説明

実装構造体の製造方法

【課題】電子部品と絶縁性樹脂の間に発生する気泡を減らすことのできる実装構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】シート状の絶縁性樹脂16を回路基板14上に形成する絶縁性樹脂配置ステップと、電子部品11の電極12上に形成されたバンプ13が、回路基板14の対向電極15に相対するように、絶縁性樹脂16の上から電子部品11を位置合わせする実装ステップと、加熱加圧を行って、絶縁性樹脂16を硬化させて電子部品11と回路基板14とを接合する接合ステップとを備える。絶縁性樹脂16の側面の形状は、実装ステップで位置合わせする際または接合ステップで接合する際に電子部品11を下降させるにしたがって、絶縁性樹脂16と電子部品11の下面との当接する部分が広がる形状をしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路用プリント基板に電子部品を実装した実装構造体の製造方法に関するものである。
【0002】
本明細書では、電子回路用プリント基板を単に「回路基板」と称するが、この「回路基板」は、インタポーザや電子部品が装着される他の部品などの被装着体を意味する。
【0003】
本発明は、例えば、このような回路基板に、ICチップ、CSP(Chip Size Package)、MCM(Multi Chip Module)、BGA(Ball Grid Array)や表面弾性波(SAW)デバイスなどの電子部品を単体(ICチップの場合にはベアIC)状態で実装する、電子部品実装構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0004】
今日、電子回路基板は、あらゆる製品に使用されるようになり、日増しにその性能が向上し、回路基板上で用いられる周波数も高くなっており、インピーダンスが低くなるフリップチップ実装は高周波を使用する電子機器に適した実装方法となっている。また、携帯機器の増加から、回路基板にICチップをパッケージではなく裸のまま搭載するフリップチップ実装が求められている。また、上記フリップチップ以外にもCSP(Chip Size Package)、BGA(Ball Grid Array)等が用いられるようになってきている。
【0005】
従来、電子機器の回路基板にICチップなどの電子部品を接合する方法としては、電子部品の電極と回路基板の電極とをAu線を用いて作られる突起バンプによって接続し、絶縁性の樹脂のシートで封止し、加熱加圧して絶縁性樹脂を硬化させて、電子部品実装構造体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図11(a)〜(c)に、従来の絶縁性樹脂シートを用いる実装構造体の製造方法を説明するための断面模式図を示す。図11(a)は、回路基板上に絶縁性樹脂シートを貼り付ける貼り付け工程を、図11(b)は、電子部品を回路基板上に位置合わせする実装工程を、図11(c)は、電子部品を回路基板上に加熱加圧して接合する接合工程を、それぞれ示している。
【0007】
まず、図11(a)に示すように、例えばICチップなどの電子部品101の電極102にバンプ103を形成しておき、一方、回路基板104側には、電子部品101の大きさより若干大きな寸法にてカットされた絶縁性樹脂シート106を貼り付ける。
【0008】
そして、図11(b)に示すように、回路基板104の電極105に相対するように、電子部品101のバンプ103が付いた電極102を位置合わせして実装する。
【0009】
電子部品101を回路基板104上に位置合わせして実装した後、図11(c)に示すように、電子部品101の上から、加熱された加熱加圧ツール100を押し付け、加熱と加圧を同時に行い、バンプ103により電子部品101の電極102と回路基板104の電極105間を接合させ、絶縁性樹脂シート106を硬化させて接合する。このときの加熱により絶縁性樹脂シート106が硬化し、電子部品101と回路基板104間が封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−112475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、絶縁性樹脂シートを用いる従来の実装構造体の製造方法では、電子部品と回路基板の間に絶縁性樹脂シートを挟む工程において、絶縁性樹脂と電子部品の接着面との間に気泡が咬みこみ、抜けないことが多かった。
【0012】
すなわち、従来の実装構造体の製造方法では、図11(a)に示すように回路基板104に絶縁性樹脂シート106を貼り合わせた後に、図11(b)および(c)に示すように、電子部品101を回路基板104に貼られた絶縁性樹脂シート106に貼り合わせるため、電子部品101が下降して絶縁性樹脂シート106の表面に接触する際に、絶縁性樹脂シート106と電子部品101の接着面との間に気泡が咬みこみやすく、その気泡が抜けなくなってしまう。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を考慮して、電子部品と絶縁性樹脂の間に発生する気泡の量を従来よりも低減できる実装構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、第1の本発明は、
シート状の絶縁性樹脂を回路基板上に形成する絶縁性樹脂配置ステップと、
電子部品の電極上に形成されたバンプが、前記回路基板の対向電極に相対するように、前記絶縁性樹脂の上から前記電子部品を位置合わせする実装ステップと、
