説明

容器入り液体洗浄剤

【課題】計量セル内での水の接触やボトル容器内への水の侵入等によるゲル化の影響のない、高濃度の界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物を充填した容器入り液体洗浄剤を提供する。
【解決手段】(a)特定一般式で示されるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤、(b)陰イオン界面活性剤、(c)水混和性有機溶剤、(d)アルカノールアミン及び(e)水を特定比率で含有する液体洗浄剤組成物を、液垂れ防止構造を備えた、計量用の蓋を有する容器に充填してなる容器入り液体洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入り液体洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する意識が高まってきており、環境に対し負荷の少ない洗浄剤の登場が渇望されている。従来の洗浄剤より洗浄成分濃度が高い、いわゆる濃縮タイプの洗浄剤は、洗浄剤自身のサイズを小さくし、容器樹脂量の削減、輸送費の削減、使用後のゴミの削減等、環境に対する負荷を低減させるのに非常に有効であると考えられる。
【0003】
しかしながら、通常の液体洗浄剤において、洗浄成分である界面活性剤濃度を増加させる(例えば、50質量%以上)と組成物自体に増粘やゲル化が起こり、著しく使用性を損ねてしまうという課題があった。これは、界面活性剤濃度の上昇により、組成物中に液晶や結晶といった粘度が著しく高い相を形成してしまうためである。増粘やゲル化した液体洗浄剤は、洗浄剤の計量を困難にする原因になる。このような結晶相形成の課題に対して、水混和性溶剤やハイドロとロープ剤等を多量に配合し低粘度組成物を得る方法が一般に知られている。しかしながら揮発性の溶剤を用いると、容器の出口付近や計量蓋内でゲル化を生じる場合があり、高濃度界面活性剤領域での液性の課題は解決できたとしても、溶媒を水−有機溶媒の系で行う場合、従来一般的に使用されている界面活性剤では、特定水分領域で液晶相を形成することが多く、水での希釈の途中でゲル化してしまう問題がある。
【0004】
一方、使用者の中には、液体洗浄剤を計量通りに洗濯槽に投入するために、液体洗浄剤投入後、洗濯槽に流入する水で計量蓋(以下、計量セルという場合もある)を濯ぐことを行う人が多く存在する。しかしながら、このような濯ぎ行為は、計量セル内でゲル化を生じさせ、ゲル化による容量の変化をもたらすことのみならず、目盛り自体も見辛くなるため、逆に正確な計量を妨げる原因となってしまう。特に一回使用量が低減された場合、少ない容量で液高さの目盛り幅を設けるために、誤差が大きくなってしまう。更には計量蓋部がボトル部内への液垂れ防止構造を有することで、水が容器内の液体洗浄剤中に混ざってしまいボトル内の洗浄剤表面でゲル化ないし増粘してしまう問題が生じる。これは使用する水が冷たいほど顕著であり、冬場や屋外での洗濯環境において影響は大きくなる。
【0005】
ところで、家庭用の液体洗浄剤等の液体製品を充填する容器として、液垂れ防止構造を有する蓋付き容器は知られており、製品化されている。例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4などを挙げることができる。これらは、蓋部をボトル側に固定された注口部に契合ないし螺合した際に、計量セルの枠が、契合ないし螺合した枠よりも内側になること、及び注口部の開口部が契合ないし螺合した枠より、内側且つ正立させたときの下部に存在するため、蓋をし正立の状態に置くと、計量セル内に残った液体が蓋部の契合部ないし螺合部の上を流れ落ちることなく、ボトル本体に戻ること、から、液垂れ防止構造を有するものである。
【0006】
なお、特許文献5〜7には、特定の非イオン界面活性剤を配合した濃縮タイプの液体洗剤組成物が記載されているが、液垂れ防止構造を有する蓋付き容器に充填した場合の課題について問うものはなかった。
【0007】
特許文献8には、高級アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシドを付加した非イオン界面活性剤と特定の溶剤を配合した濃縮タイプの液体洗浄剤組成物が記載されている。本文及び実施例において好ましい非イオン界面活性剤として、エチレンオキシドを付加した後、プロピレンオキシドを付加した、エチレンオキシド/プロピレンオキシド・ブロックタイプの非イオン界面活性剤が記載されているが、このようなタイプのノニオンは通常のエチレンオキシドタイプの非イオン界面活性剤より液晶、結晶抑制効果が高いものの、計量容量の低減による課題については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−87677号公報
【特許文献2】実開昭64−51043号公報
【特許文献3】実開昭64−11971号公報
【特許文献4】実開平2−69855号公報
【特許文献5】特開2008−7705号公報
【特許文献6】特開2008−7706号公報
【特許文献7】特開2008−7707号公報
【特許文献8】特開平8−157867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、計量セル内での水の接触やボトル容器内への水の侵入等によるゲル化の影響のない、高濃度の界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物を充填した容器入り液体洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記(a)〜(e)成分を含有する液体洗浄剤組成物(以下、本発明の液体洗浄剤組成物という場合もある)を、液垂れ防止構造を備えた、計量用の蓋を有する容器に充填してなる容器入り液体洗浄剤であって、
