説明

容器のシール部材

【課題】低温シール性に優れて、開口部から燃料の浸透の少ない容器のシール部材を提供する。
【解決手段】容器の開口部10と開口部を塞ぐ蓋体との間をシールするシール部材50において、シール部材50は、開口部10の周囲に取付けられるよう環状に形成されるとともに、シール芯材51と、シール芯材51と別体で形成されシール芯材の外面に取付けられシール芯材を覆うシール被覆材52とから形成される。シール芯材51は、低温シール性に優れた材料で、断面形状が円形又は楕円形に形成される。シール被覆材52は、容器内の気体又は液体の透過性の低い材料で形成され、断面形状がシール芯材51の外形に対応した円形又は楕円形の中空状に形成されるとともに、外周側面にシール被覆材開口部53が形成され、シール被覆材開口部53からシール芯材51が嵌挿された容器のシール部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の燃料タンク等の容器の開口部とその開口部を塞ぐ蓋体との間をシールするゴム等の弾性体で形成されたシール部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の燃料タンクの構造としては、金属製のものが用いられていたが、近年、車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性合成樹脂製のものが用いられるようになってきた。
【0003】
この燃料タンク1等の容器においては、図7に示すように、容器内に機構部品を取付けるための開口部10が形成されて、この開口部10を塞ぐために蓋体40が取付けられるが、この蓋体40は、容器内の機構部品の点検修理等のため着脱自在に取付けられる。燃料タンク1等の容器内の燃料の蒸発ガスが開口部10から大気中に発散されることを防止するために、ゴム等で形成された環状のシールリング等のシール部材が使用されている。
【0004】
このシール部材は、シール性を確実なものにするために、低温時のシール性とシール部材からの耐燃料透過性の両方を満足させる必要がある。
耐燃料透過性の優れたゴムとしてはフッ素系ゴムが使用されるが、フッ素系ゴムは低温においては弾力性が低下して、シール性が低下することが知られている。又、フッ素系ゴムは高価であり、コストアップとなってしまうこととなる。
【0005】
また、低温特性の優れたゴムとしてはアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等が知られているが、耐燃料透過性については十分ではなかった。
このため、低温シール性と耐燃料透過性を満足させるために各種の提案がなされているが、例えば、図8に示すように、シール部材150に2種類の材料を使用するものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
即ち、図8においては、燃料タンクの開口部110の溝部111にシールリングであるシール部材150を取り付け、蓋体140との間をシールしている。シール部材150は環状に形成され、断面形状は円形の本体151と、その内周側面に透過防止材部152が一体的に形成されている。
【0007】
シール部材150が燃料タンクの開口部110の溝部111に取付けられたときは、蓋体140により圧縮されて、断面形状が楕円形となり、透過防止材部152が燃料タンク1の内部側に位置する。そのため、燃料タンク1の内部からの燃料の蒸発ガスの浸透を防止して、蒸発ガスが大気中に発散されることを防止することができる。
【0008】
しかしながら、シール部材150の本体151は低温シール性の優れた材料で形成され、透過防止材部152は燃料透過性の低い材料で形成されるため、両者の材料が異なり、両者を一体的に接着させることが困難であり、接着させるためには成形と接着工程が複雑となり、手間とコストが増加してしまうこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−16626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、本発明は、低温シール性に優れて、開口部から燃料の浸透の少ない容器のシール部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、容器の開口部と該開口部を塞ぐ蓋体との間をシールするシール部材において、
シール部材は、開口部の周囲に取付けられるよう環状に形成されるとともに、シール芯材と、シール芯材と別体で形成されシール芯材の外面に取付けられシール芯材を覆うシール被覆材とから形成され、
シール芯材は、低温シール性に優れた材料で、断面形状が円形又は楕円形に形成され、
