説明

容積移送式流体ポンプ

【課題】耐食性、耐摩耗性に優れた流体ポンプを提供する。
【解決手段】流体ポンプ10は、モーター14、内側ギア・ローター、外側ギア・ローターを備えている。内側ギア・ローターは、モーター14によって軸周りに回転駆動され、複数の外側に延在する歯を有する。外側ギア・ローターは、複数の内側へ延在した歯を有しており、それらは内側ギア・ローターの歯と係合して、内側ギア・ローターが回転する時に、外側ギア・ローターは第二軸周りに回転駆動される。内側ギア・ローターと外側ギア・ローターの少なくとも一つが、プラスチック材料で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(同時係属出願への言及)
この出願は、全体が参照することにより本願に組み込まれる2011年3月3日出願の米国特許仮出願第61/449,013号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、全体的に流体ポンプ、より詳細には容積移送式流体ポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
電気モーター駆動式ポンプは、様々な液体を送り出すために用いられている。自動車における用途の一つとして、電気モーター駆動式ポンプは、燃料タンクから燃料を燃焼機関に送り出すために用いられている。他の用途として、内燃機関、特にディーゼルエンジンの排気ガス中に存在する窒素酸化物を減らすために用いられるような添加剤を送り出すために用いられる。
【発明の概要】
【0004】
流体ポンプは、モーターと、内側ギア・ローターと、外側ギア・ローターを備えている。内側ギア・ローターは、モーターによって軸周りに回転駆動され、複数の外側へ延在した歯を有している。外側ギア・ローターは、複数の内側へ延在した歯を有しており、それらは内側ギア・ローターの歯と係合して、内側ギア・ローターが回転する時に、外側ギア・ローターは第二軸周りに回転駆動される。内側ギア・ローターと外側ギア・ローターの少なくとも一つは、プラスチック材料で構成されている。
【0005】
少なくとも幾つかの実施態様において、流体ポンプは、モーターと、第一ポンプ本体と、第一ポンプ本体に隣接した第二ポンプ本体と、内側ギア・ローターと、外側ギア・ローターと、ガイドピンを有している。内側ギア・ローターは、第一ポンプ本体と第二ポンプ本体との間に収容され、モーターによって軸周りに回転駆動され、そして、複数の外側へ延在した歯を有している。外側ギア・ローターは、第一ポンプ本体と第二ポンプ本体との間に収容され、複数の内側へ延在した歯を有しており、それらは内側ギア・ローターの歯と係合して、内側ギア・ローターが回転する時に、外側ギア・ローターは第二軸周りに回転駆動される。内側ギア・ローターと外側ギア・ローターの少なくとも一つは、プラスチック材料で構成されている。ガイドピンは、第一ポンプ本体と第二ポンプ本体の少なくとも一つに支持されて、内側ギア・ローターが回転する軸を形成している。内側ギア・ローターがプラスチックで構成されている場合、ガイドピンは金属で構成され。内側ギア・ローターが金属で構成されている場合、ガイドピンは、ガイドピンと内側ギア・ローターとの間に設けられたブッシングを有している。
【0006】
ポンプの部品を形成する方法も開示する。この方法は、プラスチック材料で第一ポンプ本体を形成する工程と、第一ポンプ本体にガイドピンをモールドする工程と、空洞の位置の参照先としてガイドピンを用いて第一ポンプ本体に空洞を機械加工する工程とを備えている。このようにして、少なくとも部分的に空洞内に設けられた外側ギア・ローターは、ガイドピンに対して正確に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】流体ポンプの側面図である。
【図2】図1の流体ポンプの断面図である。
【図3】この流体ポンプの展開図である。
【図4】ポンプ部品を示す流体ポンプのポンプ・アセンブリの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して説明すると、図1ないし3は、電気モーター14によって回転駆動される容積移送式ポンプ・アセンブリ12を有する流体ポンプ10を示す。この流体ポンプ10は、この明細書の残りの目的である、選択接触還元(SCR)反応剤を含む、あらゆる適切な液体を送り出すために用いることができる。SCRシステムは、SCR反応剤を液体又は固体の状態で貯蔵する。SCR反応剤は、尿素(NH22COと水の組み合わせを含んでいる。SCR反応剤の例としては、ADBLUEがあり、これは尿素水溶液に対するドイツ自動車工業協会の保持する登録商標である。SCR反応剤は、エンジンの下流であって、一つ以上の触媒コンバータの上流の、排気ガス流に送られる。
