説明

容器本体と容器蓋間の洗浄方法

【課題】蓋のスカート壁の上部に複数個のスリットを形成する必要なくして、そしてまた高温の洗浄液ではなくて常温の洗浄液を使用した場合でも、容器本体の口頸部の外周面と口頸部に装着された蓋のスカート壁の内周面との間に充分な量の洗浄液を流入せしめることを可能にする。
【解決手段】容器本体の口頸部における環状係止あご8に該環状係止あごの下面8aから上面8cまで軸線方向に延びる流動路12を周方向に間隔をおいて複数個形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体及び容器蓋間の洗浄方法、更に詳しくは、容器本体に果汁の如き内容物を充填し、そして容器本体の口頸部に蓋を装着して口頸部を密封した後に、容器本体及び蓋から構成される容器に洗浄液を噴射して口頸部の外周面及び蓋の内面(特にスカート壁の内周面)を洗浄する所謂密封後洗浄を適用するのに適した容器本体と容器蓋間の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体と合成樹脂製蓋とから構成される容器内に果汁等の内容物を封入する際には、口頸部を通して容器本体内に果汁の如き内容物を充填し、しかる後に口頸部に蓋を装着して口頸部を密封している。ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂或いはガラスから形成することができる容器本体は、その頂面が開口された円筒形状の口頸部を有する。かかる口頸部の外周面には雄螺条とその下方に位置する環状係止あごが形成されている。ポリエチレン或いはポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から形成される蓋は、円形天面壁とこの天面壁の周縁から垂下する円筒状スカート壁とを有する。
かかるスカート壁には周方向破断ラインが形成されており、スカート壁は周方向破断ラインよりも上方の主部と周方向破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されている。スカート壁の主部の内周面には雌螺条が形成されており、タンパーエビデント裾部の内周面には係止片が周方向に間隔をおいて複数個形成されている。容器本体の口頸部に蓋を被嵌して閉方向に回転せしめ、蓋の雌螺条を口頸部の雄螺条に螺合せしめ、そしてまた蓋の係止片を口頸部の環状係止あごの下方に位置せしめることによって、口頸部に蓋が装着される。
【0003】
而して、当業者には周知の如く、口頸部を通して容器本体内に内容物が充填する際には、幾分かの内容物が溢れて口頸部の外周面に付着することが少なくない。口頸部に付着した内容物をそのままにしておくと、大気に晒されている内容物にかびが発生する等の虞がある。また、固化した内容物によって蓋が口頸部に固着され、口頸部の開封のために蓋を開方向に回転せしめることが困難になる傾向がある。そこで、例えば特開平5−65151号公報に開示されている如く、蓋のスカート壁の上部に複数個のスリットを形成し、口頸部に蓋を装着した後に蓋に洗浄液を噴射し、上記スリットを通して口頸部の外周面と蓋のスカート壁の内周面との間に洗浄液を流入せしめ、かくして口頸部の外周面及び蓋のスカート壁の内面(特にスカート壁の内周面)を洗浄している。
なお、容器本体と容器蓋間の洗浄に関連して以下の技術が開示されている。
【特許文献1】実願昭59−112189号公報
【特許文献2】特開2001−130605号公報
【特許文献3】実願昭62−176441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然るに、蓋のスカート壁の上部に複数個のスリットを形成した蓋を使用する場合、その理由はかならずしも明確ではないが、口頸部の外周面とスカート壁の内周面との間に充分な量の洗浄液を流入せしめるためには、洗浄液を相当高温、例えば70℃程度に加熱することが必要である。従がって、耐熱処理が施されていない容器本体及び/又は蓋に対して適用すると、口頸部及び/又は蓋が変形され、口頸部の密封が毀損されてしまう虞が少なくない。また、洗浄液の流入を促進するためにスリットを比較的大きなものにせしめると、本来的にはスリットが存在しないのが望まれるスカート壁の上部に比較的大きなスリットが複数個存在することになり、蓋自体の外観が劣化され、そしてまたスリットに埃が堆積してしまうことになる。