説明

容器入り調味パスタの製造方法

【課題】本発明は、パスタとソースが一緒に調理された容器包装入り調味パスタにおいて、そのパスタの食感が、長期間にわたり、ふやけずに、パスタ本来のしっかりした歯応えを有するものを製造することを目的とする。
【解決手段】水を添加吸収させていないパスタと、デキストリンを溶解してなる調味液状物を容器に充填密封する原料充填工程と、
前記容器を加熱処理することにより、前記パスタと前記調味液状物とからなる内容物を殺菌する殺菌工程と、
を含むことを特徴とする、容器入り調味パスタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスタと調味液状物が一緒に容器に充填、密封され、加熱殺菌された容器入り調味パスタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パスタ料理は、イタリア料理の代表的なメニューの一つで、一般的には茹でたパスタをミートソースや、トマトソース、ホワイトソースなどの各種ソースと合わせて供されるが、その食感は、アルデンテという中心に髪の毛の細さ程度の硬さを残して、茹で上げた状態が理想的とされる。しかし、ソースと合わせたパスタを長期間保管すると、パスタがソースを吸収し、ふやけてしまうため、パスタ本来のしっかりした歯応えが失われるという問題があった。
【0003】
そこで、従来は、常温やチルド環境で長期間保管される、調味パスタ製品を提供する場合、パスタとソースを、それぞれ別々に包装し、喫食時にそれらを合わせることで上記問題を解決していた。例えば、容器入り調理済みパスタと、レトルトパウチに包装されたソースがセットされた加工食品が、その例として挙げられる。しかし、パスタとソース、それぞれに容器包装が必要となり、包材コストが嵩んだり、環境への負荷が大きくなるという別の課題が生じることになる。
【0004】
また、α化された定形性澱粉食品をデキストリン又はデキストリンアルコール溶液に浸漬したり (特許文献1)、パスタを5〜25%のデンプン糖を含んだソースで加熱調理することにより(特許文献2)、パスタのふやけを防止する方法が提案されている。しかし、いずれも、茹でて、パスタに含まれる澱粉が糊化しているため、ソースと合わせて加熱調理する過程で、パスタ本来のしっかりした歯応えが失われてしまう。また、同じ目的でパスタにトランスグルタミナーゼを作用させたり(特許文献3)、乾燥パスタを蒸煮処理する方法(特許文献4)が提案されているが、いずれも、充分な効果は得られず、パスタとソースを合わせた時のふやけの問題を解決することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54−105249号公報
【特許文献2】特開2001−078696号公報
【特許文献3】特開平7−023752号公報
【特許文献4】特開平10−271971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子レンジ等の加熱によって簡単にパスタ料理を食することができるように、パスタと調味液状物が一緒に容器に充填、密封されている容器入り調味パスタを製造する方法であって、長期間にわたり、ふやけずに、しっかりした歯応えのある調味パスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するための手段として以下の本発明を完成させた。
(1) 水を添加吸収させていないパスタと、デキストリンを溶解してなる調味液状物とを容器に充填、密封する充填工程と、
前記容器を加熱処理することにより、前記パスタと前記調味液状物とからなる内容物を、殺菌する加熱殺菌工程と、
を含むことを特徴とする、容器入り調味パスタの製造方法。
(2) 上記パスタの水分含量が5質量%〜30質量%であることを特徴とする、(1)記載の方法。
(3) 前記パスタがショートパスタであることを特徴とする、(1)又は(2)記載の方法。
(4) 前記調味液状物の平均DE値が0.5〜4.0の範囲内にあることを特徴とする、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 前記パスタが、予め蒸気加熱処理されたものであることを特徴とする、(1)から(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 前記加熱殺菌工程後に、前記容器入り調味パスタを冷蔵する冷蔵工程を含むことを特徴とする、(1)から(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 前記冷蔵工程が、−10〜10℃の雰囲気下で2〜72時間の条件で行われることを特徴とする、(6)記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の容器入り調味パスタは、パスタとソースを別々に調理するのではなく、容器ごと電子レンジなどで加熱するだけで一度に調理して喫食することができるという簡便性を備えているので、いつでも、だれでも簡単に喫食することができる。