加熱および加圧を行って、前記絶縁性樹脂を硬化させて前記電子部品と前記回路基板とを接合する接合ステップとを備えた実装構造体の製造方法であって、
前記絶縁性樹脂の上面および側面の少なくともいずれかの面の形状は、前記実装ステップで位置合わせする際または前記接合ステップで接合する際に前記電子部品を下降させるにしたがって、前記絶縁性樹脂の前記面と前記電子部品の下面との当接する部分が広がる形状を有している、実装構造体の製造方法である。
【0015】
また、第2の本発明は、
前記絶縁性樹脂は、前記実装ステップで前記電子部品を位置合わせする前には、錐体形状、または、錐台形状、または、角柱の上に連続的に角錐が接続された形状、または、角柱の上に連続的に角錐台が接続された形状、または、楕円柱の上に連続的に楕円錐が接続された形状、または、楕円柱の上に連続的に楕円錐台が接続された形状を有しており、その頂点が前記電子部品側に向いている、第1の本発明の実装構造体の製造方法である。
【0016】
また、第3の本発明は、
前記実装ステップまたは前記接合ステップで前記電子部品を下降させる際に、前記錐台または前記角錐台または前記楕円錐台の上面は、前記電子部品の電極に当たらない、第2の本発明の実装構造体の製造方法である。
【0017】
また、第4の本発明は、
前記絶縁性樹脂の上面は、前記実装ステップで前記電子部品を位置合わせする前には、前記電子部品に向かって凸部を有する湾曲面である、第1の本発明の実装構造体の製造方法である。
【0018】
また、第5の本発明は、
前記絶縁性樹脂配置ステップでは、平板状の絶縁性樹脂を、貼り付け面に傾斜面を有する貼り付けツールによって加熱しながら前記回路基板上に貼り付ける、第1〜第4のいずれかの本発明の実装構造体の製造方法である。
【0019】
また、第6の本発明は、
前記絶縁性樹脂は、2層で構成されており、
前記回路基板に接している側の層は、前記電子部品側の層よりも粘度が高い、第1〜第5のいずれかの本発明の実装構造体の製造方法である。
【0020】
また、第7の本発明は、
前記絶縁性樹脂は、隣接する層の粘度が異なる3層以上で構成されており、
上面側および下面側以外の層は、前記上面側の層および前記下面側の層よりも粘度が高い、第1〜第5のいずれかの本発明の実装構造体の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、電子部品と絶縁性樹脂の間に発生する気泡の量を従来よりも低減できる実装構造体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)〜(c)本発明の実施の形態1の実装構造体の製造方法を説明するための断面模式図
【図2】本発明の実施の形態1の実装構造体の製造に用いる絶縁性樹脂の、ICチップ側から見た上面図
【図3】(a)〜(c)本発明の実施の形態1の実装構造体の製造に用いる絶縁性樹脂の形成方法を説明するための図
【図4】(a)本発明の実施の形態1の絶縁性樹脂の上面図、(b)、(c)本発明の実施の形態1の絶縁性樹脂の側面図
【図5】(a)本発明の実施の形態1の絶縁性樹脂の上面図、(b)〜(e)本発明の実施の形態1の絶縁性樹脂の側面図
【図6】(a)〜(d)バンプ位置を示した、ICチップの下面図
【図7】(a)〜(c)本発明の実施の形態2の実装構造体の製造方法を説明するための断面模式図
【図8】本発明の実施の形態2の実装構造体の製造に用いる絶縁性樹脂の、ICチップ側から見た上面図
【図9】(a)本発明の実施の形態2の、粘度の異なる3種類の層構造の絶縁性樹脂を用いた実装構造体の貼り付け工程時の断面模式図、(b)本発明の実施の形態2の、粘度の異なる3種類の層構造の絶縁性樹脂の上面図
【図10】(a)〜(c)比較例および実施例1〜6において、絶縁性樹脂に最初に接触する領域を示したICチップの下面図
【図11】(a)〜(c)従来の絶縁性樹脂シートを用いる実装構造体の製造方法を説明するための断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1にかかる電子部品、例えばICチップを回路基板に接合して作製する実装構造体の製造方法を、以下に説明する。
【0025】
図1(a)〜(c)に、本実施の形態1の実装構造体の製造方法を説明するための断面模式図を示す。ここでは説明をわかりやすくするために、ICチップの四辺に沿って下面の周囲に1列にバンプが設けられた構成のICチップを例に説明する。つまり、図1で説明するICチップ11は、例えば図6(a)の下面図に示すようにバンプが設けられている。
【0026】
図1(a)に示すように、本発明の電子部品の一例であるICチップ11の表面には、回路配線或いは電極部12が形成されている。ここでは、電極部12の例としてAlパッドの電極が形成されている。なお、電極の材質はAuやCuなどでもよく、また下地としてNi等のメッキをした上に金属をメッキした電極でもよい。
【0027】
このICチップ11上の電極部12に、ワイヤボンディング装置等を用いて、金属線、例えば、金ワイヤ(金線)(なお、金属線の例としては、スズ、アルミニウム、銅、またはこれらの金属に微量元素を含有させた合金のワイヤなどがある。)を熱と超音波をかけながら、電極部12と接合させ、接合部の面積が大きくなるように押し付けながら、最後は引きちぎり、先端が細くなるようにバンプ(突起電極)13を形成する。
【0028】
次に、図1(a)に示すように、回路基板14の電極部15上に、絶縁性樹脂16を形成させる。
【0029】
図2に、この絶縁性樹脂16の、ICチップ11側から見た上面図を示す。このように、本実施の形態1の絶縁性樹脂16は、四角錐台形状をしている。
