説明

害虫からの保護活性を付与するための非生物材料への含浸用水性製剤及び含浸方法

非生物材料、好ましくは織物材料の含浸用の、少なくとも殺虫剤と、モノマーとして少なくともエチレンと不飽和カルボン酸トを含む高分子バインダーとを含む製剤、このような材料の含浸方法、このような含浸材料の蚊帳としてのまたは植物等の保護のための利用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非生物材料への、好ましくは織物材料への含浸用の、少なくとも殺虫剤と少なくともエチレンと不飽和カルボン酸とをモノマーとして含む高分子バインダーとを含む水性製剤、このような材料を含浸させる方法、およびこのような含浸材料の蚊帳としてのまた植物等の保護のための利用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱帯諸国では感染症が刺咬昆虫または吸血性昆虫により伝染することが多い。ワクチンなどの医学的方法に加えて、このような媒介性昆虫を制御する方法について集中的に検討が重ねられている。このような昆虫を制御する方法としては、小屋や家屋の表面を処理すること、カーテンやベッドネットを噴霧・含浸することがあげられる。後者は、殺虫剤の乳濁液又は分散液に織物材料を浸漬することにより、あるいはネット上に殺虫剤を噴霧することにより行われる。このような処理では織物材料の表面上への殺虫剤分子の付着が弱いため、この処理の耐洗濯性が弱く、洗濯のたびに処理を繰り返す必要があった。
【0003】
このため、洗濯のたびに処理する必要がなくその活性が長期間持続する織物材料を得るために、特定のバインダー及び/又は他の助剤を用いて織物材料上にこのような殺虫剤を長期間固定することに努力が払われてきた。
【0004】
WO01/37662には、昆虫またはダニを殺す及び/又は忌避させるための、殺虫剤及び/又は防虫剤と耐水性フィルム及び必要に応じて耐対性フィルムを形成してネットまたは織物からの漏出や殺虫剤成分の劣化を抑制するフィルム形成成分とを含む含浸ネットまたは含浸織物が開示されている。このフィルム形成成分は、パラフィン油またはワックス誘導体、ケイ素誘導体、シリコン油またはワックス誘導体およびポリフルオロ炭素誘導体から選ばれる一種以上の成分を含んでいる。
【0005】
WO03/034823には、殺虫剤と共重合高分子バインダーと分散剤とを含む、織物材料への塗布用の殺虫剤組成物が開示されている。この共重合高分子バインダーは、a)酢酸ビニルやバーサチック酸ビニルなどの炭素原子数が1〜18の脂肪酸ビニルエステル類;b)アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチルなどの炭素原子が1〜18のアルコールのアクリル酸及びメタクリル酸エステル類;およびc)スチレンなどのモノエチレン性及びジエチレン性不飽和炭化水素やブタジエンなどの脂肪族のジエン類などの少なくとも一種の群から選ばれるモノマーから乳化重合により合成されるコポリマー乳濁液として製造される。
【0006】
US5,631,072には、高分子バインダーと架橋剤とを用いるまたは高分子バインダーと増粘剤で表面塗装を行う殺虫剤含浸織物の製造が開示されている。このバインダーは、アクリル系のバインダーであってもポリビニルアセテートであってもよい。
【0007】
WO2005/64072には、アクリル酸n−ブチルと、少なくとも一種の適当な架橋剤を用いて架橋するのに好適なOH基含有アクリルモノマーを含むアクリル系バインダーとを用いる織物材料の含浸が開示されている。含浸と架橋は通常の織物処理用装置を用いて高温で行ってもよい。
【0008】
WO2006/128870には、N−アリールヒドラジン誘導体と少なくとも一種の高分子バインダーを含む、非生物材料の、特に織物材料の含浸用組成物が開示されている。このバインダーは、ポリアクリレートまたは、エチレン−アクリレート−コポリマー、エチレン−ビニルアセテートコポリマーまたはスチレン−アクリレートコポリマーなどのコポリマーから選ぶことができる。これらのバインダーは好ましくは高温で架橋することができる。
【0009】
高温でバインダーを架橋すると長期性能が良くなるが、高温で織物材料を処理するには特別な装置が必要となる。しかしながら、熱帯諸国では、織物材料を部分的に含浸させる必要がしばしばあるが、織物材料を高温で処理する高度な装置が手に入らない。含浸ベッドネットを用いて節足動物媒介性疾患、例えばマラリアを予防する場合、特別な技術装置を使用せずに現場処理で、既に存在する未処理のネット上に局所的に持続性の殺虫効果を付与することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、常温で実施可能で、数回の洗濯後でも殺虫剤活性が保持される織物材料を与える織物材料への殺虫剤の含浸方法を提供することである。また、本発明の一つは、このような含浸プロセスで好ましく使用される製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、エチレンと不飽和カルボン酸とをモノマーとして含む高分子バインダーを用いて上記の問題を解決できることが見出された。
【0012】
第一の実施様態においては、本発明は、殺虫剤と高分子バインダーとを用いて非生物材料を処理するための水性製剤であって、少なくとも以下のものを含むものに関する。
【0013】
(A)殺虫剤、
(B)平均分子量Mnが1500〜20000g/molである、水性製剤中に分散した高分子バインダーで、以下のモノマーからなるもの:
(B1)60〜95重量%のエチレン、
(B2)5〜40重量%の、以下の群から選ばれる少なくとも一種の不飽和カルボン酸:
(B2a)モノエチレン性不飽和C3−C10モノカルボン酸、及び
(B2b)モノエチレン性不飽和C4−C10ジカルボン酸、及び
(B3)必要に応じて、0〜30重量%の(B1)と(B2)とに共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマー
(ただし、モノマーの量は、いずれの場合も用いるモノマーの総量に対する値である)、及び
(C)水または少なくとも65重量%の水を含む水系溶媒混合物。
【0014】
第2の実施形態においては、本発明は、上記非生物材料にこのような製剤を含浸させて殺虫剤処理非生物材料を製造する方法に関する。好ましくは、含浸される材料は織物材料である。
【0015】
第三の実施様態においては、本発明は、このような含浸材料、特にこのような含浸織物材料の有害生物からヒトや動物や材料を保護するための利用に関する。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0016】
製剤
本発明の製剤は、少なくとも殺虫剤(A)と高分子バインダー(B)と溶媒成分(C)と、必要に応じて他の成分(D)を含む。
【0017】
殺虫剤(A)
本明細書における「殺虫剤」は、有害生物と戦うのに好適ないずれかの種類の有効成分を、具体的には特に殺虫剤や防虫剤、防黴剤、殺軟体動物剤、殺鼠剤などを含んでいる。
【0018】
本明細書において「殺虫剤」は、特に記載のない場合は、関節ポリシダル活性(具体的には、殺虫や殺ダニ活性)を持つ薬剤である。
【0019】
本明細書において「防黴剤」とは、特に記載のない場合、殺真菌活性、殺菌活性、及び殺ウイルス活性をもつ薬剤である。
【0020】
この殺虫剤及び/又は防虫剤が昆虫に対して速やかな麻痺活性あるいは殺傷効果を有し、哺乳類への毒性が低いことが好ましい。好適な殺虫剤及び/又は防虫剤は、業界の熟練者には公知である。好適な殺虫剤や防虫剤が、E.C. Tomlinら著、殺虫剤マニュアル(The Pesticide Manual, 13ed., The British Crop Protection Council, Farnham 2003)及びそこに引用される文献に開示されている。
