説明

密閉型給配電設備の点検装置

【課題】密閉型給配電設備の函体の開閉蓋を開かずに、地上から点検を行う密閉型給配電設備の点検装置を提供する。
【解決手段】絶縁棒1の先端側に取り付けられたハンマー16で、密閉型給配電設備4の函体4aを外側から打撃可能に構成し、上記ハンマー16を打撃前の位置でロックするロック手段と、このロック手段を解除するロック解除手段と、センサ部42とを備え、上記センサ部42で上記ハンマー16の打撃力と函体振動速度とを検知して、この検知結果から固有振動数を得て、基準値と比較し上記密閉型給配電設備4の函体4a中の水溜まりを検出する周波数解析回路と、この周波数解析回路の出力によりアラームを出力するアラーム手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型給配電設備の函体開閉蓋を開かずに点検を行う密閉型給配電設備の点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密閉型給配電設備、例えば、断路器、継電器等の開閉装置にあっては、開閉蓋を有する密閉型の函体に、絶縁手段を介して開閉スイッチを収納している。
断路器としての開閉スイッチを、配電経路の点検時等に必要に応じて開成したり、閉成したりする。継電器にあっては例えば過電流、雷検知等に開閉スイッチを自動的に開成したり、閉成したりする。なお、函体は金属、樹脂より成る。
このような重要な密閉型給配電設備にあっては、長年の使用により塩害等の影響で函体が劣化してしまい、その一部に亀裂等が発生して、この部分より雨水が浸入して、場合によっては、函体内に水溜りが生じて、重大事故につながる場合がある。
このため、水溜り発見を目的として、函体の点検は欠かせないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−128307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業者が函体の点検を目的として電柱、鉄塔等の高位置に登り、高圧線に近づく場合には、熟練者といえども危険を伴う作業を余儀なくされていた。そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、密閉型給配電設備の函体の開閉蓋を開かずに、地上から点検を行う密閉型給配電設備の点検装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、絶縁棒の先端側に取付けられたハンマー等の加振装置で、密閉型給配電設備の函体を外側から打撃可能に構成し、上記加振装置を打撃前の位置でロックするロック手段と、このロック手段を解除するロック解除手段と、センサ部とを備え、上記センサ部で上記加振装置の打撃力と函体振動速度とを検知して、この検知結果から固有振動数を得て、基準値と比較し上記密閉型給配電設備の函体中の水溜まりを検出する解析回路と、この解析回路の出力によりアラームを出力するアラーム手段とを備えたので、ハンマーの打撃力と函体振動速度の両方を分析して固有振動数を得て水溜りを検出でき、より正確に水溜りの検出が可能となる。
センサ部は加振装置側に取付けられた打撃力センサと、函体の振動速度を検知する振動速度センサとより成るので、打撃力センサと振動速度センサを用いるという簡単な構成で、水溜りの高精度な検出が可能となる。
上記加振装置は、上記函体の底面に打撃力を加えるように構成され、上記ロック解除手段は、絶縁棒の給配電設備の函体底面方向への下側からの押圧動作又は回動動作でロック手段を解除して打撃を加えることができるので、両手操作に頼らずに簡単に絶縁棒を操作できる。
ロック解除手段は、絶縁棒の後端側に備えた無線機の無線信号又は赤外線発生器の赤外線信号でロック手段を解除するので、ロック手段を無線信号又は赤外線信号による遠隔操作で解除できるので、安全性を向上できる。
ロック解除手段は、絶縁棒の後部手元側に設けられるので、手元操作が可能となり、操作が容易となる。
解析回路はインピーダンスレベルの周波数特性の変化を得て、このインピーダンスレベルの周波数特性の変化より少なくとも1次固有振動数を抽出するものであって、かつ、この1次固有振動数が基準値より所定値にシフトするか否かを判定して水溜りを検出するので、インピーダンスレベルの周波数特性の変化により、1次,2次の固有振動数を得て、より簡単にかつ正確に水溜りを検出できる。