【0030】
本実施の形態1では、絶縁性樹脂16を、回路基板14と接する四角錐台形状の底面の面積が、ICチップ11の面積より若干大きく、ICチップ11に接する側の四角錐台形状の上面の面積が、ICチップ11の面積より小さくなるような寸法としている。
【0031】
なお、図1(a)において、回路基板14上に絶縁性樹脂16を形成させる工程が、本発明の絶縁性樹脂配置ステップの一例にあたる。
【0032】
図1(b)に示すように、ICチップ11を回路基板14と位置合わせした際に、絶縁性樹脂16の上面が、ICチップ11に配列された複数のバンプ13で囲まれる範囲内に収まるような、絶縁性樹脂16の配置および形状としている。
【0033】
したがって、ICチップ11を回路基板14と位置合わせまたは接合する際に、回路基板14に対してICチップ11を下降させるとき、ICチップ11が絶縁性樹脂16の上面と最初に接触するのは、ICチップ11下面の複数のバンプ13で囲まれる部分であり、このとき絶縁性樹脂16の上面はバンプ13には接触しない。
【0034】
回路基板14として、セラミック多層基板、FPC、ガラス布積層エポキシ基板(ガラエポ基板)やガラス布積層ポリイミド樹脂基板、アラミド不織布エポキシ基板(例えば、パナソニック株式会社製のアリブ「ALIVH」(登録商標)として販売されている樹脂多層基板)などが用いられる。
【0035】
なお、この回路基板14上の電極部15は、例としてCuの上にNiをメッキし表面をAuのフラッシュメッキしたものを使用するが、上記でICチップ11の電極部12の材質として挙げたものと同じ材質であっても良い。また、電極部15は、ICチップ11の電極部12と材質が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
図3(a)〜(c)のそれぞれに、図1で用いた本実施の形態1の絶縁性樹脂16の形成方法を説明する図を示す。
【0037】
本実施の形態1の絶縁性樹脂16としては、例えば無機フィラーを配合した固体または半固体の絶縁性樹脂層のシートが用いられる。
【0038】
本実施の形態1の絶縁性樹脂16として、あらかじめ、図1および図2に示した四角錐台形状に成形としたものを供給してもよい。この場合、あらかじめ所望の形状に成形した絶縁性樹脂16は、例えば図3(a)のような構造で供給される。絶縁性樹脂16は、カバーフィルム17と剥離フィルム18で挟むことによって保護されて供給される。絶縁性樹脂16を回路基板14に貼り付ける際に剥離フィルム18を剥がし、回路基板14に貼り付けた後、ICチップ11を実装する直前にカバーフィルム17を剥がして使用する。
【0039】
図3(b)は、回路基板14上に貼り付けた後に絶縁性樹脂16の形状を成形する例を示している。この場合、略垂直な端面を有する直方体形状の絶縁性樹脂19を用い、平坦なツールで回路基板14に貼り付けた後、絶縁性樹脂19の4辺をカットして図1および図2に示したような四角錐台形状の絶縁性樹脂16とする。
【0040】
図3(c)は、回路基板14に貼り付ける際に、貼り付けツールによって絶縁性樹脂16を成形する例を示している。この場合、回路基板14に貼り付ける際の加熱および加圧により絶縁性樹脂を図1に示した絶縁性樹脂16の形状に変形させるような、貼り付け面の中央が図3(c)に示すような凹型になった貼り付けツール30を用いる。この貼り付けツール30によって直方体形状の絶縁性樹脂19を回路基板14に貼り付ける際、そのときの加熱および加圧によって、絶縁性樹脂19を図1に示したような形状の絶縁性樹脂16に変形させる。
【0041】
本実施の形態1の絶縁性樹脂16は、例えば60〜120℃(好ましくは、温度は低い方が良い)に熱せられた貼付けツール等により、例えば5〜10kgf/cm程度の圧力で、電極部15が形成された回路基板14上に貼り付けられる。
【0042】
ここで、絶縁性樹脂16としては、球状又は破砕シリカ、アルミナ等のセラミックスなどの無機系フィラーを絶縁性樹脂に分散させて混合し、これをドクターブレード法などにより平坦化し溶剤成分を気化させ固体化したものが好ましいとともに、後工程のリフロー工程での高温に耐えうる程度の耐熱性(例えば、240℃に10秒間耐えうる程度の耐熱性)を有することが好ましい。
【0043】
本実施の形態1の絶縁性樹脂16として、例えば、絶縁性熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ビスマレイミド、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂など、様々な樹脂を含むことができる)を用いる。これらの絶縁性熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、特にエポキシ樹脂が好適である。エポキシ樹脂には、ビスフェノール型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂の群から選ばれるエポキシ樹脂も用いることができる。その中でも、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが好適に用いられる。また、これらを変性させたエポキシ樹脂も用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