【0021】
本発明の実施に当たり好ましい殺虫剤及び/又は防虫剤としては、WO2005/64072、11頁28行から14頁34行に開示されているものがあげられる。
【0022】
他の殺虫剤の例としては、WO2006/128870、12頁1行〜18頁37行に開示されているN−アリールヒドラジン誘導体、アセタミプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、チアメトキサム、ニコチン、ベンスルタップ、チオシクラム、スピノシン類などのニコチン酸アセチルコリンレセプター受容体;アバメクチン、エマメクチン安息香酸塩、ミルベメクチンなどの塩素チャンネル活性化剤;ハイドロプレン、キノプレン、メトプレン、フェノキシカルブ、ピリプロキシフェンなどの幼若ホルモン類似体;クリオライト、ピメトロジン、フロミカミドなどの選択的飼料遮断剤;クロフェンテジン、ヘキシチアゾクス、エトキサゾルなどのダニ成長阻害剤;Bacillus thuringiensis、B.t. aizawai、B.t. kurstaki、B.t. tenebrionis、B. sphaericusなどの微生物殺虫剤; 酸化的リン酸化阻害剤、ジアフェンチウロン、アゾ−シクロチン、シヘキサチン、フェンブタチンオキシド、プロパアルガイト、テトラジフォンなどのATP成形阻害剤;クロルフェナピル、DNOCなどの酸化的リン酸化脱共役剤;クロルフルアズロン、フルアズロン、ジフルベンズロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、ノバルロン、ノビフルムロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、ブプロフェジンなどのキチン生合成阻害剤;シロマジン、アザジラクチン、クロマフェノジド、ハロフェノジド、メトキシフェノジド、テブフェナジドなどのエクジソンアゴニスト及び脱皮阻害剤;アミトラズなどのオクトパミンアゴニスト;ヒドラメチルノン、アセキノシル、フルアクリピリムなどの共役部位II電子輸送阻害剤;フェナザキン、フェンピロキシメート、ピリミジフェン、ピリダベン、テブフェンピラド、トルフェンピラド、ロテノンなどの共役部位I電子輸送阻害剤;インドキサカルブなどの電圧依存性ナトリウムチャンネル遮蔽剤;スピロジクロフェン、スピロメシフェンなどの脂質合成阻害剤;フォスフィド類、シアン化物、ホスフィンなどのミトコンドリア錯体IV電子輸送阻害剤;ビフェナゼートなどのニューロン阻害剤;フルオロアセチヤートなどのアコニターゼ阻害剤;ピエノニルブトキシド、DEFなどのシナージスト;フルベンジアミドなどのリアノジン受容体モジュレーター;ベンゾキシメート、チノメチオナート、ジコフォル、ピリダリルなどの作用モード不明の化合物;またはホウ砂、酒石酸アンチモンカリウムなどのいろいろな非特異的阻害剤があげられる。
【0023】
好適な殺軟体動物剤が、例えばニクロサミドである。
【0024】
好適な殺鼠剤の例としては、WO2005/64072、18頁9行〜14行に開示されているものがあげられる。
【0025】
好適な防黴剤の例としては、WO2005/64072、15頁13行〜16頁4行に開示されているものがあげられる。
【0026】
好適な殺虫剤は、製剤の希望用途、具体的には製剤で処理される非生物材料の希望用途に応じて、当業界の熟練者により選択される。一種の殺虫剤のみを用いてもよいし、もちろん2種以上の異なる殺虫剤の混合物を用いてもよい。
【0027】
好ましい殺虫剤及び/又は防虫剤は、アルファシペルメトリンや、シフルトリン、デルタメトリン、エトフェンプロクス、ペルメトリンなどの合成ピレスロイド;ビフェントリンなどの他のピレスロイド;カルボスルファンなどの非ピレスロイドからなる群から選ばれる。もし殺虫剤や防虫剤がキラルな物質である場合は、ラセミ体として用いてもよいし、純粋な鏡像異性体またはジアステレオマーまたは光学的に濃縮された混合物として用いてもよい。最も好ましいのはアルファシペルメトリンである。
【0028】
高分子バインダー(B)
本水性製剤は、さらに、少なくともエチレン(B1)と不飽和カルボン酸(B2)とをモノマーとして含む製剤中に分散又は乳化された少なくとも一種の高分子バインダー(B)を含んでいる。
【0029】
この高分子バインダー(B)の、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による平均分子量Mnは、1500〜20000g/molの範囲、好ましくは2000〜15000g/molの範囲にある。
【0030】
モノマー(B1)として、本高分子バインダーは、60〜95重量%のエチレンを含んでいる。好ましくはエチレンの量は70〜80重量%である。モノマー量はいずれの場合も使用する全モノマーの総量に対するものである。
【0031】
また、この高分子バインダー(B)は、モノエチレン性不飽和C3−C10モノカルボン酸(B2a)及びモノエチレン性不飽和C4−C10ジカルボン酸(B2b)からなる群から選ばれる少なくとも一種のモノエチレン性不飽和カルボン酸を含んでいる。
【0032】
モノエチレン性不飽和カルボン酸(B2a)としては、一般式Iの少なくとも一種のカルボン酸を選ぶことが好ましい。
【0033】
【化1】

【0034】
式中の変数は、次のように定義される。
1とR2は、同一でも異なっていてもよい
1は、水素と
非分岐状および分岐状のC1−C10アルキル、例えばメチルや、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−diメチルpropyl、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル;より好ましくはC1−C4アルキル、例えばメチルや、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル;とくに、メチル;から選ばれる。
2は、非分岐状および分岐状のC1−C10アルキル、例えば、メチルやエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−diメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル;より好ましくはC1−C4アルキル、例えばメチルやエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル;特にメチル;
極めて好ましくは水素から選ばれる。
【0035】
本発明のある実施様態においては、R1は水素またはメチルである。極めて好ましくは、R1はメチルである。
【0036】
本発明のある実施様態においては、R1は水素またはメチルであり、R2は水素である。
【0037】
極めて好ましくは、用いる一般式Iのエチレン性不飽和カルボン酸がメタクリル酸である。
【0038】
モノマー(B2b)は、一般式(HOOC)R3C=CR4(CH) (I)及び/又はR34C=C(−(CH2)n−CH)(CH) (II)の少なくとも一種のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸である。
【0039】
2種以上の異なるモノマー(B2b)の混合物を使用することもできる。(I)の場合、当該モノマーが、いずれの場合もシス形及び/又はトランス形であってもよい。これらのモノマーは、相当するカルボン酸無水物または他の加水分解可能なカルボン酸誘導体の形で使用することができる。COOH基がシス形で存在する場合は、特に有利に環状無水物を用いることができる。
