説明

容器の検査方法及び装置

【課題】可撓性容器内のエア混入過多の検査と可撓性容器の密封不良の検査とを単一の手法によって同時に行うことができ、可撓性容器を生産ライン中で連続して全数検査可能とするとともに、高い検査精度を得ることができる新規な容器の検査方法及び装置を提供する。
【解決手段】可撓性容器内に液体が充填された被検査物における前記容器の密封不良と容器内のエア混入過多を検査するに際して、前記被検査物を密閉容器内に収容し、該密閉容器内の空気を吸引して前記被検査物の容器外壁を膨大させるに十分な減圧を行うとともに、前記容器外壁の膨大寸法を測定し予め設定した閾値と比較して容器の良否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は液体が封入された紙パックや輸液バッグ等の可撓性容器の検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば紙パックに飲料を充填する際にエアが混入することがある。容器内に過多のエアが混入すると、充填量不足や充填飲料の劣化等商品としての不具合が発生する。
【0003】
この種可撓性容器内のエア混入過多を検査する手段として、液体が充填された被検査物を密閉空間に収容して減圧し、可撓性容器外壁の膨大の有無を検出して、外壁が膨大(変化)したときはエアの混入が過多であると判断し、変化が生じないときは良品として判定するものが知られている(特許文献1参照。)。
【0004】
一方、この種可撓性容器のもう一つの問題点として、液漏れの問題がある。液漏れは、主として容器のヒートシール不良や容器素材のピンホール等の密封不良に起因し、充填された飲料を腐敗させるため品質管理上の重大欠陥として取扱われている。
【0005】
この液漏れを検査する手段としては、液体が充填された被検査物を押圧することによって液体の漏出の有無を検査するものが知られている。これによれば、被検査物から漏出した液体が検査部の電極間を通電して漏出の有無が検査される(特許文献2参照。)。
【0006】
上述したように、従来では、可撓性容器におけるエア混入過多の検査と液体の漏出の検査とが別個の異なる手法によって行われており、煩雑で非効率的ではあった。また、液漏れを検査する手段においては漏出した液体により検査装置が汚染され、又通電の検査が正確にできなくなるため、その都度検査装置の清掃を必要とし可撓性容器を連続して全数検査することができなかった。
【特許文献1】特公平8−5471号公報
【特許文献2】特許第2694483号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、可撓性容器内のエア混入過多の検査と可撓性容器の密封不良の検査とを単一の手法によって同時に行うことができる検査方法及び装置を提供することを目的とする。また、この発明は、可撓性容器を生産ライン中で連続して全数検査可能とするとともに、高い検査精度を得ることができる新規な容器の検査方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、可撓性容器内に液体が充填された被検査物における前記容器の密封不良と容器内のエア混入過多を検査するに際して、前記被検査物を密閉容器内に収容し、該密閉容器内の空気を吸引して前記被検査物の容器外壁を膨大させるに十分な減圧を行うとともに、前記容器外壁の膨大寸法を測定して被検査物の良否を判定することを特徴とする容器の検査方法に係る。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記被検査物の良否の判定が、前記減圧過程の所定の減圧値における前記容器外壁の膨大寸法を測定して予め定めた閾値と対比して行われる容器の検査方法に係る。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記減圧に関する到達減圧設定値が大気圧マイナス94ないし100kPaである容器の検査方法に係る。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記容器の膨大寸法を測定する減圧の前に、前記被検査物に対して予備的な減圧及び復元が行われる容器の検査方法に係る。
【0012】
