説明

定電流回路の出力設定装置

【課題】電流値の設定が容易であり、且つ、装置構成を簡素化することが可能な定電流回路の出力設定装置を提供する。
【解決手段】基準電流Irefを流す基準電流発生回路11と、基準電流Irefに比例した電流を流すカレントミラー回路を少なくとも一つ備えた、4個のカレントミラー回路群、即ち、第1〜第4のカレントミラー回路群21〜24を備える。そして、各カレントミラー回路群21〜24は、それぞれ、基準電流Irefに対してα倍、2α倍、4α倍、8α倍となる電流を出力する。そして、各カレントミラー回路群を適宜選択して負荷に接続することにより、該負荷に供給する電流値が所望の電流値となるように設定することが可能となる。このため、操作性を容易とし、且つ、装置構成を簡素化することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電流回路の出力電流を任意の電流値に変更可能な出力設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されるLEDランプ、リレーコイル等の負荷は、定電流回路より一定の電流が供給されて作動する。また、LEDランプは使用するLEDの種類によって作動時の電流値が異なり、また、リレーコイルにおいてもそれぞれの抵抗値によって作動時の電流値が異なる。従って、負荷に応じて定電流回路の出力電流を適宜変更することが必要となる。
【0003】
そこで、従来より、例えば特開平5−259756号公報(特許文献1)に記載された出力設定回路が提案されている。図8は、該特許文献1に記載された出力設定回路の構成を示す回路図であり、図示のように、EEPROM101、デコーダ102、及び電流発生部103を備え、該電流発生部103にて発生した電流をカレントミラー回路104に流すことにより、定電流I0を発生させている。また、電流発生部103は、1倍、2倍、4倍、8倍の電流値回路が設けられているので、これらの組み合わせにより所望の電流値を設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−259756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来例は、基準電流を発生させるために、EEPROM101、デコーダ102、電流発生部103等の回路を設ける必要があるので、装置全体が高価なものとなってしまう。また、出力電流値を変更するためには、EEPROMへのデータの書き込み操作が必要となるので、電流値の変更に手間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電流値の設定が容易であり、且つ、装置構成を簡素化することが可能な定電流回路の出力設定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、負荷に供給する電流を設定する定電流回路の出力設定装置において、基準電流を流す基準電流発生手段(11)と、
前記基準電流に比例した電流を流すカレントミラー回路を少なくとも一つ備えた、複数のカレントミラー回路群(21〜24)と、を有し、前記複数のカレントミラー回路群のうちの1つ、或いは2以上の並列接続回路を前記負荷に接続して、該負荷に供給する電流を設定することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記各カレントミラー回路群は、それぞれ出力する電流値が異なることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記カレントミラー回路群は、第1番目から第k(k≧2)番目までのk個設けられ、前記基準電流をIrefとしたとき、第1番目のカレントミラー回路群は、α・Irefの電流(但し、αは係数)を流し、第k番目のカレントミラー回路群は、2(k−1)・α・Irefの電流を流すことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、電源端子、グランド端子、及び複数の接続端子を更に備え、且つ、前記各カレントミラー回路群は、第1の主電極(例えば、トランジスタのコレクタ)、及び第2の主電極(例えば、トランジスタのエミッタ)を備え、前記基準電流回路は、一端が前記電源端子に接続され、且つ他端が前記グランド端子に接続され、前記各カレントミラー回路群の各第1の主電極は、それぞれ前記接続端子に接続され、各第2の主電極は、前記グランド端子に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、少なくとも一つのカレントミラー回路で構成されたカレントミラー回路群を用いて電流値を設定するので、簡単な操作で所望する電流を設定することができ、且つ、操作性を向上させることができる。また、装置規模を簡素化することが可能となる。
