51が優先的に磨耗することにより、フランジ部材50Aの磨耗を防止することができる。
【0053】
このような構成において、加圧ローラ31の回転駆動に伴って定着ベルト21が回転すると、定着ベルト21が軸方向のうちいずれかの方向に片寄りするが、スリップリング51の回転軸51jを中心とするフランジ部材50Aの円筒部50aの外径、スリップリング51の内径及び外径、定着ベルト21の走行軌跡の外径が前記式(1)の関係(スリップリング51の内径ID51<フランジ部材50Aの円筒部50aの外径OD50a(=定着ベルト21の走行軌跡の内径)<定着ベルト21の走行軌跡の外径OD21<スリップリング51の外径OD51の関係)を満足しているので、定着ベルト21の軸方向端部は必ずスリップリング51の盤面に当接し、フランジ面50fの磨耗を防止することができる。
【0054】
また、スリップリング51に定着ベルト21の軸方向端部が当接し、該スリップリング51がフランジ面50f側に押された状態で定着ベルト21及びスリップリング51が回転するようになる。このとき、前記スリップリング51がフランジ面50fと摺動することにより磨耗して、磨耗粉が発生するが、フランジ部材50Aの円筒部50aに溝50mが設けられ、スリップリング51の回転軸51jを中心とするフランジ部材50Aの円筒部50aの外径、スリップリング51の内径及び外径、定着ベルト21の走行軌跡の外径が前記式(1)の関係(スリップリング51の内径ID51(≒溝50mの底面部分の径)<フランジ部材50Aの円筒部50aの外径OD50aの関係)を満足しているので、スリップリング51の磨耗粉がスリップリング51の内径部に入ったとしても溝50mの底面と円筒部50aの外周面との段差により、前記磨耗粉が定着ベルト21の内周部側に移動することを防止し、該磨耗粉を定着ベルト21から離れた部分に落とすことができ、定着ベルト21の回転トルクの上昇を抑えることができる。
【0055】
また、フランジ部50bにおけるフランジ面50fの最大外寸がスリップリング51の外径OD51よりも小であることが好ましい。これにより、スリップリング51の外周部がフランジ面50fの外周部よりも大きいので、フランジ面50fに対向するスリップリング51の盤面で発生した磨耗粉がスリップリング51の外周部を乗り越えて定着ベルト21側に回り込むことがなくなり、スリップリング51の回転に伴い該磨耗粉を装置の軸方向外側に摺り出すことができる。
【0056】
図11に、図10に示す要部構成の変形例(1)を示す。
ここでは、図10と比較すると、スリップリング51’とフランジ面50f’の形状が異なっており、それ以外は図10と同じ構成である。詳しくは、図11に示すように、スリップリング51’におけるフランジ面50f’側の盤面はその外周に向かうにつれて軸方向において定着ベルト21から離れる側に傾斜する傾斜面となっており(すなわちスリップリング51’の厚みが徐々に厚くなっており)、フランジ面50f’は、スリップリング51’の盤面の傾斜に沿った傾斜面となっている。
これにより、スリップリング51’の回転に伴うスリップリング51’の磨耗粉を装置の軸方向外側に摺り出す効果をより高めることができる。
【0057】
図12に、図10に示す要部構成の変形例(2)を示す。
ここでは、図10と比較すると、スリップリング51とフランジ面50f’との間に、スリップリング51から発生する磨耗粉を貯蔵するスペース52を有する点が異なっており、それ以外は図10と同じ構成である。詳しくは、図12に示すように、フランジ面50f’を外周側に向かうにつれて軸方向において定着ベルト21から離れる側に傾斜する傾斜面とすることにより、スリップリング51とフランジ面50f’との間にスペース52を設けている。
これにより、スリップリング51から発生する磨耗粉をスペース52に一時的に貯蔵しながら、スリップリング51の回転により磨耗粉を少しずつ装置の軸方向外側に摺り出すようにすることができる。
【0058】
ところで、前記式(1)の関係を満足する定着装置20において、スリップリング51(51’)を回転可能に溝50mに嵌め込むためには、つぎの方法1,2によればよい。
【0059】
(方法1)
図13に示すように、スリップリング51(51’)について、盤面に外周から内径部に連通したスリット51sを設ける。これにより、スリット51sの部分をフランジ部材50Aの溝50mに当て、スリップリング51(51’)の盤面を撓ませることにより、スリット51sを広げた状態で溝50mの外周部を通すことができるようになり、スリップリング51(51’)の内径部を溝50mに嵌め込むことが可能となる。
【0060】
(方法2)
図14に示すように、フランジ部材50Aの円筒部50aのうち、定着ベルト21の軸方向端部の内径部に挿入される部分を円筒形状の別部材501で形成し、該別部材501をフランジ部材50Aのフランジ面に立設した小径円筒部502に装着することにより溝50mが形成される構成とする。
【0061】
これにより、まずスリップリング51(51’)の内径部を小径円筒部502に通し、ついで別部材501を小径円筒部502に取り付けることにより、溝50mにスリップリング51(51’)が嵌め込まれた構成とすることができる。
【0062】
なお、別部材501の小径円筒部502への装着は、小径円筒部502の先端外周部に別部材501の内周部を嵌め込むようにしてもよいし、締結部材等で両者の当接部を固定するようにしてもよい。
【0063】
(構成例2)
ところで、図1の定着装置20では、回転時はニップ部で加圧ローラ31に引っ張られることから、ニップ部の上流側の定着ベルト21は張力が付与された張り側となり、定着ベルト21の内周面は発熱体支持部材25に圧接した状態で面状発熱体22と摺動している。一方で、ニップ部の下流側では定着ベルト21に張力は作用しておらず弛んだ状態となっており、この状態のまま装置の高速化を図ろうとすると、ニップ部の下流側の定着ベルト21の弛む程度がひどくなり、定着ベルト21の回転走行安定性に支障が出てくることになる。
【0064】
そこで、本発明の定着装置20において、定着ベルト21の内周側であって少なくとも前記ニップ部下流側で、該定着ベルト21の回転状態を支持する回転支持部材を備えることが好ましい。
【0065】
図15は、本発明に係る定着装置の構成例2を示す断面図である。
図15に示す定着装置20は、基本的構成が図1に示すものと同じであるが、定着ベルト21の内周側に設けられる円筒形状の回転支持部材27と、回転支持部材27の内周側であってニップ部下流側に配置されるようにコア保持部材28のH型外面に断熱支持部材29と、を備える点で相違する。
【0066】
ここで、回転支持部材27は、例えば厚さ0.1〜1mmの鉄、ステンレス等の薄肉金属からなる円筒形状のものであり、その外径が定着ベルト21の内径よりも直径で0.5〜1mm程度小さいものとなっている。また、回転支持部材27の外周面においてニップ部側が軸方向に切断されて開口しており、その端部がコア保持部材28側に折り込まれて、ニップ部に接触しないようになっている。また、回転支持部材27の軸方向両端部の内径部にフランジ部材50Aの円筒部50aが挿入され、該回転支持部材27の外形(断面形状)は円筒部50aの外形に沿って略円形状に保持される。この場合も、円筒部50aの円の中心が定着ベルト21の回転中心Oとなる。
【0067】
断熱支持部材29は、ニップ部出側で、回転支持部材27を介して定着ベルト21の熱に耐えるだけの耐熱性と、定着ベルト21と接触する回転支持部材27からの熱流出(損失)を防ぐ断熱性と、回転走行する定着ベルト21が回転支持部材27に接触した際に変形することがないように回転支持部材27を支持するだけの強度と、を有するものであり、発熱体支持部材25と同じポリイミド樹脂の発泡成形体であることが好ましい。
【0068】
また、回転支持部材27は、図16に示すように、ニップ部の上流側の一定領域の外周面が除去されて開口部27aが設けられている。これにより、図17に示すように、定着ベルト21の内部機構部を構成した場合に、開口部27aから面状発熱体22の全面が露出するようになり、該面状発熱体22が定着ベルト21の内周面に当接して配置されるようになる。
【0069】
