説明

容器類の掴み装置

【課題】 容器類をしっかりとぶれることなく保持でき、容器内に異物が入るおそれもなく、耐久性にも優れた容器類の掴み装置を開発する。
【解決手段】 筒状のスリーブ1内に、ロッド2をスリーブに対して相対的に軸方向に進退自在に挿入する。ロッドの先端には容器類Cの口部内に嵌入して口部の動きを制限する先端嵌入部4aを設け、ロッドの先端嵌入部の上方には半径外方向かつ下方向に放射状に突出した複数の板バネ3を設ける。板バネの先端には掴みパッド5を設ける。掴み状態においては、ロッドがスリーブに対して相対的に後退した状態で、先端嵌入部が容器類の口部内に嵌入すると共に、板バネがスリーブ内に引き込まれて窄まるように弾性変形し、掴みパッドが容器類の口部を外側から包持するので、容器をぶれることなく確実に掴むことができ、容器内部に異物が入り込むこともない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口した口部を有するガラスびんなどの容器類を移送する移送装置などに取り付けられ、容器類を掴んで保持し、また掴みを解除して容器類を解放することができる容器類の掴み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の容器類の掴み装置には、内掴み型と外掴み型がある。内掴み型(例えば特許文献1)は、容器類の口部の内側を保持するもので、ブチルゴムなどの弾性体で砲弾状に形成され、これを長く引き延ばし、径を細くした状態で口部内に挿入し、長さを基に復帰して径を元の太さに戻して口部を内側から保持するものである。また、外掴み型(例えば特許文献2)は、容器類の口部の外側を保持するもので、筒状のスリーブ内に設けたゴムなどの弾性体でなる入れ子を、内径が小さくなるように変形して口部を外側から保持するものである。また、スリーブ内のボールを介して容器類の口部の外側を保持するものもある。
【特許文献1】特開2002−301680号公報
【特許文献2】特開平5−69375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記内掴み型の容器類掴み装置は、容器類を比較的しっかりと掴むことができる反面、ブチルゴムなどの弾性体でできているので、これが剥離して容器内に異物として入り込んでしまうという致命的な欠点があった。また、外掴み型の容器類掴み装置は、異物が容器内に入り込むことはないが、ゴムなどの肉薄の入れ子やボールで保持するため、容器類をしっかり保持することができない。例えば、ガラスびんの外面をコーティングするための移送装置に用いる場合、ガラスびんを保持した後にガラスびんを横向きにして回転させながらコーティング液を入れたディップ槽に沿って移動させるが、ガラスびんがしっかり保持されていないと、ディップ槽に沿って移動させながらコーティングを行うときに、ガラスびんがぶれてしまい、コーティング部分とコーティングしない部分の境界線が一定しなくなるという不都合を生じる。また、容器類の保持、解除のたびにゴムなどの肉薄の入れ子を変形させるために、入れ子が劣化しやすく、耐久性に乏しいという問題もある。ボールを用いる場合も、ボール球面の接触部分が摩耗することにより把持力が低下して耐久力に乏しいという問題がある。
【0004】
本発明は、容器類をしっかりとぶれることなく保持でき、容器内に異物が入るおそれもなく、耐久性にも優れた容器類の掴み装置を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、筒状のスリーブと、該筒状のスリーブ内に、該スリーブに対して相対的に軸方向に進退自在に挿入されたロッドと、該ロッドの先端にあって容器類の口部内に嵌入して該口部の動きを制限する先端嵌入部と、前記ロッドの前記先端嵌入部の上方から半径外方向かつ下方向に放射状に突出した複数の板バネと、該板バネの先端に設けた掴みパッドとを有し、掴み状態においては、前記ロッドが前記スリーブに対して相対的に後退した状態で、前記先端嵌入部が容器類の口部内に嵌入すると共に、前記板バネが前記スリーブ内に引き込まれて窄まるように弾性変形し、前記掴みパッドが容器類の口部を外側から包持することで容器類を掴み、解放状態においては、前記ロッドがスリーブに対して相対的に前進した状態で、前記板バネが前記スリーブ内から先端側に脱出して広がるように弾性復帰し、前記掴みパッドが容器類の口部から外側方向に離脱して容器類を解放することを特徴とする容器類の掴み装置である。