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、蓋のスカート壁の上部に複数個のスリットを形成する必要なくして、そしてまた高温の洗浄液ではなくて常温の洗浄液を使用した場合でも、容器本体の口頸部の外周面と蓋のスカート壁の内周面との間に充分な量の洗浄液を流入せしめることを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は鋭意検討の結果、頂面が開口された円筒形状の口頸部を有し、口頸部の外周面には雄螺条と雄螺条の下方に位置する環状係止あごとが形成されている容器本体において、環状係止あごに、その下面から上面まで軸方向に延びる流動路を周方向に間隔をおいて複数個形成すると、蓋のスカート壁の上部に複数個のスリットを形成する必要なくして、そしてまた高温の洗浄液ではなくて常温の洗浄液を使用した場合でも、容器本体の口頸部の外周面と蓋のスカート壁の内周面との間に充分な量の洗浄液を流入せしめることができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する容器本体と容器蓋間の洗浄方法として、頂面が開口された円筒形状の口頸部を有し、該口頸部の外周面には雄螺条と該雄螺条の下方に位置する環状係止あごとが形成され、該雄螺条には、軸線方向に該雄螺条を貫通して延びる流動路が周方向に間隔をおいて形成されており、該環状係止あごには軸線方向に該環状係止あごの下面から上面まで延びる流動路が周方向に間隔をおいて複数個形成され、該環状係止あごの下側には、ネックリングを設け、該雄螺条の該流動路の少なくとも1個は該環状係止あごの該流動路の1個に対して軸線方向に整合せしめられている容器本体と、
円形天面壁及び該天面壁の周縁から垂下する円筒状スカート壁を有し、該スカート壁には周方向破断ラインが形成されており、該スカート壁は該周方向破断ラインよりも上方の主部と該周方向破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該スカート壁の主部の内周面には雌螺条が形成され、該タンパーエビデント裾部の内周面には該環状係止あごに係止せしめられる係止片が周方向に間隔をおいて複数個形成されている合成樹脂製蓋とを用いた容器本体と容器蓋間の洗浄方法において、
該口頸部を通して容器本体内に内容物を充填し、
該口頸部の該雄螺条に該合成樹脂製蓋の該雌螺条を螺合せしめた後、
該ネックリングと該合成樹脂製蓋の下端との間及び/または該周方向破断ラインの領域に向けて洗浄液を進入させて、
該環状係止あごの流動路及び該雄螺条の流動路を通って洗浄液を上方に流動させた後、洗浄液を該内周面及び該外周面に沿って流下させて、スカート壁の内周面と口頸部の外周面との間から流出させるようにした、
ことを特徴とする容器本体と容器蓋間の洗浄方法が提供される。
【0008】
好ましくは、前記洗浄液が進入する該環状係止あごの該流動路は該環状係止あごの下面及び上面と共に外周面にも開放されている溝から構成されている、のが好適である。
好ましくは、該合成樹脂製蓋の該雌螺条には軸線方向に該雌螺条を貫通して延びる流動路が周方向に間隔をおいて形成されており、該雌螺条の該流動路の少なくとも1個は該蓋の該タンパーエビデント裾部の内周面に形成されている該係止片間の係止片非存在領域の1個に対して軸線方向に整合せしめられる、のが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スカート壁の上部に複数個のスリットを形成する必要なくして、そしてまた高温の洗浄液でなくて常温の洗浄液を使用した場合でも、容器本体の口頸部の外周面と蓋のスカート壁の内周面との間に充分な量の洗浄液を流入せしめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好適実施形態について更に詳述する。
【0011】
