説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】加熱部材および定着ベルトの熱変形を一定量以下に抑制することで、定着ベルトを含む各構成部品が破損を防止できる定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着ベルト21と、パイプ状の金属体によって構成され、定着ベルト21を加熱する加熱パイプ22と、加熱パイプ22を輻射熱により加熱するヒータ25と、定着ベルト21を回転させる加圧ローラ31と、定着ベルト21を介して加圧ローラ31と当接するニップ形成部材26と、定着ベルト21の表面温度を検出する温度センサ28と、検出した表面温度に基づいて定着ベルト21の表面温度を予め設定された表面温度となるようにヒータ25を制御する本体制御部110と、定着ベルト21を介して加熱パイプ22の変形を検出する変位検出手段27と、を備え、加熱パイプ22の変形を検出した場合に、本体制御部110によって加熱パイプ22への伝熱量を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルトの定着部材を有する定着装置及び該定着装置を備える電子写真方式、静電記録方式等を利用したFAX、プリンタ、複写機またはそれらの複合機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置として、電子写真方式を利用した画像形成装置が種々考案されており公知技術となっている。その画像形成プロセスは、像担持体である感光ドラムの表面に静電潜像を形成し、感光ドラム上の静電潜像を現像剤であるトナー等によって現像して可視像化し、現像された画像を転写装置により記録紙(用紙、記録媒体ともいう) に転写して画像を担持させ、圧力や熱等を用いる定着装置によって記録紙上のトナー画像を定着する過程により成立している。
【0003】
この定着装置では、対向するローラもしくはベルトもしくはそれらの組み合わせにより構成された定着部材及び加圧部材が当接してニップ部を形成するように配置されており、該ニップ部に記録紙を挟みこみ、熱および圧力を加えて前述したトナー像を記録紙上に定着することを行っている。
【0004】
前記定着装置の一例を挙げると、複数のローラ部材に張架された定着ベルトを定着部材として用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照) 。このような定着ベルトを用いた装置は、定着部材としての定着ベルト(無端状ベルト)と 、定着ベルトを張架・支持する定着ローラおよび加熱ローラを含む複数のローラ部材と、複数のローラ部材のうち1つのローラ部材に内設されたヒータと、加圧ローラ(加圧部材) と、を含んで構成されている。ヒータは、ローラ部材を介して定着ベルトを加熱する。そして、定着ベルトと加圧ローラとの間に形成されたニップ部に向けて搬送された記録媒体上のトナー像は、ニップ部にて熱と圧力とを受けて記録媒体上に定着される(ベルト定着方式) 。
【0005】
また、前述したような複数のローラ部材によって張架・支持する定着ベルトを備えた定着装置に替えて次に説明する定着装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2に開示された定着装置は、無端状のベルト部材で構成された定着ベルトと、定着ベルトの内周面に対向するように固設され、定着ベルトを介して加圧ローラに当接してニップ部を形成する加熱部材と、ニップ部における加熱部材の強度を補強する補強部材と、補強部材と加熱部材との間に設けられる断熱部材と、熱源としてのヒータと、定着ベルトに圧接して、双方の部材間に所望のニップ部を形成する加圧ローラと、定着ベルトに対向して設けられた温度センサと、を備えている。加熱部材は、パイプ状の金属熱伝導体からなり、ヒータの輻射熱により加熱されるようになっており、定着ベルトにその熱が伝達される。また加熱部材は、定着ベルトの加熱効率を向上させるために、パイプ状の加熱部材(金属熱伝導体)をできるだけ薄肉化する必要がある。
【0007】
このような構成により、特許文献2に開示された定着装置は、製造コストが比較的安価であって、定着ベルトの加熱効率が高くてウォームアップ時間やファーストプリント時間が短く、装置を高速化した場合であっても定着不良等の不具合が生じるのを抑止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の特許文献2に開示された定着装置にあっては、加熱部材に対して定着ベルトが相対的に回転可能になっているため、加圧ローラからの回転駆動で定着ベルトを回転させた場合、断面方向でかつニップ部下流方向で定着ベルトにたるみが生じ、加熱部材のニップ部上流側とニップ部下流側で温度差が生じてしまう。このため、加熱部材を構成する金属導電体がニップ部上流側で特に軸方向中央部が凸形状に熱変形し、軸方向両端部で加熱部材と定着ベルトに隙間が生じてしまう。この結果、加熱部材の特に軸方向両端部において異常発熱してしまい定着ベルトを含む各構成部品が破損する恐れがあった。
【0009】
また、従来の特許文献2に開示された定着装置にあっては、定着ベルトの内面を黒色化し加熱部材を設けずに熱源からの輻射熱を利用して定着ベルトを直接加熱することも考えられるが、この場合も定着ベルトがニップ部上流側で特に軸方向中央部が凸形状に熱変形し、定着ベルトを含む各構成部品が破損する恐れがあった。
【0010】
本発明は、以上のように従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、加熱部材および定着ベルトの熱変形を一定量以下に抑制することで、定着ベルトを含む各構成部品が破損を防止できる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る定着装置は、上記目的達成のため、可撓性を有する無端ベルト状の定着部材と、前記定着部材の内部に配置されるとともにパイプ状の金属体によって構成され、前記定着部材の内周面に直接または間接的に摺接して前記定着部材を加熱する加熱部材と、前記加熱部材を加熱する熱源と、前記定着部材の外周側で該定着部材を押圧可能に配置され、前記定着部材を摺動させつつ回転させる加圧部材と、前記定着部材の内部で前記加圧部材と対向するとともに、前記定着部材を介して前記加圧部材と当接してニップ部を形成するニップ形成部材と、前記定着部材の表面温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段によって検出された表面温度に基づいて前記熱源を制御して前記定着部材の表面温度を予め設定された表面温度に制御する制御手段と、を備えた定着装置であって、前記定着部材を介して前記加熱部材の変形を検出する変位検出手段をさらに備え、前記変位検出手段によって前記加熱部材の変形を検出した場合に、前記制御手段によって前記加熱部材への伝熱量を減少させるよう構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱部材および定着ベルトの熱変形を一定量以下に抑制することで、定着ベルトを含む各構成部品が破損することを防止できる定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す全体構成図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態に係る定着装置の一部断面図である。