説明

容器の加飾方法及び加飾容器

【課題】
パソコンソフトのラスター画像の編集ソフトを用いて、少なくとも2種類以上の異なる印刷色のヘアーライン模様の画像を出力し、容器表面にヘアーライン模様印刷を印刷する容器の加飾方法。
【解決手段】
パソコンソフトを用いて、パソコンディスプレイ上で、ヘアーライン模様の画像を疑似的に作成し、該作成したヘアーライン模様の画像をフイルムに出力し、次に該フィルムを現像して印刷版を製作し、該印刷版を印刷機の版胴に取付け、該印刷版から画像をブランケットに転写し、容器表面にヘアーライン模様を印刷することを特徴とする、容器の加飾方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器の加飾方法に関し、さらに詳しくは、パソコンソフトを用いて、少なくとも2種類以上の異なる印刷色のヘアーライン模様の画像を出力し、容器表面に、実際にヘアーライン加工によるヘアーライン模様の明暗を表現することができる、容器の加飾方法及び加飾容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器の表面にヘアーライン模様を施す場合は、ヘアーライン加工装置を用いて、実際に容器の表面にヘアーライン加工を施すものである。ヘアーライン模様を具現化したエアゾール缶の製造方法としては、従来図9〜図11に示すような製造方法がある。図9において、
50は、ヘアーライン加工工程におけるヘアーライン加工装置である。ターンテーブル51上には、等間隔毎にマンドレル52が設けられており、このマンドレル52には有底の円筒状のエアゾール缶53が挿入・保持されている。そして、このエアゾール缶53はターンテーブル51の回転に伴って等速で移動し、回転体54の外周面と接触する。回転体54の外周には、スコッチブライトまたはワイヤー等の引っ掻具55が全周に設けられており、この回転体54及び引っ掻具55の回転により、引っ掻具55がエアゾール缶53に接触して、ヘアーライン模様56の引っ掻き傷を、エアゾール缶53表面に無数に付けるものである。この場合のエアゾール缶53の肉厚は、図11(図10のX−X線拡大断面図)に示すように、肉厚tは0.3〜0.5mm、ヘアーライン模様56の引っ掻き傷による、表面粗さSは0.01〜0.05mm程度である。
【0003】
又従来、実際のヘアーラインが加工された被写体を写真撮影して、ヘアーライン模様の単色のフイルムを製作し、この単色のフィルムから印刷版を製作し、この印刷版のヘアーライン模様を、印刷機のブランケットに転写し、ブランケットが容器と接触することにより、容器表面にヘアーライン模様の印刷を施す容器の加飾方法があった(特許文献1参照)。又パソコンソフトを使用することにより、単色のヘアーライン模様を作成し、それをフイルム上に出力し、印刷版を製作する、ブランケットに転写する容器の加飾方法があった。
【特許文献1】特開平9−58109号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の容器の加飾方法及び加飾容器にあっては、以下に示すような欠点があった。
(1)ヘアーライン模様を、実際にヘアーライン加工装置を用いて、容器表面にヘアーライン模様を形成する場合は、容器表面の肉厚がエアゾール缶のように、少なくとも胴部の肉厚が0.3〜0.5mm以上必要であり、絞りしごき加工で製造されるボトル缶、フルオープンDI缶の胴部の肉厚は、0.1〜0.2mmであるため、ヘアーライン模様の加工中に容器が変形するという欠点がある。又ヘアーライン模様の加工後のネッキング工程、ねじ加工工程において、挫屈、口部の変形等が生じるという問題があり、実際にヘアー
ライン加工装置を用いてヘアーライン模様を施すことは、製造工程上不可能であった。
(2)又、実際にヘアーラインが加工された被写体を写真撮影して、ヘアーライン模様のフイルムを作成し、このフィルムから印刷版を製作して、容器表面に印刷を施す加飾方法や、パソコンソフトを利用してヘアーライン模様の画像を出力し、それをフイルム上に表現し、印刷版を製作し、容器表面に印刷を施す加飾方法にあっては、いずれも版胴に取り付ける印刷版が単体であるため、アルミニウムの容器と同色の印刷色のヘアーライン模様を表現することができず、実際にヘアーライン加工装置を用いて加工したアルミニウムの容器の表面とは、かけ離れた印刷色であった。これは、従来の印刷によるヘアーライン模様は、本発明に示すように、少なくとも2種類以上の複数の印刷版により明暗を付与することが行わわれなかったためである。
