説明

容器のシール方法

【課題】 単一素材からなる容器の充填口部でも、短時間で効率良く、強靭な封着シール部を形成すること。
【解決手段】 充填口部32をピンチバー83で挟むことにより平板状にし、この平板状にした充填口部32を封着する容器10のシール方法であって、ピンチバー83で挟んだ充填口部32の先端部を露出させ、露出させた充填口部32の先端部を加熱して封着するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器のシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤等の内容物が充填される容器として、合成樹脂製シートを貼り合せて形成されたパウチ(特許文献1)や、合成樹脂製の容器本体を金型により成形した容器(特許文献2、3)が提案されている。これらの容器では、容器の充填口部から内容物を充填した後、充填口部を加熱シールして封着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-213448
【特許文献2】特開2002-193232
【特許文献3】特開平11-130112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、容器の充填口部を加熱シールする方法として、外部加熱方式であるヒートシール(バーシール、バンドシール又は輻射熱シール)、インパルスシール又はホットエアシールと、内部加熱方式である超音波シール等を採用することが考えられる。
【0005】
バーシールやバンドシールは、加熱されたバー又はバンドで充填口部を挟むものであるが、充填口部がHDPE(高密度ポリエチレン)等の単一素材からなるとき、内側の樹脂が完全溶解する前に、外側の樹脂が先に完全溶解して溶断状態になるため、封着を実現できない。
【0006】
インパルスシールは、シール型で充填口部を挟み込み、瞬間的に通電加熱し、そのまま冷却させることで溶断することなく封着できるが、加熱と冷却が同一工程で長時間を必要とし、生産性が悪い。また、加熱したままのシール型を圧着し続けるため、封着シール部の肉厚が薄くなり、ピンホールを生じ易い。
【0007】
ホットエアシールは、インパルスシールと同様に多大な加熱時間を必要とし、生産性が悪い。
【0008】
超音波シールは、充填口部の偏肉(例えば400±200μm)が大きいと、超音波の振動が均一に伝搬されず、封着できない。
【0009】
ニクロムヒータ(遠赤外線)を用いた輻射熱シールは、クランプされた充填口部を非接触でじんわりと時間をかけて加熱し、溶解した部分を圧着して冷却するものであるが、長時間を必要とするし、封着シール部の両端に鋭利な角が発生する。
【0010】
本発明の課題は、単一素材からなる容器の充填口部でも、短時間で効率良く、強靭な封着シール部を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、充填口部をピンチバーで挟むことにより平板状にし、この平板状にした充填口部を封着する容器のシール方法であって、ピンチバーで挟んだ充填口部の先端部を露出させ、露出させた充填口部の先端部を加熱して封着するようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の一実施例である容器を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は充填口部に設けた封着シール部を示す斜視図である。
【図2】図2は容器を示し、(A)は容器本体の内側に充填口部を落とし込んだ状態を示す正面図、(B)は充填口部を落とし込む前の状態を示す部分正面図、(C)は充填口部を落とし込んだ後の状態を示す部分断面図である。
【図3】図3は容器の製造工程を示し、(A)は容器供給工程を示す正面図、(B)は充填口切断工程を示す正面図、(C)は内容物充填工程を示す正面図、(D)は充填口シール工程を示す正面図、(E)は充填口反転工程を示す正面図である。
【図4】図4は充填口部の切断工程を示し、(A)は切断前に封止されている充填口形成部を示す斜視図、(B)は切断前に封止されていない充填口形成部を示す斜視図、(C)は切断された充填口部を示す斜視図である。
【図5】図5は超音波カッターによる切断状態を示し、(A)は超音波カッターと容器を示す平面図、(B)は超音波カッターと充填口部を示す断面図である。
【図6】図6は超音波カッターと容器を示す側面図である。
【図7】図7は充填口部の封着工程を示し、(A)は封着前の充填口部を示す斜視図、(B)は封着された充填口部を示す斜視図である。
【図8】図8は近赤外線ヒータによる封着工程を示し、(A)はヒータと容器を示す正面図、(B)はヒータを示す模式図である。