【0009】
流体ポンプ10は、ポンプ・アセンブリ12を駆動するための、ポンプ・アセンブリ12と結合した電気モーター14を備えている。実施例において、電気モーター14は電磁結合を介してポンプ・アセンブリ12を駆動する。このようにして、電気モーター14は、必要に応じて、隔壁16によってポンプ・アセンブリ12と分離されて、送り出される流体から電気モーター14を切り離している。電気モーター14とポンプ・アセンブリ12は、必要に応じて、主ハウジング18によって物理的に互いに結合される。主ハウジング18は、金属又はプラスチックで構成された筒状のシェル20と、電気モーター14に隣接したシェル20の端部を閉じる(同じく金属又はプラスチックで構成された)モーターカバー22と、ポンプ・アセンブリ12に隣接したシェル20の端部を少なくとも部分的に閉じる(同じく金属又はプラスチックで構成された)ポンプカバー24とを備えている。モーターカバー22は、電力を電気モーター14に供給するための電線を通す開口26を有している。ポンプカバー24は、液体SCR反応剤がタンクの内側から流体ポンプ10へ取り出される時に経由する注入口28と、加圧された液体SCR反応剤を流体ポンプ10から排出される時に経由する排出口30とを有している。シェル20は、モーターカバー22とポンプカバー24を保持するために、丸められて形成されている。シェル20は、電気モーター14をシェル20内の所定の位置に固定するための、刻み目やリブ32などから成る内部止め具を備えている。
【0010】
モーター・アセンブリは、電気モーター14と、この電気モーター14によって回転する出力軸34とを有している。電気モーター14は、任意の適切な構造を有し、例えば、特に限定するものでなく、ブラシタイプやブラシレスのDCモーターなどである。例えば、電気モーター14は、13ボルト1.6アンペアで毎分約4,500回転で約30m−Nmのトルクを供給する、香港のJohnson Electric Industrial Manufactory社製のHCシリーズのモーターである。他のモーターとしては、日本のミネベア株式会社製のモデルBLDC36がある。電気モーター14は、内部の部品を囲むケーシング36を有しており、ケーシング36はシェル20に密接して収容されている。出力軸34は、駆動性能を有しているか、さもなければ駆動部材38と結合している。いずれの場合も、スクリューセット(図示せず)、スプライン接続、相手方非円形駆動部材(例えば出力軸34上で平坦で、ブッシング39内にあるもの)を含んでおり、もちろん、他の物を用いても良い。
【0011】
駆動部材38は、出力軸34と結合したハウジング40と、ハウジング40に支持され出力軸34周りに円周方向に設けられた、例えば磁石42のような一つ以上の磁場生成部材とを備えている。ハウジング40は、種々のプラスチック材料を含む、あらゆる適切な材料から構成することができる。本実施例のハウジング40は、送り出される液体にさらされていないので、液に接触した時に用いるような不浸透性の材料等から構成される必要はない。ハウジング40は、例えば圧入やワッシャとバネクリップのような出力軸34と結合したクリップなどによって、出力軸34に保持される。図に示すように、ハウジング40は、磁石42を収容する一つ以上のポケット44を備えている。例えば磁石42上でハウジング40をオーバーモールドで形成することで、ポケット44は磁石42を完全に包み込んでもよいし、又は、一面で開放するようにしてもよい。この場合、磁石42はポケット44内に設けられ、磁石42の一面はハウジング40の一面に沿って開放されている。そのような配置において、ハウジング40の一面は隔壁16に隣接して設けられる。全体的に、磁石42は磁場を、隔壁16を経由して供給する。
【0012】
もちろん、磁石42は、あらゆる所望の形状、構造、配置を取ることができ、例えば限定するものでないものとして、リング状磁石や平坦な円板状磁石、又は出力軸34周りに分割して設けられた複数の磁石片であってもよい。駆動部材38は、ステンレス鋼ハウジングによって支持されるか、又はフェノール樹脂や硫化ポリフェニレン(PPS)樹脂によってオーバーモールド形成された、一つ以上の希土類磁石によって構成されている。磁石42は、例えばネオジム、鉄、ボロン(Nd2Fe14B)で構成されている。別の例として、駆動部材38は、米国マサチューセッツ州オックスフォードにあるMagnetic Technologies社製の商業的に利用可能な製品である。カップリングの例としては、0.2Nmのスリップトルクを有し、アルミ製ハウジングと6個の磁石42で構成されたMTD−0.2 ASSYがある。電力が電気モーター14に供給されると、ハウジング40と磁石42は、出力軸34と共に回転する。