図1には、本発明に従って構成された容器本体の好適実施形態が図示されている。ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂或いはガラスから形成することができる容器本体2は、その頂面が開口された円筒形状の口頸部4を有する。かかる口頸部4の外周面には、雄螺条6、この雄螺条6の下方に位置する環状係止あご8、及び環状係止あご8の下方に位置する環状ネックリング10が形成されている。環状係止あご8は実質上水平に延びる下面8a、略鉛直に延びる外周面8b及び半径方向内方に向かって上方に傾斜して円弧状に延びる湾曲傾斜面である上面8cを有しており、ネックリング10も実質上水平に延びる下面10a、略鉛直に延びる外周面10b及び半径方向内方に向かって上方に傾斜して延びる上面10cを有している。
本発明に従って構成された容器本体2の口頸部4における環状係止あご8には軸線方向に環状係止あご8の下面8aから上面8cまで延びる流動路12が周方向に間隔をおいて複数個形成されているのが重要である。図示の実施形態における流動路12は、図1及び図2を比較参照すれば理解されるように、近接する一対と、かかる一対に対して直径方向反対側に配設された他の一対との合計四個からなり、それらの各々は環状係止あご8の下面8a及び上面8c共に外周面8bにも開放されている溝から構成されている。また、図示の実施形態における口頸部4においては、雄螺条6にも軸線方向に雄螺条6を貫通して延びる流動路14が周方向に間隔をおいて4個形成されている。
【0012】
図3には上述した容器本体2の口頸部4に装着される合成樹脂製蓋が図示されている。ポリエチレン又はポリプロピレンの如き合成樹脂から形成することができる全体を番号16で示す蓋は、円形天面壁18とこの天面壁18の周縁から垂下する円筒状スカート壁20とを有する。天面壁18の内面には2条の環状シール壁、即ち内側環状シール壁22及び外側環状シール壁24が形成されている。更に、内側環状シール壁22と外側環状シール壁24との間には環状シール突条26が形成されている。スカート壁20には周方向破断ライン28が形成されており、スカート壁20は周方向破断ライン28よりも上方の主部30と周方向破断ライン28よりも下方のタンパーエビデント裾部32とに区画されている。
スカート壁20の内周面には下方を向いた環状肩面34が形成されており、かかる環状肩面34から下方に延びる突条36が周方向に適宜の間隔をおいて複数個形成されている。上記周方向破断ライン28は、複数個の突条36が形成されている領域においてスカート壁20の外周面側から切断刃(図示していない)を作用せしめて、突条36のみを残留せしめてスカート壁20を切断することによって形成されている。複数個の突条36は所謂橋絡部を構成し、タンパーエビデント裾部32は複数個の突条36を介して主部30に接続されている。
【0013】
図3を参照して説明を続けると、スカート壁20の主部30の外周面には、そこに掛けられる指の滑りを防止するための凹凸形状38が形成されている。主部30の内周面には雌螺条40が形成されている。この雌螺条40には軸線方向に雌螺条40を貫通して延びる流動路42が周方向に間隔をおいて複数個形成されている。タンパーエビデント裾部32の内周面には係止手段44が形成されている。かかる係止手段44は、周方向に間隔をおいてタンパーエビデント裾部32の内周面から上方に向かって半径方向内方に傾斜して突出する複数個の係止片46から構成されており、隣接する係止片46間には係止片非存在領域48が存在する。
【0014】
図3及び図4を参照して説明を続けると、容器本体2と蓋16とから構成される容器内に果汁の如き内容物を封入する際には、口頸部4を通して容器本体2内に内容物を充填する。しかる後に、図4に図示する如く、容器本体2の口頸部4に蓋16を装着する。かかる際には、口頸部4に蓋16を被嵌し、蓋16を閉方向(図4において上方から見て時計方向)に回転せしめる。かくすると、口頸部4の雄螺条6に蓋16の雌螺条40が螺合せしめられ、蓋16は回転に応じて下降せしめられる。雌螺条40と雄螺条6とが充分に螺合せしめられると、蓋16のタンパーエビデント裾部32に形成されている係止手段44は、弾性的に変形せしめられて口頸部4の環状係止あご8を通過し、しかる後に弾性的に復元して環状係止あご8に係止せしめられる。蓋16の天面壁18の内面に形成されている内側環状シール壁22、外側環状シール壁24及び環状シール突条26は、口頸部4の内周面、外周面及び頂面に密接せしめられ、これによって口頸部4が密封される。
【0015】