【図9】図9は近赤外線ヒータによる封着工程を示し、(A)は容器の投入状態を示す側面図、(B)はクランプによる容器の押圧状態を示す側面図である。
【図10】図10は近赤外線ヒータによる封着工程を示し、(A)は充填口部のピンチ状態を示す側面図、(B)は充填口部の加熱状態を示す側面図である。
【図11】図11は近赤外線ヒータによる封着工程を示し、(A)は充填口部の圧着状態を示す側面図、(B)は充填口部の封着完了状態を示す側面図である。
【図12】図12は近赤外線ヒータによる加熱構造を示す側面図である。
【図13】図13は充填口部の落とし込み工程を示し、(A)は落とし込み前の充填口部を示す斜視図、(B)は落とし込み後の充填口部を示す斜視図である。
【図14】図14は打ち込みヘッドによる落とし込み工程を示し、(A)は容器の投入状態を示す側面図、(B)は打ち込みガイドによる容器の保持状態を示す側面図である。
【図15】図15は打ち込みヘッドによる落とし込み工程を示し、(A)は容器クランプによる容器の押圧状態を示す側面図、(B)は打ち込みヘッドによる押し込み状態を示す側面図である。
【図16】図16は打ち込みヘッドによる落とし込み工程を示し、(A)は容器クランプによる容器の押圧解除状態を示す側面図、(B)は打ち込みガイドによる容器の保持解除状態を示す側面図である。
【図17】図17は充填口部の落とし込み完了状態を示す側面図である。
【図18】図18は打ち込み治具と容器を示す模式断面図である。
【図19】図19は打ち込みヘッドを示す斜視図である。
【図20】図20は容器の反転部に窪みを形成する状態を示し、(A)は窪み形成具による押圧状態を示す斜視図、(B)は窪みを形成された容器の反転部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
本発明の容器の一実施例として、図1に示した合成樹脂製の袋容器10は、金型による成形として、例えばダイレクトブロー成形やインジェクションブロー成形等のブロー成形によって中空の立体形状に形成されたものである。また、袋容器10は、内容物として例えば液剤、特に毛髪洗浄剤や全身洗浄剤、液体洗剤や洗浄剤等を封入する容器として用いられ、当該袋容器10に液剤が充填収容されて、例えば使用時に開封して他の容器に内容物を詰替えるための、詰替え用の自立袋として製品化される(図2)。
【0014】
袋容器10は、容器本体11の胴部12の肩部13から突出する注出口形成部14を備えるとともに、胴部12の底部15から突出する充填口形成部16を備える。
【0015】
尚、袋容器10を形成するための合成樹脂材料としては、HDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、L−LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、OPP(延伸ポリプロピレン)等のポリオレフィン系樹脂等の軟質の合成樹脂材料、又はPET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル系樹脂等を単層として採用することができる。これらの合成樹脂と他の合成樹脂との積層樹脂を採用することもできる。例えば、LDPE又はL−LDPEを内側層とし、外側層をHDPE(高密度ポリエチレン)とする積層樹脂を採用することができる。また、EVOH樹脂(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)、EVA樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)、ナイロン樹脂等を積層した樹脂や、EVA、EVOH、ナイロン等の樹脂をPE(ポリエチレン)等の樹脂とブレンドした樹脂を採用することもできる。
【0016】
上述の合成樹脂材料を用いたブロー成形によって、容器本体11の胴部12は、当該胴部12を横断する断面において、金型のパーティングライン23を介して正面部12Aの側縁と背面部12Bの側縁とが連続することにより、楕円又は角にアールをとった長方形の中空断面形状を備えるともに、正面視及び背面視が広幅で側面視が狭幅の扁平形状に形成されている。
【0017】