【0013】
ポンプ・アセンブリ12は、ポンプハウジング50と、ポンプハウジング50に設けられた被駆動部材52と、被駆動部材52と結合して駆動されるポンプ部材54とを備えている。被駆動部材52は、ハウジング56と、駆動部材38の磁場に応答する部材、例えば駆動部材38の磁石42から供給される磁場によって駆動される1つ以上の磁石58とを備えている。ハウジング56は、ハウジング40と略同一の構造を有し、同様に、磁石58は磁石42と同一の構造と材料からなる。ハウジング56は、被駆動部材52とポンプ部材54とを一緒に回転させるために結合するための、ポンプ部材54に結合するように設けられた一つ以上の指部60を有している。ハウジング56は、ガイドピン78又はベアリングの一部が収容される中央通路62も有している。また、ハウジング56は送り出される液体にさらされるので、ハウジング40とは異なる材料、特に送り出される液体中で使用するのに適切な材料で構成されている。磁石58も、ハウジング56内で封止され、液体から隔離されている。
【0014】
図2ないし4に示すように、ポンプ部材54は一対の噛み合わされたギアを有する容積移送式ポンプであって、ギア・ローター・タイプ・ポンプなどと呼ばれることがある。図示例において、ポンプ部材54は、内側に延在した歯66を有する環状リングギアである外側ギア・ローター64と、外側リングギアの歯66と噛み合う外側に延在した歯70を有する内側ギア・ローター68とを備えている。外側と内側ギア・ローター64、68は、第一と第二ポンプ本体72、74の間に設けられている。
【0015】
第一ポンプ本体72は、ハウジング56と対向する軸又はガイドピン78の端部を収容するめくら穴76を備えている。図示例において、第一ポンプ本体72は、ポンプカバー24と第二ポンプ本体74の間に閉じ込められている。第一ポンプ本体72は、外側ギア・ローター64が配置される空洞80も備えている(もちろん、空洞を第二ポンプ本体に形成することも、又は第一と第二ポンプ本体の両方に部分的に形成することも可能である)。空洞80は、ガイドピン78の軸82からオフセットした位置にある軸を有し、これによって外側ギア・ローター64の回転軸は、内側ギア・ローター68の回転軸からオフセットされている。吸込口84は、第一ポンプ本体72を通って軸方向に延在し、吸込み圧力下の流体が外側と内側ギア・ローター64、68間の拡張された空間に入るのを許容する。吸込ポート84は、ポンプカバー24の吸込路28と一直線になっており、好ましくは、送り出される液体から汚染物質を取り除くためのフィルター又はスクリーン85が、経路の片側又は両側に設けられている。同様に、排出ポート86がポンプカバー24の排出口30と一直線になっており、そこを通って流体がポンプ・アセンブリ12から排出されるのを許容する。
【0016】
第二ポンプ本体74は、第一ポンプ本体72とシェル20のフランジ又は肩部88との間に収容されている。第二ポンプ本体74は、外側と内側ギア・ローター64、68を覆うように設けられており、外側と内側ギア・ローター64、68に隣接した全体的に平面の表面を有して、ポンプ空間を封止し、ポンプ空間内の流体が排出ポート86に移動するまで保持している。排出ポート86では、圧力下で流体はポンプ・アセンブリ12から排出される。第二ポンプ本体74は、被駆動部材52のハウジング56の一部が通る開口90を有しており、被駆動部材52と内側ギア・ローター68が互いに結合するのを許容している。
【0017】
ポンプハウジング50は、被駆動部材52、第一と第二ポンプ本体72、74、そしてポンプカバー24と互いに結合している。ポンプハウジング50は、全体的に閉じた端部を有するカップ状で、隔壁16の全部又は一部と、側壁94を構成している。側壁94はポンプカバー24の周りを囲むか、又はポンプカバー24に固定されており、第二ポンプ本体74の肩部に圧着されて、第一と第二ポンプ本体72、74とポンプカバー24とをしっかりと保持している。間隙がポンプハウジング50と被駆動部材52の間に設けられて、被駆動部材52がポンプハウジング50に対して自由に回転することを許容している。ポンプハウジング50は、押圧ディスク98を収容する空洞又はボス96を備えている。押圧ディスク98は、被駆動部材52のハウジング56に支持された押圧ピン100と係合して、被駆動部材52の回転のための軸受け面を形成し、被駆動部材52を隔壁16に押し付けようとする磁石42、58の力に抗して、ポンプハウジング50から被駆動部材52を隔離する。ポンプハウジング50によって共に結合された部品と一緒に、ポンプ・アセンブリ12は個別に組立てられたユニットであり、シェル20内で電気モーター14に組み付けるのを容易にしている。
