説明

寸法安定性不織布繊維ウェブ、並びにこれらの製造及び使用方法

寸法安定性不織布繊維ウェブは、1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、ウェブの0重量%超で、10重量%以下の量のポリプロピレンと、から形成される複数の連続繊維を含む。このウェブは、繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに10%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する。分子配向を呈する実質的に連続な繊維を製造するために、スパンボンドプロセスを使用してもよい。分子配向を呈さない不連続繊維を製造するために、メルトブローンプロセスを使用してもよい。このウェブは、濾過、音吸収、断熱、表面洗浄、細胞成長支援、薬物送達、個人用衛生、医療用衣類、又は創傷包帯のための物品として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年12月17日に出願された米国特許仮出願第61/287,698号の利益を主張し、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
(発明の分野)
本開示は寸法安定性不織布繊維ウェブ、並びに、かかるウェブの製造及び使用方法に関する。本開示は、使い捨て医療物品並びに生分解性及び生体適合性物品などの物品を製造するのに有用な熱可塑性高分子添加剤と脂肪族ポリエステルのブレンドを含む寸法安定性不織布繊維ウェブに更に関する。
【背景技術】
【0003】
溶融紡糸(又はスパンボンド加工)は、ダイの小さな開口部から溶融したポリマーを押し出すことによって繊維を形成し、そのスパンフィラメントを均一な無作為状態でベルト上に集め、その繊維を結合させて凝集性ウェブを形成する、プロセスである。メルトブロー(すなわちMB)は、加熱された高速のガスジェットに囲まれた小さな開口部から溶融したポリマーを押し出すことによって繊維を形成し、その吹き出されたフィラメントを凝集ウェブとして集めるプロセスである。このプロセスは吹込マイクロファイバー(又はBMF)プロセスとも呼ばれる。
【0004】
ポリ(エチレン)テレフタレート(PET)などのポリエステル、及びポリ(プロピレン)(PP)などのポリオレフィンは、BMF及びスパンボンドなどのプロセスにより、布地繊維、パッケージングフィルム、飲料用ボトル、及び射出成形物品の商業用生産において、一般的に使用される2つの石油系ポリマーである。これらの石油系製品を再生可能な資源に基づく製品に置き換えたいという望みが市場に存在する。ポリ乳酸及びポリヒドロキシブチレートなどの脂肪族ポリエステルは再生可能な(植物又は微生物系)原料から誘導されるが、これらのポリマーは典型的には不織布製造での使用に不適である。脂肪族ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、PLA)に完全に基づいて市販のスパンボンド又はメルトブローン製品は、存在が一般に知られていない。例えば、ポリ乳酸(PLA)などの脂肪族ポリエステル、並びに、このような繊維を含むウェブは、高温に曝されると、元の長さの最大40%縮むことがあり、これは、配向された分子のアモルファス部分が、熱に曝されることにより、弛緩するためである(Narayanan,V.;Bhat,G.S.及びL.C.Wadsworth.TAPPI Proceedings:Nonwovens Conference & Trade Fair.(1998)29〜36を参照されたい)。
【0005】
記載のように、例えば、PET及びPPなどの石油系ポリマーを、資源再生可能なポリマー、すなわち、植物系材料に由来するポリマーに置き換えることへの関心も高まっている。理想的な資源再生可能なポリマーは「二酸化炭素ニュートラル」であり、植物系材料を生成するときに消費される二酸化炭素の量は、製品が製造され、廃棄されるときに排出されるのと同じ量である、ということを意味する。生分解性物質は、堆肥化を導く条件に曝されたとき、分解されるのに適切な特性を有する。生分解性であると考えられる物質の例としては、PLA、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ラクチドとグリコリドとのコポリマー、ポリ(コハク酸エチレン)、ポリヒドロキシブチレート及びこれらの組み合わせなどの脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0006】
しかしながら、多くの場合、BMFについてのポリ(乳酸)などの脂肪族ポリエステルの使用においては、困難に遭遇することになるが、これは、ポリプロピレンができるのと同じ繊維直径で、不織布ウェブを生じる比較的高い溶融粘度を有する脂肪族ポリエステル熱可塑性物質が一般に製造できないことに起因する。ポリエステルウェブのより粗い繊維直径は、繊維直径によって最終製品の特性が制御されるため、それらの用途を制限する場合がある。例えば、粗い(course)繊維は著しく硬く、皮膚と接触する用途には魅力が小さいものとなる。更に、粗い(course)繊維は、より低いバリア特性を有する(例えば、水性流体に対して撥水性の低い)ウェブにつながる場合がある、より高い多孔率を備えるウェブを製造する。
【0007】
マイクロファイバーとしての脂肪族ポリエステルの加工は、米国特許第6,645,618号(Hobbsら)に記載されている。米国特許第6,111,160号(Gruberら)は、メルトブローン及びスパンボンドプロセスを介しての溶融安定ポリラクチドの使用を開示している。日本特許第64−66943(A)号(Shigemitsuら)は、低収縮性ポリエステル系及びその製造を記載している。米国特許出願公開第2008/0160861号(Berriganら)は、ポリエチレンテレフタレート及びポリ乳酸のメルトブローン繊維を押し出すことと、そのメルトブローン繊維を最初の不織布繊維ウェブとして集めることと、その最初の不織布繊維ウェブを、制御された加熱及び冷却操作によって焼きなますこととを含む、結合した不織布繊維ウェブの製造方法を記述している。米国特許第5,364,694号(Okadaら)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)系メルトブローン不織布及びその製造を記述している。米国特許第5,753,736号(Bhatら)は、核生成剤、強化材及びこれらの組み合わせの使用により、縮みを低減したポリエチレンテレフタレート繊維の製造を記述している。米国特許第5,585,056及び同第6,005,019号は、吸収性ポリマー繊維、並びにステアリン酸及びその塩を含有する可塑剤を含む外科用物品を記載している。米国特許第6,515,054号は、生分解性樹脂、充填剤及びアニオン性界面活性剤を含む生分解性樹脂組成物を記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、ここで開示される発明は、寸法安定性不織布繊維ウェブ、並びに、このようなウェブの製造及び使用方法に関する。一態様では、本開示は、1つ以上の熱可塑性脂肪族ポリエステルと、ウェブの重量の0重量%超で、10重量%以下の量の熱可塑性非収縮添加剤と、を含む複数の連続繊維を含むウェブに関連し、この繊維は、分子配向を呈し、ウェブ全体で実質的にエンドレスに延在し、更に、ウェブは、繊維のガラス転移温度を超えるが繊維の融点よりは低い温度まで加熱されたときに12%以下で減少する少なく、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する。一部の代表的な実施形態では、繊維の分子配向は、少なくとも0.01の複屈折値をもたらす。ほとんどの実施形態では、この繊維はマイクロファイバーであり、特に微細繊維である。
【0009】
熱可塑性ポリエステルは、少なくとも1つの脂肪族ポリエステルを含む。特定の代表的な実施形態では、この脂肪族ポリマーは、1つ以上のポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、これらの配合物、及びこれらのコポリマーから選択される。特定の代表的な実施形態では、この脂肪族ポリエステルは半結晶質である。
【0010】
別の態様では、本開示は、脂肪族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、ウェブの重量0重量%超で、10重量%以下の量の熱可塑性非収縮添加剤とを、含む、複数の繊維を含むウェブに関連し、この繊維は分子配向を呈さず、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超えるが繊維の融点よりは低い温度まで加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する。特定の代表的な実施形態では、この熱可塑性ポリエステルは、1つ以上のポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、これらの配合物、及びこれらのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの脂肪族ポリエステルを含む。
【0011】
特定の代表的な実施形態では、この脂肪族ポリエステルは半結晶質である。特定の実施形態では、熱可塑性非収縮添加剤は、ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(メチルペンテン)、ポリ(エチレン−クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカプロラクトンなどの半結晶質脂肪族ポリエステル、ナイロン6及びナイロン66などの脂肪族ポリアミド並びにサーモトロピック液晶ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性半結晶質ポリマーを含む。特に好ましい熱可塑性非収縮ポリマーとしては、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン66、ポリカプロラクトン及びポリエチレンオキシドが挙げられる。ほとんどの実施形態では、この繊維はマイクロファイバーであり、特に微細繊維である。
【0012】
本開示の前述の態様の両方に関する追加の代表的な実施形態では、複数の繊維は、熱可塑性ポリエステルとは異なる熱可塑性(コ)ポリマーを含み得る。更なる代表的な実施形態では、この繊維は、可塑剤、希釈剤、界面活性剤、粘度調整剤、抗微生物性成分、又はこれらの組み合わせのうち少なくとも1つを含み得る。一部の特定の代表的実施形態では、繊維は、約25μm以下、より好ましくは12μm以下、更に好ましくは10μm以下のメジアン繊維径を呈する。これら実施形態の特定のものにおいては、この繊維は、少なくとも1μmのメジアン繊維径を呈する。追加の代表的な実施形態では、ウェブは生体適合性である。
【0013】
好ましい実施形態では、形成される繊維ウェブは、引張り強度などの機械的特性に悪影響を及ぼす可能性がある充填材料を10%未満、好ましくは8重量%未満、最も好ましくは6重量%未満含む。
【0014】
一部の実施形態では、熱可塑性繊維が結合されて寸法安定性多孔質ウェブを形成する複数の繊維のウェブが製造される。これらの実施形態では、繊維は、好ましくは、形成後、例えば、加熱カレンダー(圧力ニップ)ロールによる又は加熱された空気などの熱気体を用いる二次熱プロセスにおいて少なくとも部分的に冷却された後、結合される。
【0015】
更なる実施形態では、寸法安定性繊維不織布ウェブは、PLAなどの脂肪族ポリエステルの粘度を低減するための粘度調整剤の使用により形成されてもよい。特定の代表的実施形態では、粘度調整剤は、アルキルカルボキシレート及びカルボン酸、アルケニルカルボキシレート及びカルボン酸、アラルキルカルボキシレート及びカルボン酸、アルキルエトキシル化カルボキシレート及びカルボン酸、アラルキルエトキシレート化カルボキシレート及びカルボン酸、アルキルラクチレート、アルケニルラクチレート、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0016】
一部の代表的な実施形態では、このウェブは、熱可塑性ポリエステル及び非収縮熱可塑性高分子添加剤の溶融混合物から形成された、寸法安定性不織布繊維ウェブである。更なる代表的な実施形態では、この寸法安定性不織布繊維ウェブは、スパンボンドウェブ、吹込マイクロファイバーウェブ、水流交絡ウェブ(スパンレースされたウェブ)又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
更なる態様では、本開示は、脂肪族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、混合物の重量に対して0重量%超で、10重量%以下の量の非収縮添加剤との混合物を形成する工程と、この混合物から複数の繊維を形成する工程と、この繊維の少なくとも一部を回収してウェブを形成する工程と、を含む、寸法安定性不織布繊維ウェブの製造方法に関連し、この繊維は分子配向を呈し、ウェブ全体で実質的にエンドレスに延在し、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超えるが繊維の融点よりも低い温度まで加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する。一部の実施形態では、この繊維は、溶融紡糸、フィラメント押出成形、電界紡糸、ガスジェット繊維形成、又はこれらの組み合わせを使用して形成され得る。
【0018】
更なる別の態様では、本開示は、1つ以上の熱可塑性脂肪族ポリエステルと、混合物の重量に対して0重量%超、10重量%以下の量の非収縮脂肪族添加剤との混合物を形成する工程と、この混合物から複数の繊維を形成する工程と、この繊維の少なくとも一部を回収してウェブを形成する工程と、を含む、寸法安定性不織布繊維ウェブの製造方法に関連し、この繊維は分子配向を呈さず、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超えるが繊維の融点よりは低い温度まで加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する。一部の代表的な実施形態では、繊維はメルトブロー(例えばBMF)プロセスを使用して形成され得る。
【0019】
一部の代表的な実施形態では、この方法は更に、例えばウェブの加熱又は冷却を制御することによる、寸法安定性不織布繊維ウェブの後加熱を含み得る。
【0020】
更なる一態様では、本開示は、上述の寸法安定性不織布繊維ウェブを含む物品に関し、この物品は、気体濾過物品、液体濾過物品、音吸収物品、断熱物品、表面洗浄物品、細胞成長支持物品、薬物送達物品、個人用衛生物品、創傷包帯物品及び歯科衛生物品から選択される。特定の代表的実施形態では、この物品は、外科用ドレープであり得る。他の代表的実施形態では、この物品は、外科用ガウンであり得る。他の代表的な実施形態において、この物品は殺菌ラップである。更なる代表的な実施形態において、この物品は創傷接触材料である。多くの場合、これらは、使い捨て、再利用可能、生分解性及び/又はコンポスト化可能である。
【0021】
本開示による寸法安定性不織布繊維ウェブの代表的実施形態は、様々な用途での使用を可能にする構造的特徴を有し、非常に優れた吸収特性を有し、低ソリディティによる高い気孔率及び透過性を示し、及び/又はコスト面で効率的な方法で製造し得る。形成される繊維の直径が小さいため、ウェブはポリオレフィンウェブに似た柔らかな感触を有し得るが、多くの場合、使用されるポリエステルの高弾性率により、優れた引張り強度を呈する。
【0022】
例えば芯鞘型構造又は並列構造などの二成分繊維を調製することができ、これはサブマイクロサブマイクロメートル繊維を含む、二成分マイクロファイバーであり得る。しかしながら、本開示の代表的な実施形態は特に、単一成分繊維で有用かつ有利であり得る。他の利益のなかでも、単一成分繊維が使用可能であることにより、製造の複雑さが緩和され、ウェブ使用に対する制限がより少なくなる。
【0023】
本開示による、寸法安定性不織布繊維ウェブを製造する代表的な方法は、より高い製造速度、より高い製造効率、より低い製造コスト、及び同様の観点により、有利であり得る。
【0024】
以上が本発明の代表的実施形態の様々な様態及び効果の要約である。上記の概要は、本発明の図解された各実施形態、又は本発明のあらゆる実施を記載するものではない。以下の「発明を実施するための形態」及び「実施例」により、本明細書に開示される原理を利用した特定の現在好ましい実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】対照としてのPLA繊維単独の透過型電子顕微鏡検査による画像。
【図2】5重量%のTotal 3860ポリプロピレンのみと組み合わせたPLA繊維の透過型電子顕微鏡検査による画像。
【図3】5重量%のKraton D1117Pと組み合わせたPLA繊維の透過型電子顕微鏡検査による画像。
【図4】5重量%のNylon B24と組み合わせたPLA繊維の透過型電子顕微鏡検査による画像。
【図5】実施例7に従って製造されたスパンボンド不織布についての前後方向の正規化された引張荷重を示すグラフ。
【図6】実施例7に従って製造されたスパンボンド不織布についての機械方向の正規化された引張荷重を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は全般に寸法安定性不織布繊維ウェブ又は布地に関する。このウェブには、押し出し成形可能であるように好ましい融解プロセスが可能なコポリマー混合物から形成された複数の繊維が含まれる。寸法安定性不織布繊維ウェブは、押し出しの前又は押し出しの最中に、脂肪族ポリエステルを、ウェブの重量に対して0重量%超、10重量%以下の量の非収縮添加剤と混合することによって調製され得る。結果として得られるウェブは、ウェブが繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する。特定の実施形態では、繊維は分子配向を呈し得る。非収縮添加剤は、好ましくは熱可塑性ポリマーである。
【0027】
ウェブの平面内とは、ウェブのX−Y平面を指し、またこれはウェブの機械方向及び/又は横断方向としても参照され得る。よって、本明細書において記述される繊維及びウェブは、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法方向、例えば機械方向又は横断方向を有し、この寸法は、ウェブがその繊維のガラス転移温度を超えて加熱されたときに12%以下で減少する。
【0028】
本明細書に記載の繊維ウェブ又は布地は、ウェブが拘束無し(すなわち、自由に動くことが可能)で繊維のガラス転移温度を超える温度に加熱されたときに寸法安定性である。このウェブは、芳香族及び/又は脂肪族ポリエステル繊維のガラス転移温度を15℃、20℃、30℃、45℃及び更には55℃上回って加熱されてよく、このウェブは寸法安定性を維持する、例えば12%以下で減少する、ウェブ平面内の少なくとも1つの寸法方向を有する。ウェブは、好ましくは、繊維を融解させる温度まで加熱されないが、それはこれによって、分子量の喪失又は変色などの特性によって示されるような、明らかな劣化が繊維に生じるからである。
【0029】
理論に束縛されるものではないが、非収縮添加剤はフィラメントのコア全体にわたって無作為に分布した分散を形成すると考えられる。分散寸法がフィラメント全体にわたって様々であり得ることが認識されている。例えば、分散相粒子の寸法は繊維の外面ではより小さくてもよく、ここで、剪断速度は、押出中はより高く、繊維のコア付近ではより低い。非収縮添加剤は、ポリエステル連続相内に分散を形成することにより、収縮を防止又は低減し得る。分散した非収縮添加剤は、球、楕円、桿状体、円柱及び多くの他の形状などの様々な分離形状を取り得る。
【0030】
繊維の交差部分が長手方向軸に垂直に取られる場合、分散した相は、多くの場合、円又は楕円形状として現れる。分散した相内の分離粒子はそれぞれ、「平均直径」を有するものとして特徴付けることができ、「平均直径」は非球体粒子に対しては等しい面積の円の直径として取ることができる。本発明者らは、最良に働くポリマーが、250nm、好ましくは200nm未満、より好ましくは150nm未満、最も好ましくは100nm未満の平均直径を有する分散した相を形成することを見出した。
【0031】
一部の場合では、非収縮添加剤は、選択的に混和性の添加剤として作用すると考えられる。理論に束縛されるものではないが、低重量パーセントの脂肪族ポリエステル及び高押出成形温度において、非収縮添加剤は、脂肪族エステルと混合し、物理的に鎖状運動を抑止し、これにより冷結晶化を抑制し、巨視的収縮が観察されないと考えられる。非収縮添加剤が脂肪族ポリエステルの結晶化を促進することも可能である。例えば、好ましい熱可塑性非収縮添加剤は、少なくとも半結晶質であり、液体であり、押出成形温度で流体として分散する。これらの分散した粒子は、ポリ乳酸(PLA)などの半結晶質脂肪族ポリエステルの結晶化を誘導し得る。例えば、ほとんどの実施形態では、非収縮添加剤の重量パーセントが10重量パーセントを超えて有意に増加した場合、熱可塑性非収縮添加剤と脂肪族ポリエステルの相は大きな相領域に分離し、一方で、脂肪族ポリエステルの再配置は影響されない。
【0032】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「化合物(a compound)」を含有する微細繊維への言及は、2種以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、その内容に別段の明確な指示がない限り、「又は」という用語は概して、「及び/又は」を含めた意味で用いられている。
【0033】
本明細書で使用するとき、端点による数範囲の詳細説明は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4及び5を含む)。
【0034】
特に指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用されている量又は成分、及び性質の測定値などを表わす全ての数は、全ての例において、用語「約」により修飾されていることを理解されたい。したがって、特に指示がない限り、先行の本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値的パラメータは、本発明の教示を利用して当業者が得ようとする所望の性質に応じて変化する場合がある近似値である。最低でも、特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、少なくとも各数値的パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、通常の四捨五入の適用によって解釈されなければならない。
【0035】
以下の定義された用語に関して、別の定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において示されない限り、これらの定義が適用される。
【0036】
用語
「二成分繊維」又は「多成分繊維」という用語は、2つ又はそれ以上の構成成分を備え、それぞれの構成成分がファイバー断面積の一部を占め、繊維の実質的な長さにわたって延在するような繊維を意味する。好適な多成分繊維構造は、芯鞘型構造、並列構造、海島型構造(例えば株式会社クラレ(日本、岡山県)が製造する繊維)を含むが、これらに限定されない。
【0037】
「単一成分繊維」という用語は、断面にわたって本質的に同じ組成物を有するが、単一成分には、実質的に均一な組成物の連続相が断面にわたって及び繊維の長さを超えて延びている配合物又は添加剤含有材料を含むような繊維を意味する。
【0038】
「非収縮」添加剤という用語は、熱可塑性高分子添加剤を指し、脂肪族ポリエステルの10重量%以下で脂肪族ポリエステルに添加すると、不織布ウェブを形成し、その結果、ウェブが繊維のガラス転移温度を超えるが繊維の融点よりは低い温度まで加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有するウェブを生じる。好ましい非収縮添加剤は、23〜25℃に冷却されたときに脂肪族ポリエステル中に分離粒子の分散した相を形成する。最も好ましい非収縮添加剤は、示差走査熱量測定法により測定されるような半結晶質ポリマーである。
【0039】
「生分解性」という用語は、細菌、真菌及び藻などの天然微生物の作用並びに/又は加水分解、エステル交換、紫外線若しくは可視光線(光分解性)及び酵素機構への曝露などの天然環境因子又はこれらの組み合わせにより分解可能であることを意味する。
【0040】
「生体適合性」という用語は、生体組織内で、毒性、有害性又は免疫応答を発生させないことにより、生物学的に適合性があることを意味する。生体適合性物質はまた、生化学的及び/又は加水分解プロセスにより分解し、生体組織に吸収され得る。用いる試験方法としては、微細繊維を、皮膚、創傷、並びに、食道又は尿道のような開口部に含まれる粘膜組織などの組織と接触させる用途のためのASTM F719及び微細繊維を組織内に注入する用途のためのASTM F763が挙げられる。
【0041】
「メジアン繊維径」という用語は、例えば走査電子顕微鏡を用いることにより、繊維構造の画像を1つ以上生成することと、1つ以上の画像において明確に視認できる繊維の繊維直径を測定して繊維径の合計数、xを結果的に得ることと、そのxの繊維直径のメジアン繊維径を算出することによって定められる繊維径を意味する。典型的にxは約20を超え、より好ましくは約50を超え、望ましくは約50〜約200の範囲である。
【0042】
「微細繊維」という用語は全般的に、メジアン繊維径が約50マイクロメートル(μm)以下、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、いっそう好ましくは15μm以下、更にいっそう好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm以下である繊維を指す。
【0043】
「マイクロファイバー」とは、メジアン繊維径が1μm以上100μm以下である繊維集団である。
【0044】
「極細マイクロファイバー」とは、メジアン繊維径が2μm以下である繊維集団である。
【0045】
「サブマイクロメートル繊維」とは、メジアン繊維径が1μm以下である繊維集団である。
【0046】
本明細書中で特定の種類のマイクロ繊維のバッチ、群、アレイといった表現を用いる場合(例、サブミクロン繊維のアレイ)、そのアレイにおけるマイクロ繊維の完全な集合か、又は単一のバッチのマイクロ繊維の完全な集合を意味し、そのアレイ又はバッチのサブミクロン径の部分のみを意味するものではない。
【0047】
本明細書中の「配向された連続マイクロ繊維」とは、ダイから出て、処理ステーションを通り、そこで繊維が引き延ばされ、繊維内の分子の少なくとも一部が繊維の長手方向軸に対して整列するように配向される本質的に連続な繊維のことを指す(繊維に関して使用される「配向された」とは、繊維の分子の少なくとも一部が繊維の長手方向軸に沿って整列していることを意味する)。
【0048】
本明細書中の「メルトブローン繊維」とは、溶融した繊維形成材料をダイの開口部から高速気流の中に押し出すことによって調製された繊維を指し、押し出された材料はまず細径化されてから繊維塊として固結する。
【0049】
「別々に調製されるサブマイクロメートル繊維」とは、サブマイクロメートル繊維形成装置(例えばダイ)から生成されたサブマイクロメートル繊維流を意味し、このサブマイクロメートル繊維形成装置は、サブマイクロメートル繊維流が、より寸法の大きいマイクロファイバーの流れから最初は空間的に(例えば約1インチ(25mm)以上の距離で)離間しているが、飛翔中に合流しその中に分散するように、配置される。
【0050】
「不織布」という用語は、一般に、(1)機械的かみ合わせにより、(2)熱可塑性繊維の融合により、(3)天然若しくは合成高分子樹脂などの好適な結合剤での接合により、又は(4)これらの任意の組み合わせにより、一緒に保持された(一方向又はランダム様式にて配向された)高分子繊維の集合体からなる布地を指す。
【0051】
「自己結合」とは、点結合又はカレンダー加工におけるように直接接触で加圧することなしにオーブン中又は通気結合機を用いて得られるような高温での繊維間結合、と定義される。
【0052】
「分子的に同一の」分子は、本質的に同一の繰り返し分子単位を有するが、分子量、製造方法、商業形態、結晶化度又は分子配向などが異なり得るポリマーを指す。
【0053】
ウェブの記述において「自己支持」又は「自立型」は、そのウェブが、例えば支持層又は他の支持支援なしにそれ自体で保持、取扱い及び加工ができることを意味する。
【0054】
「ソリディティ」とは、密度に反比例する不織布ウェブの特性であり、ウェブの透過性及び気孔率を示し(低ソリディティは高透過率及び高気孔率に相当し)、次の式で定義される。
【0055】
【数1】