【0006】
スリーブの内面を、先端部ほど径が大きくなるテーパ状とすると、ロッドをスリーブに対して相対的に軸方向に進退させたとき、板バネがスリーブからスムースに出し入れされる。また、ロッドを引き込む程に板バネが窄まるので、掴みパッドによって容器類の口部を外側から確実に包持できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の容器類掴み装置は、口部の外側を掴みパッドで包持して掴むものであるので、容器内部に異物が入り込むことがない。また、掴みパッドは板バネをスリーブ内に引き込んで窄めることで容器口部外周を包持するので、しっかりと確実に包持することができる。更に、容器を掴んだ状態で、ロッドの先端嵌入部が容器口部内に嵌入し、容器の動き(ぶれ)を規制するので、容器を掴んだ状態で容器がぶれるのが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
スリーブ及びロッドは鉄、ステンレスなどの金属製、板バネはバネ鋼製とするのが耐久性及び強度の点から好ましい。先端嵌入部及び掴みパッドは容器への密着性を高めるために樹脂製とするのが好ましい。
【0009】
ロッドは後退して容器類を掴んだ状態において、先端側に前進する方向にコイルバネなどで付勢しておくことができる。このようにすると、機械式カム、エアシリンダなどの駆動手段でロッドを後退させて容器類を掴んだ後、このロッドの位置を保持し、容器類を解放するときはロッドの保持を解除することで、ロッドはコイルバネなどの弾性で前進位置に復帰するので、容器類などを掴むときのみ駆動手段でロッドを駆動させればよく、駆動手段が簡単なものとなる。
【0010】
スリーブは、基端側部と先端側部を別体として成形し、相互に着脱自在とすることができる。基端側部は移送装置などに取り付け固定されるための取付手段を有する部分であり、先端側部は、内面に掴みパッドが摺接する摺接面を有する部分である。このようにすると、口部の寸法の異なる容器類に対し、スリーブの先端側を交換することで対応できる。同様に、板バネ及び先端嵌入部をロッドに対して着脱可能にしておくと、口部の寸法の異なる容器類に対し、これらを交換することで対応できる。
【実施例】
【0011】
図1〜3は第1実施例の容器類の掴み装置に関する。この掴み装置はスリーブ1、ロッド2、板バネ3、先端嵌入部4a、掴みパッド5などを有する。
【0012】
スリーブ1は鉄製で円筒状をなし、内面が先端部ほど径が大きくなるテーパ状となっている。このテーパ状の部分は内面全体である必要はなく、少なくとも掴みパッド5が摺接する摺接面13がテーパ状となっていればよい。外面上部には移送装置などに取り付けるための取付手段である環状突条6が形成されている。この場合は、環状突条6を移送装置などの該当部分に嵌着することで取り付けられる。取付手段はこれに限らず、従来の掴み装置と同様に、取り付ける側の装置に適合したものを自由に選択できる。スリーブの形状は円筒状に限らず、四角筒状など、容器の形状に適した形状であればよい。
【0013】
ロッド2は本体と先端部4からなり、本体は断面が円形の鉄製で、先端部4は砲弾型の樹脂製である。先端部4はロッド2の本体に凹凸嵌合(嵌め込み)により取り付けられている。先端部4の取付手段は凹凸嵌合に限らず、ねじ込み、ボルトやピンによる取り付けでもよい。先端部4の先端は容器口部に嵌入する先端嵌入部4aとなっている。先端嵌入部の外径は容器口部の内径と同じかやや大きい(直径で0〜1mm程度)大きいことが望ましい。先端嵌入部の材質は、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂など若干の弾性を有し、摩擦によって剥離しにくい材質とすることが望ましい。ロッド2はスリーブ1内に、スリーブ1に対して相対的に軸方向に進退自在に挿入されている。ロッド2を進退させる駆動手段は、従来の掴み装置と同様に、移送装置などの掴み装置を取り付ける側にあり、従来通り機械式カム、エアシリンダ、油圧シリンダなど任意である。
【0014】