【0018】
内側ギア・ローター68は、内側ギア・ローター68内に形成された溝又は開口102(図4)に収容された指部60を介して被駆動部材52と回転自在に結合しており、ガイドピン78の軸82と一致した被駆動部材52の軸周りに回転する。内側ギア・ローター68は、金属又はプラスチック材料で構成されている。送り出される液体の種類に応じて、熱硬化性樹脂(例えばフェノール系樹脂)や熱可塑性樹脂(例えばPEEKやPPS)など、種々のプラスチックを使用することができる。材料には、約15重量%の潤滑剤、例えばテフロン(登録商標)やグラファイトと、カーボンのような約30重量%の補強材を含み、20,000MPa以上の曲げ弾性率を有する。好ましい実施例において、内側ギア・ローター68を形成するためにフェノール樹脂が用いられ、15重量%の潤滑剤と30重量%のカーボンを含んでいる。プラスチック成形する場合に、内側ギア・ローター68は最終形状になるようにモールド成形されるか、又はモールド成形後に機械加工されて、最終寸法と最終形状が得られる。耐腐食性が重要な場合には、プラスチック又はステンレス鋼のような耐腐食性金属が用いられる。ステンレス鋼製の内側ギア・ローター68は、金属製のガイドピン78上で磨耗する。これが起こるのを防止するために、ブッシングがガイドピン78上に用いられる。プラスチック製内側ギア・ローター68と金属製ガイドピン78の間に、ブッシングを用いても良いが、その必要は無い。ガイドピン78は、硬度がロックウェルCスケールで60以上の、オーステナイト系ステンレス鋼又はタングステン・カーバイドのような他の材料から構成される。
【0019】
外側ギア・ローター64は、内側ギア・ローター68によって回転自在に駆動されて、上述のように内側ギア・ローター68の回転軸からオフセットされた軸周りに回転する。外側ギア・ローター64は、金属又はプラスチック材料で構成されている。内側ギア・ローター68に関して説明したように、熱硬化性樹脂(例えばフェノール系樹脂)や熱可塑性樹脂(例えばPEEKやPPS)など、種々のプラスチックを使用することができる。外側ギア・ローター64は最終形状になるようにモールド成形されるか、又はモールド成形後に機械加工されて、最終寸法と最終形状が得られる。耐腐食性が重要な場合には、プラスチック又はステンレス鋼のような耐腐食性金属が用いられる。一つの好ましい実施例において、外側ギア・ローター64は焼結されたステンレス鋼で構成されている。金属は、好ましくは0.03から0.1%のカーボンを有し、少なくとも6.8g/ccの密度で、硬度がロックウェルBスケールで60以上、好ましくは70以上のオーステナイト系ステンレス鋼である。このような金属の一例は、ステンレス鋼316N1であり、相対的に低い伸張特性を有し、ほとんど歪みのない製造ばらつきの小さなギア・ローターを形成する能力を向上させる。もし内側ギア・ローター68を金属で形成する場合、同じ材料を内側ギア・ローター68に用いてもよい。少なくとも好ましい実施例において、外側と内側ギア・ローター64、68は、1)プラスチック製内側ギア・ローター68とプラスチック製外側ギア・ローター64、2)プラスチック製内側ギア・ローター68と金属製外側ギア・ローター64、3)金属製内側ギア・ローター68とプラスチック製外側ギア・ローター64のいずれであっても良い。外側と内側ギア・ローター64、68のこれらの組み合わせは、耐久性を有し、耐腐食性を有する。
【0020】
より腐食性の高い流体に対して用いられる特定のステンレス鋼のような耐腐食性金属は、一定の耐久性基準に合致するのに十分なほど硬くない(ガイドピン78などによって磨耗する)。従って、幾つかの分野において、外側と内側ギア・ローター64、68の両方を耐腐食性金属で構成するだけでは十分でない。少なくとも幾つかの実施例において、少なくとも外側ギア・ローター64が金属で構成されている場合に、第一ポンプ本体72はプラスチック材料で構成されているか、又はその空洞80がプラスチック材料で裏打ちされている。外側ギア・ローター64がプラスチック材料で構成されている場合は、第一ポンプ本体72は適切な金属で構成されているか、その空洞80が適切な金属で裏打ちされている。