インピーダンスレベルの周波数特性の変化を、50Hz〜500Hzの周波数範囲で得るようにしたので、実験により得た結果との比較によって正確な水溜りの検出が可能となる。
基準値は、密閉型給配電設備の函体の種別に応じてあらかじめ記憶手段に記憶されて、点検毎にいずれかの基準値が読出されて比較対象として解析回路に供給されるので、函体の種別に応じた水溜り検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】密閉型給配電設備の簡略構成図(実施の形態)。
【図2】(a)は点検装置の斜視図、(b)は点検装置のガイド管体の近傍を拡大して示す図(実施の形態)。
【図3】点検装置の断面図(実施の形態)。
【図4】点検装置のアジャスタ近傍を拡大して示す図(実施の形態)。
【図5】リンクと絶縁棒との接続を示す図(実施の形態)。
【図6】点検装置の回路構成図(実施の形態)。
【図7】打撃入力に対する打撃音の出力振動周波数の大きさと、打撃音の振動周波数の変化とを表す特性図(実施の形態)。
【図8】(a)は点検装置の加振装置とばね力解除手段を示す図、(b)はばね力解除手段の動作を表す図(実施の形態)。
【図9】点検装置の動作を示す図(実施の形態)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1乃至図3は密閉型給配電設備の一実施形態を示す簡略構成図であり、各図において、1は作業者2により後端側が手で把持される点検装置としての絶縁棒であり、途中の分割箇所に例えば碍子3を介在させて、作業者2に対する密閉型給配電設備、例えば、開閉器4の函体4aからの絶縁を計っている。この絶縁棒1は伸縮式とし、長さ(高さ)調整が可能としてもよい。この絶縁棒1は円柱、角柱でもよいが、その上端は筒体5で被われている。図3に示す如く、筒体5の内部で絶縁棒1と筒体5との間にはコイルばね6が収納され、このコイルばね6で筒体5を上方向に押圧して移動させる摺性が働いている。絶縁棒1の上部側の左,右にはピン7,8が互いに反対方向に突出し、このピン7,8は筒体5の左,右の長手方向に延長する如く設けられた長孔9,10に貫入して係合し、筒体5は絶縁棒1に対し、この長孔9,10の長さ分、上、下に進退自在となっている。
【0008】
筒体5の上部側の左,右には平行に延長する棒体11,12により成るアーム13が位置され、このアーム13の前端,後端はブリッジ体14,15で接続され、前端のブリッジ体15の中央からは先端に加振装置としてのハンマー(錘)16を有する腕木17が突出している。腕木17のハンマー16は開閉器4を打撃するもので、クランク状の支持部18で支持されている。左,右の棒体11,12間に筒体5が位置し、棒体11,12はピン11a,12aで軸支されて、シーソー運動自在となっている。19はばねであり、一端がブリッジ体14の中央に取付けられ、他端が筒体5の下部のアジャスタ20に接続されて、ブリッジ体15を筒体5の下部方向に牽引して、常にハンマー16が上部方向(函体4a方向)に回動するように摺性を与える。ハンマー16は函体4aに傷をつけないように、ゴム、合成ゴム、樹脂等の比較的重いものが採用される。
【0009】
上記アジャスタ20は図4、図5に示すように筒体5の下部より傾斜方向に取付けられた雌ねじ筒部21と、この筒部21に螺入された雄ねじ部22、この雄ねじ部22が貫入する貫通孔23を有する鍔部24と、この鍔部24の両側より突出する取付片25,26とより成り、ばね19の他端の分岐線27,28を取付片25,26に接続してばね力を調節自在として構成される。
ばね19のばね力を強くしたい場合は、雄ねじ部22を雌ねじ筒部21内に螺入すれば良く、弱くしたい場合は、雄ねじ部22を上記とは反対に操作すればよい。
図2において、29は筒体5に対し直角方向に位置されるガイド管体であり、ブリッジ体15の下部に位置し、かつステー30で筒体5に取付けられる。このガイド管体29にはロッド31が進退自在に嵌入され、このロッド31の後端はピン33aを介してリンク33の先端に接続され、リンク33の他端は絶縁棒1の突片34にピン33bを介して接続される。
【0010】