また、電子レンジなどで加熱して得られたパスタは、しっかりした歯応えを有している。
また、本発明の方法で得られた上記パスタは、長期間にわたり、ふやけずに、しっかりした歯応えをゆうしている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、テンシプレッサーによりペンネの表層の硬さおよび破断強度を測定した際の破断強度曲線を示すものである。
【図2】図2は、製造直後のペンネ1本の表層の硬さをテンシプレッサーで繰り返し10本分、測定した時の平均値を示すものである。
【図3】図3は、製造直後のペンネ1本の破断強度をテンシプレッサーで繰り返し10本分、測定した時の平均値を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、容器入り調味パスタとは、レトルトパウチ、カップ成形容器、口栓付きパウチなどの容器にパスタと調味液状物が一緒に充填、密封されたもので、電子レンジなどで温めるだけで喫食することができる調味パスタのことである。
【0011】
こうした本発明の容器入り調味パスタの製造方法について、以下に述べる。
パスタ
本発明では、水を添加吸収させていないパスタを用いることがひとつの特徴である。水を添加吸収させたパスタを用いると、パスタの中心まで速やかに澱粉が糊化し加熱殺菌工程および保管時にふやけてしまうことになり、本発明の目的を達成することができなくなる。
上記パスタは、小麦(デュラム・セモリナ)を主原料とし、水と合わせて練ったものをいろいろな形状に成形し、乾燥したものを指す。
【0012】
上記パスタは、その形状により、ロングパスタとショートパスタに大きく分けられ、ロングパスタとしてはスパゲッティ、フェットチーネ、リングイネなどあり、ショートパスタとしてはマカロニ、ペンネ、フスィリ、ファルファーレなどがある。本発明では、どちらのパスタでも使用できるが、容器への充填適性という点を考慮すると、ショートパスタの方が好ましい。
また、使用するパスタとしては、喫食時にしっかりした歯応えを残すという点から蛋白質含量がより多い方が好ましい。
【0013】
ところで、上記水を添加吸収させていないパスタとは、常法により茹でることにより澱粉を糊化させるなどの処理をほどこしていない、いわゆる、水を吸収させていないものを指し、その水分含量としては、5質量%〜30質量%、好ましくは、7質量%〜20質量%である。茹でて、パスタの水分が30質量%を超えると、調味液状物と合わせて加熱殺菌する過程で、パスタの中心まで水分が浸透し、澱粉の糊化が促進してしまう。 その結果、パスタは多くの水分を吸収することになり、加熱殺菌後に、しっかりした歯応えが失われてしまう。
【0014】
一方、パスタが水を吸収している場合に、上記調味液状物中のデキストリン濃度を高くすることで、調味液状物からパスタへの水分移行速度を抑制することはできるが、調理後の調味液状物のベタツキが強くなり、調味パスタとしての美味しさが失われる。
【0015】
水を添加吸収させていないパスタは、容器に充填する前に蒸気加熱処理しても良い。この蒸気加熱処理は実質的に水を添加することなく蒸気で加熱処理を施すことで、パスタの表層に糊化層ができ、パスタ内部への水の浸透を抑制することになる。その結果、表層と内部の水分勾配をより大きくすることができ、しっかりした歯応えのある食感をより感じ取ることができるようになる。
【0016】
ここで、実質的に水を加えることなく蒸気加熱処理を施す方法としては、例えば、パスタに飽和水蒸気を接触させて加熱する方法、或いはパスタに過熱水蒸気を接触させて加熱する方法等を掲げることができる。蒸気加熱条件としては、例えば、90℃〜120℃で1分間〜90分間、好ましくは、常圧の飽和水蒸気で、4分間〜60分間の条件を掲げることができる。
【0017】
デキストリンを溶解してなる調味液状物
本発明は、調味液状物にデキストリンが溶解されていることをひとつの特徴とする。
本発明において調味液状物とは、水に、塩、醤油、砂糖などの調味料や、各種だし、油、各種食材などを添加して適宜調理してもよく、また喫食時に更に調味料や、各種だし、油、各種食材などを添加してもよい。また、必要により加熱処理を施してもよい。