【0012】
請求項2の発明では、各カレントミラー回路群毎に出力する電流値が異なるので、各カレントミラー回路群を適宜選択することにより、所望の電流値を容易に設定することが可能となる。
【0013】
請求項3の発明では、基準電流の1倍、2倍、4倍、8倍のように、カレントミラー回路群の出力電流が設定されるので、各カレントミラー回路群を適宜選択することにより、所望する電流値を広い範囲で設定することが可能となる。
【0014】
請求項4の発明では、電源端子、グランド端子、及び複数の接続端子を備える集積回路に搭載することが可能となり、接続端子を選択して負荷に接続するという簡単な操作で、該負荷に供給する電流値を設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る定電流回路の出力設定装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る定電流回路の出力設定装置に用いられるカレントミラー回路群の詳細な構成を示す回路図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る定電流回路の出力設定装置による電流値の設定の組み合わせを示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る定電流回路の出力設定装置を、集積回路に搭載した例を示す回路図である。
【図5】本発明の変形例に係る定電流回路の出力設定装置に、定電流が5mAとなる負荷を接続した例を示す説明図である。
【図6】本発明の変形例に係る定電流回路の出力設定装置に、定電流が30mAとなる負荷を接続した例を示す説明図である。
【図7】本発明の変形例に係る定電流回路の出力設定装置に、定電流が15mAとなる負荷、及び25mAとなる負荷を接続した例を示す説明図である。
【図8】従来における定電流回路の出力設定装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る定電流回路の出力設定装置の構成を示す回路図である。図1に示すように、この出力設定装置は、基準電流を流す基準電流発生回路(基準電流発生手段)11と、第1のカレントミラー回路群21と、第2のカレントミラー回路群22と、第3のカレントミラー回路群23と、第4のカレントミラー回路群24と、を備えている。
【0017】
基準電流発生回路11は、基準電流Irefを流す電流源31、及びトランジスタQ0を備えており、トランジスタQ0のコレクタ、ベース間が短絡されている。
【0018】
第1〜第4のカレントミラー回路群21〜24は、基準電流発生回路11との間でカレントミラーをなす少なくとも1つのトランジスタを備えており、それぞれが基準電流Irefに比例した電流が流れるように設定されている。具体的には、第1のカレントミラー回路群21に流れる電流I1は、基準電流Irefに対してα倍(αは係数)となる電流(即ち、I1=α・Iref)となるように設定され、第2のカレントミラー回路群22に流れる電流I2は、電流I1の2倍となる電流(即ち、I2=2α・Iref)となるように設定されている。
【0019】
また、第3のカレントミラー回路群23に流れる電流I3は、電流I1の4倍となる電流(即ち、I3=4α・Iref)となるように設定され、第4のカレントミラー回路群24に流れる電流I4は、電流I1の8倍となる電流(即ち、I4=8α・Iref)となるように設定されている。即ち、第k番目(k=1〜4)のカレントミラー回路群は、2(k−1)・α・Irefの電流を流すように設定されている。
【0020】
図2は、各カレントミラー回路群21〜24の構成を示す回路図であり、複数(m個)のトランジスタQ1〜Qmが互いに並列接続されており、各トランジスタQ1〜Qmのベースは、基準電流発生回路11のトランジスタQ0のベースに接続され、それぞれがカレントミラーを構成している。そして、各トランジスタQ1〜Qmに流れる電流i1〜imは、それぞれが基準電流Irefと等しくなるので、カレントミラー回路群に流れる合計の電流は「m・Iref」となる。従って、各カレントミラー回路群21〜24は、トランジスタの個数を変更することにより、図1に示したα倍、2α倍、4α倍、8α倍を設定することが可能となる。
