説明

室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物およびその製造方法

【課題】低モジュラスで初期接着性の発現が良好であるうえに、硬化性が良好で接着性および保存安定性に優れ、耐水性が良好な室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物を提供する。
【解決手段】この室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物は、(a)粘度(23℃)500〜100,000mPa・sのポリオキシプロピレンポリオールとγ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランとのウレタン化反応により得られたポリマーであって、主鎖が実質的にポリオキシプロピレンから成り、主鎖の末端に反応性ケイ素含有基を有する反応性ケイ素基含有ポリマー100重量部に対して、(b)合成炭酸カルシウムを含む無機充填剤5〜300重量部と、(c)シラノール基含有シロキサンオリゴマー0.05〜25重量部と、(d)硬化触媒0.01〜10重量部とをそれぞれ配合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性接着剤やシーリング材あるいはコーティング材として有用な室温硬化性のケイ素基含有ポリマー組成物と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
常温で液状の反応性ケイ素基含有有機ポリマーの中で、空気中の水分(湿分)と接触することにより硬化してゴム状弾性体を生じるものは、ベースポリマーや架橋剤、触媒などを使用直前に秤量したり混合したりする煩雑さが無く、配合上のミスを生じることがないうえに、接着性に優れているため、電気・電子工業などにおける弾性接着剤やコーティング材として、また建築用シーリング材などとして広く用いられている。そして従来から、接着性向上成分としてアミノ基置換シラン類(アミノ基含有シラン化合物)が配合された一液型の室温硬化性ポリマー組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この室温硬化性ポリマー組成物は、引火性や有害性が少ないうえに、硬化が速すぎないので、現場作業性が良好である。
【0003】
また、接着性向上成分としては、アミノ基含有シラン化合物の他にも、各種の有機官能性シラン化合物が提案されている。
【特許文献1】特許第3343604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アミノ基含有シラン化合物以外の有機官能性シラン化合物を配合したものは、いずれも十分な接着性の発現が得られなかった。また、接着性向上成分としてアミノ基含有シラン化合物が配合された特許文献1記載の室温硬化性ポリマー組成物は、初期の接着性は良いものの、耐温水性などの耐水性に劣り、浸水条件下で接着性が著しく低下するという問題があった。
【0005】
さらに、分子鎖末端にトリアルコキシシリル基を有するベースポリマーを配合したものでは、所望の低いモジュラスを有し伸張性に優れた硬化物を得にくい、という問題があった。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、低モジュラスでありながら硬化性が良好で接着性および保存安定性に優れ、かつ耐水性が良好で、浸水条件下においても接着性が低下しない室温硬化性のケイ素基含有ポリマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、液状のケイ素基含有ポリプロピレンポリマーに、シラノール基含有シロキサンオリゴマーを配合することにより、耐温水性などの耐水性が大幅に向上し、さらに合成炭酸カルシウムを含む無機充填剤を配合することにより、モジュラスが低く抑えられることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物は、(a)23℃における粘度が500〜100,000mPa・sであるポリオキシプロピレンポリオールとγ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランとのウレタン化反応により得られたポリマーであって、主鎖が実質的にポリオキシプロピレンから成り、主鎖の末端に式:
【化4】

(式中、Rは同一または相異なる炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される反応性ケイ素含有基を有する反応性ケイ素基含有ポリマー100重量部に対して、(b)合成炭酸カルシウムを含む無機充填剤5〜300重量部と、(c)シラノール基含有シロキサンオリゴマー0.05〜25重量部と、(d)硬化触媒0.01〜10重量部とをそれぞれ配合してなることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物の製造方法は、(a)23℃における粘度が500〜100,000mPa・sであるポリオキシプロピレンポリオールとγ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランとのウレタン化反応により得られたポリマーであって、主鎖が実質的にポリオキシプロピレンから成り、主鎖の末端に式:
【化5】

(式中、Rは同一または相異なる炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される反応性ケイ素含有基を有する反応性ケイ素基含有ポリマー100重量部に対して、(b)合成炭酸カルシウムを含む無機充填剤5〜300重量部と、(c)シラノール基含有シロキサンオリゴマー0.05〜25重量部と、(d)硬化触媒0.01〜10重量部、および
(e)一般式:RSiX4−a(式中、Rは同一または相異なる置換または非置換の1価の炭化水素基または水素原子、Xは加水分解性基、aは0〜2の整数を示す。)で表されるケイ素化合物またはその部分加水分解物0.01〜20重量部を配合してなる室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物を製造するにあたり、前記(a)成分と前記(c)成分を混合し、前記(a)成分の末端アルコキシル基と前記(b)成分のシラノール基とを反応させた後、前記(e)成分を加えて反応させる工程を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物によれば、低モジュラスでありながら初期接着性の発現が良好であるうえに、耐水性特に耐温水性に優れており、結露水などによる浸水下においても接着性の低下が極めて少ない硬化物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施形態の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物は、(a)反応性ケイ素基含有ポリマー100重量部に対して、(b)合成炭酸カルシウムを含む無機充填剤5〜300重量部と、(c)シラノール基含有シロキサンオリゴマー0.05〜25重量部と、(d)硬化触媒0.01〜10重量部とをそれぞれ配合して構成される。(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリマーは、(a1)粘度(23℃)が500〜100,000mPa・sのポリオキシプロピレンポリオールと、(a2)γ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランとをウレタン化反応させることにより得られたものである。