また、場合によっては絶縁性熱可塑性樹脂(例えば、ポニフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネイト、変性ポリフェニレンオキサイド(PPO)など)を使用することもできる。また、絶縁性熱硬化性樹脂に絶縁性熱可塑性樹脂を混合したものなども使用できる。熱可塑性樹脂のみを使用する場合には、最初は加熱して一旦軟化させたのち、加熱を停止して自然冷却させることにより硬化させる。一方、絶縁性熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を混合したものを使用する場合には、熱硬化性樹脂の方が支配的に機能するため、熱硬化性樹脂のみの場合と同様に加熱することにより硬化する。
【0045】
ここでは、代表例として絶縁性熱硬化性樹脂を用いた場合について、以下の説明を続ける。
【0046】
上記のような絶縁性熱硬化性樹脂と組み合わせて用いる硬化剤としては、チオール系化合物、変性アミン系化合物、多官能フェノール系化合物、イミダゾール系化合物、および酸無水物系化合物の群から選ばれる化合物を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
次に、図1(b)に示すように、電子部品搭載装置において、部品保持部材の先端の熱せられた位置合わせツールにより、上記前工程でバンプ13が電極部12上に形成されたICチップ11を吸着保持しつつ、そのICチップ11を、上記前工程で準備された回路基板14に対して、ICチップ11に形成されたバンプ13が対応する回路基板14の電極部15上に位置するように位置合わせした後、ICチップ11を回路基板14に押圧実装する。この位置合わせは、公知の位置認識動作を使用する。
【0048】
このときに押圧実装する際の荷重は、バンプ13の頭部が回路基板14の電極部15に届いていれば良く、バンプ13の頭部が多少は変形する程度の低い荷重でも良い。位置合わせツールにより加熱も行うのは、電極部15が形成された回路基板14上に絶縁性樹脂16を貼り付ける場合と同様に、ICチップ11の接合面に絶縁性樹脂16を貼り付けるためである。
【0049】
なお、図1(b)において、ICチップ11と回路基板14を位置合わせする工程が、本発明の実装ステップの一例にあたる。また、ICチップ11に形成されたバンプ13と対向する位置に位置合わせされる回路基板14の電極部15が、本発明の対向電極の一例にあたる。
【0050】
次に、図1(c)に示すように、加熱加圧ツール10を用いてICチップ11の上から加熱加圧をし、ICチップ11と回路基板14の間の絶縁性樹脂16を硬化させる。
【0051】
このときの加熱の温度は、絶縁性樹脂16が硬化する温度以上に設定する。
【0052】
また、このときの加圧は、ICチップ11の電極部12と回路基板14の電極部15との間のバンプ13を介した接触抵抗を低抵抗にするために、上記した実装工程における荷重よりも高い加圧が必要である。このとき、バンプ13は、その頭部が、回路基板14の電極部15上で変形されながら押しつけられていく。ICチップ11を介してバンプ13側に印加する荷重は、バンプ13の外径により異なるが、バンプ13の頭部が、必ず変形する程度の荷重を加えることが必要である。この荷重は、最低で20(gf/バンプ1ケあたり)であるのが好ましい。このときにICチップ11を介してバンプ13側に印加する荷重の上限は、ICチップ11、バンプ13、回路基板14などが損傷しない程度とする。
【0053】
なお、図1(c)において、絶縁性樹脂16を硬化させてICチップ11と回路基板14を接合する工程が、本発明の接合ステップの一例にあたる。
【0054】
図1に示したように、本実施の形態1の絶縁性樹脂16は、その上面の面積をICチップの接着面よりも小さくしているので、図11に示すような端面が略垂直な直方体形状の従来の絶縁性樹脂シート106を使用する場合に比べて、回路基板14に対してICチップ11を下降させる際にICチップ11の接着面が最初に絶縁性樹脂シート106と接触する面積が小さくなるので、その際にICチップ11の接着面との間で発生する気泡の量が従来よりも少なくなる。
【0055】
また、本実施の形態1の絶縁性樹脂16は、回路基板14と接触している底面の方が上面の面積よりも大きく、回路基板14に対してICチップ11を下降させるにしたがってICチップ11の接触面と接触する部分の面積が大きくなるような形状としているので、ICチップ11の接着面が最初に絶縁性樹脂シート106と接触した後、さらにICチップ11を下降させていく際にも、ICチップ11の接着面との間で気泡が咬み込み難い。
【0056】
したがって、本実施の形態1の形状の絶縁性樹脂16を用いることにより、電子部品と絶縁性樹脂の間に発生する気泡の量を従来よりも低減できる。
【0057】
また、接合工程によりICチップ11を回路基板14に接合した後に、絶縁性樹脂がICチップ11の外形よりもはみ出すフィレットの量も、従来の絶縁性樹脂シート106を用いる場合よりも少なくなる。
【0058】
絶縁性樹脂の形状は、図1および図2に示したような絶縁性樹脂16の形状に限らず、ICチップ11を下降させたときにICチップ11の接触面と最初に接する部分の面積がICチップ11の接触面よりも小さく、ICチップ11を下降させていくにしたがってICチップ11の接触面と接触する部分の面積が大きくなっていくような形状であれば、上記と同様の効果が得られる。
【0059】
図4および図5に、本発明の上記した効果が得られる絶縁性樹脂の形状の例を示している。
【0060】
図4(a)および図5(a)は、絶縁性樹脂の上面図を示しており、図4(b)および(c)、図5(b)〜(e)は、絶縁性樹脂の側面図を示している。
