説明

家庭用エレベータ

【課題】家庭用エレベータの内側扉体と外側扉体との連結機構を改良する。
【解決手段】連結機構を構成する第一連結体18を、内側扉体9に固定される固定片18aと、両扉体9、6Fまたは6Sの間に位置して配される扉幅方向に長い上、下側係止受け片18g、18hとを用い、第一、第二遊嵌部18k、18jとを備えて構成する一方、第二連結体20を、一階、二階外側扉体6F、6Sにそれぞれ設けられ、前記係止受け片18g、18hを越えて内側扉体9側に突出する支軸20aと、支軸20aの先端に設けられる四角形状の係止片20cとで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二階建て、三階建て等の一般住宅等に設けられる家庭用エレベータの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般住宅に家庭用エレベータを設け、高齢者や障害のある人が階下と階上との間を自由に行き来できるようにして、生活環境を一層質の高いものにすることが提唱されている。そして、このように家庭用としてエレベータを設ける場合、エレベータ設置用のスペースを大きく確保することが難しいという問題がある。そこで、家庭用エレベータの省スペース化の一手段として、昇降体に設けられる内側扉体と昇降路に設けられる外側扉体とを開閉揺動する構成とすることが提唱されるが、このように構成した場合では、内側扉体と外側扉体とをそれぞれ個別に操作しなければならず、操作が面倒になるという問題がある。
【0003】
これを改善する手段として、従来では、内側扉体と外側扉体との間に連結機構を設け、昇降体が予め設定される停止位置に位置することで外側扉体と内側扉体とが一体的に連結され、何れかの扉体を操作することでこれら扉体同士が一体化されて、両扉体の何れかを操作することで一体的な開閉揺動ができるように構成したものが提唱されている。
【特許文献1】実開昭50−81571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の連結機構は、昇降体側の内側扉体の外面に設けられた平面視L字形の係止片と、昇降路側の外側扉体の内面に設けられた平面視コ字形の係止溝状の係止受け片とで構成されており、昇降体が所定の停止位置に達することで、係止片と係止受け片とが内外方向に係止する位置関係となるようにして、内外何れか一方の扉体を開閉操作することにより他方の扉体が連動して開閉するように構成されている。しかるに、このように構成した場合、両扉の開放作動により係止片と係止受け片との間に扉幅方向の相対変位が生じるため、係止片と係止受け片の両者を扉幅方向に長く形成する必要があるが、扉体の全開状態においても係止片同士の係止状態を確実に保持するために、係止片と係止受け片との長さを前記相対変位量よりも長くしなければならず、コンパクト化が損なわれるという問題があるうえ、係止片と係止受け片とはそれぞれの扉体に、長尺方向一方の端部が片持ちされる状態で取り付けられる構成であるため、係止片を長くすることにより係止片の先端縁同士が位置ズレしやすく調整が難しいという問題がある。
また、係止片と係止受け片とは、両扉の開放に従い互いの係止面積が小さくなる方向に相対変位する構成であるため、両扉体の開放姿勢において何らかの負荷が両扉体を離間させる方向に作用したような場合では、係止片と係止受け片との先端部同士に負荷が集中して作用することになって変形しやすくなるという問題がある。