【0012】
(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリマーを調製するための一方の成分である(a1)ポリオキシプロピレンポリオールは、複数のオキシプロピレン単位を有するポリオールである。実施形態においては、ウレタン原料として広く使用されている市販のものの中から、23℃における粘度が500〜100,000mPa・sであるものが用いられる。具体的には、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンテトラオールなどのポリオキシプロピレンポリオール類、ポリオキシ(プロピレン・エチレン)共重合型ポリオールなどのポリオキシプロピレンと他のアルキレンとの共重合型ポリオールで、オキシプロピレン単位が50モル%を超えるポリオール類、およびポリオキシプロピレンポリオールをジイソシアネート類などでジャンピングさせることにより高分子化した実質的なポリオキシプロピレンポリオール類を挙げることができる。なお、ポリオキシプロピレンと他のアルキレンとの共重合型ポリオールにおいては、ブロック型ポリマーであってもよく、またポリオキシプロピレンポリオールに他のアルキレンオキシドを付加させたものでもよい。
【0013】
実施形態において、これらのポリオキシプロピレンポリオールは分子末端が水酸基であることが必要である。これらの内で速硬化性と保存安定性に優れたものは、23℃における粘度が500〜100,000mPa・sであるポリオキシプロピレンジオールであり、具体的には、プレミノール4010、プレミノール4019(ともに旭硝子(株)の商品名)などが挙げられる。低分子量のポリオキシプロピレンジオールにジイソシアネートを用いてジャンピング反応させることにより上記分子量の範囲としたポリオキシプロピレンジオールも、好適に使用することができる。
【0014】
実施形態において、(a)反応性ケイ素基含有ポリマーを調製するためのもう一方の成分は、(a2)γ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランである。特に、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが好適に使用される。両方の成分の配合割合は特に限定されるものではないが、(a2)γ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランのイソシアネート基(NCO)の個数と、(a1)ポリオキシプロピレンポリオールの水酸基(OH)の個数との比(以下、NCO/OH比と示す。)が、0.6〜1.2、好ましくは0.8〜1.0の範囲となるように両者を配合することが望ましい。
【0015】
具体的には、1種類のポリオキシプロピレンポリオールであれば、このポリオールの水酸基価を、また2種以上のポリオキシプロピレンポリオールであれば加重平均による混合ポリオールの水酸基価を算出し、このポリオール100重量部当りNCO/OH比が上記範囲になるように、反応させるべきγ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランの量を算出する。
【0016】
ポリオールに対するγ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランの配合量の決定に当っては、NCO/OH比が0.6より小さくなると、得られるケイ素基含有ポリマーの速硬化性が低下するとともに、水酸基の残留により耐水性が低下するため好ましくない。一方、NCO/OH比が1.2より大きくなると、γ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランが残留するため、保存安定性が低下する。特に、NCO/OH比が0.8〜1.0の範囲となるように、上記(a1)ポリオキシプロピレンポリオールと(a2)γ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランとを配合した場合には、速硬化性、保存安定性、耐水性などが非常に優れた室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物を得ることができる。
【0017】
ウレタン化反応を行うに当たっては、(a1)ポリオキシプロピレンポリオールと(a2)γ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランをそれぞれ所定量混合し、加熱下(例えば60〜100℃の温度)で数時間撹拌すればよい。この反応は、窒素ガスなどの不活性ガス中で行うことが望ましい。また、ウレタン化反応の初期ないし途中で、反応の促進のために、微量のジブチルスズジラウリレートなどのウレタン重合触媒を添加してもよい。反応の完結は、NCO/OH比から算出した理論NCO量または理論水酸基価量に近似した値が得られた点を反応終点とすることで、判断することができる。
【0018】
(a1)ポリオキシプロピレンポリオールとして、特定分子量のポリオキシプロピレンジオールとこのジオール以外のポリオキシプロピレンポリオールとの混合物を用いる場合には、この混合物を(a2)γ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランとウレタン化反応させて、(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリマーとしてもよいし、あるいは、特定分子量のポリオキシプロピレンジオールとこのジオール以外のポリオキシプロピレンポリオールとを各々個別に(a2)γ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランとウレタン化反応させ、得られるウレタン化物を混合して(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリマーとしてもよい。
【0019】
特定分子量のポリオキシプロピレンジオールとこのジオール以外のポリオキシプロピレンポリオールとの混合割合は、前者の100重量部当たり後者を5〜200重量部とするのがよい。この範囲であれば、得られる(a)反応性ケイ素基含有ポリマーの保存安定性、速硬化性などの性質が損なわれることがない。
【0020】
このようにして得られた(a)反応性ケイ素基含有ポリマーは、主鎖が実質的にポリオキシプロピレンから構成され、反応性ケイ素含有基としてトリアルコキシシリル基を有し、このトリアルコキシシリル基と主鎖の化学結合部分にメチレン結合と1個のウレタン結合を有するものである。
【0021】
すなわち、(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリマーは、一般式:
【化6】