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、パソコンソフトのラスター画像編集ソフトで編集した、少なくとも2種類以上の複数ヘアーライン模様の画像を出力し、複数のフイルムを製作し、これらのフイルムから複数の印刷版を製作し、複数の印刷版を組合せることにより、実際のヘアーライン模様の明暗に近いヘアーライン模様を表現することができ、かつアルミニウムの金属質感をも表現できる、容器の加飾方法及び加飾容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明の解決手段は、パソコンソフトを用いて、パソコンディスプレイ上で、ヘアーライン模様の画像を疑似的に作成し、該作成したヘアーライン模様の画像をフイルムに出力し、次に該フィルムを現像して印刷版を製作し、該印刷版を印刷機の版胴に取付け、該印刷版から画像をブランケットに転写し、容器表面にヘアーライン模様を印刷することを特徴とする、容器の加飾方法である。
【0006】
請求項2記載の発明の解決手段は、パソコンソフトが、ラスター画像の編集ソフトであることを特徴とする容器の加飾方法である。
【0007】
請求項3記載の発明の解決手段は、ヘアーライン模様の画像は、少なくとも2種類の異なる印刷色のフィルムに出力され、フィルムを各々現像して、少なくとも2種類の印刷色の印刷版を製作し、印刷版を印刷機の版胴に取付け、各々の印刷版からヘアーライン模様の画像をブランケットに重ねて転写し、容器表面にヘアーライン模様を印刷することを特徴とする、容器の加飾方法である。
【0008】
請求項4記載の発明の解決手段は、本発明に係る加飾方法により、容器表面に印刷が施されることを特徴とする加飾容器である。
【0009】
請求項5記載の発明の解決手段は、容器が、ボトル缶、フルオープンDI缶、チューブ容器又はエアゾール缶から選ばれる1つであることを特徴とする加飾容器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)従来の印刷機をそのまま利用することができ、実際にヘアーライン加工装置を用いるものではないから、容器の製造コストが安価である。
(2)胴部の肉厚が薄い、絞りしごき加工により製造されるボトル缶、フルオープンDI缶又はチューブ容器等の表面にも、ヘアーライン模様を加飾することができる。
(3)パソコンソフトのラスター画像編集ソフトで編集したヘアーライン模様の画像を出力し、少なくとも2種類以上の複数のフイルムを製作し、これらのフイルムから複数の印刷版を製作し、組合せる印刷方法であるから、容器表面に、実際のヘアーライン模様に近い明暗をイメージでき、かつ実際のアルミニウムの金属質感を表現できるヘアーライン模様の印刷が可能である。
(4)容器表面に加飾されるヘアーライン模様の線は、その長さ、細かさを自由に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施例を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1を示す図面である。実施例1は、印刷機4を示す図面である。
図中1において、2は、印刷機4のブランケット胴であり、このブランケット胴2には、一対のブランケット3が取付られている。容器1表面に、所望するヘアーライン模様Aのインキ画像を移送させ、転写する順序は、まずインキドクター5に収容された、例えばグレー色のインキが、着色ロール6、呼び出しロール及び練りロール7等を経て、版胴8へ順次移送される。又他のインキドクター9に収容された、例えばシルバー色のインキは、着色ロール10、呼び出しロール及び練りロール11等を経て、版胴12へ順次移送される。すなわち、実施例1は、グレーとシルバーの2色の印刷版を製作する実施例である。又その他の文字・記号等を印刷するインキは、インキドクターから版胴13へ順次移送される。そして、これらの版胴8、版胴12及び版胴13の外周には、印刷版14a、15a及び16aが各々取付られている。この印刷版14a、15a及び16aは、図4に示す出力されたフイルム14、15及び16を、各々現像することにより製作される。印刷版14a、15a及び16aのヘアーライン模様Aのインキ画像は、回転するブランケット3の表面3aに転写され、ブランケット3と接触する容器1の表面に、所望のヘアーライン模様Aの印刷及び文字(又は記号)等が印刷される。なお、容器1は、ターンテーブル18の円周上に等間隔で設けられたマンドレル17に、回転自在に支持されており、回転するブランケット3の表面3aと接触する。
【0013】
