説明

容器用クレート

本発明は、側壁及び底を有し、内部に容器を保持するための複数の分離空間を画成する分離壁が設けられたクレートに関する。クレートは熱可塑性材料から作製され、熱可塑性材料は1種以上の熱可塑性芳香族ポリカーボネート樹脂と、脂環式ジオール及び脂環式又は芳香族二酸から誘導された単位を含む1種以上の熱可塑性ポリエステル樹脂とのブレンドを含有する透明又は半透明材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルなどの複数の容器を保持するのに適当なクレートに関する。
【背景技術】
【0002】
ボトルなどの容器を保持するクレートは周知であり、現在主としてポリオレフィンなどの熱可塑性材料から作製されている。クレートは容器の輸送のために用いられ、またしばしば小売店でビールやソーダなどの飲料の入った容器を展示するのに用いられる。クレートの見栄えをよくするために、クレートを着色プラスチック材料から作製することが多い。容器とその中身の販売を促進するために、クレートに商標や魅力的な図案などをプリントすることもある。クレートは長い年月再使用できるように十分丈夫でなければならない。さらに、多くの場合に、再使用の前に洗浄できるように、クレートが洗浄剤に耐えることも必要である。クレートは通常互いに積み重ねるので、クリープ抵抗も重要な特性である。高さ2.5m以内から落としてもクレートが割れないことがしばしば必要とされる。
【0003】
2以上の異なる材料からクレートを作製することも知られている。このようなクレートの1以上の側壁の一部をポリカーボネートのような透明材料から形成し、底部や側壁の別の部分を非透明なポリオレフィンから形成することができる。
【0004】
上述した要件から見て、クレート製造の要件すべてを満たすクレート製造用材料はほとんどない。
【特許文献1】米国特許第4786692号明細書
【特許文献2】米国特許第4897453号明細書
【特許文献3】米国特許第3444237号明細書
【特許文献4】米国特許第2888484号明細書
【特許文献5】米国特許第4754064号明細書
【特許文献6】米国特許第2675390号明細書
【特許文献7】米国特許第2999835号明細書
【特許文献8】米国特許第3028365号明細書
【特許文献9】米国特許第3153008号明細書
【特許文献10】米国特許第4123436号明細書
【特許文献11】米国特許第2465319号明細書
【特許文献12】米国特許第3334154号明細書
【特許文献13】米国特許第3047539号明細書
【特許文献14】米国特許第4131575号明細書
【特許文献15】米国特許第5441997号明細書
【特許文献16】米国特許第3635895号明細書
【特許文献17】米国特許第3635895号明細書
【特許文献18】米国特許第4001184号明細書
【特許文献19】米国特許第4188314号明細書
【特許文献20】米国特許第4786692号明細書
【特許文献21】米国特許第3919379号明細書
【特許文献22】国際公開第93/04128号パンフレット
【特許文献23】フランス特許第1323069号明細書
【特許文献24】ドイツ実用新案第20116427号明細書
【特許文献25】ドイツ特許出願公開第3728291号明細書
【特許文献26】ドイツ特許出願公開第3129052号明細書
【特許文献27】欧州特許出願公開第0152825号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一部又は全部が透明又は半透明プラスチック材料から作製されたクレート(クレート)を提供する。別の実施態様では、本発明は、紫外線と可視光の一部を吸収する透明又は半透明材料から作製されたクレートを提供する。
【0006】
本発明のクレートを作製する熱可塑性材料は、1種以上の熱可塑性ポリカーボネート樹脂(PC)と、脂環式ジオール及び脂環式又は芳香族二酸から誘導された単位を含む1種以上の熱可塑性ポリエステル樹脂(PE)とのブレンドを含有する透明又は半透明材料である。
【0007】
数種のポリエステルをBPA系ポリカーボネートのようなポリカーボネートとともに使用して、本発明の組成物及び物品を得ることができる。適当なポリエステル分子は、脂環式ジオール及び芳香族二酸化合物、特にフタル酸(具体的にはテレフタル酸)から誘導された単位を含む(PCT)。脂環式ジオールから誘導された単位に加えて、脂肪族ジオールから誘導された単位も含有するポリエステル(PCTG)を用いることも可能である。ポリシクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボキシレートのような2つの環式単位を有するポリエステル(PCCD)を使用することも可能である。
【0008】
さらに、ポリエステルとポリカーボネートを特定の耐衝撃性改良剤(IM)と、耐衝撃性改良剤の屈折率(RI)がPC/PEブレンドの屈折率と合致し、したがって透明性が維持されるような比率でブレンドすることもできる。このようなPC/PE/IMブレンドは、PC/PEブレンドの特性に加えて、優れた低温延性も有する。
【0009】
本発明の別の実施態様では、20〜90重量%、さらに好ましくは45〜80重量%のポリカーボネート樹脂と、80〜10重量%、さらに好ましくは55〜20重量%のポリエステルとを含有する材料からクレートを作製する。相対量は、材料中のポリカーボネート及びポリエステルの合計に対しての計算値である。
【0010】
他の実施態様では、前記ポリエステルは、シクロヘキサンジオールから誘導された単位及びイソフタル酸及びテレフタル酸のいずれか又は両方から誘導された単位を含有するポリエステルである。
【0011】
他の実施態様では、前記ポリエステルは、ジオール成分として脂環式ジオールから誘導された単位50〜100モル%及びアルキレングリコールから誘導された単位0〜50モル%の混合物を含有し、二酸成分としてフタル酸から誘導された単位0〜100モル%及び非芳香族二酸から誘導された単位100〜0モル%を含有する。
【0012】
さらに他の実施態様では、本発明のクレートは、最も透明なスポットで可視光の垂直入射光線の50%超を透過する側壁を有する。
【0013】
