説明

容量性表示装置

【課題】発光層への過電圧印加が抑制された容量性表示装置を提供する
【解決手段】無機EL表示装置1は、実質的に透明導電性酸化物からなる複数の走査側電極ラインXと、複数のデータ側電極ラインYと、走査側電極ラインXとデータ側電極ラインYとの間に設けられた無機EL発光層13と、走査側電極ラインXにフレーム毎に交互に極性の異なるパルス電圧を印加する走査側駆動回路20と、データ側駆動回路30とを備えている。データ側駆動回路30は、走査側駆動回路20が印加するパルス電圧と同一極性のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、1又は複数のデータ側電極ラインY毎に異なるタイミングでパルス電圧の印加を開始するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容量性表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、無機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、「無機EL表示装置」とすることがある。)やプラズマ表示装置等に代表される容量性表示装置の研究が盛んに行われている。
【0003】
一般的に、容量性表示装置は、並行に延びる複数の走査側電極ラインと、走査側電極ラインと交差する方向に並行に延びる複数のデータ側電極ラインと、走査側電極ラインとデータ側電極ラインとの間に設けられた発光層とを備えている。通常、容量性表示装置は、データ側電極ラインに発光/非発光を決定する表示データに対応する変調電圧を印加する一方、走査側電極ラインに書き込み電圧を順次印加していくことにより駆動される。
【0004】
容量性表示装置の階調表示方式としては、例えば、特許文献1等に記載されたパルス幅変調方式などが挙げられる。このパルス幅変調方式とは、走査側電極ラインにパルス波形又はランプ波形の書き込み電圧を印加し、データ側電極ラインに、階調表示データに応じたパルス幅の変調電圧を、書き込み電圧の印加が開始された後に印加することによって、各発光フレームにおいて、発光層に発光閾電圧以上の電圧が印加されている時間を相互に異ならせる方式をいう。
【0005】
ところで、近年、透明な表示装置に対するニーズが高まってきており、容量性表示装置としても、走査側電極ラインとデータ側電極ラインとの両方を透明導電性酸化物(例えば、ITO等)で形成した透明なものが提案されている。
【特許文献1】特開平3−186892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、透明導電性酸化物は、従来電極ラインの形成に使用されていた金属(アルミニウムや銀等)と比較して非常に高い電気抵抗を有する。このため、走査側電極ラインを透明導電性酸化物で形成した容量性表示装置において、上述したパルス幅階調表示方式のように、書き込み電圧の印加が開始された後に、その書き込み電圧と同一極性の変調電圧を印加する駆動方式を採用した場合、データ側電極ラインの電位が変動したときに(充電又は放電が発生したときに)、容量結合が発生して、走査側電極ラインの電位が意図せず変動する虞がある。走査側電極ラインの電位が変動した場合、発光層に過電圧が印加され、素子破壊がおこる虞がある。
【0007】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発光層への過電圧印加が抑制された容量性表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る第1の容量性表示装置は、
実質的に透明導電性酸化物からなり、並行に延びる複数の走査側電極ラインと、
複数の走査側電極ラインと交差する方向に並行に延びる複数のデータ側電極ラインと、
複数の走査側電極ラインと複数のデータ側電極ラインとの間に設けられ、発光閾電圧以上の電圧が印加されることにより発光する容量性発光層と、
走査側電極ラインにフレーム毎に交互に極性の異なるパルス電圧を印加する走査側駆動回路と、
容量性発光層を発光させる発光フレームにおいて、データ側電極ラインに電圧を印加せず、又は走査側駆動回路がパルス電圧の印加を開始した後に走査側駆動回路が印加する電圧と逆極性のパルス電圧を印加して容量性発光層に印加される電圧をその発光閾電圧以上とする一方、容量性発光層を発光させない非発光フレームにおいて、データ側電極ラインに電圧を印加せずに、又は走査側駆動回路がパルス電圧の印加を開始した後に走査側駆動回路が印加する電圧と同一極性のパルス電圧を印加して容量性発光層に印加される電圧をその発光閾電圧未満とするデータ側駆動回路と、
