説明

害虫防除方法

【課題】単位時間当りの風量、単位時間当りの薬剤揮散量、及び風量と薬剤揮散量との積を所定値に設定することで、低濃度(少ない薬剤揮散量)で所望の虫よけ効果を確保することができる害虫防除方法を提供する。
【解決手段】本発明の害虫防除方法は、単位時間当りの風量が360〜1800リットル、単位時間当りの薬剤の薬剤揮散量が0.02〜0.1ミリグラムであり、且つ風量と薬剤揮散量との積が18〜180である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風式の害虫防除方法に関するものであり、特に、電池で駆動する送風装置を用いて低濃度で薬剤を揮散させて虫よけ効果を実現させる害虫防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の害虫防除方法としては、様々なものが検討されており、近年では、装置を小型化して携帯できるようなものも提案されている。例えば、電池で駆動するファンを用いて揮散性の薬剤を揮散させる害虫防除装置を使用者の手首や足、あるいは腰等に装着し、装置内のファンを駆動させることで、吸入口から空気を吸い込み、吸い込まれた空気が装置内に備える薬剤容器内を通過し、薬剤容器内を通過した空気とともに揮散した薬剤が放出口から外部に放散されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−312335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の害虫防除方法では、装置を小型化するため、装置本体と電源とを別体とする点について示されている。ところが小型化に伴って薬剤の使用量が制限されて、十分な防除効果を得ることが難しい。この問題を解決するための方法として、ファンの風量と薬剤揮散量の関係を最適化することが重要であるが、この点について十分な検討がなされていなかった。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、単位時間当りの風量、単位時間当りの薬剤揮散量、及び風量と薬剤揮散量との積を所定値に設定することで、低濃度(少ない薬剤揮散量)で所望の虫よけ効果を確保することができる害虫防除方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 送風式の害虫防除方法であって、単位時間当りの風量が360〜1800リットル、単位時間当りの薬剤の薬剤揮散量が0.02〜0.1ミリグラムであり、且つ風量と薬剤揮散量との積が18〜180であることを特徴とする害虫防除方法。
(2) 薬剤は、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリンの少なくとも1種を含有することを特徴とする(1)に記載の害虫防除方法。
(3) 飛翔害虫の虫よけであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の害虫防除方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の害虫防除方法によれば、単位時間当りの風量が360〜1800リットル、単位時間当りの薬剤の薬剤揮散量が0.02〜0.1ミリグラムであり、且つ風量と薬剤揮散量との積が18〜180であるため、送風装置の形状や構造、薬剤を保持する薬剤保持体の形状や構造に特段の制限を受けることなく、低濃度の薬剤揮散量で所望の虫よけ効果を確保することができる。
【0008】
以上、本発明について簡潔に説明したが、以下に説明する発明を実施するための最良の形態において、本発明の詳細をより明確にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る害虫防除方法の一実施形態について説明する。
【0010】
本実施形態の害虫防除方法を採用する害虫防除装置は、少なくとも送風装置と、虫よけ剤等の薬剤を保持する薬剤保持体と、を備え、送風装置により発生する風により薬剤を揮散、拡散させる。また、送風装置は、単位時間当りに1800リットル以下、好ましくは、単位時間当りに360〜1800リットルの風量を発生することができるものであれば、その種類に限定はない。なお、送風装置は、例えば、3V程度の電池で所定の風量を発生するものがよく、直径20〜60mm、重さ1〜10gのプロペラファン、直径20〜60mm、重さ1.5〜20gのシロッコファンが好ましい。
【0011】
そして、本実施形態では、送風装置の単位時間当りの風量が360〜1800リットル、薬剤の単位時間当りの薬剤揮散量が0.02〜0.1ミリグラムであり、且つ風量と薬剤揮散量との積が18〜180に設定している。
【0012】
本実施形態において、薬剤保持体は、虫よけ等の薬剤を保持できる含浸性材料により形成されており、好ましくは、気体が通る少なくとも1つ以上の通気孔を有している。この通気孔は、含浸性材料を壁として形成される空間で保持体外部の空気と連絡した両端面を有し、且つ気体の整流機能を発揮するための構造を有していれば、基本的にはその構成は任意である。そして、薬剤保持体の形状としては、例えば、ハニカム状、格子状、ネット状、粒状などを挙げることができ、材質としては、例えば、紙、不織布、樹脂、糸、セルロースなどを挙げることができる。そして、本実施形態では、ポリエステル製又はポリプロピレン製のネット状からなる薬剤保持体が好ましい。また、薬剤保持体の大きさは、面積500〜3000mm、厚さ0.5〜10mmの範囲が好ましい。また、薬剤保持体は、ファンの内側、外側、ブレードに設置してもよく、直接設置しても、別容器に収容してこの容器を設置してもよい。
【0013】
また、薬剤保持体に保持される薬剤としては、例えば、防虫菊エキス、天然ピレトリン、プラレトリン、イミプロトリン、フタルスリン、アレスリン、トランスフルトリン、レスメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、サイパーメストリン、エトフェンプロックス、シフルスリン、デルタメスリン、ビフェントリン、フェンバレレート、フェンプロパスリン、エムペンスリン、シラフルオフェン、メトフルトリン、プロフルトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、ピリダフェンチオン、プロチオホス、ホキシム、クロルピリホス、ジクロルホス等の有機リン系化合物、カルバリル、プロポクスル、メソミル、チオジカルブ等のカーバメート化合物、メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物、フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物、アミドフルメト等のスルホンアミド系化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド系化合物、メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン等の昆虫成長制御化合物等を挙げることができる。また、薬剤保持体に薬剤を均一に保持させるために、1号灯油、流動パラフィン等の溶剤を用いることができる。さらに、薬剤の保持量は、有効時間により異なるが、1〜100mg/cmが好ましい。