さらに、このものでは、係止片と係止受け片とが上下方向に相対移動自在に構成されるため、該連結機構を二階建てに限らず、三階建て、四階建ての住宅に対応するエレベータ装置に設けることができるが、両扉を開閉する際に上下方向に位置規制する部材が何ら設けられていないため、両扉が上下方向に位置ズレした状態で開閉する惧れがあって問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、建築物の階下と階上とを連通する昇降路を昇降する昇降体を備えた家庭用エレベータに、昇降体の所定位置での停止に伴い昇降体の内側扉体と昇降路の外側扉体とを一体に開閉揺動するべく連結する連結機構を設けるにあたり、前記連結機構は、内外何れか一方の扉体に固定される固定片と両扉体の間に配され扉体の幅方向長尺状の係止受け片とを備えた第一連結体と、他方の扉体から係止受け片を超えて一方の扉体側に突出する支持片と該支持片の先端部に設けられる係止片とを備えた第二連結体とで構成し、昇降体の所定位置での停止に伴い、係止受け片の扉幅方向一端部に係止片が内外方向に係止するよう構成するとともに、第一連結体には、昇降体の上下昇降に伴い係止片を上下方向に相対移動自在とする第一遊嵌部と、両扉体の開放に伴い支持片を扉幅方向に相対移動自在とする第二遊嵌部とが形成されている家庭用エレベータである。
請求項2の発明は、第一連結体は、係止受け片と固定片とを上下方向の縁部同士を連結片により一体的に連結して内外方向対向状に設けられるものとし、固定片と係止受け片との間に係止溝を形成し、該係止溝に係止片を遊嵌するように構成した請求項1に記載の家庭用エレベータである。
請求項3の発明は、第一遊嵌部は、連結片の扉幅方向一端部を切り欠いて形成されている請求項2に記載の家庭用エレベータである。
請求項4の発明は、第二遊嵌部は、係止受け片の上下方向中間部に形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の家庭用エレベータ家庭用エレベータである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、コンパクト化を図ることができるばかりでなく、第一、第二連結体の係止面積が小さくなることがなく、両者の変形を防止でき、しかも、二階建ての住宅に限らず、三階建て、四階建て等の複数階の住宅に対応できて、汎用性の高い連結機構とすることができる。
請求項2の発明とすることにより、係止受け片の長尺方向における強度を均一化できて、さらなる変形防止を図れる。
請求項3の発明とすることにより、係止受け片の強度を確保しながら、二階建ての住宅に限らず、三階建て、四階建て等の複数階の住宅に対応できる。
請求項4の発明とすることにより、確実な連結ができるうえ、連結機構の強度アップを図ることができ、しかも、両扉体を上下方向に位置規制した状態で開閉作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
つぎに、本発明の実施の形態について、図1〜7の図面に基づいて説明する。
図面において、1は二階建住宅室内の例えば玄関ホールに設けられた家庭用のエレベータであって、該エレベータ1は、最大乗員二名の省スペース化された構成となっている。前記エレベータ1を構成する昇降路2は、一階床部から二階天井部に至る部位が連通する上下方向に長い矩形状に形成されており、下側から順に一階の空間(階下空間)に面する第一部位3、一階と二階の間の天井部空間に面する第二部位4、二階の空間(階上空間)に面する第三部位5のそれぞれに分割された構成となっている。これら第一、第二、第三部位3、4、5は、躯体(住宅)の壁面を一側面として利用し、三方を面板により覆蓋する構成となっている。
【0008】
一階の空間に面する第一部位3は、一対の左右側片部3a、3bと、前側面を構成する一階外側扉体6Fとにより構成されている。前記一階外側扉体6Fは、右側縁部が右側片部3bの前端縁に上下方向複数箇所に配された蝶番6aを介して揺動自在に支持されており、一階外側扉体6Fの左側縁部を戸先として前後方向(内外方向)に開閉揺動するように構成されている。
一方、第二部位4は、左右一対の左右側片部4a、4bと前パネル体4cとを備えて構成されている。
また、二階の空間に面する第三部位5は、左右一対の左右側片部5a、5bと、前側面を構成する二階外側扉体6Sとを備えて構成されている。前記二階外側扉体6Sは、右側縁部が右側片部5bの前端縁に上下方向複数箇所に配された蝶番6aを介して揺動自在に支持されており、二階外側扉体6Sの左側縁部を戸先として前後方向(内外方向)に開閉揺動するように構成されている。