本発明は、印刷機でヘアーライン模様Aの印刷を施す印刷工程において使用される、図4に示すヘアーライン模様Aのインキ画像を、フイルム14、15及び16に出力し、印刷版14a、15a及び16aを製作するまでの製作工程に特徴がある。すなわち、発明者等は、パソコンソフトのラスター画像編集ソフトを用い、かつこのソフトで編集したヘアーライン模様Aを、2種類のフイルム14及び15に印刷色ごとに出力すると共に、これらを現像した2種類の印刷版14a、15aを、ブランケット3の表面3aに重ね合せて印刷することで、実際のヘアーライン模様の明暗に近い高品質のヘアーライン模様Aを表現することができることを見出したのである。
【0014】
図2の(a)は、パソコンソフトのラスター画像編集ソフトを用い、かつこのソフトでヘアーライン模様Aの画像を編集する編集工程の1工程を示す図面である。パソコンディスプレイBにおいて、新規に画像を開いた画面である。解像度は、ヘアーライン線の密度により600〜1200pixel/inchの間で、適宜に設定する。実施例1の解像度は800pixel/inchであり、この800pixel/inchで説明する。カラーモードはグレースケールで、ヘアーライン画像の幅、高さは任意サイズである。そして画像全体を30%に塗りつぶす。図2(a)はノイズを加えた指示図面である。分布方法は均等に分布するグレースケールノイズである。画像全体を30%に塗りつぶした画像に対して、0〜70%濃度のグレードットを均等に分布するように発生させることにより、ノイズを加えたような画像再現が得られる。
【0015】
図2(b)のパソコンディスプレイBは、移動のぼかしを加えた画像を示している。所望のヘアーラインの線の長さにより適宜設定する。例えば、362pixel(11.5mm)になるように設定する。すなわち、ノイズを加えた画像に、画像内の各ドットを、角度0度、水平方向に距離362pixelだけ複製させる。その結果、ノイズを加え、黒点、白点が引っ張られて、ライン状のボケたような画像が再現される。
【0016】
図3(a)のパソコンディスプレイBは、2階調化する画像を示している。しきい値を0〜255の間で適宜設定する。例えば、しきい値を148に設定する(濃度57.8%)。図2(b)の各ドットグレー階調の画像に対して、しきい値を境に、淡い濃度はすべて白、濃い濃度はすべて黒の2階調に変調する。対象画像に含まれた各ドットの濃度を、256階調でそろえ、その発生度数をヒストグラム状に表す。そして、このヒストグラム状指示画面から分割させるための、しきい値を適宜指定する。これにより、図2(b)の、ぼかしを加えた画像から、無数に発生する黒い細線状の画像が得られ、ヘアーライン状の画像が出来上がる。
【0017】
図3(b)のパソコンディスプレイBは、モノクロ2階調、すなわち、解像度出力800pixel/inch、種類として使用を50%を基準に、2階調に分けるものである。画像フォーマートは256階調グレー状態であり、データ容量が大きく扱いづらいため、製版用の画像として、汎用性のあるモノクロ2階調の画像にフォーマットに変換する。以上の手順により作成した画像を使用し、印刷原稿編集用ソフトで、2画像貼付する。そして、位置や位相を調整し2画像が同じ位置に重ならないようにし、それぞれにグレーとシルバーなど、別々の印刷色が付けられる。これらのヘアーライン模様Aの画像は、図4に示すフイルム14、15に出力される。
【0018】
次に、出力されるフイルム14及び15を現像することにより、実施例1では、2種類の印刷版14a、15aが製作される。この印刷版14a、15aのヘアーライン模様Aのインキ画像は、文字・記号のフイルム16から現像される印刷版16aと共に、ブランケット3の表面3aに、重ねて転写される。このようにして、ブランケット3の表面3aに転写されたヘアーライン模様Aと記号の混合画像は、ブランケット3の表面3aと容器1が接触することにより、容器1表面に印刷される。そして、図5に示すヘアーライン模様Aと記号印刷が組み合わされた表面加飾のボトル容器1aが完成する。このように、通常の容器表面の印刷工程において、容器表面にヘアーライン模様Aと記号印刷が組み合わされた印刷によるヘアーライン模様Aのボトル缶が製造される。
【0019】
本発明により加飾される容器1の実施例としては、例えば、図5に示す肉厚の薄い金属製のボトル缶1a、図6に示す肉厚の薄い金属製のフルオープンDI缶1b、図7に示すチューブ容器1cに加飾することができる。その他、従来、ヘアーライン加工装置を用いてヘアーライン模様Aを形成したエアゾール缶にも、本発明の加飾方法を適用できることは、いうまでもない。
【0020】