(a)は、冷間状態を示し、(b)は、第1の定着ベルトの変形状態を示し、(c)は、第2の定着ベルトの変形状態を示す。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態に係る定着装置を構成する加熱パイプの周辺部品の斜視図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態に係る変位検出手段を説明するための定着装置の概略上面図である。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態に係る本体制御部を説明するための図である。
【図6】本発明に係る第1の実施の形態に係る本体制御部の処理を表すフロー図である。
【図7】本発明に係る第1の実施の形態に係る画像形成装置の変位検出手段が有る場合と無い場合とのそれぞれにおける定着ベルトの変形量と、ヒータ点灯率と、定着ベルトおよび加熱パイプの表面温度とを説明するためのグラフである。
【図8】本発明に係る第2の実施の形態に係る定着装置の一部断面図である。(a)は、冷間状態を示し、(b)は、第1の定着ベルトの変形状態を示し、(c)は、第2の定着ベルトの変形状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
まず、構成について説明する。
図1に示すように、画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック) に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在に設置されている。このため、これらの4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kは、ユーザ等によって交換自在になっている。
【0015】
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック) に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
【0016】
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77、不図示の除電部等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程) が行われて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
【0017】
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、不図示の駆動モータによって図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程である)。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である) 。
【0018】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程である) 。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78および第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(第1転写工程である) 。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0019】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程である) 。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で行われる、一連の作像プロセスが終了する。
【0020】
その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78の4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
【0021】
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟みこんで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K の1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
【0022】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟みこんで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。こうして、中間転写ベルト78上で行われる、一連の転写プロセスが終了する。
【0023】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して搬送されたものである。詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
【0024】
レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0025】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ベルト21および加圧ローラ31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写画像を有する記録媒体Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0026】
次に、図2、3を参照して、定着装置20の構成について詳細に説明する。
【0027】