【0056】
「ウェブ坪量」は、10cm×10cmのウェブ試料を元に計算される。
【0057】
「ウェブ厚さ」は、150Paの印加圧力における5cm×12.5cmの寸法の試験器フット部を有する厚さ試験ゲージを用いて、10cm×10cmのウェブ試料で測定される。
【0058】
「かさ比重」は、文献から採用される、ウェブが作られるポリマー又はポリマー配合物のかさ比重である。
【0059】
本明細書で使用するとき、「ウェブ」は、シート状又は布地状構造を形成する絡み合った繊維の網状組織である。
【0060】
ここで本開示の様々な実施形態が記述される。本発明の代表的実施形態は、開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正や変更が可能である。したがって、本発明の実施形態は以下に説明する代表的実施形態に限定されるべきではなく、請求項及びそのいずれかの均等物に規定される限定によって制限されるべきであると理解されるべきである。
【0061】
本明細書全体において、「一実施形態」「特定の実施形態」「1つ以上の実施形態」又は「ある実施形態」というときは、「実施形態」という用語の前に「代表的」という用語を含むか否かにかかわらず、実施形態に関して説明される具体的な特徴、構造、材料、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の随所における「1つ以上の実施形態では」「特定の実施形態では」「一実施形態では」又は「ある実施形態では」といった表現があっても、必ずしも本発明の同一の実施形態を指すわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、任意の好適な方法で1つ以上の実施形態に組み合わされてもよい。
【0062】
A.寸法安定性不織布繊維ウェブ
一部の実施形態では、寸法安定性不織布ウェブは、熱可塑性脂肪族ポリエステルと非収縮添加剤の溶融混合物から形成され得る。特定の実施形態では、寸法安定性不織布ウェブは、スパンボンドウェブ、ブローンマイクロファイバーウェブ、水流絡合ウェブ又はこれらの組み合わせ、並びに、これらのウェブの事後処理形態、並びに、発泡体、フィルム、接着剤及びこれらに類するものとの組み合わせ及び積層体であり得る。
【0063】
1.分子配向された繊維
特定の実施形態では、寸法安定性不織布繊維ウェブは、繊維形成材料のフィラメントが、1つ以上の熱可塑性脂肪族ポリエステルと、混合物の重量に対して0重量%超で、10重量%以下の量の非収縮脂肪族添加剤との混合物を押し出すことによって形成され、これに配向力をかけた後、押し出されたフィラメントの少なくとも一部が柔らかい状態になっている間にガス流の乱流領域を通過し、この乱流領域にある間に凝固点(例えばフィラメントの繊維形成材料が固化する温度)に達するような、繊維形成プロセスによって調製され得る。そのような繊維形成プロセスとしては、例えば、溶融紡糸(すなわちスパンボンド)、フィラメント押出成形、電界紡糸、ガスジェット繊維形成、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0064】
得られるウェブは、ウェブが、無抑制条件で、繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する。繊維のガラス転移温度は、当該技術分野において既知であるように、例えば示差走査熱量測定(DSC)又は改変DSCを使用して、従来の技法で測定することができる。特定の代表的な実施形態では、この熱可塑性ポリエステルは、1つ以上のポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、これらの配合物、及びこれらのコポリマー又はこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。好ましくは、脂肪族ポリエステルは、再生可能な資源内容物の少なくとも50%から誘導される。好ましくは、脂肪族ポリエステルは、再生可能な資源内容物の少なくとも70%から誘導される。好ましくは、脂肪族ポリエステルは、半結晶質である。
【0065】
上述のように、繊維は好ましくは分子的に配向されている。すなわち、この繊維は好ましくは、繊維の長さ方向に整列し、その整列に固定されている(すなわち、熱によって封止されている)分子を含む。配向された繊維とは、繊維内に分子の配向がある繊維である。完全に配向された高分子繊維及び部分的に配向された高分子繊維は既知であり、市販のものが入手可能である。繊維の配向は、複屈折、熱収縮、X線散乱、及び弾性率を含む多くの方法で測定可能である(例えば、Principles of Polymer Processing(Zehev Tadmor及びCostas Gogos、John Wiley and Sons,New York,1979,pp.77〜84)を参照されたい)。注意すべき重要なことは、結晶質及び非晶質の材料の両方が結晶化度から独立して分子配向を呈することができるので、分子配向が結晶化度とは異なることである。したがって、メルトブローン又は電界紡糸によって作製された商業的に既知のサブミクロン繊維がたとえ配向されていなくとも、これらのプロセスを用いて作製された繊維に分子の配向を与える既知の方法がある。
【0066】
開示の代表的な実施形態によって調製された配向された繊維は、セグメントによって異なる複屈折率を示し得る。偏光顕微鏡を通して単繊維を観察し、ミシェル・レヴィ干渉色図表(「On−Line Determination of Density and Crystallinity During Melt Spinning」(Vishal Bansalら),Polymer Engineering and Science,November 1996,Vol.36,No.2,pp.2785〜2798を参照)を用いて遅延値2を見積もることにより、複屈折率は次の式:複屈折率=遅延値(nm)/1000D、で得られ、式中、Dはマイクロメートル単位の繊維直径である。複屈折率測定を受ける対象となる代表的な繊維には一般に、複屈折率が少なくとも5%、及び好ましくは少なくとも10%異なるセグメントが含まれる。一部の代表的な繊維は、20パーセント、又は50パーセントも屈折率が異なるセグメントを含み得る。一部の代表的な実施形態では、繊維の分子配向は、少なくとも0.00001、より好ましくは少なくとも約0.0001、更に好ましくは少なくとも約0.001、最も好ましくは少なくとも約0.01の複屈折率値をもたらす。
【0067】
異なる配向の繊維、又は異なる配向の繊維部分は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される特性において差を呈することがある。例えば、本開示に従って調製された代表的なウェブに対するDSC試験は、二つの融解ピークの存在による鎖延長結晶化の存在を明らかにし得る。鎖が延長された、又はひずみが誘発された、結晶質部分の融点は、より高い温度ピークが得られることがあるが、一方、鎖が延長されていない、又は整列度が低い、結晶質部分の融点は、一般により低い温度ピークになり得る。本明細書において「ピーク」という用語は、例えば鎖延長部分などの、繊維の特定の分子部分を融解する、といった単独プロセスに属する加熱曲線の一部を意味する。このピークは、1つのピークが別のピークを画定する曲線の肩を生じているが、これらは別個の分子分画の融点を表わすため、依然として別個のピークとして見なされる。
【0068】
特定の代表的な実施形態では、繊維の受動的(passive)長手方向セグメントは、典型的なスパンボンド繊維ウェブによって示される程度まで配向され得る。結晶質又は半結晶質ポリマーにおいて、そのようなセグメントは好ましくは、ひずみが誘発された、又は鎖延長された(すなわち、繊維内の分子鎖が、繊維軸に全体的に沿って配列されている結晶構造を有する)結晶化を呈する。全体として、ウェブはスパンボンドウェブで得られるもののような強度特性を呈することができ、同時に、典型的なスパンボンドウェブでは結合できないような方法で強く結合することが可能である。本発明の自己結合したウェブは、スパンボンドウェブで一般に使用されているポイント結合又はカレンダー加工では得られないようなかさばりと均一性をウェブ全体にわたって有することができる。
【0069】
理論に束縛されるものではないが、分子配向は、当該技術分野において既知であるような繊維減衰(fiber attenuation)の使用により改善されると考えられる(U.W.Gedde、Polymer Physics,1st Ed.Chapman & Hall,London,1995,298を参照)。これにより、減衰された繊維では結晶化度のパーセンテージ増大が観察され得る。クリスタリットは、鎖の動きや、堅い非晶質分画の再配列及び結晶化を阻害する、錨の働きをすることによりフィラメントを安定化し、結晶化度のパーセンテージが増大するほど、堅い非晶質及び非晶質分画は減少する。半結晶質の直鎖ポリマーは、結晶質及び非晶質相からなり、この両方の相が結合分子により接続されている。結合分子は両方の相に見られる。ひずみは接合面に蓄積され、特に非晶質相で明らかである。これは、半結晶質ポリマーにおいてガラス転移が高温側に広くなることが観察されることからわかる。強い結合の場合、影響を受けた分子セグメントは、堅い非晶質分画と呼ばれる非晶質相の別の中間相を生成する。この中間相は、結晶質相と非晶質相との間に長い境界面を形成し、完全な非晶質相よりも局所的エントロピーが低いことによって特徴付けられる。
【0070】
材料のガラス転移温度より高く融解温度よりも低い温度では、堅い非晶質分画は再配列及び結晶化し、低温結晶化が起こる。繊維中に存在する結晶質及び堅い非晶質材料のパーセンテージは、巨視的な収縮値を決定する。結晶質のパーセンテージは、錨又は結合ポイントとして作用することによりフィラメントを安定化させ、鎖の動きを阻害するよう作用し得る。
【0071】
更に、高温で寸法安定性を示すには、合計で少なくとも約20%以上の結晶化度が必要であると現在考えられている。この結晶化度レベルは、一般に、繊維形成プロセスの後、ウェブを熱的に焼きなますことによってのみ、純粋なポリエステル系中に得られる。好ましくは、脂肪族ポリエステルは、少なくとも30%の結晶化度、更により好ましくは少なくとも50%の結晶化度を示す。
【0072】
加えて、従来の溶融紡糸において、何らかのタイプの添加剤を加えない場合は、インラインで結晶化を誘発させるのに、0.08g/デニールの応力が一般に必要である。1g/ダイ孔/分の製造速度での典型的なスパンボンド操作においては、必要な糸ライン張力を生成するために、毎分紡糸速度6000mが一般に必要である。しかしながら多くのスパンボンド系では、毎分3,000〜5,000m(m/分)のフィラメント速度しか提供されない。
【0073】
よって、本開示の代表的な実施形態は、製造速度が高速のスパンボンドプロセスを用いた、分子配向された繊維を含む寸法安定性不織布繊維ウェブの形成に特に有用であり得る。例えば、本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、いくつかの実施形態では、少なくとも5,000m/分、より好ましくは少なくとも6,000m/分の速度でのスパンボンドプロセスを使用して調製され得る。
【0074】
2.分子配向されていない繊維
別の実施形態では、寸法安定性不織布繊維ウェブは、実質的に分子配向されていない繊維形成材料のフィラメントが、押出成形前又は押出成形中に、混合物の重量に対して0%重量を超で、10重量%以下の量の非収縮添加剤との、1つ以上の熱可塑性ポリエステル脂肪族ポリエステルの混合物から形成されるような、繊維形成プロセスにより調製され得る。好ましくは、非収縮添加剤は、脂肪族ポリエーテルの少なくとも0.5重量%の濃度、より好ましくは少なくとも1重量%の濃度で存在する。結果として得られるウェブは、ウェブが繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する。一部の代表的な実施形態では、繊維はメルトブロー(例えばBMF)プロセスを使用して形成され得る。
【0075】
3.繊維サイズ
寸法安定性不織布繊維ウェブを生成するのに使用される、上に参照した繊維形成プロセスの、いくつかの代表的な実施形態では、好ましい繊維構成要素は微細繊維である。特定の好ましい実施形態では、微細繊維構成要素は、1マイクロメートル(μm)以下のメジアン繊維径を有する繊維を含む、サブマイクロメートル繊維構成要素である。よって、特定の代表的な実施形態において、繊維は、メジアン径が約1マイクロメートル(μm)以下を呈する。いくつかの代表的な実施形態では、サブマイクロメートル繊維成分は約0.2μm〜約0.9μmの範囲のメジアン繊維径を有する繊維を含む。他の代表的な実施形態では、サブマイクロメートル繊維成分は約0.5μm〜約0.7μmの範囲のメジアン繊維径を有する繊維を含む。
【0076】
サブマイクロメータ繊維構成要素は、上述のポリマー又はコポリマー(すなわち、コポリマー)を含む単一成分繊維を含み得る。この代表的な実施形態では、単一成分繊維は、後述するように添加剤をも含み得る。あるいは、形成される繊維は、多成分繊維であり得る。
【0077】
他の代表的な実施形態では、本開示の不織布繊維ウェブは、例えばマイクロファイバー構成要素など、1つ以上の粗い繊維構成要素を、追加として又は代替として含み得る。一部の代表的な実施形態では、粗い繊維構成要素は、メジアン径が約50μm以下、より好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下、更により好ましくは12μm以下、更にいっそう好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm以下を呈し得る。
【0078】
他の代表的な実施形態では、好ましい粗い繊維構成要素は、メジアン繊維径が少なくとも1μm、より好ましくは少なくとも5μm、更により好ましくは少なくとも10μm、更に好ましくは少なくとも15μm、更にいっそう好ましくは少なくとも20μm、最も好ましくは少なくとも25μmである繊維を含むマイクロファイバー構成要素である。特定の代表的な実施形態では、マイクロファイバー構成要素は約1μm〜約100μmの範囲のメジアン繊維径を有する繊維を含む。他の代表的な実施形態では、マイクロ繊維成分は約5μm〜約50μmの範囲のメジアン繊維径を有する繊維を含む。
【0079】
4.層状構造
他の代表的実施形態では、サブマイクロメートル繊維集団を含む下層の上にマイクロファイバーの上層を含む寸法安定性不織布繊維ウェブを、支持層上に、単層不織布ウェブの主表面において少なくともサブマイクロメートル繊維の一部が支持層に接触するようにして、積層することにより、多層不織布ウェブが形成され得る。多層不織布繊維ウェブのそのような実施形態では、用語「積層」は、多層複合ウェブ内で少なくとも1層が別の層に重なる実施形態を説明するためのものであることが理解されよう。しかしながら、いずれの多層不織布繊維ウェブも、中央線を軸に180度反転させることにより、上層として説明されていたものが下層となり得るが、例示した実施形態へのそのような改変も本開示の範囲に入ることが、理解されよう更に、「層」への言及は、少なくとも1つの層を意味するとされ、それゆえ多層不織布繊維ウェブの例示されたそれぞれの実施形態は、本開示の範囲内で、1つ以上の追加的な層(図示せず)を含んでもよい。加えて、「層」への言及は、1つ以上の追加的な層(図示せず)を少なくとも部分的に覆う層を説明するものとする。
【0080】
本開示による寸法安定性不織布繊維ウェブの先に説明した代表的実施形態のいずれの場合も、ウェブはある坪量を呈するが、これはウェブの特定の最終用途に応じて変化させることができる。一般的に、寸法安定性不織布繊維ウェブの坪量は、1平方メートル当たり約1000グラム(gsm)以下である。一部の実施形態では、この不織布繊維ウェブは、約1.0gsm〜約500gsmの坪量を有する。別の実施形態では、寸法安定性不織布繊維ウェブは、約10gsm〜約300gsmの坪量を有する。外科用ドレープ、外科用ガウン及び殺菌ラップなどの医療用布地のような一部の用途での使用のために、坪量は、典型的には、約10gsm〜約100gsm、好ましくは15gsm〜約60gsmである。
【0081】
この不織布繊維ウェブは、坪量の場合と同じく、ウェブの具体的な最終用途に依存して変化し得る厚さを呈する。典型的に、寸法安定性不織布繊維ウェブは約300ミリメートル(mm)以下の厚さを有する。一部の実施形態では、寸法安定性不織布繊維ウェブは、約0.5mm〜約150mmの厚さを有する。他の実施形態では、寸法安定性不織布繊維ウェブは、約1.0mm〜約50mmの厚さを有する。外科用ドレープ、外科用ガウン及び殺菌ラップなどの医療用布地のような一部の用途での使用のために、厚さは、一般に、約0.1mm〜約10mm、好ましくは0.25mm〜約2.5mmである。
【0082】
5.オプションの支持層
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは更に、支持層を含み得る。支持層は、存在するとき、不織布繊維物品のほとんどの強度を提供することができる。一部の実施形態では、上述のサブマイクロメートル繊維構成要素は、強度が非常に低い傾向があり、通常の取り扱い中に損傷する可能性がある。サブマイクロメートル繊維成分を支持層に取り付けることは、サブマイクロメートル繊維成分に強度を与える一方、ソリディティを低く保持するので、サブマイクロメートル繊維成分に望まれる吸収特性を保持する。多層寸法安定性不織布繊維ウェブ構造はまた、ロール形状へのウェブの巻き取り、ロールからのウェブの取り出し、成型、ひだ付け、折りたたみ、ステープル処理、織り込み、及びその他を含み得るがこれらに限定されない、以降の処理に対する十分な強度をもたらし得る。
【0083】
本開示では様々な支持層類を利用してよい。適した支持層としては、これらに限定されないが、不織布、織布、ニット織物、発泡体層、フィルム、紙の層、裏面粘着層、箔、メッシュ、弾性のある布地(すなわち、弾性特性を有する前述の織布、ニット織物、若しくは不織布のうちいずれか)、有孔ウェブ、裏面粘着層、又はこれらの組み合わせが挙げられる。一つの代表的な実施形態では、支持層は高分子不織布を含む。適した不織布ポリマー布地としては、スパンボンド布地、メルトブローン布地、短繊維長の繊維(すなわち、約100mm以下の繊維長を有する繊維)のカードウェブ、ニードルパンチ布地、スピリットフィルムウェブ、水流交絡ウェブ、エアレイド短繊維ウェブ、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の代表的な実施形態では、支持層は、結合されたステープルファイバーのウェブを含む。更に後述するように、例えば熱結合、超音波結合、接着剤結合、粉末バインダ結合、水流交絡、ニードルパンチ、カレンダー加工、又はこれらの組み合わせを用いて結合を実施することができる。
【0084】
支持層は、不織布繊維物品の特定の最終用途に応じた坪量及び厚さを有することができる。本開示の一部の実施形態では、不織布繊維物品の全体の坪量及び/又は厚さは最小レベルで保持されるのが望ましい。別の実施形態では、全体の最小坪量及び/又は厚さが所定の用途において要求される場合がある。典型的には、支持層は、平方メートル当たり約150グラム(gsm)以下の坪量を有する。いくつかの実施形態では、支持層の坪量は約5.0gsm〜約100gsmである。別の実施形態では、支持層は約10gsm〜約75gsmの坪量を有する。より高強度支持層が可能である一部の実施形態では、支持層は、少なくとも1gsm、好ましくは少なくとも2gsm、更により好ましくは少なくとも5gsm、更により好ましくは少なくとも10gsmの坪量を有すべきである。好ましくは支持層は、50gsm未満、好ましくは25gsm未満、更により好ましくは20gsm未満、更により好ましくは15gsm未満の坪量を有する。
【0085】
坪量と同様に、支持層はある厚さを有してよく、この厚さは、不織繊維物品の特定の最終用途に応じて変化する。典型的には、支持層の厚さは約150ミリメートル(mm)以下である。一部の実施形態では、支持層の厚さは約1.0mm〜約35mmである。別の実施形態では、支持層の厚さは約2.0mm〜約25mmである。他の実施形態では、支持層の厚さは、0.1mm〜約10mm、好ましくは約0.25mm〜約2.5mm、更により好ましくは約0.25mm〜約1mmである。
【0086】
特定の代表的な実施形態では、支持層は、例えば、複数のマイクロ繊維であるマイクロ繊維成分を含む場合がある。このような実施形態では、上述のサブマイクロメートル繊維集団を直接マイクロファイバー支持層に堆積させて、多層寸法安定性不織布繊維ウェブを形成するのが望ましい場合がある。所望により、上述のマイクロファイバー集団をマイクロファイバー支持層上に、サブマイクロメートル繊維集団と共に又はこれの上に堆積してもよい。特定の代表的実施形態では、支持層を成す複数のマイクロファイバーが、上層を形成するマイクロファイバー集団と組成的に同一である。
【0087】
サブマイクロメートル繊維成分は、所与の支持層に恒久的に又は一時的に結合される場合がある。本開示のいくつかの実施形態では、サブマイクロメートル繊維成分は、支持層へ恒久的に結合される(すなわち、サブマイクロメートル繊維成分は支持層へ、それと恒久的に結合されることを意図して取り付けられる)。
【0088】
本開示のいくつかの実施形態では、上述のサブマイクロメートル繊維成分は、剥離ライナーのように支持層に暫定的に(すなわち支持層から取り外し可能に)結合される場合がある。そのような実施形態では、サブマイクロメートル繊維成分は、暫定支持層上に所望の長さの間、支持されてよく、また所望により暫定支持層上で更に加工された後、第二の支持層へ恒久的に結合されてもよい。
【0089】
本開示の代表的な実施形態では、支持層は、ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド布地を含む。本開示の更なる代表的な実施形態では、支持層は、ステープルファイバー長さのカードウェブを含み、この場合、ステープルファイバー長さの繊維は、(i)低融点繊維若しくはバインダ繊維と(ii)高融点繊維若しくは構造繊維とを含む。典型的には、バインダ繊維の融点と構造繊維の融点との差は10℃を超えるが、バインダ繊維の融点は、構造繊維の融点よりも少なくとも10℃高い。適したバインダ繊維としては、これらに限定されないが、前述の高分子繊維のうちのいずれかが挙げられる。適した構造繊維としては、これらに限定されないが、前述の高分子繊維のうちのいずれか、並びにセラミック繊維、ガラス繊維、及び金属繊維などの無機繊維、及びセルロース繊維などの有機繊維が挙げられる。
【0090】
上述のように、支持層は、1層以上を互いに組み合わせて含んでよい。代表的な一実施形態では、支持層は、不織布又はフィルムなどの第一層と、サブマイクロメートル繊維成分とは反対側の第一層上に接着剤層とを含む。この実施形態では、接着剤層は、第一層の外表面の一部又は全体を覆っていてよい。接着剤は、感圧性接着剤、熱活性化可能接着剤などの任意の既知の接着剤を含んでもよい。接着剤層が感圧性接着剤を含む場合、不織布繊維性物品は、感圧性接着剤の一時的保護を提供するために剥離ライナーを更に含む。好ましい感圧接着剤としては、アクリレート、シリコーン、ゴム系接着剤、ポリイソブチレン系接着剤、Kraton(商標)型ポリマー系のものなどのブロックコポリマー接着剤、ポリアルファオレフィン接着剤及びこれらに類するものが挙げられる。最も好ましい接着剤は、アクリレート及びシリコーン系感圧接着剤である。
【0091】
6.任意の追加層
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、サブマイクロメートル繊維構成要素、支持層、又はこの双方と組み合わせた追加層を含んでいてもよい。1層以上の追加層が、サブマイクロメートル繊維成分の外側表面の上又は下、支持層の外側表面の下、又はこれらの上下に存在してもよい。
【0092】
好適な追加層は、色含有層(例えば、印刷層)、上述の支持層のうちいずれか、別個のメジアン繊維径及び/又は物理的組成物を有する1つ以上の追加のサブマイクロメートル繊維構成要素、絶縁性能を向上させるための1つ以上の二次微細サブマイクロメートル繊維層(例えば、メルトブローンウェブ又はガラス繊維布)、発泡体、微粒子層、箔層、フィルム、装飾布層、膜(すなわち、透析膜、逆浸透性膜など、透過性を制御されたフィルム)、網、メッシュ、配線網状組織及び管状の網状組織(すなわち、電気伝達用のワイヤー層、若しくは、様々な流体搬送用の管/パイプ群、例えば、電気毛布用の配線網状組織、及び冷却毛布内を流れる冷却剤用の管状の網状組織、の層)、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0093】
7.任意の取り付け手段
特定の代表的な実施形態では、本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、不織布繊維物品を基材に取り付けることができるよう1つ以上の取り付け手段を更に備えていてもよい。上述のように、接着剤を使用して不織布繊維物品を取り付けることができる。接着剤に加えて、その他の取り付け手段を使用してもよい。好適な取り付け手段には、ネジ、釘、スナップ、クリップ、ステープル、ステッチ、ねじ切り、フック及びループ材料などの機械的なファスナーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
不織布繊維物品を各種の基材に取り付けるために、1つ以上の取り付け手段を使用することができる。代表的基材にはこれらに限定されないが、車両構成要素;車両内装(すなわち、乗客室、モーター室、トランク等);建物の壁(すなわち、内壁表面又は外壁表面);建物の天井(すなわち、内装天井表面又は外装天井表面);建物の壁又は天井を形成するための建築材料(例えば、天井タイル、木材、石膏ボード等);部屋仕切り;金属シート;ガラス基板;ドア、窓;機械構成要素;電気器具構成要素(すなわち、室内電気器具表面又は屋外電気器具表面);パイプ又はホースの表面;コンピューター又は電子構成要素;録音又は再生装置;電気器具、コンピューターなどのハウジング又はケース、が挙げられる。
【0095】
B.寸法安定性不織布繊維ウェブ構成要素
本開示による代表的な寸法安定性不織布繊維ウェブの様々な構成要素についてこれより説明する。一部の代表的な実施形態では、寸法安定性不織布繊維ウェブは1つ以上の熱可塑性脂肪族ポリエステルと、ウェブの重量に対して0重量%超、10重量%以下の量の非収縮添加剤と、を含む複数の連続繊維を含み得、この繊維は分子配向を呈し、ウェブ全体で実質的にエンドレスに延在し、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する。そのような寸法安定性不織布繊維ウェブは、特定の代表的な実施形態では、スパンボンド又は溶融紡糸プロセスを使用して製造され得る。
【0096】
他の代表的な実施形態では、寸法安定性不織布繊維ウェブは1つ以上の熱可塑性脂肪族ポリエステルと、ウェブの重量に対して0.5重量%超で、10重量%以下の量の非収縮添加剤と、を含む複数の連続繊維を含み得、この繊維は分子配向を呈さず、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する。そのような寸法安定性不織布繊維ウェブは、特定の代表的な実施形態では、スパンボンド、メルトブローン又はBMFプロセスを使用して製造され得る。
【0097】
1.熱可塑性ポリエステル
本開示の繊維ウェブは、繊維形成混合物中で主成分として使用される少なくとも1つの脂肪族ポリエステルを含む。本発明の実施形態実用化において有用な脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)のホモポリマー及びコポリマー、並びに、1つ以上のポリオールと1つ以上のポリカルボン酸との反応生成物から誘導されるこれらの脂肪族ポリエステルのホモ及びコポリマーが挙げられ、これは典型的には、1つ以上のアルカンジオールと1つ以上のアルカンジカルボン酸(又はアシル誘導体)との反応生成物から形成される。ポリエステルは、更に、分岐鎖、星型及びグラフトホモ及びコポリマーを形成するために、多官能性ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、及びこれらの組み合わせから誘導してもよい。脂肪族ポリエステルと1つ以上の追加の半結晶質又は非晶質ポリマーとの混和性及び不混和性配合物を使用してもよい。
【0098】
代表的な脂肪族ポリエステルは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリカプロラクトン、これらの配合物、及びこれらのコポリマーである。脂肪族ポリエステルの1つの特に有用な部類は、ヒドロキシ酸の縮合又は開環重合により誘導されるポリ(ヒドロキシアルカノエート)又はその誘導体である。好適なポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、下式:
H(O−R−C(O)−)OH
により表わすことができ、式中、Rは、所望により非カテナリー(炭素鎖内で炭素原子に結合している)酸素原子に置換されている、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖であってよいアルキレン部分であり、nはエステルがポリマーであるような数であり、好ましくは、脂肪族ポリエステルの分子量が少なくとも10,000ダルトン、好ましくは少なくとも30,000ダルトン、最も好ましくは少なくとも50,000ダルトンであるような数である。高分子量ポリマーは、一般に、溶融加工されたポリマー及び溶媒流延ポリマーの両方で、より良好な機械的特性を有するフィルム及び繊維を生じるが、過剰な粘度は望ましくない。脂肪族ポリエステルの分子量は典型的に、1,000,000ダルトン以下、好ましくは500,000ダルトン以下、最も好ましくは300,000ダルトン以下である。Rは、1個以上のカテナリー(すなわち、m−鎖内の)エーテル酸素原子を更に含んでよい。一般に、ヒドロキシ酸のR基は、ペンダントヒドロキシル基が一級又は二級ヒドロキシル基であるようなものである。
【0099】
有用なポリ(ヒドロキシアルカノエート)としては、例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(乳酸)(ポリラクチドとして知られる)、ポリ(3−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(4−ヒドロペンタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシペンタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、及びポリグリコール酸(すなわち、ポリグリコリド)のホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。上記ヒドロキシ酸の2つ以上のコポリマー、例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクテート−コ−3−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(グリコリド−コ−p−ジオキサノン)及びポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を用いてもよい。また、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)の2つ以上の配合物、並びに1つ以上のポリマー及び/又はコポリマーとの配合物も使用することができる。
【0100】
脂肪族ポリエステルは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)のブロックコポリマーであってもよい。本明細書で有用な脂肪族ポリエステルとしては、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、星型分枝ランダムコポリマー、星型分枝ブロックコポリマー、樹状コポリマー、超分枝コポリマー、グラフトコポリマー及びこれらの組み合わせを挙げてもよい。
【0101】
脂肪族ポリエステルの別の有用な分類には、1つ以上のアルカンジオールと1つ以上のアルカンジカルボン酸(若しくはアシル誘導体)との反応生成物に由来する脂肪族ポリエステルが包含される。かかるポリエステルは、次の一般式:
【0102】
【化1】

