説明

定着装置用摺動部材、定着装置、及び画像形成装置

【課題】摺動シートの歪みが抑制される定着装置用摺動部材を提供すること。
【解決手段】摺動面112を有する摺動シート110と、摺動シート110における摺動面112と反対側の面114に接し、摺動シート110を支持する支持部材120であって、摺動シート110に接する領域122における静止摩擦係数(μ1)が0.3より大きい支持部材120と、を備えた定着装置用摺動部材101である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置用摺動部材、定着装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加熱ローラと、前記加熱ローラに接触しながら回転する無端状のベルト部材と、前記ベルト部材の内側に配設される摺動シートと、前記摺動シートの内側に配設され、前記摺動シート及び前記ベルト部材を前記加熱ローラに押圧する押圧手段と、前記摺動シートと前記押圧手段とを保持する保持部材と、前記摺動シートを前記保持部材の所定位置に位置決めする位置決め部材と、前記加熱ローラと前記ベルト部材とを圧接又は圧接解除する圧接/圧接解除手段と、を有し、前記位置決め部材は、前記摺動シートにおけるベルト部材回転方向の先端部と後端部とを固定することにより、前記摺動シートを前記保持部材の所定位置に位置決めすることを特徴とする定着装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、記録材上の画像をニップ部にて加熱する第1のエンドレスベルトと、この第1のベルトとの間でニップ部を形成する第2のエンドレスベルトと、第1のベルトをニップ部にて加圧する第1の加圧パッドと、第2のベルトをニップ部にて加圧する第2 の加圧パッドと、を有し、前記第1の加圧パッドはパッド基体とベルトに接する摺動シートを有し、前記第2の加圧パッドはパッド基体とベルトに接する摺動シートを有することを特徴とする画像加熱装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−204924号公報
【特許文献2】特開2007−79034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、摺動シートの歪みが抑制される定着装置用摺動部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
摺動面を有する摺動シートと、
前記摺動シートにおける前記摺動面と反対側の面に接し、前記摺動シートを支持する支持部材であって、前記摺動シートに接する領域における静止摩擦係数(μ1)が0.3より大きい支持部材と、
を備えた定着装置用摺動部材である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記支持部材における前記摺動シートに接する領域は、サンドブラスト処理が施されている、請求項1に記載の定着装置用摺動部材である。
【0008】
請求項3に係る発明は、
第1回転体と、
前記第1回転体の外面に接して配置される第2回転体と、
前記第2回転体の内部のうち前記第1回転体と対向する位置において、前記摺動シートの前記摺動面が前記第2回転体の内面に接するように配置された請求項1又は請求項2に記載の定着装置用摺動部材と、
を備えた定着装置である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
前記摺動シートの前記摺動面における静止摩擦係数(μ2)よりも前記静止摩擦係数(μ1)の方が大きい、請求項3に記載の定着装置である。
【0010】
請求項5に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する請求項3に記載の定着装置である定着手段と、
を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、前記静止摩擦係数(μ1)が前記範囲から外れる場合に比べ、摺動シートの歪みが抑制される定着装置用摺動部材が提供される。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、前記サンドブラスト処理が施されていない場合に比べ、摺動シートの歪みが抑制される定着装置用摺動部材が提供される。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、前記静止摩擦係数(μ1)が前記範囲から外れる場合に比べ、摺動シートの歪みが抑制される定着装置が提供される。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、前記静止摩擦係数(μ2)よりも前記静止摩擦係数(μ1)の方が大きくない場合に比べ、摺動シートの歪みが抑制される定着装置が提供される。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、前記静止摩擦係数(μ1)が前記範囲から外れる定着装置を備える場合に比べ、摺動シートの歪みが抑制される画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る定着装置用摺動部材の端面を模式的に示す模式端面図である。
【図2】第1実施形態の定着装置の構成を示す概略図である。
【図3】第2実施形態の定着装置の構成を示す概略図である。
【図4】本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
[定着装置用摺動部材]
図1は、本実施形態に係る定着装置用摺動部材の端面を模式的に示す模式端面図である。
本実施形態に係る定着装置用摺動部材101(以下「摺動部材」と称する場合がある)は、図1に示すように、摺動シート110と支持部材120とを備えている。
摺動シート110は、例えば図1に示すようにシート状の部材であり、不図示の被摺動部材と摺動する摺動面112を有している。
一方、支持部材120は、摺動シート110における摺動面112と反対側の面114に接して設けられており、面114と接する領域である接触領域122を有する。つまり摺動部材101は、支持部材120の接触領域122が摺動シート110の面114に接触した状態で、支持部材120が摺動シート110を支持している。なお、摺動部材101は、不図示の固定部材(例えば、ねじ等)により支持部材120と摺動シート110とを固定し、接触領域122における接触状態を維持してもよい。
【0019】
