説明

定着装置

【課題】ニップ板の位置ずれを抑制することができる定着装置を提供する。
【解決手段】定着装置は、定着ベルト110と、定着ベルト110の内周面に摺接するニップ板130と、ニップ板130を支持するステイ160と、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟むバックアップローラを備えている。ステイ160は、ニップ板130の定着ベルト110と摺接する面とは反対側の面を支持するニップ板支持部と、ニップ板130よりもバックアップローラ140側に回り込み、ニップ板130のバックアップローラ140側の面を支持する第1フック部162および第2フック部163と、バックアップローラ側へ向けて突出する突起部164とを有している。そして、ニップ板130は、突起部164に嵌る開口136を有し、開口136の縁136Aが突起部164と係合することで、突起部164の突出する突出方向と直交する方向の移動が規制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録シートに転写された現像剤像を熱定着する定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置として、無端状の定着ベルトと、定着ベルトの内周面に摺接するニップ板と、定着ベルトを介してニップ板に向けて圧接されるバックアップローラと、ニップ板を支持するガイド部材と、ガイド部材を支持するステイとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的に、ステイは、ガイド部材を介して、ニップ板がバックアップローラから受ける圧接力を受けるように、ニップ板を挟んでバックアップローラとは反対側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−47769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような構成の定着装置においては、装置の組み立て時や使用時に、ニップ板を位置ずれしないように保つ必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、ニップ板の位置ずれを抑制することができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)前記した目的を達成するため、本発明の定着装置は、可撓性の筒状部材と、筒状部材の内部に配置される発熱体と、筒状部材の内部に配置され、筒状部材の内周面と摺接するニップ板と、筒状部材の内部において、発熱体を内部に収容するとともにニップ板を支持する、ニップ板側に開口が形成されているステイと、ニップ板との間で筒状部材を挟むバックアップ部材と、を備えている。
そして、ステイは、ニップ板の筒状部材と摺接する面とは反対側の面を支持する支持部と、筒状部材の軸線方向の端部において、ニップ板よりもバックアップ部材側に回り込み、ニップ板のバックアップ部材側の面を支持する複数のフック部と、筒状部材の軸線方向の端部において、バックアップ部材側へ向けて突出する突起部と、を有している。
また、ニップ板は、突起部に係合することにより、突起部の突出する突出方向と直交する方向の移動が規制される係合部が形成されている。
【0007】
このように構成された定着装置によれば、ニップ板は、ステイの支持部とフック部に支持されることで、バックアップ部材とニップ板の対向方向への移動が規制されるとともに、ニップ板の係合部がステイの突起部と係合することによって、バックアップ部材とニップ板の対向方向に直交する方向への移動が規制される。これにより、ニップ板は、装置の組み立て時や使用時などにおいて、ステイに対して位置ずれしない。
【0008】
(2)そして、本発明の定着装置は、すべてのフック部の先端が軸線方向の一端部側へ向かって延びていることが望ましい。
【0009】
このように構成された定着装置によれば、ニップ板が熱膨張しても、当該熱膨張を軸方向の一端部側へ逃がすことができる。また、ニップ板をステイに組み付ける際に、ニップ板を筒状部材の軸線方向の一端部側から他端部側へ向けてスライドさせることで、ニップ板をすべてのフック部に係合させることができる。
【0010】
(3)また、本発明の定着装置は、突起部が、筒状部材の軸線方向において、ステイの他端部(フック部の先端が向いている端部とは反対側の端部)に形成されているのが望ましい。
【0011】
このように構成された定着装置によれば、係合部が突起部と係合することで移動が規制される部分とは反対側にニップ板の熱膨張を逃がすことができる。
【0012】
(4)そして、本発明の定着装置において、ニップ板は、ニップ板をフック部に係合させた後に、係合部を、突起部の先端を乗り越えさせた上で、突起部に係合させることでステイに組み付けられ、突起部の先端は、係合部が突起部を乗り越える方向の上流側が下流側よりも突起部の根本に近くなるように傾斜していることが望ましい。
【0013】
このように突起部の先端が傾斜していることで、係合部を突起部に係合させる際に、係合部の縁が突起部の先端を乗り越えやすい。これにより、ニップ板をステイに組み付けやすい。
【0014】