請求項5の発明は、可撓性容器内に液体が充填された被検査物を搬送する搬送手段と、前記搬送手段に対して前記被検査物を出し入れ自在に収容する密閉容器と、前記密閉容器内の空気を吸引して前記被検査物の容器外壁を膨大させるに十分な減圧を行う減圧手段と、前記減圧過程における前記容器外壁の膨大寸法を測定する測定手段と、前記容器外壁の膨大寸法によって容器の良否を判定する演算処理手段とを有することを特徴とする容器の検査装置に係る。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5において、前記測定手段が前記減圧過程の所定の減圧値における前記容器外壁の膨大寸法を測定するものであり、前記演算処理手段が前記測定値と予め定めた閾値と対比するものである容器の検査装置に係る。
【0014】
請求項7の発明は、請求項5又は6において、前記密閉容器が複数の被検査物を収容するものであり、前記測定手段及び演算処理手段が各々の被検査物に対して実施される容器の検査装置に係る。
【0015】
請求項8の発明は、請求項7において、前記密閉容器が複数配置され前記搬送手段に対して交互又は順次接続されて、前記被検査物を前記密閉容器内に順次収容し、また、前記被検査物を前記密閉容器内から前記搬送手段に排出する容器の検査装置に係る。
【0016】
請求項9の発明は、請求項5又は6において、前記密閉容器が単一の被検査物を収容するものである容器の検査装置に係る。
【0017】
請求項10の発明は、請求項9において、前記密閉容器が複数配置され前記搬送手段に対して順次接続されて、前記被検査物を前記密閉容器内に順次収容し、また、前記被検査物を前記密閉容器内から前記搬送手段に排出する容器の検査装置に係る。
【0018】
請求項11の発明は、請求項5ないし10のいずれか1項において、前記容器に液体を充填後に容器内のエアースペースが少ないまたはエアースペースがない被検査物並びに容器内が陽圧でない被検査物を対象とする容器の検査装置に係る。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明に係る容器の検査方法によれば、可撓性容器内に液体が充填された被検査物における前記容器の密封不良と容器内のエア混入過多を検査するに際して、前記被検査物を密閉容器内に収容し、該密閉容器内の空気を吸引して前記被検査物の容器外壁を膨大させるに十分な減圧を行うとともに、前記容器外壁の膨大寸法を測定してその差異により被検査物のエア混入過多、密封不良及び良品の判定をするようにしたものである。このため、被検査物の容器外壁を膨大させるに十分な減圧という単一の手法によって、容器内のエア混入過多の検査と容器の密封不良の検査とを同時にしかも精度よく行うことができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、請求項1において、前記被検査物の良否の判定が、前記減圧過程の所定の減圧値における前記容器外壁の膨大寸法を測定して予め定めた閾値と対比して行われるものであるから、検査を精度よくかつ効率的に行うことができる。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は2において、前記減圧に関して設定する到達減圧設定値を大気圧マイナス94ないし100kPaとしたことから、ある程度の剛性を備えた可撓性容器の検査も、高度の真空により精度よくかつ効率的に行うことができる。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記容器の膨大寸法を測定する減圧の前に、前記被検査物に対して予備的な減圧及び復元を予め行うことにより、被検査物内部の充填液の状態が測定時の減圧に際して容器外壁を速やかで明確に膨大させる状態に移行し、容器外壁の膨大寸法を短時間に正確に測定できるため、より高能力で精度の高い検査を行うことができる。
【0023】