さらに他の実施態様では、クレートを作製する熱可塑性材料がさらに染料及び/又はUV吸収剤を含有し、クレートの側壁は波長200〜460nmの入射放射線の10%超、またさらには5%超を透過しないような厚さを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のクレート(クレート)の形状及び寸法は任意とすることができる。クレートは通常ボックスの形状を有する。クレートは、任意の数のボトルなどの容器を保持することができる。
【0015】
クレートの代表的な例を図1に示す。図示のクレートはボックスの形状を有する。図示のクレートは、クレートの可能な形状の1例を示すに過ぎず、また図はあたかもクレートが透明でも半透明でもないかのように描かれている。クレート1には側壁2が設けられている。図1に表示したクレートは4つの側壁を有する。クレートの内部には分離壁3が設けられ、ボトルなどの容器を保持するための分離空間4を画成している。分離壁の数、したがって空間4の数はいくつでもよい。通常空間4は容器の寸法に適合されている。2以上の容器を保持する複数の空間を設けることが可能である。分離壁及び側壁の高さは任意である。図1に示したクレートでは、側壁に補強用のリブが設けられている。別の形状のリブを用いることができ、また例えば側壁の厚さを増すことによりリブを全く使用しないことも可能である。
【0016】
本発明のクレートの別の実施態様(図示せず)では、側壁の一部又は全部が、特許請求の範囲に規定された透明又は半透明材料から作製されている。勿論、側壁の1つだけ或いは2つもしくは3つを透明又は半透明材料から作製することも可能である。
【0017】
本発明のクレートは、その一部又は全部が透明又は半透明熱可塑性材料から作製されている。透明又は半透明熱可塑性材料は多数知られている。このような透明な材料のうちごく僅かだけが本発明のクレートの作製に適当である。本発明のクレートは、1種以上の熱可塑性芳香族ポリカーボネート樹脂(PC)と、脂環式ジオール及び脂環式又は芳香族二酸から誘導された単位を含む1種以上の熱可塑性ポリエステル樹脂とのブレンドを含有する透明又は半透明材料から作製されている。この材料であれば、その透明性もしくは半透明性による魅力的な外観を有し、しかも十分に強く、アルカリ溶液での通常の洗浄作用に耐えうる、クレートを作成することが可能である。クレートは、十分なクリープ抵抗を有し、普通の設計で作製されていれば、2.5mまでの落下試験に破損や亀裂を生じることなく耐えることができる。その上、クレートは、選択された熱可塑性材料の流れ挙動が良好であるので、通常の成形装置で簡単に作製することができる。
【0018】
本発明のクレートは、射出成形などの公知の成形法で製造できる。クレートを2以上の異なる材料から作製する場合には、選択された材料それぞれから異なる部品を成形し、これらの異なる部品を一緒に組み立てることからなる製造方法が最良である。
【0019】
上述した熱可塑性材料は市販されている。使用したPC及びPEも市販の材料である。
【0020】
適当な材料は、PCTGのような、ポリエステルが環式芳香族二酸および脂環式及び脂肪族ジオール成分の混合物両方を有するブレンドである。ポリカーボネートは、BPA、SBIビスフェノール、アリール置換ビスフェノール、脂環式ビスフェノール及びこれらの混合物の単位から構成することができる。酸性リン系安定剤が、脂環式ポリエステルとポリカーボネート樹脂との溶融反応を抑制し、色を改良するのに有用である。
【0021】
ポリカーボネート対ポリエステルの比は、重量で、20:80〜90:10とすることができる。50:50〜80:20のブレンドも適当である。80重量%未満のポリエステルが、加熱撓みが少なくなるので、望ましい。ポリエステルの存在する結果として、ポリカーボネートのみからなるベースポリマーと比較して、耐薬品性及び耐紫外線性が向上する。得られるブレンドはガラス転移温度が約90℃〜150℃、可視光の透過率が50%以上であるのが望ましい。ブレンドに添加することのできる望ましい耐衝撃性改良剤は、所望の透明性に影響しない特性と、1.51〜1.58の屈折率(RI)を有する。他の望ましい特性として、ポリエステル及びポリカーボネート樹脂の耐薬品性が、Bergen JigでCoppertone、オレイン酸及びキシレンに対して測定して、臨界ステインで約1%〜約4%であることが挙げられる。MVRが300℃/1.2kgで35〜60ml/10分で、曲げ弾性率が2200〜1400Mpaで、HDTAeが115〜70℃であるのが好ましい。
[ポリカーボネート]
芳香族ポリカーボネートは、カーボネート連結部と1種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導された単位とを含有する重合体又は共重合体である。さらにエステル連結部も含有するポリカーボネートも使用できる。ポリカーボネートはシロキサン単位を含有することもできる。分子量、分子構造もしくはその両方が異なる2以上のポリカーボネートを含有する材料を使用することも可能である。
【0022】
本発明に有用なポリカーボネートは、二価フェノールの二価残基Ar’がカーボネート連結部を介して結合した構成で、好ましくは次の一般式で表される。
【0023】
【化1】

式中のAは炭素原子数1〜約15の二価炭化水素基もしくは炭素原子数1〜約15の置換二価炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立に水素、ハロゲン及び一価炭化水素基、例えば炭素原子数1〜約8のアルキル基、炭素原子数6〜約18のアリール基、炭素原子数7〜約14のアリールアルキル基、炭素原子数1〜約8のアルコキシ基からなる群から選択され、mは0または1、nは0〜約5の整数である。Ar’は、ヒドロキノン又はレゾルシノールのような単一芳香環であっても、ビフェノール又はビスフェノールAのような多重芳香環であってもよい。
【0024】