(5)また、本発明の定着装置は、ニップ板の記録シート搬送方向の上流側端部または下流側端部を、バックアップ部材側に向けて押圧する付勢部材をさらに備えていてもよい。
この定着装置においては、突起部は、記録シート搬送方向において付勢部材とは反対側に設けられているのが望ましい。
【0015】
このように構成された定着装置によれば、バックアップ部材とニップ板の一方を他方に対して離れる方向に移動させたときに、付勢部材からの押圧力により、ニップ板に係合部が突起部に嵌ろうとする方向に力が働く。これにより、バックアップ部材とニップ板の一方を他方に対して離れる方向に移動させたときに、ステイが、ニップ板をより安定して保持することができる。
【0016】
(6)また、本発明の定着装置は、前記した目的を達成するため、可撓性の筒状部材と、筒状部材の内部に配置される発熱体と、筒状部材の内部に配置され、筒状部材の内周面と摺接するニップ板と、筒状部材の内部において、発熱体を内部に収容するとともにニップ板を支持する、ニップ板側に開口が形成されているステイと、ニップ板との間で筒状部材を挟むバックアップ部材と、を備えている。
そして、ステイは、ニップ板の筒状部材と摺接する面とは反対側の面を支持する支持部と、筒状部材の軸線方向の端部において、ニップ板よりもバックアップ部材側に回り込み、ニップ板のバックアップ部材側の面を支持する複数のフック部と、筒状部材の軸線方向の端部において、バックアップ部材側を向く被嵌合部と、を有している。
また、ニップ板は、被嵌合部と、ニップ板とバックアップ部材とが対向する方向において嵌合することにより、対向方向と直交する方向の移動を規制される嵌合部を有している。
【0017】
このように構成された定着装置によれば、ニップ板は、ステイの支持部とフック部に支持されることで、バックアップ部材とニップ板の対向方向への移動が規制されるとともに、ニップ板の嵌合部がステイの被嵌合部と嵌合することによって、バックアップ部材とニップ板の対向方向に直交する方向への移動が規制される。これにより、ニップ板は、装置の組み立て時や使用時などにおいて、ステイに対して位置ずれしない。
【発明の効果】
【0018】
このように構成された定着装置によれば、ニップ板が、ステイによって、バックアップ部材とニップ板の対向方向への移動が規制されるとともに、バックアップ部材とニップ板の対向方向に直交する方向への移動が規制されるので、ニップ板の位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る定着装置を備えたレーザプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】定着装置のサーモスタット付近の断面図である。
【図3】ニップ板、ハロゲンランプ、反射部材、ステイ、第1フレーム、サーモスタット、サーミスタ、コイルバネおよび第2フレームの斜視図である。
【図4】ニップ板およびステイを下側から見た斜視図である。
【図5】ニップ板のステイへの組付を説明する図であって、ニップ板を途中まで組み付けた状態を示す図(a)と、組上がった状態を示す図(b)である。
【図6】突起部と開口の関係を示す図であって、開口の縁が突起部の先端を乗り越える前の状態を示す図(a)と、開口が突起部に係合した状態を示す図(b)である。
【図7】変形例に係る開口を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、本発明の一実施形態に係る定着装置100を備えたレーザプリンタ1(画像形成装置)の概略構成を簡単に説明した後、定着装置100の詳細な構成について説明する。
【0021】
また、以下の説明において、方向は、レーザプリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0022】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、記録シートの一例としての用紙Sを供給する給紙部3と、露光装置4と、用紙S上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙S上のトナー像を熱定着する定着装置100とを主に備えている。
【0023】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、給紙トレイ31と、用紙押圧板32と、給紙機構33とを主に備えている。給紙トレイ31に収容された用紙Sは、用紙押圧板32によって上方に寄せられ、給紙機構33によってプロセスカートリッジ5(感光体ドラム61と転写ローラ63との間)に向けて供給される。
【0024】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しないレーザ発光部や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。この露光装置4では、レーザ発光部から出射される画像データに基づくレーザ光(鎖線参照)が、感光体ドラム61の表面で高速走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0025】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0026】
ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能に装着される構成となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、トナー(現像剤)を収容するトナー収容部74とを主に備えている。
【0027】
このプロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0028】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を用紙Sが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙S上に転写される。
【0029】
定着装置100は、プロセスカートリッジ5の後方に設けられている。用紙S上に転写されたトナー像(トナー)は、定着装置100を通過することで用紙S上に熱定着される。トナー像が熱定着された用紙Sは、搬送ローラ23,24によって排紙トレイ22上に排出される。
【0030】
<定着装置の詳細構成>
図2に示すように、定着装置100は、筒状部材の一例としての定着ベルト110と、発熱体の一例としてのハロゲンランプ120と、ニップ板130と、バックアップ部材の一例としてのバックアップローラ140と、反射部材150と、ステイ160と、サーモスタット170と、2つのサーミスタ180(図3参照)と、付勢部材の一例としてのコイルバネ191,192(図3参照)と、支持部材200とを主に備えている。
【0031】
定着ベルト110は、耐熱性と可撓性を有する無端状(筒状)のベルトであり、図示しないガイド部材により回転が案内されている。
【0032】
ハロゲンランプ120は、輻射熱を発してニップ板130および定着ベルト110を加熱することで用紙S上のトナーを加熱する部材であり、定着ベルト110の内部に、定着ベルト110およびニップ板130の内面から所定の間隔をあけて配置されている。
【0033】
ニップ板130は、ハロゲンランプ120からの輻射熱を受ける板状の部材であり、その下面が筒状の定着ベルト110の内周面に摺接するように、定着ベルト110の内部に配置されている。本実施形態において、ニップ板130は、弾性変形が可能な金属からなり、例えば、後述するスチール製のステイ160より熱伝導率が大きい、アルミニウム板などを折り曲げることで形成されている。
【0034】
図3に示すように、ニップ板130は、ベース部131と、第1突出部132と、第2突出部133と、第1被保持部134と、第2被保持部135と、開口136とを有している。
ベース部131は、その下面が定着ベルト110の内周面と摺接する部分であり、ハロゲンランプ120からの熱を、定着ベルト110を介して用紙S上のトナーに伝達する。
【0035】
第1突出部132および第2突出部133は、用紙搬送方向におけるベース部131の後端から用紙搬送方向に沿って後方に延びて略平板状に形成されている。第1突出部132は、ベース部131後端の左右方向における中央付近に1つ形成されており、その上面にサーモスタット170が対面して配置されている。また、第2突出部133は、ベース部131後端の左右方向における中央付近と右端付近にそれぞれ1つずつ形成されており、それぞれの上面にサーミスタ180が対面して配置されている。
【0036】
図4に示すように、第1被保持部134は、ニップ板130の左端部において、定着ベルト110と摺接する範囲外に形成され、後述するステイ160の第1フック部162が係止する。この第1被保持部134は、前端と後端において上方に延びる側壁部134Aと、側壁部134Aの上端から前後方向外側に向けて水平に延びる被係合部134Bとを有している。
【0037】
第2被保持部135は、ニップ板130の右端後部において、定着ベルト110と摺接する範囲外に形成され、後述するステイ160の第2フック部163が係止する。
【0038】
開口136は、ニップ板130の右端部の前端において、上下方向に貫通して形成された穴であり、その縁136Aが後述するステイ160の突起部164と係合する係合部となっている。より詳細に、開口136は、用紙搬送方向において、ニップ板130の第1突出部132および第2突出部133が設けられている側とは反対側の端部において、第2被保持部135よりも右側に形成されている。そして、開口136は、突起部164に容易に嵌合可能なように、突起部164よりもやや大きく形成されている。
【0039】
図2に示すように、バックアップローラ140は、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟む部材であり、ニップ板130の下方に配置されている。本実施形態においては、ニップ板130およびバックアップローラ140は、一方が他方に向けて付勢されることで互いに圧接するように構成されている。ニップ板130とバックアップローラ140の間で用紙Sが詰まった際には、ニップ板130およびバックアップローラ140の一方を他方に対して離れる方向に移動可能に構成されている。
【0040】
