説明

密封構造

【課題】装着溝内におけるガスケットの倒れを抑制する密封構造を提供する。
【解決手段】インテークマニホールド200とシリンダーブロック300とはこれらの対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組み付けられ、これらによりガスケット100が圧縮されるように構成された密封構造であって、ガスケット100は、環状の補強環120と、補強環120に一体的に設けられ、かつその断面形状が環状溝210への装着方向の長さの方が幅方向の長さよりも長い縦長のゴム状弾性体製のガスケット本体110と、を備えており、環状溝210には、補強環120が突き当たることで、補強環120の傾きを制限する位置規制部が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットを備えた密封構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、これら2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットが知られている。例えば、自動車に備えられたインテークマニホールドとシリンダーブロックとの対向面間の隙間を封止するために環状のガスケットが用いられる。
【0003】
かかるガスケットは、2部材により圧縮されることで、その反発力によってシール性を発揮する。ここで、2部材のうちの少なくとも一方が樹脂材で構成されるような場合には、成形時のうねりやクリープ等の影響で、寸法精度がそれほど高くない場合がある。そのため、寸法がばらついているような場合でもシール性能を発揮できる必要がある。また、スペースの関係上、ガスケットが装着される環状溝の断面形状が縦長断面となる場合がある。以上のような場合には、ガスケットの断面も縦長断面としなければならず、環状溝内において、ガスケットの倒れや座屈が発生し易いという問題がある。このような問題の対策として、従来、ガスケットの外周側と内周側に、ガスケットの倒れを抑制するための突起を、周方向に各々間隔を空けて複数設ける技術が知られている。
【0004】
このように構成された従来例に係るガスケットについて図8を参照して説明する。図8は従来例に係るガスケットの装着時の様子を示す模式的断面図である。なお、この従来例に係るガスケット500は、インテークマニホールド200に設けられた環状溝201に装着されて、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300との対向面間の隙間を封止するために用いられる。
【0005】
図示のように、ガスケット500は、断面が縦長形状のガスケット本体部510と、環状溝201の溝底面に密着する第1シール突起部511と、シリンダーブロック300の取付面301に密着する第2シール突起部512とを備えている。また、ガスケット本体部510の外周側と内周側には、環状溝201内においてガスケット本体部510が倒れることを抑制する突起521,522が、周方向に各々間隔を空けて複数設けられている。なお、図8はこれらの突起521,522が設けられている部分において、ガスケット500の長手方向に対して垂直な方向に切断した断面図である。
【0006】
ここで、一般的に、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300は、これらの対向面に垂直な方向(図8中、矢印X方向)に組み付けられる。これに伴い、上記のように構成されたガスケット500は、図示の断面において幅方向(左右方向)の中心に対して略対称的な状態を保ったまま圧縮する。これにより、第1シール突起部511が環状溝201の溝底面に密着し、かつ第2シール突起部512がシリンダーブロック300の取付面301に密着することでシール性能が発揮される。また、ガスケット本体部510は縦長断面で構成されており、本来的には環状溝201内で倒れたり座屈したりし易いものの、ガスケット500の圧縮に伴い突起521,522が環状溝201の両側面にそれぞれ突き当たることで、倒れや座屈が抑制される。
【0007】
しかしながら、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300が、これらの対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組み付けられるように構成される場合がある。例えば、図8中の矢印Y方向に組み付けられる場合がある。この場合、ガスケット500における第2シール突起部512には、前記対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に
力が加わるため、第2シール突起部512は倒れるように変形してしまう。そのため、ガスケット500は、図示の断面において幅方向(左右方向)の中心に対して略対称的な状態を保ったまま圧縮することができず、当該中心に対して非対称的な状態で圧縮してしまう。また、ガスケット500は環状であることから、第2シール突起部512に加えられる力の方向は、力が与えられる部位によって異なるため、変形の仕方も部位により異なる。従って、シール性能が不安定になってしまう。
【0008】
また、第2シール突起部512の変形の仕方によっては、図9に示すように、第2シール突起部512の先端付近Zが、インテークマニホールド200における環状溝201の開口端縁付近と、シリンダーブロック300の取付面301との間に噛み込まれてしまうことも考えられる。この場合には、先端付近Zに亀裂が生じたり、欠けが生じたりして、シール機能が損なわれてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−3130号公報