【0018】
例えば、本発明の一実施形態では、調味液状物はスープの一部又は全部として提供されることができる。典型的には、水に、必要に応じて玉葱、人参、馬鈴薯、トマト、キノコ類などの野菜、牛肉、豚肉、鶏肉といった肉類や、海老、イカ、ホタテなどの魚介類のような各種具を加え、醤油、砂糖などの調味料、各種だし、油などにより適宜着味し、加熱調理することによりスープを得る。本発明の他の一実施形態では、調味液状物の調味は、後述する原料充填工程の際に容器中で行ってもよい。こうして得られるスープのうち液状の部分(スープ全部が液状のこともあり得る)を調味された液状物ということができる。スープのうち非液状の部分、例えば、目開き2.0mm程度のメッシュで常温(25℃)にてスープを濾過したときにメッシュ上に残留する成分、典型的には固体状の具は、調味液状物には包含されない。
【0019】
デキストリン
本発明で用いられるデキストリンとは、原料澱粉を低分子化したもので、乾式分解した焙焼デキストリンでも、湿式分解したもの、例えば酸処理澱粉、酸化澱粉、酵素変性デキストリンでもよい。又、これらのデキストリンに、水素添加し還元したものを使用してもよく、特に限定されるものではない。
【0020】
上記デキストリンのDEとしては5〜20を例示することができる。DEが5〜20の大きさのデキストリンは、調味液状物の保水能を高める効果においては、DEが5未満のデキストリンよりも小さいが、パスタの内部にも浸透し、小麦澱粉の糊化を効果的に抑制する。その結果、調味液状物からパスタへの水分移行速度が抑えられ、また、当該調味液状物の風味・物性に与える影響を小さくすることができる。
【0021】
こうしたデキストリンの添加量は、調味液状物の平均DE値が0.3〜4.5、より好ましくは、0.5〜4.0になるように、上記デキストリンを配合する。当該DEのデキストリンに加えて、必要に応じて5〜20以外のDEを有するデキストリンを配合して、調味液状物の平均DE値を上記範囲に調整してもよい。
【0022】
調味液状物の平均DE値が0.3より小さい場合、すなわちDEの小さいデキストリンを調味液状物中に多く配合した場合には、小麦澱粉の糊化を効果的に抑えられないし、調味液状物のベタツキが強くなる。一方、調味液状物の平均DE値が4.5より大きくなると、小麦澱粉を抑制する効果が弱くなり、調味液状物の甘味も強く感じられるようになる。
【0023】
なお、上記した調味液状物の平均DE値は、調味液状物中に溶解されるデキストリンのDE値に、当該デキストリンの調味液状物中における比率、すなわち溶解されたデキストリンの重量/デキストリンを溶解してなる調味液状物の重量で得られる比率を掛けて得られる値である。複数種のデキストリンが使用される場合には、各デキストリンについて上記の手順で算出された値の和が調味液状物の平均DE値になる。例えば、DE10のデキストリンを9質量%、DE5のデキストリンを6質量%それぞれ溶解してなる調味液状物の平均DE値は、次の式で求めることができる。
調味液状物の平均DE値=10×0.09+5×0.06=1.2
即ち、上記の例の場合の調味液状物の平均DE値は1.2ということになる。
なお、調味液状物には更に、デキストリンの保水能を補う目的で、調味液状物のベタツキに影響を与えない範囲で、ゼラチンや、澱粉、加工澱粉、ペクチン、キサンタンガム、寒天などの多糖類が適宜添加されてもよい。
【0024】
充填工程
充填工程は、水を添加吸収させていないパスタと、デキストリンを溶解してなる調味液状物とを容器に充填、密封する工程である。
前記調味液状物は、容器に充填され、更に玉葱、人参、馬鈴薯、トマト、キノコ類などの野菜、牛肉、豚肉、鶏肉といった肉類や、海老、イカ、ホタテなどの魚介類のような各種具材が容器に充填されてもよい。これらの具材は上述したように調味液状物の調味段階に由来するものであってもよいし、充填工程で新たに添加されたものであってもよい。
【0025】
パスタと、デキストリンを溶解してなる調味液状物との配合比は、パスタ1重量部に対し、当該調味液状物が1.5〜10質量部、好ましくは、2.5〜7質量部であることが望ましい。上記範囲より、調味液状物が多くなってくると、パスタがふやけて、パスタのしっかりした食感が失われることになる。一方、調味液状物の量が少なくなってくると、パスタの食感が硬くなってくる。
【0026】
容器としては、密封することが可能で、耐熱性に優れた合成樹脂製の袋状乃至成形容器であればよく、容器の大きさや形状については特に限定されるものではないが、概ね一食分を充填、密封し得る大きさであることが望ましい。
【0027】
加熱殺菌工程
