説明

定着装置用発熱ベルトと画像形成装置

【課題】発熱ベルトの低抵抗化が有効に出来、十分な性能を長期にわたって維持することができ、かつ、ウォーミングアップタイムが短く、省エネルギー性能を有した定着装置用発熱ベルトとそれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】粉体トナーを用いて形成されたトナー像を画像支持体に転写後、加熱定着する定着装置用発熱ベルトであって、下記1〜3の形状を示す導電性繊維を樹脂に含有させたことを特徴とする定着装置用発熱ベルト。
1.アスペクト比:0.025≦(A/B)≦0.25
2.導電性繊維の直径(A):0.5μm≦A≦30μm
3.導電性繊維の長さ(B):5.0μm≦B≦1000μm

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置用発熱ベルトとそれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザービームプリンター等の画像形成装置では、トナー現像後、普通紙等の画像支持体上に転写された未定着トナー像を、熱ローラ方式で接触加熱定着する方法が多く用いられてきた。
【0003】
しかし、熱ローラ方式は定着可能な温度まで熱するのに時間がかかり、かつ多量の熱エネルギーを要する。電源投入からコピースタートまでの時間(ウォーミングアップタイム)短縮と、省エネルギーの観点から、近年は熱フィルム定着方式が主流になってきている。
【0004】
この熱フィルム定着方式の定着装置(定着器)では、ポリイミド等の耐熱性フィルムの外面にフッ素樹脂等の離型性層が積層されたシームレスの定着ベルトが用いられている。
【0005】
ところで、このような熱フィルム定着方式の定着装置では、例えばセラミックヒーターを介してフィルムが加熱され、そのフィルム表面でトナー像が定着されるため、フィルムの熱伝導性が重要なポイントとなる。しかし、定着ベルトフィルムを薄膜化して熱伝導性を改善しようとすると機械的強度が低下し、高速で回動させることが難しくなり高速で高画質画像を形成するには問題が生じ、かつ、セラミックヒーター等が破損しやすいという問題も出てくる。
【0006】
このような問題を解決するために、近年、定着ベルトそのものに発熱体を設け、この発熱体に給電することにより定着ベルトを直接加熱し、トナー像を定着させる方式が提案されている。この方式の画像形成装置は、ウォーミングアップタイムが短く、消費電力も熱フィルム定着方式より小さく、熱定着装置として、省エネルギー化と高速化などの面から優れている。
【0007】
これらの技術としては、例えば発熱体は、導電性セラミック、導電性カーボン、金属粉体等の導電性材料と、絶縁性セラミックや耐熱性樹脂等の絶縁性材料から構成されるもの(特許文献1)、ポリイミド樹脂にカーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子を分散した発熱層と絶縁層と離型層を有した発熱ベルト(特許文献2)、正温度特性を有する発熱ベルトを用いた定着装置であり、発熱層は導電性酸化物で樹脂と混合も可能な技術(特許文献3)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−281123号公報
【特許文献2】特開2007−272223号公報
【特許文献3】特開2006−350241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発熱ベルトによる定着装置に関する技術開発は上記の如く盛んに行われているが、発熱ベルトの低抵抗化が有効にできる銅、ニッケル、銀などの金属系フィラーは、酸化による抵抗値増大、安全性、価格が高い等の何らかの問題を抱えていて、発熱ベルトとして十分な性能を長期にわたって維持することができない。それ故、発熱ベルトとしての特長であるウォーミングアップタイムが短く、省エネルギー性能を有した発熱ベルトを用いた定着装置はいまだに開発されていないのが実態である。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものである。
【0011】
即ち、本発明の目的は、発熱ベルトの低抵抗化が有効に出来、十分な性能を長期にわたって維持することができ、かつ、ウォーミングアップタイムが短く、省エネルギー性能を有した定着装置用発熱ベルトとそれを用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者は、安価で物質としても安定である金属や黒鉛等の繊維を使用した場合の低抵抗化効果(省エネルギー性能)に注目し、その実用化の可能性を鋭意検討した。金属や黒鉛等は、定着ベルトで使用する温度域100〜200℃では極めて安定である。また、黒鉛は炭素のみで構成されているため、安全面に対しても課題は見当たらず、コストに関する課題もない。但し、球形や扁平状黒鉛は、銅やニッケルのような低抵抗金属系フィラーほど抵抗が下がらない課題が残っていた。
【0013】
しかしながら、ある特定要件を満たす繊維状フィラーを使用すると、銀やニッケルのような金属フィラーなみの低抵抗化が達成できることがわかった。これは、従来の球状導電性材料と比べ発熱層中で繊維が途切れ無く導電路を形成する、しかし、フィラー同士の直接の接触は少ないために適度に低抵抗化したものと推定される。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ねることにより成されたものである。