【0061】
なお、ここに示す絶縁性樹脂の形状は一例であって、本発明の絶縁性樹脂はこれらの形状に限られるものではない。
【0062】
本実施の形態1の上記の説明では、絶縁性樹脂16の形状を四角錐台形状として説明したが、例えば楕円錐台形状でもあってもよい。つまり、断面図が図1で、上面図が図4(a)に示すような形状の楕円錐台形状としてもよい。
【0063】
また、四角錐台形状に限らず、さらに多角形の角錐台形状であってもよいし、上面図が真円となる円錐台形状であってもよい。
【0064】
また、下部が角柱形状で、上部にその角柱形状に連続する角錐台形状を有するような形状であってもよい。つまり、上面図が図2で、側面図が図4(b)に示すような形状である。
【0065】
同様に、下部が楕円柱形状で、上部にその楕円柱形状に連続する楕円錐台形状を有するような形状であってもよい。つまり、上面図が図4(a)で、側面図が図4(b)に示すような形状である。
【0066】
さらに、図4(c)の側面図で示されるような、2つの底面積の異なる角柱の間に、それらの角柱に連続する角錐台が接続されるような形状や、2つの底面積の異なる楕円柱の間に、それらの楕円柱に連続する楕円錐台が接続されるような形状であってもよい。
【0067】
また、ICチップ11に接する側の上面が無い(上面の面積がゼロである)ような形状であってもよい。すなわち、図1および図2で示した四角錐台形状が有しているような上面を有していない、錐体形状などであってもよい。
【0068】
例えば、図5(a)の上面図および図5(b)の側面図で示されるような四角錐形状であってもよいし、側面図が図5(b)で、上面図が楕円となるような、楕円錐形状であってもよい。また、四角錐よりもさらに多角形の角錐形状であってもよい。
【0069】
また、側面が図5(c)で表されるような、角柱または楕円柱に、角錐または楕円錐が連続して接続されるような形状であってもよい。
【0070】
また、側面が図5(d)で表されるような、平面と湾曲面で構成されるような形状であってもよい。また、側面が図5(e)で示されるような、円柱や角柱形状に図5(d)で示したような形状が連続して接続されるような形状であってもよい。
【0071】
また、本実施の形態1の絶縁性樹脂のICチップ11に接する側の上面の面積は、ICチップ11に形成されたバンプ13の配置に関わらず、小さいほどよい。
【0072】
図6(a)〜(d)に、さまざまなICチップの下面図を示す。
【0073】
それぞれの下面図には、バンプを黒丸で示し、ICチップの下面のうち、バンプが配置されていない領域を二点鎖線で囲んで示している。
【0074】
絶縁性樹脂がICチップの下面に最初に接する面、例えば、図1で示すような四角錐台の形状の場合の上面が、図6(a)〜(d)の二点鎖線で囲んだ領域内となるような面積である絶縁性樹脂とし、その上面部分がICチップの二点鎖線で囲んだ領域内の対向する位置となるように、回路基板上に配置するのが望ましい。
【0075】
図6(a)〜(c)は、ICチップの外周部の全辺にバンプが存在する例を示しており、それらのバンプの配置により、図6(a)〜(c)の順に二点鎖線で囲まれる範囲が小さくなっている。図6(a)のようなバンプ配置のICチップでは、絶縁性樹脂の上面の面積を比較的大きくしてもよいが、図6(c)のようなバンプ配置のICチップでは、絶縁性樹脂の上面の面積をかなり小さくする必要があり、この場合、例えば図5(b)に側面図を示したような四角錐形状とするのが望ましい。
【0076】
また、図6(d)のように、ICチップの外周部の2辺にしかバンプが存在しないときは、その辺に対応する側の絶縁性樹脂の端面のみ傾斜させるような形状としてもよい。つまり、バンプが配置されていない2辺に対応する側の絶縁性樹脂の端面は、従来のように略垂直な形状としてもよい。
【0077】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2にかかる電子部品、例えばICチップを回路基板に接合して作製する実装構造体の製造方法を、以下に説明する。
【0078】
図7(a)〜(c)に、本実施の形態2の実装構造体の製造方法を説明するための断面模式図を示す。なお、図1と同じ構成部分には、同じ符号を用いている。
【0079】
本実施の形態2では、製造装置等は図1に示した実施の形態1の場合と同様の物が用いられるが、使用する絶縁性樹脂のみが実施の形態1の場合と異なる。
【0080】
図8に、本実施の形態2の絶縁性樹脂の、ICチップ11側から見た上面図を示す。
【0081】
本実施の形態2で使用する絶縁性樹脂20、21は、図7(a)および図8に示すように、その外形形状は、実施の形態1の絶縁性樹脂16同様の四角錐台形状であるが、粘度の異なる2層構造となっている。
【0082】
本実施の形態2の絶縁性樹脂は、ICチップ11と接する側に、絶縁性樹脂20よりも低粘度の絶縁性樹脂21の層が配置されている。
【0083】
実施の形態1とは、使用する絶縁性樹脂が異なるのみで、実装構造体の製造方法は同じであるので、製造方法の説明については省略する。
【0084】
ICチップ11側にはバンプ13があるため、ICチップ11側の方が回路基板14側よりも凹凸が多い。樹脂の粘度が低い方がより気泡が抜けやすいので、図8に示すような、凹凸の多いICチップ11側に低粘度の絶縁性樹脂21を配置した2層構造とすることにより、実施の形態1の1層構造における絶縁性樹脂16として絶縁性樹脂20と同等の粘度の絶縁性樹脂を用いた場合に比べてさらに大きな効果が得られる。
【0085】