ここで、第三部位5は、左右側片部5a、5bの上端部と二階天井面との間に、後述する駆動ボックス7を配設するスペースが確保できる形状に形成されている。
尚、6bは、一階、二階外側扉体6F、6Sの外側面にそれぞれ設けられた把手、6eは一階、二階外側扉体6F、6Sの右側部に設けられた操作スイッチである。
【0009】
一方、8は昇降路2内を上下移動するボックス状に形成された昇降体(エレベータケージ)であって、該昇降体8は上下側片部8a、8b、そして、左右側片部8c、8d、さらには、後側片部8eにより囲繞される構成となっている。これら各片部8a、8b、8c、8d、8eの外側面は、それぞれ昇降路2を構成する前記第一、第二、第三部位3、4、5の内側面に近接対向する寸法に設定されている。そして、右側片部8dの前端縁には、昇降体8の前側片を構成する内側扉体9の右側端縁部が上下方向に複数配される蝶番9aを介して揺動自在に連結されており、内側扉体9の左側縁部を戸先として前後方向(内外方向)に開閉揺動するように構成されている。
【0010】
さらに、昇降体8の左右側片部8c、8dの前端縁には、左右一対の第一ガイドローラ10が設けられ、左右側片部8c、8dと後側片部8eとの間のコーナー部には第二、第三ガイドローラ11、12が設けられている。一方、昇降路2には、各左右側片部3a、4a、5a、3b、4b、5bの前端縁に位置して第一ガイドローラ10の移動案内をする第一レール部13が、後端縁に位置して第二、第三ガイドローラ11、12の移動案内をする第二、第三レール部14、15がそれぞれ上下方向に連通する状態で形成されている。これによって、昇降体8は、前記第一、第二、第三ガイドローラ10、11、12が前記第一、第二、第三レール部13、14、15をそれぞれ上下方向移動自在に走行することにより、内外方向の動きを規制され(振れ止めされ)、しかも、左右方向の動きを規制され(振れ止めされ)た状態で上下昇降することができるように構成されている。
【0011】
また、昇降体8の内側扉体9の戸先側端面には、上下方向複数箇所に位置して、左側に突出する第四ガイドローラ16が設けられる一方、昇降路2には、第四ガイドローラ16の前方部位をガイドする第四レール部17が形成されている。さらに、前記第四レール部17は、昇降体8が一階または二階に面する予め設定される第一、第二停止位置において停止したとき、第四ガイドローラ16が前方に変位するのを許容するための切り欠き(図示せず)が形成されている。これによって、昇降体8の内側扉体9は、昇降体8の上下昇降の動作に際しては、第四レール部17による移動案内を受けることにより前後方向への変位を規制され、昇降体8の第一、第二停止位置においては、切り欠きを介して前方への変位(開放揺動)が許容されるように設定されている。
尚、8fは昇降体8の室内に設けられた手摺、8gは昇降体8の室内に設けられた操作スイッチ、8hは昇降体8の室内に設けられた把手である。
【0012】
一方、前記駆動ボックス7には、図示しないブレーキ装置を備えた開閉機(電動モータ)7aと、三本のベルト体7bが前後方向に並列して巻装された巻装装置7cとが左右方向に並んで設けられており、これらベルト体7bの遊端部が昇降体8の上側片部8aに連結することにより、ベルト体7bによる昇降体8の吊持がなされるように構成されている。そして、開閉機7aの正逆回転駆動に伴い巻装装置7cが正逆回転することに伴い、ベルト体7bの巻き取り、巻き出しがなされ、これによって、昇降体8は上下に昇降動し、前述の第一、第二停止位置との間を連絡するように設定されている。
ここで、前記三本のベルト体7bのうち、前後方向中央に位置するベルト体7bは、予め弛みを設けて昇降体8に連結されており、通常の使用時では、前後一対のベルト体7bが昇降体8を吊持して上下昇降せしめ、中央のベルト体7bが上下昇降の動作に関与しないように構成されている。これによって、中央のベルト体7bは、前後のベルト体7bの何れかが切断した場合に昇降体8を吊持する緊急吊持体として機能するように構成されている。尚、7dは、中央のベルト体7bの弛みを吸収するための弾機である