を備え、
データ側駆動回路は、走査側駆動回路が印加するパルス電圧と同一極性のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、1又は複数のデータ側電極ライン毎に異なるタイミングでパルス電圧の印加を開始するものであることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る第1の容量性表示装置において、データ側駆動回路は、走査側駆動回路が印加するパルス電圧と同一極性のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、その充電時間が走査側駆動回路の充電時間よりも長いものであることが好ましい。
本発明に係る第2の容量性表示装置は、
実質的に透明導電性酸化物からなり、並行に延びる複数の走査側電極ラインと、
複数の走査側電極ラインと交差する方向に並行に延びる複数のデータ側電極ラインと、
複数の走査側電極ラインと複数のデータ側電極ラインとの間に設けられ、発光閾電圧以上の電圧が印加されることにより発光する容量性発光層と、
走査側電極ラインにフレーム毎に交互に極性の異なるパルス電圧を印加する走査側駆動回路と、
容量性発光層を発光させる発光フレームにおいて、データ側電極ラインに電圧を印加せずに、又は走査側駆動回路がパルス電圧の印加を開始した後に走査側駆動回路が印加する電圧と逆極性のパルス電圧を印加して容量性発光層に印加される電圧をその発光閾電圧以上とする一方、容量性発光層を発光させない非発光フレームにおいて、データ側電極ラインに電圧を印加せずに、又は走査側駆動回路がパルス電圧の印加を開始した後に走査側駆動回路が印加する電圧と同一極性のパルス電圧を印加して容量性発光層に印加される電圧をその発光閾電圧未満とするデータ側駆動回路と、
を備え、
データ側駆動回路は、走査側駆動回路が印加するパルス電圧と同一極性のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、その充電時間が走査側駆動回路の充電時間よりも長いものであることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る第2の容量性表示装置において、データ側駆動回路は、走査側駆動回路が印加するパルス電圧と同一極性のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、1又は複数のデータ側電極ライン毎に異なるタイミングでパルス電圧の印加を開始するものであることが好ましい。
【0011】
本発明に係る第1又は第2の容量性表示装置において、各走査側電極ラインは、実質的に透明導電性酸化物(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO)など)からなるものであることが好ましい。
【0012】
本発明に係る第1又は第2の容量性表示装置において、走査側駆動回路は、一方の極性の発光閾電圧以上の一方の極性のパルス電圧と、他方の極性の発光閾電圧未満の他方の極性のパルス電圧とを交互に印加するものであり、データ側駆動回路は、走査側駆動回路が一方の極性のパルス電圧を印加する発光フレームにおいて、データ側電極ラインに電圧を印加せず、他方の電極のパルス電圧を印加する発光フレームにおいて、データ側電極ラインに一方の極性のパルス電圧を印加する一方、走査側駆動回路が一方の極性のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、データ側電極ラインに一方の電極のパルス電圧を印加し、他方の電極のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、データ側電極ラインに電圧を印加しないものであってもよい。
【0013】
本発明に係る第1又は第2の容量性表示装置において、容量性発光層は無機エレクトロルミネッセンス発光層であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば発光層への過電圧印加を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、ここでは、無機EL表示装置を例に挙げて本発明の実施形態について説明するが、本発明に係る容量性表示装置は、無機EL表示装置に限定されるものではない。本発明は、無機EL表示装置をはじめ、例えば、プラズマ表示装置、液晶表示装置等の容量性表示装置一般に好適に適用されるものである。