【0021】
ポンプ・アセンブリ12を形成するためのプロセスの一つの実施例において、ガイドピン78は第一ポンプ本体72内にインサート成形される。次に、ガイドピン78を参照として又は位置決めピンとして用いて、第一ポンプ本体72内に空洞80を機械加工で形成する。このようにして、ガイドピン78の位置の変化は、(内側ギア・ローター68の回転軸である)ガイドピン78の軸82と(外側ギア・ローター64の回転軸である)空洞80の軸との間に所望のオフセットを確保するために役に立つ。そして、内側ギア・ローター68と外側ギア・ローター64の間の所望の関係は、ポンプの実運転を通じて達成することができる。もちろん、一つの空洞を78を収容するために形成して、第二の空洞を外側ギア・ローター64を収容するために形成するというマルチ空洞モールドを用いることができる。しかし、少なくとも特定の実施例において、他の空洞又はガイドピン78を参照点として用いて空洞を機械加工で形成する場合と比較して、マルチ空洞モールドにおける複数の空洞の複数の軸の位置のばらつきは大きい。
【0022】
ギア・ローターを形成するプロセスの一つの例において、内側ギア・ローター68はプラスチック材料からモールド成形され、外側ギア・ローター64は焼結したステンレス鋼で構成される。好みに応じて、外側ギア・ローター64とぴったりと一致するように、内側ギア・ローター68は最終形状になるためにモールド形成することもできるし、所望の寸法と形状にするためにモールド後に機械加工することもできる。一つの実施例において、内側ギア・ローターの歯70の先端と外側ギア・ローターの歯66の先端の間の間隙は、約10から30ミクロンの間で維持される。内側ギア・ローター68と外側ギア・ローター64の外形は、0.030mm以下の公差で維持される。
【0023】
動作時において、電気モーター14は電力によって起動して出力軸34と出力軸34に結合した駆動部材38を回転する。磁力によって、駆動部材38の回転が、ポンプハウジング50内で被駆動部材52をガイドピン78周りに回転させる。機械的結合によって、被駆動部材52の回転が内側ギア・ローター68を回転させ、噛み合った歯66、70を介して外側ギア・ローター64を回転させる。従って、電気モーター14の動作が、間に設けられた隔壁16を介してポンプ・アセンブリ12を動作させる。磁気結合が、たとえポンプが凍結して動かない場合、例えばその中のSCR反応剤が凍結した場合でも、電気モーター14の回転を許容する。流体ポンプ10は、例えば限定するものでなく、約2から8bar以上で約20から60リットル/時というような適切な出力特性を有している。流体ポンプ10は、適切な方法でタンクに支持されているか、又はタンクと分離し、切り離されている。電気モーター14とポンプ・アセンブリ12の間に設けられた隔壁16を通して動作する流体ポンプ10において、電気モーター14は送り出される液体と切り離して設けることができる。
【0024】
そこを通して流体ポンプ10が動作する隔壁16は、非磁性体材料又は著しく磁気的に感度を有さないが、但し磁場が浸透することを許容する材料で構成される。例えば、流体ポンプ10がそこを通して動作する壁は、適切なポリマー材料、例えばポリアミドやナイロン6/6又は十分に非磁性的か、十分に磁気的に浸透性のあるステンレス鋼のような金属、例えばオーステナイト系ステンレス鋼又はニッケル含有ステンレス鋼で構成されている。少なくとも幾つかの実施例において、隔壁16(先に説明したように、タンク壁の一部であってもよい)は、総厚が約5mm以下で、幾つかの実施例においては、隔壁16の総厚は約2mmから4mmである。
【0025】
以上、流体ポンプの好ましい実施例を記載してきたが、ここで議論した発明は、ここに示した特定の実施例に限定されるものではない。種々の変更や改良が、当業者には明らかであり、この様な変更や改良は、以下の請求項で定義される本発明の精神と範囲の内であることが意図されている。特に限定するものではない例によって、モーターは磁気カップリングを用いることなく直接機械的に内側ギア・ローターと結合することができる。この場合、すくなくとも特定の実施例において、隔壁を通過する浸透はシールされ、又は隔壁が不要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターと、
第一ポンプ本体と、
第一ポンプ本体に隣接した第二ポンプ本体と、
前記第一ポンプ本体と前記第二ポンプ本体の間に収容されて、前記モーターによって軸周りに回転駆動され、複数の外側に延在する歯を有する内側ギア・ローターと、