而して、口頸部4を通して果汁の如き内容物を容器本体2内に充填する際には、口頸部4の外周面に幾分かの内容物が飛散付着する傾向がある。そこで、容器本体2の口頸部4に蓋16を装着した後に、口頸部4の外周面及びこれに接触乃至近接せしめられる蓋16の内周面を洗浄することが必要である。かかる洗浄の際には、図4に簡略に図示する如く、蓋16が装着されている容器本体2の口頸部4に向けて、適宜のノズル50から常温水でよい洗浄液52を噴射する。
口頸部4に向けて噴射された洗浄液52の一部は、ネックリング10の上面10cによって半径方向上方に案内され、スカート壁20の内周面と口頸部4の外周面との間に進入し、係止片46間の係止片非存在領域48、環状係止あご8の流動路12、雌螺条40の流動路42及び雄螺条6の流動路14を通って上方に流動する。しかる後においては、洗浄液52は口頸部4の外周面及びスカート壁20の内周面に沿って流下し、スカート壁20の内周面と口頸部4の外周面との間から流出する。かくして、口頸部4の外周面及び蓋16の内面(特にスカート壁20内周面)が効果的に洗浄される。
【0016】
スカート壁20の内周面と口頸部4の外周面との間に進入せしめられた洗浄液52を一層効果的に上方に流動せしめるためには、雄螺条6の流動路14の少なくとも1個は環状係止あご8の流動路12の1個に対して軸線方向に整合せしめられているのが好適である。また、口頸部4に蓋16を装着した状態において、蓋16の雌螺条40の流動路42の少なくとも1個は容器本体2の環状係止あご8の流動路12の1個に対して軸線方向に整合せしめられているのが好ましい。かような場合には、雌螺条40の流動路42の少なくとも1個を蓋16のタンパーエビデント裾部32の内周面に形成されている係止片46間の係止片非存在領域48の1個に対して軸線方向に整合せしめることによっても、スカート壁20の内周面と口頸部4の外周面との間に進入せしめられた洗浄液52が一層効果的に上方に流動せしめられる。
【0017】
図4に図示する形態においては、口頸部4に蓋16が装着された容器本体2を正立状態にせしめて蓋16に洗浄液52を噴出しているが、所望ならば、口頸部4に蓋16が装着された容器本体2を横倒状態にせしめて或いは倒立状態にせしめて蓋16に洗浄液52を噴射することができる。
【0018】
口頸部4を開封して容器本体2内の内容物を消費する際には、蓋16を開方向(図4において上方から見て反時計方向)に回転せしめればよい。かくすると、蓋16の雌螺条40が口頸部4の雄螺条6に沿って移動せしめられる故に、蓋16は回転と共に上昇せしめられるが、蓋16のタンパーエビデント裾部32は、その内周面に配設されている係止手段44が口頸部4の環状係止あご8に係止されている故に、上昇が阻止されている。それ故に、スカート壁20の周方向破断ライン28に、更に詳細には突条36に相当な応力が生成され、突条36が破断される。しかる後においては、周方向破断ライン28の破断によってスカート壁20の主部30から切り離されたタンパーエビデント裾部32を口頸部4に残留せしめて、蓋16のタンパーエビデント裾部32以外の部分は回転と共に上昇せしめられて口頸部4から離脱され、かくして口頸部4が開封される。
【0019】
図5は、本発明に従って構成された組合せの他の好適実施形態における蓋を図示している。ポリエチレン又はポリプロピレンの如き合成樹脂から形成することができる全体を番号16で示す蓋は、円形天面壁18とこの天面壁18の周縁から垂下する円筒状スカート壁20とを有する。天面壁18の内面には2条の環状シール壁、即ち内側環状シール壁22及び外側環状シール壁24が形成されている。更に、内側環状シール壁22と外側環状シール壁24との間には環状シール突条26が形成されている。スカート壁20には周方向破断ライン28が形成されており、スカート壁20は周方向破断ライン28よりも上方の主部30と周方向破断ライン28よりも下方のタンパーエビデント裾部32とに区画されている。
スカート壁20の主部30の外周面には、そこに掛けられる指の滑りを防止するための凹凸形状38が形成されている。主部30の内周面には雌螺条40が形成されている。この雌螺条40には軸線方向に雌螺条40を貫通して延びる流動路42が周方向に間隔をおいて複数個形成されている。タンパーエビデント裾部32の内周面には係止手段44が形成されている。かかる係止手段44は、周方向に間隔をおいてタンパーエビデント裾部32の内周面から上方に向かって半径方向内方に傾斜して突出する複数個の係止片46から構成されており、係止片46間には係止片非存在領域48が存在する。