定着装置20は、図2、3に示すように、定着ベルト21、加熱部材としての加熱パイプ22、ニップ形成部材26、支持部材23、熱源としてのヒータ25、加圧部材としての加圧ローラ31、温度検出手段としての温度センサ28、本体制御部を備えている。
【0028】
定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状ベルトにより形成されており、図2に示す矢印A方向に走行する。定着ベルト21は、ニップ形成部材26との摺接面となる内周面21a側から、基材層、弾性層、離型層が順次積層され、全体の厚さが1mm以下となるよう形成されている。
【0029】
定着ベルト21の基材層は、層厚が25〜35μmであり、ニッケル、ステンレス等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料により形成されている。定着ベルト21の弾性層は、層厚が100〜300μmであり、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴムあるいはフッ素ゴム等のゴム材料で形成されている。この弾性層が設けられることにより、定着ニップ部38における定着ベルト21の表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。
【0030】
定着ベルト21の離型層は、層厚が10〜50μmであって、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等により形成されている。この離型層が設けられることにより、トナー像Tに対する離型性(剥離性)が担保される。
【0031】
また、定着ベルト21の直径は15〜120mmに設定されると好適である。本実施の形態においては、定着ベルト21の直径は30mm程度に設定されている。
【0032】
また、定着ベルト21は、本発明に係る定着部材を構成している。なお、ニッケルやSUS等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料を用いたフィルムでもよい。定着ベルト21の内周面側には、加熱パイプ22、ニップ形成部材26、支持部材23、ヒータ25、第1の板金29および第2の板金41が設けられている。
【0033】
加熱パイプ22は、定着ベルト21の内部に配置され、その肉厚が0.1mmで断面が略パイプ形状となっている。また、加熱パイプ22は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等の熱伝導性を有する金属により構成されている。ここで、加熱パイプ22の肉厚を0.2mm以下に設定した場合には、加熱パイプ22の加熱効率が向上するため、定着ベルト21の加熱効率も向上することとなり好適である。
【0034】
加熱パイプ22は、定着ニップ部38を除く位置では定着ベルト21の内周面に直接的に摺接するように形成されており、一方、定着ニップ部38の範囲では、定着ベルト21の内周面に間接的に摺接するように形成されている。このため、加熱パイプ22は、定着ニップ部38の位置において内部に凹状に形成されるとともに開口部22a(図3参照)を有している。加熱パイプ22は、第1の板金29および第2の板金41によって挟みこんだ状態で第1の板金29と第2の板金41とをネジ止めにて固定される。これにより、加熱パイプ22は、後述するフランジ部35に、その形状を維持した状態で固定される。また、この凹状に形成された凹部に、ニップ形成部材26が嵌め込まれるようになっている。
【0035】
また、加熱パイプ22は、内周側に設置されているヒータ25の輻射熱により加熱され、この加熱された加熱パイプ22により定着ベルト21が加熱されるようになっている。すなわち、加熱パイプ22がヒータ25より直接的に加熱され、定着ベルト21が加熱パイプ22を介して間接的に加熱される。
【0036】
定着ベルト21と加熱パイプ22とは、加熱領域(本実施の形態の場合には定着ニップ部38の上流側の領域)において接触して摺動する構成、もしくは0.3mm以下のギャップδを有する構成としている。これにより、定着ベルト21を加熱パイプ22により効率的に加熱することが可能となるが、加熱領域において両者が接触して摺動する構成とした方が加熱効率が高くより望ましい。但し、加熱領域において定着ベルト21と加熱パイプ22とを密着させる場合には、加熱領域における定着ベルト21と加熱パイプ22との圧接力が大きくなりすぎても定着ベルト21のトルクが増大し、磨耗を加速する恐れがある。そこで、かかる場合には定着ベルト21と加熱パイプ22との圧接力は0.3kgf/cm2以下になるようにすることが好ましい。
【0037】
また、加熱パイプ22の外周部には、定着ベルト21の磨耗が軽減されるよう潤滑剤としてのフッ素グリスが塗布されている。なお、加熱パイプ22と定着ベルト21との摺動抵抗を低下させるために、加熱パイプ22の摺接面を摩擦係数の低い材料で形成したり、定着ベルト21の内周面21aにフッ素を含む材料からなる表面層を形成してもよい。
【0038】
ニップ形成部材26は、定着ベルト21の内周面に摺接するように固定されている。このニップ形成部材26が定着ベルト21を介して加圧ローラ31に圧接することにより、記録媒体Pを搬送する定着ニップ部38が形成される。したがって、ニップ形成部材26は、定着ベルト21の内周側に配置され、加圧ローラ31の押圧により定着ベルト21を介して加圧ローラ31と当接して定着ニップ部38を形成するようになっている。
【0039】
ニップ形成部材26は、幅方向の両端部が定着装置20の後述するフランジ35に固定支持されている。なお、ニップ形成部材26の構成については、後でさらに詳しく説明する。
【0040】
図2に示すように熱源としてのヒータ25は、軸方向に複数のハロゲンヒータを備えており、両端部のハロゲンヒータがフランジ35の開口部より突出してフランジ35を介して定着装置20の本体(例えば、側板など)に固定されている。
【0041】
また、ヒータ25は、IHであってもよいし、抵抗発熱体、カーボンヒータ等であってもよいが、ベルトを昇温させる領域は図2中下側でニップ直前の領域とする方が効率良く加熱できる。
【0042】
温度センサ28は、定着ベルト21の表面に対向するように設けられており、公知のサーミスタ等により構成されている。温度センサ28は、例えば定着ベルト21の長手方向の中央領域と端部領域とに配置され、定着ベルト21の温度を検出するようになっている。温度センサ28は、定着ベルト21の表面温度を検出するので、本発明に係る温度検出手段を構成している。
【0043】