【0013】
そして、昇降体8に設けられる内側扉体9と昇降路2に設けられる一階または二階外側扉体6F、6Sとの間にそれぞれ本発明が実施された連結機構が設けられている。
前記内側扉体9は、本発明の一方の扉体に相当しており、左右一対の縦枠体9b、9cと、上下一対の横枠体9d、9eと、上下方向中間部に位置する横枠体9fとを備えて構成されており、内側扉体9の戸先側となる左側縦枠体9bと中間横枠体9fとの隣接部における外側面に、本発明の第一連結体18が設けられている。前記左側縦枠体9bと中間横部体9fとの隣接部には段差が形成されており、該段差を解消するため、左右方向(各扉体6F、6S、9の幅方向)に長いベースプレート19が固定されており、該ベースプレート19に、本発明が実施された第一連結体18が固定されている。前記第一連結体18は所定の形状に切断した金属製板材を折曲加工等をすることにより、扉幅方向に長く、側面視でコ字形状になるように形成されている。前記第一連結体18のベースプレート19に固定される固定片18aは、上下方向中間部に位置して内側扉体9側に突出する段差片18bが形成されており、該段差片18bをベースプレート19に固定することにより、段差片18bの上下に位置する上、下側固定片18c、18dとベースプレート19との間にそれぞれ所定間隙Sが形成されている。
【0014】
そして、前記固定片18aの上下端縁部、即ち、上、下側固定片18c、18dのそれぞれの端縁部からは、外側扉体6F、6S側に突出する上下一対の上、下側連結片18e、18fが折曲形成されており、これら上、下側連結片18e、18fの突出端縁から互いに近接する方向に向けて上下一対の上、下側係止受け片18g、18hがそれぞれ延出形成されている。これによって、第一連結体18は側面視コ字形となり、上、下側係止受け片18g、18hが内側扉体9と一階、二階外側扉体6F、6Sとの間に位置して配されて、固定片18a(上、下側固定片18c、18d)との間に予め設定される内外方向の溝幅Tを有した係止溝18iが形成されるように構成されている。さらに、上、下側係止受け片18g、18hの先端縁同士の間には、前記係止溝18iに連通する扉幅方向長尺状の開口18jが形成されており、該開口18jは、上下方向を向く所定の開口長さHに設定されており、該開口18jが本発明の第二遊嵌部18jに相当している。
ここで、上、下側係止受け片18g、18hは、上、下側固定片18c、18dの上下縁部から上、下側連結片18e、18fを介して形成することにより、第一連結体18の短尺方向一方の端部に片持ちされる状態で形成されることになり、これによって、第二遊嵌部18jを構成する上、下側係止受け片18g、18hの強度を、扉幅方向一帯において略一定にすることができるように構成されている。
【0015】
また、第一連結体18は、上、下側連結片18e、18fの戸尻側部位であって、本発明の扉幅方向一端部に相当する右端部が切り欠かれており、これによって、第一連結体18の扉幅方向一端部に係止溝18iに連通する上下方向貫通状の第一遊嵌部18kが形成されている。さらに、第一遊嵌部18kは、上側の溝入口部となる上側固定片18cと上側係止受け片18gとの上端縁に、上方ほど互いに離間する内外一対の上側ガイド片18mが折曲形成されている。さらに、第一遊嵌部18kの下側の溝入口部となる下側固定片18dと下側係止受け片18hとの下端縁に、下方ほど互いに離間する内外一対の下側ガイド片18nが折曲形成されている。尚、上、下側固定片18c、18dを傾斜状に折曲することで形成される内外方向内側に位置する上、下側ガイド片18m、18nは、段差片18bとの間に形成される所定間隙Sにおいて内側扉体9側に向けて傾斜できるように構成されている。
【0016】