これにより、図15に示した構成例2の定着装置20は、構成例1の定着装置20(図1)と同様に、省エネを図りつつウォームアップ時間やファーストプリント時間を短くすることができる。また、面状発熱体22における発熱シート22sは樹脂ベースのシートであるため、加圧ローラ31の回転、振動に起因する応力が発熱シート22sに繰り返し作用して、発熱シート22sの屈曲が繰り返し行われても疲労破壊することがなく、長時間の運転が可能である。また、面状発熱体22において、定着ベルト21の軸方向の異なる発熱部位で発熱することにより、通紙する記録媒体Pのサイズに対応して効率的な温度制御を行うことが可能である。これに加えて、回転支持部材27(必要に応じて断熱支持部材29)を設けることにより、定着ベルト21の回転走行安定性を向上させることができ、高速化を図ること可能となる。また、回転支持部材27において定着ベルト21の軸方向への熱伝導により、定着ベルト21の軸方向の温度均一化を補助的に行うことができるので、より高速の装置へ対応することが可能となる。
【0070】
図18に、構成例2におけるフランジ部材付近の要部構成を示す。
本発明の定着装置20は、図18に示すように、図10の構成と比較すると、前述の通り、フランジ部材50Aの円筒部50aが回転支持部材27の軸方向端部を支持しており、回転支持部材27が定着ベルト21の内周部を支持している点が異なり、それ以外は図10の構成と同じである。すなわち、定着装置20は、回転可能な無端状ベルトの定着ベルト21と、定着ベルト21の外周側に該定着ベルト21と圧接可能に配置される加圧ローラ31と、定着ベルト21の内周側に配置され、定着ベルト21を介して加圧ローラ31と圧接してニップ部を形成するニップ形成部材26と、定着ベルト21を加熱する面状発熱体22と、定着ベルト21の内周側に配置され、外周面が該定着ベルト21の回転を支持する略円筒状の回転支持部材27と、当該定着装置のフレーム(側板42)に固設されるフランジ部50b、及び該フランジ部50bのフランジ面50fに立設され回転支持部材27の軸方向端部の内周部に挿入されて定着ベルト21を回転支持部材27を介して間接的に回転可能に保持する円筒部50aを有するフランジ部材50Aと、を備え、フランジ部材50Aにおける円筒部50aは、その外周面の円周方向に溝50mが形成されてなり、ドーナツ盤形状であって、前記溝50mにその内径部が回転可能に嵌め込まれ、盤面に定着ベルト21の軸方向端部が当接するスリップリング51を有しており(図18(a))、前記スリップリング51の回転軸(51j、ここでは円筒部50aの円の中心であって定着ベルト21の回転中心Oでもある。)を中心として、次式(1)を満足することを特徴とするものである(図18(b))。
【0071】
スリップリング51の内径ID51<フランジ部材50Aの円筒部50aの最小外寸(ここでは外径OD50a)<定着ベルト21の走行軌跡(ここでは真円形の軌跡)における最大外寸(ここでは外径OD21)<スリップリング51の外径OD51 ・・・(1)
【0072】
このような構成においても、加圧ローラ31の回転駆動に伴って定着ベルト21が回転すると、定着ベルト21が軸方向のうちいずれかの方向に片寄りするが、スリップリング51の回転軸51jを中心とするフランジ部材50Aの円筒部50aの外径、スリップリング51の内径及び外径、定着ベルト21の走行軌跡の外径が前記式(1)の関係(スリップリング51の内径ID51<フランジ部材50Aの円筒部50aの外径OD50a(=定着ベルト21の走行軌跡の内径)<定着ベルト21の走行軌跡の外径OD21<スリップリング51の外径OD51の関係)を満足しているので、定着ベルト21の軸方向端部は必ずスリップリング51の盤面に当接し、フランジ面50fの磨耗を防止することができる。
【0073】
また、スリップリング51に定着ベルト21の軸方向端部が当接し、該スリップリング51がフランジ面50f側に押された状態で定着ベルト21及びスリップリング51が回転するようになる。このとき、前記スリップリング51がフランジ面50fと摺動することにより磨耗して、磨耗粉が発生するが、フランジ部材50Aの円筒部50aに溝50mが設けられ、スリップリング51の回転軸51jを中心とするフランジ部材50Aの円筒部50aの外径、スリップリング51の内径及び外径、定着ベルト21の走行軌跡の外径が前記式(1)の関係(スリップリング51の内径ID51(≒溝50mの底面部分の径)<フランジ部材50Aの円筒部50aの外径OD50aの関係)を満足しているので、スリップリング51の磨耗粉がスリップリング51の内径部に入ったとしても溝50mの底面と円筒部50aの外周面及び回転支持部材27の外周面との段差により、前記磨耗粉が定着ベルト21の内周部側に移動することを防止し、該磨耗粉を定着ベルト21から離れた部分に落とすことができ、定着ベルト21の回転トルクの上昇を抑えることができる。
なお、本構成例においても、図11〜図14に示す応用例を適用することができる。
【0074】
(構成例3)
次に、本発明に係る定着装置20の構成例3について説明する。ここでは、図19〜図29に、本発明の前提となる基本構成を示しており、定着ベルト21の走行軌跡が真円でない構成となっている。
【0075】
まず図19に示すように、定着装置20は、回転可能で可撓性を有する無端状の定着ベルト21と、定着ベルト21の径方向外側に設けられるとともに定着ベルト21を径方向内側に押圧する加圧ローラ31と、定着ベルト21の径方向内側に設けられるとともに定着ベルト21を挟んで加圧ローラ31と互いに押圧するニップ形成部材26と、定着ベルト21および加圧ローラ31の間にトナー像Tを担持した記録媒体Pを挟み込むニップ部Nと、定着ベルト21の内周側に設けられるとともに定着ベルト21を回転可能に支持する管状(略円筒状、パイプ形状)の支持部材(加熱部材ともいう)60と、支持部材60を加熱して定着ベルト21に伝熱させる加熱手段22hと、支持部材60を画像形成装置1に支持させる補強部材23と、定着装置20の長手方向の両端部に設けられたフランジ部材50Bと、両端部に設けられたフランジ部材50Bをそれぞれ支持する図24に示すフレームである側板42とを備えている。
【0076】
定着ベルト21は、内径30mmの筒状で、厚さ30〜50μmの鉄製の基材21aと、その表面側に形成された離型層21bと、基材21aの裏面側に形成された塗膜21cとを備えている。また、基材21aと離型層21bとの間には、厚さ100〜300μmのシリコーンゴムからなる弾性層が設けられている。なお、定着ベルト21の直径を15〜120mm、特に25mmとしてもよい。
【0077】
基材21aを形成する材料としては、鉄に限られず、コバルト、ニッケル、ステンレス、あるいはこれらの合金などの伝熱性のよい金属材料、もしくはポリイミドなどの合成樹脂材料を用いることができる。
【0078】
離型層21bは、記録媒体P上のトナー像Tに対して離型性を高めるために設けられている。離型層21bは、厚さ5μm〜50μmのPFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)製としている。離型層21bを形成する材料としては、PFAに限られず、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)などを用いることができる。離型層21bを設けることで、トナー像Tに対する離型性が担保される。
【0079】
塗膜21cは、支持部材60との摩擦抵抗を小さくするために設けられている。塗膜21cは、テフロン(登録商標)のコーティングとしている。塗膜を形成する材料としては、テフロン(登録商標)に限られず、メッキ、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、ガラスコートなどの表面コートを用いることができる。
【0080】
支持部材60は、図20〜図22に示すように、厚さ0.1〜1mmの鉄などの金属製の断面略C字形状のパイプとされている。支持部材60は、ニップ形成部材26を収容してニップ部Nの一部を形成するニップ凹部61と、ニップ凹部61の定着ベルト21の回転方向上流側に連続して設けられる導入領域62と、この導入領域62に連続して設けられる加熱領域63と、ニップ凹部61の定着ベルト21の回転方向下流側に形成される分離領域64と、この分離領域64に連続して設けられる平坦な逃げ領域65と、この逃げ領域65の回転方向下流側に連続して形成されるとともに加熱領域63に連続する中間領域66とを備えている。支持部材60はプレス成型により形成される。
【0081】
