説明

容器詰飲料

【課題】非重合体カテキン類を高濃度で含有し、風味を損うことなく苦味を低減し、かつ、長期間の保存に適した容器詰飲料を提供する。
【解決手段】(A)非重合体カテキン類0.05〜0.5質量%、
(B)一般式(I)(式中、R1、R3、R4、R6及びR8はメトキシ基又は水素原子を、R2及びR7はメトキシ基を、R5はメトキシ基又は水酸基を示す)で表わされるフラボン誘導体類0.0000001〜0.01質量%、及び


(C)甘味料0.0001〜20質量%を含有し、
(D)非重合体カテキンガレート体類率が5〜95質量%、
(E)pHが2.5〜5.1である容器詰飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非重合体カテキン類を高濃度に含有する容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキン類の効果としては、コレステロール上昇抑制作用やαアミラーゼ活性阻害作用などが報告されている。このような生理効果を発現させるためには、成人一日あたり4〜5杯のお茶を飲むことが必要であることから、より簡便に大量のカテキン類を摂取するために、飲料にカテキン類を高濃度配合する技術が望まれていた。
【0003】
しかし、カテキン類を高濃度に含む飲料は、飲んだときに苦味が強く感じられ、常飲が困難である。これら茶系飲料の苦味を低減する方法として、サイクロデキストリンを配合する方法が報告されている(例えば特許文献1〜3)。
特許文献1は、茶抽出物1質量部乾燥質量に対し、サイクロデキストリン2.5質量部以上を含有する茶抽出物含有組成物を、特許文献2は、カテキン類1質量%、カフェイン0.1質量%以下及びサイクロデキストリン0.1〜20.0質量%の各量を含む飲食物の製造に際し、茶抽出液に水蒸気賦活炭を作用させカフェインを吸着・除去する方法を、特許文献3は、カテキン及びサイクロデキストリンを各特定量含む容器詰飲料を各々開示している。
【0004】
一方、フラボン誘導体は、食品や飲料等本来の香味に影響を与えることがない香味劣化抑制剤や、酸味、塩味、甘味等の呈味改善剤として知られていたが、苦味に対する効果は知られていない(例えば特許文献4〜6)。
【特許文献1】特開平3−168046号公報
【特許文献2】特開平10−4919号公報
【特許文献3】特開2002−238518号公報
【特許文献4】特開平11−169148号公報
【特許文献5】特開2003−292488号公報
【特許文献6】特許第2615345号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、非重合体カテキン類を高濃度に含む容器詰飲料に、サイクロデキストリンを配合することによって加熱殺菌処理後の苦味を低減させるには、多量のサイクロデキストリンが必要であった。しかしながら多量のサイクロデキストリンを配合するとサイクロデキストリン自身の風味によって飲料本来の風味が損なわれてしまう欠点があった。
従って、本発明の目的は飲料本来の風味を損うことなく、非重合体カテキン類を高濃度に含む容器詰飲料の苦味を低減し、かつ甘味料を含有するにも関わらず長期間の保存に適した容器詰飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者らは、風味を低下させることなく、非重合体カテキン類を高濃度に含む容器詰飲料の加熱殺菌後の苦味を低減させるべく検討した結果、フラボン誘導体類を配合したところ、優れた苦味低減効果が得られ、飲料本来の風味および長期保存後の色相を保持した容器詰飲料が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(A)非重合体カテキン類0.05〜0.5質量%、
(B)一般式(I)(式中、R1、R3、R4、R6及びR8はメトキシ基又は水素原子を、R2及びR7はメトキシ基を、R5はメトキシ基又は水酸基を示す)で表わされるフラボン誘導体類0.0000001〜0.01質量%、及び
【化1】

(C)甘味料0.0001〜20質量%を含有し、
(D)非重合体カテキンガレート体類率が5〜95質量%、
(E)pHが2.5〜5.1である容器詰飲料を提供するものである。