請求項5の発明は検査装置の発明に係り、可撓性容器内に液体が充填された被検査物を搬送する搬送手段と、前記搬送手段に対して前記被検査物を出し入れ自在に収容する密閉容器と、前記密閉容器内の空気を吸引して前記被検査物の容器外壁を膨大させるに十分な減圧を行う減圧手段と、前記減圧過程における前記容器外壁の膨大寸法を測定する測定手段と、前記容器外壁の膨大寸法によって容器の良否を判定する演算処理手段とを有するものであるから、可撓性容器内におけるエア混入過多の検査と密封不良の検査とを、単一の装置によって同時にかつ精度よく行うことができる装置を提供することができる。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、請求項5において、前記測定手段が減圧の到達減圧設定値に至る減圧過程の所定の減圧値における前記容器外壁の膨大寸法を測定するものであり、前記演算処理手段が前記測定値と予め定めた閾値と対比するものであるから、容器の検査を精度よくかつ効率的に行うことができる。
【0025】
請求項7に係る発明によれば、請求項5又は6において、前記密閉容器が複数の被検査物を収容するものであり、前記測定手段及び演算処理手段が各々の被検査物に対して実施されるものであるから、多数の容器の検査を前記密閉容器内部で同時に行うことができる。このため、簡易な装置で高能力の検査を実施できる効果がある。
【0026】
請求項8に係る発明によれば、請求項7において、前記密閉容器が複数配置され前記搬送手段に対して交互又は順次接続されて、前記被検査物を前記密閉容器内に順次収容し、また、前記被検査物を前記密閉容器内から前記搬送手段に排出することから、被検査物の検査を高能力で実施することができる。
【0027】
請求項9に係る発明によれば、請求項5又は6において、前記密閉容器が単一の被検査物を収容するものであるから、各種形状の検査対象容器に対する検査装置構造の設計の自由度が拡大して、広範囲な種類の容器の検査を精度よくかつ効率的に行うことができる。
【0028】
請求項10に係る発明によれば、請求項9において、前記密閉容器が複数配置され前記搬送手段に対して順次接続されて、前記被検査物を前記密閉容器内に順次収容し、また、前記被検査物を前記密閉容器内から前記搬送手段に排出することから、各容器の検査を連続的に効率よく行うことができる。
【0029】
請求項11に係る発明によれば、請求項5ないし10のいずれか1項において、前記容器に液体を充填後に容器内にエアースペース(空気または不活性ガスの容器内容量)が少ないまたはエアースペースがない容器並びに容器内が陽圧でない被検査物を対象とする検査装置であるから、被検査物の検査を精度よくかつ効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下添付図面の実施例に従ってこの発明を詳細に説明する。図1はこの発明の容器の検査を実施する装置主要部の概略説明図、図2は前記減圧過程における容器外壁両側の膨大寸法の合計値と圧力及び経過時間との関係を例示するグラフ、図3は予備減圧及び復元を行ったときの容器外壁両側の膨大寸法の合計値と圧力及び経過時間の関係を例示するグラフ、図4は複数の被検査物を収容する密閉容器を利用した検査装置の実施例としての主要部平面図、図5は図4の正面図、図6は図4の上部に配置された駆動手段の詳細を示す平面図、図7は図4のX矢視図、図8は単一の被検査物を収容する密閉容器を利用した検査装置の実施例を示す平面図、図9は図8のY−Y主要断面図である。
【0031】
請求項1の発明に係る容器の検査方法は、紙パック等の可撓性容器内に飲料等の液体が充填された被検査物における容器の密封不良と容器内のエア混入過多を検査するものである。この発明の検査方法は、被検査物を密閉容器内に収容し、該密閉容器内の空気を吸引して前記被検査物の容器外壁を膨大させるに十分な減圧を行うとともに、前記容器外壁の膨大寸法を測定して容器の判定を行うものである。
【0032】
図1に示す実施例では、直方体形状の紙パックの容器に飲料を充填した被検査物Mを対象として、被検査物Mは検査装置10の密閉容器30内に収容され、密閉容器30は公知の真空ポンプ(図示省略)を構成要素とする減圧手段40と真空配管35を介して連通している。そして、密閉容器30の内部の空気は、真空ポンプによって吸引され被検査物Mの容器外壁K1,K2が膨大するに十分な負圧まで減圧がなされる。
【0033】