バックアップローラ140は、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されており、回転駆動することで、定着ベルト110(または用紙S)との摩擦力により定着ベルト110を従動回転させる。トナー像が転写された用紙Sは、バックアップローラ140と加熱された定着ベルト110の間を搬送されることで、トナー像(トナー)が熱定着されることとなる。
【0041】
反射部材150は、ハロゲンランプ120からの輻射熱(主に前後方向や上下方向に向けて放射された輻射熱)をニップ板130に向けて反射する部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120を取り囲む(覆う)ように、ハロゲンランプ120から所定の間隔をあけて配置されている。
【0042】
このような反射部材150によってハロゲンランプ120からの輻射熱をニップ板130に集めることで、ハロゲンランプ120からの輻射熱を効率よく利用することができ、ニップ板130および定着ベルト110を速やかに加熱することができる。
【0043】
反射部材150は、赤外線および遠赤外線の反射率が大きい、例えば、アルミニウム板などを断面視略U形状に湾曲させて形成されている。より詳細に、反射部材150は、湾曲形状(断面視略U形状)をなす反射部151と、反射部151の前後方向における両端部から前後方向外側に向けて延びるフランジ部152とを主に有している。
【0044】
ステイ160は、定着ベルト110の内部においてニップ板130を支持する部材であり、鋼板などをニップ板130側に開口を有する断面視略U形状に折り曲げることで形成され、ハロゲンランプ120および反射部材150を収容するように配置されている。また、ステイ160の上壁の左右2箇所には、上壁から後方に向けて延びるように固定部(符号省略)が設けられ、この固定部には、ネジ241,242が螺合するネジ孔160A,160Bが形成されている。そして、このネジ孔160A,160Bを利用して、後述する支持部材200が、ネジ241,242により、ステイ160に固定される。
【0045】
図3および図4に示すように、ステイ160は、ニップ板支持部161(支持部)と、フック部の一例としての第1フック部162および第2フック部163と、突起部164とを有しており、これらニップ板支持部161、第1フック部162および第2フック部163によって、ニップ板130を支持している。
【0046】
ニップ板支持部161は、ステイ160の前後の壁の下面により構成され、ニップ板130の上面(ニップ板130の定着ベルト110と摺接する面とは反対側の面)の前後の端部を、反射部材150(フランジ部152)を介して支持することで、バックアップローラ140からの荷重を受けている(図2参照)。なお、ここでいう荷重は、ニップ板130がバックアップローラ140を付勢する構成においては、ニップ板130がバックアップローラ140を付勢する力の反力をいうものとする。
【0047】
第1フック部162は、ステイ160の定着ベルト110よりも外側に位置する左端部(定着ベルト110の軸線方向の端部)において(図5(b)参照)、ニップ板130よりもバックアップローラ140側に回り込み、先端162Aが左方へ向かって延びるように形成されている。
【0048】
第2フック部163は、ステイ160の定着ベルト110よりも外側に位置する右端部(定着ベルト110の軸線方向の端部)において(図5(b)参照)、ニップ板130よりもバックアップローラ140側に回り込むように、ステイ160の後壁の下端から下方へ延びる(突出する)とともに、先端163Aが左方へ向かって延びるように形成されている。
つまり、第1フック部162と第2フック部163は、先端162A,163Aがすべて左方(定着ベルト110の軸線方向の一端部側)へ向かって延びている。
【0049】
突起部164は、ステイ160の定着ベルト110よりも外側に位置する右端部(定着ベルト110の軸線方向における他端部)において(図5(b)参照)、ステイ160の前壁の下端から下方(バックアップローラ140側)に向けて突出して形成されている。そして、突起部164の先端164Aは、右側から左側に向かうにつれて、突起部164の根元に近づくように定着ベルト110の軸線方向に対して傾斜している。
【0050】
サーモスタット170は、図2,3に示すように、ニップ板130の温度を検出する部材であり、定着ベルト110の内側において、その下面(温度検知面)がニップ板130の第1突出部132の上面に対向して配置されている。
【0051】
また、サーモスタット170は、支持部材200の後側に設けられた第1位置決め部231に嵌合することで左右方向および前後方向に位置決めされており、さらに、支持部材200とサーモスタット170の間に配置されるコイルバネ191によって、ニップ板130(第1突出部132)に向けて付勢されている。これにより、サーモスタット170とニップ板130との位置関係が安定するので、ニップ板130の温度を精度良く検出することが可能となっている。
【0052】
サーミスタ180は、図3に示すように、ニップ板130の温度を検出する温度センサであり、定着ベルト110の内側で、その下面(温度検知面)が第2突出部133の上面に対向して配置されている。
【0053】