また、本発明はフラボン誘導体を配合する非重合体カテキン類の苦味抑制方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非重合体カテキン類を高濃度で含む容器詰飲料であって、苦味が抑制され、飲料本来の風味を保持する飲料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における(A)非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレートなどの非エピ体カテキン類及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を合わせての総称であり、非重合体カテキン類の濃度は、上記の合計8種の合計量に基づいて定義される。
【0010】
本発明の容器詰飲料中は、非重合体カテキン類を、0.05〜0.5質量%、好ましくは0.09〜0.4質量%、さらに好ましくは0.1〜0.3質量%、最も好ましくは0.11〜0.2質量%含有する。非重合体カテキン類がこの範囲内であれば多量の非重合体カテキン類を容易に摂取し易く、非重合体カテキン類の生理効果が発現する。また、非重合体カテキン類含量が0.05質量%未満である場合、生理効果が十分でなく、0.5質量%を超えると飲料の苦味が増加する。
【0011】
本発明の容器詰飲料中の非重合体カテキン類にはエピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピカテキンからなるエピ体と、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、ガロカテキン及びカテキンからなる非エピ体がある。非エピ体は本来自然界には殆ど存在せず、エピ体の熱変性により生成する。さらに熱変性により非重合体カテキン類は重合体カテキン類に変化する。本発明の容器詰飲料に使用できる(A)非重合体カテキン類中の(F)非重合体カテキン類の非エピ体類の割合([(F)/(A)]×100)は5〜25質量%であり、さらに8〜20質量%、特に10〜15質量%であることが風味及び非重合体カテキン類の保存安定性の観点から好ましい。
【0012】
本発明の容器詰飲料中の非重合体カテキン類にはエピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びカテキンガレートからなるガレート体と、エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びカテキンからなる非ガレート体がある。エステル型非重合体カテキン類であるガレート体は苦味が強いことから、本発明の容器詰飲料に使用できる(A)非重合体カテキン類中の(D)非重合体カテキン類のガレート体類の割合([(D)/(A)]×100)は5〜95質量%、さらに5〜50質量%、特に8〜50質量%であることが苦味抑制の観点から好ましい。
【0013】
本発明における高濃度の非重合体カテキン類を有する容器詰飲料は、例えば緑茶抽出物の精製物を配合して非重合体カテキン類濃度を調整して得ることができる。具体的には、緑茶抽出物の精製物の水溶液、あるいは当該緑茶抽出物の精製物に緑茶抽出液を配合したものが挙げられる。ここでいう緑茶抽出物の精製物とは、緑茶葉から熱水もしくは水溶性有機溶媒により抽出した溶液から水分を一部除去したもの、又は精製して非重合体カテキン類濃度を高めたものであり、形態としては、固体、水溶液、スラリー状など種々のものが挙げられる。また、緑茶から得られる茶抽出液とは濃縮や精製操作を行わない抽出液のことをいう。
【0014】
非重合体カテキン類を含有する緑茶抽出物の濃縮物としては市販の三井農林(株)「ポリフェノン」、伊藤園(株)「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」などを溶解したものが挙げられる。精製の方法としては、例えば緑茶抽出物の濃縮物を水又は水とエタノールなどの有機溶媒の混合物に懸濁して生じた沈殿を除去し、次いで溶媒を留去する方法がある。あるいは茶葉から熱水もしくはエタノールなどの水溶性有機溶媒により抽出した抽出物を濃縮したものをさらに精製したもの、あるいは抽出物を直接精製したものを用いてもよい。
【0015】
本発明に用いる非重合体カテキン類は、緑茶抽出物又はその精製物をタンナーゼ処理により、ガレート体率を低下させることができる。タンナーゼによる処理は、緑茶抽出物の非重合体カテキン類に対してタンナーゼを0.5〜10質量%の範囲になるように添加することが好ましい。タンナーゼ処理の温度は、酵素活性が得られる15〜40℃が好ましく、さらに好ましくは20〜30℃である。タンナーゼ処理時のpHは、酵素活性が得られる4〜6が好ましく、さらに好ましくは4.5〜6であり、特に好ましくは5〜6である。