【0020】
図5と共に図6を参照して説明を続けると、上記周方向破断ライン28は、周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個(図示の場合は8個)のスリット(細長開口)49A乃至49Hとかかるスリット49A乃至49H間に位置する複数個(図示の場合は8個)の橋絡部51とから構成されている。スリット49A乃至49Hの各々の周方向長さは実質上同一であり、そしてまたスリット49A乃至49H間の間隔、従って橋絡部51の各々の周方向長さも実質上同一である。複数個のスリット49A乃至49Hの内の直径方向に対向して位置する2個のスリット49A及び49Eの各々には、スカート壁20の主部30の下端53から下方に突出する略三角形状の停止片55とタンパーエビデント裾部32の上端57から上方に突出する略三角形状の停止片59とが形成されている。停止片55と停止片59とは、各々、若干の間隔をおいて対向する当接縁55aと当接縁59aとを有する。
停止片55及び59が形成されている2個のスリット49A及び49Eを除く6個のスリット49B、49C、49D、49F、49G及び49Hの各々には、夫々の周方向中央部においてタンパーエビデント裾部32の上端57から上方に突出する略矩形状の台座片61が形成されている。従って、スリット49B、49C、49D、49F、49G及び49Hの各々には、夫々の周方向中央部に位置する台座部63とかかる台座部63の両側に位置する通常部65とを有する。
スリット49C及びスリット49Gにおける台座片61の周方向両側面は略半径方向に延びているが、スリット49B、49D、49F、及び49Hにおける台座片61の周方向両側面は周方向外方に向かって半径方向内方に傾斜せしめられており、台座片61の周方向両側部は周方向外方に向かって厚さが漸次低減せしめられている。かかる厚さの低減は、図5において紙面に垂直な方向で図6においては上下方向である型開方向に相互に移動せしめられる割型を移動せしめて射出成形型から成形品、即ち蓋16を取り出す際の所謂無理抜きを低減せしめるためのものであり、スリット49B、49D、49F及び49Hにおける台座片61の片側面は上記型開方向に対して実質上垂直に延び他側面は上記型開方向に対して実質上平行に延びている。
【0021】
図1に図示する容器本体2と図5に図示する合成樹脂製蓋16とから構成される容器内に果汁の如き内容物を封入する際には、口頸部4を通じて容器本体2内に内容物を充填する。しかる後に、図7に図示する如く、容器本体2の口頸部4に蓋16を装着する。かかる際には、口頸部4に蓋16を被嵌し、蓋16を閉方向(図7において上方から見て時計方向)に回転せしめる。かくすると、口頸部4の雄螺条6に蓋16の雌螺条40が螺合せしめられ、蓋16は回転に応じて下降せしめられる。雄螺条6と雌螺条40とが充分に螺合せしめられると、蓋16のタンパーエビデント裾部32に形成されている係止手段44が弾性的に変形せしめられて口頸部4の環状係止あご8を通過し、しかる後に弾性的に復元して環状係止あご8に係止せしめられる。
タンパーエビデント裾部32の係止手段44が環状係止あご8を通過する際には、タンパーエビデント裾部32の閉方向への回転及び下降に対して相当な抵抗が加えられるが、タンパーエビデント裾部32がスカート壁20の主部30に対して相対的に開方向(図7において上方から見て反時計方向)に回転せしめられると、周方向破断ライン28におけるスリット49A及び49Eに配設されている停止片55の当接縁55aに停止片59の当接縁59aが当接し、スカート壁20の主部30から停止片55及び59を介してタンパーエビデント裾部32に閉方向の回転力が伝えられ、またタンパーエビデント裾部32がスカート壁20の主部30に対して相対的に上方に移動せしめられると、周方向破断ライン28におけるスリット49B、49C、49D、49F、49G及び49Hに配設されている台座片61がスリット49B、49C、49D、49F、49G及び49Hの上面に当接し、スカート壁20の主部30から台座片61を介してタンパーエビデント裾部32に下方向の力が伝えられ、口頸部4に蓋16を装着する際に周方向破断ライン28における橋絡部51が破断されてしまうことが防止される。