加熱領域63は、ニップ凹部61の回転方向上流側から連続する半径14.5mmの断面円弧形状であって、加熱手段22hにより加熱される領域としている。また、加熱領域63の円弧中心63aは、ニップ形成部材26の記録媒体搬送方向(図19中、白抜き矢印で示す)の中心線26cに対して記録媒体搬送方向上流側に3.4mm離隔するようにしている。これにより、定着ベルト21は記録媒体搬送方向下流側に引っ張られることから、定着ベルト21が加熱領域63から離れ難くなる。また、支持部材60の内面、特に加熱領域63は黒色塗装されている。これにより、加熱手段22hからの輻射熱の輻射率が向上する。
【0082】
導入領域62は、断面形状として加熱領域63の円弧中心63aからの距離が加熱領域63の半径14.5mmより小さくなるようにして形成されている。すなわち、導入領域62は曲率の小さい平坦な形状であって、ニップ凹部61と加熱領域63とを連続するようにしている。これにより、ニップ部Nの近傍における定着ベルト21の支持部材60からの浮き上がりを抑制できる。
【0083】
分離領域64は、断面形状として加熱領域63の半径14.5mmよりも小さい半径13mmの円弧形状であり、ニップ部Nを抜けた記録媒体Pから定着ベルト21を急激に引き離すことで記録媒体Pが定着ベルト21から分離される領域となっている。また、分離領域64の円弧中心64aは、加熱領域63の円弧中心63aに対して記録媒体搬送方向下流側に2.7mmかつニップ部N側に2mm離隔するようにしている。これにより、加熱領域63と分離領域64との各円弧中心63a、64aを結ぶ最大外径18が支持部材60の最大外径となるとともに、この最大外径18は30.86mmとなって定着ベルト21の内径30mmより大きくなる。これにより、定着ベルト21は加熱領域63と分離領域64との間で引っ張られるようになり、定着ベルト21が加熱領域63から離れ難くなる。さらに、ニップ形成部材26を組み付けた支持部材60の外周長をL1、定着ベルト21の内周長をL2とすると、周長差L2−L1が0.7mmであるようにしている。
【0084】
中間領域66は、断面形状として加熱領域63と同一半径および同一中心63aの円弧形状となっている。これにより、加熱領域63と中間領域66とを同じ曲率で形成することができるので、支持部材60の加工が容易に行われる。
【0085】
逃げ領域65は、分離領域64の円弧中心64aから記録媒体搬送方向下流側に11.5mm離れた平面で、中間領域66と分離領域64との間に形成されている。これにより、逃げ領域65において支持部材60と定着ベルト21とが非接触になるので、摩擦抵抗が低減される。
【0086】
図19に示すように、支持部材60の外面は塗膜60aでコートされている。塗膜60aは、定着ベルト21との摩擦抵抗を小さくするために設けられている。塗膜60aは、テフロン(登録商標)のコーティングとしている。塗膜60aを形成する材料としては、テフロン(登録商標)に限られず、メッキ、DLC、ガラスコートなどの表面コートを用いることができる。また、支持部材60と定着ベルト21との間にはグリスが塗布されている。これにより、支持部材60と定着ベルト21との摩擦抵抗が小さくなる。
【0087】
図20に示すように、ニップ凹部61は、支持部材60の内側に向けて平行に延びる一対の側壁67と、各側壁67の先端を結ぶ底壁68と、底壁68に形成された開口69とを備えている。ニップ凹部61には、ニップ凹部61の外側、すなわち支持部材60の内側に設けられた略コ字形状の外保持部材70と、ニップ凹部61の内側、すなわち支持部材60の外側に設けられた略コ字形状の内保持部材71とが装着されている。これら外保持部材70と内保持部材71とは、支持部材60のニップ凹部61の側壁67および底壁68を挟持してねじ止めされている。これら外保持部材70と内保持部材71との装着により、ニップ凹部61の形状が維持される。また、外保持部材70の長手方向の両端部には取付部70aが形成されている。取付部70aは、フランジ部材50Bにより支持部材60に対して固定されている。
【0088】
図19に示すように、ニップ形成部材26は、内保持部材71の内側に設けられ、フランジ部材50Bにより支持部材60に対して固定されている。ニップ形成部材26は、LCP(液晶ポリマー)や、ポリイミド樹脂、PAI(ポリアミドイミド樹脂)などの耐熱性を有する樹脂部材であり、支持部材60の長手方向に沿った略角棒状としている。このニップ形成部材26は、加圧ローラ31に対向する本体26aと、本体26aの背面で補強部材23に当接して支持される支持突起26bと、本体26aの周囲に設けられ定着ベルト21との摩擦抵抗を低減する膜部材(不図示)とを備えている。
【0089】
本体26aが加圧ローラ31により押圧された際は、支持突起26bが補強部材23に当接して支持されることで、加圧ローラ31により押し込まれることが防止される。
このニップ形成部材26の加圧ローラ31側の面は平面状に形成されている。なお、加圧ローラ31の表面に沿うような凹形状としても良い。
【0090】
図19に示すように、補強部材23は、支持部材60の長手方向に沿った金属製の略角棒状で、高い剛性を有する本体23aと、ニップ形成部材26の支持突起26bに当接する受け突起23bと、加熱手段22hに対向する反射板23rとを備えている。受け突起23bは、ニップ形成部材26の支持突起26bに当接し、加圧ローラ31により押圧されたニップ形成部材26を背後から支持する。反射板23rは、加熱手段22hからの輻射熱を反射して、補強部材23の本体23aに逃げてしまう熱量を低減している。補強部材23は、フランジ部材50Bにより支持部材60に対して固定されている。
【0091】
加熱手段22hは、支持部材60の長手方向に沿って内部に設けられる線状発熱体であり、本実施の形態ではハロゲンヒータとしている。加熱手段22hは、加熱領域63の内側に設置されている。このため、加熱領域63は、加熱手段22hからの熱が補強部材23に遮られずに輻射される輻射領域となる。また、加熱領域63の適宜位置には、定着ベルト21の温度を検出する温度センサが設けられている。
【0092】
図23に示すように、フランジ部材50Bは、支持部材60の軸方向両端部の内径部に挿入され支持部材60の端部近傍の形状を保持する円筒部50aと、定着ベルト21の軸方向への移動を規制するフランジ面を有する鍔部50cと、当該定着装置20の側板42に固設されるフランジ部50bと、からなり、ニップ形成部材26、外保持部材70、補強部材23、加熱手段22hをそれぞれ保持して固定している。
【0093】
なお、支持部材60は、前述のように、加熱領域63において定着ベルト21と密着して定着ベルト21を効率的に加熱し、分離領域64において記録媒体Pの分離性を確保する等、所定の機能を得るために所定の断面形状としているが、支持部材60は薄肉の金属パイプであるため、加工上の形状のばらつきがあったり、定着ベルト21の摺動を受けて変形したりして所期の機能を損なう傾向にある。そこで、フランジ部材50Bの円筒部50aの外周面が支持部材60の端部近傍の形状を前述したような形状となるように保持し、所期の機能が安定して得られるようにしている(詳細は後述)。そのため、円筒部50aの外周面と支持部材60の端部の内周面とのクリアランスは、0.15mm以下となっている。
【0094】
加圧ローラ31は、外径が30mmのローラであって、金属製のパイプ状の中心軸32と、その周囲に設けられた耐熱性のシリコーンゴムからなる弾性層33と、表面に形成されたPFA製の離型層34とを備えている。弾性層33は、厚さ2〜4mmとなっている。離型層34は、厚さ50μmのPFAチューブを被覆して形成されている。また、中心軸32には必要に応じてハロゲンヒータなどの発熱体を内蔵してもよい。
【0095】
また、加圧ローラ31は、図示しない加圧機構によりニップ形成部材26に向けて定着ベルト21を介して押し当てられている。加圧ローラ31が定着ベルト21を介してニップ形成部材26に押圧されることにより、ニップ部Nが形成される。加圧ローラ31は、定着ベルト21を押圧した状態で図示しない駆動機構により回転される(図19中、矢印方向)。この回転に伴って、定着ベルト21が回転するとともに、ニップ部Nで記録媒体Pが加圧されつつ搬送される。
【0096】
次に、作用について説明する。