【0040】
3とR4は、互いに独立して、Hまたは直鎖または分岐状の、必要に応じて置換された炭素原子数が1〜20のアルキル基である。好ましくは、炭素原子数が1〜4のアルキル基である。より好ましくは、R3及び/又はR4は、H及び/又はメチル基である。このアルキル基は、ポリマーまたはプロセスの性能特性に悪影響を及ぼさない限り、必要に応じて他の置換基を有していてもよい。
【0041】
式(I)の場合、他の可能性は、R3とR4が共に、必要に応じてさらに置換されていてもよい炭素原子数が3〜20のアルキレン基である。好ましくは、二重結合とアルキレン基で形成される環が、5個または6個の炭素原子からなる。アルキレン基の例としては、特に1,3−プロピレンまたは1,4−ブチレン基があげられ、これらの基はさらに他のアルキル置換基を有していてもよい。nは0〜5の整数、好ましくは0〜3であり、非常に好ましくは0または1である。
【0042】
好適な式(I)のモノマー(B2b)の例としては、マレイン酸、フマル酸、メチルフマル酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、および適当なら相当する環状無水物があげられる。式(II)の例としては、メチレンマロン酸やイタコン酸があげられる。式(I)のモノマーの使用が好ましく、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の使用が特に好ましい。
【0043】
全不飽和カルボン酸(B2)の総量は、4〜40重量%であり、好ましくは20〜30重量%である。
【0044】
上記モノマー(B1)と(B2)に加えて、(B1)と(B2)に共重合可能な、一種以上のエチレン性不飽和モノマー(B3)を必要に応じて使用することができる。これら以外に他のモノマーは使用しない。
【0045】
このモノマー(B3)は、コポリマーの性質を微調整するのに役立つ。もちろん、2種以上の異なるモノマー(B3)を使用することもできる。これらは、コポリマーの望ましい性質に応じて熟練者により選択される。
【0046】
モノマー(B3)の例としては、オレフィン類、特にα−オレフィン、例えばプロピレンや、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、または1−ドデセン、スチレン;または他のオレフィン、例えば2−ブテンまたはイソブテン;さらに一種以上の、エチレン性不飽和C3−C10カルボン酸のC1−C10アルキルエステル類またはω−ヒドロキシ−C2−C10アルキレンエステル、例えばアクリル酸メチルやエチルアクリレート、メタアクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルまたはn−メタクリル酸ブチルがあげられる。他の例としては、P基を有するモノエチレン性不飽和モノマー、例えばビニルホスホン酸があげられる。
【0047】
他のモノマー(B3)の量は0〜30重量%であり、好ましくは0〜9重量%、非常に好ましくは0〜4重量%である。非常に好ましくは、モノマー(B3)が含まれていない。
【0048】
一般に、この高分子バインダー(B)の、EN−ISO1133に準じて、325gの荷重下で160℃で求めたメルトフローレート(MFR)は、1〜150g/10minの範囲であり、好ましくは5〜20g/10min、より好ましくは7〜13g/10minである。
【0049】
一般に、この高分子バインダー(B)の、DIN−EN−2114に準じて求めた酸価は、30〜90mg−KOH/gワックスの範囲にあり、好ましくは155〜180mg−KOH/gワックスの範囲にある。
【0050】
一般に、高分子バインダー(B)の、DIN−51007に準じてDSCで求めた溶融範囲は、60〜110℃の範囲であり、好ましくは65〜90℃の範囲である。
【0051】
一般に、高分子バインダー(B)の、DIN−53479に準じて求めた密度は、0.89〜0,99g/cm3の範囲であり、好ましくは0.89〜0.96g/cm3の範囲である。
【0052】
エチレン(B1)とエチレン性不飽和カルボン酸(B2)と必要に応じて他のコモノマー(B3)とからなる本発明で用いられる高分子バインダー(B)は、高圧条件下で、例えば高圧攪拌オートクレーブまたは高圧チューブ反応器中で、好ましくは高圧攪拌オートクレーブと高圧チューブ反応器の組み合わせで、フリーラジカル的に開始される共重合により製造されることが好ましい。高圧攪拌オートクレーブは、公知であり、ウルマン工業化学百科事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th edition, entry head− ing: Waxes, Vol. A 28, pp. 146 ff., Verlag Chemie Weinheim, Basle, Cambridge, New York, Tokyo, 1996)に記載されている。このようなオートクレーブの長さ/直径比は、通常5:1〜30:1の範囲にあり、好ましくは10:1〜20:1の範囲にある。同様に使用可能な高圧チューブ反応器も、ウルマン工業化学百科事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th edition, entry head− ing: Waxes, Vol. A 28, pp. 146 ff., Verlag Chemie Weinheim, Basle, Cambridge, New York, Tokyo, 1996)に記載されている。
【0053】
共重合に好適な適当な圧力条件は500〜4000barであり、好ましくは1500〜2500barである。この種の条件も、以下で高圧と呼ぶ。反応温度は170〜300℃の範囲であり、好ましくは195〜280℃の範囲である。
【0054】
共重合を調整剤の存在下で行ってもよい。好適な調整剤は当業界の熟練者には公知である。例が、WO2007/009909、8頁18行〜9頁4行に開示されている。
【0055】
フリーラジカル重合に用いられる開始剤は、有機過酸化物や酸素、またはアゾ化合物などの典型的なフリーラジカル開始剤である。2種以上のフリーラジカル開始剤の混合物もまた好適である。例が、WO2007/009909、9頁10行〜10頁16行に開示されている。
【0056】
コモノマー(B1)と(B2)、また必要に応じてコモノマー(B3)が、通常、同時または個別に計量される。コモノマー(Bd)と(B2)、また必要に応じてコモノマー(B3)を、圧縮機中で重合圧力にまで圧縮してもよい。もう一つの実施様態における本発明の方法においては、これらのコモノマーが、まずポンプにより、例えば150〜400barに、好ましくは200〜300bar、特に260barに加圧され、圧縮機により実際の重合圧力に加圧される。
【0057】
計量添加の際のコモノマーの(B1)と(B2)、また必要に応じてコモノマー(B3)の比率は、
エチレン性不飽和カルボン酸が一般的にエチレンより高分子バインダー(B)に取り込まれやすいため、通常、高分子バインダー(B)中の含有量の比率とぴったりとは一致しない。
【0058】
この共重合は、必要に応じて溶媒の非存在下で行ってもよし、溶媒の存在下で行ってもよい。好適な溶媒の例としては、トルエンやイソドデカン、キシレン異性体があげられる。
【0059】
この高分子バインダー(B)は水分散液の形で用いられる。好ましくは、このバインダー(B)の水分散液は別の工程で作られ、このような水分散液を本発明の製剤の製造に用いる。しかしながら、このバインダー(B)を重合工程後に固体として単離し、殺虫剤製剤用の固体として用いることもできる。
【0060】