【0014】
以上説明したように、本実施形態の害虫防除方法によれば、単位時間当りの風量が360〜1800リットル、単位時間当りの薬剤の薬剤揮散量が0.02〜0.1ミリグラムであり、且つ風量と薬剤揮散量との積が18〜180であるため、送風装置の形状や構造、薬剤を保持する薬剤保持体の形状や構造に特段の制限を受けることなく、低濃度の薬剤揮散量で所望の虫よけ効果を確保することができる。
【実施例】
【0015】
以下に、本発明の害虫防除方法の作用効果について、試験例に基づいて説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
本試験では、本発明の害虫防除方法による虫よけ効果について調べるために、以下の条件で試験を行った。
[試験条件]
被験者:片腕・片足を露出部として露出した人間
供試虫:成虫の雌ヒトスジシマカ
試験場所:12畳の居室
換気回数:10回換気/1h
温度:28〜30℃
湿度:50%以上
薬剤:メトフルトリン
薬剤保持体:ポリエステル製のネット又は不織布製のネットを用い、所定の風量で所定の薬剤揮散量が得られるように調節する。詳細を下記の表1に示す。
[試験方法]
(1)被験者が検体を図1に示すように装着して試験場所に侵入する。
(2)供試虫50頭を試験空間に放す。
(3)供試虫を放した直後から10分後までの間、2分毎に露出部に飛来した供試虫数をカウントする。供試虫が露出部に飛来した後に、供試虫を露出部から追い払った。
(4)飛来した供試虫数の累計をカウントし、処理区飛来数とし、検体を装着していない際の飛来数を無処理区飛来数とした。飛来阻止率は、飛来阻止率(%)=(1−検体の累積飛来数/無処理の累計飛来数)×100として算出した。また、本試験に使用する検体を下記の表2に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
表2に示すように、実施例1は、風量:360(L/hr)、薬剤揮散量:0.05(mg/hr)とし、実施例2は、風量:360(L/hr)、薬剤揮散量:0.08(mg/hr)とし、実施例3は、風量:720(L/hr)、薬剤揮散量:0.03(mg/hr)とし、実施例4は、風量:720(L/hr)、薬剤揮散量:0.04(mg/hr)とし、実施例5は、風量:1440(L/hr)、薬剤揮散量:0.02(mg/hr)とし、実施例6は、風量:1440(L/hr)、薬剤揮散量:0.06(mg/hr)とし、実施例7は、風量:1440(L/hr)、薬剤揮散量:0.09(mg/hr)とし、実施例8は、風量:1800(L/hr)、薬剤揮散量:0.1(mg/hr)とした。なお、(L/hr)は単位時間当りの風量で、(mg/hr)は単位時間当りの薬剤揮散量である。
【0020】
これらに対して、比較例1は、風量:360(L/hr)、薬剤揮散量:0.02(mg/hr)とした。また、参考例1は、風量:2520(L/hr)、薬剤揮散量:0.03(mg/hr)とし、参考例2は、風量:2880(L/hr)、薬剤揮散量:0.07(mg/hr)とし、参考例3は、風量:2880(L/hr)、薬剤揮散量:0.1(mg/hr)とした。
【0021】
試験の結果、実施例1は、風量×揮散量が18で飛来阻止率が73.5%となり、実施例2は、風量×揮散量が28.8で飛来阻止率が82.5%となり、実施例3は、風量×揮散量が21.6で飛来阻止率が78%となり、実施例4は、風量×揮散量が28.8で飛来阻止率が80%となり、実施例5は、風量×揮散量が28.8で飛来阻止率が82.2%となり、実施例6は、風量×揮散量が86.4で飛来阻止率が89.2%となり、実施例7は、風量×揮散量が129.6で飛来阻止率が89.7%となり、実施例8は、風量×揮散量が180で飛来阻止率が86%となり、いずれも高い飛来阻止率を示した。
【0022】
これらに対して、比較例1は、風量×揮散量が7.2で飛来阻止率が53.5%となり、低い飛来阻止率を示した。また、参考例1は、風量×揮散量が75.6で飛来阻止率が79.7%となり、参考例2は、風量×揮散量が201.6で飛来阻止率が78.9%となり、参考例3は、風量×揮散量が288で飛来阻止率が80.1%となり、いずれも高い飛来阻止率を示したが、実施例1〜8と比較すると、風量が大きくなっていたり、薬剤揮散量が大きくなっていたりするにも関わらず、飛来阻止率の向上は見られず若干低下していることがわかった。これにより、比較例1は風量が必要量より小さいことがわかり、参考例1〜3は風量が必要以上に大きいことがわかった。
【0023】
従って、単位時間当りの風量を360〜1800リットル、単位時間当りの薬剤揮散量を0.02〜0.1ミリグラム、且つ風量と薬剤揮散量との積を18〜180に設定することにより、低濃度の薬剤揮散量で所望の虫よけ効果を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る害虫防除方法を採用した害虫防除装置の試験方法を説明するための概略斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風式の害虫防除方法であって、
単位時間当りの風量が360〜1800リットル、
単位時間当りの薬剤の薬剤揮散量が0.02〜0.1ミリグラムであり、
且つ前記風量と前記薬剤揮散量との積が18〜180であることを特徴とする害虫防除方法。
【請求項2】
前記薬剤は、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリンの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の害虫防除方法。
【請求項3】
飛翔害虫の虫よけであることを特徴とする請求項1又は2に記載の害虫防除方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−178336(P2008−178336A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13947(P2007−13947)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】