口頸部4に蓋16が所要とおりに装着されると、図7に明確に図示する如く、スリット49A乃至49Hは環状係止あご8の上面8cと実質上同一の高さに位置せしめられる。また、蓋16の天面壁18の内面に形成されている内側環状シール壁22、外側環状シール壁24及び環状シール突条26は夫々、口頸部4の内周面、外周面及び頂面に密接せしめられ、これによって口頸部4が密封される。
【0022】
容器本体2の口頸部4に蓋16を装着した後に、口頸部4の外周面及びこれに接触乃至近接せしめられる蓋16の内周面を洗浄する際には、図7に簡略に図示する如く、容器に向けて、特に蓋16のスカート壁20の周方向破断ライン28の領域に向けて、適宜のノズル50から常温水でよい洗浄液52を噴射する。周方向破断ライン28の領域に向けて噴射された洗浄液52の一部は、スリット49A乃至49Hを通ってスカート壁20の内周面と口頸部4の外周面との間に進入し、口頸部4に形成されている環状係止あご8の上面8cによって上方に指向せしめられ、雌螺条40の流動路42及び雄螺条6の流動路14を通って上方に流動する。
所望ならば、蓋16の周方向破断ライン28の領域に向けて洗浄液を噴射することに加えて或いはこれに代えて、容器本体2の口頸部4に形成されているネックリング10と蓋16の下端との間に向けて洗浄液52を噴射することもできる。ネックリング10と蓋16の下端に向けて噴射された洗浄液52の一部は、ネックリング10の上面10cによって半径方向上方に案内され、スカート壁20の内周面と口頸部4の外周面との間に進入し、係止片46間の係止片非存在領域48、環状係止あご8の流動路12、雌螺条40の流動路42及び雄螺条6の流動路14を通って上方に流動する。
しかる後においては、洗浄液52は口頸部4の外周面及びスカート壁20の内周面に沿って流下し、スカート壁20の内周面と口頸部4の外周面との間から流出する。かくして、口頸部4の外周面及び蓋16の内周面(特にスカート壁20内周面)が効果的に洗浄される。洗浄液52が口頸部4の外周面に沿って流下する際には、環状係止あご8に形成されている流動路12を通って洗浄液52が流れ、これによって洗浄液52の流下が助長される。
【0023】
スカート壁20の内周面と口頸部4の外周面との間に進入せしめられた洗浄液52を一層効果的に上方に流動せしめるためには、雄螺条6の流動路14の少なくとも1個は環状係止あご8の流動路12の1個に対して軸線方向に整合せしめられているのが好適である。また、口頸部4に蓋16を装着した状態において、蓋16の雌螺条40の流動路42の少なくとも1個は容器本体2の環状係止あご8の流動路12の1個に対して軸線方向に整合せしめられているのが好ましい。かような場合には、雌螺条40の流動路42の少なくとも1個を蓋16のタンパーエビデント裾部32の内周面に形成されている係止片46間の係止片非存在領域48の1個に対して軸線方向に整合せしめることによっても、スカート壁20の内周面と口頸部4の外周面との間に進入せしめられた洗浄液52が一層効果的に上方に流動せしめられる。
【0024】
図7に図示する形態においては、口頸部4に蓋16が装着された容器本体を正立状態にせしめて蓋16に洗浄液52を噴出しているが、所望ならば、口頸部4に蓋16が装着された容器本体2を横倒し状態にせしめて或いは倒立状態にせしめて蓋16が洗浄液52を噴射することができる。
【0025】
口頸部4を開封して容器本体内の内容物を消費する際には、蓋16を開方向(図5において上方から見て反時計方向)に回転せしめればよい。かくすると、蓋16の雌螺条40が口頸部4の雄螺条6に沿って移動せしめられる故に、蓋16は回転と共に上昇せしめられるが、蓋16のタンパーエビデント裾部32は、その内周面に配設されている係止手段44が口頸部4の環状係止あご8に係止されている故に、上昇が阻止されている。それ故に、スカート壁20の周方向破断ライン28に、更に詳細にはその橋絡部51に相当な応力が生成され、橋絡部51が破断される。しかる後においては、周方向破断ライン28の破断によってスカート壁20の主部30から切り離されたタンパーエビデント裾部32を口頸部4に残留せしめて、蓋16のタンパーエビデント裾部32以外の部分は回転と共に上昇せしめられて口頸部4から離脱され、かくして口頸部4が開封される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に従って構成された好適実施形態における容器本体の口頸部を、一部を断面で示す正面図。