本発明により用いられる高分子バインダー(B)は、例えばアルカリ金属の水酸化物及び/又は炭酸塩及び/又は重炭酸塩で、より具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化物リチウムで、あるいは好ましくは一種以上のアミンで、例えばアンモニアや有機アミン、より具体的には、アルキルアミン類やN−アルキルエタノールアミン類、アルカノールアミン類、ポリアミン類で、少なくとも部分的に中和されていてもよい。アルキルアミンの例としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミン、メチルアミン、ピペリジン及びモルホリンがあげられる。好ましいアミンが、ヒドロキシアルキル基中に2〜18炭素原子を持つ、モノアルカノールアミン類、N、N−ジアルキルアルカノールアミン類、N−アルキルアルカノールアミン類、時アルカノールアミン類、N−アルキルアルカノールアミン類、及びトリアルカノールアミンであり、必要なら、いずれの場合も、アルキル基中に1〜6個の炭素原子、好ましくはアルカノール基中に2〜6個の炭素原子、好適ならアルキル基中に1個又は2個の炭素原子を有するものである。エタノールアミンや、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、n−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパン−1−オールが、極めて好ましい。アンモニアとN,N−ジメチルエタノールアミンが極めて好ましい。ポリアミン類の例としては、エチレン−ジアミン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ジエチレントリアミン、トリエチレン−テトラミンがあげられる。
【0061】
高分子バインダー(B)は、部分的に中和されていることが好ましく、例えばカルボキシル基の少なくとも1/3、より好ましくは少なくとも60モル%が中和され、例えばバインダー(B)のカルボキシル基の最高99モル%が中和されていることが好ましい。また、少なくとも一種の界面活性剤を、バインダー(B)を水中に分散または乳化させる助剤として用いることができる。特に、この界面活性剤がアニオン性であっても、または好ましくはノニオン性であってもよい。
【0062】
アニオン性界面活性剤の例としては、C8−C12カルボン酸のアルカリ−またはアンモニウム塩があげられる。
【0063】
特に好ましいのは、アルコキシル化C10−C30−アルカノールのノニオン性界面活性剤であり、好ましくは3〜100モルのC2−C4−アルキレンオキシドを含むものであり、特にアルコキシレートオキシアルコール脂肪族アルコールである。非常に好ましいアルコキシレートの例としては、次のものがあげられる。
【0064】
n−C1837O−(CH2CH2O)80−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)70−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)60−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)50−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)25−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)12−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)80−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)70−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)60−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)50−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)25−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)12−H、
n−C1327O−(CH2CH2O)70−H、
n−C1327O−(CH2CH2O)60−H、
n−C1327O−(CH2CH2O)50−H、
n−C1327O−(CH2CH2O)25−H、
n−C1327O−(CH2CH2O)12−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)11−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)18−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)25−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)50−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)80−H、
n−C3061O−(CH2CH2O)8−H、
n−C1021O−(CH2CH2O)9−H、
n−C1021O−(CH2CH2O)7−H、
n−C1021O−(CH2CH2O)5−H、
n−C1021O−(CH2CH2O)3−H、
及びこれらの混合物のいずれも。
なお、添字は、通常のように平均値である。
【0065】
高分子バインダー(B)の分散は、バインダー(B)と水と、必要に応じて界面活性剤及び/又は塩基とを、少なくとも70℃の温度で混合して行われる。
【0066】
溶媒成分(C)
好ましくは、水のみが製剤用の溶媒として用いられる。しかしながら、さらに少量の(例えば50重量%未満の)水混和性有機溶媒を用いてもよい。このような助溶媒は、処理される表面の濡れ性を向上させるのに、あるいは疎水性の殺虫剤などの成分の製剤中の溶解性/分散性を向上させるのに有用であろう。助溶媒の例としては、水混和性のアルコール類、メタノール、エタノールまたはプロパノールなどのモノアルコール類、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルポリオールなどの高級アルコール類、ブチルグリコールまたはメトキシプロパノール等のエーテルアルコール類があげられる。水性の混合物を用いる場合、この混合物は、少なくとも65%の、より好ましくは少なくとも80%の、非常に好ましくは少なくとも95重量%の水を含むことが好ましい。これらの数字は、いずれの場合も溶媒総量に対する値である。
【0067】
他の成分(D)
処理される非生物材料の目的用途によっては、本発明の製剤は、さらに保存料、洗剤、フィラー、衝撃改質剤、防曇剤、発泡剤、透明剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤(帯電防止剤)、酸化防止剤などの安定剤、炭素や酸素ラジカルの捕捉剤や過酸化物分解剤等、難燃剤、離型剤、UV保護性薬剤、展着剤、粘着防止剤、移行防止剤、発泡剤、汚染防止剤、増粘剤、他の殺菌剤、界面活性剤、可塑剤やフィルム成形剤、接着剤または抗接着剤、光学増白剤(蛍光白化剤)、顔料や染料から選ばれる一種以上の成分を含んでいてもよい。
【0068】
ある好ましい実施様態においては、本発明の製剤はさらに少なくとも一種の顔料及び/又は少なくとも一種の染料を含んでいる。
【0069】
この製剤中の殺虫剤(A)及び/又は高分子バインダー(B)を安定化するのに、界面活性剤を用いてもよい。特に好ましいには、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤である。具体例は上述の通りである。