シール被覆材は、容器内の気体又は液体の透過性の低い材料で形成され、断面形状がシール芯材の外形に対応した円形又は楕円形の中空状に形成されるとともに、外周側面にシール被覆材開口部が形成され、シール被覆材開口部からシール芯材が嵌挿されたことを特徴とする容器のシール部材である。
【0012】
請求項1の本発明では、シール部材は、容器の開口部の周囲に取付けられるよう環状に形成されるとともに、シール芯材と、シール芯材と別体で形成されシール芯材の外面に取付けられシール芯材を覆うシール被覆材とから形成される。このため、シール芯材とシール被覆材とを別々の材料で形成することができるとともに、それぞれの成形が容易であり、成形後にシール被覆材を取付けるため製造が容易である。また、環状に形成されて容器の開口部の周囲を確実に塞いで、蓋体により圧縮変形して、シールすることができる。
【0013】
シール芯材は、低温シール性に優れた材料で、断面形状が円形又は楕円形に形成されている。このため、シール部材が低温時にシール性を確保することができるとともに、開口部と蓋体との間に挟持されて円形又は楕円形の頂部が撓み、弾性的に当接してシールすることができる。
【0014】
シール被覆材は、容器内の気体又は液体の透過性の低い材料で形成され、断面形状がシール芯材の外形に対応した円形又は楕円形の中空状に形成される。このため、シール被覆材がシール部材を環状の全周に亘り覆うことができるとともに、シール被覆材の内部にシール芯材を保持して、シール部材に容器内の気体又は液体が浸透することを防止して、容器の内部の気体又は液体が大気中に発散することを防止できる。
【0015】
シール被覆材は、外周側面にシール被覆材開口部が形成され、シール被覆材開口部からシール芯材が嵌挿されたため、シール芯材をシール被覆材に嵌め込むことが容易であり、シール部材の製造が容易である。また、シール被覆材開口部がシール被覆材の環状の外周側面に形成されたため、シール芯材の環状の内周側面をシール被覆材で覆い、シール部材に容器内の気体又は液体が浸透することを防止することができる。
【0016】
請求項2の本発明は、シール被覆材は、シール被覆材開口部と断面の反対側である内周側面にシール被覆材突起部が形成された容器のシール部材である。
【0017】
請求項2の本発明では、シール被覆材は、シール被覆材開口部と断面の反対側である内周側面にシール被覆材突起部が形成されたため、シール被覆材の剛性を大きくすることができ、シール芯材をシール被覆材にはめ込むときに、シール被覆材のねじれを防止することができる。また、開口部と蓋体に突起部が接触することがなく、シール部材のシール性を確保することができる。
【0018】
請求項3の本発明は、シール被覆材突起部は、シール被覆材の本体とはシール被覆材連結部で連結されるとともに、その断面が板状、中実の円形又は楕円形に形成された容器のシール部材である。
【0019】
請求項3の本発明では、シール被覆材突起部は、シール被覆材の本体とはシール被覆材連結部で連結されるとともに、その断面が板状、中実の円形又は楕円形に形成された。このため、シール被覆材連結部によりシール被覆材の柔軟性を保持しつつ、シール被覆材のねじれを防止する剛性を大きくすることができるとともに、シール被覆材連結部の部分が薄肉であるため、シール被覆材突起部の重量を軽減することができる。
【0020】
請求項4の本発明は、シール被覆材突起部は、シール被覆材の本体とシール被覆材連結部で連結されるとともに、その断面が中空の円形又は楕円形に形成され、シール被覆材連結部は、その間に空間を有する上下2枚の板状に形成され、シール被覆材の本体の上面、シール被覆材連結部の上面、シール被覆材突起部、シール被覆材連結部の下面、シール被覆材の本体の下面の順に1連の連続した板状に形成された容器のシール部材である。
【0021】
請求項4の本発明では、シール被覆材突起部は、シール被覆材の本体とシール被覆材連結部で連結されるとともに、その断面が中空の円形又は楕円形に形成された。このため、シール被覆材連結部によりシール被覆材の柔軟性を保持しつつ、シール被覆材のねじれを防止する剛性を大きくすることができるとともに、シール被覆材突起部の断面が中空であるため、シール被覆材突起部の重量を軽減することができる。
シール被覆材連結部は、その間に空間を有する上下2枚の板状に形成されたため、シール被覆材連結部がシール被覆材開口部の開口のときに開き開きやすく、シール芯材をシール被覆材に挿入しやすい。
【0022】
シール被覆材は、シール被覆材の本体の上面、シール被覆材連結部の上面、シール被覆材突起部、シール被覆材連結部の下面、シール被覆材の本体の下面の順に1連の連続した板状に形成されている。このため、1回の成形でシール被覆材を形成することができ製造が容易であるとともに、シール被覆材の突起部の部分がヒンジの役割をしてシール被覆材開口部が開きやすく、シール芯材をシール被覆材に組付けることが容易である。