ユーザが操作パネルあるいはコンピュータなどを操作して印刷要求を出す。この印刷要求により画像形成装置が出力信号を受けると、駆動機構によって加圧ローラ31が回転され、定着ベルト21も連れ回りする。
【0097】
ここで、加熱領域63の円弧中心63aはニップ形成部材26の記録媒体搬送方向の中心線に対して記録媒体搬送方向上流側に位置するので、定着ベルト21は記録媒体搬送方向下流側、すなわち加熱領域63と反対側に引っ張られることから、加熱領域63における支持部材60と定着ベルト21との密着性が高まるとともに、定着ベルト21が支持部材60から離れ難くなる。また、加熱領域63は断面形状として定着ベルト21の半径15mmと略同一の半径14.5mmの円弧形状であるので、加熱領域63では定着ベルト21に変形力が殆ど作用することなく支持部材60に密着するようになり、支持部材60と定着ベルト21との密着性が高まる。さらに、加熱領域63と分離領域64との間の最大外径18の30.86mmが定着ベルト21の内径30mmより大きいので、定着ベルト21は加熱領域63と分離領域64との間で引っ張られるようになり、加熱領域63における支持部材60と定着ベルト21との密着性が高まるとともに、定着ベルト21が支持部材60から離れ難くなる。これらの理由から、加熱領域63において定着ベルト21が支持部材60に密着して摺動するようになる。
【0098】
一方、加圧ローラ31の回転と同期して、加熱手段22hが通電されて発熱する。加熱手段22hの熱は加熱領域63に輻射されて、加熱領域63が急激に加熱される。なお、加圧ローラ31の回転と加熱手段22hによる加熱は必ずしも同時に開始する必要はなく、適宜時間差を設けても良い。そして、温度センサにより定着ベルト21の温度が検出され、ニップ部Nが定着に必要な温度まで昇温された後、温度を保持したまま記録媒体Pの通紙が開始される。ニップ部Nを通過した記録媒体Pでは、記録媒体P上のトナー像Tがニップ部Nの圧力と熱により定着される。
【0099】
以上のように、本実施の形態に係る画像形成装置によれば、加熱領域63における支持部材60と定着ベルト21との密着性がより高まるとともに定着ベルト21が支持部材60から離れ難くなるので、支持部材60から定着ベルト21への熱伝導率が高くなって、支持部材60が過熱することを抑制して、塗膜60a、21cの劣化を防止できるようになる。また、支持部材60と定着ベルト21との密着性がより高まることにより、ウォームアップ時間やファーストプリント時間を短縮することができ、省エネ性を向上することができる。
【0100】
そして、本実施の形態によれば、分離領域64は断面形状として加熱領域63の半径よりも小さい半径の円弧形状であるので、定着ベルト21が記録媒体Pから急激に引き離される。よって、ニップ部Nを通過した後の記録媒体Pでの定着ベルト21からの分離性を向上することができる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、ニップ形成部材26を組み付けた支持部材60の外周長をL1、定着ベルト21の内周長をL2とすると、周長差L2−L1が0.5〜0.9mmであるようにしている。ここで、周長差が0.9mmを超える場合は、定着ベルト21は支持部材60に対して緩く巻かれるので、定着ベルト21が浮き上がって支持部材60の一部に過熱部分が生じて塗膜の耐久性が劣化しやすくなる。また、周長差が0.5mm未満の場合は、定着ベルト21は支持部材60に対してきつく巻かれるので、定着ベルト21と支持部材60との摩擦力が大きくなって定着ベルト21が回転し難くなり、加圧ローラ31および記録媒体Pが定着ベルト21に対してスリップしやすくなる。このため、本実施の形態のように周長差L2−L1が0.5〜0.9mmであると、定着ベルト21が支持部材60から浮き上がることが無く支持部材60の過熱を防止できるとともに、定着ベルト21の支持部材60への巻き付きがきつすぎずに記録媒体Pのスリップを抑制できるようになる。
【0102】
また、本実施の形態によれば、定着ベルト21は加熱領域63と分離領域64との間で引っ張られるので、定着ベルト21の停止時であっても加熱領域63において支持部材60と定着ベルト21との密着性が高まる。これにより、停止していた定着装置20を起動して定着ベルト21を静止加熱する際に、支持部材60を過熱することなく定着ベルト21を効率的に加熱できるようになる。
【0103】
また、本実施の形態によれば、加熱領域63とニップ形成部材26の間に、断面形状として加熱領域63の円弧中心63aからの距離が加熱領域63の半径14.5mmより小さい導入領域62が設けられているので、導入領域62において定着ベルト21が支持部材60の外周面から浮き上がってしまうのを抑制することができ、支持部材60が過熱することを防止できるようになる。
【0104】
そして、本実施の形態によれば、中間領域66は、断面形状として加熱領域63と同一半径および同一中心63aの円弧形状であるので、加熱領域63と中間領域66とを同じ曲率で形成することができる。したがって、支持部材60の加工を容易にすることができ、製造コストを低減することができる。
【0105】
また、本実施の形態によれば、中間領域66と分離領域64との間に、平坦な逃げ領域65が設けられているので、逃げ領域65において支持部材60と定着ベルト21とが非接触となり、これらの間の摩擦抵抗が減少して定着ベルト21と記録媒体Pとの間の摩擦抵抗より更に小さくなり、定着ベルト21に対する記録媒体Pのスリップを抑制することができる。また、支持部材60を形成するための材料を短くすることができるので、材料コストを低減することができる。
【0106】
さらに、本実施の形態によれば、定着ベルト21の内面と支持部材60の外面とがいずれも塗膜21c、60aでコートされているとともに、これらの間にグリスが塗布されているので、支持部材60と定着ベルト21との間の摺動部分の摩擦抵抗が低減して定着ベルト21と記録媒体Pとの間の摩擦抵抗より小さくなるので、定着ベルト21に対する記録媒体Pのスリップを抑制することができる。
【0107】
さらに、本実施の形態に係る画像形成装置においては、本発明における定着装置20の加熱手段22hをハロゲンヒータなどの線状発熱体としたが、これに限定されるものではなく、例えば、図19に想像線で示すように、加熱手段22hに代えて支持部材60の長手方向に沿って内周面に接して設けられる面状発熱体22を設けてもよい。
【0108】
面状発熱体22を適用するとともに線状発熱体を省略することで、加熱領域63は面状発熱体22からの熱が伝導される接触領域となる。これによれば、面状発熱体22は支持部材60を効率よく加熱することができるので、ウォームアップ時間やファーストプリント時間を短縮することができ、省エネ性を向上させることができる。
【0109】
あるいは、加熱手段22hは、支持部材60の外部または内部に設けられて支持部材60に対して誘導加熱を行う誘導コイルであるようにしてもよい。この場合、加熱領域63は、加熱手段22hに対向して誘導加熱される対向領域となる。これによれば、誘導加熱では支持部材60以外は直接加熱されないので、線状発熱体のように支持部材60以外に例えば補強部材23まで加熱されることはなく、支持部材60を効率的に加熱することができる。
【0110】
ところで、前述のように、フランジ部材50Bは、支持部材60の軸方向両端部の内径部に挿入され固定されるとともに、ニップ形成部材26、外保持部材70、補強部材23、加熱手段22hをそれぞれ保持し、さらに支持部材60の外周上に定着ベルト21が回転可能に装着されている。これらの部材を組み立てたものは、これらの部材を保持したまま、定着装置20の側板42に着脱可能であり、定着ベルトユニットと称する。
【0111】
ここで、支持部材60は、前述のように、加熱領域63において定着ベルト21と密着して定着ベルト21を効率的に加熱し、分離領域64において記録媒体Pの分離性を確保する等、所定の機能を得るために所定の断面形状としているが、支持部材60は薄肉の金属板(例えば、厚さ0.1mmのステンレス材)をプレス加工して製作しているため、外形寸法を高精度に維持することが困難であった。また、支持部材60の寸法精度がばらつくことで性能にもバラツキが生じていた。特に、図22における最大外径18の寸法30.86mmがある一定以上小さくなると、ニップ部下流側で定着ベルト21と支持部材60が非接触状態となって定着ベルト21の挙動が不安定となり、記録媒体Pの分離性悪化や定着ベルト21の局部的な浮きが発生しやすい状態となっていた。