また、サーミスタ180も、支持部材200の後側に設けられた第2位置決め部232に嵌合することで左右方向および前後方向に位置決めされており、さらに、支持部材200とサーミスタ180の間に配置されるコイルバネ192によってニップ板130(第2突出部133)に向けて付勢されている。これにより、サーミスタ180とニップ板130との位置関係も安定するので、ニップ板130の温度を精度良く検出することが可能となっている。
【0054】
そして、ニップ板130上にサーモスタット170およびサーミスタ180が設けられると、コイルバネ191,192の付勢力によって、サーモスタット170およびサーミスタ180が、ニップ板130の用紙搬送方向下流側(第1突出部132および第2突出部133)を押圧する。つまり、ステイ160の突起部164は、用紙搬送方向のコイルバネ191,192とは反対側に設けられている。
【0055】
図2に示すように、支持部材200は、定着ベルト110の内側に配置されてステイ160を覆うように設けられた部材であり、例えば、液晶ポリマーやPEEK樹脂、PPS樹脂などから形成することができる。
【0056】
この支持部材200は、図3に示すように、コイルバネ191,192を支持する第1支持部材210と、サーモスタット170およびサーミスタ180の位置決めをする第2支持部材220から構成されている。第1支持部材210は、上壁から下方に延びるように形成され、コイルバネ191,192を支持する支持部211を有している(図2も参照)。また、第1支持部材210の上壁には、ネジ241,242が通る孔210Aおよび孔210Bが形成されている。第2支持部材220は、後壁に、サーモスタット170が配置される第1位置決め部231と、サーミスタ180が配置される第2位置決め部232が形成されており、サーモスタット170およびサーミスタ180の前後左右方向の位置決めをしている。また、第2支持部材220の上壁には、ネジ241が通る孔220Aが形成されている。
【0057】
次に、本実施形態における、ニップ板130のステイ160への組付方について簡単に説明する。なお、以下の説明において参照する図5(a)および(b)は、反射部材150とハロゲンランプ120を省略して図示している。
【0058】
まず、ステイ160に対し、反射部材150とハロゲンランプ120を組み付ける。次に、図5(a)に示すように、ニップ板130をステイ160の下面に合わせ、ニップ板130を、ステイ160の下面(ニップ板支持部161)に沿って、左側から右側へ向けてスライドさせる。このようにニップ板130をスライドさせていくと、第1被保持部134の被係合部134Bが第1フック部162に係合し、第2被保持部135が、第2フック部163に係合する。
【0059】
このように、ニップ板130をステイ160に対してスライドさせ、第1フック部162と第2フック部163に係合させていき、図6(a)に示すように、ニップ板130の右端部が突起部164の先端164Aとぶつかったときには、ニップ板130の右端部を下方へずらしながら右方へ引っ張り、ステイ160に向けて押す。このとき、ニップ板130は弾性変形可能な金属で形成されており、また、突起部164の先端164Aは、開口136の右側の縁136Aの移動方向(突起部164を乗り越える方向)の上流側が下流側よりも突起部164の根本に近くなるように傾斜しているので、開口136の右側の縁136Aは、この傾斜に沿って突起部164の先端164Aを簡単に乗り越えることができ、図6(b)に示すように、突起部164が開口136に嵌る。
【0060】
以上のようにして、図5(b)に示すように、ニップ板130がステイ160に組み付けられる。このようにステイ160に組み付けられたニップ板130は、上面がニップ板支持部161に支持され、下面(バックアップローラ140側の面)が第1フック部162と第2フック部163に支持される。これにより、ニップ板130は、ニップ板130とバックアップローラ140が対向する方向の移動が規制される。
【0061】
また、ニップ板130は、突起部164が開口136に嵌っている、つまり、突起部164と開口136の縁136Aが係合しているので、左右および前後方向への移動が規制される。
そして、第1フック部162、第2フック部163および突起部164が、ニップ板130の四隅を支持するので、ニップ板130の中央部側を支持する場合に比べて、ニップ板130を安定して支持することができる。また、第1フック部162、第2フック部163および突起部164は、定着ベルト110よりも外側に配置されているので、定着ベルト110の動作を阻害することがない。
【0062】
そして、図2に示す状態において、ニップ板130とバックアップローラ140の間で用紙Sが詰まった時に、ニップ板130とバックアップローラ140の一方を他方に対して離れる方向に移動し、ニップ板130とバックアップローラ140の圧接を解除すると、コイルバネ191,192の付勢力により、ニップ板130の後端(用紙搬送方向下流側端)は、ステイ160から離れる方向に力が働く。一方、ニップ板130の前端(用紙搬送方向上流側端)は、後端がコイルバネ191,192に押圧されることで、ステイ160へ向かう方向に力が働く。つまり、開口136が突起部164に嵌ろうとする方向に力が働くので、ニップ板130が左右および前後にずれにくい。