上記突片34は筒体5の下部の長手方向に延長する長孔36を貫通して、リンク33の他端に接続され、リンク33の上,下方向の運動範囲を制限する。絶縁棒1が筒体5に対して上動するとリンク33が上方に押上げられるので、ロッド31が筒体5より離れる方向に移動して、ロック解除となる。なお、腕木17にはハンマー16の打撃力(衝撃力)を検知する打撃力センサS42aが取付けられて、ハンマー16による打撃の打撃力(衝撃力)信号42aを出力する。例えば、打撃力センサS42aは圧電素子を備える。打撃力センサS42aは入力された打撃力を周波数に変換し、計測された打撃力の情報として打撃力信号42aを後述の周波数解析回路48に出力する。ロッド31はU字状に形成され、両端37,38が、棒体11,12に接続された水平状のロック体39の上に係止して、ロック体39をロックしている。従って、ロッド31とロック体39とでロック手段を構成し、リンク33でロッド31を操作するロック解除手段を構成する。筒体5の先端にはラッパ状の受振部40が固定される。受振部40は例えばゴム、合成ゴムあるいは軟質樹脂より成り、先端側が、開閉器4の函体4aの底面の好ましくは中央部に当接するように、絶縁棒1により操作される。
図3において、受振部40の開口部は蓋材41で塞がれ、この蓋材41の上に振動速度センサS42bが取付けられる。上記打撃力センサS42a,振動速度センサS42bはセンサ部42を構成し、このセンサ部42はコンピュータ構成の主回路43に接続され、主回路43に発光部44が接続される。発光部44は筒体5に、下向きに取付けられる。上記振動速度センサS42bより函体4aのハンマー打撃による振動速度信号42bが出力される。すなわち、振動速度センサS42bはハンマー16の打撃により振動する函体4aの速度を計測し、計測された速度の情報としての振動速度信号42bを後述の周波数解析回路48に出力する。
【0011】
上記主回路43等の回路構成は、図6に示すようにハンマー打撃時に発生される打撃力信号42a,振動速度信号42bを演算して1次,2次の固有振動数60a,60bを検出し(後述)、記憶手段46からの1次,2次固有振動数50a,50b(後述)と比較する周波数解析回路48を備える。なお、49は電源である。上記周波数解析回路48は図7に示すように、打撃力信号42a,振動速度信号42bを演算することで、後述のインピーダンスレベルの周波数特性60を求めて、このインピーダンスレベルの周波数特性60より1次,2次の固有振動数60a,60bを得る。そして、記憶手段46のインピーダンスレベルの周波数特性50の1次,2次の固有振動数50a,50bと比較する。
以上の構成によれば、図1乃至図3に示すように、作業者2が絶縁棒1の後端側を持って、絶縁棒1の先端側を開閉器4の底面中央に近づけ、かつ受振部40の先端を接触させて、コイルばね6のばね力に対応して押圧すると、振動速度センサS42bが函体4aの底面に密接する。絶縁棒1が筒体5の中央方向に進入され、リンク33が押圧されて水平方向に傾斜するので、ロック状態のロッド31がロック体39より引抜け方向に後退し、これによりロック状態のロッド31が、ロック体39よりはずれてロックが解除される。これにより、アーム13がばね19の牽引力で回動する。これにより、ハンマー16がばね19の牽引力で開閉器4の函体4aの底面中央に衝突(打撃)するので、開閉器4の函体4aの底面に打撃による振動が発生する。打撃により、打撃力信号42aが打撃力センサS42aより出力され、また、上記コイルばね6のばね力で開閉器4の函体4aの底面に密着状態で押圧された振動速度センサS42bより振動速度信号42bが出力され、これ等信号42a,42bは主回路43で演算される。記憶手段46には開閉器4に水等が溜まっていない空の状態のときの打撃による後述の1次,2次の固有振動数50a,50bすなわち、基準値をあらかじめ測定して記憶しておき、この記憶手段46より周波数解析回路48に1次,2次の固有振動数50a,50bに相当する基準値を供給する。周波数解析回路48では後述のインピーダンスレベルの周波数特性60を得て、このインピーダンスレベルの周波数特性60より1次,2次の固有振動数60a,60bを求め上記基準値と比較,分析して、両者不一致の度合いが大きいときにアラーム手段としての、発光部44を例えば赤に点灯して、アラーム表示を行う。
【0012】
