説明

家畜飼料又は養殖餌料

【課題】有機廃棄物であるオカラを有効利用することにより、安全性が高く、かつ、安価な家畜飼料を提供し、併せて、安全性が高く、かつ、安価な養殖餌料を提供する。
【解決手段】配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有用微生物群をオカラに混入して40〜200℃の温度にて24時間一次発酵させ、更にこれに配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有用微生物群を混入し、100〜200℃の温度にて24〜48時間二次発酵させることにより、家畜又は養殖魚介類の脂身に含まれる機能性脂肪酸を増加させる機能性と脂身のコレステロールを降下させる機能性とを備えさせたことを特徴とする家畜飼料又は養殖餌料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛、馬、豚、羊、ダチョウ等の家畜に用いられる家畜飼料又は養殖魚介類に用いられる養殖餌料に関するものであり、更に詳しくは、オカラに有用微生物群を混入して発酵させることにより、家畜又は養殖魚介類の脂身に含まれる機能性脂肪酸を増加させる機能性と脂身のコレステロールを降下させる機能性とを備えさせた家畜飼料又は養殖餌料に係るものである。
【背景技術】
【0002】
家畜飼料としては主に配合飼料が用いられているが、配合飼料の原料の収穫率を高めるためにしばしば農薬が大量に使用されている。また、わが国は家畜飼料を主として輸入に依存している。家畜飼料の長期保存性を上げるために消毒剤や防腐剤等が使用される結果、化学物質が家畜飼料中に残留して家畜の健康被害が生じ、更に、化学物質が腸内細菌の生育を阻害するために消化吸収率の悪化を招くことが知られている。加えて、病害被害の予防のために抗生物質等も使用されている。
【0003】
豆腐や豆乳を製造する際の副産物として有機廃棄物であるオカラが大量に発生する。オカラは、栄養価が高く食品、飼料として利用できるが、含水率が高く、保存性が極めて悪い。そこで、オカラに乳酸菌を添加することにより、長期保存が可能であり、かつ、プロバイオティクスのような整腸作用を持った家畜飼料を作ることが知られている。
【0004】
本発明者は、特許第3710424号公報に示すように、配合株数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有効微生物群を有機廃棄物に混入して40〜200℃の温度にて24時間一次発酵させ、更にこれに配合株数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有効微生物群を混入し、これを被処理物と共に100〜200℃の温度にて24〜48時間二次発酵させることにより、該被処理物に含まれる重金属、ダイオキシン類又は農薬を分解させるようにしたことを特徴とする重金属、ダイオキシン類及び農薬を分解する方法(以下「本発明者による重金属、ダイオキシン類及び農薬を分解する方法」という。)を提供している。
【特許文献1】特許第3710424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如く配合飼料は安全性の面で問題があり、また配合飼料コストが畜産農家における生産費の大部分を占め、畜産農家を圧迫している。
【0006】
このような状況に鑑み、本発明は、有機廃棄物であるオカラを有効利用することにより、安全性が高く、かつ、安価な家畜飼料を提供し、併せて、安全性が高く、かつ、安価な養殖餌料を提供しようとしてなされたものである。
【0007】
更に、本発明は、家畜又は養殖魚介類の脂身に含まれる機能性脂肪酸を増加させる機能性と脂身のコレステロールを降下させる機能性とを備えさせた家畜飼料又は養殖餌料を提供しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者による重金属、ダイオキシン類及び農薬を分解する方法は、本発明の家畜飼料又は養殖餌料とは技術分野を全く異にするものであるが、本発明者は敢えてこの方法とオカラとを組み合わせることにより上記課題を解決することに想到したものである。
【0009】
即ち、本発明は下記の家畜飼料又は養殖餌料を提供する。
【0010】
(1)配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有用微生物群をオカラに混入して40〜200℃の温度にて24時間一次発酵させ、更にこれに配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有用微生物群を混入し、100〜200℃の温度にて24〜48時間二次発酵させることにより、家畜又は養殖魚介類の脂身に含まれる機能性脂肪酸を増加させる機能性と脂身のコレステロールを降下させる機能性とを備えさせたことを特徴とする家畜飼料又は養殖餌料(請求項1)。
【0011】
(2)前記機能性脂肪酸はパルミトオレイン酸、オレイン酸又はリノール酸である(請求項2)。
【0012】
(3)脂身に含まれるコレステロール濃度を抑え、良質な肉質と脂質とを得るようにする(請求項3)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安全性が高く、かつ、安価な家畜飼料又は養殖餌料が得られる。即ち、本発明による家畜飼料又は養殖餌料は、重金属、ダイオキシン類及び農薬が分解された安全なものである。また、本発明による家畜飼料又は養殖餌料は、原料として有機廃棄物であるオカラを用いているため、極めて安価である。
【0014】
本発明による家畜飼料又は養殖餌料は、配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有用微生物群をオカラに混入して40〜200℃の温度にて24時間一次発酵させ、更にこれに配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有用微生物群を混入し、100〜200℃の温度にて24〜48時間二次発酵させることにより、家畜又は養殖魚介類の脂身に含まれる機能性脂肪酸を増加させる機能性と脂身のコレステロールを降下させる機能性とを備えた好ましいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明においては、配合菌数の割合が好気性菌群約55%と嫌気性菌群約45%とよりなる有用微生物群を使用する。