【0063】
そして、ニップ板130が組み付けられたステイ160に、第1支持部材210および第2支持部材220が、ネジ241,242により固定される。この第1支持部材210および第2支持部材220がステイ160に固定される過程において、サーモスタット170、サーミスタ180およびコイルバネ191,192も、支持部材200に組み付けられる。
【0064】
このようにステイ160に対してニップ板130、支持部材200、サーモスタット170、サーミスタ180およびコイルバネ191,192などが組み付けられて、加熱側ユニットが構成される。このように組み立てられた加熱側ユニット(ニップ板130)と、バックアップローラ140とは、さらに、一方側が他方側へ付勢されて圧接されるように、互いに組み付けられる。
【0065】
以上によれば、本実施形態において以下のような作用効果を得ることができる。
ステイ160に組み付けられたニップ板130は、ステイ160のニップ板支持部161と第1フック部162および第2フック部163によって支持されることで、上下方向の移動が規制されるとともに、ステイ160の突起部164が開口136の縁136Aと係合することで、左右および前後への移動が規制される。これにより、定着装置100の使用時において、定着装置100内で紙詰まりが発生した時などに、バックアップローラ140とニップ板130の一方を他方に対して離れる方向に移動させた場合でも、ニップ板130が位置ずれしにくい。定着装置100を組み立てる過程においては、ステイ160に組み付けられたニップ板130(加熱側ユニット)とバックアップローラ140とが離れた状態にあるが、この場合にも、ステイ160に対してニップ板130が位置ずれしにくい。
【0066】
そして、第1フック部162の先端162Aおよび第2フック部163の先端163Aは、すべて左側へ向けて延びているので、ニップ板130をステイ160に組み付ける際に、ニップ板130を左側から右側へスライドさせることで、簡単にステイ160に組み付けることができる。また、ニップ板130が熱膨張した際に、当該熱膨張を左側へ逃がすことができる。
【0067】
また、突起部164が、ステイ160の右端部、つまり、第1フック部162の先端162Aと第2フック部163の先端163Aが向いている方向の端部とは反対側の端部に形成されているので、突起部164と開口136の係合が、ニップ板130の熱膨張を逃がすのを阻害しない。
【0068】
そして、突起部164の先端164Aは、右から左へ突起部164の根元に近くなるように傾斜しているので、ニップ板130をステイ160に組み付ける際に、開口136の右側の縁136Aが簡単に突起部164の先端164Aを乗り越えることができる。これにより、ニップ板130がステイ160に組み付けやすい。
【0069】
また、ニップ板130は、コイルバネ191,192によって、後端がバックアップローラ140側に向けて押圧されているので、前端はステイ160に近づく方向に力が働く。つまり、ニップ板130の前端に設けられている開口136が突起部164に嵌ろうとする方向に力が働く。これにより。ニップ板130がより安定してステイ160に保持される。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0071】
前記実施形態では、ニップ板130に設けられている開口136が上下方向に貫通した穴であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、開口136は、突起部164に向けて開放した有底の穴であってもよい。
【0072】
また、前記実施形態では、ニップ板130に設けられている開口136が穴形状を有していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図7に示すように、上下に貫通する穴の前側の縁の一部が開放された切欠状の開口138であってもよい。
【0073】
そして、前記実施形態では、係合部の一例として開口136の縁136Aを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ニップ板130を半抜き加工することにより、ニップ板130からバックアップローラ140側へ突出するように形成され、突起部164を囲うように設けられた複数の突起から構成されていてもよい。
【0074】
また、前記実施形態では、ステイ160の第1フック部162の先端162Aと第2フック部163の先端163Aがすべて左側(同一方向)へ向かって延びていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1フック部162の先端162Aが左側へ向かって延びている一方で、第2フック部163の先端163Aが、前側へ向かって延びていてもよい。すなわち、第1フック部162と第2フック部163は、異なる方向に向けて延びていてもよい。
【0075】