【0016】
(実施形態1)
図1は本実施形態1に係る無機EL表示装置1の構成を表す図である。
【0017】
図2は無機EL表示装置1におけるデータ側駆動回路30の構成を表す図である。
【0018】
図3は無機エレクトロルミネッセンス表示パネル10の構成を表す一部切欠き斜視図である。
【0019】
無機EL表示装置1は、無機エレクトロルミネッセンス表示パネル(以下、「無機EL表示パネル」とすることがある。)10と、走査側駆動回路20と、データ側駆動回路30と、走査側電源回路41と、データ側電源回路42とを備えている。無機EL表示パネル10は、基板11と、複数のデータ側電極ラインY(詳細には、Y1〜Yjのj本のデータ側電極ライン)と、第1の誘電層12と、容量性発光層たる無機エレクトロルミネッセンス発光層(以下、「無機EL発光層」とすることがある。)13と、第2の誘電層14と、複数の走査側電極ラインX(詳細には、X1〜Xiのi本の走査側電極ライン)とを備えている。
【0020】
複数のデータ側電極ラインYは、基板11の上に、並行に延びるようにストライプ状に形成されている。第1の誘電層12は、複数のデータ側電極ラインYの上に形成されている。第1の誘電層12の上には、無機EL発光層13が形成されている。無機EL発光層13は、所定の発光閾電圧以上の電圧が印加された場合に発光する(エレクトロルミネッセンス光を生ずる)層である。第2の誘電層14は無機EL発光層13の上に形成されている。複数の走査側電極ラインXは、第2の誘電層14の上に、データ側電極ラインYの延びる方向に交差する方向に(典型的には、データ側電極ラインYと直交する方向に)並行に延びるようにストライプ状に形成されている。
【0021】
複数の走査側電極ラインXは、実質的に透明導電性酸化物からなるものである。上記複数のデータ側電極ラインYも実質的に透明導電性酸化物からなるものであってもよい。走査側電極ラインX及びデータ側電極ラインYの両方を透明導電性酸化物により形成することによって、透明な無機EL表示装置1を実現することが可能となる。尚、透明導電性酸化物としては、具体的に、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO)等が挙げられる。
【0022】
各データ側電極ラインY1〜Yjはデータ側駆動回路30に電気的に接続されている。データ側駆動回路30はデータ側電源回路42に電気的に接続されている。データ側電源回路42は+V3ボルトのパルス状の変調電圧を選択的にデータ側駆動回路30に供給するものである。データ側駆動回路30は、データ側電源回路42から供給されるパルス状の変調電圧を表示データに応じて複数のデータ側電極ラインY1〜Yjのそれぞれに印加するものである。
【0023】
尚、図2に示すように、データ側駆動回路30は、プッシュプルドライバICからなる駆動回路であって、複数のプルアップスイッチング素子33、複数のプルダウンスイッチング素子34、これらスイッチング素子33、34をオン/オフ制御する論理回路(シフトレジスタラッチ回路31、カウンタ・コンパレータ回路32等)が含まれる。
【0024】
一方、各走査側電極ラインXは走査側駆動回路20に電気的に接続されている。走査側駆動回路20は走査側電源回路41に電気的に接続されている。走査側電源回路41は+V1ボルト又は−V2ボルトのパルス状の書き込み電圧を選択的に走査側駆動回路20に供給するものである。走査側駆動回路20は、複数の走査側電極ラインX1〜Xiのそれぞれにフレーム毎に交互に極性が異なるように、走査側電源回路41から供給されたパルス状の書き込み電圧を順次印加していくものである。すなわち、各フレームにおいては、同一極性の書き込み電圧が複数の走査側電極ラインX1〜Xiに順次印加される。ひとつの走査側電極ラインXに着目すると、フレームが変わる毎に交互に極性の異なるパルス状の書き込み電圧が印加されることとなる。具体的には、走査側駆動回路20は、例えば、まず+V1の書き込み電圧を複数の走査側電極ラインX1〜Xiに順次印加していく。そして、次のフレームでは、−V2の書き込み電圧を複数の走査側電極ラインX1〜Xiに順次印加していく。この複数の走査側電極ラインX1〜Xiに+V1の書き込み電圧を順次印加していく工程と、複数の走査側電極ラインX1〜Xiに−V2の書き込み電圧を順次印加していく工程とが交互に繰り返し行われる。