図8は、本発明に係るパソコンソフトを用いて出力されたヘアーライン模様Aの画像を、フイルムに出力し、このフイルムから印刷版を製作する工程を含む、一連の製造工程を示したボトル製造工程を示す図面である。図8(a)はアルミニウムの板材からカップを製造するカッピング工程、図8(b)は、カップの胴部に絞りしごき加工を施して、引き延ばすアイアニング工程、図8(c)は、開口部を切削するトリミング工程、図8(d)は洗浄・乾燥工程、図8(e)は容器表面の印刷印刷工程、図8(f)は、印刷機で容器表面に、ヘアーライン模様A等の印刷を施す印刷工程、図8(g)は、口部の径を絞るネッキング工程、図8(h)は、口部にねじ成形を施すねじ加工工程である。この図8(h)において、ヘアーライン模様Aの印刷が施された金属製のボトル缶1aが完成する。この発明の特徴は、図8(f)のヘアーライン模様Aの印刷を施す印刷工程において、ヘアーライン模様Aのインキ画像を、ブランケットに転写する印刷版を製作するまでの製造工程に特徴がある。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、ボトル容器、フルオープンDI缶、チューブ容器、エアゾール缶等に広く適用することが可能であり、医薬品、化粧品、食品、飲料等の加飾容器として、幅広く多岐にわたって利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る加飾方法に使用される印刷機を示す図面。
【図2】本発明に係る加飾方法において、パソコンソフトのラスター画像編集ソフトで編集する過程を示す図面。
【図3】本発明に係る加飾方法において、パソコンソフトのラスター画像編集ソフトで編集する過程を示す図面。
【図4】本発明に係る加飾方法において、パソコンソフトのラスター画像編集ソフトで編集したヘアーライン模様Aの画像を出力した、2種類の異なる印刷色のフイルム及び文字・記号を表したフイルムを示す図面。
【図5】本発明に係る加飾方法により製造されるボトル缶を示す正面図。
【図6】本発明に係る加飾方法により製造されるフルオープンDI缶を示す正面図。
【図7】本発明に係る加飾方法により製造されるチューブ容器を示す正面図。
【図8】本発明に係る加飾方法を利用した、一連のボトル缶の製造工程を示す図面。
【図9】従来のヘアーライン加工装置を示す正面図。
【図10】従来のヘアーライン加工装置を用いて、製造されるエアゾール缶を示す図面。
【図11】図10のX−X線拡大端面図。
【符号の説明】
【0023】
1 容器1
1aボトル缶
1bフルオープンDI缶
1cチューブ容器
3 ブランケット
4 印刷機
8、12、13 版胴
14、15、16 フイルム
14a、15a、16a 印刷版
A ヘアーライン模様
B パソコンディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パソコンソフトを用いて、パソコンディスプレイ上で、ヘアーライン模様の画像を疑似的に作成し、該作成したヘアーライン模様の画像をフイルムに出力し、次に該フィルムを現像して印刷版を製作し、該印刷版を印刷機の版胴に取付け、該印刷版から画像をブランケットに転写し、容器表面にヘアーライン模様を印刷することを特徴とする、容器の加飾方法。
【請求項2】
前記パソコンソフトが、ラスター画像の編集ソフトであることを特徴とする請求項
1記載の容器の加飾方法。
【請求項3】
前記ヘアーライン模様の画像は、少なくとも2種類の異なる印刷色のフィルムに出力され、該フィルムを各々現像して、少なくとも2種類の印刷色の印刷版を製作し、該印刷版を印刷機の版胴に取付け、各々の印刷版から、ヘアーライン模様の画像をブランケットに重ねて転写し、容器表面にヘアーライン模様を印刷することを特徴とする、請求項1又は2記載の容器の加飾方法。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の加飾方法により、容器表面に印刷が施されることを
特徴とする加飾容器。
【請求項5】
前記容器が、ボトル缶、フルオープンDI缶、チューブ容器又はエアゾール缶から選ばれる1つであることを特徴とする請求項4記載の加飾容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−126038(P2009−126038A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302726(P2007−302726)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】