本実施形態では、支持部材120の接触領域122における摺動シート110に対する静止摩擦係数(以下「静止摩擦係数(μ1)」と称する場合がある)が、0.3より大きい値を示す。すなわち、接触領域122において、支持部材120と摺動シート110との静止摩擦係数(μ1)が0.3より大きい。
本実施形態では、静止摩擦係数(μ1)が上記範囲であるため、静止摩擦係数(μ1)が上記範囲から外れる場合に比べ、摺動シート110の歪み(クリープ)が抑制される。
【0020】
従来の摺動部材では、上記静止摩擦係数(μ1)が0.3以下であり、摺動シートが被摺動部材に追従してずれたり移動したりするのを防止するため、例えば、ねじ等の固定部材によって摺動シートが支持部材に固定されている。例えばこのように、静止摩擦係数(μ1)が0.3以下であり、固定部材によって摺動シートが支持部材に固定された従来の摺動部材では、摺動シートが被摺動部材と摺動する際にせん断力を受けると、せん断方向に摺動シートの歪み(以下「クリープ」と称する場合がある)が生じる場合がある。そして摺動シートのクリープが生じると、それに伴って摺動シートの伸びが発生する場合があり、摺動シートが伸びて膜厚が薄くなることでさらにクリープが生じやすくなることで、摺動部材の寿命が短くなることが考えられる。
【0021】
一方本実施形態では、上記静止摩擦係数(μ1)が上記範囲であることにより、摺動シート110が受ける上記せん断力に伴うせん断方向のクリープが抑制される。
その理由は定かではないが、静止摩擦係数(μ1)が上記範囲であることで、摺動シート110が被摺動部材によって上記せん断力を受けても、接触領域122における支持部材120と摺動シート110との滑りが生じにくくなるからであると推測される。そして、上記滑りが生じにくいことにより、滑りに起因する摺動シート110の部分的な歪みが起こりにくく、その結果、上記せん断力を受けても接触領域122全体にわたって摺動シート110と支持部材120との接触状態が保たれやすいと考えられる。そのため本実施形態では、例えば上記のようにねじ等の固定部材によって摺動シート110が支持部材120に固定されていても、固定部材による固定が行われていなくても、クリープが抑制されると推測される。
【0022】
ここで、上記静止摩擦係数(μ1)は、例えば以下のようにして求められる。
具体的には、例えば、測定装置としてPin−on−Disk摩擦摩耗試験機(レスカ社製、型番:FPR−2100)を用い、Pin(Al製、加圧面積5mm×5mm)側に架橋PTFE等の摺動シート、Disk側にSUS304等の支持部材(サンドブラスト処理済み)を設置し、線速度1.5mm/sec、面圧4kgf/cmの条件で摩擦係数の測定を行なった。
【0023】
後述する静止摩擦係数(μ2)の測定についても、測定対象として摺動シート及び支持部材の代わりに摺動シート及び被摺動部材を用いる以外は、静止摩擦係数(μ1)と同様にして求められる。なお、摺動シートと被摺動部材との間に潤滑剤を保持させる場合は、前記潤滑剤を保持させた状態で測定を行う。
【0024】
静止摩擦係数(μ1)を前記範囲とする手段としては、例えば、支持部材120の接触領域122及び摺動シート110の面114の少なくとも一方を粗面とする方法が挙げられる。その中でも、少なくとも接触領域122が粗面である支持部材120を用いることで、静止摩擦係数(μ1)を前記範囲としやすい。その場合、用いる摺動シート110の面114は粗面であってもよく、粗面でなくてもよい。
【0025】
接触領域122が粗面である支持部材120としては、例えば、サンドブラスト処理が施された接触領域122を有する支持部材120が挙げられる。そして、サンドブラスト処理が施された支持部材120を用いることで、例えばその他の方法により接触領域122が粗面化された支持部材120を用いる場合に比べて、より静止摩擦係数(μ1)を前記範囲に制御しやすく、さらに前記クリープが抑制される。
サンドブラスト処理が施された支持部材120を用いることで静止摩擦係数(μ1)を前記範囲に制御しやすく、クリープが抑制される理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0026】
具体的には、サンドブラスト処理が施されて粗面化された領域は、単に粗い面(例えば単に表面粗さが大きい面)になるだけでなく、鋭く尖った突起を複数有する粗面になると考えられる。そのため、サンドブラスト処理が施された接触領域122を有する支持部材120を用いると、例えば表面粗さが大きいが上記鋭く尖った突起を有さない接触領域122を有する支持部材120を用いた場合に比べて、接触した摺動シート110の表面に上記鋭く尖った突起が刺さり、静止摩擦係数(μ1)の値が大きくなりやすいと考えられる。そして特に、接触領域122全体にわたって存在する前記突起が摺動シート110の面114に引っかかることで、摺動シート110に前記せん断力がかかっても、摺動シートの部分的な歪みが起こりにくく、クリープが抑制されると推測される。
【0027】
上記サンドブラスト処理で用いるブラスト材の種類としては、例えば、アルミナ、ガラスビーズ等が挙げられる。
また、静止摩擦係数(μ1)を前記範囲に調整するサンドブラスト処理の条件(ブラスト材の種類及び粒径、並びに吹きつけ強度等)は、支持部材120を構成する材料に応じて選択される。
例えば支持部材120を構成する材料が金属材料(具体的にはSUS304)である場合、例えば、ブラスト材として粒径が355μm以上500μm以下のガラスビーズ粒子を用い、吹きつけ強度(単位:MPa)0.15MPa以上0.5MPa以下の条件でサンドブラスト処理を行う。
また、例えば支持部材120を構成する材料が樹脂材料(具体的にはポリイミド)である場合、例えば、ブラスト材として粒径が355μm以上500μm以下のガラスビーズ粒子を用い、吹きつけ強度(単位:MPa)が0.1MPa以上0.15MPa以下の条件でサンドブラスト処理を行う。
【0028】
なお、接触領域122が粗面である支持部材120としては、上記サンドブラスト処理が施されたものに限定されず、例えば接触領域122全体にわたって鋭利な突起が形成されるように成型された支持部材120等が挙げられる。
【0029】
本実施形態では、静止摩擦係数(μ1)が前記の通り少なくとも0.3より大きい値であり、大きいほど望ましく、例えば0.35以上1以下であってもよい。
【0030】
以下、本実施形態に係る摺動部材101の構成材料や特性について説明する。
まず、摺動シート110について説明する。
摺動シート110を構成する材料としては、例えば樹脂材料が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