【特許文献2】特開2003−120817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、装着溝内におけるガスケットの倒れを抑制する密封構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0012】
すなわち、本発明の密封構造は、
互いに組み付けられる2部材と、
これら2部材のうちの一方の部材に設けられる環状溝と、
前記環状溝に装着され、前記2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットと、を備え、
前記2部材は前記対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組み付けられ、これら2部材により前記ガスケットが圧縮されるように構成された密封構造であって、
前記ガスケットは、
環状の補強環と、
該補強環に一体的に設けられ、かつその断面形状が前記環状溝への装着方向の長さの方が幅方向の長さよりも長い縦長のゴム状弾性体製のガスケット本体と、を備えており、
前記環状溝には、前記補強環が突き当たることで、該補強環の傾きを制限する位置規制部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、補強環によってガスケット本体の変形が抑制され、かつ環状溝に設けられた位置規制部によって補強環の傾きが制限されるので、環状溝内におけるガスケットの倒れが抑制される。また、これに伴い、ガスケット本体の先端が、環状溝の外側に飛び出してしまうことも抑制できる。これらのことから、安定したシール性能が発揮される。
【0014】
ここで、前記補強環は中心に孔の空いた円板状の部材で構成されており、
前記環状溝における側面側の周面と、前記補強環の側面側の周面との間に隙間を有した状態で、前記ガスケットが前記環状溝に装着されるように構成されており、
前記ガスケットが前記環状溝に対して傾くと、前記補強環の前記周面における端縁の少なくとも一部が前記環状溝における前記周面に突き当たることで、前記補強環の傾きが制
限されるとよい。
【0015】
これにより、簡易的な構成で、補強環の傾きを制限できる。
【0016】
また、前記補強環は、
中心に孔が空き、かつその一部が前記ガスケット本体の内部に埋め込まれた状態にある円板部と、
該円板部の端部から折れ曲がった円筒部と、を備えており、
前記環状溝は、前記円筒部の先端側が遊びを持った状態で嵌合される遊嵌溝を備えていることも好適である。
【0017】
これにより、補強環の傾きをより確実に制限できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、装着溝内においてガスケットの倒れを抑制でき、安定した密封性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る密封構造の模式的断面図(2部材を組み付ける前の状態を示す模式的断面図)である。
【図2】図2は本発明の実施例1に係るガスケットの平面図である。
【図3】図3は本発明の実施例1に係る密封構造の模式的拡大断面図(2部材を組み付ける前の状態を示す図)である。
【図4】図4は本発明の実施例1に係る密封構造の模式的拡大断面図(2部材を組み付けた後の状態を示す図)である。
【図5】図5は本発明の実施例2に係る密封構造の模式的拡大断面図(2部材を組み付ける前の状態を示す図)である。
【図6】図6は本発明の実施例3に係る密封構造の模式的拡大断面図(2部材を組み付ける前の状態を示す図)である。
【図7】図7は本発明の実施例4に係る密封構造の模式的拡大断面図(2部材を組み付ける前の状態を示す図)である。
【図8】図8は従来例に係るガスケットの装着時の様子を示す模式的断面図である。
【図9】図9は従来例に係るガスケットにおける2部材の組み付け後の状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
(実施例1)
図1〜図4を参照して、本発明の実施例1に係る密封構造について説明する。なお、本実施例においては、密封構造を構成する2部材が、インテークマニホールドとシリンダーブロックである場合を例にして説明する。
【0022】
<密封構造>
特に、図1を参照して、本発明の実施例1に係る密封構造全体の構成について説明する。図1は本発明の実施例1に係る密封構造の模式的断面図である。インテークマニホールド200とシリンダーブロック300は、図1中の矢印V方向に組み付けられるように構
成されている。ここで、これらの組み付け方向Vは、図1から明らかなように、これらの対向面に垂直な方向に対して傾いた方向である。
【0023】
また、インテークマニホールド200におけるシリンダーブロック300との対向面側には環状溝210が設けられている。この環状溝210に、ガスケット100が装着される。このガスケット100は、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300との対向面間の隙間を封止するために用いられる。なお、図1においては、ガスケット100と環状溝210の構成は簡易的に示している。
【0024】