被検査物Mの容器外壁K1,K2の膨大寸法は、被検査物Mの容器外壁までの距離を測定する公知の変位センサ等を利用した測定手段50A、50Bによってそれぞれ測定し、ケーブルS1,S2を介して公知の演算処理手段60にデータを送信して密閉容器30内の空気減圧前後の距離の差を演算処理手段60で算出して、被検査物Mの良否を判定する。なお、本実施例では容器の両側外壁の膨大寸法が容易に計測可能であるため、両側外壁のそれぞれの膨大寸法を算出した後、容器の両側外壁の膨大寸法を加算して容器膨大寸法を取得し、この容器両側の膨大寸法の変化量を比較することにより検査精度を高めている。符号36は圧力計測装置、51,52は計測装置、S3はケーブルである。
【0034】
なお、本実施例では、直方体形状の紙パックの容器に飲料を充填した被検査物Mを例として説明するが、可撓性容器の材質はプラスチックやアルミ箔等、形状はカップ状やパウチの如き袋状の容器等、また、充填される液体は飲料に限定されず輸液等の如く、本発明は各種の材質、容器形状、充填液の組合せに対して適用することができる。また、本実施例では紙パック容器の両側外壁の膨大寸法の合計値により被検査物を検査しているが、カップ状や袋状の容器等の如く容器外壁の一方向の膨大寸法しか容易に計測できない容器に対しては、容器の一箇所の膨大寸法を計測して本発明に係る容器検査を実施することができる。
【0035】
被検査物Mの検査において、液体が封入された容器中に過多なエアが混入していない被検査物Mにおいても、被検査物Mの内部の液中には溶存空気や飲料充填時の微小な混入空気が存在するため、減圧によってその容器外壁は膨大する。しかし、エアが過多に混入されたもの及び密封不良の被検査物Mは、正常な被検査物即ち良品に比べて減圧値が小さいうちから膨大が始まり、また、減圧過程の同じ減圧値における容器外壁の膨大寸法が大きくなる。本発明は、この知見に基づいて被検査物の容器外壁を膨大させるに十分な減圧を行い、その容器外壁の膨大寸法を測定し、予め指定した減圧値における外壁の膨大寸法を予め設定した閾値と比較することにより、エア混入過多と密封不良の検査を同時に行うものである。
【0036】
即ち、良品、エア混入過多及び密封不良の被検査物Mの容器外壁は、密閉容器30内の減圧過程においていずれも膨大するがその膨大寸法には差異があり、また、対象とする被検査物の容器や充填物の種類に対応して、その膨大寸法の差異が有意差を持って識別可能な減圧の設定値(到達減圧設定値)、並びに膨大寸法を計測して閾値と比較するために好適な減圧値(検査減圧値)が存在する。このため、対象とする被検査物に対してテストを実施して、あらかじめ前記の適正な減圧の到達減圧設定値、膨大寸法を計測する検査減圧値及び前記閾値を求めておき、生産時の被検査物の検査にはこれらの条件を使用して検査を実施する。
【0037】
以下の図2に例示するグラフは、減圧の到達減圧設定値を大気圧マイナス98としたときの減圧過程における容器外壁両側の膨大寸法の合計値と圧力及び経過時間の関係を示すものである。なお、ここで用いた被検査物は、縦30mm、横40mm、高さ85mmの紙パック容器に乳性飲料が充填されたものを対象として、エア混入過多の被検査物は、0.2ccのエアを被検査物に意図的に注入して乳性飲料に混入させたもの、又、密封不良の被検査物は、紙パック容器に0.2mmφの穴を意図的に開けたものを利用している。
【0038】
図示のように、それぞれの容器外壁は密閉容器の減圧開始以降に膨大を開始するが、その膨大の状況は、エア混入過多、密封不良、そして良品の順に速く膨大する。このような容器外壁の膨大速度の差異は、エア混入過多の被検査物の容器内部において存在するエアが周囲の圧力低下に最も早く反応して、体積を膨張させて容器外壁を膨大させるためと考えられる。また、密封不良の被検査物においては、容器の密封不良部、この場合0.2φの穴の影響で良品より早く充填液が周囲の圧力低下に反応して液中の溶存エアを分離させ、この分離エアが膨張して容器外壁を膨大させるため、良品より早く膨大するものと考えられる。なお、良品の被検査物においても、可撓性容器の外壁が周囲の負圧に引かれて容器内部が負圧になることにより、充填液中のエアが緩やかに分離して、密封不良の被検査物に遅れて容器外壁を膨大させると考えられる。
【0039】