温度センサ28は、前述したように、中央部および端部のそれぞれ、最も近接した位置に各温度センサを設けているため、より高精度に温度検知することができ、温度制御することが可能となるのでより高品質な画像を得られる。温度センサ28は定着ベルト21と非接触にした方がその表面を摺動により傷つけることがないのでより好ましい。非接触式のものとしては、サーモパイルや非接触式のサーミスタが挙げられる。接触式のものとしては、接触タイプのサーミスタが挙げられる。
【0044】
また、ヒータ25は、装置本体1の電源部から電力が供給されており、後述する本体制御部110により、出力制御されている。本体制御部110は、温度センサ25による定着ベルト21の表面温度の検出結果を表す信号を取得し、この信号に応じてヒータ25の出力を制御するようになっている。また、本体制御部は、ヒータ25を消点灯させる制御により、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定することができる。
【0045】
また、定着ベルト21は、特に定着ニップ部38の上流側で加熱パイプ22を介して加熱され、定着ニップ部38を通過する。これにより、加熱された定着ベルト21の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。
【0046】
このように、本実施の形態における定着装置20は、ヒータ25によって定着ベルト21が定着ニップ部38よりも回転方向上流側近傍の位置を中心にして周方向にわたって広範囲に加熱されるので、記録媒体Pの搬送を高速化した場合においても定着ベルト21が充分に加熱されて定着不良の発生を抑止することができる。したがって、比較的簡易な構成で効率良く定着ベルト21を加熱できるために、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短縮化されるとともに、装置の小型化が達成される。
【0047】
支持部材23は、定着ニップ部38を形成するニップ形成部材26を支持するようになっており、定着ベルト21の内周面側に配置されている。支持部材23は、ニップ形成部材26を加圧ローラ31の押圧方向に対して保持している。
【0048】
また、支持部材23は、ニップ形成部材26と略同じ長さを有しており、その幅方向両端部がフランジ35を介して定着装置20の本体(例えば、側板)に固定されている。また、支持部材23は、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成されている。この構成により、支持部材23がニップ形成部材26および定着ベルト21を介して加圧ローラ31に当接するため、ニップ形成部材26が定着ニップ部38において加圧ローラ31から加圧力を受けて大きく変形することを抑止できる。このように、支持部材23は、ニップ形成部材26を加圧ローラ31の押圧方向に対して保持するようになっている。
【0049】
支持部材23は、加熱パイプ22を効率良く加熱するために、図示しない反射板がヒータ25側の面に取り付けられている。このため、支持部材23が、反射板を設けることにより加熱されるのを防止することで,装置の無駄なエネルギー消費を抑制することができるとともに、加熱パイプ22の後述する加熱範囲に集光させることができる。本実施の形態では、反射板が支持部材23に取り付けられているが、これに代えて支持部材23のヒータ25側の表面に鏡面処理が施されていてもよい。
【0050】
加圧ローラ31は、定着ベルト21の外周面に加圧回転体として圧接し、双方の部材間に所望の定着ニップ部38を形成するようになっている。本実施の形態においては、加圧ローラ31は、直径が30mmに設定されており、中空構造の芯金34上に弾性層36が形成されている。加圧ローラ31の弾性層36は、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の材料により形成されている。なお、加圧ローラ31は、弾性層36の表層にPFA、PTFE等からなる薄肉の離型層を設けていてもよい。加圧ローラ31は、図示しないスプリング等により定着ベルト21側に押し付けられており、ゴム層が押しつぶされて変形することにより,所定のニップ幅を有している。加圧ローラ31は中実のローラであってもよいが、中空のほうが熱容量は少なくてよい。
【0051】
加圧ローラ31は、図示しない駆動機構により、加圧ローラ31は図2の矢印B方向に回転駆動される。また、加圧ローラ31は、その幅方向両端部が定着装置20の側板にベアリングを介して回転自在に支持されている。なお、加圧ローラ31の内部に、ハロゲンヒータ等の熱源を設けてもよい。
【0052】
加圧ローラ31の弾性層36が発泡性シリコーンゴム等のスポンジ状の材料で形成される場合には、定着ニップ部38に作用する加圧力を減ずることができるために、ニップ形成部材26に生じる撓みを軽減することができる。また、加圧ローラ31の断熱性が高まり定着ベルト21の熱が加圧ローラ31に移動しにくくなるため、定着ベルト21の加熱効率が向上する。なお、弾性層36は、ソリッドゴムでもよい。
【0053】
加圧ローラ31は、定着ベルト21の外周側で定着ベルト21を押圧可能に配置され、定着ベルト21を摺動させつつ回転させるので、本発明に係る加圧部材を構成している。
【0054】
ニップ形成部材26は、平板形状で定着ベルト21の軸方向に長さを有し、少なくとも定着ベルト21を介して加圧ローラ31と圧接する部分がLCP(液晶ポリマー)やPAI(ポリアミドイミド樹脂)やPI(ポリイミド樹脂)などの耐熱性を有する樹脂部材からなるものであり、支持部材23により定着ベルト21の内周側の所定位置に保持された状態で固定されている。
【0055】
また、ニップ形成部材26の定着ベルト21の内周面と接する部分は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の繊維を編み込んだメッシュ状シートや、テフロン(登録商標)シート等の摺動性及び耐磨耗性の優れた図示しないシート材料が巻きつけられた状態で固定されている。また、ニップ形成部材26は、突部22aが軸方向に複数設けられており、支持部材23と当接するようになっている。
【0056】
ニップ形成部材26は、定着ベルト21の内部で加圧ローラ25と対向しており、定着ベルト21を介して加圧ローラ26と当接して定着ニップ部38(ニップ部)を形成するので、本発明に係るニップ形成部材を構成している。このように、定着ベルト21は、ニップ形成部材26と加圧ローラ31との間に挟みこまれて回転するが、定着ニップ部38の上流側はベルトの張り側となり、定着ニップ部38に記録媒体Pが案内される。
【0057】
図3に示すように、第1の板金29は、厚さが1.5mmのステンレス板をコの字状に形成したものであって、支持部材23がニップ形成部材26と当接するように複数の溝29bが形成されている。
