説明

容器詰茶飲料

【課題】風味及び組成の保存安定性の良好な容器詰茶飲料の提供。
【解決手段】茶抽出液に非重合体カテキン類中のガレート体カテキン率が50質量%未満である茶抽出物を配合して、
(A)非重合体カテキン類0.072〜0.4質量%、及び
(B)没食子酸21〜150ppm
を含有し、非重合体カテキン類中のガレート体カテキン率が0〜50質量%であり、エピ体率が30〜60質量%である容器詰茶飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非重合体カテキン類を高濃度に含有し、風味及びカテキン類組成の保存安定性の良好な容器詰茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキン類の効果としてはαアミラーゼ活性阻害作用などが報告されている(例えば、特許文献1参照)。このような生理効果を発現させるためには、より簡便に大量のカテキン類を摂取する必要があるため、飲料にカテキンを高濃度配合する技術が望まれていた。
【0003】
この方法の一つとして、緑茶抽出物の濃縮物などの茶抽出物を利用して、カテキン類を飲料に溶解状態で添加する方法が用いられている。しかしながら、カテキン類を高濃度に配合する対象となる飲料の種類によっては、例えば紅茶抽出液や炭酸飲料にカテキン類を添加する場合など、カフェイン及び緑茶由来の苦渋みの残存が飲料の商品価値を大きく損ねることがわかっている。
【0004】
紅茶等の発酵茶抽出液に対してタンナーゼ処理を行い、低温冷却時の懸濁、すなわちティークリーム形成を抑制できることは古くから知られていた。又、特許文献1に見られる、ガレート体カテキンにタンナーゼ処理を行い、一部又は全部を没食子酸とすることにより、カテキン類と没食子酸との混合物を得る方法によれば、苦味の原因となるガレート体カテキン類を低減することができる。また、茶抽出物から、カフェイン等の夾雑物を取り除く方法としては、吸着法(特許文献2〜4)、抽出法(特許文献5)等が知られている。
【特許文献1】特開2003−33157号公報
【特許文献2】特開平5−153910号公報
【特許文献3】特開平8―109178号公報
【特許文献4】特開2002−335911号公報
【特許文献5】特開平1−289447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、タンナーゼ処理により得られるカテキン類と没食子酸の混合物には、酸味・エグ味が発生するという問題があった。一方、タンナーゼ処理を行わなかったものや、タンナーゼ処理が不十分な場合に得られたものは、有効成分であるカテキン類の組成変化や色調及び風味が変化するため容器詰飲料には適さないという問題が生じることも判明した。
従って本発明の課題は、ガレート体カテキン率が低減され、かつ非重合体カテキン類濃度が高いにもかかわらず、苦味が抑制されており、かつ長期保存しても有効成分であるカテキン類の組成変化が抑制された容器詰茶飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、予めガレート体カテキン率が50質量%未満に調整された茶抽出物を用いて容器詰茶飲料を製造するにあたって、没食子酸の含有量を21〜150ppmに調整し、非重合体カテキン類中のガレート体カテキン率が0〜50質量%かつエピ体率を30〜60質量%に調整すれば、非重合体カテキン類濃度が高い場合でも、苦味が抑制されるだけでなく、長期保存してもカテキン類の組成変化が起こりにくい容器詰茶飲料とすることができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、茶抽出液に非重合体カテキン類中のガレート体カテキン率が50質量%未満である茶抽出物を配合し、
(A)非重合体カテキン類0.072〜0.4質量%、及び
(B)没食子酸21〜150ppm
を含有し、非重合体カテキン類中のガレート体カテキン率が0〜50質量%であり、エピ体率が30〜60質量%である容器詰茶飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の容器詰茶飲料は、生理効果を奏するのに十分な量の非重合体カテキン類を含有し、かつ苦味が低減されていることから飲用しやすく、更に長期保存しても風味及び組成の安定性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレートなどの非エピ体カテキン及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどのエピ体カテキンをあわせての総称である。
