説明

対向型高圧ハイドロリックシステム

制動システムの作動ハイドロリック流体に加えられる大気圧を上回る圧力を有する制動システムおよび方法。ある好ましい形態においては、当該制動システムは、少なくとも一つの圧力源(88)を含み、これは流体を加圧する。加圧された流体は、マスタープランジャ(10)およびスレーブピストン(74)の作動あるいは作用面(39,60)に対向する、マスタープランジャ(10)およびスレーブピストン(74)のそれぞれの圧力面に対して作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、車両および非車両ブレーキシステムなどのハイドロリックシステムを対象とする。特に本発明は、ハイドロリックシステムの作動流体に大気圧を上回る圧力が加えられるハイドロリックシステムを対象とする。
【0002】
この出願は、2010年1月7日に提出された米国仮出願第61/293,092号および2009年10月29日に提出された米国仮出願第61/256,217号の利益を主張する(その内容の全ては、この引用によって本明細書中に組み込まれる)。
【背景技術】
【0003】
車両および非車両用途のための制動システムなどの、さまざまなタイプのハイドロリックシステムが存在する。そうしたシステムは、パワーブースターなどの、必要なオペレーター投入力を低減するための機構、ならびにアンチロックシステムなどの、性能を向上させるための機構を含むであろう。だが、過剰な熱が発生し、そしてブレーキシステムの作動ハイドロリック流体へと伝達される用途を含む、既存のブレーキシステムの継続的な改良が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つ以上の好ましい実施形態は、車両のブレーキ流体などの、ハイドロリック流体の沸点を制御しかつ上昇させる。本発明の実施形態の利益は、これに限定されるわけではないが、流体の加圧によるオペレーターに対する制動フィール整合およびパフォーマンスの維持、極度の内部システム圧力および熱にさらされたシステムによって引き起こされる気泡が生じるかあるいは乳化したブレーキ流体の有害作用を低減すること、ブレーキフェード、故障および不整合などのブレーキ性能への水分および熱の有害作用を大幅に低減することを含み得る。
【0005】
関連する転がり車両は、動作時に、その動きの速度を制御するためのハイドロリックブレーキシステムを必要とする装車あるいは非装輪(たとえばキャタピラ駆動)構造体を備える。この設計のシステムから利益を得るであろう関連する転がり車両としては、自動車、二輪車、全地形車、重移動機械、列車および航空機が挙げられる。本発明の実施形態はまた、非車両用途を含む、その他のハイドロリックシステムにおける使用に好適であるかあるいは適合可能であってもよい。
【0006】
本発明のある好ましい実施形態は、好ましくは、ブレーキを作動させるために機械的に導入された既存の圧力とは無関係に作動する、対向端部から、捕らえられたハイドロリックブレーキ流体システムに圧力を加える、単一の圧力チャンバーを利用する。圧力チャンバーはガスのラバーブラダー(その膜特性はガスおよび流体環境を分離する)、あるいは金属(たとえばアルミニウム)可動ピストンあるいはその他の好適な素材または素材の組み合わせから構成された可動ピストンから構成でき、その構造および周面シーリングおよびスライド表面は大気分離を実現する。ガス環境への熱吸収を低減するためにセラミックあるいは類似のコーティングを施すことができる。圧縮可能な加圧対象物を提供するために、ガスの場所においてスプリングを利用可能である。
【0007】
本発明のある好ましい実施形態は、以下で説明するシステムのいずれかのような、制動システムの作動ハイドロリック流体に加えられる超大気圧を有する制動システムを含む。好ましい実施形態はまた、そうした制動システムを含む車両ならびに、そうした制動システムを製造し使用するための方法を含む。ある好ましい形態では、本制動システムは少なくとも一つの圧力源を含むが、これが流体を加圧する。加圧された流体は、マスタープランジャおよびスレーブピストンの作用あるいは作動面とは反対側の、マスタープランジャおよびスレーブピストンのそれぞれの圧力面に作用する。
【0008】
好ましい実施形態は、マスターチャンバーを少なくとも部分的に画定するマスターシリンダーを有する与圧ブレーキシステムを含む。マスタープランジャは、マスターシリンダー内でスライドすると共に、マスターチャンバーに面する作用面と、この作用面と対向する圧力面とを含む。スレーブシリンダーは、スレーブチャンバーを少なくとも部分的に画定する。スレーブピストンは、スレーブシリンダー内でスライドすると共に、スレーブチャンバーに面する作用面と、この作用面と対向する圧力面とを有する。マスターシリンダーは、マスタープランジャの動作がスレーブピストンの液圧的動作を生じるようにスレーブチャンバーと流体連通状態にある。少なくとも一つの圧力チャンバーから流体圧力がマスタープランジャの圧力面およびスレーブピストンの圧力面に作用する。