袋容器10は、胴部12と境界部17を介して一体成形される底部15を概ね裁頭円錐状の反転部30とし、反転部30の先端の台座部31から充填口形成部16を突出して形成し、この充填口形成部16を切断することで円形に開口する充填口部32を形成し、充填口部32から内容物を充填収容した後に、充填口部32の封着基部33から先端側の領域を押し潰すようにして折り畳み、充填口部32を融着シールした封着シール部34を形成して内容物を封入する袋状の容器であって、充填口部32は、封着シール部34の境界部である封着基部33において、平面視して偶数角の多角形断面形状として好ましくは四角形、更に好ましくは正方形の断面形状を有しており、封着基部33よりも先端側(図1の上端側)には、円筒形状部分35と接続するようにその断面形状を変化させる先端側断面変化部36が設けられている。また、封着基部33よりも台座部31の側には、正方形の断面形状の各辺を底辺37Aとし、該底辺37Aの両端部を基点とした両側の稜線37Bを斜辺とする二等辺三角形状の平坦な三角パネル部37が、充填口部32の周方向に連設して複数(本実施例では4箇所)設けられており、充填口部32を融着シールする際に、封着基部33から先端側の領域を押し潰すようにして折り畳むことにより、融着シール後の封着シール部34の両端に、融着シール前の封着基部33の正方形の断面形状の対向する一対の角部33Aが配置される(図1(C))。
【0018】
即ち、融着シール前の充填口部32は、偶数角の多角形断面形状(正方形の断面形状)を有する封着基部33と、この封着基部33の先端側に設けられた円筒形状部分35とを備え、封着基部33と円筒状部分35との間には、封着基部33と円筒状部分35と接続するようにその断面形状を変化させる先端側断面変化部36が設けられており、封着基部33と台座部31との間には、偶数角の多角形断面形状の各辺を底辺37Aとし、これらの底辺37Aの両端部を基点とした両側の稜線37Bを斜辺とする二等辺三角形状の平坦な三角パネル部37が、充填口部32の周方向に連設して複数設けられている。
【0019】
尚、封着基部33とは、上述のように、充填口部32における融着シールを施される封着シール部34の境界部を指す。封着シールは、当該封着基部33を含み、当該封着基部33から先端側のネック溝38又はネックリング39間の円筒形状部分35で施される。融着シールを施すのが当該間であると、充填口部32を平坦に折り畳んだ状態となるように押し潰し易くなり、安定した状態で精度良く融着シールを施すことができるからである。
【0020】
更に、充填口部32の封着基部33よりも容器本体11側の部分は、4箇所の三角パネル部37の頂点を結んだ正方形の断面形状部分(偶数角の多角形断面形状部分)37Cを介して容器本体11の底部15に設けられた前述の台座部31に接続している。
【0021】
袋容器10は、容器本体11の底部15に、前述の如く、胴部12との境界段部17から先端側に向けて断面積を徐々に小さくする反転部30と、この反転部30の先端部分を覆う平坦な略楕円平面形状の台座部31を有する。底部15は、容器本体11に内容物を充填収容し、充填口部32を融着シールした封着シール部34を形成した後に、図2に示すように、反転部30を反転させるようにしながら胴部12の内側に押し込んで前記底部15に凹部を形成させることにより、胴部12との境界段部17による載置部を形成する。この載置部を介して着底させることにより、図2に示すように、内容物を封入した袋容器10を、被載置面に安定した自立状態(正立状態)で載置することが可能になる。このとき、合成樹脂製の容器本体11の胴部12及び底部15は、内容物を充填収容して自立袋として製品化された際に、安定した自立性を確保できるように、100μm以上の厚さで成形されることが好ましい。また、適度な可撓性を備えるとともに、潰したり折ったり曲げたりすることが可能で、かつ概ね平坦にすることが可能なように、例えば700μm以下の厚さ、更に好ましくは500μm以下の厚さの薄肉に成形されることが好ましい。
【0022】
袋容器10は、胴部12の肩部13の中央部分から突出する注出口形成部14に、基部20と、基部20の先端部に易破断部21を介して連設されて基部20の上端開口(注出口)を閉塞する切除予定部22を有する。基部20は、先端に向かって徐々に先細りとなった中空の略切頭円錐形状を備えている。
【0023】
注出口形成部14は、例えばこれの外周面に沿って環状にとりまくように形成された細溝状凹部を有する易破断部21によって、これより下方の基部20と、これより上方の切除予定部22とに区画される。袋容器10が自立袋として製品化された後に、易破断部21よりも先端域の切除予定部22を基部20から切り離して注出口を形成することにより、自立袋が封止状態から開放される。
【0024】
易破断部21を介して基部20の上端部に連設される切除予定部22は、円盤形状を有しており、基部20の上端開口(注出口)を覆うように配置されて基部20及び易破断部21と一体成形されることにより、注出口を閉塞する。この易破断部21には、成形用金型によるパーティングライン23に沿った直径方向(正面部12A又は背面部12Bの側縁方向)に延設して、係止穴24を有する開封つまみ片25が、円盤形状の切除予定部22の上面に一体化されて設けられている。ここで、パーティングライン23に沿った面とはパーティングライン23を含んだ仮想面のことである。