一方、昇降路2に設けられる一階、二階外側扉体6F、6Sは、本発明の他方の扉体に相当しており、各扉体6F、6Sはそれぞれ左右一対の縦枠体6c、6dを備えて構成されている。そして、外側扉体6F、6Sの戸先側となる左側縦枠体6cの内側面に、それぞれ本発明の第二連結体20が設けられている。前記第二連結体20は、本発明の支持片に相当する支軸20aを備えて構成されており、該支軸20aは所定の外径Rを有した円柱状の軸体で構成されており、前記第一連結体18の第二遊嵌部18jを扉幅方向に相対移動自在となるよう、外径Rが第二遊嵌部18jの開口長さHよりも小径(R<H)となるように設定されてされている。前記支軸20aの基端部は、矩形状の取り付けプレート20bに一体的に固定されており、該取り付けプレート20bを、左側縦枠体6cの所定の位置に固定することにより、支軸20aの先端部が内側扉体9側に向けて突出するように設定されている。そして、支軸20aの突出先端部に、樹脂製プレートにより構成される係止片20cが固定されるが、係止片20cは、第一連結体18の係止溝18iに扉幅方向移動自在に遊嵌される大きさであり、係止片20cの板厚T1は、係止溝18iの溝深さTよりも薄く(小さく)設定され、後述するように、係止片20cの扉幅方向他端側部位が第一遊嵌部18kを上下方向に相対移動自在となるように構成されている。さらに、係止片20cの一辺の長さH1は、第二遊嵌部18jの開口長さHよりも長い(H<H1)正方形状に形成されており、係止片20cの中心部を支軸20aに固定することにより、支軸20aを基準として上下方向両側、かつ、扉幅方向(左右方向)両側に向けて延出(膨出)する形状に形成されている。
【0017】
このように構成された第二連結体20を一階、二階外側扉体6F、6Sに固定する場合に、昇降体8が前記第一または第二停止位置に停止し、かつ、内側扉体9と一階または二階外側扉体6F、6Sとが閉鎖している状態において、支軸20aの位置が、第一連結体18に形成される上、下側係止受け片18g、18h(第一遊嵌部18k)の扉幅方向一端部から少し離れた部位で、かつ、第二遊嵌部18jの上下方向中間部に位置する状態で固定されている。そして、第二連結体20の支軸20aの長さは、内側扉体9に設けられる第一連結体18の上、下側係止受け片18g、18hを越えて内側扉体9側に突出するように設定されている。これによって、内側扉体9と一階または二階外側扉体6F、6Sとが閉鎖している状態では、第二連結体20の係止片20cは、支軸20aを基準として上下方向に延出する上、下側部位20d、20eにおける扉幅方向他端側部位が第一遊嵌部18kに遊嵌し、上、下側係止受け片18g、18hの扉幅方向一端部に内側扉体9側から係止するように設定されている。
【0018】
このように構成された連結機構は、昇降体8が一階または二階の第一または第二停止位置に停止する少し前に達すると、係止片20cの上、下側部位20d、20eの扉幅方向基端側部位に対して第一遊嵌部18kが近付いて、第一遊嵌部18kの下方または上方から係止片20cに外嵌することになるが、このとき、係止片20cの上、下側部位20d、20eは、第一遊嵌部18kの溝入口部となる下側または上側ガイド片18n、18mに案内される状態で第一遊嵌部18kに遊嵌されるように設定されている。そして、昇降体8が第一、第二停止位置に達して停止することに伴い、前述したように、支軸20aが第一連結体18に形成される上、下側係止受け片18g、18hの間(第二遊嵌部18jの上下方向中間部)に位置するように設定されている。この状態となると、前述したように、係止片20cの支軸20aを基準とする上、下側部位20d、20eの扉幅方向他端側部位が第一遊嵌部18kを構成する上、下側係止受け片18g、18hの扉幅方向一端部に内側扉体9側から積層し、内外方向の係止がなされた状態となるように構成されている。
【0019】