4枚の板バネ3は、図3に示すように、リング板部3aから半径外方向、かつ下方に向けて放射状に突出するようにバネ鋼で一体に成形され、リング板部3aがロッド2の本体と先端部4の間に挟み込まれることで、ロッド2に取り付けられている。板バネ3の下方に向かう角度は、図2に示すように、容器口部外径よりも大きく開いた状態に成形されており、図1に示すように、容器口部を保持した状態では、板バネ3が広がる方向に付勢されている。板バネの数は4枚に限らないが、2〜6枚程度が適当である。また、板バネの形状は図3のものに限らず、要は、ロッドの先端嵌入部4aの上方から半径外方向かつ下方向に放射状に突出させたものであればよい。
【0015】
板バネ3の先端部には掴みパッド5が設けられている。掴みパッド5は容器口部に密着して確実に包持できるように、やや弾性を有する樹脂製とすることが望ましい。例えば、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂などとすることができる。板バネ3の先端への装着方法は差し込み、接着、一体成形など適宜に選択できる。掴みパッド5の形状は、図1のように容器Cを包持したときに、4個の掴みパッドによって容器の口部の外側を包み込むようにほぼ筒形となることが望ましい。
【0016】
スリーブ1の上面には金属製の筒状のカバー9が溶接など任意の固定手段により固定されている。カバー9の底部はワッシャー10で、上部は頂壁9aで閉塞されているが、ワッシャー10及び頂壁9aの中央部に設けた穴にロッド2が貫通している。ロッド2に設けたフランジ部8とワッシャー10の間にはコイルバネ7を装着している。コイルバネ7は常に圧縮状態にあり、従ってロッドは常に後退方向(上方向)に付勢されている。頂壁9aはロッド2が後退したときのストッパーの働きをし、ワッシャー10はコイルバネ7の反力部材となる。ワッシャー10に代えて、スリーブの上端の径を小さく形成し、その径を小さくした部分をコイルバネ7の反力部材、かつ、ロッドの滑り軸受とすることもできる。
【0017】
図1は、ロッド2がスリーブ1に対して相対的に後退(上昇)して容器C(ガラスびん)を掴んだ状態である。この状態において、ロッド2の先端の先端嵌入部4aが容器Cの口部内に嵌入していると共に、板バネ3がスリーブ内に引き込まれて窄まるように弾性変形し、板バネ先端の掴みパッド5が容器Cの口部を外側から包持している。
【0018】
図2は、ロッド2がスリーブ1に対して相対的に前進(下降)して容器C(ガラスびん)を解放した状態である。この状態において、先端嵌入部4aは容器Cの口部から脱出すると共に、板バネ4aがスリーブ1内から先端側に脱出して広がるように弾性復帰し、掴みパッド5が容器Cの口部から外側方向に離脱して容器Cを解放する。
【0019】
図4、5は第2実施例の容器類の掴み装置に関する。前記第1実施例の場合と同等の機能を有する部材には同じ符号を付している。図4、5において、スリーブ1は基端側部1aと先端側部1bを別体として成形し、ねじ込みにより着脱自在に一体化している。着脱自在に一体化する手段は、ねじ込みに限らず、ボルト止めなどの周知手段を採用できる。基端側部1aは、短い円筒状をなし、上部が天壁11となり、天壁にはロッド2が挿通する穴が形成され、天壁2の上面にはロッド2の滑り軸受12が突出形成されている。また、筒状部分の内面には先端側部1bをねじ込むための螺条が形成されている。滑り軸受12には回り止めピン15が直径方向に刺し通してあり、これに対応して、ロッド12には軸方向に長いピン穴14が形成されている。ピン穴14は軸方向に長いので、ロッド2は軸方向に摺動することができる。スリーブ先端側部1bの着脱に際して、これを回転させた場合、回り止めピン15の作用で基端側部1aが回転することがなく、ねじ込み作業、取り外し作業を容易に行うことができる。基端側部1aの外周上部には移送装置などに取り付け固定するための取付手段としての環状突条6が設けられている。先端側部1bは、円筒状をなし、上端部外周には基端側部1aと螺合するための螺条を有し、内面に掴みパッドが摺接する摺接面13を有する。摺接面13は先端部ほど径が大きくなるテーパ状となっている。
【0020】