(式中、Rは同一または相異なる炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは正の整数であって、86<n<344を満足する数である。)で表される。特に、Rが全てメチル基であるものが好ましい。この反応性ケイ素基含有ポリマーは、(a2)成分であるγ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランとして、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランを使用することにより得られるものであり、速硬化性が良好で保存安定性に優れている。(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリマーは、常温で液状を有し、粘度(23℃)が300〜400,000mPa・sであるものが好ましい。得られる組成物の吐出性やへら作業性などの点から、300〜200,000mPa・sの範囲がより好ましく、硬化物の高伸張性や低モジュラス性などの観点から、3000〜200,000mPa・sの範囲がさらに好ましい。
【0022】
なお、低分子量のポリオキシプロピレンジオールとジイソシアネート類でジャンピング反応させることで実質的に数平均分子量を5000〜30000とした場合は、主鎖構造部分を相互に1個以上のウレタン結合など、エーテル結合以外の他の化学結合を介することがあるが、分子末端が水酸基であって、最終的にこのジャンピング化ポリオキシプロピレンジオールの水酸基とγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのイソシアネート基との反応によりトリメトキシシリル基を有するポリマーが得られるのであれば、これも本発明の(a)反応性ケイ素基含有ポリマーに包含される。
【0023】
実施形態において(b)成分である無機充填剤は、必須成分として合成炭酸カルシウムを含有する。合成炭酸カルシウムとしては、平均一次粒子径(以下、平均粒子径と示す。)が0.08μm以下でBET比表面積が15m/g以上であるものが好ましく、平均粒子径が0.05μm以下でBET比表面積が25m/g以上であるものがより好ましい。また、貯蔵安定性および補強性の点で、このような合成炭酸カルシウムの表面を、脂肪酸、樹脂酸、エステル化合物、ケイ酸系化合物などで処理したものが好ましい。表面の被覆度の観点から、表面処理剤としては脂肪酸が最も好ましい。
【0024】
このように表面処理された合成炭酸カルシウムの市販品としては、MSK−G、MSK−K、カルファイン200M、カルファイン500、カルファインN−40、カルファインN−350、カーレックス100、カーレックス300、MS−100M、シーレッツ200、シーレッツ700、ユニゴロス1000、MC−K(以上、丸尾カルシウム(株)製);白艶華CC、白艶華DD、白艶華U、白艶華O、白艶華CCR、白艶華CCR−S、白艶華CCR−B、白艶華TDD,カルモス、ホモカルD、ゲルトン 50、ビスコライト−SV、ビスコライト−OS、ビスコライト−U、ビスコエクセル−30(以上、白石工業(株)製);カルシーズ、PLS2301、PLS601、カールスターR、カールスターT(以上、神島化学(株)製)などが挙げられる。
【0025】
このような合成炭酸カルシウムの(b)成分である無機充填剤全体に対する割合は、15重量%以上とすることが好ましい。15重量%未満では、低モジュラスでありながら初期接着性の発現が良好な組成物を得ることができない。
【0026】
また、このような合成炭酸カルシウムとともに、自然鉱物に粉砕、分級等の処理を施して得られる重質炭酸カルシウムを併用することもできる。重質炭酸カルシウムの併用によって、組成物の吐出性やへら作業性などの作業性を上げることができるうえに、モジュラスの調整がし易いという利点がある。重質炭酸カルシウムの市販品としては、スーパーS、スーパーSS、スーパーSSS、スーパー4S、スーパー#2000、スノーライトSSS,MCコートS、ナノコートS(以上、丸尾カルシウム(株)製);ソフトンシリーズ、ライトンシリーズ、マイクロパウダーシリーズ、ホワイトンシリーズ(以上、備北粉化工業(株)製);NSシリーズ、SSシリーズ、NNシリーズ、NSシリーズ(以上、日東粉化工業(株)製):エスカロンシリーズ、SCPシリーズ、Gシリーズ、Kシリーズ、ESDシリーズ(以上、三共製粉(株)製)などが挙げられる。
【0027】
さらに(b)成分として、合成炭酸カルシウムとともに配合することができる無機充填剤としては、フュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラックなどの補強性充填剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、およびガラスバルーンなどの非補強性充填材、石綿、ガラス繊維およびフィラメントなどの繊維状充填剤などを例示することができる。
【0028】
実施形態の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物において、(c)成分であるシラノール基を含有するシロキサンオリゴマーは、モジュラスを低く抑え高伸張性を付与するための成分である。(c)成分であるシラノール基含有シロキサンオリゴマーは、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを水および有機溶剤中で開環重合させることにより得ることができる。また、ジメチルジクロロシランのようなジアルキルジクロロシランを加水分解し、次いで約150℃、減圧度15mmHg以下で低留分を留去することによっても得ることができる。調製方法は限定されるものではない。
【0029】
反応性および接着性の観点から、(c)成分は、シラノール基を含有するアミノ官能性シロキサンオリゴマーを含有することが好ましい。シラノール基を含有するアミノ官能性シロキサンオリゴマーとしては、アミノ基置換アルコキシシランの加水分解・縮合物を使用することができる。ここで、アミノ基置換アルコキシシラン(以下、アミノシランとも示す。)の具体例としては、モノアミノシラン類、ジアミノシラン類、トリアミノシラン類、末端トリアルコキシシラン類、末端ジアルコキシシラン類などが挙げられる。実施形態の(c)成分であるシラノール基含有のアミノ官能性シロキサンオリゴマーとしては、末端がジアルコキシシリル構造であって分子内に第1級および/または第2級アミノ基を有するアミノ基置換ジアルコキシシランを、加水分解し縮合させて得られたポリオルガノシロキサン(シロキサンオリゴマー)が、特に好ましい。そして、アミノ官能性シロキサンオリゴマーの(c)成分であるシラノール基含有シロキサンオリゴマー全体に対する配合割合は、60重量%以上とすることが好ましい。
【0030】
(c)成分であるシラノール基を含有するアミノ官能性シロキサンオリゴマーの好ましい例は、一般式:
【化7】

で表される直鎖状ポリジオルガノシロキサンである
【0031】
式中、Rは同一または相異なるアルキル基を示す。メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などが例示されるが、メチル基が好ましい。Rは式:−(CHNHで表されるアミノプロピル基、または式:−(CHNH−(CHNHで表されるN−(β−アミノエチル)−アミノプロピル基を示す。またRは、ヒドロキシル基またはアルコキシル基を示す。1分子中で1つ以上のRはヒドロキシル基である。アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが例示されるが、速硬化性の観点からメトキシ基が好ましい。さらに、mは0〜30の整数である。