そして、第一または第二停止位置において、第四ガイドローラ16は第四レール17の切り欠きに対向しており、内側扉体9と一階または二階外側扉体6F、6Sとの何れか一方の開閉操作がなされると、内側扉体9と一階または二階外側扉体6F、6Sとが一体に開閉揺動するように構成されている。この場合に、内側扉体9と一階または二階外側扉体6F、6Sとは揺動連結位置がそれぞれ異なるため、図7に示すように、第一、第二連結体18、20とが扉幅方向に相対変位することになるが、第二連結体20は、第一、第二停止位置において支軸20aが第一連結体18の上、下側係止受け片18g、18hの間の第二遊嵌部18jに位置しており、この状態から開放操作がなされると、支軸20cが第二遊嵌部18jを扉幅方向他端側に向けて変位する状態で、内側扉体9と一階または二階外側扉体6F、6Sとの相対変位がなされるように設定されている。そして、この相対変位の過程で、係止片20cの上下側部位20d、20eは、第一連結体18の上、下側係止受け片18g、18hとの係止状態を維持した状態で変位することになり、これによって、内側扉体9と一階または二階外側扉体6F、6Sとの連結(内外方向の係止)が保持された状態で開閉揺動がなされるように構成されている。このとき、第二連結体20の支軸20aは第一連結体18の第二遊嵌部18jを移動することにより、両扉体9、6Fまたは6Sの上下方向の移動規制がなされ、両扉体9、6Fまたは6Sを上下方向のガタつきがない状態で開閉作動できるように構成されている。
【0020】
叙述の如く構成された本形態において、エレベータ1は、操作スイッチ6e、8gの操作に基づいて巻装装置7cによるベルト体7bの巻き取り、巻き出しがなされ、これによって、昇降体8が昇降路2内を上下昇降して一階と二階の第一、第二停止位置との間を連絡をする。このものにおいて、昇降体8側に設けられる内側扉体9と、昇降路2側に設けられる一階または二階外側扉体6F、6Sとは、昇降体8が第一、第二停止位置に停止することに伴い、連結機構を介して一体的に連結されて開閉揺動を行うが、この場合に、連結機構を構成する第一、第二連結体18、20のうち、第二連結体20は、支軸20aと、該支軸20a先端に固定された係止片20cとで構成され、支軸20aから延出する上下側部位20d、20eが、第一連結体18の上、下側係止受け片18g、18hに係止することで係止(連結)する構成となっている。この結果、従来の平面視L字形の係止片と平面視コ字形の係止受け片とによる連結機構のように、両片を大型化する必要がなくなって、コンパクト化を図ることができる。
しかも、第一、第二連結体18、20同士は、両扉9、6F、6Sの開放操作の過程で互いの係止面積が小さくなるようなことがなく、内側扉体9と一階または二階外側扉体6F、6Sとが開放して、これら各扉9、6F、6Sに対して個別に負荷が作用しやすい状態においても、第一、第二連結体18、20同士の係止面積が小さくなることがないので、第一、第二連結体18、20(係止受け片18g、18h、係止片20c)の変形を防止することができる。
さらには、第一遊嵌部18kに係止片20cの扉幅方向他端部側部位が上下方向相対移動自在に内嵌する構成であるので、二階建ての住宅に限らず、三階建て、四階建て等の複数階の住宅に対応できて、汎用性の高い連結機構とすることができる。
【0021】
そのうえ、本発明が実施されたものにあっては、第一連結体18は側面視コ字形に形成されており、上、下側係止受け片18g、18hは、固定片18の上下縁部から延出する状態で折曲形成されて、従来のように係止溝の長尺方向において片持ちされるのでなく、短尺方向において片持ちされている。この結果、第一、第二連結体18、20の調整が容易になるばかりでなく、上、下側係止受け片18g、18hの長尺方向における強度が均一化されて、従来の連結機構のように、全開した状態で係止片または係止受け片が変形しやすくなるような不具合をなくすことができる。
【0022】
また、このものでは、上、下側係止受け片18g、18hの強度を確保するべく設けられる扉幅方向に長い連結片18e、18fを切り欠くことで第一遊嵌部18kが形成されているので、係止受け片18g、18hの強度を確保できるものでありながら、二階建ての住宅に限らず、三階建て、四階建て等の複数階の住宅に対応することができる。
【0023】