また、定着ベルト21が回転するとその回転につられて摺動を受ける支持部材60の位置が暴れる傾向にあった。
【0112】
そこで、支持部材60の軸方向両端部を支持するフランジ部材50Bにより、支持部材60の形状や定着ベルト駆動時の支持部材60の挙動、引いては定着ベルト21の形状を安定させるべく、フランジ部材50Bの円筒部50aを中心とした形状について工夫を施している。
【0113】
図27は、本発明の定着装置20に用いられるフランジ部材50Bの構成を示す斜視図である。なお、溝50m及びスリップリング51は省略している。
フランジ部材50Bは、図27に示すように、支持部材60の軸方向端部の内径部に挿入され支持部材60の端部近傍の形状を保持する円筒部50aと、定着装置20の側板42に固設されるフランジ部50bと、組み付け時の支持部材60の軸方向端部の突き当ての基準面となるとともに装置運転時の定着ベルト21の寄りを規制するフランジ面50fを有する鍔部50cと、からなる。
【0114】
円筒部50aは、その円周上の一部に、ニップ形成部材26及び支持部材60のニップ凹部61を収納するための切欠き部50a1を有している。また、ニップ形成部材26と、ニップ凹部61の形状を維持する外保持部材70の取付部70aは、フランジ部50bで保持される。
【0115】
また、円筒部50aは、その外周上であって少なくとも切欠き部50a1のニップ部入口側に隣接する領域Aに支持部材60の軸方向端部近傍を所望の断面形状で保持する形状保持面50a2を有している。この領域Aは、支持部材60において加熱領域63に対応する領域(後述の加熱対応領域63’)である。したがって、形状保持面50a2は、支持部材60の軸方向端部近傍における加熱領域63を前述したような所定の形状に高精度に保持するための外周面である。
また、円筒部50aの軸方向先端部には、支持部材60の軸方向端部の内径部への挿入がより容易になるように面取りが施されている。
【0116】
また、円筒部50aは、その円周上の一部に該円筒部50aの軸方向に延設され、円筒部50aの外周面側に軸方向先端に向かうにつれて円筒中心側に傾斜する傾斜面からなる案内部50dを有する。この案内部50dにより、フランジ部材50Bの円筒部50aを支持部材60の軸方向端部の内径部へ容易に挿入することが可能になる。
【0117】
この案内部50dは、円筒部50aの円周上において形状保持面50a2以外の領域Bに設けられることが好ましい。すなわち、領域Bは、支持部材60において少なくとも逃げ領域65に対応する領域であり、分離領域64及び中間領域66のそれぞれ一部領域まで含めてもよい。これにより、案内部50dは、円筒部50aの円周上において、ニップ部の定着ベルト21回転方向下流側に設けられ、図19において、補強部材23を挟んで加熱手段22hとは反対側の領域に設けられるものとなる。
【0118】
ここで、本構成例では、前述のように、定着ベルト21の内周側に加熱手段22hにより加熱される状態で配置され、外周面が定着ベルト21の内周面と摺接して該定着ベルト21を加熱するとともに定着ベルト21の回転を支持する略円筒状の支持部材60を備えており、この構成において、フランジ部材50Bは、円筒部50aを支持部材60の軸方向端部の内周部に挿入してその外周面で支持部材60の軸方向端部近傍の形状を保持している。
【0119】
このとき、円筒部50aの外周形状(外周面の断面形状)は、少なくとも定着ベルト21が加熱手段22hにより加熱される領域に対応する領域が支持部材60の加熱領域63における円筒内周部分と略同一形状とされていることが好ましく、支持部材60を前述したような理想的な形状及び寸法(図22)に保持するように、該支持部材60の内周側の形状及び寸法と略同一とされていることが好適である。
【0120】
すなわち、フランジ部材50Bにおける円筒部50aの外周面の断面形状として、定着ベルト21が加熱手段22hにより加熱される領域に対応する領域(領域A,加熱対応領域63’)が定着ベルト21の半径に対応した所定半径の円弧形状(本構成例では支持部材60の内周部の半径と略同一半径の円弧形状)であるとともに、該円弧の中心がニップ形成部材26の記録媒体搬送方向の中心線26cに対して記録媒体搬送方向上流側に位置していることを特徴とするものである。
【0121】
また、フランジ部材50Bにおける円筒部50aの外周面の断面形状として、ニップ形成部材26の記録媒体搬送方向の中心線26cに対して、ニップ部入口領域(加熱対応領域63’)の方がニップ部出口領域(分離対応領域64’)よりも円筒直径外側方向に張り出していることが好ましい。
【0122】
また、フランジ部材50Bにおける円筒部50aの外周面の断面形状として、前記ニップ部出口領域(分離対応領域64’)よりも定着ベルト21の回転方向下流側に平坦な逃げ対応領域65’を備えることが好ましい。
【0123】
図28は、フランジ部材50Bの円筒部50aの外周形状に関する具体的構成を示す正面図である。
円筒部50aは、図28に示すように、ニップ凹部61に対応しニップ形成部材26を収容する切欠き部50a1と、切欠き部50a1の定着ベルト21の回転方向上流側に連続して設けられる導入対応領域62’と、この導入対応領域62’に連続して設けられる加熱対応領域63’と、切欠き部50a1の定着ベルト21の回転方向下流側に形成される分離対応領域64’と、この分離対応領域64’に連続して設けられる平坦な逃げ対応領域65’と、この逃げ対応領域65’の回転方向下流側に連続して形成されるとともに加熱対応領域63’に連続する中間対応領域66’とを備えている。
【0124】
加熱対応領域63’は、切欠き部50a1の回転方向上流側から連続する半径R1の断面円弧形状であって、支持部材60が加熱手段22hにより加熱される領域に対応している。また、加熱対応領域63’の円弧中心63a’は、切欠き部50a1の記録媒体搬送方向の中心線26c’(すなわち、ニップ形成部材26の記録媒体搬送方向の中心線26c)に対して記録媒体搬送方向上流側に距離d1だけ離隔するようにしている。これにより、加熱対応領域63’は、支持部材60の軸方向端部近傍において、加熱領域63を適正に支持するようになる。
なお、半径R1は、例えば14.3mmであり、距離d1は、例えば2.7mmである。
【0125】
導入対応領域62’は、断面形状として円弧中心63a’からの距離が半径R1より小さくなるようにして形成されている。すなわち、導入対応領域62’は曲率の小さい平坦な形状であって、支持部材60の軸方向端部近傍において、導入領域62を支持する。
【0126】
分離対応領域64’は、断面形状として加熱対応領域63’の半径R1よりも小さい半径R2の円弧形状であり、支持部材60の分離領域64を支持する。またこのとき、分離対応領域64’は、支持部材60のニップ部出口部分を変形させずに、該ニップ部出口部分が加圧ローラ31に接触しないように支持する。また、分離対応領域64’の円弧中心64a’は、加熱対応領域63’の円弧中心63a’に対して記録媒体搬送方向下流側に距離d2かつ切欠き部50a1(ニップ部N)側に距離d3だけ離隔するようにしている。これにより、加熱対応領域63’と分離対応領域64’との各円弧中心63a’、64a’を結ぶ最大外径18’が円筒部50aの最大外径となるとともに、この最大外径18’は外径D18’となって、支持部材60をその最大外径18が定着ベルト21の内径30mmより大きくなるように支持する。さらに、支持部材60の軸方向端部近傍において、ニップ形成部材26を組み付けた支持部材60の外周長をL1、定着ベルト21の内周長をL2とすると、周長差L2−L1が0.7mmとなるように、円筒部50aが支持部材60を支持する。
なお、半径R2は、例えば12.8mmであり、距離d2、d3は、例えばそれぞれ2.7mm、2mmであり、外径D18’は30.46mmである。
【0127】
中間対応領域66’は、断面形状として加熱対応領域63’と同一半径および同一中心63a’の円弧形状となっている。
【0128】
逃げ対応領域65’は、分離対応領域64’の円弧中心64a’から記録媒体搬送方向下流側に距離d4だけ離れた平面で、中間対応領域66’と分離対応領域64’との間に形成されている。これにより、支持部材60の軸方向端部近傍の逃げ領域65において支持部材60と定着ベルト21とが非接触になるように、逃げ対応領域65’が支持部材60を支持する。