【0103】
を有し、式中、R’及びR”はそれぞれ1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖であってよいアルキレン部分であり、mは、エステルがポリマーであるような数であり、脂肪族ポリエステルの分子量が好ましくは少なくとも10,000ダルトン、好ましくは少なくとも30,000ダルトン、最も好ましくは少なくとも50,000ダルトンであるが、1,000,000ダルトン以下、好ましくは500,000ダルトン以下、最も好ましくは300,000ダルトン以下であるような数である。nはそれぞれ独立して0又は1である。R’及びR”は、1個以上のカテナリー(すなわち、鎖内の)エーテル酸素原子を更に含んでよい。
【0104】
脂肪族ポリエステルの例としては、(a)以下の二塩基酸(又はその誘導体):コハク酸、アジピン酸、1,12ジカルボキシドデカン、フマル酸、グルタル酸(glutartic acid)、ジグリコール酸、及びマレイン酸のうち1つ以上と;(b)以下のジオール:エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、5〜12個の炭素原子を有する1,2アルカンジオール、ジエチレングリコール、300〜10,000ダルトン、好ましくは400〜8,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコール、300〜4000ダルトンの分子量を有するプロピレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドから誘導されるブロック又はランダムコポリマー、ジプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールのうち1つ以上と;(c)所望により、少量、すなわち0.5〜7.0モル%の、グリセロール、ネオペンチルグリコール及びペンタエリスリトールのような2個を超える官能基を有するポリオール、から誘導されるホモ及びコポリマーが挙げられる。
【0105】
このようなポリマーとしては、ポリブチレンサクシネートホモポリマー、ポリブチレンアジペートホモポリマー、ポリブチレンアジペート−サクシネートコポリマー、ポリエチレンサクシネート−アジペートコポリマー、ポリエチレングリコールサクシネートホモポリマー、及びポリエチレンアジペートホモポリマーが挙げられる。
【0106】
市販の脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ブチレンサクシネート)及びポリ(ブチレンアジペート)が挙げられる。
【0107】
有用な脂肪族ポリエステルとしては、半結晶質ポリ乳酸から誘導されるものが挙げられる。ポリ(乳酸)すなわちポリラクチドは、その主要分解産物として乳酸を有しており、これは、一般に自然界に見られ、非毒性であり、食品、製薬、及び医療業界で広く使用されている。ポリマーは、乳酸二量体であるラクチドの開環重合によって調製され得る。乳酸は、光学的に活性であり、二量体には4種類の異なった形態:L,L−ラクチド、D,D−ラクチド、D,L−ラクチド(メソラクチド)及びL,L−ラクチドとD,D−ラクチドとのラセミ混合物が存在する。純粋化合物又は配合物としてこれらのラクチドを重合することによって、異なる立体化学及び異なる物理的特性(結晶化度を含む)を有するポリ(ラクチド)ポリマーを得ることができる。L,L又はD,D−ラクチドからは半結晶質ポリ(ラクチド)が生じるが、D,L−ラクチドから誘導されるポリ(ラクチド)は非晶質である。
【0108】
ポリラクチドは、好ましくは、ポリマーの固有結晶化度を最大にする高いエナンチオマー比を有する。ポリ(乳酸)の結晶化度の程度は、ポリマー主鎖の規則性及び他のポリマー鎖と結晶化する能力に基づく。比較的少量の1つの鏡像異性体(D−など)が反対の鏡像異性体(L−など)と共重合する場合、ポリマー鎖は、不規則な形状となり、結晶化度が低下する。これらの理由から、結晶化度が好ましい場合、結晶化度を最大にするために、1つの異性体の少なくとも85%、1つの異性体の少なくとも90%、又は1つの異性体の少なくとも95%であるポリ(乳酸)を有することが望ましい。
【0109】
D−ポリラクチドとL−ポリラクチドとの、およそ等モルの配合物もまた有用である。この配合物は、D−ポリ(ラクチド)及びL−(ポリラクチド)のいずれもが単独で有する融点(約160℃)よりも高い融点(約210℃)を有する独特の結晶構造を形成し、改善された熱的安定性を有する(H.Tsujiら、Polymer,40(1999)6699〜6708を参照されたい)。
【0110】
また、ポリ(乳酸)と他の脂肪族ポリエステルとの、ブロックコポリマー及びランダムコポリマーを含むコポリマーを使用してもよい。有用なコモノマーには、グリコリド、β−プロピオラクトン、テトラメチルグリコリド、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、2−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシイソ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシエチル酪酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシ−β−メチル吉草酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、及びα−ヒドロキシステアリン酸が挙げられる。
【0111】
また、ポリ(乳酸)と、1つ以上の他の脂肪族ポリエステル、又は1つ以上の他のポリマーとの配合物を使用してもよい。有用な配合物の例には、ポリ(乳酸)及びポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール/ポリサクシネート、ポリエチレンオキシド、ポリカプロラクトン並びにポリグリコリドが挙げられる。
【0112】
ポリ(ラクチド)は、米国特許第6,111,060号(Gruberら)、同第5,997,568号(Liu)、同第4,744,365号(Kaplanら)、同第5,475,063号(Kaplanら)、同第6143863号(Gruberら)、同第6,093,792号(Grossら)、同第6,075,118号(Wangら)及び同第5,952,433号(Wangら)、国際公開第98/24951号(Tsaiら)、同第00/12606号(Tsaiら)、同第84/04311号(Lin)、米国特許第6,117,928号(Hiltunenら)、同第5,883,199号(McCarthyら)、国際公開第99/50345号(Kolstadら)、同第99/06456号(Wangら)、同第94/07949号(Gruberら)、同第96/22330号(Randallら)、同第98/50611号(Ryanら)に記載されているようにして調製されてよく、各特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。J.W.Leenslagら、J.Appl.Polymer Science,vol.29(1984),pp 2829〜2842、及び、H.R.Kricheldorf、Chemosphere,vol.43,(2001)49〜54も参照され得る。
【0113】
ポリマーの分子量は、好ましくは、ポリマーが溶融体のように加工され得るように選択される。ポリラクチドについては、例えば、分子量は、約10,000〜1,000,000ダルトンであり得、好ましくは約30,000〜300,000ダルトンである。「溶融加工可能」とは、脂肪族ポリエステルが流体であるか、又は、物品を加工するのに(例えば、BMF中に微細繊維を作製する)用いられる温度で汲み上げることができる若しくは押し出すことができ、その温度で物理的特性が目的とする用途には使用できない程乏しくなるまでは分解しない若しくはゲル化しないことを意味する。したがって、材料の多くは、スパンボンド、ブローンマイクロファイバー等の溶融プロセスを使用して、不織布に作製され得る。特定の実施形態はまた、射出成形することもできる。脂肪族ポリマーは他のポリマーと共に配合されてもよいが、典型的には少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは65重量%の微細繊維を含む。
【0114】
2.非収縮添加剤
「非収縮」添加剤という用語は、脂肪族ポリエステルの10重量%未満の濃度で脂肪族ポリエステルに添加されると不織布ウェブを形成し、ウェブが、無抑制(自由に動ける)条件で、繊維のガラス転移温度を超えるが繊維の融点よりは低い温度まで加熱されたときに、12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する熱可塑性高分子添加剤を指す。好ましい非収縮添加剤は、混合物が23〜25℃に冷却されたときに脂肪族ポリエステル中に分散した相を形成する。好ましい非収縮添加剤はまた、示差走査熱量測定法により測定されるような半結晶質熱可塑性ポリマーである。
【0115】
本発明者らは、半結晶質ポリマーが、比較的低配合度にて、例えば、好ましくは10重量%未満、より好ましくは6重量%未満、最も好ましくは3重量%未満にて、ポリエステル不織布製品(スパンボンド及びブローマイクロファイバーウェブ)において収縮を低減させるのに有効である傾向を有する。
【0116】
有用であり得る半結晶質ポリマーとしては、ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(メチルペンテン)、ポリ(エチレン−クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカプロラクトン(PCL)などの半結晶質脂肪族ポリエステル、ナイロン6及びナイロン66などの脂肪族ポリアミド並びにサーモトロピック液晶ポリマーが挙げられる。特に好ましい半結晶質ポリマーとしては、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン66、ポリカプロラクトン及びポリエチレンオキシドが挙げられる。非収縮添加剤は、PLA不織布の収縮を劇的に低減することが示されている。
【0117】
これらの添加剤の分子量は、収縮低減を促進できる能力に影響し得る。好ましくは、分子量は約10,000ダルトン超、好ましくは20,000ダルトン超、より好ましくは40,000ダルトン超、最も好ましくは50,000ダルトン超である。熱可塑性非収縮ポリマーの誘導体もまた好適であり得る。好ましい誘導体は、ある程度の結晶化度を保持する傾向を有する。例えば、PCL及びPEOなどの反応性末端基を有するポリマーは、反応して、例えば、ポリエステル又はポリウレタンを形成することができ、これにより、平均分子量を増加することができる。例えば、分子量が50,000であるPEOは、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネートと1:2のイソシアネート/アルコール比で反応して、OH官能末端基を有する名目分子量100,000のPEOを形成することができる。
【0118】
理論に束縛されるものではないが、非収縮添加剤はフィラメントのコア全体にわたって無作為に分布した分散を形成すると考えられる。分散寸法がフィラメント全体にわたって様々であり得ることが認識されている。例えば、分散相粒子の寸法は繊維の外面ではより小さくてもよく、ここで、剪断速度は、押出中はより高く、繊維のコア付近ではより低い。非収縮添加剤は、ポリエステル連続相内に分散を形成することにより、収縮を防止又は低減し得る。分散した非収縮添加剤は、球、楕円、桿状体、円柱及び多くの他の形状などの様々な分離形状を取り得る。
【0119】
非常に好ましい非収縮添加剤は、ポリプロピレンである。本開示の実施形態実用化において有用なポリプロピレン(ホモ)ポリマー及びコポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、及びこれらの配合物(総じてポリプロピレン(コ)ポリマー)から選択され得る。ホモポリマーは、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、及びこれらの配合物であり得る。コポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、及びこれらの配合物であり得る。特に、本明細書に記載のポリマー配合物としては、インパクト(コ)ポリマー、エラストマー及びプラストマーが挙げられ、これらの任意のものがポリプロピレンとの物理的な配合物又はその場での配合物であり得る。
【0120】
ポリプロピレン(コ)ポリマー製造の方法は、スラリー、溶液、気相、又は他の好適なプロセスによるなどの当該技術分野で既知の任意の方法により製造することができ、ポリオレフィンの重合に好適な触媒系、例えばチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒、その他の好適な触媒系、又はこれらの組み合わせを用いることができる。好ましい実施形態では、ポリプロピレン(コ)ポリマーは、米国特許第6,342,566号、同第6,384,142号、及び国際公開第03/040201号、同第97/19991号並びに米国特許第5,741,563号に記述されている触媒、活性化剤及びプロセスによって製造される。同様に、(コ)ポリマーは、米国特許第6,342,566号及び同第6,384,142号に記述されているプロセスによって調製され得る。このような触媒は当該技術分野において周知であり、例えば、ZIEGLER CATALYSTS(Gerhard Fink、Rolf Mulhaupt及びHans H.Brintzinger編、Springer−Verlag 1995);Resconiら、Selectivity in Propene Polymerization with Metallocene Catalysts,100 CHEM.REV.1253〜1345(2000);及びI,II METALLOCENE−BASED POLYOLEFINS(Wiley & Sons 2000)に記載されている。
【0121】
本開示の発明の一部の実施形態実用化において有用なポリプロピレン(コ)ポリマーには、商標名ACHIEVE及びESCORENE(Exxon−Mobil Chemical Company(Houston,TX)販売)、並びにTotal Petrochemicals(Hoston,TX)から販売されている様々なポリプロピレン(コ)ポリマーが挙げられる。
【0122】
本発明で有用な現状で好ましいプロピレンホモポリマー及びコポリマーは典型的には、1)少なくとも30,000Da、好ましくは少なくとも50,000Da、より好ましくは少なくとも90,000Da、及び/又は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定すると、2,000,000Da以下、好ましくは1,000,000Da以下、より好ましくは500,000Da以下の重量平均分子量(Mw)、並びに/あるいは、2)1、好ましくは1.6、より好ましくは1.8、及び/又は、40以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更により好ましくは3以下の多分散性(Mw/Mnとして定義される、式中、MnはGPCにより測定される数平均分子量である)、並びに/あるいは、3)示差走査熱量測定法(DSC)を使用することにより測定すると、少なくとも30℃、好ましくは少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも60℃、及び/又は、示差走査熱量測定法(DSC)を使用することにより測定すると、200℃以下、好ましくは185℃以下、より好ましくは175℃以下、更により好ましくは170℃以下の融解温度Tm(第二融解)、並びに/あるいいは、4)DSCを使用して測定すると、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、及び/又は、DSCを使用して測定すると、80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下の結晶化度、並びに/あるいは、5)動的機械熱分析(DMTA)により測定すると、少なくとも−40℃、好ましくは少なくとも−10℃、より好ましくは少なくとも−10℃、及び/又は、動的機械熱分析(DMTA)により測定すると、20℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは50℃以下のガラス転移温度(T)、並びに/あるいは、6)DSCにより測定すると、180J/g以下、好ましくは150J/g以下、より好ましくは120J/g以下、及び/又は、DSCにより測定すると、少なくとも20J/g、より好ましくは少なくとも40J/gの融解熱(H)、並びに/あるいは、7)少なくとも15℃、好ましくは少なくとも20℃、より好ましくは少なくとも25℃、更により好ましくは少なくとも60℃、及び/又は、120℃以下、好ましくは115℃以下、より好ましくは110℃以下、更により好ましくは145℃以下の結晶化温度(Tc)を有する。
【0123】
本開示の代表的なウェブには、ポリプロピレン(コ)ポリマー(ポリ(プロピレン)ホモポリマーとコポリマーの両方を含む)がウェブの重量に対して少なくとも1重量%の量、より好ましくはウェブの重量に対して少なくとも2重量%の量、最も好ましくはウェブの重量に対して少なくとも3重量%の量が含まれ得る。他の代表的なウェブには、ポリプロピレン(コ)ポリマー(ポリ(プロピレン)ホモポリマーとコポリマーの両方を含む)がウェブの重量に対して10重量%以下の量、より好ましくはウェブの重量に対して8重量%以下の量、最も好ましくはウェブの重量に対して6重量%以下の量が含まれ得る。本開示の特定の好ましい実施形態では、ウェブは、ウェブの重量に対して約1重量%〜約6重量%のポリプロピレン、より好ましくはウェブの重量に対して約3重量%〜約5重量%のポリプロピレンを含む。
【0124】
3.任意の添加剤
また繊維は、顔料や染料などの特定の添加剤が配合された材料を含む、材料の配合物から形成されてもよい。前述の繊維形成用材料に加えて、様々な添加剤を繊維溶融物に添加し、押し出して、添加剤を繊維に組み込んでもよい。典型的には、非収縮添加剤以外の添加剤の量は、脂肪族ポリエステルの総重量に基づいて約25重量%以下、望ましくは10重量%以下、より望ましくは5.0重量%以下である。好適な添加剤は、微粒子、充填剤、安定剤、可塑剤、粘着付与剤、流動性調整剤、硬化速度遅延剤、接着促進剤(シラン、チタン酸塩など)、補助剤、衝撃改質剤、発泡性微小球、熱伝導性粒子、電気伝導性粒子、シリカ、ガラス、粘土、タルク、顔料、着色剤、ガラスビーズ又はバブル、酸化防止剤、蛍光増白剤、抗微生物剤、界面活性剤、湿潤剤、難燃剤、並びに撥水剤(炭化水素ワックス、シリコーン、及びフッ素性化学物質など)を含むが、これらに限定されない。しかしながら、一部の充填剤(すなわち、例えば、費用低減のために、又は、あるいは、密度、色、付与質感、有効分解速度及びこれらに類するものなどの他の特性を付与するために、一般に添加されて重量、寸法を増補するか、あるいは、樹脂内の空間を埋める、不溶性有機又は無機材料)は、繊維特性に対して悪影響を及ぼす可能性がある。
【0125】
充填剤は、使用される場合には、微粒子非熱可塑性又は熱可塑性材料であることができる。充填剤はまた、デンプン、リグニン、及びセルロース系ポリマー、天然ゴム、及びこれらに類するものなどの、多くの場合、低費用に起因して選択される非脂肪族ポリエステルポリマーであってもよい。これらの充填ポリマーは、ほとんど又は全く結晶化度を有さない傾向がある。充填剤、可塑剤及び他の添加剤は、脂肪族ポリエステルの3重量%超、より確実に5重量%超の濃度で使用されると、不織布ウェブの引張強度などの物理的特性に有意な負の影響を有し得る。脂肪族ポリエステル樹脂の10重量%を超えると、これらの任意添加剤は、物理的特性に劇的に負の影響を有し得る。したがって、非収縮添加剤以外の任意添加剤全体は、好ましくは最終不織布物品の脂肪族ポリエステルの重量に基づいて、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下で存在する。本化合物は、不織布を製造するのに使用されるマスターバッチ濃縮物においてはるかに高い濃度で存在し得る。例えば、45g/メートルの坪量を有する本発明の不織布スパンボンドウェブは、好ましくは少なくとも30N/mm幅、好ましくは少なくとも40N/mm幅の引張強度を有する。実施例で特定されるように機械的試験において試験されると、より好ましくは少なくとも50N/mm幅、最も好ましくは少なくとも60N/mm幅である。
【0126】
上述の添加剤のうち1つ以上を用いて、得られる繊維及び層の重量及び/又はコストを低減してもよく、粘度を調整してもよく、又は繊維の熱的特性を変性してもよく、あるいは電気特性、光学特性、密度に関する特性、防液特性若しくは接着剤の粘着性に関する特性を含む、添加剤の物理特性活性に由来する様々な物理特性を付与してもよい。
【0127】
i)可塑剤
一部の代表的な実施形態では、熱可塑性ポリエステルのための可塑剤が、使用され得る。一部の代表的な実施形態では、熱可塑性ポリエステルのための可塑剤は、ポリ(エチレングリコール)、オリゴマーポリエステル、脂肪酸モノエステル及びジエステル、クエン酸エステル、又はこれらの組み合わせから選択される。好適な可塑剤は脂肪族ポリエステルと共に使用することができ、例えば10,000ダルトン(Da)以下、好ましくは約5,000Da以下、より好ましくは約2,500Da以下の分子量を有する、グリコール(グリセリンなど)、プロピレングリコール、ポリエトキシレート化フェノール、単置換若しくは多置換ポリエチレングリコール、高級アルキル置換Nアルキルピロリドン、スルホンアミド、トリグリセリド、クエン酸エステル、酒石酸エステル、ベンゾエートエステル、ポリエチレングリコール、及びエチレンオキシドプロピレンオキシドのランダム及びブロックコポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。高引張強度を必要とする実施形態には、(充填剤のような)可塑剤は、好ましくは脂肪族ポリエステルの10重量%未満、好ましくは脂肪族ポリエステルの5重量%未満、最も好ましくは脂肪族ポリエステルの3重量%未満で存在する。
【0128】
ii)希釈剤
一部の代表的な実施形態では、微細繊維を形成するために希釈剤が混合物に添加され得る。特定の代表的な実施形態では、この希釈剤は、脂肪酸モノエステル(FAME)、PLAオリゴマー、又はこれらの組み合わせから選択され得る。本明細書で使用される希釈剤は一般に、希釈剤がない状態で起こり得る結晶化度に比べ、結晶化度を阻害するか、遅延させるか、又は別の方法で影響を与えるような材料を指す。希釈剤は可塑剤としても機能し得る。
【0129】
iii)界面活性剤
特定の代表的な実施形態では、繊維の形成のために界面活性剤を添加することが望ましいことがある。特定の代表的な実施形態では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双極性界面活性剤、又はこれらの組み合わせから選択され得る。追加的な代表的実施形態では、界面活性剤は、フッ素系有機界面活性剤、シリコーン機能性界面活性剤、有機ワックス、又はジオクチルスルホスクシネートなどのアニオン性界面活性剤の塩から選択され得る。
【0130】
本明細書の好ましい一実施形態では、微細繊維は、耐久性のある親水性を付与するアニオン性界面活性剤を含み得る。特定の実施形態では、アニオン性界面活性剤は、キャリア中に溶解又は分散される。本発明での使用に好適なアニオン性界面活性剤及びキャリアの例としては、本出願人らの同時係属出願の、米国特許出願公開第2008/0200890号、及び国際公開第2009/152345号に記載されているものが挙げられ、これらはどちらも参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。好ましい実施形態では、界面活性剤は、キャリア中に溶解又は分散され、溶融した脂肪族ポリエステル組成物と混合するために投入される。理論に束縛されるものではないが、キャリアは、脂肪族ポリエステルとの界面活性剤の混合を向上し、これにより、そうして形成された不織布ウェブの親水性及び吸収力を向上すると考えられる。好ましいキャリアは、脂肪族ポリエステルのための可塑剤であり、すなわち、使用量の脂肪族ポリエステルと適合性であり、表面に現れて油膜を形成しない。最も好ましいキャリアはまた、界面活性剤のための溶媒としても機能する。最も好ましい界面活性剤は、アニオン性である。
【0131】
アニオン性界面活性剤は、アルキル、アルカリル、アルケニル又はアラルキルサルフェート;アルキル、アルカリル、アルケニル又はアラルキルスルホネート;アルキル、アルカリル、アルケニル又はアラルキルカルボキシレート、あるいは、アルキル、アルカリル、アルケニル又はアラルキルホスフェート界面活性剤の群から選択され得る。組成物は、任意により、加工を補助する、及び/又は親水性特性を向上させ得る界面活性剤キャリアを含み得る。複数の界面活性剤及び場合により界面活性剤キャリアアルケニル若しくはアラルキルカルボキシレート又はこれらの組み合わせの配合物。粘度調整剤は、耐久性のある親水性を繊維の表面に付与するのに十分な量で、溶融押出成形された繊維中に存在する。
【0132】
好ましくは、界面活性剤は、使用される濃度で、押出成形温度において、キャリアに溶解可能である。例えば、押出成形温度(例えば、150℃〜190℃)まで加熱された際に、1cmの通路長さのガラスバイアル瓶中で、界面活性剤及びキャリアが視覚的に透明な溶液を形成することから溶解度が評価され得る。好ましくは、界面活性剤は、150℃においてキャリア中に溶解可能である。より好ましくは、界面活性剤は、100℃未満においてキャリアに溶解可能であり、その結果、これは、より容易にポリマー融解物中に組み込むことができる。更により好ましくは、界面活性剤は、25℃でキャリアに溶解可能であり、その結果、溶液をポリマー融解物中にポンプ移送する際に加熱が不要である。好ましくは、界面活性剤は、過剰にキャリアが存在しなくても(これは熱可塑性樹脂を可塑化させ得る)界面活性剤の追加が可能であるように、キャリアに、10重量%超、より好ましくは20重量%超、及び最も好ましくは30重量%超、溶解可能である。
【0133】
典型的には、界面活性剤は、組成物の合計重量に基づき、少なくとも0.25重量%、好ましくは、少なくとも0.50重量%、より好ましくは少なくとも0.75重量%の合計量で存在する。高度に親水性のウェブ、又は複数回にわたる水性流体との接触に耐え得るウェブが所望されるいくつかの実施形態では、界面活性剤組成物が、脂肪族ポリエステルポリマー組成物の2重量%超、3重量%超、又は更に5重量%超を構成する。特定の実施形態では、界面活性剤は、典型的には、脂肪族ポリエステルポリマー組成物の0.25重量%〜8重量%で存在する。典型的には、界面活性剤は脂肪族ポリエステルの組み合わされた重量を基準として、10重量%未満、好ましくは8重量%未満、より好ましくは7重量%未満、より好ましくは6重量%未満、より好ましくは3重量%未満、最も好ましくは2重量%未満で存在する。
【0134】
界面活性剤及び任意のキャリアは、押出成形を促進し、脂肪族ポリエステルの加水分解を防ぐために、比較的水を含まないものであるべきである。好ましくは界面活性剤及び任意のキャリア(単独、又は混合)は、カールフィッシャー滴定によって決定した際に、5重量%未満の水、より好ましくは2重量%未満の水、更により好ましくは1重量%未満の水、及び最も好ましくは0.5重量%未満の水を含む。
【0135】
一定の種類の炭化水素、シリコーン、及びフッ素化物界面活性剤は、それぞれポリオレフィンに親水性を付与するために有用であるものとして記載されている。これらの界面活性剤は典型的には熱可塑性樹脂と、2つの方法(1)局所的適用、例えば、界面活性剤を、水溶液から、押し出された不織布ウェブ、若しくは繊維へと噴霧、若しくはパディング、若しくはフォーミングし、続いて乾燥させること、又は(2)ウェブの押出成形の前に界面活性剤をポリオレフィン融解物中に組み込むことの一方により、接触する。後者の方法が遥かに好ましいが、繊維、又はフィルムの表面を、物品を親水性にするのに十分な量で自然に被覆する界面活性剤を見出すことは困難である。上述のように、界面活性剤の局所適用によって親水性にしたウェブは、多くの欠点を被る。一部のものはまた、水性媒体との一度の接触の後に親水性が低減したことが報告されている。
【0136】
親水性を付与するための界面活性剤の局所的適用の追加的な不利益としては、界面活性剤自体による皮膚の炎症、不均一な表面、及びバルク親水性、並びに界面活性剤の適用における追加的な加工工程の必要性から生じる追加的な費用が挙げられる。1つ以上の界面活性剤を融解添加剤として熱可塑性ポリマーに組み込むことは、局所適用に伴う問題を緩和し、加えてこれが組み込まれる布地、又は不織布により柔軟な「手触り」を提供し得る。
【0137】
アニオン性界面活性剤が使用される場合には、本明細書に記載の繊維は、例えば、水による飽和、絞り、及び乾燥させるといった、反復浸水後も親水性及び吸水性を維持する。本明細書に記載の好ましい不織布は、以下でより詳細に説明されるように、少なくとも1つの脂肪族ポリエステル樹脂(好ましくはポリ乳酸)、少なくとも1つのアルキルサルフェート、アルキレンサルフェート、又はアラルキル若しくはアルカリールサルフェート、カルボキシレート、又はホスフェート界面活性剤を、脂肪族ポリエステルの重量に基づいて、典型的には0.25重量%〜8重量%の量で含み、場合により1重量%〜8重量%の濃度の不揮発性キャリアも含む。
【0138】
編み織物、織布及び不織布として生成される好ましい多孔質布地構成体は、実施例に開示される見掛けの表面エネルギー試験によって試験した際に、60ダイン/cm超、及び好ましくは70ダイン/cm超の見掛けの表面エネルギーを有する。水で湿った、本発明の好ましい多孔質布地材料はしたがって、72ダイン/cm(純水の表面張力)超の見掛けの表面エネルギーを有する。本発明の最も好ましい材料は瞬間的に水を吸収し、5℃、23℃、及び45℃で10日間エージングさせた後にも吸水性を維持する。好ましくは、不織布布地は、200μLの水滴を不織布を広げた水平表面上に穏やかに配置すると、水滴が10秒未満、好ましくは5秒未満、最も好ましくは3秒未満で完全に吸収されるように、「瞬間的に吸収性」である。
【0139】
好ましいフィルム構成体は、水性流体によって湿潤可能であり、米国特許第5,268,733号に半角技術として記載されるTantec接触角計器(Shaumburg,IL)を使用して測定した際に、脱イオン水と40°未満、好ましくは30°未満、及び最も好ましくは20°未満の接触角を有する。
【0140】
多くの実施形態では界面活性剤キャリア及び/又は界面活性剤成分が、ポリエステル成分を可塑化し、高分子量ポリマーの溶融加工及び溶媒流延を可能にすることは、本発明の重要な利点である。一般に、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、数平均分子量(Mn)に対する粘度の対数−対数プロットにより決定するとき、絡み合い分子量を上回る。絡み合い分子量より大きいと、プロットの勾配は約3.4であるが、より低分子量のポリマーの勾配は1である。
【0141】
本明細書で使用するとき、「界面活性剤」という用語は、水の表面張力及び/又は水と不混和性液体との間の界面張力を減少させることが可能な両親媒性物質(共有結合している極性及び無極性領域の両方を有する分子)を意味する。この用語は、石鹸、洗剤、乳化剤、及び界面活性剤などを含むことを意味する。
【0142】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の組成物において有用な界面活性剤は、アルキル、アルケニル、アルカリール及びアラルキルスルホネート、サルフェート、ホスホネート、ホスフェート、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるアニオン性界面活性剤である。アルキルアルコキシル化カルボキシレート、アルキルアルコキシル化サルフェート、アルキルアルコキシル化スルホネート、及びアルキルアルコキシル化ホスフェート、並びにこれらの混合物がこれらの分類に含まれる。好ましいアルコキシレートは、疎水性物質1モル当たり、0〜100モルのエチレン及びプロピレンオキシドを有する、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを使用して製造される。いくつかのより好ましい実施形態では、本発明の組成物において有用な界面活性剤は、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、カルボキシレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される。一態様では、界面活性剤は、(C8〜C22)アルキルサルフェート塩(例えば、ナトリウム塩)、ジ(C8〜C13アルキル)スルホスクシネート塩、C8〜C22アルキルサルコシネート塩、C8〜C22アルキルラクチレート塩、及びこれらの組み合わせから選択される。様々な界面活性剤の組み合わせもまた使用され得る。本発明において有用なアニオン性界面活性剤は、以下でより詳細に記載され、以下の構造:
(R−(O)SOn+又は(R−O)P(O)On+又はR−OP(O)(OaMn+
を備える界面活性剤が挙げられ、式中、Rは分枝鎖若しくは直鎖であるC8〜C30のアルキル若しくはアルキレン、又はC12〜C30アラルキルであり、場合によりエチレンオキシド、プロピレンオキシド基、オリゴマー乳酸及び/又はグリコール酸、又はこれらの組み合わせなどの0〜100個のアルキレンオキシド基で置換されてもよく、
X=0又は1であり、
M=H、アルカリ金属又アルカリ土類金属塩、好ましくはLi+、Na、K、又は、三級及び四級アミン、例えばプロトン化トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウム及びこれらに類するものなどのアミン塩であり、
n=1又は2であり、
n=2であるときa=1であり、n=1であるときa=2である。
【0143】
好ましくは、Mは、Ca++又はMg++であるが、これらの好ましさは劣る。
【0144】
例としては、C8〜C18アルカンスルホネート;C8〜C18二級アルカンスルホネート;アルキルベンゼンスルホネート、例えば、ドデシルベンゼンスルホネート;C8〜C18アルキルサルフェート;アルキルエーテルサルフェート、例えば、トリデセスナトリウム−4サルフェート、ラウレスナトリウム4サルフェート及びラウレスナトリウム8サルフェート(例えば、Stepan Company(Northfield IL)から入手可能であるものなど);ジオクチルスルホスクシネートとしても既知のドクサートナトリウム;ナトリウム塩;ラウロイルラクチレート(lauroyl lacylate)及びステアロイルラクチレート(例えば、RITA Corporation(Crystal Lake,IL)から商標PATIONICで入手可能なものなど)などが挙げられる。追加的な例としては、ステアリルホスフェート(Specialty Industrial Products,Inc.(Spartanburg,SC)からSippostat 0018として入手可能)、Cetheth−10 PPG−5ホスフェート(Croda USA(Edison NJ)から入手可能なCrodaphos SG)、ラウレス−4ホスフェート、及びジラウレス−4ホスフェートが挙げられる。
【0145】
代表的なアニオン性界面活性剤としては、サルコシネート、グルタメート、アルキルサルフェート、アルキルエーテル硫酸ナトリウム(sodium alkyleth sulfates)又はカリウム、アルキルエーテル硫酸アンモニウム、ラウレス−n−硫酸アンモニウム、ラウレス−n−硫酸、イセチオネート、グリセリルエーテルスルホネート、スルホスクシネート、アルキルグリセリルエーテルスルホネート、アルキルホスフェート、アラルキルホスフェート、アルキルホスホネート及びアラルキルホスホネートが挙げられるが、これらに限定されない。これらのアニオン性界面活性剤は、金属又は有機アンモニウム対イオンを有し得る。いくつかの有用なアニオン性界面活性剤は、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルベンゼンエーテルサルフェート、アルキルスルホアセテート、二級アルカンスルホネート、及び二級アルキルサルフェートなどのようなスルホネート及びサルフェートからなる群から選択される。これらの多くは、下式により表すことができる:
26−(OCHCHn6(OCH(CH)CHp2−(Ph)−(OCHCHm3−(O)−SO−M
及び
26−CH[SO−M]−R27
式中、a及びb=0又は1であり、n6、p2、及びm3=0〜100(好ましくは0〜20)であり、R26は下記に定義の通りであるが、ただしR26又はR27の少なくとも1つは、少なくともC8であり、R27は(C1〜C12)アルキル基(飽和直鎖、分枝鎖又は環状基)であり、場合により、N、O若しくはS原子又はヒドロキシル、カルボキシル、アミド若しくはアミン基によって置換されていてよく、Ph=フェニルであり、Mは、H、Na、K、Li、アンモニウム又は、トリエタノールアミン若しくは四級アンモニウム基などのプロトン化三級アミンのようなカチオン性対イオンである。
【0146】
上記式中、エチレンオキシド基(すなわち、「n6」及び「m3」基)及びプロピレンオキシド基(すなわち、「p2」基)は、逆の順番並びにランダム、順次又はブロック配列で生じる場合がある。R26は、R28−C(O)N(CH)CHCH−などのアルキルアミド基、並びに、−OC(O)−CH−などのエステル基であってもよく、式中、R28は、(C8〜C22)アルキル基(分子鎖、直鎖又は環状基)である。例としては、ラウリルエーテルサルフェート(例えば、Stepan Company(Northfield,IL)から入手可能なPOLYSTEP B12(n=3〜4であり、M=ナトリウムである)及びB22(n=12であり、M=アンモニウムである))、並びに、メチルタウリン酸ナトリウム(日光ケミカルズ株式会社(日本、東京)から商品名NIKKOL CMT30として入手可能)などのようなアルキルエーテルスルホネート;ナトリウム(C14〜C17)二級アルカンスルホネート(α−オレフィンスルホネート)(例えば、Clariant Corp.(Charlotte,NC)から入手可能なHostapur SAS)を含む二級アルカンスルホネート;メチル−2−スルホアルキルエステル、例えば、メチル−2−スルホ(C12〜C16)エステルナトリウム及び2−スルホ(C12〜C16)脂肪酸二ナトリウム(Stepan Company(Northfield,IL)から商品名ALPHASTEP PC−48で入手可能);ラウリルスルホ酢酸ナトリウム(商品名LANTHANOL LAL,Stepan Company(Northfield,IL)から)及びラウレススルホコハク酸二ナトリウム(STEPANMILD SL3,Stepan Company(Northfield,IL)から)として入手可能なアルキルスルホアセテート及びアルキルスルホスクシネート;アルキルサルフェート、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム(Stepan Company(Northfield,IL)から商標名STEPANOL AMとして入手可能);ジアルキルスルホスクシネート、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(Cytec Industries,(Woodland Park,NJ)からAerosol OTとして入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0147】
好適なアニオン性界面活性剤としてはまた、アルキルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、アラルキルホスフェート及びアラルキルエーテルホスフェートのようなホスフェートが挙げられる。多くは、下式:
[R26−(Ph)−O(CHCHO)n6(CHCH(CH)O)p2q2−P(O)[O−M]r、
により表すことができ、式中、Ph、R26、a、n6、p2、及びMは、上記に定義され、rは0〜2であり、q2=1〜3であるが、ただし、q2=1のとき、r=2であり、q2=2のとき、r=1であり、q2=3のとき、r=0である。上記のように、エチレンオキシド基(すなわち、「n6」基)及びプロピレンオキシド基(すなわち、「p2」基)は、逆の順番並びに無作為、順次、又はブロック配列で生じる場合がある。例としては、一般にトリラウレス−4−ホスフェートと称される、モノ−、ジ−及びトリ−(アルキルテトラグリコールエーテル)−o−リン酸エステルの混合物(Clariant Corp.から商品名HOSTAPHAT 340KLとして入手可能)、加えてPPG−5セテス10ホスフェート(Croda Inc.,Parsipanny,NJから商品名CRODAPHOS SGとして入手可能)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0148】
一部の実施形態では、組成物中で使用するとき、界面活性剤は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.75重量%、少なくとも1.0重量%又は少なくとも2.0重量%の総量で存在する。高度に親水性のウェブ、又は複数回にわたる水性流体との接触に耐え得るウェブが所望される特定の実施形態では、界面活性剤成分が、分解性脂肪族ポリエステルポリマー組成物の2重量%超、3重量%超、又は更に5重量%超を構成する。
【0149】
他の実施形態では、界面活性剤は、すぐに使用できる状態の組成物の合計重量を基準として、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下又は8重量%以下の合計量で存在する。
【0150】
好ましい界面活性剤は、200℃未満、好ましくは190℃未満、より好ましくは180℃未満、更により好ましくは170℃未満の融点を有する。
【0151】
溶融加工の場合、好ましい界面活性剤は揮発性が低く、加工条件下で有意に分解しない。好ましい界面活性剤は、10重量%未満の水、好ましくは5重量%未満の水、及びより好ましくは2重量%未満の水、及び更により好ましくは1重量%未満の水を含有する(カールフィッシャー分析により測定される)。湿分含量は、組成物中の脂肪族ポリエステル、又は他の加水分解に反応しやすい化合物の加水分解を防ぐために低く維持され、これは、押し出されたフィルム、又は微細繊維に透明性を提供することを助ける。
【0152】
不揮発性キャリアに事前に溶解させた界面活性剤を使用することが特に便利であり得る。重要なことに、キャリアは典型的には熱的に安定であり、150℃、180℃、200℃、250℃の高さの、又は更に250℃もの高さであり得るプロセス温度での化学分解に耐えることができる。好ましい実施形態では、界面活性剤のキャリアは、23℃において液体である。好ましいキャリアとしてはまた、多価アルコールの低分子量エステル、例えば、トリアセチン、グリセリルカプリレート/カプレート、アセチルトリブチルシトレート及びこれらに類するものが挙げられる。
【0153】
可溶液体キャリアはまた、別の方法として不揮発性有機溶媒から選択されてもよい。本発明の目的のために、有機溶媒は、混合及び融解プロセス全体を通じて溶媒の80%超が組成物中に留まる場合、不揮発性であるとみなされる。これらの液体が溶融加工可能な組成物中に留まるため、不揮発性キャリアは可塑剤として機能し、一般的に組成物のガラス転移温度を低下させる。
【0154】
キャリアは、実質的に不揮発性であるため、大部分が組成物中に留まり、有機可塑剤として機能し得る。可能な界面活性剤キャリアとしては、1つ以上のヒドロキシル基を含有する化合物、特にグリコール、例えばグリセリン;1,2ペンタンジオール;2,4ジエチル−1,5ペンタンジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール;加えて単官能性化合物、例えば3−メトキシ−メチルブタノール(「MMB」)が挙げられる。不揮発性有機可塑剤の追加的な例としては、ポリエトキシ化フェノールなどのポリエーテル、例えば、Pycal 94(フェノキシポリエチレングリコール);アルキル、アリール、及びアラルキルエーテルグリコール(例えば、Dow Chemical Company(Midland Mich)によって商品名Dowanol(商標)として市販されているもの)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol PnB)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol TPnB)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol DPnB)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(Dowanol PPH)プロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol PM)が挙げられるがこれらに限定されない);ポリエトキシ化アルキルフェノール、例えば、Triton X35及びTrion X102(Dow Chemical Company(Midland Mich)から入手可能);一置換若しくは多置換ポリエチレングリコール、例えばPEG 400ジエチルヘキサノエート(CP Hall Companyから入手可能なTegMer 809)、PEG 400モノラウレート(CP Hall Companyから入手可能なCHP−30N)、及びPEG 400モノオレエート(CP Hall Companyから入手可能なCPH−41N);高級アルキル置換N−アルキルピロリドンを含むアミド、例えば、N−オクチルピロリドン;N−ブチルベンゼンスルホンアミド(CP Hall Companyから入手可能)などのスルホンアミド;トリグリセリド;クエン酸エステル;酒石酸のエステル;安息香酸エステル(商品名BenzoflexとしてVelsicol Chemical Corp.,Rosemont Illから入手可能なものなど)(ジプロピレングリコールジベンゾエート(Benzoflex 50)、及びジエチレングリコールジベンゾエートを含む);2,2,4トリメチル1,3ペンタンジオールの安息香酸ジエステル(Benzoflex 354)、エチレングリコールジベンゾエート、テトラエチレングリコールジベンゾエートなど;10,000ダルトン未満、好ましくは約5000ダルトン未満、より好ましくは約2500ダルトン未満の分子量を有する、ポリエチレングリコール及びエチレンオキシドプロピレンオキシドのランダム及びブロックコポリマー;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書で使用する際、ポリエチレングリコールという用語は、エチレンオキシド、又は2−ハロエタノールと反応した26個のアルコール基を有するグリコールを指す。
【0155】
好ましいポリエチレングリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、スクロースなどから形成される。最も好ましいポリエチレングリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及びトリメチロールプロパンから形成される。ポリアルキレングリコール、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、又はC2C4アルキレンオキシド基のランダム、若しくはブロックコポリマーがまた、キャリアとして選択され得る。ポリエチレングリコール及びその誘導体がここでは好ましい。キャリアがポリマーと相溶性を有することが重要である。例えば、酸性官能基を有するポリマーと配合された際に、2個未満の求核基、例えば、ヒドロキシル基を有する、不揮発性、非重合性可塑剤を使用することがここでは好ましいが、これは2つを超える求核基を有する化合物は、高い押出成形温度において押出成形機内の組成物の架橋を生じ得るためである。重要なことに、不揮発性キャリアは、好ましくは、押出成形機内において、脂肪族ポリエステルポリマー組成物を有する比較的均質な溶液を形成し、冷却の際に比較的均質な状態に留まり、その結果押し出された組成物は、界面活性剤の濃度において比較的均一である。
【0156】
好ましい界面活性剤は、それらで作製された布地及びフィルムの接着剤、熱及び/又は超音波による固着を可能にする。非アニオン性界面活性剤を含む実施形態は、これらの独特の濡れ特性に起因して、外科用ドレープ及びガウンでの使用に特に好適である。ポリ乳酸/界面活性剤組成物を含む実施形態は、本明細書に記載のように持続性の親水性を有する。界面活性剤を含む不織布ウェブ及びシートは、良好な引張強度を有し、ヒートシールされて特殊なドレープの製作を可能にする強固な結合を形成することができ、使い捨て製品において重要であり得る再生可能な資源から製造することができ、不織布の場合に高い表面エネルギー(実施例に記載のように不織布に関しての見掛けの表面エネルギー試験と水の吸収とを使用して測定される)を有して湿潤性及び流体吸収性を可能にすることができ、フィルムについて、接触角が多くの場合、米国特許第5,268,733号に記載の半角技術及びTantec Contact Angle Meter,Model(CAM−micro(Schamberg,IL))を使用して平坦なフィルム上に蒸留水を用いて接触角を測定したときに、50度未満、好ましくは30度未満、最も好ましくは20度未満である。フィルム以外の物質の接触角を測定するために、正確に同じ組成のフィルムを溶媒流延により製造すべきである。
【0157】
加工温度は、生分解性脂肪族ポリエステルと界面活性剤を混合し、フィルムとして組成物を押出成形することを可能にするのに十分である。本明細書に記載される組成物で製造される好ましいフィルムは、例えば、透明(曇りのない)であり、表面上に油性残留物がない(ポリマーマトリクスからの成分の相分離を示す可能性がある)といった、食品包装のような用途に望ましい特性を有する。
【0158】
組成物は、フィルムへと溶媒流延され得る。本組成物の成分は、典型的には溶解し又は少なくとも部分的に溶媒和し、好適な溶媒に完全に混合され、この溶媒は続いて表面上で流延して蒸発させられ、親水性の持続性樹脂組成物を含む固体を残す。
【0159】
iv)粘度調整剤
一部の代表的な実施形態では、熱可塑性脂肪族ポリエステルポリマー(例えばポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート及び同様物)を、非収縮添加剤の0重量%超で、10重量%以下と、アルキル、アルケニル、アラルキル、又はアルカリルカルボキシレート及びカルボン酸又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の粘度調整剤と、を含む微細繊維が、繊維形成プロセスを使用して形成される。
【0160】
本明細書に開示されている繊維は、溶融プロセス(例えば、ブローンマイクロファイバー(BMF)、スパンボンド、又は射出成形)中に繊維の平均直径を減少させるために1つ以上の粘度調整剤を含み得る。BMFプロセス中に脂肪族ポリエステルの粘度を減らすことによって、繊維の平均直径が減少され、メルトブローンウェブにおいては、典型的に20マイクロメートル以下の微細繊維をもたらし得る。
【0161】
本発明者らは、熱可塑性脂肪族ポリエステル用の従来の可塑剤を添加すると、非常に段階的な粘度減少を生じることを見出した。可塑剤はポリマーの強度を劣化させるため、これは一般的に、十分な機械的強度の微細繊維の製造には有用でなはない。粘度が大きく減少することは、スパンボンド及びBMFプロセスにおいて使用される開口部を通して、経済的であるのに十分な速度でポリマーを得るために必要であり、開口部の直径は多くの場合1ミリメートル未満である。
【0162】
粘度減少は、押し出し/BMF装置で、この装置内で圧力を記録することによって検知することができる。本発明の粘度調整剤は、劇的に粘度を減少させることになり、したがって、押し出し又は熱プロセス中の背圧を減少させる。多くの場合では、粘度減少が大きすぎて、十分な溶融強度を維持するために、溶融プロセス温度は減少すべきである。多くの場合、融解温度は、30℃又はそれ以上低減される。
【0163】
生分解性が重要である用途では、生分解性粘度調整剤を組み込むことが望ましい場合があり、これは典型的に、加水分解的に又は酵素的に切断され得るエステル及び/又はアミド基を含む。本明細書に記載の代表的な微細繊維において有用な粘度調整剤は、以下の構造:
(R−COn+
を備える界面活性剤が挙げられ、式中、Rは分枝鎖若しくは直鎖であるC8〜C30のアルキル若しくはアルキレン、又はC12〜C30アラルキルであり、場合によりエチレンオキシド、プロピレンオキシド基、オリゴマー乳酸及び/又はグリコール酸、又はこれらの組み合わせなどの0〜100個のアルキレンオキシド基で置換されてもよく、
MはH、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属塩、好ましくはNa+、K+、若しくはCa++、又は、三級及び四級アミン、例えばプロトン化トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウム及びこれらに類するものなどのアミン塩であり、
nは1又は2であり、M基の価数である。
【0164】
上記の式において、エチレンオキシド基及びプロピレンオキシド基は、逆の順で、並びに無作為、順次、又はブロック配列で生じる場合がある。
【0165】
特定の好ましい実施形態では、微細繊維を形成するのに有用な粘度調整剤は、アルキルカルボキシレート、アルケニルカルボキシレート、アラルキルカルボキシレート、アルキルエトキシ化カルボキシレート、アラルキルエトキシ化カルボキシレート、アルキルラクチレート、アルケニルラクチレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される。プロトン化されたカルボキシレート等価のカルボン酸は、粘度調整剤としても機能することができる。例えば、ステアリン酸は有用であり得る。様々な粘度調整剤の組み合わせも使用することができる。本明細書で使用するとき、ラクチレートは、疎水性物質及び親水性物質を有する化合物であり、ここで親水性物質は、1〜5の乳酸単位、典型的には1〜3の乳酸単位を有する乳酸の、少なくとも一部分においてオリゴマー(oligamer)である。好ましいラクチレートは、Rita Corp.からのステアロイル乳酸カルシウムであり、これは以下の構造:[CH(CH16C(O)O−CH(CH)−C(O)O− CH(CH3)−C(O)O Ca++を有すると報告されている。アルキルラクチレートは、これらもまた資源再生可能な材料から作製されるため、好ましい部類である。
【0166】
粘度調整剤は典型的に、熱可塑性脂肪族ポリエステル組成物の押し出し温度で、又はそれを下回る温度で典型的に融解する。これは、ポリマー組成物中の粘度調整剤の分散又は溶解を促進する。粘度調整剤の混合物は、融点を修正するのに使用されてもよい。例えば、アルキルカルボキシレートの混合物は事前に形成されてもよく、又はアルキルカルボキシレートは、ポリエトキシレート化界面活性剤などの非イオン性界面活性剤と配合されてもよい。必要な加工温度は、熱可塑性脂肪族ポリエステル用の可塑剤などの非界面活性成分も添加することによって、変更することができる。例えば、ポリ乳酸組成物に添加されるとき、この粘度調整剤は好ましくは融点が200℃以下、より好ましくは180℃以下、更により好ましくは170℃以下、いっそうより好ましくは160℃以下である。
【0167】
粘度調整剤は、良好な混合が達成されて実質的に均一の混合物とされる限り、ホッパ又は押出成形機に沿って他の箇所で、樹脂と都合良く混合することができる。あるいは、粘度調整剤は、例えば、容積移送式ポンプ又は重量喪失供給装置を使用して、押出成形機に直接(事前混合することなく)添加されてもよい。
【0168】
一部の実施形態では、微細繊維で使用される場合、粘度調整剤は、微細繊維の総重量に基づいて、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.6重量%又は少なくとも0.75重量%、少なくとも1.0重量%、又は少なくとも2.0重量%の総量で存在する。非常に低い粘度の融解物が望ましく、及び/又は低い融点が好ましい特定の実施形態では、粘度調整剤は、微細繊維中の脂肪族ポリエステルポリマーの重量に対して2重量%超、3重量%超、又は更には5重量%超を構成する。
【0169】
溶融プロセスのために、好ましい粘度調整剤は低い揮発性を有し、プロセス条件下では明らかに分解しない。好ましい粘度調整剤に含まれる水は、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更により好ましくは1重量%以下である(カールフィッシャー分析により測定)。含水率は、微細繊維中の脂肪族ポリエステル又は加水分解に影響される化合物の加水分解を防止するために維持される。
【0170】
一部の粘度調整剤は室温にてワックスであり、離型剤、潤滑剤及びこれらに類するものとして多くの場合使用されるが、驚くべきことに、本発明の不織布布地はこれら自身並びに他の布地に熱結合できることが判明した。例えば、本発明の不織布布地は、本発明の第二の布地に、並びに、ポリオレフィンフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリエステル不織布及びこれらに類するものにうまく熱封止結合された。これらの布地は、熱的加熱、超音波溶接及びこれらに類するものを使用して、布地、フィルム又はフォームに結合し得ると考えられる。典型的には、ある程度の圧力を印加して、結合を促進する。プロセス中、典型的には、本明細書に記載の不織布布地の繊維の少なくとも一部分は、融解して、結合を形成する。結合パターンは、連続的(例えば、5〜10mm幅封止)又は模様付き(例えば、5〜10mm幅の点模様又は任意の他の幾何形状の結合模様)であってもよい。
【0171】
粘度調整剤は、不揮発性のキャリア中にあってもよい。重要なことに、キャリアは典型的に熱的に安定であり、150℃、200℃、250℃の高さの、又は更には300℃の高さであり得るプロセス温度での化学分解に耐えることができる。親水性物品に好ましいキャリアとしては、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのランダム及びブロックコポリマー、熱的に安定な多価アルコール、例えばプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン並びにこれらに類するものが挙げられる。ポリアルキレンオキシド/ポリアルキレングリコールは、開始ポリオールによって直鎖又は分枝鎖であってもよい。例えば、エチレングリコールを使用して開始されるポリエチレングリコールは直鎖になるが、グリセリン、トリメチロールプロパン、又はペンタエリスリトールで開始されるものは、分枝鎖になる。
【0172】
粘度調整剤は、脂肪族ポリエステルの融解粘度を修正するのに十分な量で溶融押出成形繊維内に存在し得る。典型的には、粘度調整剤は、脂肪族ポリエステルと粘度調整剤を合わせた重量に対して10重量%以下、好ましくは8重量%以下、より好ましくは7重量%以下、更により好ましくは6重量%以下、更により好ましくは3重量%以下、最も好ましくは2.5重量%以下で存在する。
【0173】
v)抗微生物剤
微細繊維に抗菌活性を付与するために抗微生物性成分が添加されてもよい。抗微生物性成分は、少なくとも一部の抗菌活性を提供する成分であり、すなわち、それは少なくとも1種の微生物に対して少なくともいくらかの抗菌活性を有する。それは、好ましくは、微細繊維から放出され、細菌を死滅させるのに十分多い量で存在する。それはまた、生分解性であってもよく、及び/又は、植物若しくは植物生成物のような再生可能な資源から製造されてもよく若しくは誘導されてもよい。生分解性抗微生物性成分は、加水分解的に又は酵素的に分解することができるエステル又はアミド結合のような、少なくとも1個の官能性結合を含んでよい。
【0174】