【0010】
本発明でガレート体カテキンとは、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどをあわせての総称である。またガロ体カテキンとは、ガロカテキン、ガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレートなどをあわせての総称である。
ガレート体カテキン率とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートの総量に対するカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートの総量の比率である。
【0011】
本発明の容器詰飲料は、茶抽出液に、非重合体カテキン類中のガレート体カテキン率が50質量%未満である茶抽出物を配合することにより得られる。茶抽出物の非重合体カテキン類中のガレート体カテキン率が50質量%以上の場合、茶抽出物は、精製製造工程のいずれかの段階でタンナーゼ処理や低温冷却時のティークリーム形成品の除去等することによりガレート体カテキン率を50質量%未満に調整することが好ましい。
【0012】
本発明で用いる茶抽出物としては、緑茶葉から得られた抽出液が挙げられる。使用する茶葉としては、より具体的には、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica及びやぶきた種又はそれらの雑種等から得られる茶葉から製茶された茶葉が挙げられる。製茶された茶葉には、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶等の緑茶類またはCTC茶葉がある。本発明で用いる茶抽出物としては、緑茶の茶葉から得られた抽出液を乾燥又は濃縮あるいは凍結したもの等が好ましい。
【0013】
茶葉からの抽出は、抽出溶媒として水を使用し、攪拌抽出等により行われる。抽出の際、水にあらかじめアスコルビン酸塩(例:ナトリウム塩)等の有機酸塩類又は有機酸を添加してもよい。また、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。このようにして得られた抽出液は、乾燥、濃縮して本発明に使用する茶抽出物を得る。茶抽出物の形態としては、液体、スラリー、半固体、固体の状態が挙げられる。
【0014】
茶抽出物としては、超臨界状態の二酸化炭素接触処理を施した茶葉を用いて抽出した抽出物を用いてもよい。この方法においては、超臨界抽出を施した残渣である茶葉から非重合体カテキン類を含有する抽出物を得るものである。
【0015】
本発明に使用する茶抽出物には、茶葉から抽出した抽出液を乾燥、濃縮して使用する代わりに、茶抽出物の濃縮物を水に溶解又は希釈して用いても、茶葉からの抽出液と茶抽出物の濃縮物とを併用してもよい。
ここで、茶抽出物の濃縮物とは、茶葉から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出された抽出物を濃縮したものであり、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載されている方法により調製したものをいう。具体的には、茶抽出物として、市販の東京フードテクノ社製「ポリフェノン」、伊藤園社製「テアフラン」、太陽化学社製「サンフェノン」等の固体の茶抽出物として用いることもできる。
【0016】
これらの茶抽出物又はその濃縮物をタンナーゼ処理することにより、ガレート体カテキン率を低下させる。ここで使用するタンナーゼは、一般に市販されている500〜5,000U/gの酵素活性を有することが好ましく、500U/g以下であると充分な活性を得ることができず、5,000U/g以上であると酵素反応速度が速すぎる為、反応系を制御することが困難となる。
タンナーゼとしては、タンニンアシルヒドラーゼEC3.1.1.20が好適である。市販品としては、商品名「タンナーゼ」キッコーマン(株)製及びタンナーゼ「三共」三共(株)製などが挙げられる。