【0021】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る定電流回路の出力設定装置の作用について説明する。前述したように、各カレントミラー回路群21〜24に流れる電流は「I1=α・Iref」「I2=2α・Iref」「I3=4α・Iref」「I4=8α・Iref」の関係が成立するので、これらの組み合わせにより、任意の電流を設定することができる。
【0022】
具体的には、負荷(LEDランプやリレーコイル等)に供給する電流値を「α・Iref」に設定する場合には、第1のカレントミラー回路群21を負荷に接続すれば良い。また、電流値を「2α・Iref」に設定する場合には、第2のカレントミラー回路群22を負荷に接続すれば良く、電流値を「3α・Iref」に設定する場合には、第1のカレントミラー回路群21と第2のカレントミラー回路群22との並列接続回路を負荷に接続すれば良い。以下同様に、図3に示すように、「α・Iref」〜「15α・Iref」の範囲で電流値を任意に設定することが可能となる。
【0023】
図4は、図1に示した定電流回路の出力設定装置を集積回路41に搭載した場合の構成を示す説明図である。図4に示すように、集積回路41は、4個の接続端子T1〜T4と、電源端子T11、及びグランド端子T12を備えている。そして、基準電流発生回路11の電流源31は電源端子T11に接続され、更にスイッチSW1を介して電源VBに接続されている。また、トランジスタQ0のエミッタ、及び各カレントミラー回路群21〜24のエミッタ(第2の主電極)はグランド端子T12に接続されている。
【0024】
また、第1のカレントミラー回路群21のコレクタ(第1の主電極)は接続端子T1に接続され、第2のカレントミラー回路群22のコレクタは接続端子T2に接続され、第3のカレントミラー回路群23のコレクタは接続端子T3に接続され、第4のカレントミラー回路群24のコレクタは接続端子T4に接続されている。そして、これらの回路が1個の集積回路41として構成されている。
【0025】
従って、電源端子T11を車両のバッテリ等の電源VBに接続し、且つグランド端子T12を接地線に接続し、更に、各接続端子T1〜T4のうちのいずれか1つ、或いは2以上の並列接続回路をLEDランプやリレーコイル等の負荷に接続することにより、該負荷に流す電流を所望する電流値に設定することができる。即ち、図3に示したように、各接続端子T1〜T4のうちの少なくとも一つを選択することにより、αIref〜15αIrefの範囲で電流値に設定することができる。
【0026】
このようにして、本実施形態に係る定電流回路の出力設定装置では、それぞれ電流値が異なる複数(この例では4個)のカレントミラー回路群、即ち、第1〜第4のカレントミラー回路群21〜24を設け、各カレントミラー回路群21〜24のうちのいずれか1つ、或いは2以上の並列接続回路を用いて電流値を設定するので、簡単な操作で任意の電流値を設定することが可能となる。また、従来のように、EEPROM等の高価な部品を用いる必要が無いので、構成を簡素化し装置規模を小型化することが可能となる。
【0027】
更に、各カレントミラー回路群21〜24は、それぞれ、基準電流Irefに対して、α倍、2α倍、4α倍、8α倍(即ち、第k番目のカレントミラー回路群の電流値が2(k−1)・α・Iref)となるように設定されているので、これらの組み合わせにより、基準電流Irefのα倍から15α倍までの範囲で電流値を設定可能となり、汎用性を広げることが可能となる。
【0028】
次に、本実施形態に係る定電流回路の出力設定装置の変形例について説明する。図5,図6,図7は、変形例に係る出力設定装置が搭載された集積回路41(図では定電流ICと表記)の構成を示す説明図である。該変形例では、接続端子T1及びT2の電流値を共に5mAに設定し、接続端子T3の電流値を10mAに設定し、接続端子T4の電流値を20mAに設定した例について示している。
【0029】
この構成は、図1に示した回路で、第1、第2のカレントミラー回路群21,22の出力電流をそれぞれαIrefとし、第3のカレントミラー回路群23の出力電流を2αIrefとし、第4のカレントミラー回路群24の出力電流を4αIrefとした場合の例である。
【0030】
そして、このような構成とすることにより、図5に示すように、負荷RLに供給する電流値が5mAである場合には、接続端子T1に負荷RLを接続すれば良い。また、図6に示すように、負荷RLに供給する電流値が30mAである場合には、接続端子T3(10mA)、及びT4(20mA)の双方に負荷RLを接続して合計の電流値を30mAにすれば良い。
【0031】
更に、図7に示すように、接続端子T1とT4の双方に負荷RL1を接続することにより負荷RL1に供給する電流値を25mAとし、且つ、接続端子T2とT3の双方に負荷RL2を接続することにより、負荷RL2に供給する電流値を15mAとすることも可能である。即ち、一つの定電流回路で2つの電流を発生させて、それぞれ負荷RL1,RL2に供給することが可能となる。
