説明

密封装置

【構成】固定側の構体(油圧緩衝器のシリンダ)と往復動軸との間を密封する密封装置であって、上記構体側に固定される座金と、該座金の内周端部に固着され、上記動作軸に摺接する弾性材よりなるシールリップとを備えて構成され、前記座金は、上記構体側の外周座金と上記シールリップ側の内周座金とに分割して構成され、該分割部に前記シールリップの振動を吸収する弾性体を介在せしめるとともには、前記された分割面は、外周座金に対し前記内周座金が密封側から大気側に向かって係合する形状とされていること。
【効果】シールリップに振動が生じてもこの振動は座金に介在される弾性体によって吸収されるものであり、また、外周座金に対し内周座金が密封側から大気側に向かって係合する形状とされているので、密封側の内圧が高くなっても内周座金が大気側に抜けるおそれがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用の油圧緩衝器(ショックアブソーバ)に装着される往復動軸用オイルシール等の密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
密封装置として例えば車両の油圧緩衝器に装着される往復動軸用のオイルシールは、油圧緩衝器のシリンダに固定される座金とこの座金の内周端部に固着され、往復動軸に摺接するゴム等の弾性材よりなるシールリップとを備えて構成されている。ここで前記のシールリップが往復動軸に所要の締め代を持って弾性的に摺接することによって油圧緩衝器内のオイルを密封するものである。
【0003】
そして、従来はこの種の往復動軸用密封装置は、軸と外周部材の端部との間に介在される座金と、この座金の密封側に配置され軸の外周面に摺動可能に密接される主リップと、その外周側に一体的に形成される副リップと、主リップの内周部と前記座金の内周部との間に嵌合されて主リップを大気側かつ内周側から支承するバックアップリングと、座金の大気側に一体的に接合され軸の外周面に摺動可能に密接されるダストリップとを備え、前記の主リップはバックアップリングによって、内周側かつ大気側からバックアップされているので、軸の外周面に対する主リップの緊迫力の増大を有効に抑制することができ、その結果、座金の内径を軸の外径に近接させなくても、主リップの耐圧性を充分に向上させることができるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005ー273692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1における密封装置は、主リップの耐圧性には充分応えられるものではあるが、油圧緩衝器の動作中に発生するよじれの問題に対しては特に考慮されたものではない。しかしながら、往復動軸用の密封装置においては油圧緩衝器の動作中における動作軸である往復動軸に生じるよじれによってシールリップに振動が発生する問題があり、この振動が大きくなると油圧緩衝器から車両に振動が伝わって乗り心地が損なわれるということがあった。
本発明は、このような問題点を解消した密封装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の密封装置は、前記の目的を達成するために、固定側の構体と動作軸との間を密封する密封装置であって、上記構体側に固定される座金と、該座金の内周端部に固着され、上記動作軸に摺接する弾性材よりなるシールリップとを備え、上記座金には、前記シールリップと上記構体との間において前記シールリップの振動を吸収する弾性体を介在せしめたことをその特徴とし、また、前記座金は、上記構体側の外周座金と上記シールリップ側の内周座金とに分割して構成され、該分割部に弾性体を介在せしめるとともに、前記した分割面は、外周座金に対し前記内周座金が密封側から大気側に向かって係合する形状とされていることをその特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の密封装置は、構体側に固定される座金と、該座金の内周端部に固着され動作軸に摺接する弾性材よりなるシールリップを備え、上記座金には、前記シールリップと上記構体との間において前記シールリップの振動を吸収する弾性体を介在せしめたので、シールリップに振動が生じてもこの振動は座金に介在される弾性体によって効果的に吸収されるので、車両の乗り心地を損なうことがない。
【0008】
また、本密封装置における座金は、構体側の外周座金とシールリップ側の内周座金とに分割して構成され、前記分割された外周座金と内周座金の間に弾性体を介在させるとともに、前記分割面は、外周座金に対し前記内周座金が密封側から大気側に向かって係合する形状に形成されるので、密封側の内圧が高くなっても内周座金が大気側に抜け出るおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の密封装置の半断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を説明すると、本実施の形態においては、密封装置として車両用の油圧緩衝器に装着されるオイルシール1について説明する。このオイルシール1は、油圧緩衝器の開口部に装着され往復動軸2の周囲を油圧緩衝器の内部(密封側)Mと大気側Tとの間で封止するものである。