【0009】
ある形態においては、少なくとも一つの圧力チャンバーは単一の圧力チャンバーである。ある形態においては、少なくとも一つの圧力チャンバーは、少なくとも第1の圧力チャンバーおよび第2の圧力チャンバーを含み、第1の圧力チャンバーからの圧力はマスタープランジャの圧力面に作用し、かつ、第2の圧力チャンバーからの圧力はスレーブピストンの圧力面に作用する。
【0010】
ある形態においては、ブレーキシステムは、マスターリザーバチャンバーを少なくとも部分的に画定するマスターリザーバハウジングを含む。マスターリザーバチャンバーは、マスターチャンバーと選択的に流体連通状態に置かれる。ある形態においては、少なくとも一つの圧力チャンバーからの圧力がマスターリザーバチャンバーに作用するように、少なくとも一つの圧力チャンバーとマスターリザーバチャンバーとの間に可動壁が配置される。
【0011】
ある形態において、マスタープランジャは、互いに対して移動可能な第1の部分および第2の部分を含む。補償チャンバーが、第1の部分と第2の部分との間に画定され、かつ、少なくとも一つの圧力チャンバーと流体連通状態に置かれる。
【0012】
ある形態においては、ブレーキシステムは、加圧ガスを収容する少なくとも一つのガスチャンバーを含む。少なくとも一つのガスチャンバーからの圧力は、少なくとも一つの圧力チャンバーに作用する。バルブが、加圧ガスの圧力を調整することを可能とするために、少なくとも一つのガスチャンバーと連通可能である。
【0013】
ある好ましい実施形態は、車体と、地面に沿って車両を推進させるよう構成された少なくとも一つの地面接触要素と、ブレーキシステムとを有する車両を含む。当該ブレーキシステムは、接触要素を減速させるかあるいは停止させるよう構成された少なくとも一つの制動機構を含む。ブレーキシステムは、マスターチャンバーを少なくとも部分的に画定するマスターシリンダーを含む。マスタープランジャは、マスターシリンダー内でスライドすると共に、マスターチャンバーに面する作用面と、この作用面と対向する圧力面とを有する。少なくとも一つのスレーブシリンダーが、少なくとも部分的にスレーブチャンバーを画定する。少なくとも一つのスレーブピストンは、少なくとも一つのスレーブシリンダー内でスライドすると共に、スレーブチャンバーに面する作用面と、この作用面と対向する圧力面とを有する。マスターチャンバーは、マスタープランジャの動作が少なくとも一つのスレーブピストンの液圧的動作を生じるようにスレーブチャンバーと流体連通状態にある。少なくとも一つの圧力チャンバーからの流体圧力がマスタープランジャの圧力面および少なくとも一つのスレーブピストンの圧力面に作用する。
【0014】
ある形態では、車両のブレーキシステムにおける少なくとも一つの圧力チャンバーは単一の圧力チャンバーである。ある形態では、少なくとも一つの圧力チャンバーは、少なくとも第1の圧力チャンバーおよび第2の圧力チャンバーを含む。第1の圧力チャンバーからの圧力はマスタープランジャの圧力面に作用し、かつ、第2の圧力チャンバーからの圧力は少なくとも一つのスレーブピストンの圧力面に作用する。
【0015】
ある形態では、車両のブレーキシステムは、マスターリザーバチャンバーを少なくとも部分的に画定するマスターリザーバハウジングを含む。マスターリザーバチャンバーは、マスターチャンバーと選択的に流体連通状態に置かれる。ある形態では、少なくとも一つの圧力チャンバーからの圧力がマスターリザーバチャンバーに作用するように、少なくとも一つの圧力チャンバーとマスターリザーバチャンバーとの間に可動壁が配置される。
【0016】
ある形態では、車両ブレーキシステムのマスタープランジャは、互いに対して移動可能な第1の部分および第2の部分を含む。補償チャンバーが、第1の部分と第2の部分との間に画定されると共に、少なくとも一つの圧力チャンバーと流体連通状態にある。
【0017】
ある形態では、車両ブレーキシステムは、加圧ガスを収容する少なくとも一つのガスチャンバーを含む。少なくとも一つのガスチャンバーからの圧力は、少なくとも一つの圧力チャンバーに作用する。ある形態では、加圧ガスの圧力を調整することを可能とするために、バルブが少なくとも一つのガスチャンバーと連通する。
【0018】