これらのうち、被摺動部材に対する摩擦係数を低く制御しやすい樹脂材料としては、例えばフッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂の具体例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」と称する場合がある)等が挙げられる。また、耐熱性を有し、かつ、機械的強度を有する樹脂材料としては、例えばポリイミド樹脂が挙げられる。
【0031】
摺動シート110は、図1に示すように単層で構成されてもよいが、多層で構成されていてもよい。具体的には、例えば、PTFEの単層で構成された摺動シート、PTFEの層とポリイミド樹脂の層とで構成され、PTFEの層が摺動面である2層構造の摺動シート等が挙げられる。また摺動シート110は、同種の材料を2層以上積層したものや、3層以上で構成されたものであってもよい。ただし、接着面を有する多層の摺動シートに比べて、単層の摺動シート110の方が、摺動シートの耐久性が良好であると考えられる。
【0032】
摺動シート110の厚みについては、摺動シート110の層構成や樹脂材料の種類等によって選択されるが、例えば20μm以上300μm以下が挙げられ、50μm以上250μm以下であってもよい。
【0033】
摺動シート110は、必要に応じて充填材等その他添加剤を含んでもよい。
充填材としては、例えば、導電性付与、耐久性、熱伝導性を向上させる目的で添加される充填材が挙げられる。充填材の具体例としては、例えば、金属酸化物粒子、ケイ酸塩鉱物、カーボンブラック、窒素化合物等が挙げられる。この中でも、導電性を付与する目的で添加される充填材としては、例えば、ケッチェンブラック、黒鉛、アセチレンブラックが挙げられる。また、熱伝導性を付与する目的で添加される充填材としては、例えば、黒鉛、銅、銀、窒化アルミ、窒化硼素、アルミナが挙げられる。充填材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
充填材の平均粒径としては、例えば0.01μm以上20μmの範囲が挙げられる。
充填材の含有量としては、例えば、摺動シートを構成する樹脂材料100質量部に対して、0.01質量部以上30質量部以下の範囲が挙げられる。
【0034】
次に、支持部材120について説明する。
支持部材120を構成する材料としては、例えば、SUS、アルミ、等の金属材料、ポリイミド等の樹脂材料等が挙げられ、1種の材料で構成されていてもよく、2種以上の材料が用いられていてもよい。これらのうち、耐久性を有する支持部材120の材料としては、金属材料が挙げられる。後述するように、例えば支持部材120の接触領域122を粗面化して静止摩擦係数(μ1)を前記範囲とした場合、支持部材120の材料(特に支持部材120の接触領域122を構成する材料)として金属材料を用いることで、樹脂材料を用いた場合等に比べて、粗面における凸部の耐久性が高くなると考えられる。
支持部材120の形状は、摺動シート110との接触領域122を有する形状であれば特に限定されない。
【0035】
[定着装置]
以下、本実施形態に係る定着装置の一例について説明する。
本実施形態に係る定着装置は、第1回転体と、第1回転体の外面に接して配置される第2回転体と、第2回転体の内部のうち第1回転体と対向する位置に配置され、摺動シートの摺動面が第2回転体の内面に接する上記実施形態の定着装置用摺動部材と、を少なくとも備えている。すなわち上記第2回転体が前記被摺動部材であり、第2回転体が回転することで、摺動部材における摺動シートの摺動面(図1の摺動面112)が第2回転体の内面に接して摺動する構成となっている。
【0036】
本実施形態においては、摺動シートの摺動面における静止摩擦係数(μ2)よりも前記静止摩擦係数(μ1)の方が大きいことが望ましい。それにより、静止摩擦係数(μ1)の方が小さい場合に比べて、前記クリープが抑制される。その理由は定かではないが、静止摩擦係数(μ1)が静止摩擦係数(μ2)よりも大きいことにより、摺動シートが第2回転体から受けるせん断力よりも、摺動シートと支持部材との接触領域における滑りを抑制する能力の方が上回るためであると推測される。
【0037】
本実施形態における静止摩擦係数(μ1)と静止摩擦係数(μ2)との差(μ1−μ2)としては、例えば0.15以上0.22以下が挙げられる。
【0038】
本実施形態では、静止摩擦係数(μ1)が静止摩擦係数(μ2)よりも大きくなるように摺動シートと支持部材との組み合わせを選択してもよく、静止摩擦係数(μ2)が静止摩擦係数(μ1)よりも小さくなるように第2回転体を選択してもよい。また、第2回転体の内面と摺動シートの摺動面とが接触する領域に潤滑剤を保持させ、さらに静止摩擦係数(μ2)が小さくなるように制御してもよい。
【0039】
静止摩擦係数(μ1)が大きくなる摺動シートと支持部材との組み合わせとしては、例えば前記のように、接触領域が粗面である支持部材を用いる方法等が挙げられる。
また静止摩擦係数(μ2)が小さくなるように制御する方法としては、例えば、第2回転体を構成する材料を選択する方法や、第2回転体の内面における表面状態(例えば表面粗さ等)を調整する方法等が挙げられる。
第2回転体を構成する材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0040】
第2回転体の内面における表面状態としては、例えば、表面粗さRaが0.1μm以上2.0μm以下が挙げられ、表面粗さRaが0.3μm以上1.5μm以下であってもよい。上記表面粗さRaの測定は、表面粗さ計サーフコム1400A(東京精密社製)を用いて、JIS B0601−1994に準拠し、評価長さLnを4mm、基準長さLを0.8mm、カットオフ値を0.8mmとした測定条件で行う。
また上記潤滑剤としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素オイル、合成潤滑油グリス、シリコーングリス、フッ素グリス等が挙げられ、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本実施形態に係る定着装置としては、種々の構成があり、以下に、第1実施形態として、加熱源を有する加熱ロール(第1回転体)と上記実施形態の摺動部材が摺動する被摺動部材である加圧ベルト(第2回転体)とを備えた定着装置を説明し、第2実施形態として、上記実施形態の摺動部材が摺動する被摺動部材である加熱ベルト(第2回転体)と加圧ロール(第1回転体)とを備えた定着装置を説明する。