前記第一ポンプ本体と前記第二ポンプ本体との間に収容され、複数の内側へ延在した歯を有しており、それらは前記内側ギア・ローターの前記歯と係合して、前記内側ギア・ローターが回転する時に、第二軸周りに回転駆動される外側ギア・ローターと、
前記第一ポンプ本体と前記第二ポンプ本体の少なくとも一つに支持されて、前記内側ギア・ローターが回転する軸を形成しているガイドピンと、
を備えた流体ポンプであって、
前記内側ギア・ローターと前記外側ギア・ローターの少なくとも一つがプラスチック材料で構成され、
前記内側ギア・ローターがプラスチックで構成されている場合、前記ガイドピンは金属で構成され、前記内側ギア・ローターが金属で構成されている場合、前記ガイドピンは、前記ガイドピンと前記内側ギア・ローターとの間に設けられたブッシングを有している
ことを特徴とする流体ポンプ。
【請求項2】
前記モーターを前記内側ギア・ローターと前記外側ギア・ローターから分離する隔壁と、
前記モーターを前記内側ギア・ローターと結合させて前記内側ギア・ローターを回転させる電磁結合と、
を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項3】
前記内側ギア・ローターがプラスチック材料で構成され、前記外側ギア・ローターが金属で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項4】
前記内側ギア・ローターがフェノール樹脂で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の流体ポンプ。
【請求項5】
前記外側ギア・ローターが焼結ステンレス鋼で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の流体ポンプ。
【請求項6】
前記外側ギア・ローターが、0.03%から0.1%のカーボンを含有し、密度が少なくとも6.8g/ccであり、硬度がロックウェルBスケールで60以上の、オーステナイト系ステンレス鋼で構成されていることを特徴とする請求項5に記載の流体ポンプ。
【請求項7】
前記内側ギア・ローターと前記外側ギア・ローターの両方が、プラスチック材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項8】
空洞が前記第一ポンプ本体と第二ポンプ本体の少なくとも一つに形成され、
前記外側ギア・ローターが前記空洞に収容され、前記空洞は前記外側ギア・ローターに隣接するプラスチック材料を備えている
ことを特徴とする請求項3に記載の流体ポンプ。
【請求項9】
前記内側ギア・ローターの歯の先端と前記外側ギア・ローターの歯の先端の間隔が、10ないし30ミクロンであることを特徴とする請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項10】
プラスチック材料から第一ポンプ本体を形成する工程と、
前記第一ポンプ本体にガイドピンをモールドする工程と、
空洞の位置の参照先としてガイドピンを用いて第一ポンプ本体に空洞を機械加工する工程とを備え、
少なくとも部分的に前記空洞内に設けられた外側ギア・ローターが、前記ガイドピンに対して正確に位置することを特徴とする、流体ポンプ部品を形成するための方法。
【請求項11】
歯が前記外側ギア・ローターの歯と噛み合うようにプラスチック材料から内側ギア・ローターをモールド形成する工程と、
前記内側ギア・ローターの歯の先端と前記外側ギア・ローターの歯の先端の間隔が、10ないし30ミクロンになるように、前記内側ギア・ローターを機械加工する工程と、
を更に備えていることを特徴とする請求項10に記載の流体ポンプの部品を形成するための方法。
【請求項12】
前記内側ギア・ローターがフェノール樹脂で構成されていることを特徴とする請求項11に記載の流体ポンプの部品を形成するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−184764(P2012−184764A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−44951(P2012−44951)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【出願人】(502429154)ティーアイ グループ オートモーティヴ システムズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (39)
【Fターム(参考)】