使用する二価フェノール化合物は公知であり、反応性基はフェノール性ヒドロキシル基であると考えられる。使用する二価フェノール化合物の代表的な例には、ビスフェノール類、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAともいう)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン;二価フェノールエーテル類、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル;p,p’−ジヒドロキシジフェニル及び3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニル;ジヒドロキシアリールスルホン類、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ジヒドロキシベンゼン類、例えばレゾルシノール、ヒドロキノン、ハロ及びアルキル置換ジヒドロキシベンゼン類、例えば1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンゼン;及びジヒドロキシジフェニルスルフィド類及びスルホキシド類、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド及びビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドがある。これら以外に種々の二価フェノール化合物が入手でき、米国特許第2999835号、同第3028365号及び同第3153008号(本発明の先行技術として援用する)に開示されている。2種以上の異なる二価フェノール化合物或いは二価フェノール化合物とグリコールとの組合せを使用することが可能である。
【0025】
カーボネート前駆物質は代表的にはカルボニルハライド、ジアリールカーボネート又はビスハロホルメートである。カルボニルハライドには、例えば臭化カルボニル、塩化カルボニル及びこれらの混合物がある。ビスハロホルメートには、例えば二価フェノールのビスハロホルメート、具体的には2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ヒドロキノンなどのビスクロロホルメート、又はグリコールのビスハロホルメートなどがある。上述したカーボネート前駆物質のすべてが有用であるが、ホスゲンとしても知られる塩化カルボニル及びジフェニルカーボネートが好適である。
【0026】
芳香族ポリカーボネートは、いかなる方法でも、例えば二価フェノールをホスゲン、ハロホルメートもしくはカーボネートエステルのようなカーボネート前駆物質と溶融もしくは溶液状態で反応させることにより製造できる。米国特許第4123436号にホスゲンとの反応が、米国特許第3153008号にエステル交換反応法が記載されている。
【0027】
ポリカーボネートは、複屈折の低い樹脂をもたらす二価フェノール化合物、例えば下記:
フェニル−ジ(4−ヒドロキシフェニル)エタン(アセトフェノンビスフェノール)、
ジフェニル−ジ(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ベンゾフェノンビスフェノール)、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
ビス(2−フェニル−3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、
1,1−ビス(5−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ジフェニルブタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルエタン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、
6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロ(ビス)インダン(以下SBIという)
のようなアリール側基又はカップ形アリール基を有する二価フェノール化合物、又は次式:
【0028】
【化2】

のスピロビインダンから誘導された二価フェノール化合物から製造するのが好ましい。SBI及びその5−メチル同族体から誘導された単位が好ましく、SBIが最も好ましい。
【0029】
代表的にはポリカーボネートの製造に用いる他の二価フェノール化合物が、米国特許第2999835号、同第3038365号、同第3334154号及び同第4131575号に開示されている。米国特許第3635895号及び同第4001184号に記載されているような枝分れポリカーボネートも有用である。ポリカーボネートブレンドには、直鎖ポリカーボネートと枝分れポリカーボネートとのブレンドが含まれる。
【0030】
本発明のポリカーボネート混合物の製造にホモポリマーよりもカーボネート共重合体もしくはインターポリマーを用いるのが望ましい場合には、2種以上の異なる二価フェノール化合物を使用するか、二価フェノール化合物とダイマー酸、ドデカンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸との共重合体を使用することも可能である。脂肪族C−C12二酸共重合体が最も好ましい。
【0031】
好適なポリカーボネートは、高分子量芳香族カーボネート重合体であり、(塩化メチレン中25℃で測定した)固有粘度が約0.30〜約1.00dl/gであるのが好ましい。ポリカーボネートは枝分れしていても、していなくてもよく、一般に重量平均分子量がゲル浸透クロマトグラフィで測定して約10000〜約200000、好ましくは約20000〜約100000である。ポリカーボネートが種々の公知の末端基を有することもある。
【0032】
芳香族ポリカーボネートは種々の方法で製造できるが、最も一般的なのは、所謂界面法か溶融エステル交換法である。本発明のクレートの製造に使用する熱可塑性材料において、ポリエステルとの組合せが透明もしくは半透明であれば、あらゆる種類の芳香族ポリカーボネートを使用できる。
【0033】
適当な芳香族ポリカーボネートが商標名Le×anにて市販されている。
[ポリエステル]
脂環式ポリエステル樹脂は次式:
【0034】
【化3】

(式中、全Rの少なくとも一部はシクロアルキル含有基であり、Rはシクロアルキル又は芳香族基である)の繰り返し単位を有するポリエステルを含む。
【0035】