本実施例に係るインテークマニホールド200は、V型構造であり、吸気管がV字状に分岐する構成となっている。これに伴い、吸気管の先端が突き当たるシリンダーブロック300の取付面301は傾斜面によって構成されている。
【0025】
<ガスケット>
特に、図2〜図4を参照して、ガスケット100と、ガスケット100の倒れを抑制する構造について説明する。なお、図2はガスケット100の平面図であり、図3,4は密封構造の模式的拡大断面図である。図3,4におけるガスケットは図2中のAA断面に相当する。また、図3はインテークマニホールド200とシリンダーブロック300を組み付ける前の状態を示し、図4はこれらを組み付けた後の状態を示している。
【0026】
ガスケット100は、金属製の補強環120と、補強環120の内周端側に一体的に設けられたゴム状弾性体製のガスケット本体110とから構成される。このガスケット100は、補強環120をインサート部品として、インサート成形によって製造することができる。
【0027】
補強環120は、中心に孔の空いた円板状の部材で構成されている。補強環120の材質としては、鉄系、アルミニウム系、ステンレス系などの各種金属や、硬質の樹脂材を適用できる。
【0028】
ガスケット本体110は、円環状の部材で構成されている。また、ガスケット本体110の断面形状(円周方向に対して垂直な断面の形状)は、環状溝210への装着方向の長さの方が幅方向よりも長い縦長形状となっている。そして、この縦長の両端のシール突起部が、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300にそれぞれ密着するように構成されている。また、上記の両端のシール突起部は、先細り形状となるように構成されている。
【0029】
環状溝210は、ガスケット本体110が装着される深溝部211と、補強環120が入り込む浅溝部212とを備える段付き溝である。そして、浅溝部212における内周面212aの内径は、補強環120の外径よりも僅かに大きく設定されている。これにより、ガスケット100が環状溝210に装着される場合には、環状溝210における内周面212aと、補強環120の外周面との間に微小隙間を有した状態で、ガスケット100が環状溝210に装着される。これにより、ガスケット100を簡単に環状溝210に装着することができる。なお、ガスケット本体110のつぶし代を確保するために、浅溝部212の溝底部分と補強環120との間には、図3に示すように、適度な隙間が設けられる。
【0030】
また、ガスケット100が環状溝210に対して傾くと、補強環120の外周面における端縁の少なくとも一部が環状溝210の内周面212aに突き当たることで、補強環120の傾きは制限されるように構成されている。これにより、環状溝210内でのガスケット100の倒れが抑制される。なお、環状溝210における内周面212aは、補強環
120の傾きを制限する位置規制部として機能している。
【0031】
<本実施例に係る密封構造の優れた点>
本実施例に係る密封構造によれば、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300を図3中矢印V方向に組み付ける過程で、ガスケット本体110の先端がシリンダーブロック300の取付面301からの力を受ける。この力を受ける方向は、ガスケット本体110の圧縮方向に対して傾いている。そのため、ガスケット100には、環状溝210内において、図4中矢印M方向に回転する方向に力が作用する。
【0032】
しかしながら、上記の通り、本実施例に係るガスケット100は、補強環120を備えており、補強環120自体は殆ど変形しないため、ガスケット本体110の変形も抑制される。また、補強環120の外周面における端縁の少なくとも一部が環状溝210の内周面212aに突き当たることで、補強環120の傾きは制限される。すなわち、図4に示すように、補強環120における上方側において、外周面における下側の端縁が環状溝210の内周面212aに突き当たる。また、補強環120における下方側において、外周面における上側の端縁が環状溝210の内周面212aに突き当たる。これにより、補強環120の傾きが制限されて、環状溝210内におけるガスケット100の傾き(倒れ)が抑制される。
【0033】
これらのことから、環状溝210内におけるガスケット100の姿勢を安定させることができる。また、これに伴い、ガスケット本体110の先端のシール突起部が、環状溝210の外側に飛び出してしまうことも抑制できる。なお、本実施例においては、当該シール突起部を先細り形状としたことによって、環状溝210の外側への飛び出しを、より抑制できるようにしている。ここで、環状溝210における内周端縁(深溝部211の内周端縁)にC面やR面などの面取りを設けることによって、シール突起部の環状溝210の外側への飛び出しを、より抑制できるようにしてもよい。
【0034】
(実施例2)
図5には、本発明の実施例2が示されている。上記実施例1では、ガスケットを、補強環と、補強環の内周端側に一体的に設けられたガスケット本体とから構成される場合を示した。これに対し、本実施例においては、ガスケットを、補強環と、補強環の外周端側に一体的に設けられたガスケット本体とから構成される場合を示す。
【0035】
その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0036】
本実施例に係るガスケット101は、金属製の補強環121と、補強環121の外周端側に一体的に設けられたゴム状弾性体製のガスケット本体111とから構成される。
【0037】