なお、距離d4は、例えば11.3mmである。
【0129】
以上のように、本発明の定着装置20において、フランジ部材50Bの円筒部50aの外周面が所定の形状を有することにより、図29に示すように、支持部材60を介して定着ベルト21の軸方向両端部近傍を適正な形状に保持するので、記録媒体、特に広幅の記録媒体の分離性を向上させることができる。また、フランジ部50bが支持部材60の断面形状の保持精度を損なうこともなく、支持部材60の形状や定着ベルト駆動時の支持部材60の挙動を安定させることができる。
【0130】
詳しくは、フランジ部材50Bは支持部材60の軸方向両端部に装着されその両端部の断面形状を安定化させる部品であるため、その中央部の形状安定化させる効果はないが、端部だけでも支持部材60の形状を理想形状として維持することでつぎのような3つの効果が期待できる。
【0131】
(効果1)軸方向両端部近くを通過する幅広の記録媒体Pの分離性向上。
支持部材60の最大外径18の寸法(30.86mm)がある範囲を超えて小となると、定着ベルト21が張架しなくなり、ニップ部下流側で定着ベルト21がたるんで定着ベルト21の曲率が大きくなり記録媒体Pが分離しにくくなることから、定着ベルト21の張架が維持されるように支持部材60の形状を理想形状に維持することが望ましい。ここで、記録媒体Pの幅方向の両端には画像形成領域外としてトナーを付着させない領域であって定着ベルト21から分離し易い領域が存在することから、少なくともフランジ部材50Bにより支持部材60の軸方向両端部近傍の形状を理想形状に維持することにより、記録媒体Pの幅方向両端部をより分離しやすくすることで分離性を向上させることが可能である。またこれは支持部材60の軸方向両端部近傍をその幅方向の端部が通過する幅広の記録媒体Pの場合により有効である。
【0132】
(効果2)定着ベルト駆動時の支持部材60の挙動規制。
定着ベルト21はニップ部Nの位置で加圧ローラ31により駆動されるため、ニップ部Nより上流側で定着ベルト21は張り側、下流側では緩み側となる。このとき、張り側では支持部材60は摺動する定着ベルト21から常時圧力がかかるため、その形状及び位置が安定しないようになる。
本発明では、支持部材60の定着ベルト張り側(ニップ部上流側)の形状と位置をフランジ部材50Bで保持することにより安定化させることができる。
【0133】
(効果3)支持部材60の軸方向端部における定着ベルト21浮き規制。
定着ベルト21の浮きの現象は、軸方向中央部より両端部で発生しやすいことが確認されている。これは、支持部材60は薄板金属でできているため、支持部材60全体の温度が均一になるにはある程度の時間を要するためである。すなわち、支持部材60全体の温度が均一になるまでの間、支持部材60には軸方向において熱膨張差が生じるが、支持部材60は軸方向端部でフランジ部材50Bにより位置規制されているため、中央部が最も大きく外側に膨らむ方向で反るという現象が発生する。この反りは最も膨張量が大きい加熱領域63側の軸方向中央部に発生するので、その領域では定着ベルト21と密着するようになる。一方、フランジ部材50Bで規制された軸方向端部は反りが発生しないため中央部で膨らんだ支持部材60に押された定着ベルト21が端部では浮きやすくなる。
本発明では、軸方向端部側の支持部材60の形状をフランジ部材50Bで保持して安定化させることにより、このような定着ベルト21の浮きを規制することができる。
【0134】
図30に、構成例3におけるフランジ部材付近の要部構成を示す。なお、ここで示す構成は、図23〜図29におけるフランジ部材50Bに適用される。
図30に示す定着装置20において、フランジ部材50Bが構成例1で示したフランジ部材50Aと同様の考え方に基づき設計されている。すなわち、定着装置20は、回転可能な無端状ベルトの定着ベルト21と、定着ベルト21の外周側に該定着ベルト21と圧接可能に配置される加圧ローラ31と、定着ベルト21の内周側に配置され、定着ベルト21を介して加圧ローラ31と圧接してニップ部を形成するニップ形成部材26と、定着ベルト21を加熱する加熱手段22hと、定着ベルト21の内周側に設けられるとともに定着ベルト21を回転可能に支持する略円筒状の支持部材60と、当該定着装置のフレーム(側板42)に固設されるフランジ部50b、フランジ面50fを有する鍔部50c及びフランジ面50fに立設され支持部材60の軸方向端部の内周部に挿入されて定着ベルト21を支持部材60を介して間接的に回転可能に保持する円筒部50aを有するフランジ部材50Bと、を備え、フランジ部材50Bにおける円筒部50aは、その外周面の円周方向に溝50mが形成されてなり、ドーナツ盤形状であって、前記溝50mにその内径部が回転可能に嵌め込まれ、盤面に定着ベルト21の軸方向端部が当接するスリップリング51を有しており(図30(a))、前記スリップリング51の回転軸51jを中心として、次式(1)を満足することを特徴とするものである(図30(b))。
【0135】
スリップリング51の内径ID51<フランジ部材50Bの円筒部50aの最小外寸ODmin<定着ベルト21の走行軌跡(ここでは非真円形の軌跡)における最大外寸ODmax<スリップリング51の外径OD51 ・・・(1)
【0136】
なお、この場合の定着ベルトユニットの組み立ては、つぎのように行う(図25及び図30参照。)。
(S21) まず外保持部材70及び内保持部材71が装着された支持部材60の軸方向の一方の端部(図25において右側端部)の内径部にフランジ部材50Bの円筒部50aをスリップリング51が支持部材60の端部に当接するまで挿入する。
(S22) ついで、支持部材60の外周上に定着ベルト21を装着するとともに、支持部材60のニップ凹部61にニップ形成部材26をその端部がフランジ部50bの所定位置に当接するまで挿入し、支持部材60の内径部に補強部材23、加熱手段22hもそれぞれの端部がフランジ部50bの所定位置に当接するまで挿入する(図30(a))。
(S23) 最後に、支持部材60の軸方向の他方の端部(図25において左側)の内径部にもう1つのフランジ部材50Bの円筒部50aをスリップリング51が支持部材60の端部に当接するまで挿入して、定着ベルトユニットを完成する。
【0137】
なお、フランジ部材50Bは、このように定着装置20で用いられるために、図26に示すように、お互いが同寸法で鏡像の関係となる形状(左右対称形状)となっている。
【0138】
その後、定着ベルトユニットの両端のフランジ部材50Bにおけるそれぞれのフランジ部50bを一対の側板42それぞれの所定位置に固定することにより、定着ベルトユニットを組み付けて作業を完了する。
【0139】
本構成例においても、加圧ローラ31の回転駆動に伴って定着ベルト21が回転すると、定着ベルト21が軸方向のうちいずれかの方向に片寄りするが、スリップリング51の回転軸51jを中心とするフランジ部材50Bの円筒部50aの外寸、スリップリング51の内径及び外径、定着ベルト21の走行軌跡の外寸が前記式(1)の関係(スリップリング51の内径ID51<フランジ部材50Bの円筒部50aの最小外寸ODmin<定着ベルト21の走行軌跡の最大外寸ODmax<スリップリング51の外径OD51の関係)を満足しているので、定着ベルト21の軸方向端部は必ずスリップリング51の盤面に当接し、フランジ面50fの磨耗を防止することができる。
【0140】
また、スリップリング51に定着ベルト21の軸方向端部が当接し、該スリップリング51がフランジ面50f側に押された状態で定着ベルト21及びスリップリング51が回転するようになる。このとき、前記スリップリング51がフランジ面50fと摺動することにより磨耗して、磨耗粉が発生するが、フランジ部材50Bの円筒部50aに溝50mが設けられ、スリップリング51の回転軸51jを中心とするフランジ部材50Bの円筒部50aの外径、スリップリング51の内径及び外径、定着ベルト21の走行軌跡の外寸が前記式(1)の関係(スリップリング51の内径ID51(≒溝50mの底面部分の径)<フランジ部材50Bの円筒部50aの最小外寸ODminの関係)を満足しているので、スリップリング51の磨耗粉がスリップリング51の内径部に入ったとしても溝50mの底面と円筒部50aの外周面及び支持部材60の外周面との段差により、前記磨耗粉が定着ベルト21の内周部側に移動することを防止し、該磨耗粉を定着ベルト21から離れた部分に落とすことができ、定着ベルト21の回転トルクの上昇を抑えることができる。