【0032】
前記一般式で表されるアミノ官能性シロキサンオリゴマーの配合割合は、(c)成分中のアミノ官能性シロキサンオリゴマー全体の60重量%以上とすることが好ましい。また、(c)成分であるシラノール基含有シロキサンオリゴマー(アミノ官能性シロキサンオリゴマーを含む。)の配合量は、前記(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリマー100重量部に対して、0.05〜25重量部、好ましくは0.1〜15重量部より好ましくは0.2〜10重量部とする。(c)シラノール基含有シロキサンオリゴマーの配合量が0.05重量部未満では、良好な伸張性やモジュラスの低減が得られない。反対に、(c)シラノール基含有シロキサンオリゴマーの配合量が25重量部を超える場合には、保存中に容器内で液分離が生じたり、着色を生じたりする。また、未硬化の組成物が白濁し、あるいは硬化物の表面からにじみを生じるため、好ましくない。
【0033】
実施形態の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物において、硬化反応を促進するために(d)硬化触媒が配合される。硬化触媒としては、公知のシラノール縮合触媒を使用することができる。例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのチタン系エステル類;ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテートなどの有機スズ化合物類;オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ラウリン酸スズ、フェルザチック酸スズなどのカルボン酸スズ塩類;ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物;ジブチルスズジアセチルアセトナート;アルミニウムトリアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナートなどのキレート化合物類;オクチル酸鉛;ナフテン酸鉄;ビスマス−トリス(ネオデカノエート)、ビスマス−トリス(2−エチルヘキソエート)などのビスマス化合物のような金属系触媒を例示することができる。
【0034】
これらの金属系触媒は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。さらに、ラウリルアミンなどの公知のアミン系触媒を併用してもよい。実施形態では、上記硬化触媒の中でも、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ラウリン酸スズ、フェルザチック酸スズなどのカルボン酸スズ塩または有機スズ化合物類;ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物;ジブチルスズジアセチルアセトナートなどのスズ系触媒が好ましい。これらの中でも、速硬化性に優れているという点で、ジアルキルスズオキサイドとエステル化合物との反応物(キレート錯体)であるアセチルアセテートスズアルコキシドなどの使用が好ましい。
【0035】
(d)成分である硬化触媒は、前記(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリマー100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜8.0重量部、より好ましくは0.1〜5.0重量部配合される。
【0036】
本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(a)〜(d)の各成分および後述するその他の成分の所定量を乾燥雰囲気中で均一に混合することにより、一液型の室温硬化性組成物として得ることができる。この組成物は、空気中に暴露すると湿分によって架橋反応を生起し、ゴム弾性体に硬化する。
【0037】
また、(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリマーと(b)成分である無機充填剤を含有してなる主剤と、(c)成分であるシラノール基含有シロキサンオリゴマーと(d)成分である硬化触媒を含有してなる硬化剤との二液型の室温硬化性組成物として調製することもできる。二液型の組成物においては、主剤と硬化剤を空気中で混合することにより、一液型の室温硬化性組成物と同様に硬化する。
【0038】
本発明の実施形態の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物には、さらに接着性、耐久性、保存安定性などの改良のために、架橋剤として、(e)一般式:RSiX4−aで表されるケイ素化合物またはその部分加水分解物を配合することができる。
【0039】
式中、Rは同一または相異なる置換または非置換の1価の炭化水素基または水素原子、である。1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基のようなアルケニル基、フェニル基、キシリル基、トリル基のようなアリール基、ベンジル基、β−フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基のようなアラルキル基が例示される。さらに、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基のようなハロゲン化アルキル基、シアノエチル基、シアノプロピル基のようなシアノアルキル基、グリシドキシプロピル基など、置換炭化水素基も例示される。Xは加水分解性基であり、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシル基、アミド基、カルバマト基、エノキシ基、イソシアナト基、アセトキシ基などが例示される。aは0〜2の整数を示す。
【0040】
このような(e)成分であるケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラキス(エトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、テトラ(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリアセトアミドシラン、メチルトリイソシアナトシラン、およびそれらのシランの部分加水分解物であるシロキサンなどが例示される。
【0041】
合成が容易で、組成物の保存安定性を損なうことなく硬化速度を速めることができる点から、これらのうちで、テトラメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、テトラ(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどを用いることが好ましい。
【0042】
このような(e)架橋剤としてのケイ素化合物またはその部分加水分解物の配合量は、前記(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリマー100重量部に対して0.01〜20重量部とすることが好ましい。