前記液体洗浄剤組成物における(a)成分と(b)成分の含有量の合計が50〜90質量%であり、(d)成分の含有量が0.5〜8質量%であり、(e)成分の含有量が5〜30質量%であり、(a)〜(e)成分含有量の合計が90質量%以上であり、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=50/50〜90/10であり、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の質量比が[(a)+(b)]/(c)=90/10〜65/35である、
容器入り液体洗浄剤に関する。
(a)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
1a(CO)lO−[(C24O)m/(AO)n]R2a (1)
〔式中、R1aは炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であり、R2aは水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基である。lは0又は1の数であって、l=0のときR2aは水素原子である。AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m、nは平均付加モル数であって、mは14〜50の数であり、nは1〜5の数である。“/”はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
(b)成分:陰イオン界面活性剤。
(c)成分:水混和性有機溶剤
(d)成分:炭素数2〜4のアルカノール基を1〜3有するアルカノールアミン
(e)成分:水
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、計量時の水の接触によるゲル化による計量誤差や、ボトル容器内への水の侵入によるゲル化のない、高濃度の界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物を充填した容器入り液体洗浄剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】容器のボトル部本体、注口部及び蓋部を分離した図である。
【図2】図1の注口部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液体洗浄剤組成物について説明する。本発明の液体洗浄剤組成物は、主たる界面活性剤として(a)成分及び(b)成分を含有する。
【0014】
<(a)成分>
(a)成分の一般式(1)中、R1aは炭素数8〜22の炭化水素基であり、炭素数8〜18、更に8〜16の炭化水素基が好ましい。また、R1aは直鎖の炭化水素基が好ましい。また、R1aの炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R1aは、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。本発明では酸素原子又はカルボニル炭素に結合するR1aの炭素原子が第一炭素原子が好ましい。
【0015】
一般式(1)の化合物を得る方法は、特に限定されるものではないが、l=0のときはR2aは水素原子であり、炭素数8〜22のアルコールにエチレンオキシドを付加反応すること、あるいはエチレンオキシドと炭素数3〜5のアルキレンオキシドを付加反応することによって得ることができる。
【0016】
またl=1のときはR2aは炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、特にはメチル基が好ましい。このような化合物は、アルコール(R2a−OH)に炭素数3〜5のアルキレンオキシド及びエチレンオキシドを順序付けて、或いは同時に付加反応させて付加物とし、次にこれと脂肪酸または脂肪酸エステルとをそれぞれエステル化反応あるいはエステル交換反応させて製造する方法や、脂肪酸にアルキレンオキシドを順序付けて、或いは同時に付加させて付加物とし、つぎにこれとハロゲン化アルキルを反応させることにより、得ることができる。また、脂肪酸とアルコールとのエステル化物(R1aCOOR2a)に、特定の触媒を用いてアルキレンオキシドをエステルの間に付加反応させる方法(特開平4−279552号公報参照)によっても製造することができる。
【0017】
一般式(1)中のmはエチレンオキシドあるいは付加反応後のオキシエチレン基の平均付加モル数であり、mは濯ぎ性、洗浄性能の点から下限値は、好ましくは16以上、より好ましくは18以上であり、上限値は好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。nは炭素数3〜5のアルキレンオキシドあるいはAOで示される付加反応後のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、洗浄性能の点から下限値は1以上、好ましくは2以上であり、上限値は5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0018】
一般式(1)中のAOであるオキシアルキレン基は、アルキレンオキシドの付加反応によって得られた場合はメチル分岐、エチル分岐ないしプロピル分岐した構造を有する。AOは、プロピレンオキシドを付加反応させて得られるオキシプロピレン基(以下、POと表記する場合がある)であることが好ましい。
【0019】
本発明では、特にはAOはオキシプロピレン基であって、オキシプロピレン基の平均付加モル数nが2〜4、特には2〜3であって、且つオキシエチレン基の平均付加モル数mが16〜30、更には18〜25モル付加である化合物を用いることが、濯ぎ性および洗浄力に優れた液体洗浄剤組成物を得られることから好ましい。
【0020】
(a)成分は、一般式(1)において、l=0の化合物が好ましい。ところで、R1aO−に近い位置にAOが存在する構造の場合、AOは疎水性基であることから、R1aである鎖式炭化水素基が延長された構造に類似する構造になり疎水性が高まる傾向を示す。本発明では、一般式(1)において、R1aO−C24O−(l=0の場合)である化合物の割合が、(a)成分を構成している化合物中の75モル%以上、更に80モル%以上(上限は100モル%以下)であることが好ましい。このような化合物は未反応アルコールを除去することによっても得られるが、本発明では特に、R1aOHの1モルに対して、エチレンオキシドを6モル以上、特には8モル以上付加させることで、この要件を達成することができる。この規定は、後述する一般式(1−2)、(1−4)及び(1−5)においても適用してもよい。