ポリエステルは、Rが炭素原子数2〜20のアリール、アルカン又はシクロアルカン含有ジオール又はその化学的等価物の残基である、縮合物である。芳香族ポリカーボネートとの混和性を確保するために、Rの少なくとも一部がシクロアルカンから誘導されたものでなければならない。Rは、炭素原子数6〜20のアリール又はシクロアルカン含有二酸又はその化学的等価物から誘導された脱カルボキシル化残基である。
【0036】
ポリエステルは、脂環式又は芳香族二酸又はその化学的等価物と、少なくとも一部の脂環式ジオール又はその化学的等価物との縮合物である。本ポリエステルは、脂環式又は芳香族二酸と脂環式ジオールとの混合物から形成してもよい。ジオール成分の50〜100モル%又は50〜90モル%が脂環式ジオールからなり、0〜50モル%又は10〜50モル%が非環式脂肪族ジオールからなるのが好ましい。環式成分は、ポリエステルに良好な剛性を付与するのに役立ち、ポリカーボネート樹脂との適切な相互作用により透明なブレンドの形成を可能にする。
【0037】
ポリエステル樹脂は、代表的には、ジオールもしくはジオール等価成分と二酸もしくは二酸化学等価物成分との縮合又はエステル交換重合により製造される。
【0038】
上式中、R及びRは下記の式から独立に選択される1以上のシクロアルキル基とすることができる。
【0039】
【化4】

脂環式基Rとしては1,4−シクロヘキシルから誘導された基が好ましい。脂環式基Rとしては1,4−シクロヘキシルジメタノールのような1,4−シクロヘキシルを主とするジオールから誘導された基が好ましい。
【0040】
芳香族基Rはイソフタル酸もしくはテレフタル酸のようなフタル酸から誘導することができる。
【0041】
本発明のポリエステル樹脂の製造に有用な他のジオール類は、直鎖、枝分れ又は脂環式アルカンジオールであり、2〜16個の炭素原子を含有してよい。このようなジオール類の例には、エチレングリコール;プロピレングリコール、即ち1,2−及び1,3−プロピレングリコール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル、2−メチル、1,3−プロパンジオール;1,3−及び1,5−ペンタンジオール;ジプロピレングリコール;2−メチル−1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;ジメタノールデカリン;ジメタノールビシクロオクタン;1,4−シクロヘキサンジメタノール、特にそのシス及びトランス異性体;2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(TMCBD)、トリエチレングリコール;1,10−デカンジオール;及びこれらの任意の混合物があるが、これらに限らない。ジオール成分として脂環式ジオール又はその化学的等価物、特に1,4−シクロヘキサンジメタノール又はその化学的等価物を用いるのが好ましい。
【0042】
ジオールの化学的等価物には、エステル、例えばジアルキルエステル、ジアリールエステルなどがある。
【0043】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂の製造に有用な二酸は、脂環式二酸又は芳香族二酸とすることができる。これは、それぞれ炭素原子に結合した2つのカルボキシル基を有するカルボン酸を包含することを意味する。好適な二酸には、シクロ又はビシクロ脂肪族酸、例えばデカヒドロナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はそれらの化学的等価物があり、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はその化学的等価物が最も好ましい。適当な芳香族二酸は、例えばイソフタル酸もしくはテレフタル酸又はそれらの化学的等価物である。アジピン酸、アゼライン酸、ジカルボキシルドデカン酸及びコハク酸のような直鎖状ジカルボン酸をポリエステルに追加導入して、脂環式又は芳香族二酸の30モル%以下、又は20モル%以下を置換することもできる。
【0044】
シクロヘキサンジカルボン酸及びそれらの化学的等価物は、例えば、シクロ芳香族二酸及び対応する誘導体、例えばイソフタル酸、テレフタル酸又はナフタレン酸を、水又は酢酸のような適当な溶剤中で、ロジウムを炭素、アルミナなどの担体に担持したものなど適当な触媒を用いて水素添加することにより製造することができる。Friefelderら、Journal of Organic Chemistry,31,3438(1966)、米国特許第2675390号及び同第4754064号参照。シクロヘキサンジカルボン酸及びそれらの化学的等価物は、反応条件下でフタル酸が少なくとも部分的に可溶である不活性液体媒体を用いて、パラジウムもしくはルテニウムを炭素もしくはシリカに担持した触媒で製造することもできる。米国特許第2888484号及び同第3444237号参照。
【0045】
代表的には、水素添加から、カルボン酸基がシス位又はトランス位にある2つの異性体が得られる。シス及びトランス異性体は、n−ヘプタンのような溶剤を用いるか用いない結晶化又は蒸留により分離することができる。シス異性体はブレンド性がより良好となる傾向にあるが、トランス異性体は溶融温度及び結晶化温度がより高く、好ましい。シス及びトランス異性体の混合物も有用である。
【0046】
複数の異性体の混合物又は2種以上の二酸もしくはジオールを使用する場合、コポリエステル又は2種のポリエステルの混合物を本発明の脂環式ポリエステル樹脂として使用することができる。これらの二酸の化学的等価物には、エステル類、アルキルエステル類、例えばジアルキルエステル、ジアリールエステル、無水物、塩、酸クロリド、酸ブロミドなどがある。好適な化学的等価物には、脂環式二酸のジアルキルエステルがあり、特に好ましい化学的等価物には、酸のジメチルエステル、特にジメチル−1,4−シクロヘキサン−ジカルボキシレートがある。
【0047】
脂環式ポリエステルとしては、次式の繰り返し単位を有するポリ(シクロヘキサン−1,4−ジメチレン シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート)、別名ポリ(1,4−シクロヘキサン−ジメタノール−1,4−ジカルボキシレート)(PCCD)が好ましい。
【0048】
【化5】