好ましい実施形態は、車両を制動する方法を含む。この方法は、加圧流体源が作動ハイドロリック流体の対向する側におけるマスタープランジャおよびスレーブピストンの表面に対して圧力を加える間、作動ハイドロリック流体を介した力の伝達によってスレーブシリンダー内でスレーブピストンが動作するように、マスターシリンダー内でマスタープランジャを動作させるために、このマスタープランジャに対してユーザー発揮力を加えることを含む。本方法はさらに、加圧流体源が、作動ハイドロリック流体の対向する側におけるマスタープランジャおよびスレーブピストンの表面への圧力を維持している間、ユーザー発揮力を解放し、これによって、マスタープランジャおよびスレーブピストンの復帰動作を可能とすることを含む。
【0019】
以下、本発明に係る対向型高圧ブレーキシステムの上記及びその他の特徴、態様ならびに利点について、好ましい実施形態(これは本発明を説明することを意図したものであり、その限定は意図してない)に関する図面を参照して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】その後退・スタートポジションにある組み立てられたシステムの断面図である。
【図2】その作動状態での組み立てられたシステムの断面図である。
【図3】マスタープランジャが後退させられた再ロードポジションでの組み立てられたシステムの断面図であり、スレーブピストンは、通常のブレーキパッドの磨耗によってスレーブシリンダーから突出しており、かつ、圧力リダクションピストンは流体体積補給に適応するために位置が変更されている。
【図4】前輪および後輪分離システムを利用する四輪車両に組み込まれた場合の、好ましい実施形態のコンポーネント部品のルーティングおよび配置を示すブロック図である。
【図5】四つよりも多い、通常の車輪システムを利用する車両に取り付けられた場合の、好ましい実施形態のコンポーネント部分のルーティングおよび配置を示すブロック図である。
【図6】マルチピストンキャリパー配備を説明する好ましい実施形態のコンポーネント部分のルーティングおよび配置を示すブロック図である。
【図7】マルチ対向ピストンキャリパー配備を説明する好ましい実施形態のコンポーネント部分のルーティングおよび配置を示すブロック図である。
【図8】その最も簡単な形態の一つとしての組み立てられたシステムの断面図である。
【図9】遠隔二次リザーバを採用する組み立てられたシステムの断面図である。
【図10】一次および二次リザーバ内の動ピストンを採用する組み立てられたシステムの断面図である。
【図11】スタート/再ロードポジションので、一次および二次チャンバーとツーピースマスタープランジャとの間で共有リザーバを採用するシステムの断面図である。
【図12】配備ポジションでの、一次および二次チャンバーとツーピースマスタープランジャとの間で共用リザーバを採用するシステムの別な断面図である。
【図13】再ロードポジションでの、一次および二次チャンバーとツーピースマスタープランジャとの間の共用リザーバ、および通常の摩擦パッド磨耗に起因して突出させられたスレーブピストンに対応して変位させられたスライドピストンを採用するシステムの別な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施形態は、システムの作動ハイドロリック流体に加えられる超大気圧を有する、制動システムなどの油圧システムを含む。好ましい実施形態はまた、そうした制動システムを含む車両を、そしてそうした制動システムを製造しかつ使用するための方法を含む。ある好ましい形態では、制動システムは少なくとも一つの圧力源を含み、これは流体を加圧する。加圧された流体は、マスタープランジャおよびスレーブピストンの作動あるいは作用面と対向するマスタープランジャおよびスレーブピストンのそれぞれの圧力面に作用する。
【0022】
本発明の油圧システムは、車両あるいは他方に対する機械の一方のコンポーネントの速度を低減すること、あるいは相対運動を抑止することが望まれる、その他の機械に採用可能である。すなわち、本制動システムは車両あるいは非車両用途に採用可能である。車両用途は、装輪車両(たとえば、モーターサイクル、自動車、航空機あるいは列車)あるいは非装輪車両(たとえば、スノーモービル、戦車あるいはブルドーザーなどの無限軌道車両)を含み得る。好ましい実施形態は、非制動用途を含む、いかなるタイプの油圧システムにおいて採用されてもよい。たとえば、本発明のシステムは、車両あるいは非車両用途における油圧クラッチシステム、ならびに別なタイプの油圧システムに適用可能である。
【0023】