【0025】
更に、開封つまみ片25が張り出す側において注出口形成部14と隣接する胴部12の肩部13には、押えつまみ片26が、注出口形成部14と離間した状態で肩部13から突出して設けられる。
【0026】
以下、袋容器10の金型成形後の製造過程について、(A)容器供給工程、(B)充填口切断工程、(C)内容物充填工程、(D)充填口シール工程、(E)充填口反転工程の順で説明する。
【0027】
(A)容器供給工程(図3(A))
金型成形された袋容器10の容器本体11を胴部12の肩部13から容器搬送具(袴)1に挿入して保持する。容器搬送具1は、袋容器10の注出口形成部14を小径の底孔1Aに納め、袋容器10の胴部12の下半部を大径の保持孔1Bに装填し、不図示の容器供給機により容器製造ラインの容器供給ステーションで搬送コンベアに搬入される。これにより、袋容器10は容器製造ラインに供給され、搬送コンベアに沿う充填口切断ステーション、内容物充填ステーション、充填口シールステーション、充填口反転ステーションに順に位置付けられる。
【0028】
本実施例で取り扱う袋容器10は、製品寸法を容器本体11の表面幅約85mm、側面幅約30〜45mm、高さ約190mmとし、充液量を360ml(シール前満容量約450ml、底部反転後の容量約400ml)とし、容器重量を約15gとし、肉厚を400±200μm程度とし、材質をパール調HDPE外層/白色HDPE内層とし、加飾を薄肉インモールドラベル(袋容器10の表裏)(厚み50〜80μm)とする。
【0029】
尚、容器搬送具1に挿入されて保持されて容器製造ラインに供給される袋容器10は、充填口形成部16の円筒形状部分35の先端開口を搬送段階での異物混入防止のために封止して、封止部35Aとすることもできる(図4(B))。
【0030】
(B)充填口切断工程(図3(B))
容器搬送具1に挿入されて保持された袋容器10が容器製造ラインの充填口切断ステーションに位置付けられると、不図示の切断機が備えるカッター50が袋容器10の図4(A)又は(B)に示す充填口形成部16における充填口部32の円筒形状部分35をきれいに切断し、その後の内容物の充填作業と封着作業に好適となる図4(C)に示す如くの一定の平端面形状を該円筒形状部分35の切断面に付与する。
【0031】
カッター50は、図5、図6に示す如く、容器搬送具1に保持されている袋容器10の充填口形成部16における充填口部32に接する三角パネル部37の基部と、円筒形状部分35のネックリング39のそれぞれをエアシリンダ作動される下部グリッパ61と上部グリッパ62のそれぞれにより把持した状態で、鋭角に交差する2つの面51A、51Bにより形成される刃51を円筒状の充填口形成部16(円筒形状部分35)に横方向から押し付け移動して充填口形成部16を切断し、円形に開口する充填口部32を形成する。カッター50の刃51は充填口形成部16(円筒形状部分35)を相対移動して切断するものであれば良く、充填口形成部16(円筒形状部分35)を固定するものに限らず、カッター50を固定しても良いし、両者を異なる速度で相対移動させても良い。尚、後工程で、この充填口部32より袋容器10に内容物を充填した後に、該充填口部32をピンチバー83で挟むことにより平板状にし、この平板状にした充填口部32を封着して封着シール部34を形成する。
【0032】
カッター50による充填口形成部16の切断位置(図4(A)、(B)のP)は、封着シール部34の位置やシール長さS(図7(B))に応じて円筒形状部分35の軸方向の適宜位置に定める。円筒形状部分35のネック溝38は、カッター50による切断面が分厚くなって美観が損なわれるから、主として手作業による切断部分とする。
【0033】
カッター50は、図5に示す如く、振動子52に設けたホーン53の先端部に刃51をねじ止めし、刃51を袋容器10の充填口形成部16(円筒形状部分35)に横方向から押し付け移動して該充填口形成部16を切断するときに、刃51に例えば10kHz以上の微小振動を与える。これにより、刃51の充填形成部16に対する摩擦抵抗を小さくし、切れ味を鋭くする結果、充填口部32の切断面を平滑面にし、バリの発生が防止できるので外観が良好になり、切断の際に充填口形成部16へ加わる力を最小とできるので変形や破れなどのダメージを与えるおそれがなくなる。
【0034】
(C)内容物充填工程(図3(C))
容器搬送具1に挿入されて保持された袋容器10が容器製造ラインの内容物充填ステーションに位置付けられると、不図示の充填機が備える充填ノズル70が前工程で切断済の充填口部32の開口に挿入され、一定量の内容物が充填される。