なお、絶縁性樹脂20と絶縁性樹脂21は、全く同じ材料組成で粘度だけ変わっていてもよく、違う組成の材料でもよい。好ましくは、樹脂硬化後の物性が異ならないよう同じ組成である方がよい。
【0086】
また、絶縁性樹脂20の粘度は、一般的な樹脂シートの粘度でよく、ずり粘弾性測定装置で測定して、10〜10Pa・s(30℃)であり、絶縁性樹脂21の粘度は絶縁性樹脂20より低ければよく、好ましくは絶縁性樹脂20の粘度より一桁低い方がよい。
【0087】
また、図7および図8では、2種類の粘度の異なる層構造の絶縁性樹脂の例を説明したが、3種類以上の粘度の異なる複数層構造の絶縁性樹脂でもよい。
【0088】
図9(a)に、粘度の異なる3種類の層構造の絶縁性樹脂を用いた実装構造体の貼り付け工程時の断面模式図を示し、図9(b)に、その3層構造の絶縁性樹脂のICチップ11側から見た上面図を示す。
【0089】
3層のうち、回路基板14に接する側の絶縁性樹脂22の層と、ICチップ11に接する側の絶縁性樹脂23の層に挟まれる真ん中の層の絶縁性樹脂24の粘度が最も高く、ICチップ11に接する側の絶縁性樹脂23の粘度が最も低い。
【0090】
このように、絶縁性樹脂を3層以上で構成する場合、ICチップ11にも回路基板14にも接しない層(図9における絶縁性樹脂24の層)の絶縁性樹脂層の粘度は特に制限されないが、好ましくは樹脂内部からの気泡の発生を抑えられるよう高い粘度の方がよい。
【0091】
ICチップ11や回路基板14などの被着体と接する部分の絶縁性樹脂の粘度を低くすることで、これらの被着体との界面に残る気泡を減らすことができる。図8に示した2層構造の場合には、ICチップ11側のみに低粘度の絶縁性樹脂21を配置したのに対し、図9に示した3層構造の場合には、ICチップ11側および回路基板14側の両側に低粘度の絶縁性樹脂23および22を配置しているので、2層構造の絶縁性樹脂を用いた場合よりも、さらに大きな効果が得られる。
【0092】
なお、各実施の形態では、図1(b)や図7(b)において、ICチップ11を回路基板14に位置合わせする工程では、絶縁性樹脂がICチップ11の接着面に接触していないものとして示しているが、位置合わせする工程において、絶縁性樹脂がICチップ11の接着面に接触してもよい。
【0093】
また、各実施の形態では、位置合わせおよび接合する際に、ICチップ11を下降させると説明したが、回路基板14に対してICチップ11が相対的に下降すればよく、例えば回路基板14が上昇してもよいし、ICチップ11が下降すると同時に回路基板14が上昇するような動作であってもよい。
【0094】
上記したように、本発明の実装構造体の製造方法は、電子部品と回路基板間で、それぞれを接着固定する面の絶縁性樹脂の形状を異なるものとし、具体的には、絶縁性樹脂の形状を回路基板側の面の面積より電子部品側の面の面積の方が小さく、かつ電子部品の面積より小さくしたものである。
【0095】
このように絶縁性樹脂の形状を従来から変更することで、電子部品と絶縁性樹脂間に発生する気泡の量が低減される上、絶縁性樹脂全体の量を減らすことが出来るため、電子部品からフィレットとしてはみ出す量も削減される。
【0096】
本発明の実装構造体の製造方法は、現行の実装工程を大きく変えることなく、電子部品と絶縁性樹脂の間に発生する気泡を減らすことができ、絶縁性樹脂を介して電子部品と回路基板を電気的に接合した電子部品実装構造体に汎用的に適用できるものである。
【0097】
次に、本発明の効果について、具体例を用いて以下に説明する。
【実施例】
【0098】
本発明の電子部品の一例であるICチップとして、厚み150μm、10mm□Siの四辺にAlパッドの電極(サイズは70×70μm)が各辺120個あるものを使用する。そのICチップの電極のうち、各辺1mm間隔にあたる電極にΦ25μmのAu線を用いて、電極接合部の直径50μm、高さ65μm(先端にいくほど径が小さくなり、先端は尖っている)のバンプを作成した。このようにして、ICチップの各辺に10個のバンプを形成した。
【0099】
このICチップの下面図を、図10(a)〜(c)に示す。
【0100】
図10(a)〜(c)に示す黒丸は、バンプの位置を示している。このように、バンプがICチップの四辺に10個ずつ配置されている。
【0101】
回路基板には、ALIVH基板で厚み340μmのものを用い、上記ICチップの各電極に対応する箇所に、40μm□サイズで、Cuの下地にNiとフラッシュAuメッキによる電極を設けたものを使用した。なお、回路基板の電極の中心とICチップの電極の中心が一致するように設計されている。
【0102】
比較例、実施例1〜4用の絶縁性樹脂として、エポキシ樹脂にイミダゾール系の硬化剤と粒子径1〜10μmのシリカ(SiO)を重量%で50%混合したものを用いた。
【0103】
実施例5用の絶縁性樹脂のうち、高い粘度の絶縁性樹脂として、エポキシ樹脂にイミダゾール系の硬化剤と粒子径1〜10μmのシリカ(SiO)を重量%で50%混合した後、ずり粘弾性測定装置で測定した粘度が10Pa・s(30℃)のものを、低粘度の絶縁性樹脂として、エポキシ樹脂にイミダゾール系の硬化剤と粒子径1〜10μmのシリカ(SiO)を重量%で50%混合した後、ずり粘弾性測定装置で測定した粘度が10Pa・s(30℃)のものを、それぞれ使用した。
【0104】