ガスケット101の製造方法、補強環121の形状や材料の例、ガスケット本体111の形状等については、補強環121とガスケット本体111との位置関係が異なること以外は、上記実施例1と同様であるので、その説明は省略する。
【0038】
環状溝220は、ガスケット本体111が装着される深溝部221と、補強環121が入り込む浅溝部222とを備える段付き溝である。そして、浅溝部222における外周面222aの外径は、補強環121の内径よりも僅かに小さく設定されている。これにより、ガスケット101が環状溝220に装着される場合には、環状溝220における外周面222aと、補強環121の内周面との間に微小隙間を有した状態で、ガスケット101が環状溝220に装着される。これにより、ガスケット101を簡単に環状溝220に装着することができる。なお、ガスケット本体111のつぶし代を確保するために、浅溝部
222の溝底部分と補強環121との間には、図5に示すように、適度な隙間が設けられる。
【0039】
また、ガスケット101が環状溝220に対して傾くと、補強環121の内周面における端縁の少なくとも一部が環状溝220の外周面222aに突き当たることで、補強環121の傾きは制限されるように構成されている。これにより、環状溝220内でのガスケット101の倒れが抑制される。なお、環状溝220における外周面222aは、補強環121の傾きを制限する位置規制部として機能している。なお、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300を図5中矢印V方向に組み付ける過程で、ガスケット101には、環状溝220内において、図5中矢印M方向に回転する方向に力が作用する。
【0040】
以上の構成により、本実施例に係る密封構造においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。また、本実施例においても、環状溝220における外周端縁(深溝部221の外周端縁)にC面やR面などの面取りを設けることによって、シール突起部の環状溝220の外側への飛び出しを、より抑制できるようにしてもよい。
【0041】
(実施例3)
図6には、本発明の実施例3が示されている。上記実施例1,2では、中心に孔の空いた円板状の部材で構成された補強環を用い、この補強環の周面(実施例1では外周面、実施例2では内周面)における端縁の少なくとも一部が環状溝の周面(実施例1では内周面、実施例2では外周面)に突き当たることで、補強環の傾きを制限させる場合を示した。これに対し、本実施例においては、中心に孔の空いた円板部と、円板部の端部から折れ曲がった円筒部とを備える補強環を用い、円筒部が遊嵌溝に遊嵌する(遊びを持った状態で嵌合する)ことで補強環の傾きを制限させる場合の構成を示す。
【0042】
その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0043】
本実施例に係るガスケット102は、金属製の補強環122と、補強環122の内周端側に一体的に設けられたゴム状弾性体製のガスケット本体112とから構成される。このガスケット102は、補強環122をインサート部品として、インサート成形によって製造することができる。
【0044】
補強環122は、中心に孔が空き、かつその一部(内周端部)がガスケット本体112の内部に埋め込まれた状態にある円板部122aと、円板部122aの外周端部から折れ曲がった円筒部122bと、から構成されている。補強環122の材質としては、鉄系、アルミニウム系、ステンレス系などの各種金属や、硬質の樹脂材を適用できる。
【0045】
ガスケット本体112は、円環状の部材で構成されている。また、ガスケット本体112の断面形状(円周方向に対して垂直な断面の形状)は、環状溝230への装着方向の長さの方が幅方向よりも長い縦長形状となっている。そして、この縦長の両端のシール突起部が、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300にそれぞれ密着するように構成されている。また、上記の両端のシール突起部は、先細り形状となるように構成されている。
【0046】
また、本実施例に係る環状溝230は、ガスケット本体112が装着される装着溝部231と、補強環122における円筒部122bの先端側が遊びを持った状態で嵌合される遊嵌溝部232とを備えている。このように、本実施例においては、ガスケット102が環状溝230に装着される場合には、補強環122における円筒部122bが遊びを持っ
た状態で、遊嵌溝部232に嵌合されるので、ガスケット102を簡単に環状溝230に装着することができる。なお、ガスケット本体112のつぶし代を確保するために、遊嵌溝部232の溝底部分と補強環122における円筒部122bの先端との間には、図6に示すように、適度な隙間が設けられる。
【0047】
また、ガスケット102が環状溝230に対して傾くと、補強環122における円筒部122bが遊嵌溝部232の内周面や外周面に突き当たることで、補強環122の傾きは制限されるように構成されている。つまり、補強環122は、遊嵌溝部232に対する円筒部122bの遊び分だけしかがたつかない。これにより、環状溝230内でのガスケット102の倒れが抑制される。なお、遊嵌溝部232の内周面及び外周面は、補強環122の傾きを制限する位置規制部として機能している。
【0048】