【0014】
即ち、本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成できることがわかった。
【0015】
(1)
粉体トナーを用いて形成されたトナー像を画像支持体に転写後、加熱定着する定着装置用発熱ベルトであって、下記1〜3の形状を示す導電性繊維を発熱ベルト用耐熱性樹脂に含有させたことを特徴とする定着装置用発熱ベルト。
【0016】
1.アスペクト比:0.025≦(A/B)≦0.25
2.導電性繊維の直径(A):0.5μm≦A≦30μm
3.導電性繊維の長さ(B):5.0μm≦B≦1000μm
(2)
前記導電性繊維として金属の繊維を用い、前記発熱ベルト用耐熱性樹脂としてポリイミド樹脂を用いることを特徴とする(1)記載の定着装置用発熱ベルト。
【0017】
(3)
前記導電性繊維として黒鉛の繊維を用い、前記発熱ベルト用耐熱性樹脂としてポリイミド樹脂を用いることを特徴とする(1)又は(2)記載の定着装置用発熱ベルト。
【0018】
(4)
前記導電性繊維がポリイミド樹脂に対して、5.0体積%以上60体積%以下混合されていることを特徴とする(2)又は(3)記載の定着装置用発熱ベルト。
【0019】
(5)
電子写真感光体を一様帯電後、像露光手段、トナー現像手段を用いて形成したトナー画像を、画像支持体上に転写した後、加熱定着手段により定着する画像形成装置において、該加熱定着手段に(1)〜(4)のいずれか1項記載の定着装置用発熱ベルトを用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、発熱ベルトの低抵抗化が有効に出来、十分な性能を長期にわたって維持することができ、かつ、ウォーミングアップタイムが短く、省エネルギー性能を有した定着装置用発熱ベルトとそれを用いた画像形成装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の代表的な定着装置用発熱ベルトの構成を示す構成断面図。
【図2】本発明の定着装置用発熱ベルトを組み込んだ定着装置の構成概念図。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す断面構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の構成、用いられる化合物や画像形成装置等につきさらに説明する。
【0023】
従来の定着装置において、ポリイミド樹脂層にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粒子が分散された定着装置用発熱ベルトや、導電性酸化物を含有した発熱ベルトが提案されているが、発熱ベルトの発熱層を適正な電気抵抗に調整するため多量の化合物を添加するので、発熱層の強度が低下し、耐久性が悪化する、という問題があった。
【0024】
本発明の特徴は、導電性材料として金属に近い電気抵抗を持ち、銅などに比べ酸化され難く、また銀や金に比べ安価で広い範囲で使用することができる導電性材料を用い発熱層を構成している点であり、適正な電気抵抗、昇温特性と共に耐久性を向上させた発熱ベルトを提供することが出来た。
【0025】
本発明は、アスペクト比が0.025以上0.25以下で、直径が0.5μm以上30μm以下であり、長さが5.0μm以上1000μm以下である導電性繊維をポリイミド等の樹脂に含有させたことが大きな特徴である。
【0026】
本発明では、発熱層を形成する低抵抗化物質(導電性材料)としての導電性繊維を、目的の抵抗値を達成するために、基本的には1種類用いることで、低抵抗で均一な発熱ベルトを実現した。樹脂に含有された導電性繊維は5.0体積%以上60体積%以下混合して使用することが出来、本発明の好ましい態様である。
【0027】
〔本発明の定着装置用発熱ベルトの構成〕
図1は、本発明の代表的な定着装置用発熱ベルトの構成を示す構成断面図である。
【0028】
定着装置用発熱ベルト10において、ベルトの支持体1はポリイミド等の耐熱性樹脂等からなる。その上に端部に給電端子3a、3bを設けた発熱層3を塗設し、さらに必要に応じて、絶縁樹脂層4を介して弾性体層5と更に表面層として離型層6が設けられている。しかし、これは代表的な層構成を示したものであり、本発明において、層構成については特に限定はなく、直径が0.5μm以上30μm以下であり、長さが5.0μm以上1000μm以下であり、かつ、アスペクト比が0.025以上0.25以下である繊維形状の導電性材料を、耐熱性樹脂に含有させた発熱層3を有する、発熱ベルトであればどのような構成を有するものであってもよい。
【0029】
その製造方法についても、現在公知の方法をそのまま用いればよい。
【0030】
直径が0.5μm以上30μm以下であり、長さが5.0μm以上1000μm以下であり、かつ、アスペクト比が0.025以上0.25以下である導電性材料を耐熱性樹脂に含有させた発熱層の体積抵抗率は、発熱ベルトの円周方向全周の両端部に導電テープで電極部を設け、その両端の抵抗値を測定し、下記式にて算出する。
【0031】
体積抵抗率(ρ)=(R・d・W)/L(Ω・m)
(但し、抵抗値(R:Ω)、発熱層厚み(d:m)、円周方向長さ(W:m)、電極間の長さ(L:m)である。)
発熱層の体積抵抗率は8×10−6〜1×10−2Ω・m未満が好ましい。