先に示した一般式において、PCCDの場合、Rは1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導され、Rはシクロヘキサンジカルボキシレート又はその化学的等価物から誘導されたシクロヘキサン環である。好ましいPCCDはシス/トランス式を有する。
【0049】
別の好ましい半脂環式ポリエステルは、ポリ(シクロヘキサン−1,4−ジメチレンテレフタレート)(PCT)又はエチレングリコール(EG)で変性したPCT、即ちPCTGであり、これは次式の繰り返し単位を有する。
【0050】
【化6】

市場には本発明に適当な2つの商業的PCTG、即ちEastar5445及びEastar10179が存在する。Eastar5445のジオールは40モル%のEGと60モル%のCHDM(シクロヘキサンジメタノール)を含有し、一方Eastar10179は20モル%のEG及び80モル%のCHDMを含有する。両ポリエステルともPCと混和性であり、本発明に使用することができる。PCとの良好な混和性を確保するために、PCTG中のCHDMの量が最小でも約40%である(m/n>40/60)必要がある。
【0051】
ポリエステル重合反応は一般に溶融状態で、適当な量、代表的には最終生成物に基づいて約50〜200pipのチタンを与える量のテトラ酸(2−エチルヘキシル)チタネートのような適当な触媒の存在下で行う。
【0052】
本発明の透明な成形組成物に用いる好適な脂肪族ポリエステルは、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは50℃超、さらに好ましくは65℃超、特に好ましくは約80℃超である。
【0053】
ポリマー状脂肪酸及び/又はポリマー状脂肪族ポリオールから誘導された単位を約1〜約50重量%含有し、コポリエステルを形成する上記ポリエステルも包含される。脂肪族ポリオールにはグリコール類、例えばポリ(エチレングリコール)又はポリ(ブチレングリコール)がある。このようなポリエステルは、例えば米国特許第2465319号及び同第3047539号の記述にしたがって製造できる。
[他の添加剤]
ポリエステル樹脂及びポリカーボネート樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物には、安定剤又は奪活剤を使用するのが好ましい。触媒奪活剤は、樹脂中に存在するかもしれない触媒の活性を阻止する剤である。触媒奪活剤は米国特許第5441997号に詳述されている。ポリエステル/ポリカーボネートブレンドへの着色や明澄性低下を回避するために適切な奪活剤を選ぶのが望ましい。
【0054】
好ましい1群の安定剤/奪活剤は、無色透明な生成物を与えるものである。代表的には、このような安定剤を0.001〜10重量%のレベル、好ましくは0.005〜2重量%のレベルで使用する。好適な安定剤には、有効量の、酸性リン酸塩;少なくとも1つの酸性水素を有する酸、アルキル、アリール又は混成ホスフェート;IB族又はIIB族金属リン酸塩;リンオキソ酸;金属酸ピロリン酸又はこれらの混合物がある。ある化合物が安定剤として用いるのに適当であるか、また安定剤としてどの程度の量使用すべきかの決定は、ポリエステル樹脂成分とポリカーボネートの混合物を調製し、溶融粘度、ガス発生もしくは色安定性に対する効果或いはインターポリマーの形成を調べることにより、簡単に決定することができる。酸性リン酸塩には、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一亜鉛、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カルシウムなどがある。
【0055】
IB族又はIIB族金属のリン酸塩には、リン酸亜鉛などがある。リンオキソ酸には亜リン酸、リン酸、ポリリン酸又は次亜リン酸がある。
【0056】
金属酸ピロリン酸は式:
z×3n+1
(式中のMは金属、×は1〜12の数、yは1〜12の数、nは2〜10の数、zは1〜5の数、(×z)+yの和はn+2に等しい)で表すことができる。Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であるのが好ましい。
【0057】
奪活剤としては、リンのオキソ酸又は酸性有機リン化合物が最も好ましい。無機酸性リン化合物も奪活剤として使用できるが、それらは曇りを生じたり明澄性を低下するおそれがある。奪活剤としては、リン酸、亜リン酸又はその部分エステルが最も好ましい。
【0058】
1実施態様では、ポリカーボネート/ポリエステル組成物は、(PC+PE100重量部に対して測定して)約20%未満、好ましくは約15%未満の耐衝撃性改良剤を含有してもよい。代表的な耐衝撃性改良剤は、一般に、共役ジエンのアクリル酸もくしはメタクリル酸グラフト重合体、又はアクリレートエラストマーの単体もしくはビニル芳香族化合物との共重合体を含む。一般にこれらの耐衝撃性改良剤は、ブタジエンもしくはイソプレン単独又はビニル芳香族化合物との組合せから、又はブチルアクリレート単独又はビニル芳香族化合物との組合せから誘導された単位を含有する。
【0059】
他の代表的な耐衝撃性改良剤には、エチレン酢酸ビニル、エチレンエチルアクリレート共重合体、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)及びSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)ブロック共重合体、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン単量体)及びEPR(エチレン−プロピレンゴム)共重合体などがあるが、これらに限らない。
【0060】
1実施態様では、ポリ(シクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート)(PCCD)、PC及び屈折率(RI)が1.51〜1.58である透明な耐衝撃性改良剤をブレンドすることにより、透明な高延性の組成物を得ることができる。PCとPCCDとが完全に混和性であることから、PC/PCCDブレンドの屈折率を耐衝撃性改良剤の屈折率に調節することが可能になる。適当な耐衝撃性改良剤が多数あり、例示のためにその数例を挙げる。このような耐衝撃性改良剤の例には、透明なABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、屈折率1.535)及び代表的なPVC改良剤、具体的にはGEPlastics社から供給されるBlende× 415/336(ABS材料)又はRohm&Haas社から供給されるParaloid BTA702/736(MBS材料)又はカネカ(株)から供給されるカネエースB28/B58(MBS材料)などがある。これらのPVC改良剤はすべて屈折率が1.53〜1.55の間にある。これらの部品は耐衝撃性、透明性及び耐薬品性の独特な組合せを有する。