【0042】
−定着装置の第1実施形態−
まず、第1実施形態に係る定着装置60について説明する。図2は、第1実施形態の定着装置60の構成を示す概略図である。
【0043】
第1実施形態に係る定着装置60は、図2に示すように、例えば、回転駆動する第1回転体の一例としての加熱ロール61と、第2回転体の一例としての加圧ベルト62と、加圧ベルト62の内面に接して摺動する摺動シート68と、摺動シート68を支持する支持部材としての押圧パッド64と、を備えて構成されている。
定着装置60においては、摺動シート68及び押圧パッド64によって前記実施形態の定着装置用摺動部材が構成されている。
【0044】
本実施形態では、押圧パッド64が摺動シート68及び加圧ベルト62を介して加熱ロール61を押圧している。ただし加圧ベルト62と加熱ロール61とが相対的に加圧されていればよい。具体的には、例えば、加圧ベルト62側が加熱ロール61に加圧されてもよく、加熱ロール61側が加圧ベルト62に加圧されてもよい。
【0045】
加熱ロール61は、例えば、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に耐熱性弾性体層612及び離型層613を積層して構成されたものである。加熱ロール61の内部には、加熱手段の一例としてのハロゲンランプ66が配設されている。加熱手段としては、ハロゲンランプに限られず、発熱する他の発熱部材を用いてもよい。
【0046】
一方、加熱ロール61の表面には、例えば、感温素子69が接触して配置されている。この感温素子69による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ66の点灯が制御され、加熱ロール61の表面温度が設定温度(例えば、150℃)に維持される。
【0047】
加圧ベルト62は、例えば、内部に配置された押圧パッド64とベルト走行ガイド63とによって回転自在に支持されている。そして、挟込領域N(ニップ部)において押圧パッド64により加熱ロール61に対して押圧されて配置されている。
【0048】
押圧パッド64は、例えば、加圧ベルト62の内側において、加圧ベルト62を介して加熱ロール61に加圧される状態で配置され、加熱ロール61と挟込領域Nを形成している。
押圧パッド64は、例えば、幅の広い挟込領域Nを確保するための挟込部材64aを挟込領域Nの入口側に配置し、加熱ロール61に歪みを与えるための剥離挟込部材64bを挟込領域Nの出口側に配置している。
【0049】
そして、挟込部材64a及び剥離挟込部材64bの加圧ベルト62と接する面にシート状の摺動シート68が設けられている。そして、押圧パッド64と摺動シート68とは、例えば金属製の保持部材65に保持されている。
なお、摺動シート68は、その摺動面が加圧ベルト62の内面と接するように設けられている。
【0050】
保持部材65には、例えば、ベルト走行ガイド63が取り付けられ、加圧ベルト62が回転する構成となっている。
また保持部材65には、定着装置60の長手方向に亘って潤滑剤塗布部材67が配設されている。潤滑剤塗布部材67は、加圧ベルト62の内周面に対して接触するように配置され、潤滑剤を供給する。
なお、定着装置60では、潤滑剤塗布部材67により加圧ベルト62の内周面に潤滑剤を供給しているが、潤滑剤塗布部材および潤滑剤を用いない形態としてもよい。
【0051】
加熱ロール61は、例えば、図示しない駆動モータにより矢印C方向に回転し、この回転に従動して加圧ベルト62は、加熱ロール61の回転方向と反対の方向へ回転する。すなわち、例えば、加熱ロール61が図2における時計方向へ回転するのに対して、加圧ベルト62は反時計方向へ回転する。
【0052】
そして、未定着トナー像を有する用紙K(記録媒体)は、例えば、定着入口ガイド56によって導かれて、挟込領域Nに搬送される。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上のトナー像は挟込領域Nに作用する圧力と熱とによって定着される。
【0053】
第1実施形態の定着装置60では、例えば、加熱ロール61の外周面に倣う凹形状の挟込部材64aにより、挟込部材64aがない構成に比して、広い挟込領域Nが確保される。
【0054】
また、第1実施形態に係る定着装置60では、例えば、加熱ロール61の外周面に対し突出させて剥離挟込部材64bを配置することにより、挟込領域Nの出口領域において加熱ロール61の歪みが局所的に大きくなるように構成されている。
【0055】
このように剥離挟込部材64bを配置すれば、例えば、定着後の用紙Kは、剥離挟込部材64bの領域を通過する際に、局所的に大きく形成された歪みを通過することになるので、用紙Kが加熱ロール61から剥離しやすい。
【0056】
剥離の補助手段として、例えば、加熱ロール61の挟込領域Nの下流側に、剥離部材70が配設されている。剥離部材70は、例えば、剥離爪71が加熱ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に加熱ロール61と近接する状態で保持部材72によって保持されている。
【0057】
−定着装置の第2実施形態−
次に、第2実施形態に係る定着装置80について説明する。図3は、第2実施形態に係る定着装置80の構成を示す概略図である。
【0058】
第2実施形態に係る定着装置80は、図3に示すように、例えば、第2回転体の一例として加熱ベルト84を備える定着ベルトモジュール86と、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)に押圧して配置された第1回転体の一例としての加圧ロール88とを含んで構成されている。そして、例えば、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)と加圧ロール88とが接触する挟込領域N(ニップ部)が形成されている。挟込領域Nでは、記録媒体の一例としての用紙Kが加圧及び加熱されトナー像が定着される。
【0059】
定着ベルトモジュール86は、例えば、無端状の加熱ベルト84と、加圧ロール88側で加熱ベルト84が巻き掛けられ、加熱ベルト84をその内面から加圧ロール88側へ押し付ける押圧パッド89と、モータ(図示省略)の回転力で回転駆動すると共に加熱ベルト84を加熱し、押圧パッド89と異なる位置で内側から加熱ベルト84を支持する支持ロール90とを備えている。
【0060】