加熱殺菌工程は、前記容器内に密封充填された、前記パスタと前記調味液状物とからなる内容物を殺菌する工程である。また、同時に、当該工程において前記パスタを調味液状物で調理するようにしてもよい。
加熱方法としては、例えば、レトルト釜などの圧力調整できる圧力釜により加熱する方法が挙げられる。この方法によれば、容器内に気体が含まれていたとしても、容器を破袋させることなく加熱して、内容物を殺菌することができ、更には加熱調理することもできる。加熱条件としては、所定の殺菌価が達成される条件、例えば常温流通させるための殺菌価としてF120℃=4分以上という条件を例示することができ、また、チルド流通させるための殺菌価としてはF100℃=10〜30分という条件を例示することができる。こうした加熱殺菌処理により、常温やチルド流通で長期間保存できる調味パスタを提供することもできる。
【0028】
冷蔵工程
冷蔵工程は、殺菌工程後の前記パスタを冷蔵する工程である。殺菌工程後、容器ごと冷蔵する。この冷蔵により、パスタが老化し、調味液状物中の水分を吸収する能力が低下するため、パスタのしっかりした歯応えを、長時間、維持することができる。冷蔵工程では、−10℃〜10℃の雰囲気下で、2時間〜72時間、より好ましくは、−5℃〜5℃で、4時間〜60時間の条件で行うのが良い。冷蔵温度が10℃より高くなってくると、老化速度が遅くなり、その間にパスタが水分を吸収してふやけてしまう可能性がある。
一方−10℃より低くなると、パスタが凍結し、糊化した状態を維持するため、老化が促進しないことになる。
【0029】
このようにして、本発明の容器入り調味パスタを得ることができる。得られた容器入り調味パスタは、電子レンジやホットベンダーあるいは湯煎で加熱して喫食することができる。
【実施例1】
【0030】
<実施例1>
(1)ペンネ(水分12%(W/W),外径8mm,肉厚1.3mm,長さ40mm)32gを130mm×150mmの大きさのレトルト用パウチに充填する。
(2)油で歩留り50%まで炒めた玉葱5g、魚介系エキス1g、食塩2g、カットトマト10g、トマトペースト10g、および、DE8のデキストリン20.5gを水69.5gに分散・溶解させて、平均DE値1.4のスープを得る。
(3)(2)のスープを(1)のパウチに充填、密封する。
(4)上記パウチの最遅点のF0値が、3.1分以上になる熱量を加えて、加熱殺菌処理を施すとともに、パスタを調理して容器包装入り調味パスタを得た。
(5)加熱殺菌処理後、5℃の雰囲気下で上記容器包装入り調味パスタを24時間冷却した。
【0031】
<実施例2>
予めペンネ(水分12%(W/W))を常圧飽和蒸気(100℃)で30分間、蒸気加熱処理を施して、水分15%の蒸煮パスタを充填する以外は、実施例1と同様の方法にて、容器包装入り調味パスタを製造した。
<実施例3>
DE17.5のデキストリンを20.5gスープに溶解させて、平均DE値3.0のスープを得た以外は、実施例1と同様の方法にて、容器包装入り調味パスタを製造した。
<実施例4>
DE24.5のデキストリンを20.5g溶解させて、平均DE値4.3のスープを得た以外は、実施例1と同様の方法にて、容器包装入り調味パスタを製造した。
【0032】
<比較例1>
(1)ペンネ32gを1分間ボイルした後、湯切りして、水分33%(W/W)のボイルパスタを得た。
(2)(1)のボイルしたペンネ42gと、実施例1と同じ配合比で作成したソース118gを130mm×150mmの大きさのパウチに充填した。
(3)上記パウチの最遅点のF0値が、3.1分以上になる熱量を加えて、調理とともに、加熱殺菌処理を施した。
(4)加熱殺菌処理後、5℃の雰囲気下で24時間冷却し、容器包装入りリゾットを製造した。
【0033】
<比較例2>
ボイル時間が5分間で、水分45%(W/W)のボイルしたペンネを52g充填する以外は、比較例1と同様の方法にて容器包装入り調味パスタを製造した。
<比較例3>
ボイル時間が10分間で、水分54%(W/W)のボイルしたペンネを62g充填する以外は、比較例1と同様の方法にて容器包装入り調味パスタを製造した。
【0034】
比較試験1
実施例1〜2と比較例1〜3のペンネについて、製造直後に、下記の方法に従い、テンシプレッサー(タケトモ電気製)にて、ペンネ1本の表層の硬さと破断強度を測定した。
(1)電子レンジで各容器包装入り調味パスタを、品温70℃〜100℃に温めて喫食状態にした。
(2)次いで、各調味パスタ中のペンネを取り出し、乾燥させないように、これらペンネを25℃の密閉下にて、2時間放置した。