【0035】
(D)充填口シール工程(図3(D))
容器搬送具1に挿入されて保持された袋容器10が容器製造ラインの充填口シールステーションに位置付けられると、シール機80が前工程で内容物を充填済の充填口部32を、図11に示す如く、封着シールして封着シール部34を形成する。
【0036】
シール機80は、図8〜図11に示す如く、ヒータ81、容器クランプ82、ピンチバー83、圧着バー84を有する。
【0037】
シール機80は、図8に示す如く、充填口部32をピンチバー83で挟むことにより平板状にし、この平板状にした充填口部32の先端部をピンチバー83の外方に露出させ、露出させた充填口部32の先端部をヒータ81により加熱し、加熱された充填口部32の先端部を圧着バー84で挟むことにより圧着して封着シール部34とする。
【0038】
ヒータ81は、図8に示す如く、充填口部32の平板状先端部の左右の平板面を左右から加熱する左右一対からなる。各ヒータ81は、金メッキされたU字状反射面を有するミラー81Aと、ミラー81Aの反射面の頂部に近接して配置されたハロゲンランプ等の熱源ランプ81Bと、熱源ランプ81Bから照射されてミラー81Aで反射されたヒートビームを透過させる透明板81Cとを有する。各ヒータ81は、熱源ランプ81Bからのヒートビームをミラー81Aの頂点に位置する充填口部32の平板状先端部に線状(集光ライン)に集光して加熱する。
【0039】
ヒータ81の加熱方式は、熱源ランプ81Bが照射する赤外線(波長0.75〜1000μmの近赤外線、中赤外線、遠赤外線を含む)を用いるものであるが、好適には近赤外線(波長0.75〜1.5μm)を用いる。近赤外線は、電磁波の一種であって、熱エネルギでなく、光エネルギであり、被加熱物に吸収される光エネルギが分子運動(振動)を誘発して生ずる熱により加熱する。
【0040】
以下、シール機80による充填口シール手順について説明する。
(1)容器搬送具1に挿入されて保持された袋容器10をシール機80に導入する(図9(A))。
【0041】
(2)袋容器10の胴部12の上半部をその外方より左右一対の容器クランプ82によって押圧し、容器本体11の空気抜きを行なう(図9(B))。
【0042】
充填口シール工程の後工程で、反転部30を打ち込み反転することで充填口部32を容器本体11の内側に落とし込むとき、容器本体11に多量の空気が入っていると、反転部30の打ち込み反転ができない。このため、充填口シール工程における封着シール部34の形成前に、容器本体11から所定量の空気抜きを行なっておくものである。例えば、左右一対の容器クランプ82の間隔を、容器本体11の側面幅と略同じ46mmから20〜28mmまで、即ち、容器本体11の側面幅の40〜60%程度まで縮め、後工程で反転部30を打ち込み反転可能にする。ここで、抜く空気の量を調整することで、袋容器10の見た目を変化させることが可能となる。例えば、ここで、抜く空気の量を多目にすると、反転部30を打ち込み反転することで充填口部32を容器本体11の内側に落とし込んだあとの袋容器10は、胴部12が僅かに窪んだ形状となり、鋭角的でスリムな見た目とすることができる。逆に、ここで、抜く空気の量を少なめ目にすると、反転部30を打ち込み反転することで充填口部32を容器本体11の内側に落とし込んだあとの袋容器10は、胴部12が僅かに膨らんだ形状となり、丸みを帯びた優しい見た目とすることができる。
【0043】
(3)袋容器10の充填口部32を左右一対のピンチバー83で挟着して平板状にし、この平板状にした充填口部32の先端部をピンチバー83の外方に露出させる(図10(A))。
【0044】
充填口部32の先端部の露出長さL(図12)は、封着シール部34のシール長さS(図7(B))に応じて調整されるが、4〜8mmが好ましく、より好ましくは5〜7mmである(図12)。
【0045】
(4)ヒータ81を待機位置から作業位置に下降させ、ヒータ81の近赤外線のヒートビームの焦点を充填口部32の上述の平板状先端部に位置合せし、充填口部32の先端部を加熱する(図10(B))。
【0046】
左右の各ヒータ81のヒートビームの焦点は、充填口部32の平板状先端部の左右の平板面の表面に位置合せし、その照射幅xは2〜3mm。ピンチバー83の上面とヒートビームの焦点との間の隙間長さyは2〜3mmが好ましい(図12)。隙間長さyを設けないと、左右一対のピンチバー83で挟着された部分まで溶解し、充填口部32がピンチバー83で挟着された部分から曲がるなどの変形をしてしまう場合がある。また、隙間長さyがこの範囲より大きくなると、充填口部32全体の高さが高くなり、胴部12の内側に押し込んでも底部より充填口部32がはみ出したり、ピンチバー83の挟着の効果が弱まり、ヒートビームの焦点が充填口部32の先端部からずれるなどにより封着が不完全になる可能性がある。