このため、図2において、減圧の到達減圧設定値Ptとしての大気圧マイナス98kPaに対して、密閉容器10内の圧力が検査減圧値Pkで示す例えば大気圧マイナス96kPaを予め被検査物の膨大寸法を計測して検査する圧力と定めて、この時の容器外壁の膨大寸法を計測すれば、以下の如く検査対象物の良否を判定することができる。即ち、予め検査減圧値Pkにおける容器外壁の膨大寸法が良品限界寸法Lr以下を良品、良品限界寸法Lrを超えて密封不良寸法Lm以下を密封不良、密封不良寸法Lmを超える膨大寸法を示す被検査物Mをエア混入過多として閾値を設定すれば、膨大寸法L1、L2、L3を示す被検査物はそれぞれ良品、密封不良、エア混入過多と識別できる。
【0040】
また、本発明によれば、請求項3に記載の如く密閉容器内の減圧する到達減圧設定値を大気圧マイナス94kPaないし100kPaとしたとき、紙パック等の比較的剛性の高い可撓性容器に対して、良品、密封不良、エア混入過多の識別が効果的に可能であった。即ち、大気圧マイナス94kPa未満の負圧においては、紙パック等比較的剛性の高い容器が短時間に充分膨大しないため、効率的な被検査物の検査及び識別が困難であったと考えられる。また、大気圧マイナス100kPa以上の高真空での到達減圧設定値は実用上要求されず、真空ポンプの性能、コスト等を考慮して、特に限定されないが大気圧マイナス94kPaないし100kPaの範囲を、多くの被検査物に対して精度のよい検査を行うための到達減圧設定値の領域として採用することができる。
【0041】
なお、前記説明において、指定した検査減圧値Pkにおける被検査物Mの膨大寸法を閾値と比較して良品と不良品の識別を行った。しかし、密閉容器30内部の圧力低下は略減圧開始後の時間に比例するため、指定した検査減圧値Pkに代えて減圧開始後の指定した経過時間Tkにおける被検査物Mの膨大寸法を計測し、予め指定した閾値と比較して被検査物Mの検査を行うこともできる。
【0042】
なお、図2に例示する密閉容器30内部の圧力並びに容器外壁の膨大寸法のデータは、検査対象物の容器の材料と寸法、充填液の種類、並びに密閉容器のサイズ、真空ポンプの容量、及び減圧の到達減圧設定値等により変化する。このように、検査条件が異なれば異なった曲線のグラフが得られるため、検査条件と被検査物及び装置に適合した適正な到達減圧設定値Pt及び検査減圧値Pkを選定して被検査物の検査を実施する。また、前記のカップ状や袋状の容器の如く膨大寸法を容器の一箇所で計測して被検査物の良否を識別する際にも、同様の主旨のテストを予め実施し好適な検査条件を把握して被検査物の検査を実施する。
【0043】
また、本発明によれば、請求項11に記載の如く、容器内にエアースペースが少ないまたはエアースペースがない容器並びに容器内が陽圧でない容器を被検査物として検査したとき、密閉容器30内の減圧に伴う容器両側の膨大寸法の変化量の差異が特に明確に発現し、良品、密封不良、エア混入過多の被検査物の識別を精度良く実施することが出来る。
【0044】
図3は、請求項4の発明に係る被検査物の予備減圧及び復元を予め行ったときの容器外壁両側の膨大寸法の合計値と圧力との関係を例示するグラフであり、密閉容器30内の圧力を一度P1まで減圧した後に大気圧まで戻す。このとき、容器内の飲料等充填液中のエアは減圧過程において予め充填液から分離して、被検査物Mの検査時に容器外壁の膨大が加速され、又、被検査物の状態による差異が明確に現われる。このため、予備減圧を実施しない場合に比べて短時間に被検査物の差異を計測して、エア混入過多、密封不良、良品の識別をより明確に行うことが可能となり、より精度の高い検査を効率よく行うことができる。
【0045】
即ち、図2に示す予備減圧を実施しない場合のグラフに比べて、図3の予備減圧を実施した場合、被検査物の外壁の膨張膨大が短時間に発生して、指定した検査減圧値Pkにおける被検査物Mの膨大寸法の差が大きくなり、エア混入過多、密封不良、良品の識別をより明確に行うことが可能となり、検査精度及び検査能力を向上させることができる。
【0046】
次に、図4及び図5に示す複数の被検査物Mを収容する密閉容器を利用した検査装置の実施例において、検査装置10は、搬送手段としての搬送コンベヤ20、2個の密閉容器30A,30B、減圧手段40、測定手段50及び図示省略の演算処理手段60とを備えている。搬送コンベヤ20は、容器Mを密閉容器30Aあるいは30Bまで搬送し、検査後に密閉容器30A,30Bから排出された被検査物Mを下流に搬送する。また、密閉容器30A,30Bは、搬送コンベヤ20上の被検査物Mを内部に収容した後に、詳細後述の如く密閉されて減圧手段40の真空ポンプと真空配管35により接続されて、密閉容器30A,30Bの内部の空気を吸引して減圧する。