実施例6用の絶縁性樹脂のうち、高い粘度の絶縁性樹脂として、エポキシ樹脂にイミダゾール系の硬化剤と粒子径1〜10μmのシリカ(SiO)を重量%で50%混合した後、ずり粘弾性測定装置で測定した粘度が10Pa・s(30℃)のものを、低粘度の絶縁性樹脂として、エポキシ樹脂にイミダゾール系の硬化剤と粒子径1〜10μmのシリカ(SiO)を重量%で50%混合した後、ずり粘弾性測定装置で測定した粘度が10Pa・s(30℃)のものを、上記2つの絶縁性樹脂の間の層に挟む絶縁性樹脂として、エポキシ樹脂にイミダゾール系の硬化剤と粒子径1〜10μmのシリカ(SiO)を重量%で50%混合した後、ずり粘弾性測定装置で測定した粘度が10Pa・s(30℃)のものを、それぞれ使用した。
【0105】
比較例、実施例1〜6のそれぞれにおいて、貼り付け機、実装機と加熱圧着機を用いて試料(実装構造体)を作成した。その後、ICチップの上方から観て、ICチップ側の面の絶縁性樹脂がはみ出ている最大長さをフィレット長として測定した。また、SAT(超音波顕微鏡)にて気泡を観察し、ICチップの面積に対して気泡の存在する面積を気泡の残存率として計算した後、電極部を断面観察し、電極部周辺の気泡の状態を15箇所以上確認されたとき×、10箇所以上15箇所未満であれば△、5箇所以上10箇所未満であれば○、5箇所未満であれば◎とした。その結果を表1に示す。
【0106】
比較例、実施例1〜6のそれぞれにおける試料の作成方法は、以下の通りである。
【0107】
(比較例)
図11(a)の従来例のような端面が略垂直な直方体形状の構造となるよう、上記絶縁性樹脂を11mm□サイズで厚み50μmにカットし、貼り付け機にて、貼り付け面が平坦なツールで70℃に加熱しながら、回路基板に貼り付けた。
【0108】
その後、実装機にて、30℃のツールを用い、10Nの荷重で、ICチップを回路基板上に貼り付けられた絶縁性樹脂の上に実装し、加熱圧着機にて、210℃のツールで50N荷重をかけ、加熱加圧して試料を作成した。
【0109】
(実施例1)
図1(a)および図2に示したような四角錐台形状にあらかじめ加工された上記絶縁性樹脂を、基板側の面積11mm□サイズ、ICチップ側の面積9mm□サイズで厚み50μmの状態で、貼り付け機にて、貼り付け面が平坦なツールで70℃に加熱しながら、回路基板に貼り付けた。
【0110】
その後、実装機にて、30℃のツールを用い、10Nの荷重で、ICチップを回路基板上に貼り付けられた絶縁性樹脂の上に実装し、加熱圧着機にて、210℃のツールで50N荷重をかけ、加熱加圧して試料を作成した。
【0111】
(実施例2)
比較例1と同様な直方体形状の上記絶縁性樹脂を、11mm□サイズで厚み50μmにカットし、貼り付け機にて、貼り付け面の中央が凹型になったツールで70℃に加熱しながら、絶縁性樹脂が図1(a)および図2に示したような四角錐台形状で、ICチップ側の面積が10mm□以下になるよう回路基板に貼り付けた。つまり、この場合、図3(c)に示した形成方法により、絶縁性樹脂を回路基板に貼り付けた。
【0112】
その後、実装機にて、30℃のツールを用い、10Nの荷重で、ICチップを回路基板上に貼り付けられた絶縁性樹脂の上に実装し、加熱圧着機にて、210℃のツールで50N荷重をかけ、加熱加圧して試料を作成した。
【0113】
(実施例3)
図1(a)および図2に示したような四角錐台形状にあらかじめ加工された上記絶縁性樹脂を、基板側の面積11mm□サイズ、ICチップ側の面積5mm□サイズで厚み50μmの状態で、貼り付け機にて、貼り付け面が平坦なツールで70℃に加熱しながら、回路基板に貼り付けた。
【0114】
その後、実装機にて、30℃のツールを用い、10Nの荷重で、ICチップを回路基板上に貼り付けられた絶縁性樹脂の上に実装し、加熱圧着機にて、210℃のツールで50N荷重をかけ、加熱加圧して試料を作成した。
【0115】
(実施例4)
図5(a)および(b)に示したような四角錐形状にあらかじめ加工された上記絶縁性樹脂を、基板側の面積11mm□サイズ、四角錐の高さ50μmの状態で、貼り付け機にて、貼り付け面が平坦なツールで70℃に加熱しながら、回路基板に貼り付けた。
【0116】
その後、実装機にて、30℃のツールを用い、10Nの荷重で、ICチップを回路基板上に貼り付けられた絶縁性樹脂の上に実装し、加熱圧着機にて、210℃のツールで50N荷重をかけ、加熱加圧して試料を作成した。
【0117】
(実施例5)
図7(a)および図8に示したような四角錐台形状で、上記の高い粘度の絶縁性樹脂の層(図7(a)の絶縁性樹脂20の層)が25μm、低い粘度の絶縁性樹脂層(図7(a)の絶縁性樹脂21の層)が25μmで積層されたものを、回路基板側の面積11mm□サイズ、ICチップ側の面積9mm□サイズの状態で、貼り付け機にて、貼り付け面が平坦なツールで70℃に加熱しながら、回路基板に貼り付けた。
【0118】
その後、実装機にて、30℃のツールを用い、10Nの荷重で、ICチップを回路基板上に貼り付けられた絶縁性樹脂の上に実装し、加熱圧着機にて、210℃のツールで50N荷重をかけ、加熱加圧して試料を作成した。
【0119】
(実施例6)
図9(a)および(b)に示したような四角錐台形状で、上記の高い粘度の絶縁性樹脂の層(図9(a)の絶縁性樹脂22の層)が20μm、低い粘度の絶縁性樹脂層(図9(a)の絶縁性樹脂23の層)が20μm、2つの樹脂層の間に挟まれ最も粘度の高い絶縁性樹脂の層(図9(a)の絶縁性樹脂24の層)が10μmで積層されたものを、回路基板側の面積11mm□サイズ、ICチップ側の面積9mm□サイズの状態で、貼り付け機にて、貼り付け面が平坦なツールで70℃に加熱しながら、回路基板に貼り付けた。
【0120】
その後、実装機にて、30℃のツールを用い、10Nの荷重で、ICチップを回路基板上に貼り付けられた絶縁性樹脂の上に実装し、加熱圧着機にて、210℃のツールで50N荷重をかけ、加熱加圧して試料を作成した。