【0043】
さらに、本発明の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物において、(e)成分として前記ケイ素化合物またはその部分加水分解物を配合する場合には、(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリマーと(c)成分であるシラノール基含有シロキサンオリゴマーを混合し、(a)成分中の末端アルコキシル基と(c)成分中のシラノール基とを反応させた後、(e)成分を加えて反応させるように調製することが好ましい。このように(c)成分であるシラノール基含有シロキサンオリゴマーを加える際に(e)成分を同時に添加せず、(a)成分と(c)成分とが十分に反応した後に(e)成分を添加するように調製することにより、良好な伸張性と低いモジュラスを有する硬化物が得られるという利点がある。
【0044】
本発明の実施形態の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物には、必要に応じて、エポキシ樹脂とその硬化剤、充填材、可塑剤、粘性改良剤、その他の添加剤などを適宜配合することができる。
【0045】
エポキシ樹脂としては、従来から公知のものを広く使用することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルなどのフタル酸ジグリシジルエステル系エポキシ樹脂、m−アミノフェノール系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などの不飽和重合体のエポキシ化物などを挙げることができる。これらのエポキシ樹脂の中でも、分子中にエポキシ基を少なくとも2個含有するものが、硬化に際し反応性が高く、また硬化物が3次元的網目を作り易いなどの点から好ましい。さらに好ましいエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂およびフタル酸ジグリシジルエステル系エポキシ樹脂を例示することができる。
【0046】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのアミン類、第3級アミン塩類、ポリアミド樹脂類、ケチミン類、アルジミン類、エナミン類などの潜伏性硬化剤、イミダゾール類、ジシアンジアミド類、三フッ化ホウ素錯化合物類、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ドデシニル無水コハク酸、無水ピロメリット酸、無水クロレン酸等の無水カルボン酸類、アルコール類、フェノール類、カルボン酸類などを挙げることができる。
【0047】
機械的強度、接着性の面から、エポキシ樹脂の配合は適宜行われるが、本願の主目的であるモジュラスの低減の観点からは不利益な面もある。
【0048】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル;ペンタエリスリトールエステルなどのグリコールエステル類;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ可塑剤;塩素化パラフィンなどを、1種単独でまたは2種以上混合して使用することができる。また、ポリオキシプロピレンモノオール、ポリオキシプロピレンジオールおよびその末端変性物なども使用することができる。末端変性物には、例えば、末端水酸基がアルコキシ基、アルケニルオキシ基に変性された化合物や、ウレタン結合、エステル結合、尿素結合またはカーボネート結合を介して炭化水素基で封鎖された化合物などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシプロピレンモノオール、ポリオキシプロピレンジオール類が好ましく、ポリオキシプロピレンモノオールがさらに好ましい。
【0049】
粘性改良剤としては、水添ヒマシ油、ジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトールなどのゲル化剤、アマイドワックスなどの脂肪酸アミド化物が例示される。その他の添加剤としては、例えば顔料、各種の老化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0050】
本発明の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物中に配合される上記各成分の配合割合は、特に限定されるものではないが、通常ケイ素基含有ポリマー組成物100重量部当たり、エポキシ樹脂を1〜100重量部(好ましくは10〜100重量部)、エポキシ樹脂の硬化剤をエポキシ樹脂100重量部当たり1〜200重量部(好ましくは50〜100重量部)、充填材を0.1〜200重量部、可塑剤を1〜50重量部、粘性改良剤を0.1〜10重量部程度配合するのがよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」をそれぞれ表す。粘度などの物性値は、全て23℃、相対湿度(RH)50%での測定値を示したものである。
【0052】
合成例1[(a)成分の調製]
撹拌機、滴下ロート、還流管、温度計、窒素気流装置、および減圧装置を備えた3リットルの四ツ口セパラブルフラスコに、数平均分子量(以下、Mnと略記する。)が16000(粘度16,500mPa・s)のポリオキシプロピレンジオール(プレミノール4016:旭硝子社製)2000部を仕込み、100℃で10〜20mmHgにおいて1時間減圧蒸留を行うことにより脱水した。次いで、これを50℃以下に冷却し、NCO/OH比が1.0になるようにγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(商品名Silquest A-link35:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)44.8部を投入し、窒素気流下で昇温させ、60〜70℃の温度で撹拌を8時間続けた。NCO含有率を測定したところ、0.05%(理論値0%)まで減少したので、冷却後取り出した。こうして反応性ケイ素基含有ポリプロピレンポリマーAを得た。このポリマーの粘度は21,000mPa・sであった。
【0053】
合成例2[(a)成分の調製]
Mnが4000(粘度3500mPa・s)のポリオキシプロピレンジオール(商品名プレミノール4002:旭硝子(株)製)400部(0.1mol)と、NCO/OH比が1.4を示すように調整した4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート36部(0.144mol)との混合物に、反応触媒として60ppmのジブチルスズジラウレート、および遅延剤として20ppmのベンゾイルクロリドをそれぞれ加え、60〜70℃で約4時間撹拌を行い、NCO含量をほぼ0.8重量%まで低下させた。
【0054】
次いで、このイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーに、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名Silquest Y-9669:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)21.4部(0.084mol)を加え、NCO含量がゼロになるまで70〜75℃の温度で反応させた。こうして、反応性ケイ素基含有ポリプロピレンポリマーBを得た。このポリマーの粘度は33,000mPa・sであった。