【0047】
左右の各ヒータ81による充填口部32の平板状先端部の加熱時間は、1.0〜3.5secが好ましく、より好ましくは2.0〜3.0secである。
【0048】
(5)加熱された充填口部32の先端部を左右一対の圧着バー84により挟み、この充填口部32の先端部を圧着かつ冷却して封着シール部34を形成する(図11(A))。圧着バー84の厚みz(図12)は、照射幅xの約2.0〜3.0倍が好ましい。この範囲より小さいと、封着シール部34の幅が不充分で充分なシール強度が得られない可能性があり、逆に大きすぎて圧着バー84の厚みzが、充填口部32の先端部の露出長さLを超えると、充填口部32の最先端の端部が溶解しすぎて美観が損なわれる可能性がある。本実施例では、照射幅xが2〜3mm、充填口部32の先端部の露出長さLが約6mmの状態に対して、圧着バー84の厚みzは5mmとした。このとき、圧着バー84により充填口部32の先端部を圧着する直前、例えば0.1〜0.5sec前、もしくは同時に容器クランプ82による胴部12の押圧を解除することによって、容器クランプ82により押圧された胴部12の内圧力が封着シール部34に余分な力として加わり、封着シール部34が破損することを防止する。
【0049】
圧着バー84の加圧力は、袋容器10が無い状態で左右一対の圧着バー84が閉じられた際の圧着バー84同士のクリアランス、圧着バー84の厚みz、圧着前の充填口部32の直径や厚みなどにより適宜調整される。一例として、袋容器10が無い状態で左右一対の圧着バー84が閉じられた際の圧着バー84同士のクリアランスは0.5mm、圧着バー84の厚みzは5mm、圧着前の充填口部32の直径は約25mmで厚みが約400μmの際、圧着バー84の左右それぞれの加圧力は90〜150N程度に調整される。
【0050】
圧着バー84が充填口部32の先端部を圧着かつ冷却する時間は、0.5〜2.5secが好ましく、より好ましくは1.0〜2.0secである。冷却は、15〜30℃の室温程度で十分であるが、必要に応じて、室温の空気を封着シール部34に送風したり、例えば0〜10℃の冷風を封着シール部34に送風しても良い。また、例えば5〜25℃に調整された冷却用バーを封着シール部34に接触させても良い。尚、袋容器10が無い状態で左右一対の圧着バー84が閉じられた際の圧着バー84同士のクリアランスは、袋容器10の厚みや圧着バーの加圧力により適宜調整されるが、好ましくは0.3〜1.0mmである。圧着バー84同士のクリアランスがこの範囲より小さいと、封着シール部34が圧縮されすぎて潰される危険性がある。逆にこの範囲より大きいと、封着シール部34において充分なシール強度が得られない危険性がある。
【0051】
(6)充填口部32に対するピンチバー83の挟着、圧着バー84の圧着を解除し、図7(B)に示す如くの封着シール部34の形成を完了する(図11(B))。
【0052】
本実施例のシール機80は、ヒータ81としてハイベック社の近赤外線ヒータHYL20-6MRを用い、電圧100V、定格電流6A、定格電力600W、集光ライン長を60mm、焦点距離a(図8(B))を20mmとした。ピンチバー83、圧着バー84の材質として、近赤外線を吸収しにくい材料を選択することが好ましく、ここではアルミニウムを用い、それらの昇温を防止した。
【0053】
本実施例の充填口シール工程によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)ピンチバー83で挟んだ充填口部32の先端部を露出させ、露出させた充填口部32の先端部を加熱して封着する。従って、充填口部32のピンチバー83に沿って露出する先端部をライン状の平端部とし、このライン状の平端部を集中的に加熱する。充填口部32の先端部を短時間で効率良く加熱し、強靭な封着シール部34とする。
【0054】
(b)近赤外線を充填口部32の先端部に照射することにより、光エネルギ(熱エネルギではない)が被加熱部で吸収されて分子運動(振動)を誘発して発熱する。充填口部32の先端部を短時間で効率良く加熱し、強靭な封着シール部34とする。
【0055】
(c)ピンチバー83上面とヒートビームの焦点との間に隙間長さを設けることで、左右一対のピンチバー83で挟着された部分まで溶解し、充填口部32がピンチバー83で挟着された部分から曲がるなどの変形をしてしまうことを防止できる。
【0056】
(d)加熱された充填口部32の先端部を圧着バー84で挟むことにより圧着する。これにより、充填口部32の先端部を確実に圧着し、安定的に強靭な封着シール部34とする。