【0017】
タンナーゼ処理の具体的な手法としては、非重合体ガレート体カテキン率の低減効果、及び最適の非重合体ガレート体カテキン率で酵素反応を停止する観点から、緑茶抽出物中の非重合体カテキン類に対してタンナーゼを0.5〜10質量%の範囲になるように添加することが好ましい。酵素失活の工程を含め、タンナーゼ処理を最適な酵素反応時間である2時間以内で終了させるためには、タンナーゼ濃度が0.5〜5質量%、更に2〜4質量%であることが好ましい。
タンナーゼ処理の温度は、最適な酵素活性が得られる15〜40℃が好ましく、更に好ましくは20〜30℃である。
【0018】
タンナーゼ反応を終了させるには、酵素活性を失活させる必要がある。酵素失活の温度は、70〜90℃が好ましく、酵素反応の失活は、バッチ式もしくはプレート型熱交換機のような連続式で加熱することにより行うことができる。又、タンナーゼの失活処理後、遠心分離などの操作により茶抽出物を清浄化することができる。
【0019】
また、本発明に用いる茶抽出物は、タンナーゼ処理の前又は後に、精製処理をしたものが、風味、安定性等の点から好ましい。このような精製処理手段としては、(1)合成吸着剤処理、(2)有機溶媒と水との混合液による抽出、(3)活性炭処理、(4)活性白土又は/及び酸性白土処理、(5)固液分離等の操作を単独で又は組み合せた手段が挙げられる。
【0020】
合成吸着剤処理としては、茶抽出物を合成吸着剤に吸着させ、次いで非重合体カテキン類を溶出させる方法が挙げられる。より具体的には、茶抽出物を合成吸着剤に吸着させ、合成吸着剤を洗浄し、次いで塩基性水溶液を接触させて非重合体カテキン類を溶出させる。当該合成吸着剤処理により、カフェイン及び没食子酸が低減できる。用いる合成吸着剤としては、スチレン−ジビニルベンゼン、修飾スチレン−ジビニルベンゼン又はメタクリル酸メチルを母体とするものが挙げられる。スチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着剤の例としては、三菱化学社製の商品名ダイヤイオンHP−20、HP−21、セパビーズSP70、SP700、SP825、SP−825やオルガノ社(供給元:米国ローム&ハース社)のアンバーライトXAD4、XAD16HP、XAD1180、XAD2000、住友化学(供給元:米国ローム&ハース社)のデュオライトS874、S876等が挙げられる。臭素原子を核置換して吸着力を強めた修飾スチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着剤の例としては、三菱化学社製の商品名セパビーズSP205、SP206、SP207等が挙げられる。メタクリル酸メチル系の合成吸着剤の例としては、三菱化学社製のセパビーズHP1MG、HP2MGやオルガノ社のXAD7HP、住友化学のデュオライトS877等が挙げられる。
合成吸着剤の中でも特に、特に修飾ポリスチレン系合成吸着剤及びメタクリル酸メチル系合成吸着剤が好ましい。合成吸着剤の具体例としては、SP207などの修飾ポリスチレン系合成吸着剤(三菱化学社製)、HP2MGなどのメタクリル系合成吸着剤(三菱化学社製)が挙げられるが、前述の理由からSP207が好ましい。
【0021】
合成吸着剤が充填されたカラムは、予めSV(空間速度)=1〜10[h-1]、合成吸着剤に対する通液倍数として2〜10[v/v]の通液条件で95vol%エタノール水溶液による洗浄を行い、合成吸着剤の原料モノマーや原料モノマー中の不純物等を除去するのが好ましい。そして、その後SV=1〜10[h-1]、合成吸着剤に対する通液倍数として1〜10[v/v]の通液条件により水洗を行い、エタノールを除去して合成吸着剤の含液を水系に置換する方法により非重合体カテキン類の吸着能が向上する。
【0022】
茶抽出物を合成吸着剤に吸着させる手段としては、合成吸着剤が充填されたカラムに当該茶抽出物を通液するのが好ましい。茶抽出物を合成吸着剤を充填したカラムに通液する条件としては、SV(空間速度)=0.5〜10[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として0.5〜20[v/v]で通液するのが好ましい。更に、緑茶抽出物を合成吸着剤に吸着させた後に水洗浄を行うが、その条件を、SV=0.5〜10[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として1〜10[v/v]として、合成吸着剤に付着した没食子酸や不純物を除去するのが好ましい。