一部の代表的な実施形態では、好適な抗微生物性成分は、脂肪酸モノエステル、脂肪酸ジエステル、有機酸、銀化合物、四級アンモニウム化合物、カチオン性(コ)ポリマー、ヨウ素化合物、又はこれらの組み合わせから選択され得る。本発明における使用に好適な抗微生物性成分の他の例としては、米国特許出願公開第2008/0142023号に記載のものが挙げられ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0175】
特定の抗微生物性成分は非荷電であり、少なくとも7個の炭素原子を含有するアルキル又はアルケニル炭化水素鎖を有する。溶融加工の場合、好ましい抗微生物性成分は揮発性が低く、加工条件下で分解しない。好ましい抗微生物性成分は、2重量%以下、より好ましくは0.10重量%以下の水を含有する(カールフィッシャー分析により測定)。含水率は、押し出し中の脂肪族ポリエステルの加水分解を防止するために低く維持される。
【0176】
使用するとき、抗微生物性成分含量は(すぐ使用できる状態で)、典型的には、少なくとも1重量%、2重量%、5重量%、10重量%であり、場合により15重量%を超える。低強度が望ましい特定の実施形態では、抗微生物性成分は、組成物の20重量%超、25重量%超、又は更には30重量%超を構成する。
【0177】
特定の抗微生物性成分は両親媒性物質であり、界面活性であり得る。例えば、一部の抗菌アルキルモノグリセリドは界面活性である。抗微生物性成分を含む本発明の特定の実施形態に関して、抗微生物性成分は、粘度調整剤とは異なると考えられる。
【0178】
vi)微粒子相
繊維は更に、繊維内の内部微粒子相として、又は微細繊維の表面上若しくは表面近くの外部微粒子相として存在する、有機及び無機の充填剤を含み得る。移植可能な用途の場合、生分解性、吸収性又は生体内分解性の無機充填剤が特に魅力的である場合がある。これらの物質は、ポリマー微細繊維の分解速度の制御を補助することができる。例えば、多くのカルシウム塩及びリン酸塩が好適であり得る。代表的な生体適合性の吸収性充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カルシウムナトリウム、リン酸カルシウムカリウム、リン酸四カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、リン酸カルシウムアパタイト、リン酸八カルシウム、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム半水和物、フッ化カルシウム、クエン酸カルシウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムが挙げられる。特に好適な充填剤は、リン酸三塩基カルシウム(ヒドロキシアパタイト)である。
【0179】
他の追加の成分には、酸化防止剤、着色剤、例えば染料及び/又は顔料、帯電防止剤、蛍光増白剤、悪臭抑制剤、香料及び芳香剤、創傷治癒若しくは他の皮膚活性を促進するための活性成分、これらの組み合わせ等が挙げられる。前述のように、これらの充填剤及び化合物は、ウェブの物理的特性に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、非収縮添加剤以外の任意の微粒子相を含む任意添加剤全体は、好ましくは10重量%以下、好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下で存在する。
【0180】
C.寸法安定性不織布繊維ウェブの製造方法
配向微細繊維を製造することができる代表的なプロセスとしては、配向フィルムフィラメント形成、溶融紡糸、プレキシフィラメント形成、スパンボンド、湿式紡糸、及び乾式紡糸が挙げられる。好適な配向繊維製造方法は、当該技術分野においても知られている。(例えば、Ziabicki,Andrzej、Fundamentals of Fibre Formation:The Science of Fibre Spinning and Drawing(Wiley,London,1976)を参照)。初期の繊維形成中に繊維内に配向を与える必要はなく、繊維形成後に与えることができ、最も一般的には延伸又は延展工程を用いて行なわれる。
【0181】
寸法安定性不織布繊維ウェブには、実質的にサブマイクロメートル繊維である微細繊維、実質的にマイクロファイバーである微細繊維、又はこれらの組み合わせが含まれ得る。一部の代表的実施形態では、寸法安定性不織布繊維ウェブは、サブマイクロメータ不織布ファイバーに支持構造を与える、より粗いマイクロファイバーに混じり合ったサブマイクロメートル繊維により形成されていてもよい。支持構造は、微細サブマイクロメートル繊維を好ましい低ソリディティ形態で支持するための弾性及び強度を与えることができる。支持構造は、様々な異なる成分から、単一で又は組み合わせて、作製することができる。支持成分の例としては、例えばマイクロ繊維、不連続配向繊維、天然繊維、多孔質発泡材料、及び連続又は不連続の非配向繊維が挙げられる。
【0182】
サブマイクロメートル繊維は通常、非常に長いが、一般には不連続とみなされている。ステープルファイバーの長さが有限なのとは対照的に長さ対直径の比が無限に近づく、これらサブマイクロメートル繊維の大きな長さによって、サブマイクロメートル繊維はマイクロ繊維のマトリックス内で良好に保持される。これらは普通は有機のポリマーであり、マイクロ繊維と分子的に同一のポリマーであることが多い。サブマイクロメートル繊維及びマイクロ繊維の流れが合流するにつれ、サブマイクロメートル繊維はマイクロ繊維間に分散される。特にx−y次元(すなわちウェブ平面)においてはかなり均一な混合物が得られ、z次元の分布は距離、角度、並びに合流する流れの質量及び速度の制御といった、特定の工程によって制御され得る。
【0183】
本開示の配合された不織複合繊維ウェブに含まれる、マイクロファイバーに対するサブマイクロメートル繊維の相対量は、意図されているウェブの用途次第で変化させることができる。有効量、すなわち所望の性能を達成するために有効な量は重量に関して大きい必要はない。普通、マイクロファイバーは、ウェブの繊維の少なくとも1重量%で、約75重量%以下を占める。マイクロ繊維の表面積が大きいので、少量で所望の性能を達成できる。非常に小さなマイクロ繊維を含むウェブの場合、マイクロ繊維は一般にウェブの繊維表面積の少なくとも5%を占め、より典型的には繊維表面積の10又は20%以上を占める。本発明の代表的実施形態で特に利点となるのは、濾過又は断熱又は防音といった必要な用途に直径の小さい繊維を供することができることである。
【0184】
代表的な一実施形態では、マイクロファイバー流を形成し、サブマイクロメートル繊維流を別個に形成してマイクロファイバー流に加えて、寸法安定性不織布繊維ウェブを形成する。別の一実施形態では、サブマイクロメートル繊維流を形成し、マイクロファイバー流を別個に形成してサブマイクロメートル繊維流に加えて、寸法安定性不織布繊維ウェブを形成する。これらの代表的実施形態では、サブマイクロメートル繊維流及びマイクロ繊維流の一方又は双方が配向されている。更に別の実施形態においては、配向サブマイクロメートル繊維流を形成し、例えば米国特許第4,118,531号(Hauser)に記載の方法を用いて、不連続マイクロファイバーをサブマイクロメートル繊維流に加える。
【0185】
一部の代表的実施形態では、寸法安定性不織布繊維ウェブの製造方法は、サブマイクロメートル繊維集団及びマイクロファイバー集団を、繊維流の混合、水流交絡、湿式形成、プレキシフィラメント形成、又はこれらの組み合わせにより混合して寸法安定性不織布繊維ウェブとすることを含む。サブマイクロメートル繊維の集合とマイクロ繊維の集合との組み合わせには、一方又は双方の種類の繊維の複数流を用いることができ、これらの繊維流をいかなる順序で組み合わせてもよい。このようにして、望まれる多様な濃度勾配及び/又は層の構造を呈する不織複合繊維ウェブを形成することができる。
【0186】
例えば、特定の代表的実施形態では、サブマイクロメートル繊維の集合を、マイクロ繊維の集合と組み合わせて不均質の繊維混合物を形成することができる。別の代表的実施形態では、サブマイクロメートル繊維の集合を、マイクロ繊維の集合を含む下層の上に上層として形成してもよい。別の特定の代表的実施形態では、マイクロ繊維の集合を、サブマイクロメートル繊維の集合を含む下層の上に上層として形成してもよい。
【0187】
別の代表的実施形態では、この不織布物品は、任意でマイクロファイバーを含む支持層の上にサブマイクロメートル繊維集団を堆積することにより形成して、支持層又は基材上にサブマイクロメートル繊維集団を形成してもよい。本方法は、任意でポリマーマイクロファイバーを含む支持層を、1マイクロメートル(μm)以下のメジアン繊維径を有するサブマイクロメートル繊維の繊維流中に通すことを含んでもよい。繊維流中を通過している間に、サブマイクロメートル繊維を支持層に堆積させ、一時的又は恒久的に支持層に結合することができる。これら繊維が支持層上に堆積すると、場合によっては、繊維は互いに結合し、支持層上にある間に更に硬化する。
【0188】
本発明の好ましい特定の実施形態では、サブマイクロメートル繊維の集合を、マイクロ繊維の集合の少なくとも一部を含む任意の支持層と組み合わせる。本発明の好ましい別の実施形態では、サブマイクロメートル繊維の集合は任意の支持層と組み合わされ、次いで、マイクロ繊維の集合の少なくとも一部と組み合わされる。
【0189】
1.サブマイクロメートル繊維の形成
サブマイクロメートル繊維の製造及び堆積には数々の方法を用いることができ、これはメルトブロー法、溶融紡糸、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。特に好適なプロセスとしては、米国特許第3,874,886号(Levecqueら)、同第4,363,646号(Torobin)、同第4,536,361号(Torobin)、同第5,227,107号(Dickensonら)、同第6,183,670号(Torobin)、同第6,743,273号(Chungら)、同第6,800,226号(Gerking)及びドイツ特許第19929709(C2)号(Gerking)に開示されているプロセスが挙げられるがこれらに限定されず、これらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0190】
サブマイクロメートル繊維を形成するのに好適なプロセスとしてはまた、例えば、米国特許第1,975,504号(Formhals)に記載のプロセスといった電界紡糸プロセスが挙げられ、この開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。他の、サブマイクロメートル繊維を形成するのに好適なプロセスは、米国特許第6,114,017号(Fabbricanteら)、同第6,382,526(B1)号(Renekerら)及び同第6,861,025(B2)号(Ericksonら)に開示されており、これらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0191】
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブの製造方法は、上述のポリマー材料のいずれかより形成される繊維を含有するサブマイクロメートル繊維構成要素の形成に用いることができる。典型的には、サブマイクロメートル繊維形成方法の工程は、熱形成可能な材料を約130℃〜約350℃の範囲の溶融押出温度で溶融押出することを伴う。ダイアセンブリ及び/又は同軸ノズルアセンブリ(例えば上で参照したTorobinの方法を参照)は、紡糸口金及び/又は同軸ノズルの集合を含み、溶融した熱形成可能材料がこれらを通過して押し出される。代表的な一実施形態では、同軸ノズルアセンブリは配列状に形成された同軸ノズルの集合を含み、複数の繊維流が支持層又は基材上に押し出される。例えば、米国特許第4,536,361号(図2)及び同第6,183,670号(図1及び2)を参照されたい。
【0192】
2.マイクロファイバーの形成
マイクロファイバーの製造及び堆積には数々の方法を用いることができ、メルトブロー法、溶融紡糸、フィラメント押出、プレキシフィラメント形成、スパンボンド、湿式紡糸、乾式紡糸、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。マイクロファイバーを形成するのに好適なプロセスは、米国特許第6,315,806号(Torobin)、同第6,114,017号(Fabbricanteら)、同第6,382,526(B1)号(Renekerら)及び同第6,861,025(B2)号(Ericksonら)に開示されている。あるいは、例えば、米国特許第4,118,531号(Hauser)に記載のプロセスを用いて、マイクロファイバー集団が形成されて又はステープル繊維に添加されて、サブマイクロメートル繊維集団と組み合わされてもよく、この開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。特定の代表的実施形態では、マイクロ繊維の集合は、後述するように、熱結合、接着剤結合、粉末バインダ結合、水流交絡、ニードルパンチ、カレンダー加工、又はこれらの組み合わせを用いて結合が達成できる、結合させたマイクロ繊維のウェブを含んでいてもよい。
【0193】
3.寸法安定性不織布繊維ウェブを形成するための装置
ポリマー微細繊維を溶融加工するための様々な装置及び技術が当該技術分野において既知である。このような装置及び技術は、例えば、米国特許第3,565,985号(Schrenkら)、同第5,427,842号(Blandら)、同第5,589,122号、及び同第5,599,602号(Leonard)、並びに同第5,660,922号(Henidgeら)に開示されている。溶融加工装置の例としては、本発明の微細繊維を溶融加工するための押出成形機(単軸及び二軸)、バンバリーミキサー、及びブラベンダー押出成形機が挙げられるが、これらに限定されない。
【0194】
(BMF)メルトブロープロセスは特に、分子配向されていない繊維の不織布ウェブを形成する代表的な一方法であり、ポリマー流体(溶融状態又は溶液として)が1列以上の孔から押し出され、高速度のガスジェットに衝突する。ガスジェット、典型的には加熱空気は、ポリマー流体を取り込み、これを引き寄せ、ポリマーを繊維に固化するのに役立つ。中実の繊維は、次いで中実又は多孔質の表面上に不織布ウェブとして収集される。本プロセスは、Van Wenteによって「Superfine Thermoplastic Fibers」(Industrial Engineering Chemistry,vol.48,pp.1342〜1346)において記述されている。メルトブローンプロセスの改善されたバージョンが、米国特許第3,849,241号に記載されるようにBuntinらによって記載されており、その全体が本明細書において参照により組み込まれる。
【0195】
微細繊維を製造するための代表的なBMFプロセスの一部として、溶融形態の熱可塑性ポリエステル及びポリプロピレンが、所望による粘度調整剤に対して十分な量で混合され、上述のような平均直径特性を有する微細繊維を得ることができる。微細繊維の成分を、押出成形機内で混合し、押出成形機を通して運搬し、好ましくは溶融物中でポリマー分解又は制御されない副反応が実質的に生じずに、ポリマーを得ることができる。プロセス温度は、生分解性脂肪族ポリエステル粘度調整剤を混合するのに十分であり、ポリマーを押し出すことが可能である。可能性のある分解反応には、エステル交換、加水分解、鎖の切断及びラジカル鎖分解が挙げられ、加工条件はこのような反応を最低限に抑えるべきである。
【0196】
使用される場合、本明細書に記載の粘度調整剤は、純粋状態で繊維押し出しプロセスに添加されることを必要としない。粘度調整剤は、押し出しに先立って脂肪族ポリエステル又は他の材料と混合されてもよい。一般に、粘度調整剤のような添加剤は、押し出しに先立って混合されるとき、それらは最終繊維に望ましいものよりも高い濃度で混合される。この高濃度化合物は、マスターバッチと称される。マスターバッチが使用されるとき、繊維押し出しプロセスに入る前に、マスターバッチは一般的に純粋なポリマーで希釈される。複数の添加物がマスターバッチ内に存在してもよく、複数のマスターバッチが繊維押し出しプロセスにおいて使用されてもよい。
【0197】
本明細書に提供されるように、粘度調整剤の使用が有効であり得る他のメルトブローンプロセスは、米国特許出願公開第2008/0160861号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0198】
マイクロ繊維及びサブマイクロメートル繊維の状態に応じて、捕集中に両繊維間にある程度結合が生じる場合がある。但し、所望の凝集性を有するマトリックスを提供し、ウェブをより取り扱い易くして、サブマイクロメートル繊維がマトリックス内により良好に保持されるようにするため(繊維の「結合」とは、ウェブが通常の取り扱いに供されても概ね分離しないように繊維同士を互いに固着させることを意味する)捕集されたウェブにおけるマイクロ繊維間では更なる結合が必要であるのが普通である。
【0199】
点接着プロセス又は円滑なカレンダロールにより印加される熱及び圧力を用いる従来の接着技術が用いられ得るが、かかるプロセスは、繊維の望ましくない変形又はウェブの圧縮を引き起こす場合がある。マイクロファイバー結合のより好ましい技法は、米国特許出願公開第2008/0038976号に教示されている。この技法を行うための装置は、図面の図1、5及び6に例示されている。
【0200】
簡潔に要約すると、本発明に適用される場合、この好ましい技法は、マイクロファイバー及びサブマイクロメートル繊維の捕集したウェブを、制御下の加熱及び急冷作業に供することを伴い、本作業は、a)マイクロファイバーを軟化するのに十分な温度に加熱された気流をウェブ中に強制的に通し、この加熱流を、繊維が完全に溶融するには短い別個の時間だけ付与して、マイクロファイバーを繊維の交点(例えば凝集性を有する、又は結合したマトリックスを形成するために十分な交点)にて十分に互いに結合させることと、b)直ちに、加熱流より少なくとも50℃以下低い温度にて気流をウェブに強制的に通し、繊維を急冷すること、とを含む。上述の米国特許出願公開第2008/0038976号で規定されているように、「強制的に」とは、気流を推進しウェブを通過させるために通常の室内圧力に加えて気流に力を加えることを意味し、「直ちに」とは、同作業の一部として行なう、すなわち、次の処理工程の前にウェブがロールに巻回される場合に生じるような保管期間を介在することがないことを意味する略記された用語として、この技法は急冷フロー加熱技法及び装置は急冷フローヒーターとして記述される。
【0201】
サブマイクロメートル繊維は、結合操作中に、実質的に溶融する、又は繊維構造を失うことはなく、繊維の原寸法を有する個別のマイクロ繊維のままでいることが分かっている。特定の理論に束縛されるものではないが、出願人は、サブマイクロメートル繊維はマイクロ繊維とは異なる結晶性の低い形態を有すると信じ、結合操作中に限られた熱をウェブに加えると、この熱は、サブマイクロメートル繊維の溶融が起きる前に、サブマイクロメートル繊維中で結晶成長が現れる際に消耗されてしまう、と理論づけている。この理論が正しいかどうかにかかわらず、サブマイクロメートル繊維が実質的に溶融又は歪曲せずにマイクロ繊維の結合が起きることは事実であり、ウェブ完成品の特性に有益であり得る。
【0202】
記載の方法の一変形例は、上述の米国特許出願公開第2008/0038976号により詳細に教示されるように、マイクロファイバー中の2つの異なる種類の分子相の存在を利用していて、第一の種類は、鎖延長又は歪誘起による結晶性ドメインが比較的多く存在することから微結晶特性分子相と呼ばれ、第二の種類は、結晶秩序が低い(すなわち、鎖延長がない)ドメイン及び非晶質ドメインが比較的多く存在することから非晶質特性相と呼ばれるが、後者は、結晶化には足りない程度の何らかの秩序又は配向を有する場合がある。明確な境界を必要とせず、互いに混合した状態で存在できるこれら異なる2種類の相は、異なる溶融及び/又は軟化特性を含む異なる種類の特性を有する。鎖伸長された結晶性ドメインがより多量に存在することを特徴とする第一相は、第二相が溶融又は軟化する温度(例えば、秩序がより低い結晶性ドメインの融点によって変更されるような非晶性ドメインのガラス転移温度)より高い温度(例えば、鎖伸長された結晶性ドメインの融点)にて溶融する。
【0203】
記載された方法の記述される変更では、加熱は、結晶性を特徴とする相が溶融していないままで繊維の非晶質を特徴とする相が溶融又は軟化するのに十分な温度及び時間である。一般に、加熱された気体状のストリームは、繊維のポリマー材料の溶融開始温度より高い温度である。加熱後、ウェブは上述したように急速に急冷される。
【0204】
捕集したウェブをこのような温度で処理すると、マイクロ繊維の形態が精製されることが分かり、これは次のように理解される(「理解」とは一般に理論に基づく考察を含むものであり、本明細書中で「理解」と述べることによって束縛されることは本発明者らの望むところではない)。非晶質を特徴とする相については、望ましくない(軟化を妨げる)結晶成長の影響を受け易い相の分子材料の量は、処理前ほど多くない。非晶質を特徴とする相は、従来の未処理繊維では熱結合操作の間に結晶性が不必要に増大することになる分子構造のある種の洗浄又は低減を受けると理解される。本発明の特定の代表的実施形態では処理された繊維は、ある種の「反復的軟化」が可能である可能性がある。すなわち、繊維全体が溶融してしまう温度より低い温度領域内での温度上昇及び下降のサイクルに繊維が曝されるにつれ、繊維、特に繊維の非晶質特性相が、軟化及び再固結のサイクルをある程度繰り返すことを意味する。
【0205】
実際の期間において、繰り返し可能な軟化は、処理されたウェブ(一般に加熱及び急冷処理の結果として有用な結合を既に示している)が加熱されて更なる繊維の自己結合を生じ得る場合に示される。軟化及び再固結のサイクルは無限には継続しなくてもよいが、一般に、例えば本発明の特定の代表的実施形態に係る熱処理の間に繊維が初めて熱に曝されることによって結合し、後に再び加熱されて再軟化及び更なる結合をもたらすか、又は所望により、カレンダー加工又は再成形のような他の操作を行なえば、十分である。例えば、繊維の結合力向上を利用して、ウェブを平滑面にカレンダー加工したり、又は、例えばフェイスマスクに成型するなど非平面形状を与えてもよい(但しこのような場合の結合は自己結合には限られない)。
【0206】
非晶質特性相又は結合相がウェブ結合、カレンダー加工、成形又はその他の同様の操作中に上述の軟化機能を有する一方、繊維の微結晶特性相もまた重要な役割、すなわち繊維の基本的な繊維構造を強化する役割を有する。結晶子を特徴とする相は、一般に、結合などの動作の間溶融しないままであることができるが、それは、その融点が、非晶質を特徴とする相の融点/軟化点よりも高いためであり、したがって、繊維全体に延びる、損なわれていないマトリックスのままであり、繊維構造及び繊維寸法を支持する。
【0207】
したがって、自己結合操作においてウェブを加熱することにより、繊維交点にてある程度流動及び合体することによって繊維が共に結合するとしても、基本的に個別の繊維構造は、交点間及び結合間の繊維長さにわたって実質的に保持される。好ましくは繊維の断面は、交点間又は操作中に形成される結合間の繊維長さにわたって変化しないままである。同様に、ウェブをカレンダー加工することにより、カレンダー加工操作の圧力及び熱により繊維が再構成される(それによって繊維は、カレンダー加工中に押圧された形状を永久的に保持し、ウェブの厚さをより均一にする)としても、繊維は一般に、個別の繊維のままであり、結果として所望のウェブ多孔性、濾過、及び絶縁特性が保持される。
【0208】
急冷の1つの目的は、ウェブに含有されるマイクロファイバーに望ましくない変化が生じる前に熱を取り除くことである。急冷の別の目的は、ウェブ及び繊維から熱を迅速に除去することであり、それにより後で繊維に生じる結晶化又は分子秩序化の程度及び特性を制限する。溶融/軟化状態から固化状態へ急速に急冷することにより、非晶質特性相は凍結してより純度の高い結晶質形態となり、繊維の軟化又は反復的軟化を阻害する分子状物質の量は減少すると考えられる。ほとんどの用途で急冷は非常に好ましいが、一部の用途では必ずしも必要であるとは限らない。
【0209】
急冷を達成するために、塊を公称融点より少なくとも50℃以下低い温度の気体によって冷却するのが望ましい。また急冷気体は、少なくとも1秒間、付与するのが望ましい(公称融点はポリマー供給元が記載していることが多い。示差走査熱量測定を用いて同定することもでき、本明細書で用いる場合、ポリマーに関する「公称融点」は、ポリマーの溶融領域において最大値が1つだけの場合には二次熱総熱流量DSCプロットの最大ピークとして定義され、複数の融点を示す複数の最大値が存在する場合(例えば、2つの別個の結晶相の存在のため)、最も高い振幅の溶融ピークが生じる温度として定義する)。いずれの場合も、急冷気体又は他の流体は繊維を急速に固化するに足る十分な熱容量を有する。
【0210】
本発明の特定の代表的実施形態の一利点として、マイクロファイバーウェブ中に保持されているサブマイクロメートル繊維が、全てサブマイクロメートル繊維に存在する場合に比べ、圧縮からより良く保護される可能性が挙げられる。マイクロ繊維は一般に、サブマイクロメートル繊維より大きく、硬く、そして強く、またマイクロ繊維の材料とは異なる材料から製造することができる。サブマイクロメートル繊維間にマイクロ繊維が存在し、圧力を与える物体があることで、サブマイクロメートル繊維にかかる圧壊力の付与に制限がかかる可能性がある。特に、非常に壊れやすいことがあるサブマイクロメートル繊維の場合、本発明の特定の代表的実施形態により圧縮又は圧壊に対する抵抗力が増すことは、重要な利点をもたらす。本開示のウェブに、例えば巨大な貯蔵ロール又は二次的処理において巻回されることで圧力がかけられても、本開示のウェブは、ウェブ圧縮に対する良好な抵抗力を示すことができるが、もしそうでない場合は圧力低下が増大してフィルタの捕集性能が悪化する。マイクロ繊維が存在することで、ウェブ強度、剛性及び取り扱い特性といった他の特性も加えることができる。
【0211】
繊維の直径は、必要とされる濾過、音吸収、及びその他の特性を提供するために調整することができる。例えば、望ましくは、マイクロファイバーが5〜50マイクロメートル(μm)のメジアン径を有し、サブマイクロメートル繊維が0.1μm〜1μm以下、例えば0.9μmのメジアン径を有することができる。好ましくは、マイクロファイバーが5μm〜50μmのメジアン径を有するのに対し、サブマイクロメートル繊維は好ましくは0.5μm〜1μm以下、例えば0.9μmのメジアン径を有する。
【0212】
上述のように、本発明の特定の代表的実施形態は特に、非常に小さなマイクロファイバー、例えばメジアン径が1μm〜約2μmの極細マイクロファイバーを、サブマイクロメートル繊維と混合するのに有用であり得る。また、上述のように、ウェブ中で例えばマイクロ繊維に対するサブマイクロメートル繊維の比率に関しウェブの厚さにわたって勾配を設けるのが望ましい場合があり、これは、サブマイクロメートル繊維流の空気速度又は質量流量などの処理条件、又は、マイクロ繊維流からダイまでの距離及びサブマイクロメートル繊維流の角度を含む、マイクロ繊維流及びサブマイクロメートル繊維流の交点配置を変えることにより達成できる。本開示による寸法安定性不織布繊維ウェブの一端縁近傍にサブマイクロメートル繊維が集中していると、気体及び/又は液体濾過用途において特に有用であり得る。
【0213】
本開示の様々な実施形態に従ってマイクロ繊維又はサブマイクロメートル繊維を調製する際、異なる繊維形成材料を溶融紡糸押出成形ヘッド又はメルトブローダイの異なる開口部から押し出して、繊維混合物を含むウェブを調製してもよい。寸法安定性不織布繊維ウェブを帯電させてその濾過性能を高めるための、様々な方法がまた利用可能である。例えば、米国特許第5,496,507号(Angadjivand)を参照。
【0214】
ウェブをサブマイクロメートル繊維自体から調製できても、このようなウェブは薄く脆弱であり得る。しかし、凝集性で結合され配向された複合繊維構造にて、サブマイクロメートル繊維集団をマイクロファイバー集団に組み入れることで、強靭で自立型のウェブ又はシート材料を、任意の支持層と共に又は無しに、得ることができる。
【0215】
上述の寸法安定性不織布繊維ウェブ製造方法に加え、以下の加工工程のうちの1つ以上を形成後のウェブに対し実施してもよい。
【0216】
(1)寸法安定性不織布繊維ウェブを更なるプロセス作業に向けたプロセス経路に沿って前進させる工程、
(2)1つ以上の追加層をサブマイクロメートル繊維成分の、マイクロ繊維成分の、及び/又は任意の支持層の、外面と接触させる工程、
(3)寸法安定性不織布繊維ウェブをカレンダー加工する工程、
(4)寸法安定性不織布繊維ウェブを表面処理剤又は他の組成物(例えば、難燃剤組成物、接着剤組成物、又は印刷層)でコーティングする工程、
(5)寸法安定性不織布繊維ウェブを厚紙又はプラスチックチューブに取り付ける工程、
(6)寸法安定性不織布繊維ウェブをロール形状に巻き上げる工程、
(7)寸法安定性不織布繊維ウェブを繊細化して、2つ以上のスリットロール及び/又は複数のスリットシートを形成する工程、
(8)寸法安定性不織布繊維ウェブを成形型に入れ、寸法安定性不織布繊維ウェブを新たな形状に成形する工程、
(9)存在する場合には、露出した任意の感圧性接着剤の層の上に剥離ライナーを塗布する工程、及び
(10)寸法安定性不織布繊維ウェブを、接着剤又は、クリップ、ブラケット、ボルト/ネジ、釘、及びストラップを含むがこれに限られないその他いずれかの取り付け手段を介し、別の基材に取り付ける工程。
【0217】
D.寸法安定性不織布繊維ウェブから形成された物品
本開示は、多様な用途における本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブの使用方法もまた、目的とする。更に別の態様においては、本開示は、本開示による寸法安定性不織布繊維ウェブを含む物品に関する。本発明の不織布ウェブは、別の材料に積層されてもよい。積層に好適な材料としては、本明細書に記載のような支持層が挙げられるが、これに限定されない。積層に好適な方法としては、熱結合、接着剤結合、粉末バインダ結合、水流交絡、ニードルパンチ、カレンダー加工及び超音波溶接が挙げられるが、これらに限定されない。
【0218】
本発明の不織布ウェブ及びこの積層体はまた、接着剤結合、粉末バインダ結合、水流交絡、ニードルパンチ、カレンダー加工、ひだ付け、折り畳み、成型、折りたたみ、成形、切断、超音波溶接又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない方法を用いて、更に加工又は成形してもよい。不織布ウェブはまた、フィルムコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない方法を用いて、コーティングしてもよい。
【0219】
代表的な実施形態では、この物品は、気体濾過物品、液体濾過物品、音吸収物品、断熱物品、表面洗浄物品、細胞成長支持物品、薬物送達物品、個人用衛生物品、歯科衛生物品、外科用ドレープ、外科用機器隔離ドレープ、外科用ガウン、医療用ガウン、ヘルスケア患者用ガウン及び衣服、エプロンその他の衣類、殺菌ラップ、拭き取り用品、農業用布地、食品梱包、梱包、感圧性接着剤コーティングされた創傷包帯物品、医療用テープなどのテープとして使用することができる。
【0220】
例えば、本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、ソリディティが低いことで圧力損失が抑えられることから、気体濾過用途において有益であり得る。サブマイクロメートル繊維ウェブは一般に、ソリディティを下げることでその圧力低下が抑えられる。本開示の、低ソリディティのサブマイクロメータ寸法安定性不織布繊維ウェブの微粒子充填と同時に、より低い圧力降下の増加もまた、結果としてもたらされる場合がある。集塵用サブマイクロメートル繊維形成の現在の技術では、より粗いマイクロ繊維ウェブに比べて、特に微細なサブマイクロメートル繊維ウェブはソリディティがより高いことが1つの原因となり、圧力低下がかなり高い。
【0221】
加えて、サブマイクロメートル繊維は集塵効率を改良させる可能性があるため、サブマイクロメートル繊維を気体濾過に用いることは特に有益であり得る。特に、サブマイクロメートル繊維は、小径の空気輸送微粒子の捕獲において、より粗い繊維よりも優れている場合がある。例えば、サブマイクロメートル繊維は、寸法が約1000ナノメートル(nm)未満、より好ましくは約500nm未満、更により好ましくは約100nm未満、最も好ましくは約50nm未満の空気中の粒状物質を、より効率よく捕捉し得る。このような気体フィルタは、個人用呼吸保護具、暖房、換気、及び空調(HVAC)用フィルタ、自動車用エアフィルタ(例えば、自動車エンジン用エアクリーナ、自動車用排気ガス濾過、自動車の乗員室空気濾過)、及びその他の気体中粒子濾過用途において特に有用であり得る。
【0222】
また、サブマイクロメートル繊維を本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブの形態で含有する液体フィルタは、またサブマイクロメータサイズの液体中の粒状物質捕捉のために小さな孔径を維持しながら、深部捕集性能を向上させるという利点を有し得る。これらの性状は、詰まりを伴わずにチャレンジ微粒子(challenge particulates)をフィルタがより多く捕獲することを可能にすることによって、フィルタの充填性能を改善する。
【0223】
本開示の、繊維を含有する寸法安定性不織布繊維ウェブはまた、膜を支持するための好ましい基材であり得る。このソリディティの低い微細ウェブは、メンブレンの物理的支持体としてだけでなく、深さプレフィルタ(depth pre−filter)としても、メンブレンの寿命を改善することができる。そのようなシステムの使用は、非常に有効な対称又は非対称メンブレンとして作用できる。そのようなメンブレンの用途としては、電解質排除、限外濾過、逆浸透、選択的結合、及び/又は吸着、及び燃料電池輸送及び反応システムが挙げられる。
【0224】
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、細胞増殖を促す合成マトリックスとしてもまた有用であり得る。微細なサブマイクロメートル繊維を伴う開かれた構造は、自然発生的システムを模倣することができ、より生体内的な挙動を促進する。これは、現在の製品(例えばDonaldson Corp.Minneapolis,Minnesota)が市販するDonaldson ULTRA−WEB(商標)Synthetic ECM)では、繊維マトリックス内に細胞がほとんど又は全く浸透せずに、ソリディティの高い繊維のウェブが合成支持膜として機能するのとは対照的である。
【0225】
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブにより得られる構造はまた、表面洗浄用の拭取り布としても効果的であり、微細なサブマイクロメートル繊維が柔らかい拭取り布を形成し、一方では、ソリディティの低いことが洗剤貯留部及び汚物捕捉用の高い気孔体積が得られるという利点をもたらし得る。本発明の親水性の寸法安定性不織布繊維ウェブは、吸収性乾燥拭き取り用品として、又は、典型的には揮発性溶媒中に界面活性剤などの洗浄剤を有するいわゆるウェット拭き取り用品として、使用されてもよい。これらはまた、皮膚及び粘膜組織上で使用するための化粧用拭き取り用品としてとても有用である。
【0226】
防音用途及び断熱用途では、ソリディティの低い形態の微細なサブマイクロメートル繊維を提供することで、サブマイクロメートル繊維の表面積をより露出させることで音吸収性が高まり、かつ、所定の坪量に対してより厚いウェブとすることで特に低周波数の音吸収性が高まる。特に断熱用途においては、サブマイクロメートル繊維を含有する微細サブマイクロメートル繊維断熱材は、断熱空気を捕捉するためソリディティが非常に低いウェブでありながら、柔らかな感触と高いドレープ性を有するであろう。一部の実施形態では、この不織布ウェブは、気体空隙を包含する中空繊維又はフィラメントを含み得る。スパンボンドプロセスを使用して、空隙を包含する連続した中空繊維又はフィラメントの不織布を調製することができ、これは特に防音及び断熱に有用である。この空隙は、これから製造される寸法安定性不織布繊維ウェブ及び物品の、音の減衰、熱伝導の低減、及び重量削減を可能にし得る。
【0227】
そのような防音及び/又は断熱物品を利用する一部の実施形態では、領域全体を、本開示の実施形態による寸法安定性不織布繊維ウェブ単独で、あるいは支持層の上に配置することで、取り囲むことができる。寸法安定性不織布繊維ウェブを含む支持構造及び繊維は、互いに均一に分散されていてもよいが、必ずしもその必要はない。様々な孔径、高密度領域、外皮、又は流路を設ける上で、緩衝性、弾性、及び非対称充填におけるフィルタの濾材充填において利点となる場合がある。
【0228】
微細繊維は特に、吸収性又は撥水性脂肪族ポリエステル不織布ガウン及び外科用に使用されるフィルム積層体ドレープ、並びに、パーソナルケア吸収体、例えば、婦人衛生パッド、おむつ、失禁パッド、拭き取り用品、流体フィルタ、断熱材等を作製するのに使用される。
【0229】
本開示の発明の様々な実施形態はまた、濾材、工業用拭き取り用品、及びパーソナルケア、及びホームケア製品、例えばおむつ、顔用ティシュ、顔用拭き取り用品、ウェット拭き取り用品、乾燥拭き取り用品、使い捨て吸収性物品及び衣類、例えば幼児のおむつ若しくはトレーニングパンツを含む使い捨て及び再利用可能な吸収性物品、成人用失禁製品、婦人用衛生物品、例えば生理用ナプキン、パンティライナーなどを含む、繊維の布地及びウェブから作製された有用な物品も提供する。本発明の微細繊維は、衣類、例えばコート、ジャケット、手袋、耐冷パンツ、ブーツ等の断熱、並びに防音体を作製するのに有用であり得る。
【0230】
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブから製造され得る物品としては、外科用ドレープ及びガウン、手術用ドレープ、手技用ドレープ、プラスチック特殊ドレープ、切開用ドレープ、バリアドレープ、バリアガウン、SMS、SMMS又は他の不織布ガウン、SMS、SMMS又は他の不織布殺菌ラップ及びこれらに類するもの;創傷包帯、創傷吸収体、及び創傷接触層;手術中に血液及び体液を吸収するのに使用する外科用スポンジ;外科用インプラント;及び他の医療用装置を挙げることができる。本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブから製造される物品は、溶媒溶接、熱溶接、又は超音波溶接により互いに接合され、あるいは他の適合性物品に接合され得る。本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、他の材料と共に使用して、シース/コア材料などの構成体、積層体、2つ以上の材料の複合構造を形成でき、あるいは、様々な医療用デバイス上のコーティングに有用であり得る。本明細書に記載されている寸法安定性不織布繊維ウェブは、外科用スポンジの製造に特に有用である。
【0231】
更に別の態様では、本発明は、水性媒体不透過性裏張りシートを含む、多層水性液体吸収性物品を提供する。例えば、重要なことに、一部の外科用ドレープは、トップシート内に吸収されている液体がこれを通じて皮膚の表面に伝わり、そこで皮膚上に存在するバクテリアによって汚染されることを防止するために液体不透過性である。他の実施形態では、構造体は、例えば使い捨ておむつ、拭き取り用品若しくはタオル、生理用ナプキン、及び失禁パッドを作製するのに有用な、上記のウェブ又はその間に並置された布地から作製された水性媒体透過性トップシート、及び水性液体吸収性(すなわち、親水性)層を更に含んでもよい。
【0232】
更に別の態様では、単一若しくは多層水及び体液透過性物品、例えば、外科用若しくは医療用ガウン若しくはエプロンは、少なくとも一部分において本明細書に記載の微細繊維のウェブで形成され、水性流体反撥特性を有する。例えば、SMSウェブは、少なくともM(メルトブローン、ブローンマイクロファイバー)層中に微細繊維を有して、形成されてもよく、しかし、それらはまたS(スパンボンド層)も含んでもよい。M層はその中に組み込まれたフッ素性化学物質などの撥水性添加剤を更に有してもよい。この方式において、病原微生物を含有する恐れがある血若しくは他の体液の吸収を避けるために、ガウンは流体反撥性にされる。あるいは、ウェブは、フッ素性化学物質、シリコーン、炭化水素又はこれらの組み合わせなどの反撥仕上げで後処理されてもよい。
【0233】
更に別の態様では、器具の殺菌を必要とする手術又は他の処置に先立って、清浄な機器を覆うために使用されるラップが形成され得る。これらのラップは殺菌ガス、例えば蒸気、エチレンオキシド、過酸化水素などの浸透を可能にするが、それらはバクテリアを浸透させない。これらは、少なくとも一部分において本明細書に記載の微細繊維のウェブで形成され、水性流体反撥特性を有し得る殺菌ラップのように、単層若しくは多層の撥水性物品から形成されてもよい。例えば、SMS、SMMS、又は他の不織布構造ウェブは、少なくともM(メルトブローン、吹込マイクロファイバー)中に微細繊維を有して形成されてもよく、しかし、それらはS(スパンボンド層も同様に)含んでもよい。M層はその中に又はその上に組み込まれたフッ素性化学物質などの撥水性添加剤を更に有してもよい。
【0234】
好ましいフッ素性化学物質は、少なくとも4つの炭素原子を有するペルフルオロアルキル基を含む。これらのフッ素性化学物質は、小分子、オリゴマー、又はポリマーであってもよい。好適なフッ素性化学物質は、米国特許第6,127,485号(Klunら)及び同第6,262,180号(Klunら)に見ることができ、これらの開示はその全体が参照により組み込まれる。他の好適な撥水剤としては、本出願人らの同時係属出願の国際公開第2009/15349号に開示されているフッ素性化学物質及びシリコーン流体撥水剤を挙げてもよく、引用優先度は、上記出願にある。場合によっては、炭化水素タイプの撥水剤が好適であり得る。
【0235】
本明細書に記載の、そのような単一若しくは多層忌避物品から作製された殺菌ラップは、殺菌ラップに要求される特性の全て、すなわち、蒸気若しくはエチレンオキシド、又はラップが覆う物品の殺菌中(及び乾燥若しくは通気中)の他のガス状の減菌剤への透過性、水性汚染によってラップの含有物の汚染を防ぐための保管中の液体水の撥水性、及び殺菌されたパックの保管中に空中又は水性微生物による汚染への複雑な経路バリアを有する。
【0236】
本開示の発明の代表的な実施形態の繊維ウェブは、無数の化合物での処理によって更に撥水性をもたせることができる。例えば、布地は、パラフィンワックス、脂肪酸、蜜蝋、シリコーン、フッ素性化学物質、及びこれらの組み合わせを含む表面処理を形成する支柱ウェブであってもよい。例えば、撥水剤仕上げは、米国特許第5,027,803号、同第6,960,642号、及び同第7,199,197号に開示されるように適用されてもよく、これらの全ては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。撥水剤仕上げは、また、米国特許第6,262,180号に記載されるような溶融添加剤であってもよく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0237】
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブを含む物品は、ポリマー樹脂からのポリマーシートのような製品を製造するための当該技術分野において既知のプロセスによって製造することができる。多くの用途では、このような物品は、2時間浸漬し、乾燥させた後、物理的一体性(例えば、引張強度)が実質的に低下することなく、23℃で水中に定置され得る。典型的には、これらの物品は水をほとんど含まず、又は全く含まない。押出成形、射出成形又は溶媒鋳造後の物品中の水分は典型的に、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.2重量%以下である。
【0238】
本発明の好ましい親水性の添加剤界面活性剤の一部は、それらで作製された布地及びフィルムの、接着剤、熱及び/又は超音波による固着を可能にし得る。本開示の代表的な寸法安定性不織布繊維ウェブは、外科用ドレープ及びガウンにおける使用に特に好適であり得る。本開示の寸法安定性繊維ウェブを含む代表的な不織布ウェブ及びシートは、熱封止して、強力な結合を形成することができ、これにより、ヒートシールされて特殊なドレープの製作を可能にする強固な結合を形成することができ、使い捨て製品において重要であり得る再生可能な資源から製造することができ、不織布の場合に高い表面エネルギーを有して湿潤性及び流体吸収性を可能にすることができる。他の用途では、低表面エネルギーが撥流体性を付与するのに望ましいものであり得る。
【0239】
本開示の特定の寸法安定性不織布繊維ウェブは、物理的強度が著しく低下することなく、ガンマ線又は電子ビームにより安定化することができると考えられる(コバルトガンマ線源からの2.5Mradのガンマ線に曝露し、23℃〜25℃で7日間エージングした後、厚さ1ミルのフィルムの引っ張り強度は、20%超で、好ましくは10%以下低下しない)。同様に、本発明の不織布材料は、電子ビーム照射への曝露により滅菌できると予想される。あるいは、本発明の材料は、エチレンオキシド、過酸化水素プラズマ、オゾン並びに同様のアルキル化及び/若しくは酸化剤並びにこれらの組み合わせなどのガス又は蒸気相抗微生物剤により滅菌できる。
【0240】
本開示の一部の代表的な寸法安定性不織布繊維ウェブの親水性特性は、吸収性を高めることにより、創傷及び外科用包帯などの物品を改善することができる。微細繊維を創傷包帯裏材フィルムで用いる場合、フィルムは、アクリル及びブロックコポリマー接着剤、ヒドロゲル接着剤、ヒドロコロイド接着剤及び発泡接着剤のような感圧性接着剤(PSA)が挙げられるが、これらに限定されない、種々の接着剤で部分的に(例えば、領域又はパターン)コーティングする、又は完全にコーティングしてもよい。PSAは、水分の蒸発を可能にするために比較的高い湿気透過速度を有することができる。
【0241】
好適な感圧性接着剤としては、アクリレート系のもの、ポリウレタン、KRATON、及び他のブロックコポリマー、シリコーン、ゴム系接着剤、並びにこれらの接着剤の組み合わせが挙げられる。好ましいPSAは、開示がこれによって参照により組み込まれる米国再発行特許第24,906号に記載のアクリレートコポリマー、特に97:3のイソオクチルアクチレート:アクリルアミドのコポリマーなどの皮膚に適用される通常の接着剤である。また好ましくは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,737,410号(実施例31)に記載されているような70:15:15イソオクチルアクリレート−エチレンオキシドアクリレート:アクリル酸ターポリマーである。他の有用な接着剤は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,389,827号、同第4,112,213号、同第4,310,509号、及び同第4,323,557号に記載されている。また、米国特許第4,310,509号及び同第4,323,557号に記載されるように、薬剤又は抗微生物剤を接着剤に含むことも想到される。
【0242】
本開示の代表的な寸法安定性不織布繊維ウェブから、全体的に又は部分的に、作製することができる他の医療用装置としては、手術用メッシュ、三角布、整形外科用ピン(骨充填物増強材料を含む)、接着バリア、ステント、誘導組織修復/再生装置、関節軟骨修復装置、神経ガイド、腱修復装置、心房中隔欠損修復装置、心膜パッチ、増量剤及び充填剤、静脈弁、骨髄骨格、半月板再生装置、靱帯及び腱移植、眼球細胞移植片、脊椎固定ケージ、皮膚代替物、硬膜代替物、骨移植片代替物、骨ドエル(dowel)及び止血鉗子が挙げられる。
【0243】
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブはまた、例えば、本出願人らの同時係属出願の、米国特許出願公開第2008/0200890号(2008年4月7日出願)(この全体が本明細書に参照により組み込まれる)に記載のもののような成人用失禁製品、幼児のおむつ、婦人用衛生物品、他のものなどの消費者衛生製品において有用であり得る。
【0244】
代表的な実施形態
実施形態1は、
1つ以上の熱可塑性脂肪族ポリエステルと、
ウェブの重量の0重量%を超で、10重量%以下の量の熱可塑性非収縮添加剤と、を含む、複数の連続繊維を含むウェブであって、
この繊維は、分子配向を呈し、ウェブ全体で実質的にエンドレスに延在し、
更に、ウェブは、ウェブが、無抑制条件で繊維のガラス転移温度を超えるが融解温度よりも低い温度まで加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する、ウェブである。
【0245】
実施形態2は、
脂肪族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、
ウェブの重量の0重量%を超で、10重量%以下の量の熱可塑性非収縮添加剤と、を含む複数の連続繊維を含むウェブであって、
この繊維は分子配向を呈さず、
更に、ウェブは、ウェブが、無抑制条件で繊維のガラス転移温度を超えるが融解温度よりも低い温度まで加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する、ウェブである。
【0246】
実施形態3は、繊維の分子配向が少なくとも0.01の複屈折値をもたらす、実施形態1又は2に記載のウェブである。
【0247】
実施形態4は、非収縮添加剤が、脂肪族ポリエステル樹脂において分散した相を形成する1つ以上の半結晶質熱可塑性ポリマーからなる群から選択される、実施形態1〜3のいずれか一項に記載のウェブである。
【0248】
実施形態5は、非収縮添加剤が、250nm未満の平均直径を有する分離粒子の分散した相を形成する、実施形態1〜4のいずれか一項に記載のウェブである。
【0249】
実施形態6は、半結晶質熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、これらの配合物及びコポリマー並びにこれらの誘導体からなる群から選択される、実施形態1〜5のいずれか一項に記載のウェブである。
【0250】
実施形態7は、熱可塑性ポリエステルが、1つ以上のポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、これらの配合物、及びこれらのコポリマーからなる群から選択される、少なくとも1つの脂肪族ポリエステルである、実施形態1〜6のいずれか一項に記載のウェブである。
【0251】
実施形態8は、脂肪族ポリエステルが半結晶質である、実施形態1〜7のいずれか一項に記載のウェブである。
【0252】
実施形態9は、可塑剤、希釈剤、界面活性剤、粘度調整剤、抗微生物性成分又はこれらの組み合わせを更に含む、実施形態1〜8のいずれか一項に記載のウェブである。
【0253】
実施形態10は、界面活性剤が1つ以上のアルキル、アルケニル、アラルキル又はアルカリルのアニオン性界面活性剤であり、界面活性剤がポリエステル中に組み込まれ、組成物が45℃にて10日超経過後も親水性を維持する、実施形態9に記載のウェブである。
【0254】
実施形態11は、アニオン性界面活性剤が、1つ以上のアルキル、アルケニル、アルカリル、及びアラルキルスルホネート;アルキル、アルケニル、アルカリル、及びアラルキルサルフェート;アルキル、アルケニル、アルカリル、及びアラルキルホスホネート;アルキル、アルケニル、アルカリル、及びアラルキルホスフェート;アルキル、アルケニル、アルカリル、及びアラルキルカルボキシレート;アルキルアルコキシル化カルボキシレート;アルキルアルコキシル化サルフェート;アルキルアルコキシル化スルホネート;アルキルアルコキシル化ホスフェート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態9に記載のウェブである。
【0255】
実施形態12は、非収縮添加剤が、熱可塑性ポリエステルと固溶性ではない1つ以上の半結晶質ポリマーである、実施形態1〜11のいずれか一項に記載のウェブである。
【0256】
実施形態13は、非収縮添加剤が、ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(メチルペンテン)、ポリ(エチレン−クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカプロラクトンなどの半結晶質脂肪族ポリエステル、ナイロン6及びナイロン66などの脂肪族ポリアミド並びにサーモトロピック液晶ポリマーからなる群から選択される熱可塑性半結晶質ポリマーである、実施形態1〜12のいずれか一項に記載のウェブである。
【0257】
実施形態14は、ウェブ内の繊維が少なくとも点位置で結合されている、実施形態1〜13のいずれか一項に記載のウェブである。
【0258】
実施形態15は、粘度調整剤が以下の構造:
(R−COn+
を有し、式中、Rは分枝鎖若しくは直鎖炭素鎖としてのC8〜C30のアルキル若しくはアルキレン、又はC12〜C30アラルキルであり、場合により、エチレンオキシド、プロピレンオキシド基、オリゴマー乳酸及び/又はグリコール酸、又はこれらの組み合わせなどの0〜100個のアルキレンオキシド基で置換されてもよく、
Mは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム基、プロトン化三級アミン若しくは四級アミンであり、
nは1又は2であり、カチオンの価数に等しい、実施形態9に記載のウェブである。
【0259】
実施形態16は、粘度調整剤が、アルキルカルボキシレート、アルケニルカルボキシレート、アラルキルカルボキシレート、アルキルエトキシル化カルボキシレート、アラルキルエトキシル化カルボキシレート、アルキルラクチレート、アルケニルラクチレート、ステアロイルラクチレート、ステアレート、これらのカルボン酸及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態9に記載のウェブである。
【0260】
実施形態17は、粘度調整剤がウェブの少なくとも0.25重量%かつ約10重量パーセント以下の量で存在する、実施形態9に記載のウェブである。
【0261】
実施形態18は、熱可塑性脂肪族ポリエステルとは異なる熱可塑性(コ)ポリマーを更に含む、実施形態1〜17のいずれか一項に記載のウェブである。
【0262】
実施形態19は、繊維が、約1マイクロメートル(μm)以下のメジアン繊維径を呈する、実施形態1〜18のいずれか一項に記載のウェブである。
【0263】
実施形態20は、繊維が、約25μm以下のメジアン繊維径を呈する、実施形態1〜19のいずれか一項に記載のウェブである。
【0264】
実施形態21は、繊維が、約12μm以下のメジアン繊維径を呈する、実施形態1〜20のいずれか一項に記載のウェブである。
【0265】
実施形態22は、繊維が、約10マイクロメートル(μm)以下のメジアン繊維径を呈する、実施形態1〜21のいずれか一項に記載のウェブである。
【0266】
実施形態23は、繊維が、約7マイクロメートル(μm)以下のメジアン繊維径を呈する、実施形態1〜22のいずれか一項に記載のウェブである。
【0267】
実施形態24は、繊維が、少なくとも1μmのメジアン繊維径を呈する、実施形態1〜23のいずれか一項に記載のウェブである。
【0268】
実施形態25は、繊維が、非収縮添加剤以外の添加剤を10重量%未満含む、実施形態1〜24に記載のウェブである。
【0269】
実施形態26は、ウェブが生体適合性である、実施形態1〜25のいずれか一項に記載のウェブである。
【0270】
実施形態27は、ウェブが、熱可塑性脂肪族ポリエステルを含む溶融混合物から形成される不織布ウェブであり、非収縮添加剤がポリプロピレン又はナイロンである、実施形態1〜26のいずれか一項に記載のウェブである。
【0271】
実施形態28は、不織布ウェブがスパンボンドウェブ、ブローンマイクロファイバー、水流交絡ウェブ又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態27に記載のウェブである。
【0272】
実施形態29は、気体濾過物品、液体濾過物品、音吸収物品、断熱物品、表面洗浄物品、細胞成長支持物品、薬物送達物品、個人用衛生物品、歯科衛生物品、接着剤コーティングされたテープ及び創傷包帯物品からなる群から選択される、実施形態1〜28のいずれか一項に記載のウェブを含む物品である。
【0273】
実施形態30は、実施形態1〜28のいずれか一項に記載のウェブを含む、外科用又は医療用ドレープである。
【0274】
実施形態31は、実施形態1〜28のいずれか一項に記載のウェブを含む、外科用又は医療用ガウンである。
【0275】
実施形態32は、実施形態1〜28のいずれか一項に記載のウェブを含む、殺菌ラップである。
【0276】
実施形態33は、1つ以上の抗微生物剤を更に含む、実施形態32に記載の殺菌ラップである。
【0277】
実施形態34は、ウェブの繊維上又はウェブの繊維内に撥水性添加剤を更に含む、実施形態32に記載の殺菌ラップである。
【0278】
実施形態35は、実施形態1〜28のいずれか一項に記載のウェブを含む、創傷接触材料である。
【0279】
実施形態36は、
脂肪族ポリエステル及び芳香族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、混合物の重量に対して0重量%超で、10重量%以下の量の非収縮添加剤との混合物を形成する工程と、
混合物から複数の繊維を同時に形成する工程と、
繊維の少なくとも一部を回収してウェブを形成する工程と、を含み、この繊維は分子配向を呈し、ウェブ全体で実質的にエンドレスに延在し、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超える温度に加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する、実施形態1〜28のいずれか一項に記載のウェブの製造方法である。
【0280】
実施形態37は、繊維が少なくとも点位置で結合されている、実施形態36に記載の方法である。
【0281】
実施形態38は、繊維が、溶融紡糸、スパンボンド、フィラメント押出成形、電界紡糸、ガスジェット繊維形成、又はこれらの組み合わせを使用して形成される、実施形態36に記載の方法である。
【0282】
実施形態39は、
脂肪族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、混合物の重量に対して0重量%を超で、10重量%以下の量の非収縮添加剤との混合物を形成する工程と、
混合物から複数の繊維を同時に形成する工程と、
繊維の少なくとも一部を回収してウェブを形成する工程と、を含み、この繊維は分子配向を呈さず、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超える温度に加熱されたときに12%以下で減少する、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する、実施形態1〜28のいずれか一項に記載のウェブの製造方法である。
【0283】
実施形態39は、繊維が少なくとも点位置で結合されている、実施形態39に記載の方法である。
【0284】
実施形態40は、繊維が、メルトブロー、電界紡糸及びガスジェット繊維形成を用いて形成される、実施形態39に記載の方法である。
【0285】
実施形態41は、ウェブを後加熱する工程を更に含む、実施形態36〜40のいずれか一項に記載の方法である。
【0286】
試験方法
見掛けの表面エネルギー
表面エネルギーを測定する方法は、以下に記載した変更を用いたAATCC試験法118−1983である。この変更試験法により測定した表面エネルギーは、以後「見かけの」表面エネルギーと呼ぶ。AATCC試験法118−1983は、一連の選択された炭化水素組成物による濡れに対する、布地の耐性を評価することにより、布地の表面エネルギーを決定する。しかしながら、AATCC 118−1983で説明されている炭化水素類は、25℃で約19.8ダイン〜27.3ダイン/センチメートルの表面エネルギーの測定を提供するにすぎない。この範囲は、布地耐性試験にメタノールと水の様々な混合物を使用することにより拡大される。組成物とその代表的な表面張力は、以下の通りである。
【0287】
【表1】