【0061】
本発明の組成物には、さらに、離型剤、酸化防止剤、滑剤、核生成剤(例えばタルクなど)、他の安定剤(例えばベンゾトリアゾールのようなUV安定剤など)、補足的強化充填剤など、難燃剤、顔料及びこれらの組合せを添加してもよい。
【0062】
材料の脆性を有意に増加することにならない有機染料と組み合わせて、金属又はマイカフレークのような視覚効果添加剤を加えることが可能である。クレートが透明又は半透明に留まるように注意を払う必要がある。フレークの形態の着色剤を所望の色に着色するように存在させることができる。寸法が17.5〜650μmの範囲にあるフレーク状着色剤を0.01〜20.0重量%、好ましくは0.10〜15.0重量%、さらに好ましくは0.25〜10.0重量%、最も好ましくは0.5〜5.0重量%の充填量で使用するのが望ましい。フレークは金属フレークであるのが好ましい。用語「金属フレーク」は、代表的には金属外観を有する、薄いフィルム、ホイル又は小平板などの薄い粒子を包含する。好適な金属粒子は、周期律表のI−B、III−A、IV、VI−B及びVIII族の金属を主成分とする。また、これらの金属の物理的混合物又は合金を使用してもよい。また、これらの金属の物理的混合物又は合金を使用してもよい。これらの金属の例には、アルミニウム、青銅、黄銅、クロム、銅、金、鉄、モリブデン、ニッケル、錫、チタン、亜鉛などがある。ほとんどの用途に、アルミニウム又は青銅の「コーンフレーク」形、即ち不規則な波形平面状フレークが好ましいが、「1ドル銀貨」形、即ち円形平面状のフレークも使用できる。2以上の平均フレーク寸法、即ち2以上の異なる平均粒径を有する金属粒子を使用することで、所望の外観の制御がはるかに良好になること、また所望の外観を実現する確実性が高くなることを確かめた。
【0063】
アルミニウムフレークはサテン状の銀光沢を生む。一般に、粒径が小さいほど、不透明性と隠蔽力が高くなり、灰色効果を生じる傾向があり、フレーク寸法が大きいほど、明るさと反射率が高くなり、金属性のきらめきが増大する。異なる粒径の組合せを利用して、見栄えと確実性を制御するほかに、染色強さと鏡面効果とをバランスさせる。
【0064】
光輝顔料はホイルから製造した特殊なタイプのアルミニウム顔料である。ホイルは、厚さ0.001インチ未満に圧延され、寸法0.008〜0.125インチの正方形、長方形又は六角形に切断され、また代表的には透明なエポキシラッカーで被覆され、ホイルの酸化艶消しを防止する。粒子寸法の大きな光輝顔料はばらばらの鏡面ハイライトを生成しうる。
【0065】
金青銅は実際には黄銅、即ち酸化を低減するために少量のアルミニウムを含有する銅と亜鉛の合金である。合金主成分の割合を変えることによりある範囲の金色を生成する。緑金は70%の銅を含有し、その色は銅の割合が増加するにつれて赤くなり、90%の銅で淡い金色を生じ、合金の酸化を抑制することで深い金色が作られる。金青銅は通常フレーク形態で使用され、粗いグレードほどブリリアンスが高くなる。しかし、銅は熱、湿気及び腐食物質に弱いので、銅の利用には注意が必要である。
【0066】
離型剤にはペンタエリスリトールテトラエステル、特にステアリン酸エステルがある。グリセロールのような他のポリオールのカルボン酸エステル、例えばグリセロールモノステアレートも好ましい。
【0067】
他の追加成分には、酸化防止剤、UV吸収剤、その他の安定剤がある。酸化防止剤には、i)アルキル化モノフェノール類、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシメチルフェノール;ii)アルキル化ヒドロキノン類、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アミル−ヒドロキノン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール;iii)ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル類;iv)アルキリデン−ビスフェノール類;v)ベンジル化合物、例えば1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン;vi)アシルアミノフェノール類、例えば4−ヒドロキシ−ラウリン酸アニリド;vii)β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル類;viii)β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル類;vii)β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコール、例えばメタノール、ジエチレングリコール、オクタデカノール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、チオジエチレングリコール、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)シュウ酸ジアミドとのエステル類がある。