【0032】
次に、図2に本発明の定着装置用発熱ベルトを組み込んだ定着装置の構成概念図を示す。定着装置用発熱ベルト10を押圧部材35により、対向する押圧ローラ31に押し当てる構成を有する。なお、Nは押圧部材35により押しつけられた発熱ベルト10と押圧ローラ31によるニップ部であり、32は定着装置用発熱ベルト10のガイド部材である。尚、図2では図示されていないが、発熱ベルト10は必要に応じて内部より支持・搬送のためのローラに支持されているのが普通である。
【0033】
いうまでもなく未定着トナー像を乗せた画像支持体Pがこのニップ間を通り搬送されることにより、トナー像は画像支持体P上に定着される。
【0034】
〔導電性繊維〕
本発明に用いられる導電性材料である導電性繊維とは、代表的には金、銀、鉄、アルミニウム等の純金属繊維、ステンレス、ニクロム等の合金繊維、或いは炭素、黒鉛などの非金属繊維であり、繊維とは細長い形状を有していることを示す呼称である。
【0035】
これら繊維の作製方法は、公知の製造方法を用いることが出来る。即ち、ノズルから引き出し繊維状にしたものを、さらに細くする必要がある場合には延伸することにより(このとき必要に応じて加熱する)、所望の導電性繊維の直径(A)のものをまず得る。その導電性繊維を所定の長さ(B)に切断して、目的とする導電性繊維を得る。
【0036】
これら導電性繊維自体の体積固有抵抗は10−1Ω・m以下の繊維であり、耐熱性樹脂に含有させて発熱体を作製し、さらに、この発熱体を用いて定着装置用発熱ベルトを作製する。
【0037】
体積固有抵抗は、断面積W×tに一定電流I(A)を流し、距離Lだけ離れた電極間の電位差V(V)を測ることにより求められる。
【0038】
体積抵抗率ρv=VWt/IL
本発明の効果を得るためには、導電性繊維の直径(A)は0.5μm以上30μm以下、繊維の長さ(B)は5.0μm以上1000μm以下で、アスペクト比は0.025以上0.25以下である必要がある。
【0039】
上記繊維のA、Bは500個以上のサンプルを採取し、平均値で規定する。
【0040】
導電性繊維を走査型電子顕微鏡写真を用いて500倍にて撮影し、スキャナーにて取り込んだ画像から最低500個の繊維の直径と長さを測定し、その平均値より算出した。又、アスペクト比は繊維の直径を長さで除算することにより求めた。
【0041】
本発明において、導電性繊維がなぜ上記の形状を有する必要があるのかは、詳しく解析したわけではない。推測するに径が0.5μm未満では導電層中に分布し繊維同士が接触したときその接触抵抗が大きくなり過ぎ、発熱層全体の抵抗値を十分下げることが出来ないであろう。又、繊維の径が30μmを超えると発熱層中での分散性が低下し、抵抗に局部的なバラツキを生じる為ではないかと考えられる。又、繊維の長さについては、5.0μm未満では電荷の導通路が形成されにくく、1000μmを超えてしまうと必ずしも長く伸びた形では存在出来ず、発熱層の抵抗に局部的バラツキを生じさせる。さらには、アスペクト比が0.025より低い、あるいは0.25より高い場合についても、上記したいずれかの不都合が生じるのであろうと考えられる。
【0042】
〔耐熱性樹脂〕
本発明において、発熱層を形成するバインダー樹脂としては、所謂耐熱性樹脂を用い、一般的には短期的耐熱性が200℃以上、長期的耐熱性が150℃以上のものを耐熱性樹脂という。耐熱性樹脂の代表的なものとしては下記のものがあるが、本発明において特に好ましい耐熱性樹脂は、ポリイミド樹脂である。
【0043】
ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等。
【0044】
これらは、黒鉛や金属などの導電性繊維と混合し発熱ベルトの発熱層として用いられるが、前記したそのほかの層の構成成分樹脂としても用いられる。
【0045】
本発明において、樹脂全体の40体積%以上が当該樹脂であることが極めて望ましい。
【0046】
〔画像形成装置〕
本発明の画像形成装置は、定着装置以外については、現在公知の構造のものをそのまま用いることが出来る。
【0047】
下記にその代表的なものを挙げて説明する。
【0048】
図3において、1Y、1M、1C、1Kは感光体、4Y、4M、4C、4Kは現像装置、5Y、5M、5C、5Kは1次転写手段としての1次転写ロール、5Aは2次転写手段としての2次転写ロール、6Y、6M、6C、6Kはクリーニング装置、7は中間転写体ユニット、24は熱ロール式定着装置、70は中間転写体を示す。
【0049】
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体ユニット7と、画像支持体Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としての熱ロール式定着装置24とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0050】
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、ドラム状の感光体1Y、該感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、1次転写手段としての1次転写ロール5Y、クリーニング手段6Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、ドラム状の感光体1M、該感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写手段としての1次転写ロール5M、クリーニング手段6Mを有する。