【0023】
請求項5の本発明は、シール被覆材は、断面形状において環状の内周側面の肉厚が上下側面の肉厚より厚く形成された容器のシール部材である。
【0024】
請求項5の本発明では、シール被覆材は、断面形状において環状の内周側面の肉厚が上下側面の肉厚より厚く形成されたため、容器の開口部にシール部材を装着したときに、容器内の気体又は液体が接触するシール被覆材の部分を厚くして、浸透を防止することができる。また、シール被覆材の柔軟性を確保しシール芯材とともに撓みやすく、高価なシール被覆材の材料を節約することができる。
【0025】
請求項6の本発明は、シール被覆材は、肉厚が0.05〜0.2mmの厚さで形成された容器のシール部材である。
【0026】
請求項6の本発明では、シール被覆材は、肉厚が0.05〜0.2mmの厚さで形成されたため、容器内の気体又は液体が浸透することを確実に防止することができる。シール被覆材の肉厚が0.05mm未満の場合は、容器内の気体又は液体の浸透防止が不充分であり、肉厚が0.2mmを越える場合には、シール部材の柔軟性が低下する。
【0027】
請求項7の本発明は、シール被覆材開口部は、先端がシール被覆材開口部の外方に開くように湾曲して形成された容器のシール部材である。
【0028】
請求項7の本発明では、シール被覆材開口部は、先端がシール被覆材開口部の外方に開くように湾曲して形成されたため、シール芯材をシール被覆材にはめ込むときに、シール被覆材開口部の外方に湾曲した部分にシール芯材を当接し、滑らせてシール被覆材内に嵌め込むことができ、シール部材の製造が容易である。
【0029】
請求項8の本発明は、シール部材は、自動車の燃料タンクの開口部とその開口部を塞ぐ蓋体の間をシールするシール部材である。
【0030】
請求項8の本発明では、シール部材は、自動車の燃料タンクの開口部とその開口部を塞ぐ蓋体の間をシールするシール部材であるため、多様な環境においても燃料タンクの開口部からガソリン等の燃料蒸気の大気への発散を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0031】
シール部材は、シール芯材とシール被覆材とから形成されるため、シール芯材とシール被覆材とを別々の材料で形成することができる。
シール芯材は、低温シール性に優れた材料で形成されているため、シール部材が低温時にシール性を確保することができる。シール被覆材は、気体又は液体の透過性の低い材料で全体形状が環状に形成されるため気体又は液体が浸透することを防止できる。シール被覆材は、環状の外周側面にシール被覆材開口部が形成され、シール被覆材開口部からシール芯材が嵌挿されたため、シール被覆材開口部からシール芯材をシール被覆材に嵌め込むことが容易であり製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるシール部材の断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態であるシール部材の断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態であるシール部材の断面図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態であるシール部材の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態であるシール部材を開口部の蓋体を係止する部分に取付けた構造を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態であるシール部材を開口部の蓋体を係止する部分に取付けた構造を示す部分断面図である。
【図7】燃料タンクの斜視図である。
【図8】従来のシール部材を開口部の蓋体を係止する部分に取付けた構造を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態であるシール部材50について、図1〜図7に基づき説明する。
まず、図1〜図4に基づき、本発明の第1から第4の実施の形態のシール部材50について説明し、容器の開口部10に本発明のシール部材50を装着した場合の働きについても、自動車の燃料タンク1の開口部10を例にとり説明する。なお、本発明は自動車の燃料タンク1のみならず、容器の開口部10に広く使用することができる。
【0034】
燃料タンク1は図7に示すように、燃料タンク1内部に燃料ポンプ(図示せず)等を装着するための開口部10と、その開口部10を塞ぐ蓋体40が設けられている。蓋体40には燃料をエンジンに送付する燃料パイプ6が取り付けられるとともに、燃料ポンプを駆動する電線等も取付けられている。また、燃料タンク1内の気圧を調整するパイプや燃料タンク1に燃料を注入するフィラパイプ5も取付けられている。本発明は、これ等の開口部10をシールするシール部材50に関するものである。