【0058】
また、第2の板金41は、第1の板金29よりも薄いステンレス板をコの字状に形成したものであって、支持部材23がニップ形成部材26と当接するように第1の板金29と同様に複数の溝41aが形成されている。第2の板金41は、定着ベルト21の内周面側からニップ形成部材26を覆うようになっている。
【0059】
第1の板金29および第2の板金41は、ボルト締めによって固定される。また、第1の板金29には、定着ベルト21の軸方向に延びる板状突起29aが形成されており、この板状突起29aはフランジ35に形成された開口部35cを通して挿入されるようになっている。このため、第1の板金29は、フランジ35を介して定着装置20の図示しない側板に固定され、同時に第2の板金41も定着装置20の側板に固定される。
【0060】
また、ニップ形成部材26は、第2の板金41のコの字状の部分に嵌まるようになっており、しかも両端部に設けられた端部26bによりフランジ36の突起35cに嵌まるようになっている。このため、ニップ形成部材26は、第2の板金41、第1の板金29およびフランジ35を介して定着装置20の側板に固定される。
【0061】
図3に示すように、フランジ35は、定着ベルト21の両端部でその内周面部と摺接する第1フランジ部35aと、定着ベルト21の両端エッジ部と摺接して軸方向の位置決めを行う第2フランジ部35fと、を有している。
【0062】
さらに、フランジ35は、支持部材23の両端部を収容する開口部35dが形成され、このフランジ35には、支持部材23の位置決めを可能にする溝35eが形成されている。これにより、フランジ35は、支持部材23の周方向の回転を規制することが可能になり、結果として、ニップ形成部材26を安定して保持することが可能になっている。また、フランジ35は、図示していないが、支持部材23の軸方向への移動を規制する溝が形成されている。
【0063】
また、フランジ35には、第1の板金29の端部29aおよびニップ形成部材26の端部26bを挿入する開口部35bが形成されており、ニップ形成部材26の端部26bに形成されたU字溝26cと係合する突起35cが形成されている。このため、第1の板金29およびニップ形成部材26が、定着装置20の組み付け時に、本体1に固定されるようになっている。
【0064】
フランジ35の第1フランジ部35aは、加熱パイプ22の両端部でその内周面と直接的に摺接することで、加熱パイプ22の形状を維持するようになっている。また、フランジ35の第1フランジ部35aは、定着ベルト21の両端部でその内周面と間接的に摺接することで、定着ベルト21の形状を維持するようになっている。
【0065】
図2、4に示すように、変位検出手段27は、回転軸27aと、接触コロ27bと、第1フィラー部27cと、第2フィラー部27dと、第1センサ27eと、第2センサ27fと、を備えている。
【0066】
回転軸27aは、棒状部材によって構成されており、装置本体1に回転可能に支持されている。回転軸27aは、図示しないねじりバネにより後述する接触コロ27bが定着ベルト21に接触する方向に付勢されている。
【0067】
接触コロ27bは、定着ベルト21の軸方向中心付近で回転軸27aに支持部材27gを介して固定されており、定着ベルト21との接触時に連れ回りするようになっており、定着ベルト21の表面に影響を与えないようになっている。したがって、コロ部材によって構成された接触コロ27bは、本発明に係る接触部を構成している
【0068】
第1フィラー部27cは、平板状の部材で構成され、第1センサ27eの方向に延在するように回転軸27aに固定されている。一方第2フィラー部27dは、平板状の部材で構成され、中央部付近で第2センサ27fの方向に延在するよう回転軸27aに固定されている。
【0069】
第1センサ27eは、第1フィラー部27cを検出する公知のセンサであって、図2(b)に示す接触コロ27bが第1の位置に移動した場合に第1フィラー部27cを検出する位置に配置されている。ここで第1の位置は、定着ベルトの変形が許容可能な変形量を検出可能な位置を意味し、定着昇温時間を著しく低下させない位置に設定される。
【0070】
一方第2センサ27fは、第2フィラー部27dを検出する公知のセンサであって、図2(c)に示す接触コロ27bが第2の位置に移動した場合に第2フィラー部27dを検出する位置に配置されている。ここで第2の位置は、定着ベルトの変形が許容不可能な変形量を検出可能な位置を意味し、加熱パイプの温度上昇が耐熱温度Tpmaxを超えないような値に設定されている。
【0071】
図4に示すように、変位検出手段27は、回転軸27aの端部付近に放射外方に向けて突出する突起部27iと、一方装置本体1の側板に固定されており回転軸27aの回転を規制するよう突起部27iと係合する規制部材27hと、備えている。規制部材27hは、図示しないねじりバネに付勢方向に対抗するとともに、図2(a)に示す定着ベルト21が変形していない状態(冷間状態)のときに、接触コロ27bが定着ベルト21と所定間隔で位置するように回転軸27aの回転を規制するようになっている。このような、回転軸27aの回転を接触コロ27bが定着ベルト21に接触しない位置で規制する構成はこれに限定されない。
【0072】
変位検出手段27を構成する接触コロ27bは、定着ベルト21の軸方向に対し中央近傍に配置され、かつ、加熱パイプ27bの断面方向に対して加熱範囲に配置されている。ここで、加熱範囲とは、図2(X)を基準に反時計回りに225°〜270°の範囲を意味している。また、加熱パイプ22と定着ベルト21は、軸方向の長さが略同一で有るため、定着ベルト21の軸方向に対し中央近傍は、加熱パイプ22の軸方向に対し中央近傍でもある。
【0073】
変位検出手段27は、ヒータ25が非加熱の状態で接触コロ27bが定着ベルト21と接触しない位置に配置され、ヒータ25によって定着ベルト21が前述した加熱範囲側に変形した第1の位置を検出し、ヒータ25によって定着ベルト21がさらに加熱範囲側に変形した第2の位置を検出するようになっている。
【0074】
図5に示すように、本体制御部110は、本発明に係る制御手段を構成しており、装置本体1を制御するための各種演算を行うCPU(central processing unit)110a、読み出し専用のメモリであるROM(Read Only Memory)110b、一時記憶用のRAM(Random Access Memory)110c、図示しない入出力インターフェイスを含んでいる。本体制御部110は、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに記憶された制御プログラムを含む制御プログラムを実行するようになっている。