【0021】
(a)成分は、一般式(1)において、l=0であって、前記R1aO−C24O−の条件を満たした上で、更に末端が−C24O−Hである方が、疎水性基の炭素数3〜5のオキシアルキレン基である−AO−Hである場合よりも好ましく、この場合、更に末端が−C24O−Hの構造を有する化合物が70モル%以上、更に80モル%以上(上限は100モル%以下)であることがより好ましい。このような化合物は、一般式(1)を製造する上で、最初にエチレンオキシドを前記条件で付加反応させるか、エチレンオキシドの付加後、未反応アルコールを除去させた後、次いでAOの元となる炭素数3〜5のアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドの付加反応工程を行い、最後にエチレンオキシドだけを6モル以上、特には8モル以上付加させることで得ることができる。この規定は後述する一般式(1−5)においても適用してもよい。なおR1aO−C24O−や−C24O−Hの割合はC13−NMRを用いた定量測定で求めることができる。
【0022】
本発明の一般式(1)の化合物は下記一般式(1−1)〜(1−5)の化合物であってもよい。
【0023】
一般式(1−1)において“/”は、本発明の(a)成分のC24O基であるオキシエチレン基(以下、EOと表記する場合がある)及びAO基の関係がランダム結合でもブロック結合でもいずれであってもよいことを意味している。またAOのnは複数のブロック体として分かれていてもよい。一般式(1−1)〜(1−5)で示される化合物は、R1aOH又はR2aOHに対するアルキレンオキシドの反応割合及び反応順序を考慮することで調製することができる。
1a(CO)lO−(AO)n−(EO)m2a (1−1)
1a(CO)lO−(EO)m−(AO)n2a (1−2)
1a(CO)lO−[(EO)m1・(AO)n]−(EO)m22a (1−3)
1a(CO)lO−(EO)m1−[(AO)n・(EO)m2]R2a (1−4)
1a(CO)lO−(EO)m1−(AO)n−(EO)m22a (1−5)
〔式中、R1a、R2a、l、m、n、EO、AOは前記の意味であり、m1、m2は平均付加モル数であって、m=m1+m2である。“・”はランダム結合であることを示す。〕
【0024】
本発明では一般式(1−2)、(1−4)及び(1−5)の化合物であって、且つl=0、且つR2aが水素原子である化合物がより好ましく、特には一般式(1−5)の化合物であって、l=0、且つR2aが水素原子である化合物が最も好ましい。
【0025】
本発明の(a)成分は、次のような製造要件によって得られた非イオン界面活性剤であることが好ましい。すなわち、R1a−OHで表される化合物(R1aは炭素数8〜22の炭化水素基、好ましくは前記R1aと同じ)1モル当りに、エチレンオキシドをm1モル付加させた後、炭素数3〜5のアルキレンオキシドをnモル付加させた後、更にエチレンオキシドをm2モル付加させて得られる非イオン界面活性剤であって、m1が3〜50の数、好ましくは7〜30、より好ましくは8〜20の数であり、nが1〜5の数、好ましくは1〜3の数であり、m1とm2は合計でm1+m2=14〜50、好ましくは16〜30、より好ましくは18〜25の数である非イオン界面活性剤である。m2は前記m1とm1+m2より求めることができるが、本発明で、m2が好ましくは3〜30の数、より好ましくは7〜25の数以上、好ましくは8〜20の数である。本発明では特にAOが末端、及びR1aに結合していないことが好ましく、m1とm2は、m1/(m1+m2)=0.2〜0.8、好ましくは0.3〜0.7である。この場合、R1a、m1、m2及びnは前記一般式(1−5)と同じ意味である。
【0026】
(a)成分の製造に関して、R1a−OH又はR2a−OHのアルコキシル化に用いられる触媒は塩基触媒、酸触媒が挙げられる。このうち特に、コストの面から塩基触媒を使用することが好ましく、塩基として水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムがより好ましく、水酸化カリウムを使用することが最も好ましい。
【0027】
水酸化カリウムを触媒として使用する場合の製造条件の一例を以下に示す。まず原料となる炭素数8〜18の飽和もしくは不飽和の高級アルコール(R1a−OHで表される化合物)に水酸化カリウムを仕込んだ後、窒素置換し、100〜110℃、1〜7kPaで30分〜1時間脱水を行う。次いで100〜170℃、0.3〜0.6MPaでエチレンオキシドの付加を行い、次に100〜150℃、0.3〜0.7MPaの条件で炭素数3〜5のアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドの付加を行い、再度100〜170℃、0.3〜0.7MPaの条件でエチレンオキシドを付加した後、添加した水酸化カリウムと当モル量の酸剤(酢酸、乳酸、グリコール酸等)で中和することによって得られる。なお各エチレンオキシド及び炭素数3〜5のアルキレンオキシドの使用量は、組成物中のm、nの平均値の条件を満たすように、原料アルコールのモル数に応じて選定される。
【0028】
<(b)成分>
本発明では、(a)成分と共に(b)成分の陰イオン界面活性剤を併用することが、洗浄性の点から重要な構成要件である。本来本発明で規定する(a)成分は親水性が強いため、洗浄力は従来洗浄剤に使用されている非イオン界面活性剤より低下する傾向があるが、(b)成分を特定比率で用いることで、従来のエチレンオキシドの平均付加モル数が8〜12付近のポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤と同等以上の洗浄力を達成することができる。
【0029】