ロッド2は鉄製の本体の先端に樹脂製の先端部4を取り付けたものである。本体の先端にはボルト孔2aが形成され、これにボルト16を螺合することで先端部4及び板バネ3が取り付けられている。板バネ3は前記第1実施例と同様のものである。先端部4はスペーサ4cとキャップ4bからなり、板バネ3及びスペーサ4cをボルト16でロッド本体に取り付けた後、キャップ4bを嵌め込む。キャップ4bの先端は先端嵌入部4aとなっている。先端部の構成はこれに限るものではなく、また、先端部の取付手段はボルトに限らず、はめ込み、ピン止めなど周知の手段を採用できる。
【0021】
図4は、ロッド2がスリーブ1に対して相対的に後退(上昇)して容器C(ガラスびん)を掴んだ状態である。この状態において、ロッド2の先端の先端嵌入部4aが容器Cの口部内に嵌入していると共に、板バネ3がスリーブ内に引き込まれて窄まるように弾性変形し、板バネ先端の掴みパッド5が容器Cの口部を外側から包持している。容器Cを解放する場合は、前記第1実施例と同様に、ロッド2をスリーブ1に対して相対的に前進(下降)させればよい。
【0022】
図6は、第3実施例の容器類掴み装置に関し、第2実施例の場合よりも口部の径の大きな容器に使用するもので、第2実施例のスリーブの先端側部1a、ロッドの先端部4及び板バネ3を径の大きなものに交換したものである。このように、スリーブの先端側部、先端嵌入部及び板バネを着脱可能にしておくと、口部の寸法の異なる容器類に対し、これらを交換することで容易に対応できる。
【0023】
図6において、スリーブの先端側部1a及び板バネ3は基本的な構成は、径が拡大されていることを除いて前記第2実施例(図4、5)と同じである。樹脂製の先端部4はスペーサ4d、4cとキャップ4bからなり、スペーサ4dと4cの間に板バネ3のリング板部を挟み、ボルト16でロッド本体の先端に螺着した後、キャップ4bを嵌め込んである。キャップ4bの先端が先端嵌入部4aとなっており、これは前記第2実施例のものよりも径が大きくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施例の容器を掴んだ状態の断面説明図である。
【図2】第1実施例の容器を解放した状態の断面説明図である。
【図3】板バネの斜視図である。
【図4】第2実施例の容器を掴んだ状態の断面説明図である。
【図5】第2実施例の分解断面説明図である。
【図6】第3実施例の容器を掴んだ状態の断面説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 スリーブ
2 ロッド
3 板バネ
4 先端部
4a 先端嵌入部
5 掴みパッド
6 環状突条
7 コイルバネ
8 フランジ部
9 カバー
9a 頂壁
10 ワッシャー
11 天壁
12 滑り軸受
13 摺接面
14 ピン穴
15 回り止めピン
16 ボルト
C 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のスリーブと、
該筒状のスリーブ内に、該スリーブに対して相対的に軸方向に進退自在に挿入されたロッドと、
該ロッドの先端にあって容器類の口部内に嵌入して該口部の動きを制限する先端嵌入部と、
前記ロッドの前記先端嵌入部の上方から半径外方向かつ下方向に放射状に突出した複数の板バネと、
該板バネの先端に設けた掴みパッド
とを有し、
掴み状態においては、前記ロッドが前記スリーブに対して相対的に後退した状態で、前記先端嵌入部が容器類の口部内に嵌入すると共に、前記板バネが前記スリーブ内に引き込まれて窄まるように弾性変形し、前記掴みパッドが容器類の口部を外側から包持することで容器類を掴み、
解放状態においては、前記ロッドがスリーブに対して相対的に前進した状態で、前記板バネが前記スリーブ内から先端側に脱出して広がるように弾性復帰し、前記掴みパッドが容器類の口部から外側方向に離脱して容器類を解放することを特徴とする容器類の掴み装置。
【請求項2】
請求項1の容器類の掴み装置において、前記スリーブの内面が、先端部ほど径が大きくなるテーパ状となっていることを特徴とする容器類の掴み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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