【0121】
図10のICチップの下面図には、比較例および各実施例で、絶縁性樹脂に最初に接触する領域を示している。図10(a)〜(c)のそれぞれにおいて、二点鎖線で囲んだ部分が、絶縁性樹脂が最初に接触する領域を示している。
【0122】
図10(a)は、実施例1、実施例2、実施例5および実施例6において絶縁性樹脂が最初に接触する領域を示している。図10(b)は、実施例3において絶縁性樹脂が最初に接触する領域を示している。図10(c)は、実施例4において絶縁性樹脂が最初に接触する領域を示している。
【0123】
なお、比較例の場合には、ICチップの接触面の全面に絶縁性樹脂が接触する。
【0124】
【表1】

【0125】
表1の結果より、従来構造の比較例に対して、いずれの実施例においても気泡の量が減る効果が見られた。また、フィレットの寸方も短くなる効果が見られた。
【0126】
実施例1、3および4の結果より、底面積が同じ四角錐台形状の絶縁性樹脂では、上面の面積が小さいほど、気泡の量を低減でき、フィレットの寸法も小さくなることがわかる。
【0127】
また、実施例1、5および6の結果より、同じ形状の絶縁性樹脂の場合、粘度が均一の絶縁性樹脂よりも、粘度が異なる複数の層で構成された絶縁性樹脂の方が、気泡の量を低減できるとともにフィレットの寸法も小さくでき、また、粘度が異なる2層で構成された絶縁性樹脂よりも、粘度が異なる3層で構成された絶縁性樹脂の方が、さらに、気泡の量を低減できるとともにフィレットの寸法も小さくできることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明に係る実装構造体の製造方法は、電子部品と絶縁性樹脂の間に発生する気泡の量を従来よりも低減できる効果を有し、インタポーザや電子部品が装着される他の部品などの被装着体に、ICチップ、CSP、MCM、BGAや表面弾性波(SAW)デバイスなどの電子部品を単体状態で実装する製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0129】
11、101 電子部品(ICチップ)
12、102 電子部品の電極部
13、103 バンプ(Au)
14、104 回路基板
15、105 回路基板の電極部
16、22、23、24 絶縁性樹脂
17 カバーフィルム
18 剥離フィルム
19 絶縁性樹脂(直方体形状)
20 絶縁性樹脂(高粘度)
21 絶縁性樹脂(低粘度)
30 貼り付けツール
106 絶縁性樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の絶縁性樹脂を回路基板上に形成する絶縁性樹脂配置ステップと、
電子部品の電極上に形成されたバンプが、前記回路基板の対向電極に相対するように、前記絶縁性樹脂の上から前記電子部品を位置合わせする実装ステップと、
加熱および加圧を行って、前記絶縁性樹脂を硬化させて前記電子部品と前記回路基板とを接合する接合ステップとを備えた実装構造体の製造方法であって、
前記絶縁性樹脂の上面および側面の少なくともいずれかの面の形状は、前記実装ステップで位置合わせする際または前記接合ステップで接合する際に前記電子部品を下降させるにしたがって、前記絶縁性樹脂の前記面と前記電子部品の下面との当接する部分が広がる形状を有している、実装構造体の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁性樹脂は、前記実装ステップで前記電子部品を位置合わせする前には、錐体形状、または、錐台形状、または、角柱の上に連続的に角錐が接続された形状、または、角柱の上に連続的に角錐台が接続された形状、または、楕円柱の上に連続的に楕円錐が接続された形状、または、楕円柱の上に連続的に楕円錐台が接続された形状を有しており、その頂点が前記電子部品側に向いている、請求項1に記載の実装構造体の製造方法。
【請求項3】
前記実装ステップまたは前記接合ステップで前記電子部品を下降させる際に、前記錐台または前記角錐台または前記楕円錐台の上面は、前記電子部品の電極に当たらない、請求項2に記載の実装構造体の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁性樹脂の上面は、前記実装ステップで前記電子部品を位置合わせする前には、前記電子部品に向かって凸部を有する湾曲面である、請求項1に記載の実装構造体の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁性樹脂配置ステップでは、平板状の絶縁性樹脂を、貼り付け面に傾斜面を有する貼り付けツールによって加熱しながら前記回路基板上に貼り付ける、請求項1〜4のいずれかに記載の実装構造体の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁性樹脂は、2層で構成されており、
前記回路基板に接している側の層は、前記電子部品側の層よりも粘度が高い、請求項1〜5のいずれかに記載の実装構造体の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁性樹脂は、隣接する層の粘度が異なる3層以上で構成されており、
上面側および下面側以外の層は、前記上面側の層および前記下面側の層よりも粘度が高い、請求項1〜5のいずれかに記載の実装構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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