ここで、上記インピーダンスレベルの周波数特性50,60につき、図7を用いて説明する。50は函体が空の状態のときの打撃によるインピーダンスレベルの周波数特性、60は開閉器4の函体4aに約50mmの水等の液体溜りがあるときの打撃によるインピーダンスレベルの周波数特性である。開閉器4に函体4aに水等の液体溜りがあるとインピーダンスレベルの周波数特性60に示すように、インピーダンスレベルの極少値すなわち、1次,2次の固有振動数60a,60bが低い周波数側にシフトして、水等の溜りの無いときのインピーダンスレベルの極小値すなわち、1次,2次の固有振動数50a,50bよりもこれ等が小さくなるようにシフトするので、このシフト量を検出することで、開閉器4への水溜りの有無を検出できる。なお、図7において縦軸は入力(衝撃力)/出力(函体の振動速度)で得られるインピーダンスレベル、横軸は、上記入力/出力で示すように周波数毎に割ったものである。本実施形態では函体4aが空のときのインピーダンスレベルの周波数特性50の1次の固有振動数50a,2次の固有振動数50bを記憶手段46に記憶して基準値として、周波数解析回路48に出力することとし、周波数解析回路48では打撃力信号42a,振動速度信号42bよりインピーダンスレベルの周波数特性60を求めて、このインピーダンスレベルの周波数特性60より1次,2次の固有振動数60a,60bを求めて、インピーダンスレベルの周波数特性50の1次,2次の固有振動数50a,50bと比較する。周波数解析回路48はインピーダンスレベルの周波数特性50の基準値としての1次,2次固有振動数50a,50bに対して、インピーダンスレベルの周波数特性60の1次,2次の固有振動数60a,60bのシフト量があらかじめ定めたスレッシュホールドレベル以上であれば水溜りがあるものと判定して発光部44を赤色に点灯する。スレッシュホールドレベル以下であれば、水溜りが無いものと判定して発光部44を青色に点灯する。
【0013】
次に、ハンマー16による打撃検査の完了後、図示状態(図1乃至図3)にリセットして、つぎの点検作業に備えて、ハンマー16を復帰させるには、ハンマー16を、ピン11a,12aを中心に後退方向に傾斜させることで、ロック体39が、ロッド31の先端に当接後、ロッド31の先端を乗り越えて、下部側に位置して、ロック状態となる。
なお、図2(a)に示すように、ロッド31の後部はロッド31に設けた長孔31aにリンク33の先端のピン33aが係止しているので、ロック体39がロッド31の先端に当接するとき、ロッド31がばね34bのばね力に抗して後退方向にガイドされた後、ばね34bのばね力で突出するので、ロック体39のロックを容易に行える。
【0014】
次に、実施例につき説明する。
測定結果1
特定の開閉器4の函体4aにおいて、インピーダンスレベルの低下ピークが判別できる底面の測定点について分析を行った。なお、インピーダンスレベルは値が低いほど揺れやすい。また、測定対象物の共振周波数ではインピーダンスレベルの低下が顕著に現れる傾向がある。測定結果を見ると、図7のグラフ内の矢印Rで示すように、水を注入したことによって、例えば、165Hz付近の周波数成分が100Hz以下の低い周波数へシフト(1次固有振動数50aが1次固有振動数60aへとシフト)することを確認した。
測定系の再現性について(実験1)
入水状態の開閉器4の函体4aについて、2つの異なる測定系(測定機器)を用いて試験を実施し、測定機器の違いによる再現性を確認した。
側面4点、底面4点について分析した結果,50Hz〜500Hzの周波数範囲では卓越した共振周波数はほぼ一致しており、測定系による差異は小さいと考える。
いくつかの測定点で見られたばらつきは、
1)ピックアップの取付位置や風による暗振動の影響など測定条件の違い
2)測定者毎の加振方法のばらつき
などが原因として考えられる。しかし、今回の実験に必要と考えられる周波数範囲では安定した結果が得られていた。
測定者の違いによる再現性について(実験2)
入水状態の開閉器4の函体4aについて、異なる測定者が加振した場合の試験結果について再現性を確認した。
側面4点、底面4点について分析した結果、以下に示す傾向が見られた。
1)測定者の異なる測定結果を比較した場合、50Hz〜500Hzの周波数範囲では卓越した共振周波数が概ね一致していた。
2)側面における一部の測定結果については、他の測定結果に比べて全体的にレベルが低い傾向が見られた。また卓越した共振周波数が若干ずれる傾向の見られるものもあった。底面においては概ね一致していた。
加振方法については、測定者によって加振間隔が小さい、また二度打ちの頻度が多いなどの傾向が見られたが、測定結果から判断すると結果的に水の浸入に対する影響を及ぼすには至っていないと考える。
従って、今回の調査に必要と考えられる周波数範囲では底面においては安定した結果が得られていると考える。
【0015】
測定結果2