そして、定着ベルトモジュール86は、例えば、加熱ベルト84と押圧パッド89との間に、シート状の摺動シート82が介在するように設けられている。摺動シート82は、その摺動面が加熱ベルト84の内面と接するように設けられている。また摺動シート82は、摺動面と反対側の面が押圧パッド89に接触し、例えば不図示の固定部材によって押圧パッド89に固定されている。
また押圧パッド89は、例えば、保持部材96によって保持されている。
【0061】
支持ロール90は、アルミニウムで形成された円筒状ロールであり、内部には加熱源の一例としてハロゲンヒータ90Aが配設されており、加熱ベルト84を内面側から加熱するようになっている。
支持ロール90の両端部には、例えば、加熱ベルト84を外側に押圧するバネ部材(図示省略)が配設されている。
【0062】
支持ロール92は、例えば、アルミニウムで形成された円筒状ロールであり、支持ロール92の表面には厚み20μmのフッ素樹脂からなる離型層が形成されている。
支持ロール92の離型層は、例えば、加熱ベルト84の外周面からのトナーや紙粉が支持ロール92に堆積するのを防止するために形成されるものである。
支持ロール92の内部には、例えば、加熱源の一例としてハロゲンヒータ92Aが配設されており、加熱ベルト84を外周面側から加熱するようになっている。
【0063】
つまり、例えば、支持ロール90及び支持ロール92とによって、加熱ベルト84が加熱される構成となっている。
【0064】
姿勢矯正ロール94は、例えば、アルミニウムで形成された円柱状ロールであり、姿勢矯正ロール94の近傍には、加熱ベルト84の端部位置を測定する端部位置測定機構(図示省略)が配置されている。
姿勢矯正ロール94には、例えば、端部位置測定機構の測定結果に応じて加熱ベルト84の軸方向における当り位置を変位させる軸変位機構(図示省略)が配設され、加熱ベルト84の蛇行を制御するように構成されている。
【0065】
一方、加圧ロール88は、例えば、アルミニウムからなる円柱状ロール88Aを基体として、基体側から順に、シリコーンゴムからなる弾性層88Bと、膜厚100μmのフッ素系樹脂を含む剥離層とが積層された構成となっている。また、加圧ロール88は、回転自在に支持されると共に、図示しないスプリング等の付勢手段によって加熱ベルト84が押圧パッド89に巻き回された部位に押圧されて設けられている。これにより加圧ロール88は、定着ベルトモジュール86の加熱ベルト84が矢印E方向へ回転移動するのに伴って、加熱ベルト84に従動して矢印F方向に回転移動するようになっている。
【0066】
そして、未定着トナー像を有する用紙Kは、定着装置80の挟込領域Nに導かれ、挟込領域Nに作用する圧力と熱とによって定着される。
【0067】
なお、本実施形態では、摺動シート82を支持する部材として押圧パッド89が用いられているが、摺動シート82を支持する部材であればこれに限られず、押圧パッド89の代わりに、例えば支持ロール等を用いてもよい。
【0068】
[画像形成装置]
次に、本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
図4は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置では、上記実施形態に係る定着装置が適用される。
【0069】
本実施形態に係る画像形成装置100は、図4に示すように、例えば、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Kに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙K上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0070】
この定着装置60が既述の第1実施形態の定着装置である。なお、画像形成装置100は、既述の第2実施形態に係る定着装置80を備える構成であってもよい。
【0071】
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する像保持体の一例として、矢印A方向に回転する感光体11を備えている。
【0072】
感光体11の周囲には、前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段の一例として、感光体11を帯電させる帯電器12が設けられ、前記帯電手段により帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段の一例として、感光体11上に静電潜像を書込むレーザー露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0073】
また、感光体11の周囲には、前記潜像形成手段により前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。
【0074】
さらに、感光体11の周囲には、感光体11上の残留トナーが除去される感光体クリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザー露光器13、現像器14、一次転写ロール16及び感光体クリーナ17の電子写真用デバイスが感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、配置されている。
【0075】
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミド又はポリアミド等の樹脂をベース層としてカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の加圧ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は10から1014Ωcmとなるように形成されており、その厚みは、例えば、0.1mm程度に構成されている。
【0076】
中間転写ベルト15は、各種ロールによって図4に示すB方向に循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、モータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体11の配列方向に沿って延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能する張力付与ロール33、二次転写部20に設けられる背面ロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニング背面ロール34を有している。