【0055】
合成例3[(c)成分の調製]
撹拌機、滴下ロート、還流管、温度計、窒素気流装置、および減圧装置を備えた2リットルの四ツ口セパラブルフラスコ内の空気を窒素に置換した後、N−(β−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名Silquest A-2120:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)900部を投入し、撹拌を行った。次いで、フラスコ内に窒素を微量流しながら、イオン交換水78部を滴下ロートより徐々にフラスコ内に加えた。発熱反応が生起するので、冷却しながらフラスコ内容物の温度を60℃以下に保つように調節した。
【0056】
イオン交換水の滴下を終了した後、フラスコ内の温度を80℃まで昇温させ、反応副生成物であるメタノールを受槽に留去した。このとき、メタノールの留去量(257部)を確認しながら、必要に応じて減圧を行った。反応終了後、40℃以下まで冷却し、フラスコから反応生成物を取り出した。こうして、微黄色透明なアミノ官能性ポリオルガノシロキサン(シラノール基含有アミノ官能性シロキサンオリゴマー)Cを688部得た。このアミノ官能性ポリオルガノシロキサンCは、粘度が236mPa・sであり、150℃×1時間での加熱減量が0.7%であった。
【0057】
合成例4[(c)成分の調製]
N−(β−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシランの代わりに、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(商品名Silquest A-2100:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を使用し、合成例3と同様にして、粘度264mPa・s、150℃×1時間での加熱減量が0.6%であるアミノ官能性ポリオルガノシロキサン(シラノール基含有アミノ官能性シロキサンオリゴマー)Dを678部得た。
【0058】
合成例5[(c)成分の調製]
撹拌機、滴下ロート、還流管、温度計、窒素気流装置、および減圧装置を備えた2リットルの四ツ口セパラブルフラスコ内の空気を窒素に置換した後、アセトン(試薬1級)430部とイオン交換水88部を投入し、撹拌を行った。次いで、フラスコ内に窒素を微量流しながら30分間撹拌を行った後、ヘキサメチルシクロトリシロキサン355部を加え、これが十分に溶解するまで40〜45℃で加温しながら撹拌を1時間行った。
【0059】
次いで、50〜55℃に加温しながら活性白土13部を加え、60℃で6時間加熱しながら撹拌することにより重合反応を行った。その後、酸化マグネシウム10部を加え、30℃まで冷却した後、活性白土および酸化マグネシウムを加圧ろ過し、反応混合溶液を得た。この溶液を撹拌機、温度計、窒素気流装置、および減圧蒸留装置を備えた1リットルセパラブルフラスコに入れ、90℃、25mmHgで2時間、低沸点分およびアセトンを留去した。次いで、セライトをろ過助剤に用いて加圧ろ過を行うことにより、粘度11mPa・s、150℃×1時間での加熱減量が0.2%のシラノール基含有シロキサンオリゴマーEを342部得た。
【0060】
実施例1
合成例1で得られた反応性ケイ素基含有ポリプロピレンポリマーA100部に、ビニルトリメトキシシラン(商品名Silquest A-171:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)3.0部を加え、室温で20分間均一に混合した後、脂肪酸処理した合成炭酸カルシウム(商品名Viscoexcel-30:白石工業(株)製;平均粒子径0.03μm、BET比表面積30m/g)100部と、重質炭酸カルシウム(商品名ホワイトンSSB:備北粉化工(株)製;平均粒子径5.2μm、BET比表面積1m/g)50部をそれぞれ加え、均一に混合した。なお、脂肪酸処理した合成炭酸カルシウムを加える前に反応性ケイ素基含有ポリプロピレンポリマーAにビニルトリメトキシシランを添加しているが、ここで加えるビニルトリメトキシシランは脱水剤として作用する。すなわち、少量の水が存在する場合に、ビニルトリメトキシシランが水と反応することにより、反応性ケイ素基含有ポリプロピレンポリマーAの末端アルコキシル基が水と反応し加水分解されるのが防止される。
【0061】
次いで、可塑剤であるフタル酸ジオクチル50部と、ポリプロピレングリコール(商品名アデカポリエーテルP-3000:(株)ADEKA製)20部を加え、減圧下100℃で3時間加熱混合した後、50℃以下に冷却した。その後、合成例3で得られたシラノール基含有アミノ官能性シロキサンオリゴマーC3.0部を加えて均一に混合した後、架橋剤としてビニルトリメトキシシラン2.0部とγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(商品名Wetlink 78:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)0.5部、および触媒であるジブチルスズジラウレート0.4部をそれぞれ加えて均一に混合し、ケイ素基含有ポリマー組成物を得た。
【0062】
実施例2,3
実施例2においては、シラノール基含有アミノ官能性シロキサンオリゴマーC3.0部の代わりに、合成例4で得られたシラノール基含有アミノ官能性シロキサンオリゴマーD2.5部を配合し、実施例1と同様な操作を行い、ケイ素基含有ポリマー組成物を得た。また、実施例3においては、シラノール基含有アミノ官能性シロキサンオリゴマーC3.0部の代わりに、合成例5で得られたシラノール基含有シロキサンオリゴマーE5.0部を配合し、実施例1と同様な操作を行い、ケイ素基含有ポリマー組成物を得た。
【0063】
実施例4〜7
実施例4〜7においては、脂肪酸処理した合成炭酸カルシウムであるViscoexcel-30の代わりに、脂肪酸処理を行った合成炭酸カルシウム(商品名カルファインN-40:丸尾カルシウム(株)製;平均粒子径0.03μm、BET比表面積33m/g)(実施例4)、脂肪酸処理を行った合成炭酸カルシウム(商品名白艶華CC:白石工業(株)製;平均粒子径0.04μm、BET比表面積26m/g)(実施例5)、脂肪酸処理を行った合成炭酸カルシウム(商品名白艶華CC-R:白石工業(株)製;平均粒子径0.08μm、BET比表面積18m/g)(実施例6)、脂肪酸処理した合成炭酸カルシウム(商品名カルファイン200M:丸尾カルシウム(株)製;平均粒子径0.05μm、BET比表面積が16m/g)(実施例6)をそれぞれ使用し、実施例1と同様な操作を行い、ケイ素基含有ポリマー組成物を得た。
【0064】
比較例1,2