本発明の液体洗浄剤組成物において、(b)成分の含有量は、(a)成分との関係から後述する比率を満たす。(b)成分は、洗浄成分としての効果とともに、特定の比率で(a)成分と用いることにより、希釈時の液晶相の形成を抑制する。この理由は定かではないが、(a)成分の分子間に(b)成分の分子が混合されることで、(b)成分の陰イオン基の電気的反発から界面活性剤分子の整列が抑制され、結果として液晶、結晶形成が抑制されるものと予想される。
【0030】
陰イオン界面活性剤としては、例えば下記(b1)〜(b5)が使用できるが、洗浄性能、安定性、溶解性の点で、(b1)、(b2)、(b4)が好ましく、更に(b1)を含有することがより好ましい。
【0031】
(b1)平均炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩。
(b2)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜5であり、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基を含み、平均付加モル数0.2〜2モルの範囲でオキシプロピレン基を含んでいてもよい、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩
(b3)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩。
(b4)平均炭素数8〜20の脂肪酸塩。
(b5)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜5であり、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基を含み、平均付加モル数0.2〜2モルの範囲でオキシプロピレン基を含んでいてもよい、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩
【0032】
(b)成分を構成する塩はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などを挙げることができるが、特に安定性の観点からアルカノールアミン塩であることが好ましい。陰イオン界面活性剤は、液体洗浄剤中には酸型で添加して、系内でアルカリにより中和してもよい。本発明では、(b)成分はアルカノールアミン塩か、酸型で添加して系中でアルカノールアミン〔後述する(f)成分のアルカリ剤として用いるアルカノールアミン〕で中和することが好ましく、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属系の対イオンは、(a)成分の製造工程を経て、或いは金属イオン封鎖剤やその他の陰イオン性化合物の塩として含有する可能性があるが、少ないことが好ましく、実質的には5質量%以下、特には3質量%以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の液体洗浄剤組成物では、洗浄力の観点から、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=50〜90質量%であり、55〜80質量%が好ましく、60〜70質量%が特に好ましい。なお(b)成分の陰イオン界面活性剤は、塩の分子量によって、その質量が異なることから、本発明では塩ではなく、酸型すなわち対イオンを水素原子イオンと仮定した時の質量を(b)成分の質量とする。
【0034】
また、本発明の液体洗浄剤組成物では、洗浄性能、溶解性、安定性の観点から(a)/(b)は質量比として50/50〜90/10であり、55/45〜85/15が好ましく、60/40〜80/20が更に好ましい。一般式洗浄力の点から(a)成分と(b)成分の割合が下限値以上であり、水によるゲル化形成抑制の観点から上限値以下である。
【0035】
<(c)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、結晶相や液晶相抑制形成抑制のために、(c)水混和性有機溶剤を含有する。本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの、すなわち、溶解の程度が50g/L以上である溶剤を指す。
【0036】
(c)成分の含有量は、安定性、溶解性の点から、組成物中、5〜40質量%であり、10〜35質量%が好ましい。
【0037】
(c)成分としては、水酸基及び/又はエーテル基を有する水混和性有機溶剤が好ましい。
【0038】
水混和性有機溶剤としては、(c1)エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルカノール類、(c2)プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類、(c3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのグリコール類、(c4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチルグリセリンエーテル、2−メチルグリセリンエーテル、1,3−ジメチルグリセリンエーテル、1−エチルグリセリンエーテル、1,3−ジエチルグリセリンエーテル、トリエチルグリセリンエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブトキシジグリコール)などのアルキルエーテル類、(c5)2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の芳香族エーテル類、が挙げられる。
【0039】
(c)成分は、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、上記の(c1)アルカノール類、(c2)グリコール類、(c4)アルキルエーテル類、(c5)芳香族エーテル類から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、より好ましくは(c2)グリコール類、(c4)アルキルエーテル類、(c5)芳香族エーテル類から選ばれるものであり、特には2種以上併用することが好ましい。