【0016】
本発明の容器詰飲料における(A)非重合体カテキン類と(G)カフェインとの含有質量比[(G)/(A)]は0.001〜0.16が好ましく、より好ましくは0.001〜0.15、さらに好ましくは0.01〜0.14、さらに好ましくは0.05〜0.13である。非重合体カテキン類に対するカフェインの比率が低すぎると、風味バランス上好ましくない。また非重合体カテキン類に対するカフェインの比率が高すぎると、飲料本来の外観を害し好ましくない。カフェインは、原料として用いる緑茶抽出物、香料、果汁及び他の成分中に天然で存在するカフェインであっても、新たに加えられたカフェインであってもよい。
【0017】
本発明に用いる(B)フラボン誘導体類は一般式(I)で表されるものであるが、具体的にはテトラメトキシフラボン、ペンタメトキシフラボン、ヘプタメトキシフラボン、タンゲリチン及びノビレチン等が挙げられる。これらはミカン科植物中に多く含まれるため、ミカン科植物の抽出物として用いることもできる。ミカン科植物の抽出物のうち、特にシトラス果汁由来から抽出された抽出物が好ましい。具体的には、シトラスエナジー等が挙げられる。その製造方法として、果汁を搾汁する際に、ピールオイルが採取されるが、それを脱ワックスしたコールドプレスオイルを蒸留、抽出した揮発性が低いテルペンレスオイルを得る。得られたフラボン誘導体類は果汁飲料の果汁感の向上、カロリーオフ、ノンシュガー製品のボリューム、果汁的な甘味の向上、オフフレーバーのマスキング、アルコール刺激のマスキング・後切れの向上等のために使用され、少量の添加量でも効果が発揮される。
【0018】
本発明においてフラボン誘導体(I)は、容器詰飲料に0.0000001〜0.01質量%の範囲内で含有させれば十分な苦味抑制効果を得ることができる。ここで、0.0000001質量%未満であると十分な苦味抑制効果を発揮することができず、0.01質量%を超える添加量ではフラボン誘導体自体の味の影響で、逆に苦味が増大する。フラボン誘導体(I)の好ましい含有量は0.00001〜0.01質量%であり、より好ましくは0.0005〜0.005質量%である。
【0019】
本発明の容器詰飲料では、風味及び保存安定性の観点で(E)pHが2.5〜5.1の範囲であり、より好ましくは2.8〜5.0であり、更に好ましくは3.0〜4.5、特に好ましくは3.8〜4.2である。すなわち、pHが2.5未満では酸味が強くなり、長期の保存において非重合体カテキン類が減少する。又、pHが5.1を超えると長期の保存においても併用する炭水化物との反応などにより非重合体カテキン類が減少する。pHの調整により、長期の保存が可能で適度な酸味を有する飲料となる。
【0020】
本発明の容器詰飲料において(C)甘味料としては、炭水化物類、グリセロール類、人工甘味料が使用できる。これらの甘味料は、本発明の容器詰飲料中に0.0001〜20質量%含有され、さらに0.001〜15質量%、特に0.01〜10質量%含有するのが好ましい。本発明の容器詰飲料は、甘味料が少なすぎると甘みがほとんどなく、酸味、塩味とのバランスがとれないのでショ糖を1としたときの甘味度が2以上であることが好ましい(参考文献:JISZ8144、官能評価分析−用語、番号3011、甘味;JISZ9080、官能評価分析−方法、試験方法;飲料用語辞典4−2甘味度の分類、資料11(ビバレッジジャパン社);特性等級試験mAG試験、ISO 6564−1985(E)、「Sensory Analysis−Methodology−Flavour profile method」等)。一方、甘味度が8以上になると、甘すぎて喉にひっかかる感覚が強く、喉越しが低下する。尚、これらの甘味料は茶抽出物中のものも含む。
【0021】
炭水化物系甘味料としては、単糖、オリゴ糖、複合多糖又はそれらの混合物を含む。このうち、ブドウ糖、ショ糖、果糖及び果糖ブドウ糖液糖から選ばれる1種以上の天然から得られる炭水化物が特に好ましい。
【0022】
単糖のブドウ糖は、本発明の容器詰飲料中、好ましくは0.001〜15質量%、特に好ましくは0.01〜10質量%である。果糖は、本発明の容器詰飲料中の好ましくは0.001〜15質量%、特に好ましくは0.01〜10質量%である。果糖ブドウ糖液糖はこれらの混合液糖であり、含有量は好ましくは0.01〜7質量%、さらに好ましくは0.1〜6質量%、特に好ましくは1.0〜5質量%である。
【0023】