【0025】
尚、本実施形態において、|+V1|は|−V2|よりも大きく、且つ、下記数式を満たすものとする。
【0026】
|+V1|>Vth
|−V2|>Vth
|V1−V3|<Vth
|V2+V3|>Vth
ここで、Vthとは発光閾値電圧の絶対値である。
【0027】
次に、本実施形態に係る無機EL表示装置1における駆動方式の概要について、図4を用いて説明する。尚、ここで説明する駆動方式はあくまで一例であり、本発明に係る容量性表示装置は以下に説明する駆動方式のものに限定されない。
【0028】
図4は無機EL表示装置1における駆動方式の概要を説明するための図である。
【0029】
まず、図4を参照しながら無機EL発光層13が発光する発光フレームについて説明する。走査側駆動回路20が走査側電極ラインXに+V1の書き込み電圧を印加する発光フレーム(図4における発光フレーム・パターン1)においては、データ側駆動回路30はデータ側電極ラインYに電圧を印加しない。このため、無機EL発光層13に加わる電圧は+V1となる。ここで、上述のように、|+V1|>Vthであるため、無機EL発光層13からエレクトロルミネッセンス光が出射される。
【0030】
走査側駆動回路20が走査側電極ラインXに−V2の書き込み電圧を印加する発光フレーム(図4における発光フレーム・パターン2)においては、データ側駆動回路30は、データ側電極ラインYに、走査側駆動回路20が走査側電極ラインXに印加する電圧(−V2)とは逆極性の+V3の変調電圧を印加する。このため、無機EL発光層13に加わる電圧は−V2−V3となる。ここで、上述のように、|V2+V3|>Vthであるため、無機EL発光層13からエレクトロルミネッセンス光が出射される。
【0031】
次に非発光フレームについて説明する。走査側駆動回路20が走査側電極ラインXに+V1の書き込み電圧を印加する非発光フレーム(図4における非発光フレーム・パターン1)においては、データ側駆動回路30はデータ側電極ラインYに、走査側駆動回路20が走査側電極ラインXに印加する電圧(+V1)と同一極性の+V3の変調電圧を印加する。このため、無機EL発光層13に加わる電圧はV1−V3となる。ここで、上述のように、|V1−V3|<Vthであるため、無機EL発光層13は発光しない。
【0032】
走査側駆動回路20が走査側電極ラインXに−V2の書き込み電圧を印加する非発光フレーム(図4における非発光フレーム・パターン2)においては、データ側駆動回路30はデータ側電極ラインYに電圧を印加しない。このため、無機EL発光層13に加わる電圧は−V2となる。ここで、上述のように、|−V2|>Vthであるため、無機EL発光層13は発光しない。
【0033】
以上、説明した4つのパターンを組み合わせることによって、無機EL表示装置1は画像等を表示する。
【0034】
詳細には、本実施形態1において、走査側駆動回路20が走査側電極ラインXに書き込み電圧+V1を印加すると共に、データ側駆動回路30がデータ側電極ラインYに、走査側電極ラインXに印加される書き込み電圧(+V1)と同一極性の変調電圧(+V3)を印加する非発光フレーム(図4に非発光フレーム・パターン1で示すフレーム)において、データ側駆動回路30は、走査側駆動回路20が走査側電極ラインXにパルス状の書き込み電圧+V1の印加を開始した後に、変調電圧の印加を開始する。且つ、データ側駆動回路30は、1又は複数のデータ側電極ライン毎に異なるタイミングで変調の印加を開始する。具体的に本実施形態1においては、データ側駆動回路30は、図1において右側半分に位置するデータ側電極ラインY(データ側電極ラインY1〜Y(j/2))と、図1において左半分に位置するデータ側電極ラインY(データ側電極ラインY(j/2-1)〜Yj)とに相互に異なるタイミングで変調電圧の印加を開始する。尚、本発明はこの駆動方式に限定されるものではなく、例えば、データ側駆動回路30は、データ側電極ラインY1本毎に異なるタイミングで変調電圧の印加を開始するものであってもよい。また、図1において右側1/3に位置するデータ側電極ラインYと、中央1/3に位置するデータ側電極ラインYと、左側1/3に位置するデータ側電極ラインYとに相互に異なるタイミングで変調電圧の印加を開始するものであってもよい。