【0288】
試験手順は次の通りである。被覆材料の見本が、平滑で水平な表面上に平坦に定置される。AATCC 118−1983の方法を使用するが、ただし最も番号の小さい試験液で開始し、5滴の液体を、布地表面上、樹脂を浸透させたシートに面する側の、様々な位置に定置する。5滴のうち3滴が、60秒以内に布地に吸い上げられたら、次に高い表面張力の液体が使用される。少なくとも3滴が布地表面上に残った場合、見掛け表面エネルギーは、残りの2つの液体の範囲のものとして記録される。
【0289】
有効繊維直径
繊維直径は、繊維ウェブの平均繊維直径を予測するために坪量、ウェブ厚さ、及び圧力低下を使用する、Daviesによって開発された有効繊維直径(EFD)法を使用して測定される。Davies,C.N.、「The Separation of Airborne Dust and Particles」、Inst.of Mech.Engineers,London,Proceedings 1B,1952。
【0290】
平均繊維直径は、顕微鏡検査、レーザー回折、及び流量抵抗を含むいくつかの方法で測定することができる。Davies(Davies,C.N.、「The Separation of Dust and Particles,Inst.of Mech.」.Engineers,London,Proceedings 1B,1952)は、空気流抵抗、ウェブ厚さ、及びウェブ坪量を使用して繊維ウェブの直径を決定するための相関を開発した。空気流抵抗は、1分当たり32リットルの空気流速度で11.4センチメートルの直径のウェブの試料の圧力低下を記録することにより測定された。ウェブの厚さは、150Paの適用された圧力で13.3センチの直径の円形ウェブ試料上で測定された。ウェブの坪量は、13.3センチメートルの直径ウェブ試料を量ることによって測定された。Daviesよって記載された方程式は、次いで、(1マイクロメートル=10E−6メートル)の単位で表されるウェブの有効繊維直径(EFD)を決定するのに使用された。
【0291】
収縮
押し出しの後、微細繊維ウェブは、10cm×10cm平方のウェブをアルミニウムトレイ上に、約14時間、80℃でオーブン内に配置することによる収縮も測定された。エージングの後、この正方形が測定され、平均線状収縮が記録された。
【実施例】
【0292】
本明細書で開示された発明の寸法安定性不織布ウェブの代表的な実施形態は、以下の実施例により更に明示されるが、これは、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0293】
実施例1:ポリプロピレンを伴うスパンボンドPLA
未希釈のポリ(乳酸)(PLA)、及び、表Iに示している濃度でのPLAとポリプロピレン(PP)の混合物から、スパンボンドプロセスを用いて、不織布ウェブを作製した。使用されたPLAはNatureworks,LLC(Minnetonka,MN)から市販されているグレード6202Dであった。使用されたPPは、Total Petrochemicals(Houston,TX)から市販されているグレード3860Xであった。1つのサンプルには更に、可塑剤、希釈剤、及び親水性界面活性剤として、ジオクチルスルホスクシネートナトリウム塩(DOSS)とポリ(エチレングリコール)(PEG)の50/50混合物も含めた。DOSS/PEG混合物を、6202D PLAと混ぜ合わせ、マスターバッチとしてスパンボンドプロセスに加えた。
【0294】
使用されたスパンボンド装置は、米国特許第6,196,752号(Berriganら)に記述されているものである。使用された押出成形機は、Davis−Standard(Pawcatuck,CT)から市販されている2インチ(5cm)単独推進押出成形機であった。使用されたダイは、有効幅7.875インチ(20.0cm)を有し、計量ポンプから時速42ポンド(19.1kg)/時の速度で溶融ポリマーが送り込まれた。ダイは648個の孔を有し、各孔は直径0.040インチ(10.2mm)、L/Dが6であった。押し出し温度は230℃であった。空気減衰器を平方インチ当たり5ポンド(34.5キロパスカル)の圧力に設定した。プロセス条件は、異なる混合物間で一定に維持された。紡糸速度は、顕微鏡で測定された最終平均繊維直径と、孔当たりのポリマー速度を用いて計算されたフィラメント速度である。すべての場合において紡糸速度は毎分2500メートル以下であり、この速度は、PLA内でひずみ誘発結晶化が開始する速度である。
【0295】
押出成型後、ウェブの収縮も測定された。これは、拘束されていない状態で約10cm×10cmの正方形部分を、ダイカッターを用いて各ウェブの中央部分から切り取り、アルミニウムトレイに乗せ、80℃の熱対流炉内に一晩置いた(例えば約14時間)。PLAウェブのTgは約54〜56℃であった。次に、加熱したサンプルを冷まし、長さ(機械方向)及び幅(横断方向)を測定し、3つのサンプルの平均線状収縮が報告された。報告された収縮は、サンプル面積の変化ではなく、サンプルの長さ及び幅の、3サンプルの変化平均であった。これにより、それぞれ報告された組成物について、3つの長さ及び3つの幅を平均した。長さ及び幅の収縮に有意差がなかったことが判明した。
【0296】
【表2】