【0070】
好適な消泡剤は、例えばケイ素消泡剤である。適当な感紫外線性の殺虫剤を保護するためのUV保護剤としては、例えば、パラ−アミノ−安息香酸(PABA)、オクチルメトキシシナメス、スチルベン類、スチリルまたはベンゾトリアゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ヒドロキシ置換ベンゾフェノン類、サリシレート類、置換トリアジン類、桂皮酸誘導体(必要に応じて、2−シアノ基で置換)、ピラゾリン誘導体、1,1’−ビフェニル−4,4’−ビス−2−(メトキシフェニル)−エテニルまたは他のUV保護剤があげられる。好適な光学増白剤としては、ジヒドロキノリン誘導体、1,3−ジアリールピラゾリン誘導体、ピレン類、ナフタール酸イミド類、4,4’−ジスチリルビフェニレン、4,4’−ジアミノ−2,2’−スチルベンジスルホン酸、クマリン誘導体、および−CH=CH−で架橋したまたは他の蛍光増白剤と結合したベンズオキサゾール、ベンゾイソオキサゾールまたはベンズイミダゾール系化合物があげられる。
【0071】
典型的な本発明の製剤中に使用可能な顔料は、顔料染色でまたは印刷プロセスで用いられる顔料、またはプラスチックの着色用に用いられる顔料である。
【0072】
顔料は、化学的性質として無機質であっても有機質であってもよい。無機顔料は、主として白色顔料(例えば、ルチル型又はアナターゼ型二酸化チタン、ZnO、チョーク)または黒色顔料(例えば、カーボンブラック)として用いられる。着色無機顔料を用いることもできるが、毒性の危険の可能性があるため好ましくない。着色には有機顔料または染料が好ましい。有機顔料は、モノアゾまたはジスアゾ、ナフトール、ベンズイミダゾロン、(チオ)インジゴイド、ジオキサジン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリノン、ペリレン、ペリノン、金属錯体またはジケトピロロピロール型顔料であってもよい。顔料は、粉末の状態で使用しても、液体の状態(例えば、分散液)の状態で使用してもよい。好ましい顔料は、ピグメントイエロー83や、ピグメントイエロー138、ピグメントオレンジ34、ピグメントレッド170、ピグメントレッド146、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントブルー15/1、ピグメントブルー15/3、ピグメントグリーン7、ピグメントブラック7である。他の好適な顔料は、当業界の熟練者に公知である。
【0073】
本発明で使用可能な典型的な染料は、粉末または液体状のバット染料、カチオン染料および分散染料である。バット顔料型の使用が好ましい。バット染料は、インダンスロン型、例えばC.I.バットブルー4,6または14;またはフラバンスロン型、例えばC.I.バットイエローの1;またはピランスロン型、例えばC.I.バットオレンジ2と9;またはイソベンズアンスロン(イソビオランスロン)型、例えばC.I.バットバイオレット1;またはジベンズアンスロン(ビオラントロン)型、例えばC.I.バットブルー16、19、20及び22、C.I.バットグリーン1、2及び9、C.I.バットブラックの9;またはアントラキノンカルバゾール型、例えばC.I.バットオレンジ11と15、C.I.バットブラウン1と3と44、C.I.バットグリーン8、及びC.I.バットブラック27;またはeベンゾアンスロンアクリドン型、例えばC.I.バットグリーン3と13及びC.I.バットブラック25;またはアントラキノンオキサゾール型、例えばC.I.バットレッド10;またはペリレンテトラ炭酸ジイミド型、例えばC.I.バットレッドの23と32;またはイミダゾール誘導体、例えばC.I.バットイエローの46;またはアミノトリアジン誘導体、例えばC.I.バットブルー66であってもよい。他の好適なバット染料は、当業界の熟練者には公知である。典型的な分散染料とカチオン染料は、当業界の熟練者には公知である。
【0074】
製剤の製造
本発明の製剤は、適当な混合装置及び/又は分散装置を用いて、全成分を水とを、また必要に応じて他の溶媒とを混合して調整できる。一般にこの製剤は、10〜70℃の温度で、好ましくは15〜50℃、より好ましくは20〜40℃の温度で形成される。
【0075】
固体殺虫剤(A)と固体ポリマー(B)と必要に応じて他の添加剤(D)とを用い、これらを溶媒成分(C)中に分散することができる。
【0076】
しかしながら、高分子バインダー(B)の水分散液と、前もって別途調整した殺虫剤(A)の水性製剤とを使用することが好ましい。このような別途調整する製剤は、各製剤中の(A)及び/又は(B)を安定化させるために他の添加物を含んでいてもよく、またこれらは市販されている。第二の加工工程では、このような原料製剤と必要に応じて他のいずれかの助溶媒成分(C)が添加される。
【0077】
これらの組合せ、即ち事前に調整した(A)及び/又は(B)の分散液を用い、これを(A)及び/又は(B)の固体と混合することも可能である。
【0078】
高分子バインダー(B)の分散液は、化学物質製造業者により前もって製造された分散液であってもよい。
【0079】
しかしながら「自家製」の分散液、即ちエンドユーザーにより小規模で調整される分散液を使用することも、本発明の範囲に含まれる。このような分散液は、約20%のバインダー(B)の水混合液を調整し、アンモニア、アミンまたはKOHなどの塩基を添加し、混合物を90〜100℃にまで加熱し、この混合物を数時間激しく攪拌することにより調整できる。
【0080】
本製剤を最終製品として製造し、本発明のプロセス用にエンドユーザーで使用できるようにしてもよい。
【0081】
しかしながら、もちろん濃縮物を製造し、エンドユーザーがこれを助溶媒(D)でもって、用途に応じた所望濃度に希釈してもよい。
【0082】
また、この製剤を
・少なくとも一種の殺虫剤(A)を含む第一の成分と
・少なくとも一種の高分子バインダー(B)を含む第二の成分と
を含むキットとしてエンドユーザーに提供してもよいであろう。
【0083】
他の添加物(D)は、そのキットの第三の別個の成分であってもよく、成分(A)及び/又は(B)と前もって混合されていてもよい。
【0084】
エンドユーザーが、キットに水を加え混合するだけで用途に応じた製剤を作ってもよい。
【0085】
キットの成分は、粉末やカプセル、錠剤、発泡性錠剤などの乾燥組成物の形であってもよい。好適な乾燥型の殺虫剤が、発泡性錠剤として、あるいは手で攪拌または振盪することで容易に溶解して均一な製剤とすることのできる水和剤として入手可能である。
【0086】
このキットの成分は、水または水系溶媒混合物中に入った製剤であってもよい。もちろん、これら成分の一つの水性製剤と一種以上の他成分のドライ製剤と組合わせることも可能である。
【0087】
本発明のある好ましい実施様態においては、このキットが、
・殺虫剤(A)と必要に応じて溶媒(C)とからなる製剤;および
・少なくとも一種の高分子バインダー(B)と溶媒成分(C)と必要に応じて他の成分(D)トからなる第二の別個の製剤とを含んでいる。
【0088】
成分の濃度
これらの成分(A)、(B)、(C)、及び必要に応じて(D)の濃度は、含浸に用いられる方法に応じて熟練者により選択される。
【0089】
一般に、殺虫剤(A)の量は、全成分(A)と(B)と(D)の総量、即ち水系溶媒(C)を除く全成分に対して、最高50重量%、好ましくは20〜50%である。
【0090】
高分子バインダー(B)の量は、全成分(A)と(B)と(D)の総量に対して40〜90%の範囲であってよい。
【0091】