(3)測定試料載置面を有する、該測定試料載置面の垂線方向に移動可能な試料台と、幅2mmのV型のプランジャーであって、前記試料接触面が前記測定試料載置面に対向する位置に固定して配置されているプランジャーとを備えるテンシプレッサー(タケトモ電機製の引張圧縮試験装置)の前記測定試料載置面上に前記放置後のペンネ1本を、前記プランジャーと垂直の位置関係になるように置いた。
(4)前記試料台を再び、前記プランジャーに2mm/秒の速度で接近させ、前記ペンネを、前記試料台の測定試料載置面と前記プランジャーの試料接触面との間で、ペンネの厚みの30%分を圧縮し、引き続き、前記試料台と前記プランジャーとを2mm/秒の速度で遠ざけ、前記プランジャーの試料接触面から前記ペンネを引き離した。この操作の間に、ペンネからプランジャーが受ける圧縮応力の最大値を測定し、「表層の硬さ」の値とした。その結果を図2に示す。
(5)前記試料台を前記プランジャーに2mm/秒の速度で接近させ、前記ペンネを、前記試料台の測定試料載置面と前記プランジャーの試料接触面との間で、ペンネの厚みの95%分を圧縮し、引き続き、前記試料台と前記プランジャーとを2mm/秒の速度で遠ざけ、前記プランジャーの試料接触面から前記ペンネを引き離した。この操作の間、ペンネが破断する時に受ける応力を「破断強度」として測定した(図1参照)。その結果を図3に示す。
(6)尚、図2および図3の値は、表層の硬さ、破断強度を繰り返し10本、測定したときの平均値である。
【0035】
比較試験2
実施例1〜4と比較例1〜3の容器入り調味パスタについて、製造直後と、30℃で7日間保存した後、電子レンジなどで品温70℃以上になるまで温めて、ペンネとソースの食感・風味を官能評価した。
【0036】
【表1】

【0037】
比較試験1および比較試験2の結果から、実施例1と実施例2は、スープからペンネへの水分移行が抑えられているため、製造直後、ペンネは、ふやけることなく、しっかりとした歯応えがあった。これを30℃−7日間保存した後も、変化は小さく、同様の食感を維持することができた(30℃−7日間保存した実施例1のパスタの物性をテンシプレッサーで測定したところ、表層の硬さは、93gw/cm2、破断強度は2,410gw/cm2だった)。
また、実施例3で、平均DE値が3.1のソースで、ペンネを調理・殺菌すると、ソースの甘味がやや強くなるものの、比較的しっかりした歯応えのものが得られた。実施例4については、実施例3より甘みが強くなり、風味バランスへの影響が見られ、30℃−7日後には実施例3の歯ごたえよりも少し劣る結果がでていた。
それらに対して、比較例1〜3は、パウチに充填するまでに、ペンネが水を含むため、殺菌時に小麦澱粉の糊化が促進し、ペンネが水分を多く吸収した結果、ペンネは、しっかりとした歯応えが失われ、ふやけたような感じがあった。これを、30℃−7日間保存すると、さらに食感が柔らかくなった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の方法により、パスタの利用範囲を広げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を添加吸収させていないパスタと、デキストリンを溶解してなる調味液状物とを容器に充填、密封する充填工程と、
前記容器を加熱処理することにより、前記パスタと前記調味液状物とからなる内容物を殺菌する加熱殺菌工程と、
を含むことを特徴とする、容器入り調味パスタの製造方法。
【請求項2】
上記パスタの水分含量が5質量%〜30質量%であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記パスタがショートパスタであることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法
【請求項4】
前記調味液状物の平均DE値が0.5〜4.0の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記パスタが、予め蒸気加熱処理されたものであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記加熱殺菌工程後に、前記容器入り調味パスタを冷蔵する冷蔵工程を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記冷蔵工程が、−10〜10℃の雰囲気下で2〜72時間の条件で行われることを特徴とする、請求項6記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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