測定結果1から判断すると、入水時のインピーダンスレベルの周波数特性の変化を雨水の有無の判定基準として採用する場合、ハンマー打撃(加振)位置およびセンサ設置位置は底面であることが望ましいと考える。また、開閉器4の函体4aの種類によってインピーダンスレベルの周波数特性の変化の傾向が異なるため、雨水発見にインピーダンスレベルの変化を用いる場合は、あらかじめ開閉器4の函体4aの種別、形式毎にインピーダンスレベルの傾向を把握する必要があると考える。周波数はインピーダンスレベルの低下が明確な30〜500Hzの範囲とした。分析結果を見ると架線の有無や開閉器の入/切の条件による変化は測定点によっては若干見られるが、同じ測定点であれば水深の増減に伴ってほぼ同様の周波数変化をしていることが確認できた。またインピーダンスレベルの周波数変化は水深0mmから50mmになったときが最も大きかった。
水深が50mm以上では水深の増加に伴ってインピーダンスレベルの周波数も低下するが、変化の幅は小さい傾向にあった。インピーダンスレベルの低下する周波数の変化を捉えて開閉器4の函体4aの雨水の浸入を推定することは可能であることを実験により示した。
【0016】
なお、ハンマー16は腕木17、アーム13等により開閉器4へ打撃を加えるとして説明したが、絶縁棒1の先端側を被う長手方向に移動可能な筒体5の先端に錘を取付け、この筒体5をロックして、このロックを解除して筒体5を開閉器4方向にばね力で突出させて、上記錘(ハンマー)により打撃を加えるように構成してもよい。
また、ロッド31を筒体5から離れる方向に後退させてロック体39へのロックを解除するものとして電磁ソレノイドを用いて、この電磁ソレノイドを作業者2側から無線機による無線あるいは赤外線発生器による赤外線で通電してロックを解除するように構成してもよい。
また、絶縁棒1を開閉器4方向に長手方向に移動することで、リンク33も回動してロッド31とロック体39とによるロックを解除するものとして説明したが、筒体5に対して絶縁棒1を回動するようにして上記ロックを解除するように構成してもよい。
また、発光部44は警報音を同時に発生するもの、あるいは、警報音のみを発生するものであってもよい。
また、打撃時の振動の振動周波数を検出するとして説明したが、打撃時の開閉器4の函体4aに発生する音の振動周波数を検知する音センサを用いて、周波数分析するようにしてもよい。
【0017】
なお、図8に示すように、打撃力センサS42aはハンマー16に直接取付けてもよい。要はハンマー16の打撃時の衝撃の伝わる箇所であればどこでもよい。例えば、開閉器4の函体4a側のハンマーの先端に打撃力センサS42aを設置してもよい。
また、ハンマー16は一回の打撃後、連打することになると誤差が生じる恐れがあるので、この場合、1回の打撃完了後にばね力の附勢を解除するばね力解除手段80を設けてもよい。ばね力解除手段80は、腕木17の後部にブリッジ体15を包囲して回動自在な回動筒80aを設け、腕木17の後部に、回動筒80aを介して一体的に回動片80bを取付け、この回動片80bの後端のU字部80cが、棒体11,12間に横架固定して、中央側が上記U字部80cの凹部に係止する固定片80dを設け、ハンマー16の1回の打撃の衝撃でU字部80cが固定片80dよりはずれるようにして、ばね19の附勢力がハンマー16に伝わらないように解除可能に構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
図9(a),(b)に示すような点検装置1Bを用いてもよい。例えば、絶縁性の筒型のガイド59と、ガイド59の先端側部よりガイド59の延長方向に更に突出した腕部62と、ガイド59に収納され、かつガイド59に沿って移動可能な絶縁材より成る棒体61と、棒体61のガイド59内での移動を規制するロック手段65とを備える。ロック手段65は、ガイド59の後部手元側に形成された貫通孔66と、一端がこの貫通孔66に貫入するロッド67と、ロッド67を軸支して、揺動可能に支点72で支持される作動片82と、支持部68と、棒体61を先端方向に押出すコイルばね69と、棒体61を保持し、かつ、ロッド67の先端に係止してロック手段を構成する支持板部70とを備える。支持板部70はガイド59の内径よりも若干小さな径に設定され、上、下動自在となっている。コイルばね69は、ガイド59の底板59aの上端面と棒体61の支持板部70の他端面との間に介在される。支持部68はガイド59の後部手元側の外周面から外側に突出するように設置される。支持部68はロッド67を貫通孔66に挿入する方向に押圧する第2のばね73を備える。上記ロッド67、支持部68、支点72、作動片82等によりロック解除手段83が構成される。