【0023】
非重合体カテキン類の溶出に用いる塩基性水溶液としては、ナトリウム又はカリウム系のアルカリ性水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等を好適に用いることが好ましい。また、アルカリ性水溶液のpHは7〜14の範囲が好ましい。pH7〜14のナトリウム系水溶液としては、4%以下の水酸化ナトリウム水溶液、1N−炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。
【0024】
溶出工程においては、溶出水として互いにpHが異なる2種以上の溶出水を用い、これら溶出水をpHが低い順に合成吸着剤に接触させることが好ましい。これにより、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートを分画することができる。たとえば、溶出水としてpHが異なる2種以上の溶出水を用いる例としては、pH3〜7の溶出水により流した後に、pH9〜11の塩基性溶出水により、それぞれの非重合体カテキン類を分取することができる。
【0025】
塩基性水溶液で溶出したため、非重合体カテキン類の溶出液は、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩を含有しているので、カチオン交換樹脂、特にH型のカチオン交換樹脂でアルカリ金属イオンを除去することが好ましい。カチオン交換樹脂としては、具体的には、アンバーライト200CT、IR120B、IR124、IR118、ダイヤイオンSK1B、SK102、PK208、PK212等を用いることができる。
【0026】
上記の精製処理のうち、(2)有機溶媒と水との混合液による抽出と(3)活性炭処理、又は(2)有機溶媒と水との混合液による抽出と(4)活性白土又は/及び酸性白土処理は組み合せて行うのが好ましい。更に、(2)有機溶媒と水の混合液による抽出、(3)活性炭処理及び(4)活性白土又は/及び酸性白土処理を組み合せるのが特に好ましい。
【0027】
有機溶媒と水の混合液で抽出するには、茶抽出物を有機溶媒と水の混合溶液中に分散する。この分散液中の有機溶媒と水との含有質量比は、最終的に60/40〜97/3、より好ましくは、60/40〜75/25又は85/15〜95/5とするのが、カテキン類の抽出効率、茶抽出物の精製、長期間の飲用性及び回収有機溶媒の精留条件等の点で好ましい。
【0028】
有機溶媒としては、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル等が挙げられる。これらのうち、メタノール、エタノール、アセトンの親水性有機溶媒が好ましく、特に食品への使用を考慮すると、エタノールが好ましい。水として、イオン交換水、水道水、天然水等が挙げられる。この有機溶媒と水は、混合して又はそれぞれ別々に精密ろ過された茶抽出物と混合してもよいが、混合溶液としてから茶抽出物と混合処理するのが好ましい。
【0029】
有機溶媒と水の混合溶液100質量部に対して、茶抽出物(乾燥質量換算)を10〜40質量部、更に10〜30質量部、特に15〜30質量部添加して処理するのが、緑茶抽出物を効率よく処理できるので好ましい。
【0030】
有機溶媒と水の混合溶液の添加終了後は10〜180分程度の熟成時間を設けると更に好ましい。
これらの処理は、10〜60℃で行うことができ、特に10〜50℃、更に10〜40℃で行うのが好ましい。
【0031】
活性炭処理に用いる活性炭としては、一般に工業レベルで使用されているものであれば特に制限されず、例えば、ZN−50(北越炭素社製)、クラレコールGLC、クラレコールPK−D、クラレコールPW−D(クラレケミカル社製)、白鷲AW50、白鷲A、白鷲M、白鷲C(武田薬品工業社製)等の市販品を用いることができる。
活性炭の細孔容積は0.01〜0.8mL/g、特に0.1〜0.8mL/gが好ましい。また、比表面積は800〜1600m2/g、特に900〜1500m2/gの範囲のものが好ましい。なお、これらの物性値は窒素吸着法に基づく値である。
【0032】