【0075】
具体的には、本体制御部110は、例えば、第1の位置を検出する第1のセンサ111、第2の位置を検出する第2のセンサ112、上述した温度センサ28、定着ニップ部38の排出側の排紙経路に設けられた排紙センサ113からの検出情報に基づいて、ヒータ駆動回路114および駆動装置115を制御する。
【0076】
ヒータ駆動回路114は、外部の電源とヒータ25とに接続され、本体制御部110からの制御信号により、電源からヒータ25に供給される電力供給量が制御される。したがって、ヒータ25はヒータ駆動回路114に所望の点灯率となるように制御される。
【0077】
また、ROMには、温度センサ28から出力された検出温度や、変位検出手段によって検出された変形量に応じてヒータ25への電力供給量が対応付けられた制御マップを有しており、これにより所望の点灯率に制御される。
【0078】
このように、本体制御部110は、温度センサ28によって検出された定着ベルト21の表面温度に基づいてヒータ25を制御して定着ベルトの表面温度を予め設定された表面温度に制御するようになっている。さらに、本体制御部110は、変位検出手段によって加熱パイプ22の変形を検出した場合には加熱パイプ22への伝熱量、すなわちヒータ25の点灯率を減少させるようになっている。
【0079】
具体的には、本体制御部110は、変位検出手段27によって第1の位置への変形が検出された場合には、ヒータ25の点灯率を最大点灯率100%から75%に減少させるようヒータ駆動回路114を制御し、さらに第2の位置への変形が検出された場合には、ヒータ25を消灯させるようヒータ駆動回路114を制御するようになっている。ここで、ヒータ25の点灯率は、単なる例示であってこれに限定されないし、本体制御部110は、ヒータ25の点灯率をさらに2段階以上に減少させるよう制御するようにしてもよい。
【0080】
次に、作用について説明する。
【0081】
次に、図2を参照して、定着装置20の動作について説明する。
まず、画像形成装置が出力信号を受けると(例えばユーザの操作パネルの操作等により画像形成装置に印刷要求があると) 、定着装置20において、加圧脱圧手段により加圧ローラ31が定着ベルト21を介してニップ形成部材26を押圧し、定着ニップ部38を形成する。
【0082】
ついで、不図示の駆動装置によって、加圧ローラ31が図2の時計回り方向(矢印B方向)に回転駆動されると、定着ベルト21も連れ回りして反時計回り方向(矢印A方向)に回転する。
【0083】
そして、それと同期して外部の電源からヒータ25に電力が供給され、加熱パイプ22はヒータ25から周方向、軸方向全幅において効率的に熱が伝達され、急速に加熱される。さらに、定着ベルト21には加熱パイプ22からの熱が伝達され、急速に加熱される。なお、駆動装置の動作とヒータ25による加熱は同時刻に同時に開始する必要はなく、適宜時間差を設けて開始してもよい。
【0084】
このとき、温度センサ28で検知される温度により定着ニップ部38における定着ベルト21が所定の温度となるように、ヒータ25による加熱制御が行われており、定着に必要な温度まで昇温された後、保持され、記録媒体Pの通紙が開始される。
【0085】
このように、定着装置20では、定着ベルト21およびヒータ25の熱容量が小さいため、省エネを図りつつウォームアップ時間やファーストプリント時間を短くすることができる。
【0086】
また、画像形成装置1への出力信号がない場合、通常は消費電力を抑えるために加圧ローラ31および定着ベルト21は非回転で、ヒータ25は通電を停止されているが、すぐに再出力を開始したい(復帰させたい) 場合は、加圧ローラ31及び定着ベルト21が非回転の状態でもヒータ25に通電しておくことが可能である。この場合は、ヒータ25に定着ベルト21の全体を保温させておく程度の通電を行う。
【0087】
次に、図6を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置1の処理フローについて説明する。なお、以下の処理は、装置本体1の電源が入っており、ユーザにより操作パネルからコピースタートボタンが押されたことを条件に開始される。また、以下の処理は、後述するように処理間隔Tで実行されるようになっている。
【0088】
本体制御部110は、ヒータ駆動回路114に最大点灯率100%で電力供給を開始させるよう制御する(ステップS10)。
【0089】
次いで、本体制御部110は、変位検出手段27が第1の位置を検出したか否かを判定する(ステップS11)。本体制御部110は、変位検出手段27が第1の位置を検出しない場合には、ヒータ駆動回路に最大点灯率100%で電力供給をさせるよう制御する(ステップS16)。一方、本体制御部110は、変位検出手段27が第1の位置を検出した場合には、ステップS12に移行する。
【0090】
次いで、本体制御部110は、変位検出手段27が第2の位置を検出したか否かを判定する(ステップS12)。本体制御部110は、変位検出手段27が第2の位置を検出しない場合には、ヒータ駆動回路に点灯率75%で電力供給をさせるよう制御する(ステップS15)。一方、本体制御部110は、変位検出手段27が第2の位置を検出した場合には、ヒータ駆動回路114に点灯率0%にさせるよう制御し、電力供給を遮断させる(ステップS13)。
【0091】
次いで、本体制御部110は、通紙が終了したか判定する(ステップS14)。具体的には、最後の記録媒体Pが排紙センサ113により検出されなくなったか否かにより判定する(ステップS14)。本体制御部110は、排紙センサ113からの信号が検出されている場合には、ステップS11に移行し、一方排紙センサ113からの信号が検出されなくなった場合には、終了する。
【0092】
次に、図7を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置1の変位検出手段27が有る場合と無い場合とのそれぞれにおける、定着ベルト21の変形量と、ヒータ25の点灯率と、定着ベルト21および加熱パイプ22の表面温度とについて説明する。
【0093】
まず、図7(a)に示すように、変位検出手段27が無い場合には、点灯率が100%に移行後直ぐ時刻tで定着ベルト21及び加熱パイプ22の表面温度は上昇する。このとき、定着ベルト21の変形量は、Xmaxに到達する。その後記録媒体Pによって定着ベルト21及び加熱パイプ22の温度は下がるが、記録媒体Pが定着装置20を通過後は、再び上昇する。このとき、定着ベルト21の変形量も定着ベルト21及び加熱パイプ22の温度上昇に追従するように上昇する。
【0094】