【0040】
なお本発明では、界面活性剤濃度を高めるために、(c)成分に対する界面活性剤〔(a)成分及び(b)成分〕の質量比が[(a)+(b)]/(c)で90/10〜65/35、好ましくは85/15〜70/30、より好ましくは80/20〜70/30である。この範囲であれば水希釈の際の液晶相の形成が十分に抑制でき、計量誤差も起こりにくくなる。
【0041】
<(d)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物には、(d)成分として、炭素数2〜4のアルカノール基を1〜3有するアルカノールアミンを配合する。アルカノール基はヒドロキシエチル基であるものが好ましい。アルカノール基以外は水素原子であるが、炭素数1〜5のアルキル基、特にはメチル基であってもよい。アルカノールアミンとしては、2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ、ジ、トリの混合物)等のアルカノールアミン類が挙げられる。本発明ではモノエタノールアミン、トリエタノールアミンが最も好ましい。
【0042】
(d)成分は後述するpH調整剤として用いることができる。また前記した(b)成分の対塩として配合してもよい。
【0043】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(d)成分のアルカノールアミンを0.5〜8質量%、好ましくは1〜7質量%含有する。なおアルカノールアミンは、(b)成分の塩などの対イオンとして配合することもでき、それらの量も(d)成分として算入する。
【0044】
<(e)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(e)成分として水を含有する。水は組成物中に5〜30質量%、更には、10〜30質量%含有する。水はイオン交換水などの組成に影響しないものを用いることが好ましい。
【0045】
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記(a)〜(e)成分の含有量の合計、すなわち(a)+(b)+(c)+(d)+(e)成分が90質量%以上、好ましくは95質量%以上である。
【0046】
<その他の成分>
以下、更に本発明に使用できるその他の成分を示す
〔(f)成分〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a)成分及び(b)成分以外の界面活性剤〔以下、(f)成分という〕を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。(f)成分としては、下記の(f1)〜(f3)が挙げられる。
(f1)(a)成分に該当しない非イオン界面活性剤。
例えば、下記(f1−1)及び(f1−2)が挙げられる。
(f1−1)次の一般式で表される多糖型界面活性剤。
1f−(OR2fxy
〔式中、R1fは直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基、R2fは炭素数2〜4のアルキレン基、Gは炭素数5又は6の還元糖に由来する残基、xは平均値0〜6の数、yは平均値1〜10の数を示す。〕
(f1−2)脂肪酸アルカノールアミド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド。
(f2)陽イオン界面活性剤。
例えば、長鎖アルキル基を有する1級〜3級のアミン(但し後述のアルカノールアミンを除く)であって、好ましくは途中にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有してもよい炭素数8〜22のアルキル基を1つ又は2つ有し、残りが水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシ基を有してもよいアルキル基である陽イオン界面活性剤を挙げることができる。本発明では、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する第4級アンモニウム型界面活性剤、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する3級アミンが好ましい。
(f3)両性界面活性剤
例えば、炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン又はカルボベタインを挙げることができる。
【0047】
(f)成分の含有量は、界面活性剤中好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。また各成分の製造工程中生成される本構成要件以外の化合物も含まれる場合がある。それらは本効果と生産上経済性を考慮した上で混入してもよい。なお、(f)成分のうち非イオン界面活性剤(f1)は、前記(a)成分と合わせて、〔(a)+(f1)〕/(b)として、前記(a)/(b)の質量比の範囲内に入ることが好ましい。また、(c)成分に対しても同様に〔(a)+(b)+(f1)〕/(c)が前記〔(a)+(b)〕/(c)の数値範囲に入る事が好ましい。また第4級アンモニウム塩については、対陰イオンを除いた質量を該第4級アンモニウム塩の質量とし、3級アミンについては、窒素原子に結合する基のうち、有機基以外を水素原子に置換した構造の質量を該3級アミンの質量とする。
【0048】
〔(g)成分〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、キレート剤〔以下、(g)成分という〕の含有量が少ないことが好ましい。(g)成分のキレート剤は、液体洗浄剤に用いられる公知のものを用いることができ、例えば、
ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、
ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、
アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属または低級アミン塩等が挙げられる。本発明では前記(b)成分であげたアルカノールアミンを塩とすることが好ましく、酸で配合し系中でアルカリ剤で中和した塩であってもよい。
【0049】
(g)成分の組成物中の配合割合は、酸型とみなした場合に好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。(g)成分は任意成分であるが、酢酸、乳酸又はグリコール酸などの有機酸は、(a)成分のアルキレンオキシドの付加反応の際に用いた塩基触媒の中和剤として用いることが一般に行われている。従って本発明の液体洗浄剤組成中にも混入することが考えられる。従って下限値は(a)成分由来の混入量以上であり、具体的には0.02質量%以上、特には0.05質量%以上である。
【0050】
〔その他の成分〕
更に本発明の液体洗浄剤組成物には、次の(i)〜(x)に示す成分を本発明の効果を損なわない程度で配合することができる。
(i)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤
(ii)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤
(iii)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素
(iv)ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物、蟻酸等の酵素安定化剤
(v)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(vi)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤。特に亜硫酸塩は組成物の変色防止のために配合することが好ましい。
(vii)パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)などの可溶化剤
(viii)平均分子量約200のポリエチレングリコール、平均分子量約400のポリエチレングリコール、平均分子量約2000のポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体
(ix)オクタン、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン類、デセン、ドデセンなどのオレフィン類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類、D−リモネンなどのテルペン類などの水非混和性有機溶剤。
(x)その他、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
【0051】
以下に本発明の液体洗浄剤組成物中、前記任意成分を配合する場合の指標としての濃度を示すが、本効果を損なわない程度に適宜調整され、配合に適さない場合は除外される。(i)の再汚染防止剤及び分散剤の含有量は0.01〜2質量%が好ましい。(ii)の色移り防止剤の含有量は0.01〜2質量%が好ましい。(iii)の酵素の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(iv)の酵素安定化剤の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(v)の蛍光染料の含有量は0.001〜1質量%が好ましい。(vi)の酸化防止剤の含有量は0.01〜5質量%が好ましい。(vii)の可溶化剤は0.1〜2質量%が好ましい。(viii)のポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体は0.01〜2%が好ましい。(ix)の水非混和性有機溶剤は0.001〜2質量%が好ましい。(x)のその他の成分は例えば公知の濃度で配合することができる。
【0052】
なお、上記任意成分のうち(vii)、(viii)、(ix)は液体洗浄剤組成物の安定性に影響を及ぼすのでその配合には特に注意を要する。
【0053】
本発明の組成物は、JIS K3362:1998記載の20℃で測定するpHが、好ましくは6〜11、より好ましくは7.5〜10、最も好ましくは8〜10である。
【0054】
本発明の液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、取り扱いの容易さの点で10〜500mPa・sが好ましく、50〜400mPa・sがより好ましく、100〜300mPa・sが更に好ましい。(c)成分や可溶化剤によりこのような範囲になるように調整することが好ましい。
【0055】
本発明において粘度はB型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を液体洗浄剤組成物又は希釈液の粘度とする。
【0056】
本発明の液体洗浄剤組成物は、衣料、寝具、布帛等の繊維製品用として好適である。
【0057】
<容器>
本発明で用いる容器は、液垂れ防止構造を備えた、計量用の蓋を有する容器であり、液体洗浄剤組成物を充填するためのボトル部、注口部及び蓋部を含んで構成されており、計量セルである蓋部は計量用の目盛りが設けられた計量部を有している。また注口部は注ぎ口を有し、蓋部は注口部が固定されたボトル部に対して着脱自在のものであって、蓋部と注口部との組み合わせにより液垂れ防止構造を形成できる。
【0058】
ボトル部は、特に限定されるものではないが、例えば光を通しにくい材質又は各種顔料等の遮光剤を配合した材質により構成されており、ボトル部の400〜700nmの範囲の最大透過率が好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下のものである。
【0059】