【0016】
有効微生物群には次のものが含まれる。
酵母菌、セルロース分解菌、窒素固定菌、乳酸菌、糸状菌(芳香族化合物分解菌)、マンガン還元菌(クロカビ属群−原生担子菌類)、マンガン酸化菌(有機栄養菌)、アンモニア酸化菌(亜硝酸菌)、放線菌(キチン分解菌)、硝酸菌(硝化生成細菌)、硫黄細菌(硫化水素を水素供与体として利用する細菌群)、メタン酸化菌、セルロース放線菌、セルロース糸状菌、納豆菌、リグニン分解菌、鉄酸化菌、鉄還元菌、硫酸還元菌、酢酸菌、バチルス属(Bacillus sp.)、スポロサルシナ属(Sporosarcina sp.)、ペニバチルス属(Paenibacillus sp.)、オーシャノバチルス属(Oceanobacillus sp.)。
【0017】
上記有効微生物群をオカラに混入して約40〜200℃の温度にて約24時間一次発酵させる。
【0018】
有効微生物群は、例えば、オカラ1000kg(湿重量)に対し、1kg(湿重量)の割合で使用する。
【0019】
オカラの他にも、コーヒー豆粕、茶殻、野菜クズ、魚介類クズ、残飯、卵殻、ビール粕、酒粕、焼酎粕等の有機廃棄物たる食物残渣が用いられる。
【0020】
更に、食物残渣以外にも、例えばバーク、もみがら、米ぬか、フスマ等の有機廃棄物が用いられる。
【0021】
上記の如く一次発酵させてなるもの(床材)に、更に配合菌数の割合が好気性菌群約55%と嫌気性菌群約45%とよりなる有用微生物群を混入し、約100〜200℃の温度にて約24〜48時間二次発酵させる。床材は水分調整を兼ねて使用させる。
【0022】
二次発酵における有効微生物群は、例えば、一次発酵における有効微生物群1kg(湿重量)に対して、約3kg(湿重量)の割合で使用する。
【0023】
以上により、家畜又は養殖魚介類の脂身に含まれる機能性脂肪酸を増加させる機能性と脂身のコレステロールを降下させる機能性とを備えさせた家畜飼料又は養殖餌料が得られる。
【0024】
本発明により得られる有機発酵飼料たる家畜飼料は牛、馬、豚、羊、ダチョウ等の家畜に用いられるが、本発明の家畜飼料にはペットフードも含まれる。
【0025】
本発明により得られる有機発酵餌料たる養殖餌料は魚、貝類等の養殖魚介類に用いられる。
【実施例】
【0026】
配合菌数の割合が好気性菌群約55%と嫌気性菌群約45%とよりなる有用微生物群をオカラ1000重量部(湿重量)に対して1重量部(湿重量)の割合で混入し、約40〜200℃の温度にて約24時間一次発酵させ、更にこれに配合菌数の割合が好気性菌群約55%と嫌気性菌群約45%とよりなる有用微生物群を一次発酵の際の約3倍量(湿重量)となるように混入し、約100〜200℃の温度にて約24〜48時間二次発酵させることにより得られた家畜飼料を与えた供給豚と、比較例としての市販豚とを使用して、赤身・脂身脂肪含有量、赤身・脂身の脂肪酸組成、赤身・脂身のコレステロール特性について試験を実施した。
【0027】
脂質は、赤身・脂質ごとにクロロホルム−メタノール(2:1)混合液にて、常法に従い抽出した。得られた脂質含有量、脂質の一部は脂肪酸組成分析に用いるために常法に従い5%塩酸性メタノールでメチル化し、薄層クロマトグラフで脂肪酸メチルエステルを分離し、ガスクロマトグラフに供して分析した。コレステロールは食品分析法に従い、ガスクロマトグラフに供して分析した。その結果を、表1に赤身・脂身脂肪含有量、表2に赤身の脂肪酸組成、表3に脂身の脂肪酸組成、表4に赤身の脂肪酸特性、表5に脂身の脂肪酸特性、表6に赤身のコレステロール特性、表7に脂身のコレステロール特性を示す。
【0028】
赤身の脂肪含有量に関しては市販豚に対して低い値を示した。脂肪酸組成に関しては供給豚の脂身で機能性脂肪酸であるパルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸が高い値を示した。一般的に良質脂肪の目安となる脂肪酸のU/S比は、供給豚の赤身および脂身で高い値を示し、特に脂身で顕著であった。コレステロール特性に関しては、市販豚と比較して供給豚の赤身で39〜50%、脂身で76〜87%減少していた。本有機発酵飼料を家畜に与えることにより、機能性脂肪酸の増加、コレステロールの減少の効果が得られることが確認できた。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

【0033】
【表5】

【0034】
【表6】

【0035】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有用微生物群をオカラに混入して40〜200℃の温度にて24時間一次発酵させ、更にこれに配合菌数の割合が好気性菌群55%と嫌気性菌群45%とよりなる有用微生物群を混入し、100〜200℃の温度にて24〜48時間二次発酵させることにより、家畜又は養殖魚介類の脂身に含まれる機能性脂肪酸を増加させる機能性と脂身のコレステロールを降下させる機能性とを備えさせたことを特徴とする家畜飼料又は養殖餌料。
【請求項2】
前記機能性脂肪酸はパルミトオレイン酸、オレイン酸又はリノール酸であることを特徴とする請求項1に記載の家畜飼料及び養殖餌料。
【請求項3】
脂身に含まれるコレステロール濃度を抑え、良質な肉質と脂質とを得るようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の家畜飼料及び養殖餌料。

【公開番号】特開2007−252346(P2007−252346A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84689(P2006−84689)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(502306453)株式会社スズキファーム (10)
【Fターム(参考)】