【0297】
実施例2:ポリプロピレンを伴うメルトブローンPLA
表IIに示している濃度でのポリ(乳酸)、PLA及びポリプロピレン(PP)からメルトブロープロセスを用いて、不織布ウェブを製造した。使用されたPLAはNatureworks,LLC(Minnetonka,MN)から市販されているグレード6251Dであった。使用されたPPは、Total Petrochemicals(Houston,TX)から市販されているグレード3960であった。
【0298】
メルトブロー装置は、二軸押出成形機、計量ポンプ、及びメルトブローダイを包含していた。使用した押出成形機は、31mm円錐形二軸押出成形機(C.W.Brabender Instruments(South Hackensack,NJ))であった。押出成形機の後、容積流量ギヤポンプを使用し、溶融ポリマーを計量かつ加圧した。計量された溶融物が、孔開けされた開口部メルトブローダイに送り込まれた。孔開けされた開口部メルトブローダイは、米国特許第3,825,380号に記述されている。使用されたダイは幅10インチ(25.4cm)に、ポリマー開口部が幅1インチ(2.54cm)当たり20個で、各開口部は直径0.015インチ(381マイクロメートル)であった。ダイは温度225℃で操作された。PLAに添加されるPPの量が異なる混合物のポリマーペレットが、プロセスに供給された。プロセス条件は実験中常に一定に保持された。
【0299】
ウェブは減圧回収機で回収され、表面巻取器を使用して芯上に巻き取られた。Daviesにより記載された気流抵抗技術(Davies,C.N.、The Separation of Airborne Dust and Particles,Inst.of Mech.Engineers,London,Proceedings 1B,1952)を使用して繊維直径を測定したが、この測定値は有効繊維直径又はEFDと呼ぶ。収縮は、実施例1に記述されている技法を使用して測定された。一部のサンプルは加熱中に膨張しており、これらのサンプルは負の収縮値を有するものとして報告される。
【0300】
【表3】