以上の構成により、本実施例に係る密封構造においても、上記実施例1,2の場合と同様の効果を得ることができる。なお、本実施例の場合の方が、遊びの調整によって、補強環122の傾きを簡単に制限できるので、実施例1,2に比べて、補強環122の傾きをより確実に抑制し易い。また、本実施例においても、環状溝230における内周端縁(装着溝部231の内周端縁)にC面やR面などの面取りを設けることによって、シール突起部の環状溝230の外側への飛び出しを、より抑制できるようにしてもよい。
【0049】
(実施例4)
図7には、本発明の実施例4が示されている。上記実施例3では、ガスケット本体を、補強環の内周端側に一体的に設ける場合の構成を示した。これに対し、本実施例においては、ガスケット本体を補強環の外周端側に一体的に設ける場合の構成を示す。
【0050】
その他の構成および作用については実施例3と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0051】
本実施例に係るガスケット103は、金属製の補強環123と、補強環123の外周端側に一体的に設けられたゴム状弾性体製のガスケット本体113とから構成される。
【0052】
補強環123は、中心に孔が空き、かつその一部(外周端部)がガスケット本体113の内部に埋め込まれた状態にある円板部123aと、円板部123aの内周端部から折れ曲がった円筒部123bと、から構成されている。
【0053】
ガスケット103の製造方法、補強環の材料の例、ガスケット本体113の形状等については、補強環123とガスケット本体113との位置関係が異なること以外は、上記実施例3と同様であるので、その説明は省略する。
【0054】
また、本実施例に係る環状溝240は、ガスケット本体113が装着される装着溝部241と、補強環123における円筒部123bの先端側が遊びを持った状態で嵌合される遊嵌溝部242とを備えている。このように、本実施例においては、ガスケット103が環状溝240に装着される場合には、補強環123における円筒部123bが遊びを持った状態で、遊嵌溝部242に嵌合されるので、ガスケット103を簡単に環状溝240に装着することができる。なお、ガスケット本体113のつぶし代を確保するために、遊嵌溝部242の溝底部分と補強環123における円筒部123bの先端との間には、図7に示すように、適度な隙間が設けられる。
【0055】
以上のような構成により、本実施例の場合においても、補強環123は、遊嵌溝部242に対する円筒部123bの遊び分だけしかがたつかない。従って、上記実施例3の場合と同様の効果を得ることができる。また、本実施例においても、環状溝240における外
周端縁(装着溝部241の外周端縁)にC面やR面などの面取りを設けることによって、シール突起部の環状溝240の外側への飛び出しを、より抑制できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
100,101,102,103 ガスケット
110,111,112,113 ガスケット本体
120,121,122,123 補強環
122a,123a 円板部
122b,123b 円筒部
200 インテークマニホールド
210,220,230,240 環状溝
211,221 深溝部
212,222 浅溝部
212a 内周面
222a 外周面
231,241 装着溝部
232,242 遊嵌溝部
300 シリンダーブロック
301 取付面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに組み付けられる2部材と、
これら2部材のうちの一方の部材に設けられる環状溝と、
前記環状溝に装着され、前記2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットと、を備え、
前記2部材は前記対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組み付けられ、これら2部材により前記ガスケットが圧縮されるように構成された密封構造であって、
前記ガスケットは、
環状の補強環と、
該補強環に一体的に設けられ、かつその断面形状が前記環状溝への装着方向の長さの方が幅方向の長さよりも長い縦長のゴム状弾性体製のガスケット本体と、を備えており、
前記環状溝には、前記補強環が突き当たることで、該補強環の傾きを制限する位置規制部が設けられていることを特徴とする密封構造。
【請求項2】
前記補強環は中心に孔の空いた円板状の部材で構成されており、
前記環状溝における側面側の周面と、前記補強環の側面側の周面との間に隙間を有した状態で、前記ガスケットが前記環状溝に装着されるように構成されており、
前記ガスケットが前記環状溝に対して傾くと、前記補強環の前記周面における端縁の少なくとも一部が前記環状溝における前記周面に突き当たることで、前記補強環の傾きが制限されることを特徴とする請求項1に記載の密封構造。
【請求項3】
前記補強環は、
中心に孔が空き、かつその一部が前記ガスケット本体の内部に埋め込まれた状態にある円板部と、
該円板部の端部から折れ曲がった円筒部と、を備えており、
前記環状溝は、前記円筒部の先端側が遊びを持った状態で嵌合される遊嵌溝を備えていることを特徴とする請求項1に記載の密封構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−220487(P2011−220487A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92289(P2010−92289)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】