活性炭処理は、緑茶抽出物を前記有機溶媒と水との混合溶液に添加した後に行うのが好ましい。活性炭は、有機溶媒と水の混合溶液100質量部に対して0.5〜8質量部、特に0.5〜3質量部添加するのが、精製効果、ろ過工程におけるケーク抵抗が小さい点で好ましい。
【0033】
酸性白土又は活性白土は、ともに一般的な化学成分として、SiO2、Al23、Fe23、CaO、MgO等を含有するものであるが、SiO2/Al23比が3〜12、特に4〜9であるのが好ましい。またFe23を2〜5質量%、CaOを0〜1.5質量%、MgOを1〜7質量%含有する組成のものが好ましい。
【0034】
酸性白土又は活性白土の比表面積は、酸処理の程度等により異なるが、50〜350m2/gであるのが好ましく、pH(5質量%サスペンジョン)は2.5〜8、特に3.6〜7のものが好ましい。例えば、酸性白土としては、ミズカエース#600(水澤化学社製)等の市販品を用いることができる。
【0035】
また、活性炭と酸性白土又は活性白土を併用する場合の割合は、質量比で活性炭1に対して1〜10がよく、活性炭:酸性白土又は活性白土=1:1〜1:6であるのが好ましい。
【0036】
得られた茶抽出物は、製品の安定性向上のため、必要に応じて除濁することが好ましい。除濁の具体的な操作としては、ろ過及び/又は遠心分離処理により固形分と水溶性部分とを固液分離することが挙げられる。
【0037】
固液分離の条件は、所定の濁度が得られるように条件が適宜決定される。固液分離をろ過で行う場合のろ過条件としては、温度が5〜70℃、更に10〜40℃であるのが好ましい。圧力は、使用する膜モジュールの耐圧範囲であることが望ましい。例えば、30〜400kPa、更に50〜400kPa、特に50〜350kPaであるのが好ましい。膜孔径は、所定の濁度になるという点から、1〜30μmが好ましく、更に2〜25μm、特に2〜20μmであるのが好ましい。
【0038】
また、遠心分離機は、分離板型、円筒型、デカンター型などの一般的な機器が好ましい。遠心分離条件としては、温度が5〜70℃、更に10〜40℃であるのが好ましく、回転数と時間は、所定の濁度になるように調整された条件であることが望ましい。例えば分離板型の場合、3000〜10000r/min、更に5000〜10000r/min、特に6000〜10000r/minで、0.2〜30分、更に0.2〜20分、特に0.2〜15分であるのが好ましい。
【0039】
固液分離は膜ろ過が好ましい。膜ろ過で使用する高分子膜は、炭化水素系、フッ素化炭化水素系又はスルホン系高分子膜であって、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系高分子膜;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)等のフッ素化ポリオレフィン系高分子膜等が挙げられる。ポリスルフォン(PSU)、ポリエーテルスルフォン(PES)等のスルホン系高分子膜等が挙げられる。高分子膜の膜孔径は、0.05〜0.8μmであるが、更に0.05〜0.5μm、特に0.08〜0.5μmであるのが好ましい。また、膜厚としては、0.1〜2.5mm、更に0.3〜2.0mm、特に0.3〜1.5mmであるのが好ましい。
【0040】
本発明に用いる茶抽出物は、その固形分中に、非重合体カテキン類を10〜90質量%、更に20〜80質量%、特に30〜70質量%含有するものが好ましい。
【0041】
また、茶抽出物中のガレート体カテキン率は、50質量%未満であることが、苦味抑制の点から必要であるが、更に5〜48質量%、特に15〜36質量%であるのが、非重合体カテキン類の生理効果の有効性及び苦味低減の点で好ましい。
【0042】
本発明の飲料中のカフェイン濃度は、非重合体カテキン類に対して、カフェイン/非重合体カテキン類の総量(質量比)=0.20以下、更に0.001〜0.15、更に0.01〜0.14、特に0.05〜0.13であるのが好ましい。茶抽出物として当該条件を満たすものを使用する方法や、カフェイン含有量の多い緑茶抽出物を用いる場合にはカフェイン含有量の少ない他の茶抽出物(カテキン製剤など)と一緒に配合する方法などによって実現できる。
【0043】