【0047】
図4に示す如く、本実施例では密閉容器30は、2個の密閉容器30A,30Bで構成されて、矢印Dの如く搬送コンベヤ20上を間歇的に往復移動し、密閉容器30の1個、図示では密閉容器30Bが搬送コンベヤ20の上方位置に停止する。そして、搬送コンベヤ20上に停止している密閉容器30Bの出口扉31Bを開放して、内部の複数の被検査物Mを搬送コンベヤ20上に排出する。その後、密閉容器30Bは、出口扉31Bを閉鎖して入口扉31Aを開放して搬送コンベヤ20上から複数の被検査物Mを受入れて内部に収容し、点線で示す密閉容器30Cの検査位置に移動する。そして、このとき、他の1個の密閉容器30Aは搬送コンベヤ20上に移動して、内部の被検査物Mの搬送コンベヤ20への排出と、新たな被検査物Mの密閉容器30A内部への収容を実施する。
【0048】
なお、搬送コンベヤ20上から新しい被検査物Mを受入れて密閉容器30の内部に収容する工程は、出口扉31Bを閉鎖して入口扉31Aを開放した状態で、搬送コンベヤ20の上流側に設置された容器供給装置15を用いて所定個数の被検査物を数えて供給する公知の手段で実施される。そして、新しい被検査物Mを収容した密閉容器30Bは点線で示す密閉容器30Cの検査位置に移動して、被検査物Mは詳細後述の所定の検査を受ける。また、同様に密閉容器30Bの位置で新しい被検査物Mを収容した密閉容器30Aは実線で示す密閉容器30Aの検査位置で検査を行う。即ち、2個の密閉容器30A,30Bは、搬送コンベヤの進行直角方向に交互に移動して、搬送コンベヤ20の両側の検査位置で被検査物Mの検査を実施する。
【0049】
図5において、密閉容器30B(30A)は、搬送コンベヤ20上に密閉容器移動装置16に支えられて、詳細後述の如く移動して搬送手段としての搬送コンベヤ20に交互に接続されて、密閉容器30B(30A)内に複数の被検査物Mを順次収容し、また、検査終了後の被検査物Mを密閉容器30B(30A)内から搬送コンベヤ20上に排出する。そして、密閉容器30Bと30Aは、移動ブラケット19に一体に固定されて支持され、移動ブラケット19は移動レール21に滑動自在に支持されている。
【0050】
また、図6に示す如く、密閉容器移動装置16は、支持ブラケット17に支持されて、搬送コンベヤ20及び密閉容器30A,30Bの上に配設されている。なお、本図においては、密閉容器30Aが搬送コンベヤ20に対応する位置に移動した状態が示されている。
【0051】
図7に示す如く、移動ブラケット19は、タイミングベルト23に固定されて、駆動モータ18によりプーリ22を介して矢印の如く移動して、密閉容器30A,30Bをコンベヤ20の左右方向に移動させて位置決めする。。図示の密閉容器30A及び30Cの検査位置の下部に配設された密閉板24は、リフトシリンダ25で駆動されて上下方向に移動し、密閉容器30A及び30C(30B)の底部を密閉して内部の減圧を可能ならしめる。また、滑り板26は、底部が開放されている密閉容器30A,30Bが左右に移動する際に内部に収容された被検査物Mが円滑に上面を滑って検査位置に移動させる機能を有する。
【0052】
前述の如く、密閉容器30A,30B内に複数の被検査物Mを収容して、複数の被検査物Mを同時に検査する装置においても、基本的には図1において説明した検査工程と同様の検査を実施する。そして、具体的には図4及び図7に示す如く、測定手段50A,50Bをそれぞれの被検査物Mに対応して複数個備え、個別に容器外壁までの距離を計測し、データを演算処理手段60に送信して個別にデータ処理し、それぞれの被検査物の容器外壁の両側の膨大寸法合計値を算出して個々に閾値と比較して、それぞれの被検査物の検査を実施する。
【0053】