前記実施形態では、ステイ160に突起部164が設けられ、ニップ板130に突起部164に係合する開口136が設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ニップ板130に突起部(嵌合部)を設け、ステイ160に突起部が嵌合する穴(被嵌合部)を設けてもよい。ニップ板130とステイ160がこのように構成されていても、ステイ160に組み付けられたニップ板130は、突起部が穴に嵌るので、ニップ板130とバックアップローラ140が対向する方向と直交する方向の移動が規制される。
【0076】
前記実施形態では、筒状部材の一例として、ベルトを挙げたが、樹脂製のベルトであっても金属製のベルトであってもよい。また、筒状部材は、ベルトにゴム層などの弾性層を被覆したものであってもよいし、筒状のゴムなどの弾性部材であってもよい。
【0077】
前記実施形態では、記録シートとして、普通紙やはがきなどの用紙Sを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、OHPシートなどであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 レーザプリンタ
100 定着装置
110 定着ベルト
120 ハロゲンランプ
130 ニップ板
134 第1被保持部
134B 被係合部
135 第2被保持部
136 開口
136A 縁
140 バックアップローラ
150 反射部材
160 ステイ
161 ニップ板支持部
162 第1フック部
162A 先端
163 第2フック部
163A 先端
164 突起部
164A 先端
170 サーモスタット
180 サーミスタ
191 コイルバネ
192 コイルバネ
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の筒状部材と、
前記筒状部材の内部に配置される発熱体と、
前記筒状部材の内部に配置され、前記筒状部材の内周面と摺接するニップ板と、
前記筒状部材の内部において、前記発熱体を内部に収容するとともに前記ニップ板を支持する、前記ニップ板側に開口が形成されているステイと、
前記ニップ板との間で前記筒状部材を挟むバックアップ部材と、を備えた定着装置であって、
前記ステイは、
前記ニップ板の前記筒状部材と摺接する面とは反対側の面を支持する支持部と、
前記筒状部材の軸線方向の端部において、前記ニップ板よりも前記バックアップ部材側に回り込み、前記ニップ板の前記バックアップ部材側の面を支持する複数のフック部と、
前記軸線方向の端部において、前記バックアップ部材側へ向けて突出する突起部と、を有し、
前記ニップ板は、前記突起部に係合することにより、前記突起部の突出する突出方向と直交する方向の移動が規制される係合部が形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
すべての前記フック部は、先端が前記軸線方向の一端部側へ向かって延びていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記突起部は、前記軸線方向における前記ステイの他端部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ニップ板は、前記ニップ板を前記フック部に係合させた後に、前記係合部を、前記突起部の先端を乗り越えさせた上で、前記突起部に係合させることで前記ステイに組み付けられ、
前記突起部の先端は、前記係合部が前記突起部を乗り越える方向の上流側が下流側よりも前記突起部の根本に近くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ニップ板の記録シート搬送方向の上流側端部または下流側端部を、前記バックアップ部材側に向けて押圧する付勢部材をさらに備え、
前記突起部は、記録シート搬送方向の前記付勢部材とは反対側に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
可撓性の筒状部材と、
前記筒状部材の内部に配置される発熱体と、
前記筒状部材の内部に配置され、前記筒状部材の内周面と摺接するニップ板と、
前記筒状部材の内部において、前記発熱体を内部に収容するとともに前記ニップ板を支持する、前記ニップ板側に開口が形成されているステイと、
前記ニップ板との間で前記筒状部材を挟むバックアップ部材と、を備えた定着装置であって、
前記ステイは、
前記ニップ板の前記筒状部材と摺接する面とは反対側の面を支持する支持部と、
前記筒状部材の軸線方向の端部において、前記ニップ板よりも前記バックアップ部材側に回り込み、前記ニップ板の前記バックアップ部材側の面を支持する複数のフック部と、
前記軸線方向の端部において、前記バックアップ部材側を向く被嵌合部と、を有し、
前記ニップ板は、前記被嵌合部と、前記ニップ板と前記バックアップ部材とが対向する対向方向において嵌合することにより、前記対向方向と直交する方向の移動を規制される嵌合部を有することを特徴とする定着装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−234029(P2012−234029A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102095(P2011−102095)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】