他の成分(D)が存在する場合、その量は、一般的には、(A)と(B)と(C)の総量に対して0.1〜40%、好ましくは0.5%〜35%である。顔料及び/又は染料が存在する場合、その好適な量は、一般的には(A)と(B)と(D)に対して0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%である。
【0092】
含浸プロセスで用いる典型的な製剤は、0.01〜2%の、好ましくは0.1〜1%の成分(A)と(B)と、必要に応じて成分(D)を含み、残りが水系溶媒(C)である。
【0093】
エンドユーザーにより希釈される濃縮物は、10〜50%の成分(A)と(B)と、必要に応じて成分(D)を含み、残りが水系溶媒(C)である。
【0094】
含浸の方法
本発明の目的は、非生物材料を殺虫剤と高分子バインダーで処理してチック、ゴキブリ、ダニ、ノミ、シラミ、ヒル、イエバエ、蚊や他の飛行性昆虫や這行性昆虫等のいろいろな害虫を制御することを目的としている。
【0095】
この高分子バインダーは、殺虫剤を、好ましくは非生物材料の表面に結合させ、長期的な効果を保証する。バインダーを使用すると、雨などの環境の影響または水洗及び/又は洗浄などの非生物材料への人の衝撃による非生物材料からの殺虫剤の漏出を減少させる。
【0096】
この非生物材料はいかなる種類の非生物材料であってもよい。例としては、建物、皮革、合成皮革、植毛織物、シート、箔や包装材、木材、壁面ライニングと塗装、カーペットがあげられる。
【0097】
好ましくは、この非生物材料が織物材料である。なお、「織物材料」としては、繊維、糸、織布、不織布、ループニット、引き抜きループニットが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0098】
本発明の他の好ましい実施様態においては、この織物材料が、織布材料であり、特にネットである。この織布材料またはネットは、いろいろな天然繊維や合成繊維から、また織布または不織布状の混紡織物や、編物または繊維から構成されていてもよい。天然繊維としては、例えば綿、羊毛、絹、黄麻または麻があげられる。合成繊維には、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン、テフロン(登録商標)、合成繊維と天然繊維の混合物などの繊維混合物があげられる。ポリアミドとポリオレフィンとポリエステルが好ましい繊維材料である。ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。最も好ましいのは、ポリエステル製のネット、特にポリエチレンテレフタレート製のネットである。
【0099】
この織布材料は、マットレスや、枕、羽ふとん、クッション、カーテン、壁面カバー、壁面ライニング、窓やドアのスクリーンなどのカバー状であってもよい。他の具体的な織布材料は、テント、マット、靴下、ズボン、シャツなどの衣料、即ち好ましくは殺虫剤が付着する恐れのある部分に用いられる衣料などが挙げられる。ネットは、例えば、蚊帳などのベッドネットやカバーとして用いられる。他の用途は、空中を低高度で飛ぶ昆虫からヒトや動物を保護するための移動型のフェンスである。織物またはネットは、ラップ袋や食品や飼料の容器に使用し、昆虫の攻撃から材料を守りながら、また殺虫剤で処理したネットまたは織物との直接的な接触が避けられるようにしてもよい。箔やターポリンの処理物は、難民キャンプなどの恒久的なあるいは一時的な人間用住居上に使用することができる。
【0100】
本発明は、蚊帳として使用するためのポリエステルネットの含浸に特に好適である。
【0101】
含浸方法は特定の処理技術に限定されるものではない。含浸は、製剤中に非生物材料を、少し又は全部浸して行っても、あるいは製剤を非生物材料の上面に吹き付けて行ってもよい。処理後にこの処理非生物材料を単に常温で乾燥させてもよい。
【0102】
本発明により使用される高分子バインダー(B)には、高温での乾燥、架橋または他の後処理工程の必要がないが、もちろんこのような工程を追加することも本発明の範囲に含まれる。常温での乾燥後でも、このバインダー(B)は非生物材料表面に殺虫剤を十分結合させることができる。
【0103】
したがって含浸には高度な技術が必要ではなく、このため含浸加工をエンドユーザー自身が小スケールで行ってもよい。例えば、典型的なエンドユーザーが、例えば家庭内で本発明の製剤を用いて蚊帳を含浸させてもよい。このためには、本発明の含浸キットを使用することが特に有益である。
【0104】
本発明の製剤を、必要とする製品に成形される前に、即ち糸またはシート状であるうちに、織物材料またはネットに付着させてもよいし、あるいは、相当する製品とした後に付着させてもよい。
【0105】
織物及び/又はネットの場合、ある好ましい実施様態においては、本発明は、少なくとも以下の工程を含む織物及び/又はネット材料の含浸方法に関する。
【0106】
a)以下の群から選ばれるいずれかの加工工程により本発明の水性製剤で織物及び/又はネットを処理する工程:
(a1)織物材料またはネットを製剤中に通過させる加工工程;または
(a2)織物材料またはネットを、製剤に部分的又は完全に浸漬されたローラーに接触させ、ローラーとの接触により織物材料のネット側に製剤を引き寄せる加工工程、または
(a3)材料を製剤中に完全に浸す加工工程;または
(a4)製剤を織物材料またはネット上に吹き付ける加工工程;または
(a5)織物材料またはネット上に又はその中に製剤をブラシ塗布する加工工程;または
(a6)製剤を泡として塗布する加工工程;または
(a7)製剤を織物材料またはネット上に塗布する加工工程、
b)必要に応じて、ローラー間でまたはドクターブレードを用いて、材料を絞り、過剰の製剤を除く工程;及び
c)この織物材料またはネットを乾燥する工程。
【0107】
原料が以前の製造工程からの残留物を、例えば糊剤や表面処理剤等の助剤及び/又は不純物を含んでいる場合、含浸の前に水洗工程を行うことが有益である。
【0108】
具体的には、以下の詳細が、工程a)とb)とc)に重要である。
【0109】
a1)工程
織物またはネットを水性製剤中に通過させることで製剤が付着される。上記の工程は、当業界の熟練者にパッド法として知られている。ある好ましい実施様態においては、この織物またはネットが液体を含む溝槽内で完全に水性製剤中に浸漬させられるか、この織物またはネットが、水平に配列された二個のローラー間中の保持されている製剤中を通過されられる。本発明によれば、織物材料またはネットが製剤中を通過してもよいし、製剤が織物またはネット中を通過してもよい。製剤の消費量は、濃縮浴の安定性や、レベルの分布の必要性、織物またはネットの密度、乾燥および養生工程でのエネルギーコスト削減の必要性により影響を受ける。通常の液体消費量は、材料の重量に対して40〜150%であろう。当業界の熟練者はこの最適値についてよく理解している。a1)工程は、広幅の材料で最終的にネットなるものの含浸に好ましい。小規模生産または未処理ネットの再含浸のためには、簡単な手動ローラーでも十分であろう。
【0110】
a2)工程
部分的に溶液または乳濁液または分散液に浸され、溶液または乳濁液または分散液を、ローラー(キスロール)と接触している織物材料またはネットの側に付着させるローラーを用いて、水性製剤を織物材料またはネット上に塗布してもよい。この方法では、織物材料またはネットの片面のみに含浸させることができ、これは、例えば人の皮膚が殺虫剤処理後の材料に直接接触することを避けたい場合に有利である。
【0111】
織物材料またはネットの工程a1)、a2)またはa3)での含浸は、通常、10〜70℃の温度で、好ましくは15〜50℃、より好ましくは20〜40Cの温度で実施される。
【0112】
a4)工程
噴霧は、連続的プロセスまたはバッチプロセスで、