ボトル部の材質としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル(PVC)等のプラスチックを用いることができる。本発明の液体洗浄剤組成物を充填するための容器としては、プラスチック材の成型容器の内圧減少による変形抑制の観点から、液体洗浄剤組成物の収容部を有するプラスチック容器であって、前記収容部が曲げ弾性率(JIS K7171)が2000MPa以上、好ましくは5000MPa以下、より好ましくは3000MPa以下のプラスチックから構成され、且つ肉厚が0.3〜1.5mmであるプラスチック容器が好ましく、通常は、ボトルがこのような曲げ弾性率と肉厚を満たすものが使用される。容器変形の理由としては、本発明の液体洗浄剤組成物は非イオン界面活性剤を高濃度で配合するため、ボトル内の空間に存在する酸素が非イオン界面活性剤に溶解することにより内圧減少が生じたためであると推測される。また、光の透過は酸素の溶解性を促進することから、液体洗浄剤組成物の収容部の光透過率は波長600nm〜700nmの範囲の光について15%以下であることが好ましい。通常は、ボトルがこのような光透過率を有するものであるが、遮光性を高めるために酸化チタンやカーボンブラックを、容器を構成するプラスチックに添加することができる。ボトル部の容量は250〜2500ml、特には300〜1500mlが好ましい。
【0060】
本発明で用いる容器には、内容物の液体洗浄剤を吐出するための注口部を設ける。この注口部はボトル部に設けてもよく、ボトルに着脱自在で、かつ蓋部を着脱自在な別の部品に設けてもよい。注口部の形状、大きさなどは特に限定されないが、ボトルにイオン交換水を充填したときのイオン交換水の最大吐出速度が、好ましくは10〜80ml/s、より好ましくは20〜70ml/sになるように注口部の開口部分(注口)の大きさ及び形状を選定することが好ましい。
【0061】
蓋部は計量のための目盛りを有することが好ましい。本発明に係る液体洗浄剤組成物が高濃度であり使用量が少なくなっていることから、液体洗浄剤組成物を10ml(20℃)収容したときの液高さが15〜30mmである計量部を有することが好ましい。計量部は、液体洗浄剤組成物を10ml収容したときの液高さが15mm以上であることが好ましく、18mm以上であることがより好ましく、濯ぎ口との関係から、30mm以下であることが好ましく、特には25mm以下であることがより好ましい。特には、20mm±3である。
【0062】
また蓋部及び注口部は、特開平9−87677号公報の図1(a)〜(c)及び段落0031に記載され、さらには実開昭64−51043号公報の第1図〜第3図、実開昭64−11971号公報の第1図〜第3図、実開平2−69855号公報の第2図〜第5図(Fig2〜5)にも示されているような、蓋で計量した後、蓋内の壁面などに残留した液体がボトル部に戻り、容器外に液が漏れない機能を有する液垂れ防止構造を有する。
【0063】
蓋部の材質は、高密度、中密度又は低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレン(透明性等の点でα−オレフィン、好ましくは1−ブテンとの共重合体を使用する)から選ばれる1種以上の樹脂を用いることが好ましい。
【0064】
次に、本発明で用いる容器の例を図1及び図2に基づいて説明する。図1に示すように、容器は、ボトル部本体1と、ボトル部本体1と螺合される注口部2からなるボトル部と、蓋部3からなる。図2に示すように、注口部2には、開口部(注口)5の周囲に溝6、溝7が設けられており、蓋部3との組み合わせで、容器外部へ液が流れ出ない液垂れ防止性を有している。このような容器は、注口部2の注口面積が0.5〜3cm2で、蓋部3の高さ(h)が30〜70mmで、ボトル部本体1の蓋部3の最大容量が20〜60mlのものが好ましい。
【実施例】
【0065】
表1の液体洗浄剤組成物を調製し、図1及び図2に示される液垂れ防止構造を有する計量用の蓋付きボトルに充填した。ボトル部本体1は、酸化チタンを1.0質量%添加したPET樹脂(曲げ弾性率〔JIS K7171〕:2400MPa、波長600〜700nm間の光透過率:10%以下)を用いて製造された満容量438mL、最大外径61mm、胴部外径59mm、高さ190mm、ボトルの胴部平均肉厚0.5mmの円筒状ボトルを用いた。蓋部3として、10mlの目盛りが液高さ20mmにある計量用の蓋(計量容量26mL)を用いた。また、注口部の開口部5の面積が約3cm2の注口部2をボトルに嵌合させた。なお、蓋部3と注口部2の螺合される部分の直径は35mm、注口部2とボトル部本体との嵌合部分の直径は43mmである。
【0066】
<評価方法>
液体洗浄剤組成物10mlをボトルから計量用蓋で計量し、液体洗浄剤組成物を計量用蓋からビーカーに移した後、蛇口から150ml/sの速度で流れている水道水(10℃)にて濯いだ後、ぬれた状態で蓋をボトルはめ込む。30分正立状態で放置(10℃)した後、同じ所作を10回続けて行う。
【0067】
<評価結果>
上記評価方法によると、配合例1〜5は、処理終了後の計量蓋内部にゲル状のものは見られず、ボトル内の液体洗浄剤組成物に対してもゲル化ないし増粘度化の現象は見られない。特に配合例2及び3は、水道水の温度がより厳しい条件である5℃以下の場合であってもゲル化などの問題は生じない。
【0068】
一方、配合例6、7、9及び10については、回数を重ねることに計量蓋内にゲル状の物質の増加が見られる。また計量の際にボトル内部からゲル状の物質がボトル口から計量蓋へと流れるのが見られる。配合例8は組成物自体がゲル化してしまった。
【0069】
【表1】

【0070】
(注)表中の成分は以下のものである。なお、表中では、(a’−1)及び(a’−2)も(a)成分とみなして構造や量比を示した。(d)のモノエタノールアミンは、(b−2)成分由来のアルカノールアミンを含む量として記載している。以下において、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドである。
(a−1):炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにEOを20モル、POを平均2モルの順にブロック付加させたもの(一般式(1)中のR1aが炭素数10〜14の直鎖アルキル基、lが0、AOがオキシプロピレン基、mが20、nが2、R2aがHであり、R1aO−にEO、POの順で結合したブロック配列の非イオン界面活性剤)