【0077】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5から108.5Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。
【0078】
そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体11に接触配置され、さらに一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0079】
二次転写部20は、背面ロール25と、前記現像手段により形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段の一例としての、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
【0080】
背面ロール25は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRのブレンドゴムのチューブ、内部はEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が10から1010Ω/□となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。この背面ロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
【0081】
一方、二次転写ロール22は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5から108.5Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。
【0082】
そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んで背面ロール25に接触配置され、さらに二次転写ロール22は接地されて背面ロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙K上にトナー像を二次転写する。
【0083】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。
【0084】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0085】
更に、本実施形態の画像形成装置では、用紙Kを搬送する搬送手段として、用紙Kを収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙Kを取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Kを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Kを二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Kを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Kを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0086】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
本実施形態に係る画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
【0087】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザー露光器13に出力される。
【0088】
レーザー露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザーから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザー露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0089】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0090】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から用紙Kが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Kは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてロール(図示せず)が回転することで、用紙Kの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0091】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22が背面ロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Kは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22と背面ロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22と背面ロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙K上に一括して静電転写される。
【0092】
その後、トナー像が静電転写された用紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Kを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙K上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙K上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Kは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0093】
一方、用紙Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニング背面ロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良を、本発明の要件を満足する範囲内で実現してもよいことは言うまでもない。
【0095】