【0301】
実施例3:粘度改変剤塩を伴うメルトブローンPLA
表IIIに示している濃度でPLAと、組成物中で処理中に溶融物の見掛け粘度を大きく低減する多数の塩を用いて、メルトブロープロセスを使用して、不織布ウェブを製造した。完成した不織布ウェブの繊維直径も、塩を加えたときにより小さくなった。不織布ウェブの収縮を低減するため、一部の混合物にはポリプロピレンも添加された。結果として得られたウェブは、繊維直径の低減と収縮の低減の両方の特性を有していた。使用されたポリプロピレンは、Total Petrochemicals(Houston,TX)から市販されているグレード3960であった。使用されたPLAはNatureworks,LLC(Minnetonka,MN)から市販されているグレード6251Dであった。試験された添加剤は以下のものを含んでいた:
ステアロイル乳酸カルシウム(CSL)(商標名Pationic CSL、RITA Corp.(Crystal Lake,IL)より市販)、
ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)(商標名Pationic SSL、RITA Corp.(Crystal Lake,IL)より市販)、
ステアリン酸カルシウム(Ca−S)(Aldrich(St.Louis,MO)より市販)、
ベヘノイル乳酸ナトリウム(SBL)(商標名Pationic SBL、RITA Corp.(Crystal Lake,IL)より市販)。
【0302】
式1:ステアロイル乳酸カルシウム(RITA Corp.より市販)の化学構造
【0303】
【化2】