そして、前述の被検査物の判定結果は、密閉容器30内のそれぞれの被検査物Mの位置即ち配列順序と対応させた個別データとし、各被検査物に対応する個別のデータとして演算処理手段60に記憶される。そして、搬送コンベヤ20に排出された被検査物が、下流に搬送される途上で、図示を省略した容器突出し装置等の公知の容器排除装置で、エア混入過多、密封不良の種別に応じて異なる場所でコンベヤ上から排除される。なお、前記不良製品をコンベヤ上の同じ場所に排除したり、不良品の搬送コンベヤ20からの排除に代えて不良容器発生の信号を出す等の事後処理は、被検査物Mを検査する生産ラインの特性に応じて自由に選定して実施できる。
【0054】
なお、被検査物Mがカップ状やバッグ状の容器で、被検査物Mの例えば上面等、容器外壁の1点の膨大寸法を計測する被検査物Mに対しては、前述の両側の膨大寸法の合計算出は不要となり、被検査物Mの外壁の1点の膨大寸法を計測して被検査物Mの検査を実施し、被検査物Mを搬送コンベヤ上に排出した後所定の処置を実施する。
【0055】
なお、複数の被検査物Mを収容する密閉容器30が複数配置された実施例として、2個の密閉容器30A,30Bが往復移動する場合を説明したが、3個以上配置された密閉容器30を鉛直方向あるいは水平方向の軸を中心として回転するロータリー式の構成とすることも可能であり、実施例に限定されることなく本発明の主旨の範囲で他の構成の容器の検査装置を利用することができる。
【0056】
以下に、図8において、単一の被検査物Mを収容する密閉容器を利用し、円柱状カップを被検査物Mとした場合の検査装置10の実施例を説明する。図示の如く、検査装置10はロータリー式で矢印の如く回転し、被検査物Mは、搬送コンベヤ20上を搬送されてインフィードスクリュー11により割出されて供給スターホイール12を経由して回転円盤13上に供給されて検査に供される。また、検査実施後の被検査物Mは、排出スターホイール14を経由して搬送コンベヤ20上に排出される。
【0057】
回転円盤13には、詳細後述の上下方向に移動する密閉容器30が被検査物Mの供給位置に対応して配設されており、密閉容器30は供給スターホイール12及び排出スターホイール14の位置においては上昇した状態となり、密閉容器30に干渉することなく被検査物Mを回転円盤13上に供給し、また被検査物Mを搬送コンベヤ20上に排出する。
【0058】
図9に示す如く、密閉容器30は上下動ブラケット39を介してリフトシリンダ37により上下に移動し、被検査物Mの密閉容器30への供給及び排出を可能ならしめている。また、真空配管35並びにロータリー盤38A、38B及び可撓性の真空配管35Aを介して図示省略の真空ポンプで、密閉容器30内部の空気を吸引して減圧する。そして、密閉容器30内部の圧力と測定手段50で計測した被検査物Mの上面の膨大寸法はケーブルS1,S3及び図示省略のロータリージョイントを介して外部に取出して、データ信号の処理を実施している。符号36AとS1Aはケーブルである。
【0059】
なお、前記の密閉容器が複数配置された実施例では、円筒状の被検査物Mに対して円筒状の密閉容器30を利用した場合を説明したが、本発明は、紙パックや輸液バッグ等の矩形状の被検査物Mに対して矩形状の密閉容器30を利用する等、実施例に限定されることなく本発明の主旨の範囲で他の構成の容器の検査装置を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の容器の検査を実施する装置主要部の概略説明図である。
【図2】前記減圧過程における容器外壁両側の膨大寸法の合計値と圧力及び経過時間との関係を例示するグラフである。
【図3】予備減圧及び復元を行ったときの容器外壁両側の膨大寸法の合計値と圧力及び経過時間の関係を例示するグラフである。
【図4】複数の被検査物を収容する密閉容器を利用した検査装置の実施例としての主要部平面図である。
【図5】図4の正面図である。
【図6】図4の上部に配置された駆動手段の詳細を示す平面図である。
【図7】図4のX矢視図である。
【図8】単一の被検査物を収容する密閉容器を利用した検査装置の実施例を示す平面図である。
【図9】図8のY−Y主要断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 検査装置
11 インフィードスクリュー
12 供給スターホイール
13 回転円盤
14 排出スターホイール
16 密閉容器移動装置
17 支持ブラケット
19 移動ブラケット
20 搬送コンベヤ(搬送手段)