なお、本実施形態に係る画像形成装置では、電子写真方式の画像形成装置について説明したが、これに限られず、電子写真方式以外の公知の画像形成装置(例えば、用紙搬送用の無端ベルトを備えたインクジェット記録装置など)であってもよい。
【実施例】
【0096】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0097】
(実施例1)
−支持部材1の製造−
支持部材の材料として、金属材料(具体的にはSUS304)で構成された直方体形状の成型体を準備した。
次に、成型体の表面をサンドブラスト処理によって粗面化を行った。具体的には、ブラスト材として粒径が355μm以上500μm以下のガラスビーズ粒子を用い、吹きつけ強度0.2MPaで吹きつけることにより、サンドブラスト処理によって粗面化された支持部材1を得た。
【0098】
−摺動シート1の製造−
架橋PTFEシート(日立電線製:エクセロンXF−1B、厚さ:0.3mm)を使い、単層の摺動シート1を得た。
【0099】
−加熱ベルト1の製造−
外径168mm、長さ360mm、厚さ80μmのポリイミド基体を準備した。基体上に、硬度35(A)のシリコーンゴムからなる弾性層を300μm形成した。裏面にエキシマレーザー処理を施している、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体から成るフッ素樹脂層チューブを準備した。このフッ素樹脂チューブを前記弾性層上に被覆し、熱風オーブンにて200℃で4時間焼成することにより、加熱ベルト1を得た。
【0100】
得られた支持部材1と摺動シート1との間の静止摩擦係数(μ1)、摺動シート1と加熱ベルト1との静止摩擦係数(μ2)について、前記方法によって測定した結果を表1に示す。なお、静止摩擦係数(μ2)の測定においては、潤滑剤を用いずに行った。
【0101】
−摺動部材1の製造−
支持部材1に摺動シート1を接触させ、固定部材(板金)によって摺動シート1の端部を支持部材1の側面部に固定し、摺動部材1を得た。
【0102】
−評価−
得られた摺動部材1及び加熱ベルト1を、潤滑剤を用いずに、図3に示した定着装置を有する画像形成装置(富士ゼロックス社製、型番:Color 1000 Press)に装着し、プロセススピード(画像形成速度)を180枚/分(800mm/s)に設定して1,200,000(1.2Mpv)枚の通紙を行った。
【0103】
(摺動シートの耐クリープ性の評価)
通紙前と通紙後の全体長(摺動シートのプロセス方向の長さ)の測定を行い、通紙前に比べて通紙後の全体長が1%以上伸びた際に、「クリープが発生した」と判断した。本実施例では通紙前の全体長が10.0cmの摺動シートを使用したので、1mm以上伸びたか否かを測定することにより、摺動シートのクリープが生じているか否かを判断した。
【0104】
耐クリープ性の評価基準は以下の通りであり、結果を表1に示す。
◎:1,200,000(1.2Mpv)枚の通紙を行っても、クリープの発生は見られなかった。
○:1,000,000(1Mpv)枚目ではクリープは発生しなかったが、1,001,000枚目においてクリープの発生が見られた。
△:800,000(800Kpv)枚目ではクリープは発生しなかったが、801,000枚目においてクリープの発生が見られた。
×:600,000枚(600Kpv)枚目までにおいてクリープの発生が見られた。
【0105】
(摺動シートの耐久性の評価)
摺動シートの損傷を目視で確認することにより、摺動シートの耐久性を判断した。
耐久性の評価基準は以下の通りであり、結果を表1に示す。
◎:1,200,000(1.2Mpv)枚の通紙を行っても、摺動シートの損傷は見られなかった。
○:1,000,000(1Mpv)枚目では損傷がなかったが、1,001,000枚目において損傷が見られた。
△:800,000(800Kpv)枚目では損傷がなかったが、801,000枚目において損傷が見られた。
×:600,000枚(600Kpv)枚目までにおいて損傷が見られた。
【0106】
(実施例2)
−支持部材2の製造−
支持部材の材料として、樹脂材料(具体的にはポリイミド)で構成された直方体形状の成型体を準備した。
次に、成型体の表面をサンドブラスト処理によって粗面化を行った。具体的には、ブラスト材として粒径が355μm以上500μm以下のガラスビーズ粒子を用い、吹きつけ強度0.1MPaで吹きつけることにより、サンドブラスト処理によって粗面化された支持部材2を得た。
【0107】
摺動シートとして実施例1で得られた摺動シート1を用い、加熱ベルトとして実施例1で得られた加熱ベルト1を用い、実施例1と同様にして静止摩擦係数(μ1)及び静止摩擦係数(μ2)を測定した。結果を表1に示す。
【0108】
−摺動部材2の製造及び評価−
支持部材1の代わりに支持部材2を用いた以外は、摺動部材1と同様にして摺動部材2を得た。
摺動部材1の代わりに摺動部材2を用いた以外は、実施例1と同様にして、耐クリープ製及び耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
(実施例3)
−摺動シート3の製造−
ポリイミドシート(宇部興産社製:UPILEX RN−75)を用意し、厚さが75μmであるポリイミドシートを得た。
得られたポリイミドシートに、架橋PTFEシート(日立電線社製、品番:エクセロンXF−1B、厚さ:100μm)を、接着剤(東芝GE社製、品番:SILMATE82−W−100)によって張り合わせ、複層構造の摺動シート3を得た。
【0110】
支持部材として実施例1で得られた支持部材1を用い、加熱ベルトとして実施例1で得られた加熱ベルト1を用い、実施例1と同様にして、支持部材1と摺動シート3のポリイミドシート面との静止摩擦係数(μ1)、加熱ベルト1と摺動シート3の架橋PTFEシート面との静止摩擦係数(μ2)を測定した。結果を表1に示す。なお、静止摩擦係数(μ2)の測定においては、潤滑剤を用いずに行った。
【0111】
−摺動部材3の製造及び評価−
摺動シート1の代わりに摺動シート3を用い、摺動シート3のポリイミドシート側の面を支持部材1に接触させた以外は、摺動部材1と同様にして摺動部材3を得た。
摺動部材1の代わりに摺動部材3を用いた以外は、実施例1と同様にして、耐クリープ製及び耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。なお、本実施例の耐久性の評価において見られた摺動シートの損傷は、ポリイミドシートと架橋PTFEシートとの剥がれであった。
【0112】
(実施例4)