その後、時刻tにおいて加熱パイプ22の温度が定着ベルト21を含む構成部品の耐熱温度Tpmaxを超えてしまう。このように、加熱パイプ22は、軸方向両端部で定着ベルト21との間に隙間が生じてしまうことに起因して、加熱パイプ22の特に軸方向両端部において異常発熱が生じることとなる。
【0095】
次に、図6(b)に示すように、変位検出手段27が有る場合には、点灯率が100%に移行後直ぐに定着ベルト21及び加熱パイプ22の表面温度は上昇する。
【0096】
次いで、t1に到達すると、定着ベルト21及び加熱パイプ22の表面温度はさらに上昇し、定着ベルト21の変形量は、第1の位置に到達する。このため、本体制御部110は、ヒータ駆動回路114に点灯率75%でヒータを制御する。このように、図6(a)の変位検出手段27が無しの場合に比較して加熱パイプ22の表面温度の上昇速度を抑えているのが分かる。
【0097】
次いで、t2に到達すると、定着ベルト21及び加熱パイプ22の表面温度はさらに上昇し、定着ベルト21の変形量は、第2の位置に到達する。このため、本体制御部110は、ヒータ駆動回路114に点灯率0%でヒータ25を制御する。この結果、少なくとも加熱パイプ22の表面温度が耐熱温度を超えないように制御することができる。
【0098】
次いで、t3に到達すると、ヒータ25の点灯率に加え記録媒体Pの通過も伴って定着ベルト21及び加熱パイプ22の表面温度は下降し、定着ベルト21の変形量は、第1の位置を下回っている。このため、本体制御部110は、ヒータ駆動回路114に再び点灯率100%でヒータ25を制御させる。
【0099】
次いで、t4に到達すると、定着ベルト21及び加熱パイプ22の表面温度は再度上昇し、定着ベルト21の変形量は、再び第1の位置に到達する。このため、本体制御部110は、ヒータ駆動回路114に点灯率75%でヒータ25を制御させる。
【0100】
次いで、t5に到達すると、定着ベルト21及び加熱パイプ22の表面温度は下降し、定着ベルト21の変形量は、再び第1の位置を下回っている。このため、本体制御部110は、ヒータ駆動回路114に点灯率100%でヒータ25を制御させる。
【0101】
次いで、t6に到達すると、定着ベルト21及び加熱パイプ22の表面温度は再度上昇し、定着ベルト21の変形量は、再び第1の位置に到達する。このため、本体制御部110は、ヒータ駆動回路114に点灯率75%でヒータ25を制御させる。
【0102】
次いで、t7に到達すると、定着ベルト21及び加熱パイプ22の表面温度は下降し、定着ベルト21の変形量は、再び第1の位置を下回っている。このため、本体制御部110は、ヒータ駆動回路114に点灯率100%でヒータ25を制御させる。
【0103】
このように、変位検出手段27が有る場合には、点灯率を可変制御することにより、加熱パイプ22の温度が定着ベルト21を含む構成部品の耐熱温度Tpmaxを超えることがない。なお、図7(b)におけるt1からt7の間隔は、上述した本体制御部110における処理間隔Tに対応している。
【0104】
以上説明したように、本実施の形態に係る定着装置は、定着ベルト21を介して加熱パイプ22の変形を検出した場合には、加熱パイプ22への伝熱量を減少させることにより、少なくとも加熱パイプ22の変形を一定量以下に抑制することができるので、加熱パイプ22と定着ベルト21との隙間を抑制し加熱パイプ22の過昇温を防止することができる。この結果、定着ベルト21を含む各構成部品が破損することを防止できる。
【0105】
また、本実施の形態に係る定着装置は、定着ベルト21の変形によるその検出位置を軸方向に対して中央近傍、かつ断面方向に対して加熱範囲に配置することにより、定着ベルト21の変形が最大となる位置で検出可能となり、定着ベルト21の変形を高精度に検出することができる。
【0106】
また、本実施の形態に係る定着装置は、加熱パイプ22の変形に起因して定着ベルト21が変形しても、定着ベルト21の変形を検出することによって、加熱パイプ22の変形を検出することができる。しかも、定着ベルト21の変形を段階的に検出することができるので、ヒータ25の点灯率を段階的に減少させることができ、加熱パイプ22への伝熱量を最適に制御することができる。具体的には、加熱パイプ22の変形が許容可能な変形量までは本体制御部110によってヒータ25の点灯率を低下させることによって定着温度までの昇温時間を著しく低下させることなくその変形を一定量以下に抑制でき、一方、加熱パイプ22の変形が許容できないまで変形した場合は、本体制御部110によってヒータ25を消灯させることによって加熱パイプ22の過昇温および定着ベルト21を含む構成部品の破損を防止することができる。
【0107】
また、本実施の形態に係る定着装置は、接触コロ27bが定着ベルト21に接触することによる定着ベルト21を構成するベルト表面の局部的な磨耗を防止することができ、これにより画質低下を抑制することができる。
【0108】
また、本実施の形態に係る画像形成装置は、加熱パイプ22の変形を検出した場合には、加熱パイプ22への伝熱量を減少させることにより、加熱パイプ22の変形を一定量以下に抑制することができるので、定着ベルト21を含む各構成部品が破損することを防止できる。
【0109】
(第2の実施の形態)
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置について説明する。
本実施の形態に係る画像形成装置においては、第1の実施の形態に係る画像形成装置とは、加熱パイプを有しない点でその構成が異なるが、他の構成は略同様に構成されている。したがって、図1〜7に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点のみ詳述する。
【0110】
図8に示すように、定着ベルト21の内周面部21aには、フランジ部35aと摺接しない部分に、定着ベルト21の内部に配置された熱源からの輻射熱を効率良くかつすばやくベルト表面まで伝えるために熱吸収率の高い黒色にすべく黒色に塗装されている。これにより、定着ベルト21の長手方向の中央付近、すなわち定着ニップ部38において未定着トナーを永久定着する箇所において熱源からの熱を効率良く定着ベルト21の表面に伝達することができる。
【0111】
このように、第2の実施の形態に係る画像形成装置は、加熱パイプを除去した定着装置を備えている。この第2の実施の形態に係る画像形成装置も第1の実施の形態に係る画像形成装置と同様に定着ベルト21が変形するので、第1の実施の形態に係る画像形成装置と同様に変位検出手段27が設けられている。したがって、第2の実施の形態に係る画像形成装置も第1の実施の形態に係る画像形成装置と同様に各種センサの検出結果に基づいて本体制御部110が図6に示した制御フローにしたがって変位検出手段27を制御する。