【0035】
まず、本発明のシール部材50の第1の実施の形態について図1に基づき説明する。
シール部材50は、取付けられる容器である燃料タンク1の開口部10の形状に合わせて開口部10の全周に取付けられるように環状に形成される。本発明の実施の形態では、円形の開口部10のためシール部材50は円形のリング状に形成される。
【0036】
シール部材50は、シール芯材51とシール被覆材52とから形成される。シール芯材51とシール被覆材52とは、別体で別の材料で形成される。別体で形成するため、それぞれの成形が容易であり、シール被覆材52は、シール芯材51の外面に取付けられように、成形後にシール被覆材52をシール芯材51に取付けるため、製造が容易である。シール芯材51とシール被覆材52とを別々の材料で形成することができるため、それぞれの材料の選択の幅を広げることができる。それぞれの材料の具体的例については後述する。
【0037】
シール芯材51は、低温シール性に優れた材料で、開口部10の周囲に取付けられるように環状に形成される。シール芯材51の断面形状が円形又は楕円形に形成される。シール芯材51の断面形状が円形又は楕円形であるため、開口部10に取付けられたときに、開口部10と蓋体40により圧縮変形して、その間をシールすることができる。
【0038】
シール被覆材52は、容器内の気体又は液体の透過性の低い材料で膜状に形成され、全体形状がシール芯材51に合わせて環状に形成され、断面形状がシール芯材51を覆うようにシール芯材51の外形に対応して円形又は楕円形の中空状に形成される。中空状のため内部にシール芯材51を収納する。シール芯材51は低透過性の材料で形成されているため、シール部材50に燃料タンク1内の燃料の気体又は液体が浸透することを防止して、燃料タンク1の内部の気体又は液体が大気中に発散することを防止できる。
【0039】
シール被覆材52は、環状の外周側面(図1においは左側)にシール被覆材開口部53が形成され、シール被覆材開口部53からシール芯材51が嵌挿される。シール被覆材開口部53をシール芯材51に当てて、シール被覆材開口部53からシール芯材51をシール被覆材52に嵌め込むことが容易であり、シール部材50の製造が容易である。また、シール被覆材開口部53がシール被覆材52の環状の外周側面に形成されたため、シール芯材51の環状の内周側面をシール被覆材52で覆い、シール芯材51に容器内の気体又は液体が浸透することを防止することができる。
【0040】
シール被覆材52のシール被覆材開口部53は、断面形状において、先端がシール被覆材開口部53の外方に開くように湾曲して形成されている。このため、シール芯材51をシール被覆材52にはめ込むときに、シール被覆材開口部53の外方に開くように湾曲した部分にシール芯材51を当接し、湾曲した部分を滑らせてシール被覆材52内に嵌め込むことができ、シール芯材51の嵌め込みが容易である。
【0041】
シール被覆材52は、膜状に形成され、断面形状において環状の内周側面(図1において右側)の肉厚が上下面(図1において上下側)の肉厚より厚く形成されている。シール部材50を容器の開口部に装着したときに、容器内の気体又は液体が浸透するシール被覆材52の部分、即ち、環状の内周側面を厚くして、浸透を防止することができる。また、上下面を薄く形成したため、シール被覆材52の柔軟性を確保しシール芯材51とともに撓みやすくして、高価なシール被覆材52の材料を節約することができる。
【0042】
シール被覆材52は、肉厚が0.05〜0.2mmの厚さで形成され、薄肉の部分でも0.05mm以上を有し、厚肉部分でも0.2mm以下である。この肉厚で形成されたため、シール部材50を燃料タンク1等の容器の開口部に装着したときに容器内の気体又は液体が浸透することを確実に防止することができる。シール被覆材52の肉厚が0.05mm未満の場合は、容器内の気体又は液体の浸透の防止が不充分であり、肉厚が0.2mmを越える場合には、シール被覆材52の剛性が大きいためシール部材50の柔軟性が低下する。
【0043】
シール芯材51の材料は、低温時の弾性に優れてシール部材50の低温シール性を確保できる材料が使用される。例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのポリマーブレンド(NBR+PVC)、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム(H−NBR)、シリコーンゴム(Q)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)等を使用することができる。
【0044】