【0051】
また、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、ドラム状の感光体1C、該感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、1次転写手段としての1次転写ロール5C、クリーニング手段6Cを有する。さらに、他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Kは、ドラム状の感光体1K、該感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、1次転写手段としての1次転写ロール5K、クリーニング手段6Kを有する。
【0052】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0053】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材として用紙等の画像支持体Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ロール22A、22B、22C、22D、レジストロール23を経て、2次転写手段としての2次転写ロール5Aに搬送され、画像支持体P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された画像支持体Pは、発熱ベルトによる定着装置24により定着処理され、排紙ロール25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0054】
一方、2次転写ロール5Aにより画像支持体Pにカラー画像を転写した後、画像支持体Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0055】
画像形成処理中、1次転写ロール5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の1次転写ロール5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
【0056】
2次転写ロール5Aは、ここを画像支持体Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接するよう構成されている。
【0057】
この様に、感光体1Y、1M、1C、1K上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して画像支持体Pに転写し、定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。トナー像を画像支持体Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、クリーニング装置6Aで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
【0058】
又、感光体については、特に限定はなく無機系の感光体、有機系の感光体共に用いることが出来る。
【0059】
いうまでもなく、図3には、図2の説明にて前述した本発明の発熱ベルト10と押圧ローラからなる発熱ベルト方式の定着装置24が使用される。
【0060】
〔画像支持体〕
本発明に係るトナーを用いて画像を形成することが可能な画像支持体(記録材、記録紙、記録用紙等ともいう)は、一般に用いられているものでよく、例えば、上述した画像形成装置等による公知の画像形成方法により形成したトナー画像を保持するものであれば特に限定されるものではない。本発明で使用可能な画像支持体として用いられるものには、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、あるいは、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等が挙げられる。
【実施例】
【0061】
本発明の代表的な実施態様とその効果を記載して、本発明につきさらに説明する。しかし、本発明の構成はこれに限定されるものではない。
【0062】
〔発熱層塗布液の作製〕
ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸(宇部興産社製 U−ワニスS301)100gに、表1に記載するステンレス繊維サンプルS−A〜S−Nを32g、表2に記載する黒鉛繊維サンプルC−A〜C−Nは16gを、遊星方式の混合機で十分に混合し、各々のフィラーを含有した発熱層塗布液S−A〜S−Nと、C−A〜C−Nを作製した。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
〔定着装置用発熱ベルトの作製〕
(ベルト支持体)
予め離型剤(ネオス社製:フリリース44)を塗布した外径30mm、全長345mmのステンレス管にポリアミド酸(宇部興産社製:U−ワニスS301)を膜厚500μmで塗布する。その後、150℃で1時間乾燥する。
【0066】
(発熱層の製作)
上記支持体の上に、発熱層塗布液S−A〜S−Nと、C−A〜C−Nを膜厚500μmに塗布する。その後、150℃で1時間乾燥後、400℃で30分乾燥し、イミド化させる。