(a−2):炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにEOを9モル、POを2モル、EOを9モルの順にブロック付加させたもの(一般式(1−5)中のR1aが炭素数10〜14の直鎖アルキル基、lが0、AOがオキシプロピレン基、m1が9、nが2、m2が9、R2aがHであり、R1aO−にEO、PO、EOの順で結合したブロック配列の非イオン界面活性剤)
(a−3):炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにEOを10モル、POを2モル、EOを10モルの順にブロック付加させたもの(一般式(1−5)中のR1aが炭素数10〜14の直鎖アルキル基、lが0、AOがオキシプロピレン基、m1が10、nが2、m2が10、R2aがHであり、R1aO−にEO、PO、EOの順で結合したブロック配列の非イオン界面活性剤)
(a−4):一般式(1−1)中のR1aが炭素数11の1級直鎖アルキル基、lが1、AOがオキシプロピレン基、mが15、nが1.5、R2aがCH3であり、R1aCOにPO、EOの順で結合したブロック配列の非イオン界面活性剤
【0071】
(a’−1):炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにEOを10モル付加させたもの(一般式(1)中のR1aが炭素数10〜14の直鎖アルキル基、lが0、mが10、nが0、R2aがHである非イオン界面活性剤)
(a’−2):炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにEOを10モル、POを2モル付加させたもの(一般式(1)中のR1aが炭素数10〜14の直鎖アルキル基、lが0、mが10、nが2、R2aがHである非イオン界面活性剤)
(a’−3):炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにEOを5モル、POを2モル、EOを5モルの順にブロック付加させたもの(一般式(1−5)中のR1aが炭素数10〜14の直鎖アルキル基、lが0、AOがオキシプロピレン基、m1が5、nが2、m2が5、R2aがHであり、R1aO−にEO、PO、EOの順で結合したブロック配列の非イオン界面活性剤)
【0072】
(b−1):炭素数10〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸
(b−2):ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(炭素数10〜14の直鎖アルキル、EO平均付加モル数3、モノエタノールアミン塩)
【0073】
(c−1):ブトキシジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)
(c−2):プロピレングリコール
【符号の説明】
【0074】
1:ボトル部本体
2:注口部
3:蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(e)成分を含有する液体洗浄剤組成物を、液垂れ防止構造を備えた、計量用の蓋を有する容器に充填してなる容器入り液体洗浄剤であって、
前記液体洗浄剤組成物における(a)成分と(b)成分の含有量の合計が50〜90質量%であり、(d)成分の含有量が0.5〜8質量%であり、(e)成分の含有量が5〜30質量%であり、(a)〜(e)成分の含有量の合計が90質量%以上であり、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=50/50〜90/10であり、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の質量比が[(a)+(b)]/(c)=90/10〜65/35である、
容器入り液体洗浄剤。
(a)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
1a(CO)lO−[(C24O)m/(AO)n]R2a (1)
〔式中、R1aは炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であり、R2aは水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基である。lは0又は1の数であって、l=0のときR2aは水素原子である。AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m、nは平均付加モル数であって、mは14〜50の数であり、nは1〜5の数である。“/”はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
(b)成分:陰イオン界面活性剤。
(c)成分:水混和性有機溶剤
(d)成分:炭素数2〜4のアルカノール基を1〜3有するアルカノールアミン
(e)成分:水
【請求項2】
計量用の蓋が、液体洗浄剤組成物を10ml(20℃)収容したときの液高さが15〜30mmである計量部を有する、請求項1に記載の容器入り液体洗浄剤。
【請求項3】
(a)成分が一般式(1)中のlが0の化合物であり、該(a)成分を構成している化合物中、R1aO−に結合するオキシアルキレン基がオキシエチレン基である化合物の割合が、75モル%以上である、請求項1又は2に記載の容器入り液体洗浄剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−229385(P2010−229385A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161050(P2009−161050)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】