オリゴ糖としては、二糖であるショ糖又はテンサイ糖が好ましい。ショ糖の形態としては、グラニュー糖、液糖、上白糖等があり、これらをいずれも使用できる。本発明の容器詰飲料中のショ糖含有量は、好ましくは0.001〜20質量%、更に好ましくは0.01〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0024】
複合多糖の好ましい例はマルトデキストリンである。また、炭水化物誘導体、多価アルコール、例えばグリセロール類も本発明で用いることができる。グリセロール類は、例えば、0.1〜15質量%、好ましくは0.2〜10質量%、本発明の容器詰飲料に使用できる。これらの甘味料は、合計20質量%以上配合すると飲料の保存中に褐変による着色が生じる。
【0025】
本発明の容器詰飲料に用いられる甘味料のうち、糖アルコールとしてはエリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、ラクチトール、パラチノース、マンニトール、タガトース等があげられる。これらのうち、カロリーがなく、最大無作用摂取量が最も高いエリスリトールが好ましい。
【0026】
本発明の容器詰飲料に用いられる甘味料のうち、人工甘味料としてはアスパルテーム、スクラロース、サッカリン、シクラメート、アセスルフェーム−K、L−アスパルチル−L−フェニルアラニン低級アルキルエステル、L−アスパルチル−D−アラニンアミド、L−アスパルチル−D−セリンアミド、L−アスパルチル−ヒドロキシメチルアルカンアミド、L−アスパルチル−1−ヒドロキシエチルアルカンアミド、スクラロースなどの高甘度甘味料、グリチルリチン、合成アルコキシ芳香族化合物等がある。また、ソーマチン、ステビノシド及び他の天然源の甘味料も使用できる。
【0027】
本発明の容器詰飲料には、電解質であるナトリウムを0.001〜0.5質量%及び/又はカリウム0.001〜0.2質量%を含有することができる。ここで、ナトリウム及びカリウムの合計濃度は、0.001〜0.5質量%が好ましく、この合計が0.001質量%未満であると、飲む場面によっては味的に物足りなく感じる傾向があり、好ましくない。一方、0.5質量%を超えると塩類自体の味が強く、長期間の飲用に好ましくない傾向がある。
【0028】
本発明に用いられるナトリウムとしては、アスコルビン酸ナトリウム、ナトリウム塩化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等及びそれらの混合物等のナトリウム塩を配合することができる。又、ナトリウムは加えられた果汁又は茶の成分由来のものも含まれる。安定性の観点から、本発明の容器詰飲料中のナトリウム含有量は、好ましくは0.001〜0.5質量%、より好ましくは0.002〜0.4質量%、さらに好ましくは0.003〜0.2質量%である。ナトリウム濃度が高くなるほど、飲料の変色する度合いが高くなる。
【0029】
本発明に用いられるカリウムとしては、例えば、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、酒石酸カリウム、ソルビン酸カリウム等又はそれらの混合物のようなカリウム塩を配合できるし、加えられた果汁または香料由来のものも含まれる。カリウム濃度は、ナトリウム濃度に比べて、長期間高温保存時での色調への影響が大きい。このように安定性の観点から、本発明の容器詰飲料中のカリウム含有量は、好ましくは0.001〜0.2質量%、より好ましくは0.002〜0.15質量%、さらに好ましくは0.003〜0.12質量%である。
【0030】
本発明における酸味料はアスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リン酸、リンゴ酸及びそれらの塩類から選ばれる1種以上である。これら単独でも使用できるが、適度の酸味を得るには又はそれらの塩類との併用が好ましい。 具体的にはクエン酸3ナトリウム、クエン酸1カリウム、クエン酸3カリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸3ナトリウム、酒石酸水素カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、フマル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