シール被覆材52の材料は、燃料タンク1等の容器内に収納された燃料又はその蒸発気体である液体や気体の浸透性の低い材料が使用される。例えば、フッ素系樹脂として、テトラフロロエチレン・ヘキサフロロポリプロピレン・ビニリデンフォロライド共重合体(THV)、ポリエチレンテトラフロロエチレン(ETFE)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン樹脂(PFA)等を使用することができ、ポリアミド系樹脂として、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド6(PA6)等を使用することができる。また、ポリアセタール樹脂(POM)やポリブチレンナフタレート(PBM)等も使用することができる。
【0045】
次に、図5と図6に基づいて、本発明の第1の実施の形態を燃料タンク1の開口部10に取付けた状態について説明する。
本発明の実施の形態では、燃料タンク1は、図7に示すように、燃料タンク1とその本体に燃料ポンプ(図示せず)等を出し入れするために開口部10が形成されている。
【0046】
燃料タンク1は、ブロー成形で形成され、その外壁は、外層2、内層3及び外層2と内層3との間に形成される中間層4の3層から構成されている。ブロー成形においては、上記の3層から構成されるパリソンが使用される。なお、剛性と耐燃料透過性を有する材料を使用すれば1層で形成することもできる。
外層2と内層3は、強度が高く燃料油に対しても強度が維持される熱可塑性合成樹脂から形成され、中間層4は、燃料油の透過が極めて少ない熱可塑性合成樹脂から形成されている。
【0047】
図6に示すように、開口部10は、燃料タンク1の上面に形成され、開口部10は蓋体40が取付けられ、係止されている。
開口部10における蓋体40の係止構造は、図6に示すように、蓋体40を開口部10に埋設された蓋係止部材(係止リング)30と取付部材(ロックプレート)20で挟持している。
【0048】
燃料タンク1の開口部10は、燃料タンク1から同じ材料で一体的に連続して、外方に延出して形成されている。開口部10の筒状部11には、係止リング30が埋設されている。
係止リング30は、金属板で構成され、屈曲した略円筒状に形成されている。
蓋体40は、略円盤状に形成され、下面に開口部10の内周に沿って突出するフランジ部41が形成され、蓋体40のずれを防止している。
【0049】
蓋体40を挟持するロックプレート20は、リング状で断面形状が平板状の上平板部22から縦壁部23が延設され、縦壁部23の先端から水平方向に係合爪部24が延設されている。開口部10に埋設される係止リング30には、係合爪部24に対応する部分に係止孔32が形成されている。この係止孔32に係合爪部24が挿入され、係合爪部24が係止リング30の係止面31に係止され、蓋体40を係止することができる。
【0050】
ロックプレート20は、燃料タンク1の開口部10を塞ぐ蓋体40の周囲を開口部10に押圧し、開口面と平行な平面を有する環状の上平板部22が形成され、ロックプレート20を係止リング30に取付けたときに、蓋体40の全周囲を上平板部22で押圧することができ、蓋体40を開口部10に密着させることができ、シール性を確保できる。
上平板部22の開口部10の中心側の先端から屈曲して上縦壁部21が延設され、ロックプレート20の先端が蓋体40に引っかかることなく円滑に蓋体40を押圧している。
【0051】
図5に示すように、開口部10には筒状部11の先端に蓋体40が当接する開口端部12が形成され、開口端部12にシール部材50を装着する溝部17が形成されている。
シール部材50を溝部17に装着して、燃料タンク1の開口部10を塞ぐ蓋体40を嵌めて、上述のようにロックプレート20を回動して蓋体40を押圧して固定すると、蓋体40の裏面はシール部材50を押圧して、図5に示すように、シール部材50は楕円形に圧縮される。開口部10の全周を囲むように装着されたシール部材50により、開口部10と蓋体40の間がシールされる。
【0052】
上述のとおり、シール部材50は、シール芯材51と、シール芯材51と別体で形成されシール芯材51の外面に取付けられるシール被覆材52とから形成されている。
シール芯材51は、低温シール性に優れた材料で、開口部10の周囲に取付けられる環状に形成されるとともに断面形状が円形又は楕円形に形成されている。このため、シール部材50が低温時においても弾力性を失わずに、蓋体40により圧縮変形して、蓋体40の裏面と開口部10との間のシール性を確保することができるとともに、開口部10の周囲を確実に塞いで、シールすることができる。
【0053】
燃料タンク1から燃料の気体又は液体が開口部10に到達しても、開口部10の開口端部12には、燃料透過性の低い中間層4が存在し、さらにシール部材50の燃料透過性の低いシール被覆材52により、シール部材50に燃料タンク1内の気体又は液体が浸透することを防止して、燃料の気体又は液体が大気中に発散することを防止できる。