吹き付け装置を備えた適当な織物機械、例えばポケット開放型衣類洗濯/抽出装置中で行われる。このような装置は、既製のネットの含浸に特に適している。
【0113】
a6)工程
泡は、上述の溶液または乳濁液より水の含量が少ない。したがって、乾燥プロセスが非常に短くなる。この処理を、ガスまたはガス混合物(例えば、空気)をそこに注入して行ってもよい。界面活性剤の添加が、好ましくはフィルム形成性の界面活性剤の添加が必要であろう。好適な界面活性剤と必要な技術装置は、当業界の熟練者には公知である。
【0114】
a7)工程
好ましくはドクターブレード法により塗装プロセスを行う。この加工条件は当業界の熟練者には公知である。
【0115】
b)工程
通常、よく知られているように織物材料またはネットをローラー間に通して絞ることで、過剰の溶液または乳濁液が除かれ、特定の液体消費量とされる。搾り取られた液体は再利用される。あるいは、過剰の水溶液または水乳濁液または水分散液を、遠心分離または真空吸引により除いてもよい。
【0116】
c)工程
乾燥は常温で行ってもよい。特に、このような受動的乾燥を高熱乾燥状態の気候下で行ってもよい。もちろん、この乾燥プロセスを高温で加速してもよい。通常大規模な加工の際には、積極的な乾燥プロセスが行われる。この乾燥は、一般的には200℃未満の温度で行われる。好ましい温度は50〜170℃であり、より好ましくは60〜150℃である。温度の選択は、殺虫剤の製剤中での熱安定性と含浸させる非生物材料の熱安定性により決められる。
【0117】
本発明の方法のためには、少なくとも一種の顔料及び/又は少なくとも一種の染料を含む水性製剤を用いて、織物材料またはネットに殺虫剤を含浸させるだけでなく、同時に着色するようにしてもよい。
【0118】
本プロセスは、ある含浸非生物材料中の収量を開示している。したがって、他の実施様態においては、本発明は、少なくとも一種の殺虫剤(A)と少なくとも高分子バインダー(B)とを含む含浸非生物材料に関する。
【0119】
好ましくは、この非生物材料がネットまたは織物材料であり、好ましくはこの殺虫剤(A)が殺虫剤及び/又は防虫剤である。好ましい殺虫剤及び/又は防虫剤、高分子バインダー(B)、ネットまたは織物材料の好ましい材料は、上述の通りである。
【0120】
殺虫剤及び/又は防虫剤の含浸されたネットまたは織物中のこれらの具体的な量は、殺虫剤の殺虫有効性や防虫剤の有効性によって異なり、織物材料またはネットの(乾燥)重量の0.01〜10%(乾燥重量)である。好ましい量は、殺虫剤及び/又は防虫剤により、織物材料またはネットの0.05〜5重量%である。デルタメスリンまたはアルファシペルメトリンのようなピレスロイドでは、好ましい量が織物またはネットの重量の0.08〜3.5%である。ペルメトリンまたはエトフェンプロクスなどのピレスロイドでは、好ましい量が0.1〜6%である。
【0121】
高分子バインダー(B)の具体的な量は、織物またはネット(乾燥)重量に対して0.01〜10重量%(乾燥重量)である。一般的なガイドラインとして、殺虫剤とバインダー(B)間の重量比は、ほぼ一定であり、殺虫剤も殺虫剤活性と移行性によりある値をとる。したがって、殺虫剤の量が増えるとバインダー(B)の量が増える。好ましいバインダー(B)量は、織物またはネットの(乾燥)重量に対して0.1〜5重量%であり、より好ましくは0.2〜3重量%である。
【0122】
好ましくは、含浸された織物またはネットは、少なくとも一種の顔料及び/又は少なくとも一種の染料を含んでいる。この少なくとも一種の顔料及び/又は染料の量は、一般的には、織物材料またはネットの(乾燥)重量の0.05〜10重量%であり、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3.5重量%である。
【0123】
この含浸織物またはネット材料は、いろいろな目的に利用できる。
【0124】
特に、このような含浸織物またはネット材料は、人や動物及び/又は材料を有害生物から保護するのに使用できる。例えば、これらは蚊帳に使用できる。本発明により含浸された蚊帳は、数回洗濯しても昆虫防除活性に大きな減少がみられない。
【0125】
有害生物から材料を保護するために、これらを保護すべき材料の周りに巻きつけるか、保護すべき材料がこれで覆われてもよい。
【0126】
保護される材料の例としては、作物及び/又はタバコやタバコの包みまたは他のタバコ製品などの収穫物があげられ、これらは、例えば、収穫や乾燥、養生、輸送、保管の際に有害生物から保護される。本発明の方法により、殺虫剤または他の化学物質でこのような作物を直接保護する必要性を除くことができる。
【0127】
また、これらのネットは柵や畜舎内の動物の、昆虫等の害虫からの保護に使用できる。
【0128】
実施例
使用材料

ネット
WHO−ロールバックマラリア「ネット材料の仕様」(ジュネーブ、2001)に従う市販のPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維製のネットを使用した。
【0129】
高分子バインダー(B)
ポリマーバインダー(B)は、WO2007/009909、18〜20頁に開示されている手法により調整した。
【0130】
この高分子バインダーのメタクリル酸含量は、滴定(酸価)で求めた。高分子バインダーの酸価は、DIN−53402に準拠して滴定により求めた。KOH消費量がエチレンコポリマーのメタクリル酸含量に相当する。密度は、DIN−53479に準拠して求めた。溶融範囲は、DIN−51007に準拠して、DSC(示差走査熱量測定、示差熱分析)で求めた。
【0131】
二種の異なる高分子バインダーを調整した:
試料I:73重量%エチレン、27重量%メタクリル酸
試料II:92重量%エチレン、8重量%メタクリル酸
【0132】
分散液A(試料Iを基礎とする)
固定された攪拌機を有する2リットルのオートクレーブ中で、21.28%の試料Iと3.57%のジエタノールアミンと75.15%の純水とを混合し、撹拌下で98℃に加熱した。98℃で3時間後、冷却して室温とし、試料Iの水性乳濁液を得た。
【0133】
分散液B(試料Iを基礎とする)
固定された攪拌機を有する2リットルのオートクレーブ中で、25%の試料Iと3.4%のアンモニア(25%)と71.6%の脱イオン水を混合し、撹拌下で98℃に加熱した。98℃で3時間後、冷却して室温とし、試料Iの水性乳濁液を得た。
【0134】
分散液C(試料IIを基礎とする)
固定された攪拌機を有する2リットルのオートクレーブ中で、20%の試料IIと49,75%の純水と0,05部の亜硫酸ナトリウムと0.4部のKOHと4.2部の通常のノニオン性界面活性剤(2エチレンオキシド単位でエトキシ化されたC13−オキソアルコール)および2.6部のもう一つのノニオン性界面活性剤(10エチレンオキシド単位でエトキシ化されたC13−オキソアルコール)とを混合し、攪拌下で140℃に加熱した。140℃で30分後、さらに25部の水を添加し、混合物を140℃でさらに1時間攪拌した。最終的に室温まで冷却して、試料IIの水性乳濁液を得た。
【0135】
実施例1
浸漬法
本発明のバインダーを含む製剤
125gの織物密度が29.4g/m2の75−デニール嵩高ポリエステル糸からなるネットを、250mlの分散液Aと水(6.25gのバインダー(B)を含む)と1.77gのアルファシペルメトリンの水分散液(固体含量:約10g/l)とを含む2−Lビーカー中に浸し、その処理浴中で5分間手もみした。このネットは処理液体を完全に吸収した。これをビーカーから取り出し、清潔な表面上に平たく置いて常温で乾燥させた。
【0136】
有効成分(アルファシペルメトリン)の理論濃度:40mg/m2=1.36mg/g(GC分析値:1.26mg/g).