その他の酸味料としては、アジピン酸、天然成分から抽出した果汁類が挙げられる。酸味料は全体として本発明の容器詰飲料中に0.01〜0.7質量%、特に0.02〜0.6質量%含有するのが好ましい。また無機酸類、無機酸塩類も使用できる。無機酸類、無機酸塩類としてはリン酸水素2アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、メタリン酸3ナトリウム、リン酸3カリウム等が挙げられる。これらの無機酸類、無機酸塩類は、本発明の容器詰飲料中0.01〜0.5質量%、特に0.02〜0.3質量%が好ましい。
【0032】
香料(フレーバー)や果汁(フルーツジュース)は嗜好性を高めるために本発明の容器詰飲料に配合できる。天然又は合成香料や果汁が本発明で使用できる。これらはフルーツジュース、フルーツフレーバー、植物フレーバー又はそれらの混合物から選択できる。特に、フルーツジュースと一緒に茶フレーバー、好ましくは緑茶又は黒茶フレーバーの組合せが特に好ましい。好ましい果汁はリンゴ、ナシ、レモン、ライム、マンダリン、グレープフルーツ、クランベリー、オレンジ、ストロベリー、ブドウ、キゥイ、パイナップル、パッションフルーツ、マンゴ、グァバ、ラズベリー及びチェリーを使用できる。好ましくはシトラスジュース、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライム、マンダリンと、マンゴ、パッションフルーツ及びグァバのジュース、又はそれらの混合物が最も好ましい。好ましい天然フレーバーはジャスミン、カミツレ、バラ、ペパーミント、サンザシ、キク、ヒシ、サトウキビ、レイシ、タケノコ等である。果汁は本発明の容器詰飲料中に0.001〜20重量%、更に0.002〜10重量%含有するのが好ましい。特に好ましい香料はオレンジフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー及びグレープフルーツフレーバーを含めたシトラスフレーバーである。シトラスフレーバー以外にも、リンゴフレーバー、ブドウフレーバー、ラズベリーフレーバー、クランベリーフレーバー、チェリーフレーバー、パイナップルフレーバー等のような様々な他のフルーツフレーバーが使用できる。これらのフレーバーはフルーツジュース及び香油のような天然源から誘導しても、又は合成してもよい。
香料には、様々なフレーバーのブレンド、例えばレモン及びライムフレーバー、シトラスフレーバーと選択されたスパイス(典型的なコーラソフトドリンクフレーバー)等を含めることができる。このような香料は本発明の容器詰飲料に好ましくは0.0001〜5重量%、より好ましくは0.001〜3重量%配合できる。
【0033】
本発明の容器詰飲料には、ビタミンを更に含有させることができる。好ましくは、ビタミンA、ビタミンB及びビタミンEが加えられる。またビタミンDのような他のビタミンを加えてもよい。ビタミンBとしてはイノシトール、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、リボフラビン、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、ナイアシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、ピリドキシ塩酸塩、シアノコバラミンから選ばれるビタミンB群があげられ、葉酸、ビオチンも本発明の飲料に用いることができる。これらのビタミンは飲料一本当たり1日所要量(米国RDI基準:US2005/0003068記載:U.S.Reference Daily Intake)の少なくとも10質量%以上であることが好ましい。
【0034】
本発明の容器詰飲料には、ミネラルを更に含有させることができる。好ましいミネラルはカルシウム、クロム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン及び亜鉛である。特に好ましいミネラルはマグネシウム、リン及び鉄である。
【0035】
本発明の容器詰飲料には、非重合体カテキン類の苦味を抑制させるためにサイクロデキストリンを併用することができる。サイクロデキストリンは、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、γ−サイクロデキストリンが挙げられる。これらのサイクロデキストリンは、本発明の容器詰飲料中に好ましくは、0.005〜0.5質量%、さらに好ましくは0.02〜0.3質量%、特に好ましくは0.05〜0.25質量%となるように添加する。
【0036】