【0035】
以下、この非発光フレーム・パターン1におけるデータ側駆動回路30の動作について、図5を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
図5は非発光フレーム・パターン1におけるデータ側駆動回路30の動作を説明するためのグラフである。尚、図5〜7において「A」で示す線は走査側駆動回路20が走査側電極ラインXに印加する書き込み電圧を表す。「B」で示す線はデータ側駆動回路30がデータ側電極ラインYに印加する変調電圧を表す。詳細には、「B1」で示す線はデータ側駆動回路30がデータ側電極ラインY1〜Y(j/2)に印加する変調電圧を表す。「B1」で示す線はデータ側駆動回路30がデータ側電極ラインY(j/2-1)〜Yjに印加する変調電圧を表す。「C」で示す線は、走査側電極ラインXiとデータ側電極ラインY2〜Yjとにより構成される画素が非発光フレーム・パターン1で(つまり、走査側電極ラインXiに書き込み電圧+V1が印加され、データ側電極ラインY2〜Yjには変調電圧+V3が印加され)、走査側電極ラインXiとデータ側電極ラインY1とにより構成される画素のみが発光フレーム・パターン1である(つまり、走査側電極ラインXiに書き込み電圧+V1が印加され、データ側電極ラインY2〜Yjには電圧が印加されない)場合の走査側電極ラインXiの電位変動を表す。
【0037】
図5に示すように、ある非発光フレーム・パターン1において、時間t1から走査側駆動回路20が走査側電極ラインXに+V1の書き込み電圧の印加を開始する。時間t1に遅れて、時間t2から、データ側駆動回路30は、データ側電極ラインY1〜Y(j/2)に+V3の変調電圧の印加を開始する。さらに時間t2に遅れて、時間t3から、データ側駆動回路30は、データ側電極ラインY(j/2-1)〜Yjに+V3の変調電圧の印加を開始する。
【0038】
本実施形態1に係る無機EL表示装置1は、このような駆動方式であるため、素子破壊がおこりにくく、また高品位な画像表示が可能となる。この効果をより説明するために、まず、図6を参照しながら、非発光フレーム・パターン1において、走査側駆動回路20が走査側電極ラインXに電圧+V1を印加するタイミングに遅れて、すべてのデータ側電極ラインYに同時に電圧+V3が印加される従来の無機EL表示装置の場合について説明する。
【0039】
図6は、従来の無機EL表示装置での、非発光フレーム・パターン1における走査側電極ラインXの電位変化を表すグラフである。
【0040】
図6に示すように、従来の無機EL表示装置では、例えば、走査側電極ラインXiとデータ側電極ラインY2〜Yjにより構成される画素が非発光フレーム・パターン1で(つまり、走査側電極ラインXiに書き込み電圧+V1が印加され、データ側電極ラインY2〜Yjには変調電圧+V3が印加され)、走査側電極ラインXiとデータ側電極ラインY1とにより構成される画素のみが発光フレーム・パターン1である(つまり、走査側電極ラインXiに書き込み電圧+V1が印加され、データ側電極ラインY1にのみ電圧が印加されない)場合に、走査側電極ラインXiに大きな(ΔVの)過電圧が印加されてしまう。過電圧ΔVの大きさが大きく、(+V1+ΔV−V3)がVthよりも大きくなってしまうような場合は、非発光とさせようとする無機EL発光層13にも発光閾電圧以上の電圧が印加されることとなり、発光してしまう結果となる。また、ΔVが大きいと素子破壊がおこる虞もある。
【0041】
それに対して、本実施形態1に係る無機EL表示装置1では、上述のように、データ側電極ラインY1〜Y(j/2)に変調電圧の印加が開始されるタイミング(t2)と、データ側電極ラインY(j/2-1)〜Yjに変調電圧の印加が開始されるタイミング(t3)とが相互に異なる。このため、同時に変調電圧の印加が開始されるデータ側電極ラインYの本数が比較的少なくなる。従って、図5の線Cで示すように、走査側電極ラインXiにかかる過電圧の大きさ(ΔV)が比較的小さくなる。この結果、素子破壊や意図せぬ画素の発光が抑制される。
【0042】
走査側電極ラインXiにかかる過電圧ΔVを小さくする観点からは、データ側電極ラインY毎に変調電圧の印加を開始するタイミングを相互に異ならしめることが最も好ましいといえるが、同時に変調電圧の印加を開始するデータ側電極ラインYの本数が少なくなると共に制御回路が複雑化する傾向にある。