【0057】
(E)充填口反転工程(図3(E))
容器搬送具1に挿入されて保持された袋容器10が容器製造ラインの充填口反転ステーションに位置付けられると、反転装置90が反転部30を打ち込み反転し、充填口部32を容器本体11の底部15の内側に落とし込む(図13)。これにより、袋容器10は、容器本体11の底部15に凹部を形成させ、底部15に胴部12との境界部17による載置部を形成し、容器本体11の積み重ね性、包装箱への収納性、美的外観性を向上する。
【0058】
袋容器10は、充填口反転工程までの前工程で、容器本体11から反転部30を介して突出する充填口部32より容器本体11に内容物を充填され(内容物充填工程)、充填口部32をピンチバー83で挟むことにより平板状にし、この平板状にした充填口部32を封着して封着シール部34を形成している(充填口シール工程)。そして、充填口シール工程では、前述した如く、容器本体11をその外方より押圧してから、充填口部32の封着シール部34を形成し、充填口反転工程における反転部30の打ち込み反転の確実を図っている。
【0059】
反転装置90は、図14〜図17に示す如く、容器クランプ91、打ち込みガイド92、打ち込みヘッド93を有する。
【0060】
以下、反転装置90による充填口反転手順について説明する。
(1)容器搬送具1に挿入されて保持された袋容器10を反転装置90に導入する(図14(A))。
【0061】
(2)容器本体11の胴部12の上端部(底部15との境界部17の側)を左右一対の打ち込みガイド92により挟持し、容器本体11を位置決めする(図14(B))。
【0062】
(3)容器本体11の反転部30から離れた部分、本実施例では胴部12の上半部を左右一対の容器クランプ91によって外方より適度に押圧し、容器本体11の内圧力を高める(図15(A))。打ち込みヘッド93が加える打ち込み力が容器本体11を座屈させないように、容器本体11に予め適度の内圧力を付与するものである。
【0063】
(4)容器クランプ91による上述(3)の容器本体11の押圧状態を維持しつつ、打ち込みヘッド93により、反転部30と充填口部32の間に形成されている台座部31(充填口周辺部)を容器本体11の内側に押し込み、反転部30を打ち込み反転する(図15(B))。
【0064】
尚、本実施例では、打ち込みヘッド93が押し込む充填口周辺部を台座部31としたが、この充填口周辺部は反転部30の裁頭円錐状面内の頭部側部分であっても良い。
【0065】
打ち込みヘッド93は、図18、図19に示す如く、先細の先端テーパ状をなして台座部31を押し込む押し込み部93Aと、押し込み部93Aの中央に設けられて台座部31の中央に突出する充填口部32(封着シール部34、円筒形状部分35、先端側断面変化部36、三角パネル部37を含む)を受容する孔部93Bを備える。打ち込みヘッド93の打ち込み部93Aの長さH(図18)は、反転部30の打ち込み深さd(図18)(底部15の境界部17に対して打ち込まれた台座部31の高さ)の1.05〜1.50倍とすることが好ましく、より好ましくは1.15〜1.40倍とする。Hを1.05倍以上とすることで打ち込みが十分なものとなり、打ち込み終了後に反転部30が外方に戻り変形して膨らみ状をなすことが予防できる。Hを1.50倍以下、より好ましくは1.40倍以下とすることで容器本体11の保持が確実なものとなり、容器本体11が容器クランプ91から外れて落下したり、容器本体11が容器クランプ91にこすれて傷ついたり、封着シール部34が破れるなどの不具合の予防ができる。打ち込みヘッド93の孔部93Bの縦幅w1(図19)は、封着シール部34の長さj(図13(A))の1.05倍以上が好ましく、より好ましくは1.2倍以上である。w1が1.05倍以上であれば、封着シール部34が孔部93Bに入るのを阻止でき、封着シール部34が折れたり、根元から曲がり、封着シール部34及びその周辺が破損することなどの不具合の予防ができる。打ち込みヘッド93の孔部93Bの横幅w2(図19)は、封着シール部34の厚みk(図13(A))の1.05〜5.0倍が好ましく、より好ましくは1.5〜3.0倍である。w2を5.0倍より小さくすることで、打ち込み部93Aの先端面の面積が確保され打ち込みが確実になり、w2を1.05倍以上とすることで、封着シール部34が孔部93Bに確実に入り、封着シール部34が折れたり、根元から曲がり、封着シール部34及びその周辺が破損するなどの不具合の予防ができる。
【0066】