このように本発明の容器詰飲料には、茶由来の成分にあわせて、酸化防止剤、各種エステル類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合しても良い。
【0037】
また、本発明の容器の容器詰飲料は、茶系飲料とすることも、非茶系飲料とすることもできる。茶系飲料としては、緑茶飲料等の本発明茶飲料、烏龍茶飲料等の半発酵茶飲料、紅茶飲料等の発酵茶飲料が挙げられる。また、本発明の容器詰飲料は、機能性飲料とすることもでき、例えばエンハンスドウォーター、ボトルドウォーター、スポーツドリンク、ニアウォーター等の非茶系飲料とすることもできる。
【0038】
本発明の容器詰飲料のカロリーは、飲料100ml中に含まれるブドウ糖、果糖及びショ糖は1gにつき4kcalで算出し、エリスリトールは1gにつき0Kcalで算出する。ここで本発明の容器詰茶系飲料は、低カロリーである40kcal/240ml以下が好ましく、さらに好ましくは2〜35kcal/240ml以下、特に好ましくは3〜30kcal/240ml以下である。
【0039】
本発明の容器詰飲料に使用できる容器は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などの通常の形態で提供することができる。ここでいう容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0040】
また本発明の容器詰飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造できる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。さらに、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【実施例】
【0041】
非重合体カテキン類の測定
メンブランフィルター(0.8μm)でろ過し、次いで蒸留水で希釈した試料を、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム L−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った(通常カテキン類及びカフェインの濃度は、質量/体積%(%[w/v])で表すが、実施例中の含有量は液量を掛けて質量で示した)。
【0042】
フラボン誘導体の測定法
分析機器はHPLCを使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通り。UV−VIS検出器:L−2420((株)日立ハイテクノロジーズ)、カラムオーブン:L−2300((株)日立ハイテクノロジーズ)、ポンプ:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ)、オートサンプラー:L−2200((株)日立ハイテクノロジーズ)、カラム:Cadenza CD−C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト(株))。
分析条件は次の通り。サンプル注入量:10μL、流量:1.0mL/min、UV−VIS検出器設定波長:325nm、カラムオーブン設定温度:35℃、溶離液:アセトニトリル/水:50/50。
HPLCでは、試料1gを精秤後、溶離液Aにて10mLにメスアップし、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、分析に供した。
【0043】
風味の評価
パネラー5名により飲用試験を行った。
【0044】
保存試験
調製した飲料を55℃で2週間保存し、保存前後での飲料の色調変化を5名のパネラーに目視で以下の基準で評点をつけた。さらに非重合体カテキン類を測定した。
A:変化しない、B:やや変化する、C:変化する、D:大きく変化する
【0045】
実施例1