さらに、このものでは、第一連結体18には上下一対の係止受け片18g、18hの間に第二遊嵌部18jを設ける構成としたので、係止片20の上、下側片部20d、20eがそれぞれ上、下側係止受け片18g、18hに係止することができ、係止面積を大きく確保できて連結が確実になるうえ、連結機構の強度アップを図ることができる。そのうえ、支軸20cが第二遊嵌部18jを相対移動することで、両扉体9、6F、6Sの上下方向の移動規制がなされて、開閉操作において上下のガタつきを防止することができる。
【0024】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないことは勿論であって、第一、第二連結体は、内側扉体と外側扉体とにそれぞれ取り付ける構成であればよく、第一連結体を外側扉体に、第二連結体を内側扉体に設けることも可能である。
また、第一連結体は、前記実施の形態のように、必ずしも上下一対の係止受け片を設ける必要はなく、単独の係止受け片を設ける構成としてもよい。
さらに、第二連結体は、本実施の形態では樹脂製プレート体を用いて四角形状に形成されているが、円形状にしてもよく、さらには、支持片に軸承されるローラを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1(A)、(B)はそれぞれ家庭用エレベータの前方部位を切り欠いた正面図、家庭用エレベータの側面図である。
【図2】図2(A)、(B)はそれぞれ昇降体の正面図、側面図である。
【図3】第一連結体の斜視図である。
【図4】家庭用エレベータの平面断面図である。
【図5】図4における要部の拡大図である。
【図6】図6(A)、(B)はそれぞれ連結機構を説明する拡大側面図、図6(A)におけるX−X断面図である。
【図7】連結機構により連結された内側扉体と外側扉体との開放揺動を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 家庭用エレベータ
2 昇降路
3 第一部位
6F 一階外側扉体
6S 二階外側扉体
8 昇降体
9 内側扉体
18 第一連結体
18e 上側連結片
18g 上側係止受け片
18i 係止溝
18j 第二遊嵌部
18k 第一遊嵌部
20 第二連結体
20a 支軸
20c 係止片
20d 上側片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の階下と階上とを連通する昇降路を昇降する昇降体を備えた家庭用エレベータに、昇降体の所定位置での停止に伴い昇降体の内側扉体と昇降路の外側扉体とを一体に開閉揺動するべく連結する連結機構を設けるにあたり、前記連結機構は、内外何れか一方の扉体に固定される固定片と両扉体の間に配され扉体の幅方向長尺状の係止受け片とを備えた第一連結体と、他方の扉体から係止受け片を超えて一方の扉体側に突出する支持片と該支持片の先端部に設けられる係止片とを備えた第二連結体とで構成し、昇降体の所定位置での停止に伴い、係止受け片の扉幅方向一端部に係止片が内外方向に係止するよう構成するとともに、第一連結体には、昇降体の上下昇降に伴い係止片を上下方向に相対移動自在とする第一遊嵌部と、両扉体の開放に伴い支持片を扉幅方向に相対移動自在とする第二遊嵌部とが形成されている家庭用エレベータ。
【請求項2】
第一連結体は、係止受け片と固定片とを上下方向の縁部同士を連結片により一体的に連結して内外方向対向状に設けられるものとし、固定片と係止受け片との間に係止溝を形成し、該係止溝に係止片を遊嵌するように構成した請求項1に記載の家庭用エレベータ。
【請求項3】
第一遊嵌部は、連結片の扉幅方向一端部を切り欠いて形成されている請求項2に記載の家庭用エレベータ。
【請求項4】
第二遊嵌部は、係止受け片の上下方向中間部に形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の家庭用エレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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