【0032】
このようにして、変形例に係る定電流回路の出力設定装置では、1つまたは複数の接続端子T1〜T4を負荷に接続することにより、該負荷に所望の電流を流すように設定することが可能になる。また、複数の負荷RL1,RL2のそれぞれに対して所望の電流を供給することが可能となり、電流値設定の融通性を向上させることが可能となる。
【0033】
以上、本発明の定電流回路の出力設定装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0034】
例えば、上述した実施形態では、各カレントミラー回路群21〜24が複数個のトランジスタを並列に接続してα倍〜8α倍の電流を流す例について説明したが、1つでα倍の電流を流す特性のトランジスタで構成することも可能である。即ち、図2に示したトランジスタQ1〜Qmを一つのトランジスタで構成することもできる。
【0035】
また、上述した実施形態では、カレントミラーを構成するトランジスタとして、バイポーラトランジスタを用いる例について説明したが、MOSFET等の他のトランジスタを用いることも可能である。更に、上述した実施形態では、4個のカレントミラー回路群21〜24を設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2個、3個、或いは5個以上のカレントミラー回路群を設ける構成とすることも可能である。
【0036】
更に、上述した実施形態では、各カレントミラー回路群21〜24は、それぞれ異なる電流を出力する例について説明したが、全てのカレントミラー回路群21〜24が同一の電流を流すように構成することも可能である。
【0037】
また、上述した実施形態では、各カレントミラー回路群21〜24のエミッタをグランドに接続し、コレクタを負荷に接続する例について説明したが、エミッタとグランドとの間に負荷を設ける構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、所望する電流値を簡単な操作で設定し、負荷に供給する上で極めて有用である。
【符号の説明】
【0039】
11 基準電流発生回路
21 第1のカレントミラー回路群
22 第2のカレントミラー回路群
23 第3のカレントミラー回路群
24 第4のカレントミラー回路群
31 電流源
41 集積回路
T1〜T4 接続端子
T11 電源端子
T12 グランド端子
RL,RL1,RL2 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に供給する電流を設定する定電流回路の出力設定装置において、
基準電流を流す基準電流発生手段と、
前記基準電流に比例した電流を流すカレントミラー回路を少なくとも一つ備えた、複数のカレントミラー回路群と、を有し、
前記複数のカレントミラー回路群のうちの1つ、或いは2以上の並列接続回路を前記負荷に接続して、該負荷に供給する電流を設定することを特徴とする定電流回路の出力設定装置。
【請求項2】
前記各カレントミラー回路群は、それぞれ出力する電流値が異なることを特徴とする請求項1に記載の定電流回路の出力設定装置。
【請求項3】
前記カレントミラー回路群は、第1番目から第k(k≧2)番目までのk個設けられ、前記基準電流をIrefとしたとき、第1番目のカレントミラー回路群は、α・Irefの電流(但し、αは係数)を流し、第k番目のカレントミラー回路群は、2(k−1)・α・Irefの電流を流すことを特徴とする請求項2に記載の定電流回路の出力設定装置。
【請求項4】
電源端子、グランド端子、及び複数の接続端子を更に備え、且つ、前記各カレントミラー回路群は、第1の主電極、及び第2の主電極を備え、
前記基準電流回路は、一端が前記電源端子に接続され、且つ他端が前記グランド端子に接続され、
前記各カレントミラー回路群の各第1の主電極は、それぞれ前記接続端子に接続され、各第2の主電極は、前記グランド端子に接続されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の定電流回路の出力設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−88884(P2013−88884A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226466(P2011−226466)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】