【0043】
また、データ側駆動回路30の充電時間が長いほど走査側電極ラインXiにかかる過電圧の大きさ(ΔV)が小さくなる傾向にある。このため、データ側駆動回路30の充電時間(Δt2及びΔt3)が長い方が好ましい。具体的には、データ側駆動回路30の充電時間(Δt2及びΔt3)は走査側駆動回路20の充電時間(Δt1)よりも長いことが好ましい。尚、充電時間Δt2とΔt3とは、同じであってもよく、また相互に異なっていてもよい。
【0044】
(実施形態2)
本実施形態2に係る無機EL表示装置は、データ側駆動回路30の動作を除いては上記実施形態1に係る無機EL表示装置1と同様の構成を有する。ここでは、本実施形態2に係る無機EL表示装置におけるデータ側駆動回路30の動作について詳細に説明する。尚、本実施形態2の説明において、図1〜図4は実施形態1と共通に参照する。また、実質的に同じ機能を有する構成要素を実施形態1と共通の参照符号で説明し、説明を省略する。
【0045】
図7は、本実施形態2における、非発光フレーム・パターン1におけるデータ側駆動回路30の動作を説明するためのグラフである。
【0046】
本実施形態2では、データ側駆動回路30は、すべてのデータ側電極ラインYに同時に電圧+V3を印加する。但し、図7に示すように、データ側駆動回路30の充電時間(Δt2)が比較的長く設定されている。具体的には、データ側駆動回路30の充電時間(Δt2)は走査側駆動回路20の充電時間(Δt1)よりも長く設定されている。このため、本実施形態2では、上述のように、データ側電極ラインYの充電時間が長いほど走査側電極ラインXiにかかる過電圧の大きさ(ΔV)が小さい。このため、素子破壊や意図せぬ画素の発光が抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上説明したように、本発明に係る容量性表示装置は、発光層への過電圧の印加が抑制されたものであるため、携帯電話、PDA、テレビ、電子ブック、モニター、電子ポスター、時計、電子棚札、非常案内等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施形態1に係る無機EL表示装置1の構成を表す図である。
【図2】無機EL表示装置1におけるデータ側駆動回路30の構成を表す図である。
【図3】無機EL表示パネル10の構成を表す一部切欠き斜視図である。
【図4】無機EL表示装置1における駆動方式の概要を説明するための図である。
【図5】非発光フレーム・パターン1におけるデータ側駆動回路30の動作を説明するためのグラフである。
【図6】従来の無機EL表示装置1での、非発光フレーム・パターン1における走査側電極ラインXの電位変化を表すグラフである。
【図7】実施形態2における、非発光フレーム・パターン1におけるデータ側駆動回路30の動作を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
【0049】
1 無機EL表示装置
10 無機EL表示パネル
11 基板
12 第1の誘電層
13 無機EL発光層
14 第2の誘電層
20 走査側駆動回路
30 データ側駆動回路
31 シフトレジスタラッチ回路
32 カウンタ・コンパレータ回路
33 プルアップスイッチング素子
34 プルダウンスイッチング素子
41 走査側電源回路
42 データ側電源回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に透明導電性酸化物からなり、並行に延びる複数の走査側電極ラインと、
上記複数の走査側電極ラインと交差する方向に並行に延びる複数のデータ側電極ラインと、
上記複数の走査側電極ラインと上記複数のデータ側電極ラインとの間に設けられ、発光閾電圧以上の電圧が印加されることにより発光する容量性発光層と、
上記走査側電極ラインにフレーム毎に交互に極性の異なるパルス電圧を印加する走査側駆動回路と、
上記容量性発光層を発光させる発光フレームにおいて、上記データ側電極ラインに電圧を印加せず、又は上記走査側駆動回路がパルス電圧の印加を開始した後に該走査側駆動回路が印加する電圧と逆極性のパルス電圧を印加して上記容量性発光層に印加される電圧をその発光閾電圧以上とする一方、該容量性発光層を発光させない非発光フレームにおいて、上記データ側電極ラインに電圧を印加せずに、又は上記走査側駆動回路がパルス電圧の印加を開始した後に該走査側駆動回路が印加する電圧と同一極性のパルス電圧を印加して上記容量性発光層に印加される電圧をその発光閾電圧未満とするデータ側駆動回路と、