【0054】
このとき、シール被覆材52は、環状の外周側面にシール被覆材開口部53が形成されている。このため、蓋体40の圧縮によりシール被覆材52はシール被覆材開口部53の開閉によりシール芯材51とともに撓むことができるとともに、シール被覆材開口部53からシール部材50に燃料タンク1内の気体又は液体が浸透することを防止することができる。
【0055】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図2に基づき説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態とはシール被覆材52の形状が異なり、他の部分は第1の実施の形態と同様であるため、異なる部分に付いて説明し、同様な部分の説明は省略する。
第2の実施の形態では、シール被覆材52は、シール被覆材開口部53と断面の反対側である環状の外周側面に突起部が形成されている。
【0056】
本発明の第2の実施の形態では、図2に示すように、シール被覆材52のシール被覆材突起部は、その断面が板状に形成されたシール被覆材リブ55として形成され、シール被覆材リブ55をシール被覆材52の本体と連結するシール被覆材連結部54で形成されている。シール被覆材リブ55は、シール被覆材52の本体の内周側に環状に形成され、シール被覆材連結部54とで断面T字形に形成されている。
【0057】
シール被覆材52は、シール被覆材開口部53と断面の反対側である環状の外周側面にシール被覆材リブ55が形成されたため、シール芯材51をシール被覆材52の内部に挿入するときに、挿入の邪魔にはならずに、シール被覆材52の剛性を増加させて、ねじれを防止することができる。また、シール被覆材開口部53と蓋体40に突起部が接触することがなく、シール部材50のシール性を確保することができる。さらに、シール被覆材連結部54は薄肉で形成されているため、シール被覆材52の柔軟性を保持しつつ、突起部の全体の重量を軽減することができる。
【0058】
次に、本発明の第3の実施の形態について、図3に基づき説明する。第3の実施の形態は、第2の実施の形態とはシール被覆材52の形状が異なり、他の部分は第2の実施の形態と同様であるため、異なる部分に付いて説明し、同様な部分の説明は省略する。
第3の実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、シール被覆材52は、シール被覆材開口部53と断面の反対側である環状の外周側面にシール被覆材突起部が形成されている。
【0059】
本発明の第3の実施の形態では、図2に示すように、シール被覆材52のシール被覆材突起部は、その断面が中実の円形又は楕円形に形成されたシール被覆材中実部56として形成され、シール被覆材リブ55をシール被覆材52の本体と連結するシール被覆材連結部54で形成されている。シール被覆材中実部56は、シール被覆材52の本体の内周側に環状に形成されている。シール被覆材中実部56は、断面が円形又は楕円形に形成に形成されたため成形が容易である。
【0060】
シール被覆材52は、第2の実施の形態と同様に、シール被覆材開口部53と断面の反対側である環状の外周側面にシール被覆材中実部56が形成されたため、シール芯材51をシール被覆材52の内部に挿入するときに、挿入の邪魔にはならずに、シール被覆材52の剛性を増加させて、ねじれを防止することができる。また、シール被覆材開口部53と蓋体40にシール被覆材中実部56が接触することがなく、シール部材50のシール性を確保することができる。さらに、シール被覆材連結部54は薄肉で形成されているため、シール被覆材52の柔軟性を保持しつつ、シール被覆材52の全体の重量を軽減することができる。
【0061】
次に、本発明の第4の実施の形態について、図4に基づき説明する。第4の実施の形態は、第2の実施の形態とはシール被覆材52の形状が異なり、他の部分は第2の実施の形態と同様であるため、異なる部分に付いて説明し、同様な部分の説明は省略する。
第4の実施の形態では、第3の実施の形態と同様に、シール被覆材52は、シール被覆材開口部53と断面の反対側である環状の外周側面にシール被覆材突起部が形成されている。
【0062】
第4の実施の形態は、シール被覆材連結部54は、その間に空間を有する上下2枚の板状に形成され、シール被覆材突起部は、中空状のシール被覆材中空部57として形成され、その断面が中空の円形又は楕円形に形成され、シール被覆材52の本体とシール被覆材連結部54で連結されるとともに、断面形状がシール被覆材52の本体と1枚の連続した板状に形成されている。
【0063】