21 移動レール
22 プーリ
23 タイミングベルト
24 密閉板
25 リフトシリンダ
26 滑り板
30,30A〜30C 密閉容器
31A 入口扉
31B 出口扉
35 真空配管
36 圧力計測装置
37 リフトシリンダ
38A,38B ロータリー盤
39 上下動ブラケット
40 減圧手段
50,50A,50B 測定手段
51,52 計測装置
60 演算処理手段
K1 容器外壁
K2 容器外壁
L1〜L3 膨大寸法
Lm 密封不良寸法
Lr 良品限界寸法
M 被検査物
Pk 検査減圧値
Pt 到達減圧設定値
S1〜S3 ケーブル
Tk 経過時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性容器内に液体が充填された被検査物における前記容器の密封不良と容器内のエア混入過多を検査するに際して、
前記被検査物を密閉容器内に収容し、該密閉容器内の空気を吸引して前記被検査物の容器外壁を膨大させるに十分な減圧を行うとともに、前記容器外壁の膨大寸法を測定して被検査物の良否を判定することを特徴とする容器の検査方法。
【請求項2】
前記被検査物の良否の判定が、前記減圧過程の所定の減圧値における前記容器外壁の膨大寸法を測定して予め定めた閾値と対比して行われる請求項1に記載の容器の検査方法。
【請求項3】
前記減圧に関する到達減圧設定値が大気圧マイナス94ないし100kPaである請求項1又は2に記載の容器の検査方法。
【請求項4】
前記容器の膨大寸法を測定する減圧の前に、前記被検査物に対して予備的な減圧及び復元が行われる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の容器の検査方法。
【請求項5】
可撓性容器内に液体が充填された被検査物を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段に対して前記被検査物を出し入れ自在に収容する密閉容器と、
前記密閉容器内の空気を吸引して前記被検査物の容器外壁を膨大させるに十分な減圧を行う減圧手段と、
前記減圧過程における前記容器外壁の膨大寸法を測定する測定手段と、
前記容器外壁の膨大寸法によって容器の良否を判定する演算処理手段
とを有することを特徴とする容器の検査装置。
【請求項6】
前記測定手段が前記減圧過程の所定の減圧値における前記容器外壁の膨大寸法を測定するものであり、前記演算処理手段が前記測定値と予め定めた閾値と対比するものである請求項5に記載の容器の検査装置。
【請求項7】
前記密閉容器が複数の被検査物を収容するものであり、前記測定手段及び演算処理手段が各々の被検査物に対して実施される請求項5又は6に記載の容器の検査装置。
【請求項8】
前記密閉容器が複数配置され前記搬送手段に対して交互又は順次接続されて、前記被検査物を前記密閉容器内に順次収容し、また、前記被検査物を前記密閉容器内から前記搬送手段に排出する請求項7に記載の容器の検査装置。
【請求項9】
前記密閉容器が単一の被検査物を収容するものである請求項5又は6に記載の容器の検査装置。
【請求項10】
前記密閉容器が複数配置され前記搬送手段に対して順次接続されて、前記被検査物を前記密閉容器内に順次収容し、また、前記被検査物を前記密閉容器内から前記搬送手段に排出する請求項9に記載の容器の検査装置。
【請求項11】
前記容器に液体を充填後に容器内のエアースペースが少ないまたはエアースペースがない被検査物並びに容器内が陽圧でない被検査物を対象とする請求項5ないし10のいずれか1項に記載の容器の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−8161(P2006−8161A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186122(P2004−186122)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000128131)株式会社エヌテック (16)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【出願人】(593205831)東邦商事株式会社 (14)
【Fターム(参考)】