なお、本構成例においても、図11〜図14に示す応用例を適用することができる。
【0141】
(構成例4)
つぎに、本発明に係る定着装置の構成例4について説明する。
図31は、本発明に係る定着装置の構成例4を示す断面図である。
図31に示すように、本構成例は、構成例3(図19)と比べると、支持部材60を用いず、フランジ部材50Bの円筒部50aが直接定着ベルト21の軸方向両端部の内径部に挿入され、該定着ベルト21の軸方向両端部近傍を支持する点で異なり、それ以外は構成例3と同じである。なお、定着ベルト21は、その内径部に配置された加熱手段22hにより直接加熱される。
【0142】
ここで、フランジ部材50Bの円筒部50aは、支持部材60を介さずに直接定着ベルト21の軸方向両端部近傍を支持して、定着ベルト21の少なくとも軸方向両端部近傍を構成例3の場合と同様に、適正な形状に保持している。
【0143】
このとき、円筒部50aの外周形状(外周面の断面形状)は、少なくとも定着ベルト21が加熱手段22hにより加熱される領域に対応する領域が構成例3における支持部材60の加熱領域63における円筒内周部分と略同一形状とされていることが好ましく、定着ベルト21を理想的な形状及び寸法(図22)に保持するように、構成例3の支持部材60の内周側の形状及び寸法と略同一とされていることが好適である。
【0144】
すなわち、フランジ部材50Bにおける円筒部50aの外周面の断面形状として、定着ベルト21が加熱手段22hにより加熱される領域に対応する領域(領域A,加熱対応領域63’)が定着ベルト21の半径に対応した所定半径の円弧形状(本構成例では定着ベルト21の内周部の半径と略同一半径の円弧形状)であるとともに、該円弧の中心がニップ形成部材26の記録媒体搬送方向の中心線26cに対して記録媒体搬送方向上流側に位置していることを特徴とするものである。
【0145】
また、フランジ部材50Bにおける円筒部50aの外周面の断面形状として、ニップ形成部材26の記録媒体搬送方向の中心線26cに対して、ニップ部入口領域(加熱対応領域63’)の方がニップ部出口領域(分離対応領域64’)よりも円筒直径外側方向に張り出していることが好ましい。
【0146】
また、フランジ部材50Bにおける円筒部50aの外周面の断面形状として、前記ニップ部出口領域(分離対応領域64’)よりも定着ベルト21の回転方向下流側に平坦な逃げ対応領域65’を備えることが好ましい。
【0147】
したがって、本構成例におけるフランジ部材50Bの円筒部50aは、図28に示す形状であることが好適であり、その各寸法はつぎのように設定するとよい。
・半径R1;14.5mm
・半径R2;13mm
・距離d1;3.4mm
・距離d2;2.7mm
・距離d3;2mm
・距離d4;11.5mm
・外径D18’;30.86mm
【0148】
以上のように、本発明の定着装置20において、フランジ部材50Bの円筒部50aの外周面が所定の形状を有することにより、定着ベルト21の軸方向両端部近傍を適正な形状に直接保持するので、記録媒体、特に広幅の記録媒体の分離性を向上させることができる。
なお、本構成例では支持部材60を用いないので、構成例3で述べた3つの効果(効果1〜3)のうち、効果1のみが得られる。
【0149】
また、本構成例の定着装置20は、記録媒体Pの最大通紙サイズがA3縦サイズである定着装置(広幅機)においても本発明の効果が得られるが、最大通紙サイズがA4縦サイズなど比較的狭幅の定着装置においてはフランジ部材50Bの定着ベルト21の形状保持効果が軸方向中央部にまで及ぶのでなおよい。
【0150】
図32に、構成例4におけるフランジ部材付近の要部構成を示す。
本発明の定着装置20は、図32に示すように、図30の構成と比較すると、前述の通り、支持部材60が省略されており、フランジ部材50Bの円筒部50aが定着ベルト21を直接支持している点が異なり、それ以外は図30の構成と同じである。すなわち、定着装置20は、回転可能な無端状ベルトの定着ベルト21と、定着ベルト21の外周側に該定着ベルト21と圧接可能に配置される加圧ローラ31と、定着ベルト21の内周側に配置され、定着ベルト21を介して加圧ローラ31と圧接してニップ部を形成するニップ形成部材26と、定着ベルト21を加熱する加熱手段22hと、当該定着装置のフレーム(側板42)に固設されるフランジ部50b、フランジ面50fを有する鍔部50c及びフランジ面50fに立設され支持部材60の軸方向端部の内周部に挿入されて定着ベルト21を回転可能に保持する円筒部50aを有するフランジ部材50Bと、を備え、フランジ部材50Bにおける円筒部50aは、その外周面の円周方向に溝50mが形成されてなり、ドーナツ盤形状であって、前記溝50mにその内径部が回転可能に嵌め込まれ、盤面に定着ベルト21の軸方向端部が当接するスリップリング51を有しており(図32(a))、前記スリップリング51の回転軸51jを中心として、次式(1)を満足することを特徴とするものである(図32(b))。
【0151】
スリップリング51の内径ID51<フランジ部材50Bの円筒部50aの最小外寸ODmin<定着ベルト21の走行軌跡(ここでは非真円形の軌跡)における最大外寸ODmax<スリップリング51の外径OD51 ・・・(1)
【0152】
本構成例においても、加圧ローラ31の回転駆動に伴って定着ベルト21が回転すると、定着ベルト21が軸方向のうちいずれかの方向に片寄りするが、スリップリング51の回転軸51jを中心とするフランジ部材50Bの円筒部50aの外寸、スリップリング51の内径及び外径、定着ベルト21の走行軌跡の外寸が前記式(1)の関係(スリップリング51の内径ID51<フランジ部材50Bの円筒部50aの最小外寸ODmin<定着ベルト21の走行軌跡の最大外寸ODmax<スリップリング51の外径OD51の関係)を満足しているので、定着ベルト21の軸方向端部は必ずスリップリング51の盤面に当接し、フランジ面50fの磨耗を防止することができる。
【0153】
また、スリップリング51に定着ベルト21の軸方向端部が当接し、該スリップリング51がフランジ面50f側に押された状態で定着ベルト21及びスリップリング51が回転するようになる。このとき、前記スリップリング51がフランジ面50fと摺動することにより磨耗して、磨耗粉が発生するが、フランジ部材50Bの円筒部50aに溝50mが設けられ、スリップリング51の回転軸51jを中心とするフランジ部材50Bの円筒部50aの外径、スリップリング51の内径及び外径、定着ベルト21の走行軌跡の外寸が前記式(1)の関係(スリップリング51の内径ID51(≒溝50mの底面部分の径)<フランジ部材50Bの円筒部50aの最小外寸ODminの関係)を満足しているので、スリップリング51の磨耗粉がスリップリング51の内径部に入ったとしても溝50mの底面と円筒部50aの外周面との段差により、前記磨耗粉が定着ベルト21の内周部側に移動することを防止し、該磨耗粉を定着ベルト21から離れた部分に落とすことができ、定着ベルト21の回転トルクの上昇を抑えることができる。
なお、本構成例においても、図11〜図14に示す応用例を適用することができる。
【0154】
つぎに、本発明に係る画像形成装置について説明する。
図33は、本発明に係る画像形成装置の構成を示す全体構成図である。
図33に示すように、画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
【0155】
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77、除電部(不図示である。)等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)がおこなわれて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
【0156】
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、不図示の駆動モータによって図33中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