即ち、シール被覆材52の本体の上面、シール被覆材連結部54の上面、シール被覆材中空部57、シール被覆材連結部54の下面、シール被覆材52の本体の下面の順に1枚の連続した板状に形成された容器のシール部材である。シール被覆材連結部54の上面とシール被覆材連結部54の下面とは離れて平行に形成された2枚の板状に形成されている。
【0064】
第4の実施の形態では、シール被覆材52のシール被覆材中空部57は、シール被覆材52の本体と2枚のシール被覆材連結部54で連結されるとともに、その断面が中空の円形又は楕円形に形成された。このため、シール被覆材連結部54によりシール被覆材52の柔軟性を保持しつつ、シール被覆材52のねじれを防止する剛性を大きくすることができるとともに、シール被覆材中空部57の断面が中空であるため、シール被覆材中空部57の重量を軽減することができる。
【0065】
シール被覆材52は、シール被覆材52の本体の上面、シール被覆材連結部54の上面、シール被覆材中空部57、シール被覆材連結部54の下面、シール被覆材52の本体の下面の順に1枚の連続した板状に形成されている。このため、1回の成形でシール被覆材52を形成することができ製造が容易であるとともに、シール被覆材52のシール被覆材中空部57の部分がヒンジの役割をしてシール被覆材開口部53が開きやすく、シール芯材51をシール被覆材52に組付けることが容易である。
【符号の説明】
【0066】
1 燃料タンク本体
10 開口部
40 蓋体
50 シール部材
51 シール芯材
52 シール被覆材
53 シール被覆材開口部
54 シール被覆材連結部
55 シール被覆材リブ
56 シール被覆材忠実部
57 シール被覆材中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の開口部と、該開口部を塞ぐ蓋体との間をシールするシール部材において、
該シール部材は、上記開口部の周囲に取付けられるよう環状に形成されるとともに、シール芯材と、該シール芯材と別体で形成されシール芯材の外面に取付けられ上記シール芯材を覆うシール被覆材とから形成され、
上記シール芯材は、低温シール性に優れた材料で、断面形状が円形又は楕円形に形成され、
上記シール被覆材は、上記容器内の気体又は液体の透過性の低い材料で形成され、断面形状が上記シール芯材の外形に対応した円形又は楕円形の中空状に形成されるとともに、外周側面にシール被覆材開口部が形成され、該シール被覆材開口部から上記シール芯材が嵌挿されたことを特徴とする容器のシール部材。
【請求項2】
上記シール被覆材は、シール被覆材開口部と断面の反対側である内周側面にシール被覆材突起部が形成された請求項1に記載の容器のシール部材。
【請求項3】
上記シール被覆材突起部は、上記シール被覆材の本体とはシール被覆材連結部で連結されるとともに、その断面が板状、中実の円形又は楕円形に形成された請求項2に記載の容器のシール部材。
【請求項4】
上記シール被覆材突起部は、上記シール被覆材の本体とシール被覆材連結部で連結されるとともに、その断面が中空の円形又は楕円形に形成され、上記シール被覆材連結部は、その間に空間を有する上下2枚の板状に形成され、上記シール被覆材の上面、シール被覆材連結部の上面、上記シール被覆材突起部、シール被覆材連結部の下面、上記シール被覆材の本体の下面の順に1連の連続した板状に形成された請求項2に記載の容器のシール部材。
【請求項5】
上記シール被覆材は、断面形状において環状の内周側面の肉厚が上下側面の肉厚より厚く形成された請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の容器のシール部材。
【請求項6】
上記シール被覆材は、肉厚が0.05〜0.2mmの厚さで形成された請求項1乃至請項5のいずれか1項に記載の容器のシール部材。
【請求項7】
上記シール被覆材の開口部は、先端がシール被覆材開口部の外方に開くように湾曲して形成された請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の容器のシール部材。
【請求項8】
上記シール部材は、自動車の燃料タンクの開口部と、その開口部を塞ぐ蓋体の間をシールする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の容器のシール部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−99506(P2011−99506A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254177(P2009−254177)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(308039414)株式会社FTS (60)
【Fターム(参考)】