これにより、ロック解除手段83の作動片82の揺動操作で、ロッド67がガイド59内部の支持板部70の上に係止してロックした状態と、ガイド内部の支持板部70のロックを開放した状態(ロック解除)とに可変できる。すなわち、地上から柱上の開閉器4の函体4aの底面にガイド59を向けて垂直方向に立て、腕部62の先端を開閉器4の函体4aの底面に接触させて、ロック手段65のロッド67を貫通孔66から抜く方向にロック解除手段83の作動片82を操作して支持板部70のロックを開放させる。これにより、コイルばね69が縮んだ状態から伸びる状態に変化することにより、ガイド内部に設置された棒体61がガイド59に沿って開閉器4に衝突して柱上の開閉器4に打撃を与える。棒体61に設置された打撃力センサS42aがこの衝突の打撃力を検出し主回路43に出力する。腕部に設置された振動速度センサS42bが函体の振動を検出し主回路43に出力する。主回路43の周波数解析回路48で振動周波数が分析される。水溜りが有れば発光部44が赤に点灯され、無ければ青に点灯される。
なお、記憶手段46に記憶される1次,2次固有振動数50a,50bのデータは、あらかじめ、開閉器4の種別(大きさ,型,形状等)に応じて複数種類のものが記憶されるものとし、実際の点検時にこの開閉器4の種別に対応するデータを選択して周波数解析回路48に供給され比較されるものとする。
【符号の説明】
【0019】
1 絶縁棒、4 開閉器(密閉型給配電設備)、4a 函体、16 ハンマー、
44 発光部(アラーム手段)、48 周波数解析回路、
50,60 インピーダンスレベルの周波数特性、
S42a 打撃力センサ、S42b 振動速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁棒の先端側に取付けられた加振装置で、密閉型給配電設備の函体を外側から打撃可能に構成し、上記加振装置を打撃前の位置でロックするロック手段と、このロック手段を解除するロック解除手段と、センサ部とを備え、上記センサ部で上記加振装置の打撃力と函体振動速度とを検知して、この検知結果から固有振動数を得て、基準値と比較し上記密閉型給配電設備の函体中の水溜まりを検出する解析回路と、この解析回路の出力によりアラームを出力するアラーム手段とを備えたことを特徴とする密閉型給配電設備の点検装置。
【請求項2】
センサ部は加振装置側に取付けられた打撃力センサと、函体の振動速度を検知する振動速度センサとより成ることを特徴とする請求項1に記載の密閉型給配電設備の点検装置。
【請求項3】
上記加振装置は、上記函体の底面に打撃力を加えるように構成され、上記ロック解除手段は、絶縁棒の密閉型給配電設備の函体底面方向への下側からの押圧動作又は回動動作でロック手段を解除することを特徴とする請求項1に記載の密閉型給配電設備の点検装置。
【請求項4】
ロック解除手段は、絶縁棒の後端側に備えた無線機の無線信号又は赤外線発生器の赤外線信号でロック手段を解除することを特徴とする請求項1に記載の密閉型給配電設備の点検装置。
【請求項5】
ロック解除手段は、絶縁棒の後部手元側に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項3又は請求項4に記載の密閉型給配電設備の点検装置。
【請求項6】
解析回路はインピーダンスレベルの周波数特性の変化を得て、このインピーダンスレベルの周波数特性の変化より少なくとも1次固有振動数を抽出するものであって、かつ、この1次固有振動数が基準値より所定値にシフトするか否かを判定して水溜りを検出するものであることを特徴とする請求項1に記載の密閉型給配電設備の点検装置。
【請求項7】
インピーダンスレベルの周波数特性の変化を、50Hz〜500Hzの周波数範囲で得るようにしたことを特徴とする請求項6に記載の密閉型給配電設備の点検装置。
【請求項8】
基準値は、密閉型給配電設備の函体の種別に応じてあらかじめ記憶手段に記憶されて、点検毎にいずれかの基準値が読出されて比較対象として解析回路に供給されることを特徴とする請求項6に記載の密閉型給配電設備の点検装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−236950(P2010−236950A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83603(P2009−83603)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】