【0137】
実施例2
パッド法
本発明のバインダーを含む製剤
織物密度が30.2g/m2の、75−デニール嵩高ポリエステル糸製ネットの小片を、分散液Aと水(17.86gの固体バインダーを含む)と5.18gのアルファシペルメトリンの水分散液(固体含量:約10g/l)からなる300mLの処理浴中に通過させることにより含浸させた。ローラー間に小片を通して過剰の液体を搾り取り、(織物重量に対する)液体吸収率を80%とした。含浸後の小片を常温で乾燥した。
【0138】
実施例3
パッド法
本発明のバインダーを含む製剤
実施例2の方法を用いた。ただし分散液Bに変えて、(15gの固体バインダーを含む)液を用いた。
【0139】
実施例4
噴霧塗布
本発明のバインダーを含む製剤
3枚の、嵩高75デニールポリエステル糸製の標準的な家族サイズの(160×180×150cm)編みネットを50ポンドのミルノア末端投入洗濯/抽出機に投入した。空気霧化式の噴射ノズルを通じて、処理浴(分散液A)をこの機械中に注入した。機械の円筒中で回転転倒される間に、この処理浴がネットに吸着された。処理サイクルの時間は通常30分であった。この化学的な塗布プロセスが終了後、「湿った」処理後のネットを、洗濯/抽出機から工業用乾燥機に移動させ、80℃で30分間乾燥させた。
【0140】
比較例1
浸漬操作
実施例2の方法を用いた。ただし、分散液IIに変えて、従来のパラフィンワックス(1,98gのパラフィンワックスを含む)を含む製剤を用いた。
【0141】
試験方法
「モンペリエ洗濯法」(annex World Health Organization PVC, 3/07/2002 「持続性殺虫ネットの耐洗濯性の評価」に記載):水槽中30℃で、ネット状試料を個別に、0.5Lの脱イオン水と2g/Lの石鹸(pH:10−11)を含むビーカーにとり、10分間、1分間155運動の速度で洗濯した。
【0142】
手洗いに似た洗濯方法に対する工業的な基準が無いため、我々は、IEC洗剤テスト製剤(アニオン性、ノニオン性の洗剤とゼオライトと無機ビルダーとを含み、漂白系を含まない)を用い、転倒・加熱される金属容器内で60℃で30分間洗濯する標準的な洗濯方法を採用した。この方法は、温度および乳化及び分散効果において手洗いよりも過酷な条件を与えるが、ネットへの摩擦はたぶん小さいと考えられる。
【0143】
試験操作:各々の試験片に対して二回の生物試験を用い、4回の繰返し試験を行った。この3分間の生物試験では、試験室で育成したアノフェレス蚊を、処理されたネットに3分間強制的に接触させ、24時間放置後、死亡率(死亡率%)を測定した。
【0144】
古くからのITN試験の基準は、WHOの錐状体(WHOPES 96.1、透明なプラスチック錐状構造物(直径:1.1cm)で、底に平耐フランジを有し先端に穴を有するもの)を使用する。一般的な手法は、錐状体を処理されたネットに固定し(その際、フランジ側をネットに固定する)、5匹の蚊を錐状体に入れ、穴を綿または栓で閉じる。固有の殺虫活性の測定のために、昆虫をネット上にある錐状体内に3分間放置し、その後砂糖水が供給されている飼育容器に移す。錐状体からの蚊を集めて飼育容器内の個数が20以上となるようにする。24時間までの所定時間で、このように集めた蚊からノックダウン率(ND)のデータが集められる。ノックダウン速度を求めるには、蚊を錐状体中に入れ、個々の蚊のKD時間を測定し、11匹の昆虫中で6匹目(中央値)が死亡するまで続ける。再び飛び上がる昆虫を二度カウントするのを防ぐため、ノックダウンした各々のKD蚊は除かれる。次いで、すべての蚊を上述のように24時間のKDカウント測定のために用いる。すべての結果を表1に示す。
【0145】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺虫剤と高分子バインダーとを含む非生物材料処理用の水性製剤であって、
該製剤が少なくとも、
(A)殺虫剤、
(B)水性製剤中に分散した平均分子量Mnが1500〜20000g/molの高分子バインダーで、以下のモノマー:
(B1)60〜95重量%のエチレン、
(B2)5〜40重量%の、以下の群からから選ばれる少なくとも一種の不飽和カルボン酸:
(B2a)モノエチレン性不飽和C3−C10モノカルボン酸、および
(B2b)モノエチレン性不飽和C4−C10ジカルボン酸、および
(B3)必要に応じて、0〜30重量%の、(B1)と(B2)とに共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマー
から構成されるもの(ただし、モノマーの量は、いずれの場合も使用する全モノマーの総量に対するものである)、および
(C)水または少なくとも65重量%の水を含む水系溶媒混合物
を含むことを特徴とする製剤。
【請求項2】
(B1)の量が70〜80%で、(B2)の量が20〜30%で、(B3)の量が0〜9%である請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記モノマー(B2)がメタクリル酸である請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
前記殺虫剤(A)が、殺虫剤及び/又は防虫剤である請求項1〜3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記殺虫剤が、アルファシペルメトリン、シフルトリン、デルタメトリン、エトフェンプロクス、ペルメトリン、またはビフェントリンからなる群から選ばれる請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
少なくとも二種の異なる殺虫剤の混合物が使用される請求項1〜5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記製剤が、さらに保存料、洗剤、フィラー、衝撃改質剤、防曇剤、発泡剤、透明剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、離型剤、UV保護性薬剤、展着剤、粘着防止剤、移行防止剤、泡形成剤、汚染防止剤、増粘剤、バイオサイド剤、界面活性剤、可塑剤、フィルム成形剤、接着剤または抗接着剤、光学増白剤(蛍光白化剤)、顔料や染料からなる群から選ばれる一種以上の助剤成分を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
(A)と(B)と(D)の総量に対して、(A)の量が20〜50重量%であり、(B)の量が40〜90重量%である請求項1〜7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
(A)と(B)と(D)の総量に対して、助剤(D)の量が0.1〜40重量%である請求項9に記載の製剤。
【請求項10】
前記製剤が少なくとも一種の顔料及び/又は染料を含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記製剤が少なくとも一種の界面活性剤を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記界面活性剤の量が、前記製剤の全成分の総量に対して0.1〜15重量%である請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
前記成分(A)と(B)と(C)と、および必要に応じて前記成分(D)を激しく混合することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の水性製剤の製造方法。
【請求項14】
前記製剤が、
・少なくとも一種の殺虫剤(A)を含む第一の成分;および
・少なくとも一種の高分子バインダー(B)を含む第二の成分
を含むキットとして提供され、
上記キットの二種の製剤が、必要に応じて助溶媒成分(C)を用いて激しく相互に攪拌される請求項1〜10のいずれか一項に記載の水性製剤の製造方法。
【請求項15】
上記キットがさらに、キットの第三の別個成分としてあるいは成分(A)及び/又は(B)の成分として添加物(D)を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の製剤で非生物材料を含浸させ、乾燥させることを特徴とする殺虫剤処理非生物材料の製造方法。
【請求項17】
上記非生物材料が織物材料である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記織物材料が、織物材料が、織布材料、不織布材料、箔及び/又はネットである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
乾燥が常温で行われる請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも以下の工程を含む請求項18に記載の方法。
a)以下の群から選ばれるいずれかの加工工程により上記水性製剤で織物及び/又はネットを処理する工程:
(a1)織物材料またはネットを製剤を通過させる加工工程;または
(a2)織物材料またはネットを、製剤に部分的又は完全に浸漬されたローラーに接触させ、ローラーとの接触により織物材料のネットの側に製剤を引き寄せる加工工程、または
(a3)材料を製剤中に沈める加工工程;または
(a4)製剤を織物材料またはネット上に吹き付ける加工工程;または
(a5)織物材料またはネット上に又はその中に製剤をブラシ塗布する加工工程;または
(a6)製剤を泡として塗布する加工工程;または
(a7)製剤を織物材料またはネット上に塗布する加工工程;
b)必要に応じて、ローラー間でまたはドクターブレードを用いて、材料を絞り、過剰の製剤を除く工程;及び
c)この織物材料またはネットを乾燥する工程。
【請求項21】
工程a1)が、この織物またはネットを上記水性製剤を含む溝槽(トラフ)内で完全に水性製剤中に浸漬して行われるか、この織物またはネットを、水平に配列された二個のローラー間中の保持されている水性製剤中を通過されて行われる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
上記製剤が顔料及び/又は染料を含み、含浸と乾燥が同時に行われる請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法により得られることを特徴とする少なくとも殺虫剤(A)と高分子バインダー(B)とを含む含浸非生物材料。
【請求項24】
上記非生物材料が織物材料である請求項23に記載の含浸材料。
【請求項25】
上記織物材料が、不織布材料、箔、織物材料、及び/又はネットである請求項24に記載の含浸材料。
【請求項26】
請求項24または25に記載の含浸材料を、人、動物及び材料の有害生物からの保護のための使用する方法。
【請求項27】
上記含浸材料を、保護される材料で包む請求項26に記載の使用方法。

【公表番号】特表2010−530851(P2010−530851A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511589(P2010−511589)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057048
【国際公開番号】WO2008/151984
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】