【0067】
(弾性体層・離型層の製作)
ステンレス管に形成した上記ポリイミド樹脂管状物上にプライマー(信越化学社製:KE−1880)を塗布し、常温で30分乾燥させた。
【0068】
プライマー(Momentive社製:XP−A6361)を内側に塗布したフッ素樹脂チューブ(グンゼ社製:GPC)に上記ポリイミド管状物を挿入した。
【0069】
その後、シリコーンゴム(Momentive社製:XE15−C2038)をポリイミド樹脂管状物とフッ素樹脂チューブの間に注入した。その後、150℃の温度で30分一次加硫し、さらに200℃で4時間二次加硫を行い、ポリイミド樹脂管状物の外層に200μmの厚みでシリコーンゴム層が成形された管状物を得た。ゴム層の硬度は26度(JIS−A)であった。
【0070】
ついで、冷却後、ステンレス管からポリイミド樹脂管状物を分離し、目的とする発熱ベルトS−A〜S−Nと、C−A〜C−Nを得た。
【0071】
〔性能評価〕
発熱ベルトS−A〜S−Nと、C−A〜C−Nを図2で示した構成を有する定着装置に装填して、熱ベルトを図3に示した画像形成装置に組み込み、A4の画像支持体50万枚を1万枚毎に5分間中断しながら通紙し、発熱ベルトの状態を観察した。
【0072】
抵抗率、昇温性、定着性、導電性繊維の酸化性の結果を表3及び表4に示す。
【0073】
(抵抗率)
発熱ベルトの体積抵抗率は、前記した通りで下記の式により求められる。
【0074】
体積抵抗率(ρ)=(R・d・W)/L(Ω・m)
(但し、抵抗値(R:Ω)、発熱層厚み(d:m)、円周方向長さ(W:m)、電極間の長さ(L:m))
尚、体積抵抗率が1×10−6Ω・m以上のものは、∞と記載した。
【0075】
(昇温性)
昇温性とは、発熱層に10Vを印加したときの通電5秒後までの温度をサーモビューアで測定した。
【0076】
◎:16℃/S以上で極めて優秀(但し、Sは秒)
○:15℃/S未満だが4℃/Sより大きく、実用可能なレベル
×:4℃/S以下で、実用化には問題があるレベル
(定着性)
定着性とは、粉体トナーを用いて形成されたトナー像を画像支持体に転写後、発熱ベルトにて加熱定着したときのトナー定着度合い。
【0077】
綿布パットを黒色トナーベタ画像に押し当て擦った時、綿布にトナーが移るか、又、トナーベタ画像を強く10回折り曲げたとき、折り目部の画像の状態を観察して、判定した。
【0078】
◎:擦ったとき、折り曲げたとき共に全く異常なし
○:擦ったとき、少し綿布がよごれるが、実用上問題なし
×:擦ったとき、綿布がよごれ、また、折り曲げにてトナーが浮き上がり、実用上問題がある
(酸化性)
酸化性とは、画像支持体を通紙50万枚後の発熱ベルト内導電性繊維の酸化度合いを、工業用光学顕微鏡にて500倍に拡大し、観察して判断した。
【0079】
◎:酸化していない
○:少々酸化している
×:明らかに酸化されている
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
表3、4に示す評価結果を見れば明らかな如く、本発明内の発熱ベルトS−A〜S−Hと、C−A〜C−Hはいずれの性能もよいが、本発明外の発熱ベルトS−I〜S−Nと、C−I〜C−Nは、抵抗率が高く、昇温性、定着性、酸化性の少なくとも何れかが悪いことがわかる。
【符号の説明】
【0083】
1 ベルトの支持体
3 発熱層
3a、3b 給電端子
4 絶縁樹脂層
6 離型層
10 定着装置用発熱ベルト
31 押圧ローラ
32 ガイド部材
35 押圧部材
P 画像支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体トナーを用いて形成されたトナー像を画像支持体に転写後、加熱定着する定着装置用発熱ベルトであって、下記1〜3の形状を示す導電性繊維を発熱ベルト用耐熱性樹脂に含有させたことを特徴とする定着装置用発熱ベルト。
1.アスペクト比:0.025≦(A/B)≦0.25
2.導電性繊維の直径(A):0.5μm≦A≦30μm
3.導電性繊維の長さ(B):5.0μm≦B≦1000μm
【請求項2】
前記導電性繊維として金属の繊維を用い、前記発熱ベルト用耐熱性樹脂としてポリイミド樹脂を用いることを特徴とする請求項1記載の定着装置用発熱ベルト。
【請求項3】
前記導電性繊維として黒鉛の繊維を用い、前記発熱ベルト用耐熱性樹脂としてポリイミド樹脂を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の定着装置用発熱ベルト。
【請求項4】
前記導電性繊維がポリイミド樹脂に対して、5.0体積%以上60体積%以下混合されていることを特徴とする請求項2又は3記載の定着装置用発熱ベルト。
【請求項5】
電子写真感光体を一様帯電後、像露光手段、トナー現像手段を用いて形成したトナー画像を、画像支持体上に転写した後、加熱定着手段により定着する画像形成装置において、該加熱定着手段に請求項1〜4のいずれか1項記載の定着装置用発熱ベルトを用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−8299(P2012−8299A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143423(P2010−143423)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】