代表的なUV吸収剤及び光安定剤には、i)2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類、例えば5’−メチル−、3’,5’−ジ−tert−ブチル−、5’−tert−ブチル−、5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−、5−クロロ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−、5−クロロ−3’−tert−ブチル−5’−メチル−、3’−sec−ブチル−5’−tert−ブチル−、4’−オクトキシ、3’,5’−ジ−tert−アミル−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)誘導体;ii)2.2 2−ヒドロキシ−ベンゾフェノン類、例えば4−ヒドロキシ−4−メトキシ−、4−オクトキシ、4−デシロキシ−、4−ドデシロキシ−、4−ベンジロキシ、4,2’,4’−トリヒドロキシ−及び2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ誘導体;及びiii)置換及び非置換安息香酸のエステル類、例えばサリチル酸フェニル、サリチル酸4−tert−ブチルフェニル、サリチル酸オクチルフェニル、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス−(4−tert−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート及びヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートがある。ホスファイト及びホスホナイト安定剤の例には、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト類、フェニルジアルキルホスファイト類、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトがある。
【0068】
好適な染料又は顔料は、所望に応じて、本質的に樹脂マトリックスに可溶な有機染料又は顔料錯体である。これらの有機染料及び顔料には、下記の類及び例がある。ファーネスカーボンブラック、フタロシアニンブルー又はグリーン、アントラキノン染料、スカーレット3bレーキ、アゾ化合物及び酸アゾ顔料、キナクリドン類、クロモフタロシアニンピロール類、ハロゲン化フタロシアニン類、キノリン類、複素環式染料、ペリノン染料、アントラセンジオン染料、チオキサンテン染料、パラゾロン染料、ポリメチン顔料など。ある種の色を得るためには、少量の無機顔料、例えばTiO、酸化鉄、カドミウム−水銀化合物、カドミウム−リチウム化合物などを使用する必要があることもあるが、このような無機顔料は通常使用しない。
【0069】
ある種の飲料の場合、飲料用の容器が紫外線を吸収することが重要である。この目的のため、ビールビンは、紫外線と可視光の460nmまでの部分を吸収する茶色のガラスで作製されることが多い。最も有害な放射線は約410nmまでのUV範囲にあるが、約460nmまでの放射線もビールの品質に悪影響する。紫外線を吸収するクレートを用いることにより、飲料をさらに保護することが可能になる。このことは、クレートの製造に、紫外線を吸収する染料を添加した材料を用いることで実現できる。しかし、このことはクレートに適用できる色を制限する。多くの場合、有害な紫外線を吸収する黄色染料を他の染料と混合することにより、所望の紫外線吸収と組み合わせて任意所望の色を得ることが可能である。或いは、クレート用の材料に、UV吸収剤と組み合わせて所望の色を与える1種以上の染料を用いることが可能である。
【0070】
適切な壁厚の選択、適切な染料の組合せ、適当なUV吸収剤の使用、或いはこれらの任意の組合せによって、紫外線が垂直に入射する場合に、波長200〜460nmの入射放射線の10%超を透過しない、又はさらには5%超を透過しない側壁を有するクレートを得ることが可能である。測定は側壁の表面の代表的なスポットで行うべきである。
【0071】
組成物を配合する方法は通常の技法で行うことができる。一つの好都合な方法では、ポリエステルもしくはポリカーボネート及び他の成分を粉末又は顆粒形態でブレンドし、ブレンドを押出し、ペレット又は他の適当な形状に細断する。成分を任意の仕方で、例えば押出機、加熱ミル又は他のミキサで乾式混合するか溶融混合することにより、組み合わせる。着色剤は押出機に供給口より下流で添加すればよい。
【0072】
フレークを樹脂組成物に組み込むには、所望の樹脂組成物に均一に混合する。フレークが加工温度で安定であることが重要である。200℃程度、好ましくは260℃程度、さらに好ましくは290℃程度の温度での安定性が望ましい。不安定なフレークは避けるべきである。
【0073】
本発明の組成物は、本発明の組成物に特定の用途への望ましい特性を付与するのに有効な量添加された染料及び安定剤を含有する。
【0074】
樹脂は、良好な機械的特性、色安定性、耐酸化性、良好な難燃性、良好な加工性、即ち短い成形サイクル時間、良好な流れそして良好な絶縁性などの前述した追加の重要な特性のうち望ましい特性に寄与するよう添加することのできる添加成分を5重量%未満含有する。
【0075】
一つの好都合な方法では、樹脂及び他の成分を粉末又は顆粒形態でブレンドし、ブレンドを押出し、ペレット又は他の適当な形状に細断する。成分を任意の仕方で、例えば押出機、加熱ミル又は他のミキサで乾式混合するか溶融混合することにより、組み合わせる。別のブレンド方法では、ポリエスエルの予備ブレンドを調製し、次いで予備ブレンドに他の成分を添加することができる。例えば、樹脂と安定剤の予備ブレンドを押出機の上流口で供給し、ガラス繊維などの他の成分を押出機の下流口で添加する。別の実施態様では、種々の化合物を予備配合し、ペレット化してから、成形する。予備配合は普通の装置で行うことができる。例えば、諸成分のドライブレンドを、スクリューが適切な溶融を保証する長い移行区分を有する単軸押出機に供給することができる。或いは、二軸押出機に、樹脂及び他の添加剤を供給口で、補強材を下流で添加することができる。いずれの場合も、一般に適当な機械温度は約230℃〜約300℃である。予備配合した組成物を押し出し、標準的な技法で切断又は細断して通常のグラニュール、ペレットなどの成形用コンパウンドとする。組成物は、熱可塑性組成物に通常用いられている装置で成形することができる。例えば、射出成形機で、通常のシリンダ温度、例えば260℃及び通常の金型温度、例えば65℃にて良好な結果が得られる。
【0076】
しかし、ポリカーボネート及びポリエステルの正確な組成を、ポリエステルの芳香族ポリカーボネートとのブレンドが透明又は半透明に留まるように選択することが重要である。このようなブレンドは一般に知られており、特許文献に記載されている。例えば、米国特許第4786692号及び同第4188314号参照。