本発明の容器詰茶飲料中には、水に溶解状態にある非重合体カテキン類を、0.072〜0.4質量%含有するが、好ましくは0.08〜0.3質量%、より好ましくは0.09〜0.3質量%、更に好ましくは0.1〜0.3質量%含有する。非重合体カテキン類含量がこの範囲にあると、多量の非重合カテキン類を容易に摂取しやすく、風味及び色調の安定性の点からも好ましい。当該非重合体カテキン類の濃度は、茶抽出物の配合量によって調整することができる。
【0044】
また、本発明の容器詰茶飲料中の没食子酸含有量は、苦味、酸味の低減効果、更には風味及び組成の保存安定性の点から21〜150ppm、更に25〜125ppm、特に30〜100ppmであるのが好ましい。没食子酸含有量は、前述したような、茶抽出物をタンナーゼなどで加水分解した後に合成吸着剤に吸着させてから塩基性水溶液で溶出させる方法や、茶抽出物の配合量により調整することができる。
【0045】
本発明容器詰茶飲料における非重合体カテキン類中のエピ体率は、殺菌の熱負荷及び殺菌時のpHの点から、30〜60質量%、更に41〜60質量%が好ましい。ここでエピ体率とは、前記非重合体カテキン類中のエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートの含有率をいう。エピ体率は、飲料のpH及び殺菌温度、殺菌時間により調整することができる。
【0046】
本発明の容器詰茶飲料には、緑茶飲料、烏龍茶飲料、紅茶飲料及びその混合飲料が含まれる。これらの飲料を製造するには、緑茶抽出液、烏龍茶抽出液、紅茶抽出液から選択された1種以上の茶抽出液に、前記ガレート体カテキン率が調整された茶抽出物を配合することにより実施できる。
【0047】
緑茶抽出液は、前記と同様の緑茶葉を原料とし、抽出溶媒として水又は水にアスコルビン酸あるいはアスコルビン酸ナトリウム等の有機酸塩類又は有機酸あるいは重曹等の無機塩類を添加したものを用いて抽出することにより得られる。また烏龍茶抽出液は、烏龍茶葉を原料とし、抽出溶媒として水又は水にアスコルビン酸あるいはアスコルビン酸ナトリウム等の有機酸塩類又は有機酸あるいは重曹等の無機塩類を添加したものを用いて抽出することにより得られる。紅茶抽出液は、紅茶葉を原料とし、抽出溶媒として水又は水にアスコルビン酸あるいはアスコルビン酸ナトリウム等の有機酸塩類又は有機酸あるいは重曹等の無機塩類を添加したものを用いて抽出することにより得られる。混合茶等の植物系抽出液は、風味調整のために特に限定されるものではなく、食経験を有する植物素材を抽出溶媒として水又は水にアスコルビン酸あるいはアスコルビン酸ナトリウム等の有機酸塩類又は有機酸あるいは重曹等の無機塩類を添加したものを用いて抽出することにより得られる。
【0048】
本発明の容器詰茶飲料のpHは20℃で5〜7、好ましくは5.5〜6.9、より好ましくは5.5〜6.5とするのが、風味の安定性及び非重合体カテキン類の化学的安定性の点から好ましい。
【0049】
本発明の容器詰茶飲料は、苦渋味抑制剤を配合すると飲用しやすくなり好ましい。用いる苦渋味抑制剤は特に限定はないが、オリゴ糖あるいはサイクロデキストリンが好ましい。サイクロデキストリンとしては、α−、β−、γ−サイクロデキストリン及び分岐α−、β−、γ−サイクロデキストリンが使用できる。サイクロデキストリンは飲料中に0.005〜0.5質量%、更に0.01〜0.3質量%含有するのが好ましい。本発明の容器詰茶飲料には、酸化防止剤、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、ガム、乳化剤、油、ビタミン、アミノ酸、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を単独、あるいは併用して配合できる。
【0050】
また、本発明容器詰茶飲料に使用される容器は、その酸素透過度が0.1mL/day・bottle以下のものである。
【0051】
本発明の容器詰茶飲料に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、スチールやアルミ等の金属性容器、瓶、金属箔やプラスティックフィルムと複合された紙等の通常の形態で提供することができる。ここでいう容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0052】