【図2】図1の容器本体における口頸部の展開図。
【図3】本発明に従って構成された組合せの好適実施形態における蓋を、一部を断面で示す正面図。
【図4】図1の口頸部に図3の蓋を装着した状態を、一部を断面で示す正面図。
【図5】本発明に従って構成された組合せの他の好適実施形態における蓋を、一部を断面で示す正面図。
【図6】図5の線A−Aにおける断面図。
【図7】図1の容器本体に図5の蓋を装着した状態を、一部を断面で示す正面図。
【符号の説明】
【0027】
2 容器本体
4 口頸部
6 雄螺条
8 環状係止あご
8a 下面
8b 外周面
8c 上面
12 流動路
14 流動路
16 蓋
18 天面壁
20 スカート壁
28 周方向破断ライン
30 主部
32 タンパーエビデント裾部
40 雌螺条
42 流動路
46 係止片
48 係止片非存在領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂面が開口された円筒形状の口頸部を有し、該口頸部の外周面には雄螺条と該雄螺条の下方に位置する環状係止あごとが形成され、該雄螺条には、軸線方向に該雄螺条を貫通して延びる流動路が周方向に間隔をおいて形成されており、該環状係止あごには軸線方向に該環状係止あごの下面から上面まで延びる流動路が周方向に間隔をおいて複数個形成され、該環状係止あごの下側には、ネックリングを設け、該雄螺条の該流動路の少なくとも1個は該環状係止あごの該流動路の1個に対して軸線方向に整合せしめられている容器本体と、
円形天面壁及び該天面壁の周縁から垂下する円筒状スカート壁を有し、該スカート壁には周方向破断ラインが形成されており、該スカート壁は該周方向破断ラインよりも上方の主部と該周方向破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該スカート壁の主部の内周面には雌螺条が形成され、該タンパーエビデント裾部の内周面には該環状係止あごに係止せしめられる係止片が周方向に間隔をおいて複数個形成されている合成樹脂製蓋とを用いた容器本体と容器蓋間の洗浄方法において、
該口頸部を通して容器本体内に内容物を充填し、
該口頸部の該雄螺条に該合成樹脂製蓋の該雌螺条を螺合せしめた後、
該ネックリングと該合成樹脂製蓋の下端との間及び/または該周方向破断ラインの領域に向けて洗浄液を進入させて、
該環状係止あごの流動路及び該雄螺条の流動路を通って洗浄液を上方に流動させた後、洗浄液を該内周面及び該外周面に沿って流下させて、スカート壁の内周面と口頸部の外周面との間から流出させるようにした、
ことを特徴とする容器本体と容器蓋間の洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄液が進入する該環状係止あごの該流動路は該環状係止あごの下面及び上面と共に外周面にも開放されている溝から構成されている、請求項1記載の容器本体と容器蓋間の洗浄方法。
【請求項3】
該合成樹脂製蓋の該雌螺条には軸線方向に該雌螺条を貫通して延びる流動路が周方向に間隔をおいて形成されており、該雌螺条の該流動路の少なくとも1個は該蓋の該タンパーエビデント裾部の内周面に形成されている該係止片間の係止片非存在領域の1個に対して軸線方向に整合せしめられる、請求項1又は2記載の容器本体と容器蓋間の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−102074(P2009−102074A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301432(P2008−301432)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【分割の表示】特願2002−58167(P2002−58167)の分割
【原出願日】平成14年3月5日(2002.3.5)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】