【0011】
本実施の形態の座金は、厚みのあるSPCCやSAPHなどの鋼板をドーナツ状に打ち抜き形成したものをほぼ中央より分割して外周座金4と内周座金5に構成したもので、その分割に際しては、外周座金4と内周座金5の分割面が油圧緩衝器の密封側Mから大気側Tに向かって小径となるような傾斜面6を構成するように分割形成され、このように形成された分割傾斜面6により、外周座金4に対し内周座金5が密封側Mから大気側Tに向かって係合する形状に構成したものである。
【0012】
前記した外周座金4は、羽圧緩衝器のシリンダ(構体)7の端部が内周側へ屈曲形成されたカシメ端部8と軸ガイド9との間に挟持され、また、前記した内周座金5は、先端部に密封側Mに設けたNBRやフッ素ゴム等の弾性材製の主リップ12と大気側Tに設けた弾性材製のダストリップ13を備え、上記の主リップ12及びダストリップ13はそれぞれ往復動軸2に対し所要の締め代をもって弾性的に摺接し、前記の主リップ12は、密封側Mからのオイルの漏れを阻止するとともに、ダストリップ13により大気側Tからのダストの進入を防止するものである。
【0013】
前記した外周座金4の外周端部には、弾性材であるゴムを焼き付けて外周リップ14が固着されており、この外周リップ14がシリンダ7の内周面に密接して油圧緩衝器内のオイルの漏洩を封止している。
【0014】
そして、前記した外周座金4と内周座金5とが分割されたときに形成された分割傾斜面6,6の間にクッションゴム15が介在され、該クッションゴム15を分割傾斜面6、6に接着固定している。前記クッションゴム15は、前記したように、外周座金4と内周座金5との分割傾斜面6に接着固定され、該クッションゴム15を介して前記外周座金4と内周座金5とが一体的化されている。
【0015】
以上の如く構成される本実施の形態のオイルシール1においては、油圧緩衝器の動作中に往復動軸2のよじれによって主リップ12及びダストリップ13に振動が生じても、この振動は内周座金5と外周座金4との間に介在される弾性体であるクッションゴム15によって効果的に吸収され、油圧緩衝器から車体側に殆ど伝わることがないので、車両の乗り心地を損なうおそれはない。
【0016】
そして、さらに本実施の形態のオイルシール1では、外周座金4に対し内周座金5が密封側Mから大気側Tに向かって係合する形状に形成されていることにより、密封側Mの内圧が高くなっても内周座金5が大気側Tに抜けるおそれはない。
【0017】
前記したクッションゴム15は、シールリップと同じ材料を用いることができ、成形効率の向上のため、シールリップや外周リップ14と一体にクッションゴム15を成形してもよい。また、クッションゴム15の材料には、特に振動吸収性の高いゴムを用いるのがよい。
本実施の形態においては、密封装置として車両の油圧緩衝器に装着される往復動軸用オイルシールについて説明したが、本発明は往復動軸用オイルシールに限ることなく回転軸用オイルシールなどにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の密封装置は、車両の油圧緩衝器に装着されて、往復動軸に摺接されるオイルシールによって油圧緩衝器内のオイルの漏洩を防止するものであり、油圧緩衝器の動作中に動作軸である往復動軸がよじれることがあり、このよじれによりオイルシールのシールリップに振動が発生し、この振動により油圧緩衝器から車両に振動が伝わることを防止することができ、車両の乗り心地の改善に役立つ有益な発明である。
【符号の説明】
【0019】
4 外周座金
5 内周座金
6 分割傾斜面
7 シリンダ
12 主リップ
13 ダストリップ
15 クッションゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側の構体と動作軸との間を密封する密封装置であって、上記構体側に固定される座金と、該座金の内周端部に固着され、上記動作軸に摺接する弾性材よりなるシールリップとを備え、上記座金には、前記シールリップと上記構体との間において前記シールリップの振動を吸収する弾性体を介在せしめたことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
上記座金は、構体側の外周座金と上記シールリップ側の内周座金とに分割して構成され、該分割部に弾性体を介在せしめるとともには、前記された分割面は、外周座金に対し前記内周座金が密封側から大気側に向かって係合する形状とされていることを特徴とする請求項1記載の密封装置。

















【図1】
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【公開番号】特開2011−158035(P2011−158035A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20443(P2010−20443)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000143307)株式会社荒井製作所 (100)
【Fターム(参考)】