本発明の容器詰茶飲料は、食品衛生法に準じた殺菌条件で製造される。例えば、金属缶のように容器に充填後、レトルト殺菌などにより加熱殺菌して製造される場合や、PETボトル、リシール性金属容器、紙容器、ビン容器のように耐熱、耐圧性が弱くレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。更に、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻す等の操作も可能である。
【実施例】
【0053】
非重合体カテキン類の測定
容器詰茶飲料を蒸留水で希釈し、フィルター(0.8μm)でろ過後、島津製作所社製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム L−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃で、A液及びB液を用いたグラジエント法によって行った。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0054】
カフェインの測定
非重合体カテキン類と同様の手法で、分析した。
【0055】
没食子酸の測定
非重合体カテキン類と同様の手法で、分析した。なお、上記グラディエント条件は以下の通りである。
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0 97% 3%
5 97% 3%
37 80% 20%
43 80% 20%
43.5 0% 100%
48.5 0% 100%
49 97% 3%
60 97% 3%
【0056】
苦味の評価方法
苦味の強度の測定法は、硫酸キニーネを指標とした苦味強度試験法(参考文献:Perceptionad Phychophysics,5,1969,347-351/JIS Z8144/新版 官能ハンドブック(p.448-449)1990年2月9日 第10刷発行)を用いた。試験試料をそれぞれ異なる苦味強度を有する硫酸キニーネ標準液(10段階)と比較し、試料の苦味強度に対応する標準液を選択する方法で、パネラー5名で官能評価を行なった。官能評価の結果を平均化し、苦味強度τ値であらわした。
【0057】
風味安定性評価方法
55℃1ヶ月保存試験における風味の保存安定性を評価した。
風味評価は劣化の程度を大、中、小の3段階とした。
【0058】
安定性評価方法(非重合体カテキン類中のエピ体率及びpH)
初期の非重合体カテキン類を測定し、55℃1ヶ月保存試験における非重合体カテキン類中のエピ体率変化を評価した。
保存0日目の非重合体カテキン類中のエピ体率からの差分をΔ%とした。
【0059】
(1)茶抽出物(a)
カテキン類の含量が30%の緑茶抽出物にタンナーゼ処理を行わず、スプレードライ法により噴霧乾燥させた。得られたパウダーからエタノールと水の混合溶媒(水:エタノール=40:60)でカテキン類を抽出した後に混合液に対して8質量部の活性炭を添加して精製を行って茶抽出物(a)を得た。ガレート体カテキン率は52質量%。
【0060】
(2)茶抽出物(b)
カテキン類の含量が30%の緑茶抽出物にタンナーゼ処理(タンナーゼ濃度0.5%;反応温度20℃、反応液のBrix20)を行い、スプレードライ法により噴霧乾燥させた。得られたパウダーからエタノールと水の混合溶媒(水:エタノール=40:60)でカテキン類を抽出した後に混合液に対して8質量部の活性炭を添加して精製を行って、茶抽出物(b)を得た。ガレート体カテキン率は48質量%。
【0061】
(3)茶抽出物(c)
カテキン類の含量が30%の緑茶抽出物にタンナーゼ処理(タンナーゼ濃度1.0%;反応温度20℃、反応液のBrix20)を行い、スプレードライ法により噴霧乾燥させた。得られたパウダーをエタノールと水の混合溶媒(水:エタノール=40:60)でカテキン類を抽出した後に混合液に対して8質量部の活性炭を添加して精製を行って、茶抽出物(c)を得た。ガレート体カテキン率は32質量%。
【0062】
(4)茶抽出物(d)
カテキン類の含量が30%の緑茶抽出物にタンナーゼ処理(タンナーゼ濃度2.0%;反応温度20℃、反応液のBrix20)を行い、スプレードライ法により噴霧乾燥させた。得られたパウダーをエタノールと水の混合溶媒(水:エタノール=40:60)でカテキン類を抽出した後に混合液に対して8質量部の活性炭を添加して精製を行って茶抽出物(d)を得た。ガレート体カテキン率は2質量%。
【0063】
(5)茶抽出物(e)