比較例1においては、シラノール基含有アミノ官能性シロキサンオリゴマーCの代わりに、N−(β−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名Silquest A-1120:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を使用し、実施例1と同様な操作を行い、ケイ素基含有ポリマー組成物を得た。また、比較例2においては、シラノール基含有アミノ官能性シロキサンオリゴマーCの代わりに、N−(β−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名Silquest A-2120)を使用して、実施例1と同様な操作を行い、ケイ素基含有ポリマー組成物を得た。
【0065】
次に、実施例1〜7および比較例1,2でそれぞれ得られたケイ素基含有ポリマー組成物について、初期の指触乾燥時間とスランプおよび物理的特性を測定するとともに、保存安定性を調べた。また、通常条件下および浸水条件下での接着性をそれぞれ測定した。さらに、耐久性を調べるために、H型引張り接着性を測定した。
【0066】
なお、指触乾燥時間、スランプ、物理的特性、保存安定性、接着性およびH型引張り接着性の測定は、それぞれ以下に示すようにして行った。
【0067】
(1)指触乾燥時間:組成物を23℃、50%RHの雰囲気に曝し、指で表面に接触して乾燥状態にあることを確認するに至る時間を測定した。
【0068】
(2)スランプ:JIS A 5758に準拠してスランプ試験を行った。なお、スランプ試験用冶具の幅は20mm、深さは10mmとした。
【0069】
(3)物理的特性:組成物を厚さ2mmのシート状に押し出し、得られたシートを23℃、50%RHで168時間放置して空気中の湿気により硬化させた。硬化物の硬さ、引張り強さ、伸びをJIS K6301に拠り測定した。
【0070】
(4)保存安定性:湿気を遮断した容器に組成物を入れ、70℃で5日間加熱した後、指触乾燥時間を23℃、50%RHの雰囲気で測定した。また、厚さ2mmのシート状に押し出し、これを23℃、50%RHで168時間放置して空気中の湿気により硬化させた。そして、硬化物の物理的特性を、前記(3)と同様にJIS K6301に拠り測定した。
【0071】
(4)接着性:JIS K6301に準拠し、銅、鉄、ステンレススチール、ガラス、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、6-ナイロンおよび6,6-ナイロンをそれぞれ被着体として、凝集破壊率を測定した。
【0072】
(5)H型引張り接着性:JIS A1439に準拠して耐久性(H型引張り接着性)試験を行った。そして、50%引張応力(モジュラス)(50M)、最大引張応力(Tmax)、最大荷重時の伸び(Emax)、および硫酸アルマイト(JIS A5758)およびガラスに対する接着性(凝集破壊率)(CF AlおよびCF Gl)を、初期と50℃で2週間浸水後のそれぞれにおいて測定した。なお、養生条件は、23℃、50%RHで14日間前養生、30℃で14日間後養生とした。
【0073】
これらの測定結果を表1に示す。
【表1】

【0074】
実施例8
合成例1で得られた反応性ケイ素基含有ポリプロピレンポリマーA100部に、脂肪酸処理した合成炭酸カルシウム(商品名Viscoexcel-30;平均粒子径0.03μm)100部と、重質炭酸カルシウム(商品名スーパーSS:丸尾カルシウム(株)製;平均粒子径4.5μm、BET比表面積1m/g)50部をそれぞれ加え、均一に混合した。次いで、可塑剤であるフタル酸ジオクチル50部と、ポリプロピレングリコール(商品名アデカポリエーテルP-3000)20部を加え、減圧下100℃で3時間加熱混合した後、50℃以下に冷却した。その後、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(商品名Wetlink 78)0.5部を加えて均一に混合し、主剤(1)を得た。
【0075】
また、重質炭酸カルシウム(商品名スーパーSS)20部とフタル酸ジオクチル5部を均一に混合した後、合成例3で得られたシラノール基含有アミノ官能性シロキサンオリゴマーC3.0部およびジオクチル酸スズ(商品名ネオスタンU-28:日東化成(株)製)2.0部をそれぞれ加えて均一に混合し、硬化剤(1)を得た。
【0076】
こうして得られた主剤(1)(各成分の合計量320.5部)と硬化剤(1)とを100:3の重量比で混合した。この混合物を23℃、50%RHの雰囲気に7日間置き、次いで50℃で7日間放置して硬化させた。そして、得られた硬化物の物理的特性およびH型引張り接着性を、前記した方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0077】
実施例9
合成例1で得られた反応性ケイ素基含有ポリプロピレンポリマーAの代わりに、合成例2で得られた反応性ケイ素基含有ポリプロピレンポリマーBを用いた以外は実施例8と同様にして、主剤(2)を調製した。この主剤(2)と実施例8で使用した硬化剤(1)を100:3の重量比で混合し、実施例8と同様にして硬化させた。そして、得られた硬化物の物理的特性およびH型引張り接着性を、前記した方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0078】
実施例10
合成例3で得られたシラノール基含有アミノ官能性シロキサンオリゴマーC3.0部の代わりに、合成例5で得られたシラノール基含有シロキサンオリゴマーE5.0部を使用するとともに、フタル酸ジオクチルの配合量を3部とした。それ以外は実施例8と同様にして、硬化剤(2)を調製した。この硬化剤(2)と実施例8で使用した主剤(1)とを、主剤:硬化剤が100:3(重量比)となるように混合し、実施例8と同様にして硬化させた。そして、得られた硬化物の物理的特性およびH型引張り接着性を、前記した方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0079】
実施例11,12
脂肪酸処理した合成炭酸カルシウム(商品名Viscoexcel-30;平均粒子径0.03μm)の代わりに、脂肪酸処理した合成炭酸カルシウム(商品名白艶華CC-R;平均粒子径0.08μm)(実施例11)、脂肪酸処理した合成炭酸カルシウム(商品名カルファイン200M;平均粒子径0.05μm)(実施例12)を用いた以外は実施例8と同様にして、それぞれ主剤(3)を調製した。これらの主剤(3)と実施例8で使用した硬化剤(1)を100:3の重量比で混合し、実施例8と同様にして硬化させた。そして、得られた硬化物の物理的特性およびH型引張り接着性を、前記した方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0080】
比較例3〜5
比較例3および比較例4においては、合成例3で得られたシラノール基含有アミノ官能性シロキサンオリゴマーC3.0部の代わりに、ラウリルアミン3.0部(比較例3)およびN−(β−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名Silquest A-1120)3.0部(比較例4)をそれぞれ用いた。また、比較例5においては、N−(β−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名Silquest A-2120) 3.0部(比較例5)を用いた。それ以外は実施例8と同様にして、それぞれ硬化剤(3)を調製した。これらの硬化剤(3)と実施例8で使用した主剤(1)とを、主剤:硬化剤が100:3(重量比)となるように混合し、実施例8と同様にして硬化させた。そして、得られた硬化物の物理的特性およびH型引張り接着性を、前記した方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0081】