−支持部材4の製造−
サンドブラスト処理の条件を、吹きつけ強度0.15MPaとした以外は、支持部材1と同様にして、支持部材4を得た。
【0113】
摺動シートとして実施例1で得られた摺動シート1を用い、加熱ベルトとして実施例1で得られた加熱ベルト1を用い、実施例1と同様にして静止摩擦係数(μ1)及び静止摩擦係数(μ2)を測定した。結果を表1に示す。
【0114】
−摺動部材4の製造及び評価−
支持部材1の代わりに支持部材4を用いた以外は、摺動部材1と同様にして摺動部材4を得た。
摺動部材1の代わりに摺動部材4を用いた以外は、実施例1と同様にして、耐クリープ製及び耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0115】
(実施例5)
−加熱ベルト5の製造−
粗面になっていないポリイミド基体を使用した加熱ベルトの代わりにブラスト材として粒径が355μm以上500μm以下のガラスビーズ粒子を用い、吹きつけ強度0.1MPaで吹きつけしたポリイミド基体を使用した以外は、加熱ベルト1と同様にして、加熱ベルト5を得た。
【0116】
支持部材として実施例1で得られた支持部材1を用い、摺動シートとして実施例1で得られた摺動シート1を用い、実施例1と同様にして静止摩擦係数(μ1)及び静止摩擦係数(μ2)を測定した。結果を表1に示す。なお、静止摩擦係数(μ2)の測定においては、潤滑剤を用いずに行った。
【0117】
−評価−
加熱ベルト1の代わりに加熱ベルト5を用いた以外は、実施例1と同様にして、耐クリープ製及び耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
(比較例1)
−支持部材6の製造−
サンドブラスト処理を行わない以外は、支持部材1と同様にして、支持部材6を得た。
【0119】
摺動シートとして実施例1で得られた摺動シート1を用い、加熱ベルトとして実施例1で得られた加熱ベルト1を用い、実施例1と同様にして静止摩擦係数(μ1)及び静止摩擦係数(μ2)を測定した。結果を表1に示す。
【0120】
−摺動部材6の製造及び評価−
支持部材1の代わりに支持部材6を用いた以外は、摺動部材1と同様にして摺動部材6を得た。
摺動部材1の代わりに摺動部材6を用いた以外は、実施例1と同様にして、耐クリープ製及び耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
(比較例2)
支持部材として比較例1で得られた支持部材6を用い、摺動シートとして実施例1で得られた摺動シート1を用い、加熱ベルトとして実施例1で得られた加熱ベルト1を用い、摺動シート1と加熱ベルト1との間に潤滑剤(ジメチルシリコーンオイル(信越化学社製;KF−96−300cs))を用いた以外は、実施例1と同様にして静止摩擦係数(μ1)及び静止摩擦係数(μ2)を測定した。結果を表1に示す。
【0122】
−評価−
摺動部材1の代わりに摺動部材6を用い、摺動シート1と加熱ベルト1との間に潤滑剤(ジメチルシリコーンオイル(信越化学社製;KF−96−300cs))を用いた以外は、実施例1と同様にして、耐クリープ製及び耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
(比較例3)
−支持部材8の製造−
サンドブラスト処理の代わりに、ロータリー研磨で粗面にした以外は、支持部材1と同様にして、支持部材8を得た。
【0124】
摺動シートとして実施例1で得られた摺動シート1を用い、加熱ベルトとして実施例1で得られた加熱ベルト1を用い、実施例1と同様にして静止摩擦係数(μ1)及び静止摩擦係数(μ2)を測定した。結果を表1に示す。
【0125】
−摺動部材8の製造及び評価−
支持部材1の代わりに支持部材8を用いた以外は、摺動部材1と同様にして摺動部材8を得た。
摺動部材1の代わりに摺動部材8を用いた以外は、実施例1と同様にして、耐クリープ製及び耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0126】
【表1】



【0127】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、摺動シートのクリープが抑制されていることがわかる。
【符号の説明】
【0128】
11 感光体(像保持体)
12 帯電器(帯電手段)
13 レーザー露光器(潜像形成手段)
14 現像器(現像手段)
15 中間転写ベルト
16 一次転写ロール
22 二次転写ロール(転写手段)
60 定着装置(定着手段)
61 加熱ロール
62 加圧ベルト
64 押圧パッド
68 摺動シート
80 定着装置
82 摺動シート
84 加熱ベルト
86 定着ベルトモジュール
88 加圧ロール
89 押圧パッド
100 画像形成装置
101 摺動部材
110 摺動シート
112 摺動面
114 面
120 支持部材
122 接触領域
Bm 露光ビーム
K 用紙
N 挟込領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動面を有する摺動シートと、
前記摺動シートにおける前記摺動面と反対側の面に接し、前記摺動シートを支持する支持部材であって、前記摺動シートに接する領域における静止摩擦係数(μ1)が0.3より大きい支持部材と、
を備えた定着装置用摺動部材。
【請求項2】
前記支持部材における前記摺動シートに接する領域は、サンドブラスト処理が施されている、請求項1に記載の定着装置用摺動部材。
【請求項3】
第1回転体と、
前記第1回転体の外面に接して配置される第2回転体と、
前記第2回転体の内部のうち前記第1回転体と対向する位置において、前記摺動シートの前記摺動面が前記第2回転体の内面に接するように配置された請求項1又は請求項2に記載の定着装置用摺動部材と、
を備えた定着装置。
【請求項4】
前記摺動シートの前記摺動面における静止摩擦係数(μ2)よりも前記静止摩擦係数(μ1)の方が大きい、請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する請求項3又は請求項4に記載の定着装置である定着手段と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−44817(P2013−44817A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181006(P2011−181006)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】