カテキン類の含量が30%の緑茶抽出物にタンナーゼ処理(タンナーゼ濃度2.0%;反応温度20℃、反応液のBrix20)を行い、スプレードライ法により噴霧乾燥させた。次に得られたパウダーを水にてカテキン濃度が1%になる様に希釈した。パウダー4Kgに対して1Kgの合成吸着剤(SP70;ダイヤイオン)を添加して、合成吸着剤にカテキン類を吸着させた。その後、合成吸着剤中の緑茶抽出物の残渣を水で洗い流した。洗浄後のSP70 1Kgに対してエタノールと水の混合溶媒(水:エタノール=50:50)でカテキン類を抽出した後に混合液に対して30質量部の活性炭を添加して精製を行い、茶抽出物(e)を得た。ガレート体カテキン率は8質量%。
【0064】
茶抽出液の製造方法及び分析値
65℃の水1000gに緑茶葉33.3gの茶葉を加え、250r/minで30秒間攪拌した後、90秒間保持し、その後250r/minで10秒間攪拌し、170秒間保持した後、ろ過して緑茶抽出液916gを得た。緑茶抽出液中の非重合体カテキン濃度は0.2質量%、ガレート体カテキン率は46質量%、カフェイン濃度は0.06質量%、没食子酸量は0.001質量%であった。
得られた緑茶抽出液は、実施例2、3及び比較例1の茶抽出液に使用した。また、得られた緑茶抽出液を、樹脂SP70(三菱化学製300g)を充填したカラム中を、流速約25mL/分で通液し、得られた茶抽出液を実施例1に使用した。
実施例4の紅茶抽出液は、65℃の水1000gに紅茶葉33.3gの茶葉を加え、250r/minで30秒間攪拌した後、90秒間保持し、その後250r/minで10秒間攪拌し、170秒間保持した後、ろ過して紅茶抽出液892gを得た。得られた紅茶抽出液は、樹脂SP70(三菱化学製300g)を充填したカラム中を、流速約25mL/分で通液し、得られた茶抽出液を実施例4に使用した。
実施例5の烏龍茶抽出液は、65℃の水1000gに烏龍茶葉33.3gの茶葉を加え、250r/minで30秒間攪拌した後、90秒間保持し、その後250r/minで10秒間攪拌し、170秒間保持した後、ろ過して烏龍茶抽出液933gを得た。得られた紅茶抽出液は、樹脂SP70(三菱化学製300g)を充填したカラム中を、流速約25ml/分で通液し、得られた茶抽出液を実施例5に使用した。
【0065】
実施例1〜5及び比較例1
表1及び2記載の処方で、茶飲料(pH6)を製造した。飲料は、138℃、30秒間高温短時間殺菌により殺菌し、酸素透過度が0.03mL/day・bottle(MOCON社製酸素透過度測定装置にて測定)の透明PETボトルに充填した。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
表1及び2から明らかなように、ガレート体カテキン率が50質量%を超える飲料は、苦味があるとともに、保存により風味、エピ体率が変化することがわかる。これに対しガレート体カテキン率を50質量%未満に調整した飲料は、初期の苦味が抑制され、かつ保存しても風味、エピ体率が変化しにくいことがわかる。
【0069】
さらに、実施例1の茶飲料に没食子酸を添加して風味を評価したところ、没食子酸濃度が50ppm、150ppmの場合には風味に問題はなかった。しかし、没食子酸濃度を200ppm以上にすると、異味が生じることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶抽出液に非重合体カテキン類中のガレート体カテキン率が50質量%未満である茶抽出物を配合してなり、
(A)非重合体カテキン類0.072〜0.4質量%、及び
(B)没食子酸21〜150ppm
を含有し、非重合体カテキン類中のガレート体カテキン率が0〜50質量%であり、エピ体率が30〜60質量%である容器詰茶飲料。
【請求項2】
茶抽出液が、緑茶抽出液、烏龍茶抽出液及び紅茶抽出液から選ばれた一種以上である請求項1記載の容器詰茶飲料。
【請求項3】
液温が20℃で測定したpHが、5〜7である請求項1又は2記載の容器詰茶飲料。
【請求項4】
飲料中に含有するカフェインと非重合体カテキン類の総量の比が、0.2以下である請求項1〜3何れか1項記載の容器詰茶飲料。
【請求項5】
酸素透過度が0.1mL/day・bottle以下の容器であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の容器詰茶飲料。