【0077】
本発明の1実施態様では、ポリエステル及びポリカーボネートの性質、ポリエステルの相対量及び側壁の厚さを適切に選択して、ブレンドから作製されたクレートの側壁がその最も透明なスポットで垂直入射する可視光の透過率50%超となるようにする。光学特性(透過率及びヘイズ)はASTM D1003に準じて測定し、黄色度(ASTM D1925に準ずる)は厚さ2.5mmの平板についてGardnerXL−835測色計で測定した。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。すべての成分を一緒に室温で1〜5分間タンブルし、30mm真空吸引式同一方向回転二軸押出機で250〜300℃で押し出すことによりブレンドを製造した。ブレンドを300rpmで加工した。押出物を水浴でストランドとして冷却し、ペレット化した。
【0079】
得られた押出物をペレット化した。得られたペレットを100〜120℃で3〜6時間乾燥し、射出成形して8本の0.5Lビールビン用の標準モデルのクレートと、光学特性測定用の7.5×5.7cm×2.5mm(厚さ)の平板と、耐薬品性測定用の試験片を得た。
【0080】
【表1】

表1に示す通りの配合物を製造した。量はすべて重量%で表示した。
【0081】
【表2】

下記の特性を評価した。
落下試験:
射出成形したビールクレートを高さ3.5mから落とし、また70℃に保持した1%NaOH溶液に1時間浸漬した後に、ビールクレートを高さ3.5mから落とした。クレートをクラックの発生について視覚検査した。「なし」はクラックが認められなかったことを意味する。
耐薬品性:
試験片を(治具で)一定の歪み下で65℃の1%NaOH溶液に浸漬した。クラック発生までの時間(分)を測定した。
光吸収:
光透過率を2.5mmで測定し、表1のすべてのサンプルについて>85%であることを確かめた。
【0082】
落下試験の結果を表2に示す。光吸収の結果を図2及び図3に示す。
【0083】
【表3】

結果の論評
表2の結果から、材料がクレートの製造に適当であることが分かる。材料は十分な高さからの落下に耐え、十分な耐薬品性を有する。
【0084】
配合番号2の材料はクレートの製造に必要なすべての標準的要件を満たす。しかし、図2に示すように、この材料は紫外線を十分に吸収しない。顔料で、クレートを透明な緑色とする。顔料を適切に選ぶことで他の色にできることが明らかである。
【0085】
配合物5及び7も、配合物4及び6と同様に、良好な深緑色を有する。これらの材料の吸収は図3から明らかなように、配合物2の吸収よりはるかに優れている。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明のクレートの代表的な例を示す斜視図である。
【図2】紫外線及び400〜800nmの可視光領域に対する実施例の材料の透明性を示すグラフである。
【図3】紫外線及び400〜800nmの可視光領域に対する実施例の材料の透明性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁及び底を有し、内部に容器を保持するための複数の分離空間を画成する分離壁が設けられたクレートであって、クレートが熱可塑性材料から作製され、熱可塑性材料が1種以上の熱可塑性芳香族ポリカーボネート樹脂と、脂環式ジオール及び脂環式又は芳香族二酸から誘導された単位を含む1種以上の熱可塑性ポリエステル樹脂とのブレンドを含有する透明又は半透明材料である、クレート。
【請求項2】
20〜90重量%のポリカーボネート樹脂と80〜10重量%のポリエステルとを含有する熱可塑性材料から作製された、請求項1記載のクレート。
【請求項3】
前記ポリエステルが、脂環式ジオールから誘導された単位及びイソフタル酸及びテレフタル酸のいずれか又は両方から誘導された単位を含有するポリエステルである、請求項1記載のクレート。
【請求項4】
前記ポリエステルが、ジオール成分として脂環式ジオールから誘導された単位50〜100モル%及びアルキレングリコールから誘導された単位0〜50モル%の混合物を、二酸成分としてフタル酸から誘導された単位0〜100モル%及び非芳香族二酸から誘導された単位100〜0モル%を含有するポリエステルである、請求項1記載のクレート。
【請求項5】
1以上の側壁が最も透明なスポットで可視光の垂直入射光線の50%超を透過する、請求項1記載のクレート。
【請求項6】
クレートを作製する熱可塑性材料がさらに1種以上の染料及び/又はUV吸収剤を含有し、クレートの側壁は波長200〜460nm以下の入射放射線の10%超を透過しないような厚さを有する、請求項1記載のクレート。
【請求項7】
クレートを作製する熱可塑性材料がさらに1種以上の染料及び/又はUV吸収剤を含有し、クレートの側壁は波長200〜460nm以下の入射放射線の5%超を透過しないような厚さを有する、請求項1記載のクレート。
【請求項8】
側壁及び底を有し、内部に容器を保持するための複数の分離空間を画成する分離壁が設けられたクレートであって、クレートの一部又は全部が第一の熱可塑性材料から作製され、第一の熱可塑性材料が1種以上の熱可塑性芳香族ポリカーボネート樹脂と、脂環式ジオール及び脂環式又は芳香族二酸から誘導された単位を含む1種以上の熱可塑性ポリエステル樹脂とのブレンドを含有する透明又は半透明材料であり、第二の熱可塑性材料が第一の熱可塑性材料とは異なる、クレート。
【請求項9】
1以上の側壁の一部又は全部が第一の熱可塑性材料から作製された、請求項8記載のクレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−502759(P2007−502759A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533650(P2006−533650)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/018325
【国際公開番号】WO2004/110902
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】