比較例6
脂肪酸処理した合成炭酸カルシウム(商品名Viscoexcel-30;平均粒子径0.03μm)の代わりに、重質炭酸カルシウム(商品名スーパーSS;平均粒子径4.5μm)を用いた(重質炭酸カルシウムの配合量の合計は150部)以外は実施例8と同様にして、主剤(4)を調製した。この主剤(4)と実施例8で使用した硬化剤(1)を100:3の重量比で混合し、実施例8と同様にして硬化させた。そして、得られた硬化物の物理的特性およびH型引張り接着性を、前記した方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
表1および表2からわかるように、実施例1〜8で得られたケイ素基含有ポリマー組成物は、硬化性、接着性および保存安定性に優れ、かつ硬化物が良好な物理的特性を有する。また、比較例1〜4で得られた組成物に比べて、モジュラスが低く、伸張性に優れた硬化物が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物によれば、低モジュラスでありながら初期接着性の発現が良好であるうえに、耐水性特に耐温水性に優れており、結露水などによる浸水下においても接着性の低下が極めて少ない。したがって、このケイ素基含有ポリマー組成物は、電気・電子工業などにおける弾性接着剤やコーティング材として、また建築用シーリング材などとして好適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)23℃における粘度が500〜100,000mPa・sであるポリオキシプロピレンポリオールとγ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランとのウレタン化反応により得られたポリマーであって、主鎖が実質的にポリオキシプロピレンから成り、主鎖の末端に式:
【化1】

(式中、Rは同一または相異なる炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される反応性ケイ素含有基を有する反応性ケイ素基含有ポリマー100重量部に対して、
(b)合成炭酸カルシウムを含む無機充填剤5〜300重量部と、
(c)シラノール基含有シロキサンオリゴマー0.05〜25重量部と、
(d)硬化触媒0.01〜10重量部と
をそれぞれ配合してなることを特徴とする室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物。
【請求項2】
前記合成炭酸カルシウムの平均一次粒子径が0.08μm以下であることを特徴とする請求項1記載の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物。
【請求項3】
前記(b)無機充填剤が、重質炭酸カルシウムを含有することを特徴とする請求項1または2記載の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物。
【請求項4】
前記(c)シラノール基含有シロキサンオリゴマーが、シラノール基を含有するアミノ官能性シロキサンオリゴマーを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物。
【請求項5】
前記シラノール基を含有するアミノ官能性シロキサンオリゴマーが、アミノ基置換ジアルコキシシランの加水分解・縮合物であることを特徴とする請求項4記載の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物。
【請求項6】
前記シラノール基を含有するアミノ官能性シロキサンオリゴマーが、一般式:
【化2】

(式中、Rは同一または相異なるアルキル基を示し、Rはアミノプロピル基またはN−(β−アミノエチル)−アミノプロピル基を示す。また、Rはヒドロキシル基またはアルコキシル基を示し、1分子中で1つ以上はヒドロキシル基である。mは0〜30の整数である。)で表される直鎖状ポリジオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項4記載の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物。
【請求項7】
前記(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリマーと前記(b)成分である無機充填剤を含む主剤と、
前記(c)成分であるシラノール基含有シロキサンオリゴマーと前記(d)成分である硬化触媒を含む硬化剤との2成分からなることを特徴とする請求項1記載の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物。
【請求項8】
さらに架橋剤として、(e)一般式:RSiX4−a(式中、Rは同一または相異なる置換または非置換の1価の炭化水素基または水素原子、Xは加水分解性基、aは0〜2の整数を示す。)で表されるケイ素化合物またはその部分加水分解物0.01〜20重量部を配合してなることを特徴とする請求項1記載の室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物。
【請求項9】
(a)23℃における粘度が500〜100,000mPa・sであるポリオキシプロピレンポリオールとγ−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランとのウレタン化反応により得られたポリマーであって、主鎖が実質的にポリオキシプロピレンから成り、主鎖の末端に式:
【化3】

(式中、Rは同一または相異なる炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される反応性ケイ素含有基を有する反応性ケイ素基含有ポリマー100重量部に対して、
(b)合成炭酸カルシウムを含む無機充填剤5〜300重量部と、
(c)シラノール基含有シロキサンオリゴマー0.05〜25重量部と、
(d)硬化触媒0.01〜10重量部、および
(e)一般式:RSiX4−a(式中、Rは同一または相異なる置換または非置換の1価の炭化水素基または水素原子、Xは加水分解性基、aは0〜2の整数を示す。)で表されるケイ素化合物またはその部分加水分解物0.01〜20重量部を配合してなる室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物を製造するにあたり、
前記(a)成分と前記(c)成分を混合し、前記(a)成分の末端アルコキシル基と前記(b)成分のシラノール基とを反応させた後、前記(e)成分を加えて反応させる工程を有することを特徴とする室温硬化性ケイ素基含有ポリマー組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−70679(P2010−70679A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240809(P2008−240809)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】