を備え、
上記データ側駆動回路は、上記走査側駆動回路が印加するパルス電圧と同一極性のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、1又は複数のデータ側電極ライン毎に異なるタイミングでパルス電圧の印加を開始する容量性表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された容量性表示装置において、
上記データ側駆動回路は、上記走査側駆動回路が印加するパルス電圧と同一極性のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、その充電時間が上記走査側駆動回路の充電時間よりも長い容量性表示装置。
【請求項3】
実質的に透明導電性酸化物からなり、並行に延びる複数の走査側電極ラインと、
上記複数の走査側電極ラインと交差する方向に並行に延びる複数のデータ側電極ラインと、
上記複数の走査側電極ラインと上記複数のデータ側電極ラインとの間に設けられ、発光閾電圧以上の電圧が印加されることにより発光する容量性発光層と、
上記走査側電極ラインにフレーム毎に交互に極性の異なるパルス電圧を印加する走査側駆動回路と、
上記容量性発光層を発光させる発光フレームにおいて、上記データ側電極ラインに電圧を印加せずに、又は上記走査側駆動回路がパルス電圧の印加を開始した後に該走査側駆動回路が印加する電圧と逆極性のパルス電圧を印加して上記容量性発光層に印加される電圧をその発光閾電圧以上とする一方、該容量性発光層を発光させない非発光フレームにおいて、上記データ側電極ラインに電圧を印加せずに、又は上記走査側駆動回路がパルス電圧の印加を開始した後に該走査側駆動回路が印加する電圧と同一極性のパルス電圧を印加して上記容量性発光層に印加される電圧をその発光閾電圧未満とするデータ側駆動回路と、
を備え、
上記データ側駆動回路は、上記走査側駆動回路が印加するパルス電圧と同一極性のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、その充電時間が上記走査側駆動回路の充電時間よりも長い容量性表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載された容量性表示装置において、
上記データ側駆動回路は、上記走査側駆動回路が印加するパルス電圧と同一極性のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、1又は複数のデータ側電極ライン毎に異なるタイミングでパルス電圧の印加を開始する容量性表示装置。
【請求項5】
請求項1又は3に記載された容量性表示装置において、
上記各走査側電極ラインは、実質的に透明導電性酸化物からなる容量性表示装置。
【請求項6】
請求項1又は3に記載された容量性表示装置において、
上記走査側駆動回路は、一方の極性の発光閾電圧以上の一方の極性のパルス電圧と、他方の極性の発光閾電圧未満の他方の極性のパルス電圧とを交互に印加するものであり、
上記データ側駆動回路は、上記走査側駆動回路が上記一方の極性のパルス電圧を印加する発光フレームにおいて、上記データ側電極ラインに電圧を印加せず、上記他方の電極のパルス電圧を印加する発光フレームにおいて、上記データ側電極ラインに一方の極性のパルス電圧を印加する一方、上記走査側駆動回路が上記一方の極性のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、上記データ側電極ラインに上記一方の電極のパルス電圧を印加し、上記他方の電極のパルス電圧を印加する非発光フレームにおいて、上記データ側電極ラインに電圧を印加しないものである容量性表示装置。
【請求項7】
請求項1又は3に記載された容量性表示装置において、
上記容量性発光層は無機エレクトロルミネッセンス発光層である容量性表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−219339(P2007−219339A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41963(P2006−41963)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】