尚、打ち込みヘッド93が台座部31を押し込んで反転部30を打ち込み反転するに先立ち、図20に示す如く、左右の押し込みバー94により反転部30の左右の裁頭円錐状側部を押し込み、容器本体11の内側に向かう窪みRを形成する。これによって反転部30の左右の側部に形成される窪みR(図20(B))は、底部15の境界部17に沿うように設けられ、胴部12よりも周長が短い故に厚く硬い反転部30が打ち込みヘッド93により押し込まれて反転するときの反転ガイドラインとして機能するものになる。
【0067】
(5)容器クランプ91による容器本体11の押圧を解除し(図16(A))、続いて打ち込みガイド92による挟持を解除する(図16(B))。容器クランプ91と打ち込みガイド92の解除の順序をこうすることで、容器本体11の姿勢の乱れを防止でき、反転部30が外方に戻り変形して膨らみ状をなす現象を防ぐことができる。
【0068】
(6)打ち込みヘッド93による押し込みを解除し、反転部30の打ち込み反転を完了する(図13(B)、図17)。容器クランプ91と打ち込みガイド92の解除後に打ち込みヘッド93を解除することで、反転部30が外方に戻り変形して膨らみ状をなすことが予防できる。
【0069】
本実施例の充填口反転工程によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)容器本体11の充填口部32を封着する前に、容器本体11の標準外形をその外方より押圧し、後工程で容器本体11の内側に充填口部32が落とし込まれる落とし込み容積に対応する空気量を予め容器本体11から排出しておく。これにより、充填口部32の落とし込み容積に対応する空気量を排出した容器本体11の充填口部32を封着した後に、充填口部32を容器本体11の内側に抵抗なく安定的に落とし込みできる。そして、充填口部32を落とし込んだ後の容器本体11は標準の外形を呈するものになる。
【0070】
(b)容器本体11の反転部30と充填口部32の間に充填口周辺部としての台座部31が形成され、この台座部31を容器本体11の内側に押すことで反転部30を反転させる。充填口周辺部としての台座部31を押すことで、封着シール部34を含む充填口部32を損傷することなく、反転部30を確実に反転させ、充填口部32を容器本体11の内側に落とし込みできる。
【0071】
(c)上述(b)の充填口周辺部としての台座部31を押すに際し、容器本体11の内圧力を高めた状態としておくことにより、台座部31を押す力によって容器本体11を座屈させることなく、反転部30を確実に反転させることができる。
【0072】
(d)上述(c)の容器本体11の反転部30から離れた部分としての胴部12の上半部を外方より押圧することにより、容器本体11の内圧力を確実に高めた状態としておくことができる。
【0073】
(e)上述(c)、(d)の反転部30に容器本体11の内側に向かう窪みRを形成しておくことにより、反転部30を容易に反転させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、単一素材からなる容器の充填口部でも、短時間で効率良く、強靭な封着シール部を形成するができる。
【符号の説明】
【0075】
10 容器
11 容器本体
16 充填口形成部
30 反転部
31 台座部(充填口周辺部)
32 充填口部
34 封着シール部
50 カッター
51 刃
51A、51B 刃の面
52 振動子
53 ホーン
70 充填ノズル
80 シール機
81 ヒータ
82 容器クランプ
83 ピンチバー
84 圧着バー
90 反転装置
91 容器クランプ
92 打ち込みガイド
93 打ち込みヘッド
94 押し込みバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填口部をピンチバーで挟むことにより平板状にし、この平板状にした充填口部を封着する容器のシール方法であって、
ピンチバーで挟んだ充填口部の先端部を露出させ、露出させた充填口部の先端部を加熱して封着する容器のシール方法。
【請求項2】
前記露出させた充填口部の先端部を赤外線の照射により加熱する請求項1記載の容器のシール方法。
【請求項3】
前記露出させた充填口部の先端部を赤外線の照射により加熱する際に、ピンチバー上面とヒートビームの焦点との間に隙間長さを設ける請求項1又は2に記載の容器のシール方法。
【請求項4】
前記加熱された充填口部の先端部を圧着バーで挟むことにより圧着する請求項1又は2又は3に記載の容器のシール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−159073(P2010−159073A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2785(P2009−2785)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】