【0304】
式2:ベヘノイル乳酸ナトリウムの化学構造
【0305】
【化3】

【0306】
メルトブロープロセスは、実施例2で使用したものと同じである。プロセスは、ダイ温度225℃で実施された。塩は、ポリマードライヤーからの温かいPLAペレットと粉末を乾燥混合することによって、システムに添加された。樹脂は、71℃に一晩加熱することにより事前乾燥された。塩添加剤は、温かいPLAペレットと接触して溶融し、これを手で混合して、僅かにべたつくペレットを形成し、これを押出成形機に供給した。
【0307】
押出成形の後、ウェブは、前の実施例に記載したものと同じ方法を用いて、EFD及び熱収縮について試験が行われた。ダイに流入するポリマーの圧力が、ポリマー粘度の代用として記録された。このようにして、溶融物の見かけ粘度が低減すると、ダイ流入時点の圧力の低下として現われる。
【0308】
【表4】

【0309】
実施例4:ポリプロピレンを伴うメルトブローンPET
表IVに示している濃度でPETにPPを配合して、メルトブロープロセスを用いて、繊維ウェブを作製した。使用されたPET樹脂は、Invista(Wichita,KS)から市販されているグレード8603Aであった。使用されたポリプロピレンは、Total Petrochemicals(Houston,TX)から市販されているグレード3868であった。
【0310】
使用されたメルトブロー装置は、単独推進押出成形機、計量ポンプ、及びメルトブローダイをから構成されていた。使用された押出成形機は、2インチ(5.1cm)単独推進押出成形機(David Standard(Pawcatuck,CT))であった。押出成形機の後、容積流量ギヤポンプを使用し、溶融ポリマーを計量かつ加圧した。計量された溶融物が、孔開けされた開口部メルトブローダイに送り込まれた。孔開けされた開口部メルトブローダイは、米国特許第3,825,380号に記述されている。使用されたダイは幅20インチ(50.8cm)に、ポリマー開口部が幅1インチ(2.54cm)当たり25個のポリマー開口部で、各開口部は直径0.015インチ(381マイクロメートル)であった。混合は、PET及びPPペレットの乾燥配合混合物を押出成形機に供給することによって達成された。プロセス条件は、異なる混合物間で一定に維持された。
【0311】
不織布ウェブが形成された後、前述の例と同様にして、収縮検査が行われた。ただし、PETのガラス転移温度はより高いため、熱対流炉は、80℃ではなく、150℃に設定された。
【0312】
【表5】

【0313】
実施例5:追加の高分子添加剤を有するメルトブローンPLA
追加のサンプルをPLAと共に溶融配合し、以下のパラメータで、実施例2に記載の物と同一の装置を用いてメルトブローン繊維として押し出した。使用したダイは、幅10インチ(25.4cm)に、ポリマー開口部が幅1インチ(2.54cm)当たり25個で、各開口部は直径0.015インチ(381マイクロメートル)であり、ダイを225℃の温度で操作し、空気加熱機温度は275℃であり、気圧は9.8psi(67.6キロパスカル)であり、回収距離は6.75インチ(17.1cm)であり、回収速度は2.3ft/分(0.70メートル/分)であった。エアーギャップは0.030インチ(0.0762cm)であり、エアーナイフセットバックは0.010インチ(254マイクロメートル)であった。エアーギャップは、エアーナイフとダイチップとの間の間隙により形成されるエアースロットの厚さである。エアーナイフセットバックは、エアーナイフの面がダイチップの頂点よりも後ろにある距離として定義される(すなわち、正のセットバックは、ダイチップの頂点がエアーナイフの面の後ろに延びていることを意味する)。不織布ウェブは、ポリ(乳酸)からのメルトブロープロセスを用いて、製造した。使用されたPLAはNatureworks,LLC(Minnetonka,MN)から市販されているグレード6251Dであった。ポリマー添加剤及び濃度を以下の表Vに示す。
【0314】
【表6】

【0315】
注:ポリプロピレンについてのMFIは、10分当たりグラムの単位を有する。
【0316】
有効繊維直径(EFD)は、実施例2に記載のものと同じ技術により測定した。坪量は、10cm×10cmのダイカットサンプルを計量し、メートル基準に計算することにより、測定した。収縮%は、10×10センチメートルサンプルを用いて、実施例1に記載のように測定した。3つのサンプルを測定した。報告された収縮は、サンプル面積の変化ではなく、サンプルの長さ及び幅の、3サンプルの変化平均であった。結果を下記の表VIに示す。
【0317】
【表7】

【0318】
注:ポリプロピレンについてのMFI(メルトフロー指数)は、10分当たりグラムの単位を有する。
【0319】
これにより、使用された広範囲のメルトインデックスポリマーにより示されるように、収縮の少ない又は全く収縮しない繊維が、広範囲の分子量にわたるポリプロピレンから得られた。ポリアミド(ナイロン)、ポリカプロラクトン、高分子量ポリエチレンオキシド及び直鎖低密度ポリエチレンを使用して(低濃度での使用時)も、収縮の少ない繊維が得られた。ほとんどについては、ここに示した結果は、単一濃度(5%)でのポリマー添加剤についてのみである。各ポリマータイプは、ウェブ繊維形成、感触、収縮、並びに、引張及び伸長などの物理的特性を最適化する独特の最適濃度を有し得る。
【0320】
図1〜4は、本明細書に記載のような分散ポリマー非収縮添加剤を示す。全ては、表VIのサンプルに基づく。全ては2000倍であり、サンプルを埋め込み、次に組織切片作製し、着色して、コントラストを増強し、透過電子顕微鏡(TEM)により撮像することにより行った。図1は、PLA単独である(表IVにおける対照);図2は、5重量%のTotal 3860 PPを有するPLAである;図3は、5重量%のKraton D1117Pを有するPLAの比較例である;並びに図4は、5重量%のナイロンB24を有するPLAである。
【0321】
実施例6
圧縮を向上させるためにPLAポリマー配合物から作製したスパンポンド不織布の代表的実施形態を以下の実施例において開示する。実施例6は、添加剤なしの様々な配合物の相互作用を表す。実施例7は、添加剤の存在下での様々な配合物の相互作用を表す。並びに、実施例8は、典型的な製造条件下での試験工場操作におけるスパンボンドウェブ製造のためにPLAポリマー配合物を使用することの有効性を示す。
【0322】
スパンボンド不織布ウェブは、ポリ(乳酸)(PLA)の様々な配合物から製造された。使用されたPLAグレードは、Natureworks,LLC(Minnetonka,MN)からの6202D、6751D及び6302Dであった。PLAグレードの特徴を表VIIに示す。PLA材料は全て、使用前に乾燥させた。
【0323】
【表8】

【0324】
PDI=多分散指数
「D含量」=L及びD乳酸残留物の混合物から誘導されるPLA中に存在するD異性体
の%。
【0325】
サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、PLAグレードの分子量を測定した。D含量の値は、NatureWorks(Minnetonka,MN)から供給された。
【0326】
使用されたスパンボンド装置は、米国特許第6,196,752号(Berriganら)に記述されているものである。使用された押出成形機は、Davis−Standard(Pawcatuck,CT)から市販されている2インチ(5cm)単独推進押出成形機であった。使用されたダイは、有効幅7.875インチ(20.0cm)を有し、計量ポンプから1時間(分速0.52g/孔)当たり45ポンド(20.4kg)の速度で溶融ポリマーが送り込まれた。ダイは648個の孔を有し、各孔は直径0.040インチ(1.02mm)、L/Dが6であった。押し出し温度は240℃であった。紡糸速度は、顕微鏡で測定された最終平均繊維直径と、孔当たりのポリマー速度を用いて計算されたフィラメント速度である。レイダウン後の繊維ウェブを、スルーエアーボンダー(through-air-bonder)(TAB)を使用し、120℃〜125℃で操作して、わずかに結合させ、次に、85fpm(26m/分)のライン速度及び150PLI(PLI=lbf/直線インチ)(263N/cm)のニップ圧で、上部及び下部ロールが80℃〜82℃である2本の滑らかなロールでカレンダー内に送り込んだ。カレンダーにかけたウェブの引張特性を、ASTM D5035試験法を用いて、測定した。TAB前のレイダウン時に繊維サンプルを得、これらの寸法をデジタルカメラ付き光学顕微鏡Olympus DP71 Microscopeを用いて測定した。
【0327】
ウェブの結晶化度パーセントを、TA Instruments Q2000(#131,Cell RC−00858)Modulated(登録商標)Differential Scanning Calorimeter(MDSC)を用いて測定した。4℃/分の線形加熱速度を、60秒毎に±0.636℃の摂動振幅で適用した。試料を−25℃〜約210℃の温度範囲にわたって。加熱−冷却−加熱プロファイルに供した。表VIII及び表IXは、繊維及びウェブの、機械的及び熱的特徴の要約であり、プロセス紡糸速度についての要約でもある。ウェブの熱収縮を、10cm×10cmサンプルを空気炉内に1時間にわたって70℃及び100℃にて定置することにより、測定した。全てのサンプルは、4%未満の収縮を呈した。坪量の差異を説明するために、坪量により最大荷重を除算し、1000を乗算することにより、各サンプルの引張荷重を正規化した。
【0328】
【表9】

【0329】
【表10】

【0330】
実施例7:
未希釈のポリ(乳酸)(PLA)6202D、PLAの様々な配合物、及び、ポリプロピレン(PP)とのPLAの混合物、及び最後に、添加物とのPLAの混合物(50/50混合物−ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩(DOSS)及びポリ(エチレングリコール)(PEG)及びCitroflex A4−)から、スパンボンド不織布ウェブを製造した。添加剤のマスターバッチをPLA 6202D中に組み合わせた。使用されたPLAグレードは、Natureworks,LLC(Minnetonka,MN)からの6202D、6751D及び6302Dであった。PLAグレードの特徴を表VIIに示す。マスターバッチを含む全てのPLAは、使用前に乾燥させた。スパンボンド加工条件は、実施例6と同様である。平均紡糸速度は、4500m/分±200m/分に維持した。
【0331】
実施例1にあるように2本の滑らかなロールで、カレンダー工法を行ったが、操作条件は以下の通りであった:上部及び下部ロールの温度は77℃(170°F)であった。20〜25gsmのウェブに対して、ライン速度は85〜95fpm(26〜29m/分)であり、150PLI(263N/cm)のニップ圧であった。40gsm(グラム毎平方メートル)ウェブに対して、ライン速度は平均60fpm(18.3m/分)、ニップ圧は300PLI(526N/cm)であった。ウェブの熱収縮を、10cm×10cmサンプルを空気炉内に1時間にわたって70℃にて定置することにより、測定した。全てのサンプルは、5%未満の収縮を呈した。実施例6に記載の方法と同様に、繊維寸法を得た。坪量、溶融押出成形温度、繊維寸法及び紡糸速度の要約を表Xに示す。
【0332】
【表11】

【0333】
実施例6と同様に、カレンダーにかけられたウェブの引張特性を、ASTM D5035試験法を用いて、測定した。横方向のウェブの引張特性を表XIに示す。機械方向のウェブの引張特性を表XIIに示す。
【0334】
【表12】

【0335】
【表13】

【0336】
表5及び6各々と同様に、横方向及び機械方向の両方の正規化引張荷重の要約を示す。坪量の差異を説明するために、坪量により最大荷重を除算し、1000を乗算することにより、各サンプルの引張荷重を正規化した。
【0337】
このデータは、Citroflex A4可塑剤及びPEG/DOSSの親水性界面活性剤/キャリアなどの添加剤の少量の添加が引張強度を有意に減らすことを示している。PLA配合物は、最も高い正規化引張強度を有した。
【0338】
実施例8
未希釈のポリ(乳酸)(PLA)6202D、PLAの様々な配合物、及び、ポリプロピレン(PP)とのPLAの混合物、及び最後に、添加物とのPLAの混合物(50/50混合物−ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩(DOSS)及びポリ(エチレングリコール)(PEG)及びCitroflex A4−)から、スパンボンド不織布ウェブを製造した。添加剤のマスターバッチをPLA 6202D中に組み合わせた。使用されたPLAグレードは、Natureworks,LLC(Minnetonka,MN)からの6202D、6751D及び6302Dであった。PLAグレードの特徴を表VIIに示す。マスターバッチを含む全てのPLAは、使用前に乾燥させた。直径0.6mmの毛管について1メートル当たり約5800個の毛管の孔を有する単一ビームで幅1メートルのReicofil 4ライン上でスパンボンドを製造した。上部及び下部紡糸筒内のプロセス空気温度は、それぞれ70℃及び50℃であった。また、上部及び下部紡糸筒内の両方の湿度は、それぞれ30%及び25%であった。押出及びカレンダープロセス条件はどちらも表XIIIに提示する。高速での良好な圧縮の証明は、表XIVに与える。並びに、ウェブの引張特性を表XIIIに与える。WSP 110.4(05)EDANA ERT 20.2.89(Option B)試験法を用いて、引張特性を得た。
【0339】
【表14】

【0340】
注:A=PLA 6202,B=PLA 6751,C=PLA 6302,D=PP,E=PEG/DOSS,F=顔料
【0341】
【表15】

【0342】
カレンダーのドラフトは、スピンベルトとカレンダーの間の速度差である。小さい数は、圧縮後のウェブの安定の示唆である。
【0343】
【表16】

【0344】
本明細書で特定の代表的実施形態を詳細に説明したが、当然のことながら、当業者は上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の代替物、変更物、及び均等物を容易に想起することができるであろう。したがって、本開示は本明細書で以上に述べた例示の実施形態に不当に限定されるべきではないと理解すべきである。更に、本明細書にて参照される全ての出版物、公開された特許出願、及び付与された特許は、それぞれの個々の出版物又は特許が参照により援用されることを明確にかつ個別に指示したかのごとく、それらの全体が同じ範囲で、参照により本明細書に援用される。様々な代表的実施形態及び詳細を、本発明を説明する目的で論じてきたが、以下の「特許請求の範囲」に示される、本発明の真の範囲から逸脱することなく、本発明で種々の修正を行うことが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の熱可塑性脂肪族ポリエステルと、
ウェブの重量の0重量%超で、10重量%以下の量の非収縮添加剤と、を含む、複数の連続繊維を含むウェブであって、
前記繊維は、分子配向を呈し、前記ウェブ全体で実質的にエンドレスに延在し、
更に、前記ウェブは、前記ウェブが、無抑制条件で前記繊維のガラス転移温度を超えるが融解温度よりも低い温度まで加熱されるたきに12%以下で減少する、前記ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する、ウェブ。
【請求項2】
1つ以上の熱可塑性脂肪族ポリエステルと、
ウェブの重量の0重量%超で、10重量%以下の量の非収縮添加剤と、を含む複数の連続繊維を含むウェブであって、
前記繊維は分子配向を呈さず、
更に、前記ウェブは、前記ウェブが、無抑制条件で前記繊維のガラス転移温度を超えるが融解温度よりも低い温度まで加熱されたときに12%以下で減少する、前記ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する、ウェブ。
【請求項3】
前記繊維の分子配向が少なくとも0.01の複屈折値をもたらす、請求項1又は2に記載のウェブ。
【請求項4】
前記非収縮添加剤が、脂肪族ポリエステル樹脂において分散した相を形成する1つ以上の半結晶質熱可塑性ポリマーからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項5】
前記非収縮添加剤が、250nm未満の平均直径を有する分離粒子の分散した相を形成する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項6】
前記半結晶質熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、これらの配合物及びコポリマー、並びにこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリエステルが、1つ以上のポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、これらの配合物、及びこれらのコポリマーからなる群から選択される、少なくとも1つの脂肪族ポリエステルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項8】
前記脂肪族ポリエステルが半結晶質である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項9】
可塑剤、希釈剤、界面活性剤、粘度調整剤、抗微生物性成分又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項10】
前記界面活性剤が1つ以上のアルキル、アルケニル、アラルキル又はアルカリルのアニオン性界面活性剤であり、前記界面活性剤が前記ポリエステル中に組み込まれ、前記組成物が45℃にて10日超経過後も親水性を維持する、請求項9に記載のウェブ。
【請求項11】
前記アニオン性界面活性剤が、1つ以上のアルキル、アルケニル、アルカリル、及びアラルキルスルホネート;アルキル、アルケニル、アルカリル、及びアラルキルサルフェート;アルキル、アルケニル、アルカリル、及びアラルキルホスホネート;アルキル、アルケニル、アルカリル、及びアラルキルホスフェート;アルキル、アルケニル、アルカリル、及びアラルキルカルボキシレート;アルキルアルコキシル化カルボキシレート;アルキルアルコキシル化サルフェート;アルキルアルコキシル化スルホネート;アルキルアルコキシル化ホスフェート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載のウェブ。
【請求項12】
前記非収縮添加剤が、前記熱可塑性ポリエステルと固溶性ではない1つ以上の半結晶質ポリマーである、請求項1〜11のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項13】
前記非収縮添加剤が、ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(メチルペンテン)、ポリ(エチレン−クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリカプロラクトンなどの半結晶質脂肪族ポリエステル、ナイロン6及びナイロン66などの脂肪族ポリアミド並びにサーモトロピック液晶ポリマーからなる群から選択される熱可塑性半結晶質ポリマーである、請求項1〜12のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項14】
前記ウェブが少なくとも点位置で結合されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項15】
前記粘度調整剤が以下の構造:
(R−COn+
を有し、式中、Rは分枝鎖若しくは直鎖炭素鎖としてのC8〜C30のアルキル若しくはアルキレン、又はC12〜C30アラルキルであり、場合により、エチレンオキシド、プロピレンオキシド基、オリゴマー乳酸及び/又はグリコール酸、又はこれらの組み合わせなどの0〜100個のアルキレンオキシド基で置換されてもよく、
Mは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム基、プロトン化三級アミン若しくは四級アミンであり、
nは1又は2であり、カチオンの価数に等しい、請求項9に記載のウェブ。
【請求項16】
前記粘度調整剤が、アルキルカルボキシレート、アルケニルカルボキシレート、アラルキルカルボキシレート、アルキルエトキシル化カルボキシレート、アラルキルエトキシル化カルボキシレート、アルキルラクチレート、アルケニルラクチレート、ステアロイルラクチレート、ステアレート、並びに、これらのカルボン酸及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載のウェブ。
【請求項17】
粘度調整剤が前記ウェブの少なくとも0.25重量%かつ約10重量パーセント以下の量で存在する、請求項9に記載のウェブ。
【請求項18】
前記熱可塑性脂肪族ポリエステルとは異なる熱可塑性(コ)ポリマーを更に含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項19】
前記繊維が、約1マイクロメートル(μm)以下のメジアン繊維径を呈する、請求項1〜18のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項20】
前記繊維が、約25μm以下のメジアン繊維径を呈する、請求項1〜19のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項21】
前記繊維が、約12μm以下のメジアン繊維径を呈する、請求項1〜20のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項22】
前記繊維が、約10マイクロメートル(μm)以下のメジアン繊維径を呈する、請求項1〜21のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項23】
前記繊維が、約7マイクロメートル(μm)以下のメジアン繊維径を呈する、請求項1〜22のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項24】
前記繊維が、少なくとも1μmのメジアン繊維径を呈する、請求項1〜23のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項25】
前記繊維が、前記非収縮添加剤以外の添加剤を10重量%未満含む、請求項1〜24に記載のウェブ。
【請求項26】
前記ウェブが生体適合性である、請求項1〜25のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項27】
前記ウェブが、前記熱可塑性脂肪族ポリエステルを含む溶融混合物から形成される不織布ウェブであり、前記非収縮添加剤がポリプロピレン又はナイロンである、請求項1〜26のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項28】
前記不織布ウェブがスパンボンドウェブ、ブローンマイクロファイバー、水流交絡ウェブ又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27に記載のウェブ。
【請求項29】
気体濾過物品、液体濾過物品、音吸収物品、断熱物品、表面洗浄物品、細胞成長支持物品、薬物送達物品、個人用衛生物品、歯科衛生物品、接着剤コーティングされたテープ及び創傷包帯物品からなる群から選択される、請求項1〜28のいずれか一項に記載のウェブを含む物品。
【請求項30】
請求項1〜28のいずれか一項に記載のウェブを含む、外科用又は医療用ドレープ。
【請求項31】
請求項1〜28のいずれか一項に記載のウェブを含む、外科用又は医療用ガウン。
【請求項32】
請求項1〜28のいずれか一項に記載のウェブを含む、殺菌ラップ。
【請求項33】
1つ以上の抗微生物剤を更に含む、請求項32に記載の殺菌ラップ。
【請求項34】
前記ウェブの繊維上又は前記ウェブの繊維内に撥水性添加剤を更に含む、請求項32に記載の殺菌ラップ。
【請求項35】
請求項1〜28のいずれか一項に記載のウェブを含む、創傷接触材料。
【請求項36】
脂肪族ポリエステル及び芳香族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、混合物の重量に対して0重量%超で、10重量%以下の量の非収縮添加剤との混合物を形成する工程と、
前記混合物から複数の繊維を同時に形成する工程と、
前記繊維の少なくとも一部を回収してウェブを形成する工程と、を含み、前記繊維は、分子配向を呈し、前記ウェブ全体で実質的にエンドレスに延在し、更に、前記ウェブが、前記繊維のガラス転移温度を超える温度に加熱されたときに12%以下で減少する、前記ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する、請求項1〜28のいずれか一項に記載のウェブの製造方法。
【請求項37】
前記繊維が少なくとも点位置で結合されている、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記繊維が、溶融紡糸、スパンボンド、フィラメント押出成形、電界紡糸、ガスジェット繊維形成、又はこれらの組み合わせを使用して形成される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
脂肪族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、混合物の重量に対して0重量%超で、10重量%以下の量の非収縮添加剤との混合物を形成する工程と、
前記混合物から複数の繊維を同時に形成する工程と、
前記繊維の少なくとも一部を回収してウェブを形成する工程と、を含み、前記繊維は分子配向を呈さず、更に、前記ウェブが、前記繊維のガラス転移温度を超える温度に加熱されたときに12%以下で減少する、前記ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法を有する、請求項1〜28のいずれか一項に記載のウェブの製造方法。
【請求項40】
前記繊維が少なくとも点位置で結合されている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記繊維が、メルトブロー、電界紡糸及びガスジェット繊維形成を用いて形成される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ウェブを後加熱する工程を更に含む、請求項36〜41のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−515175(P2013−515175A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544870(P2012−544870)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/060957
【国際公開番号】WO2011/084670
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】