【0157】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0158】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程である。)。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
【0159】
その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図33中の矢印方向に無端移動される。
【0160】
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
【0161】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
【0162】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図33中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
【0163】
レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0164】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ベルト21及び加圧ローラ31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0165】
以上説明したように、本発明の画像形成装置において、前述した定着装置20を備えているので、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短く、記録媒体Pのサイズが変わっても消費エネルギーを抑えつつ適切な画像形成が可能であり、装置を高速化した場合であっても定着不良等の不具合が生じるのを抑止することができる。また、長時間安定した運転が可能となる。
【0166】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0167】
1 画像形成装置本体
3 露光部
4Y、4M、4C、4K 作像部
5Y、5M、5C、5K 感光体ドラム
12 給紙部
18 加熱領域と分離領域との間の最大外径
18’ 加熱対応領域と分離対応領域の最大外径(D18’)
20 定着装置
21 定着ベルト
21a 基材
21b 離型層
21c 塗膜
22 面状発熱体
22a 基層
22b 抵抗発熱層
22c 電極層
22d 絶縁層
22e,22e1,22e2 電極端子
22f 固定端子
22h 加熱手段
22L 給電線
22s 発熱シート
23 補強部材
23a 本体
23b 受け突起
23r 反射板
24 端子台ステイ
25 発熱体支持部材
26 ニップ形成部材
26a 本体
26b 支持突起
26c,26c’ 中心線
27 回転支持部材
27a 開口部
28 コア保持部材
29 断熱支持部材
30,50A,50B フランジ部材
30a,50a 円筒部
30b,50b フランジ部
31 加圧ローラ
32 中心軸
33 弾性層
34 離型層
42 側板
50a1 切欠き部
50a2 形状保持面
50c 鍔部
50d 案内部
50f,50f’ フランジ面
50m 溝
51,51’ スリップリング
51j 回転軸
51s スリット
52 スペース
60 支持部材
60a 塗膜
61 ニップ凹部
62 導入領域
62’ 導入対応領域
63 加熱領域
63’ 加熱対応領域
63a 加熱領域の円弧中心
63a’ 加熱対応領域の円弧中心
64 分離領域
64’ 分離対応領域
64a 分離領域の円弧中心
64a’ 分離対応領域の円弧中心
65 逃げ領域
65’ 逃げ対応領域
66 中間領域
66’ 中間対応領域
67 側壁
68 底壁
69 開口
70 外保持部材
70a 取付部
71 内保持部材
75 帯電部
76 現像部
77 クリーニング部
78 中間転写ベルト
79Y、79M、79C、79K 第1転写バイアスローラ
80 中間転写クリーニング部
82 2次転写バックアップローラ
83 クリーニングバックアップローラ
84 テンションローラ
85 中間転写ユニット
97 給紙ローラ
98 レジストローラ対
99 排紙ローラ対
100 スタック部
101 ボトル収容部
102Y、102M、102C、102K トナーボトル
L レーザ光
P 記録媒体
T トナー
501 別部材
502 小径円筒部
A,B 領域
N ニップ部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0168】
【特許文献1】特許第3814542号公報
【特許文献2】特許第4035426号公報
【特許文献3】特開2007−334205号公報
【特許文献4】特開2010−096782号公報
【特許文献5】特開2011−133839号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な無端状ベルトの定着部材と、
前記定着部材の外周側に該定着部材と圧接可能に配置される加圧部材と、
前記定着部材の内周側に配置され、前記定着部材を介して前記加圧部材と圧接してニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記定着部材を直接または間接的に加熱する加熱手段と、
当該定着装置のフレームに固設されるフランジ部、及び該フランジ部のフランジ面に立設され前記定着部材の軸方向端部の内周部に挿入されて該定着部材を直接または間接的に回転可能に保持する円筒部を有するフランジ部材と、
を備え、
前記フランジ部材における円筒部は、その外周面の円周方向に溝が形成されてなり、
ドーナツ盤形状であって、前記溝にその内径部が回転可能に嵌め込まれ、盤面に前記定着部材の軸方向端部が当接するスリップリングを有しており、
前記スリップリングの回転軸を中心として、次式(1)を満足することを特徴とする定着装置。
前記スリップリングの内径<前記フランジ部材の円筒部の最小外寸<前記定着部材の走行軌跡における最大外寸<前記スリップリングの外径 ・・・(1)
【請求項2】
前記フランジ部におけるフランジ面の最大外寸が前記スリップリングの外径よりも小であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着部材の走行軌跡が真円でないことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記スリップリングにおける前記フランジ面側の盤面はその外周に向かうにつれて軸方向において前記定着部材から離れる側に傾斜する傾斜面となっており、
前記フランジ面は、前記スリップリングの盤面の傾斜に沿った傾斜面となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記スリップリングと前記フランジ面との間に、該スリップリングから発生する磨耗粉を貯蔵するスペースを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記スリップリングは、盤面に外周から内径部に連通したスリットを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記円筒部は、前記定着部材の軸方向端部の内径部に挿入される部分が別部材で形成されており、該別部材が前記フランジ部材のフランジ面に立設された小径円筒部に装着されることにより前記溝が形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記定着部材の内周側に配置され、外周面が該定着部材の回転を支持する略円筒状の支持部材を備え、
前記フランジ部材は、前記円筒部を前記支持部材の軸方向端部の内周部に挿入してその外周面で前記支持部材を保持することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の定着装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−41129(P2013−41129A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178227(P2011−178227)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】