市販の緑茶抽出物の濃縮物(三井農林(株)「ポリフェノンHG」)100gを90.0質量%エタノール900gに分散させ、30分熟成し、2号濾紙及び孔径0.2μmの濾紙で濾過し、水200mLを加えて減圧濃縮することによって精製物を得た。得られた非重合体カテキン類組成物のうち75.0gをステンレス容器に投入し、イオン交換水で全量を1,000gとし、5質量%重炭酸ナトリウム水溶液3.0gを添加してpH5.5に調整した。次いで、22℃、150r/minの攪拌条件下で、イオン交換水1.07g中にキッコーマンタンナーゼKTFH(Industrial Grade、500U/g以上)0.27g(非重合体カテキン類に対して2.4%)を溶解した液を添加し、55分後にpHが4.24に低下した時点で酵素反応を終了した。次いで95℃の温浴にステンレス容器を浸漬し、90℃、10分間保持して酵素活性を完全に失活した後、25℃まで冷却した後に濃縮処理を行った。タンナーゼ処理後に得られた緑茶抽出物の精製物の非重合体カテキン類は15.0質量%、非重合体ガレート体率は45.1質量%であった。この精製物水溶液のうち8.5gにシトラスエナジー1000を1.0g(フラボン誘導体含有量1.0重量%、小川香料製)更に、無水結晶果糖、エリスリトール、クエン酸、クエン酸3Na、L−アスコルビン酸、レモンライム香料を添加し、水を加えて全量を1,000gとした。配合後、UHT殺菌しPETボトルに充填した。この容器詰飲料の組成、風味評価結果及び保存試験結果を表1に示す。
【0046】
実施例2
フラボン誘導体としてシトラスエナジー2000(フラボン誘導体含有量1.0重量%、小川香料製)を1.0g使用した以外は実施例1と同様の飲料を製造した。
【0047】
実施例3
実施例1で得られた緑茶抽出物の精製物5.3g、シトラスエナジー1000を1.0g、中国産緑茶抽出物粉末、無水結晶果糖、エリスリトール、L−アスコルビン酸、緑茶香料を添加し、水を加えて全量1,000gとした後、実施例1と同様の方法で飲料を製造した。この容器詰飲料の組成、風味評価結果及び保存試験結果を表1に示す。
【0048】
実施例4
実施例1で得られた緑茶抽出物の精製物8.5g、シトラスエナジー1000を1.0g、インド産紅茶抽出物粉末、無水結晶果糖、エリスリトール、L−アスコルビン酸、5%重曹水溶液、紅茶香料を添加後、水で全量1,000gとした後、実施例1と同様の方法で飲料を製造した。この容器詰飲料の組成、風味評価結果及び保存試験結果を表1に示す。
【0049】
比較例1
フラボン誘導体を添加せずに、クエン酸3Naを増量した以外は、実施例1と同様の飲料を製造した。
【0050】
比較例2
フラボン誘導体を添加せずに、L−アスコルビン酸の代わりにL−アスコルビン酸Na、5%重曹水溶液を使用した以外は、実施例3と同様の飲料を製造した。
【0051】
比較例3
フラボン誘導体を添加せずに、5%重曹水溶液を増量した以外は、実施例4と同様の飲料を製造した。
【0052】
表1から明らかなように、高濃度の非重合体カテキン類を含有し、かつフラボン誘導体を配合すると苦味が顕著に抑制され、甘味料を含有するにも関わらず最適なpHに調整することにより長期間の保存に適していることが明らかである。
【0053】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非重合体カテキン類0.05〜0.5質量%、
(B)一般式(I)(式中、R1、R3、R4、R6及びR8はメトキシ基又は水素原子を、R2及びR7はメトキシ基を、R5はメトキシ基又は水酸基を示す)で表わされるフラボン誘導体類0.0000001〜0.01質量%、及び
【化1】

(C)甘味料0.0001〜20質量%を含有し、
(D)非重合体カテキンガレート体類率が5〜95質量%、
(E)pHが2.5〜5.1である容器詰飲料。
【請求項2】
フラボン誘導体(I)が、テトラメトキシフラボン、ペンタメトキシフラボン、ヘプタメトキシフラボン、タンゲリチン及びノビレチンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の容器詰飲料。
【請求項3】
フラボン誘導体(I)がミカン科植物の抽出物である請求項1又は2記載の容器詰飲料。
【請求項4】
(F)非重合体カテキン非エピ体率が5〜25質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の容器詰飲料。
【請求項5】

(D)非重合体カテキンガレート体類率が5〜50質量%である請求項1〜4のいずれか1項記載の容器詰飲料。
【請求項6】
甘味料が果糖、ブドウ糖、ショ糖及び果糖ブドウ糖液糖から選ばれる1種以上である請求項1〜5のいずれか1項記載の容器詰飲料。
【請求項7】
フラボン誘導体を配合する非重合体カテキン類の苦味抑制方法。

【公開番号】特開2007−289159(P2007−289159A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76484(P2007−76484)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】