【0112】
本体制御部110は、変位検出手段によって定着ベルト21の変形を検出した場合には定着ベルト21への伝熱量、すなわちヒータ25の点灯率を減少させるようになっている。
【0113】
具体的には、本体制御部110は、変位検出手段27によって第1の位置への変形が検出された場合には、ヒータ25の点灯率を最大点灯率100%から75%に減少させるようヒータ駆動回路114を制御し、さらに第2の位置への変形が検出された場合には、ヒータ25を消灯させるようヒータ駆動回路114を制御するようになっている。
【0114】
以上説明したように、本実施の形態に係る定着装置および画像形成装置は、定着ベルト21の変形を検出した場合には、定着ベルト21への伝熱量を減少させることにより、少なくとも定着ベルト21の変形を一定量以下に抑制することができるので、定着ベルト21を含む各構成部品が破損することを防止できる。
【0115】
また、本実施の形態に係る定着装置は、定着ベルト21の変形を段階的に検出することができるので、ヒータ25の点灯率を段階的に減少させることができ、定着ベルト21への伝熱量を最適に制御することができる。具体的には、定着ベルト21の変形が許容可能な変形量までは本体制御部110によってヒータ25の点灯率を低下させることによって定着温度までの昇温時間を著しく低下させることなくその変形を一定量以下に抑制でき、一方、加熱パイプ22の変形が許容出来ないまで変形した場合は、本体制御部110によってヒータ25を消灯させることによって定着ベルト21を含む構成部品の破損を防止することができる。
【0116】
また、本実施の形態に係る画像形成装置は、定着ベルト21の変形を検出した場合には、定着ベルト21への伝熱量を減少させることにより、定着ベルト21の変形を一定量以下に抑制することができるので、定着ベルト21を含む各構成部品が破損することを防止できる。
【符号の説明】
【0117】
1 画像形成装置
20 定着装置
21 定着ベルト(定着部材)
22 加熱パイプ(加熱部材)
23 支持部材
25 ヒータ(熱源)
26 ニップ形成部材
27 変位検出手段
27b 接触コロ(接触部)
28 温度センサ(温度検出手段)
29 第1の板金
31 加圧ローラ(加圧部材)
35 フランジ
38 定着ニップ部
41 第2の板金
110 本体制御部(制御手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】
【特許文献1】特開2007−206265号公報
【特許文献2】特開2009−3410号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する無端ベルト状の定着部材と、
前記定着部材の内部に配置されるとともにパイプ状の金属体によって構成され、前記定着部材の内周面に直接または間接的に摺接して前記定着部材を加熱する加熱部材と、
前記加熱部材を加熱する熱源と、
前記定着部材の外周側で該定着部材を押圧可能に配置され、前記定着部材を摺動させつつ回転させる加圧部材と、
前記定着部材の内部で前記加圧部材と対向するとともに、前記定着部材を介して前記加圧部材と当接してニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記定着部材の表面温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段によって検出された表面温度に基づいて前記熱源を制御して前記定着部材の表面温度を予め設定された表面温度に制御する制御手段と、を備えた定着装置であって、
前記定着部材を介して前記加熱部材の変形を検出する変位検出手段をさらに備え、前記変位検出手段によって前記加熱部材の変形を検出した場合に、前記制御手段によって前記加熱部材への伝熱量を減少させることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
内面が黒色化された可撓性を有する無端ベルト状の定着部材と、
前記定着部材の内部に配置されるとともに、前記定着部材を加熱する熱源と、
前記定着部材の外周側で該定着部材を押圧可能に配置され、前記定着部材を摺動させつつ回転させる加圧部材と、
前記定着部材の内部で前記加圧部材と対向するとともに、前記定着部材を介して前記加圧部材と当接してニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記定着部材の表面温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段によって検出された表面温度に基づいて前記熱源を制御して前記定着部材の表面温度を予め設定された表面温度に制御する制御手段と、を備えた定着装置であって、
前記定着部材の変形を検出する変位検出手段をさらに備え、前記変位検出手段によって前記定着部材の変形を検出した場合に、前記制御手段によって前記定着部材への伝熱量を減少させることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
前記変位検出手段は、前記定着部材の軸方向に対し中央近傍に配置され、かつ、前記定着部材の断面方向に対して加熱範囲に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記変位検出手段は、前記熱源が非加熱の状態で前記定着部材と接触しない位置に配置され、前記熱源によって前記定着部材が前記加熱範囲側に変形した第1の位置を検出し、前記熱源によって前記定着部材がさらに前記加熱範囲側に変形した第2の位置を検出し、
前記変位検出手段によって前記第1の位置への変形が検出された場合には、前記制御手段によって前記熱源の点灯率を減少させ、さらに前記第2の位置への変形が検出された場合には、前記制御手段によって前記熱源を消灯させることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記変位検出手段は、前記定着部材と接触した場合に連れ回り可能なコロ部材で形成された接触部を有することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の定着装置を用いて、記録媒体に転写されたトナー像を熱および圧力により定着させることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−57896(P2013−57896A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197411(P2011−197411)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】