本発明のシステムは、油圧あるいは制動力が大きくかつ/または長時間にわたって持続するものである要求の厳しい用途における使用に適したものである。そうした用途は、ハイドロリックあるいは制動システムが作動させられるとき、作動ハイドロリックあるいはブレーキ流体の著しい加熱を引き起こす傾向がある。大気圧あるいは非加圧式ハイドロリックあるいは制動システムにおいては、作動流体は、ハイドロリックあるいは制動システムが解放されたとき、その沸点を超えることがあり、ハイドロリックあるいは制動システムの再使用時に、パフォーマンスの望ましくない低下あるいは機能の損失を生じる。本発明に係るシステムは、多くのあるいはあらゆる用途および環境において性能の低下あるいは機能の損失を低減あるいは排除することができる。
【0024】
当業者にとって明らかであるように、以下、本発明の特徴、態様および利点を、ある好ましい実施形態および実施例を参照して説明する。これらの実施形態および実施例のいくつかは、本システムが採用される特定の車両の関連するコンポーネントおよび機構の全てを示すことなく、本発明に係るシステムの基本コンポーネントを示している。さまざまなタイプのハイドロリックシステムおよびハイドロリック制動システムが公知であり、当業者は、必要あるいは好ましいならば、所望の車両あるいは非車両用途での使用のために図示する実施形態および形態を適合させることができる。たとえば、本発明のシステムは、とりわけ、ディスクブレーキ用途あるいはドラムブレーキ用途において採用可能である。以下で、図示説明する実施形態は、ディスクブレーキ車両用途を対象とするが、これは、フローティングキャリパーおよび固定式キャリパー機構だけでなく、シングルピストンおよびマルチピストン機構を含んでいてもよい。公知の、共通要素、たとえばブレーキペダル(あるいはレバー)アクチュエータ、パワーブースター、電子油圧制御システム、ディスクパッド/キャリパーおよび車輪/タイヤは、分かりやすくするために図示していない。さらに、たとえばパワーアシストあるいはアンチロック制動システムにおいて本発明のシステムを実施することは完全に当業者の能力の範囲にある。そうしたシステムの公知のコンポーネントおよび配置は、本発明の範囲内のものであると見なされる。
【0025】
図1ないし図3は、さまざまなポジションあるいは動作状態で、制動システムのある好ましい実施形態を示している。図1は、マスターシリンダー50内に配置されかつそれに対して軸方向に移動可能なマスタープランジャ10を示している。マスタープランジャ10は、好適な作動デバイス、システムあるいは装置(図示せず)によって、たとえば、レバーあるいはペダル装置によって、直接あるいは間接的に作動させることができる。マスタープランジャ10は、一方側に一次チャンバー22を、そして他方側にマスターチャンバー42を形成するために、プランジャ10のシャフト部分よりも直径が大きなマスタープランジャヘッド26を伴って形成される。好ましくは、一次チャンバー22とマスターチャンバー42との間のシーリングは、カップシール28および高圧シール24によって実現される。だが、その他の好適なシールあるいはシーリング機構がシール24および28、あるいは以下で説明するその他のさまざまなシール/シーリング機構のいずれかの代わりに使用されてもよい。一次チャンバー22の側において、マスタープランジャヘッド26は環状面23を有する。
【0026】
外部大気134に対するシステムのシーリングは、いずれもシールヘッド18に収容されかつサークリップ16などの好適な保持機構によってマスターシリンダー50内で保持された、マスタープランジャシール12およびシールヘッドシール20である。マスタープランジャ10の保持は、リターンスプリング32などの付勢要素によって支援されるが、これは、好ましくは、保持プラグ30によって適所において保持される。図示するリターンスプリング32は、マスターシリンダー50に当接する円形スプリングシート14上に着座している。
【0027】
図示する静止スタートポジションにおいては、マスターチャンバー42内の流体は、オリフィス44を介してブレーキライン46内へと、そしてブレーキラインセンター48を経てオリフィス52を介してスレーブシリンダー54のスレーブチャンバー56内へと、つながっている。スレーブシリンダー54内に軸方向に収容されているのはスレーブピストン74であり、これは、二次チャンバー58からスレーブチャンバー56を分離させるスレーブピストンヘッド64を有する。スレーブピストン74は、好ましくは、(ディスクブレーキ用途においては)ブレーキ摩擦パッドに、(ドラムブレーキ用途においては)シューに、あるいはその他の好適な制動要素に対して力を加える。ブレーキパッドあるいはシューは、ローターあるいはドラムおよび車輪などの対応する要素の速度を低下させるためにローターあるいはドラムと摩擦係合する。シール62は、二次チャンバー58およびスレーブチャンバー56を互いにシールするために、スレーブピストンヘッド64の周囲に周方向に収容されている。シール76およびOリング68は二次チャンバー58を外部大気134からシールし、かつ、シールヘッド72内に収容されている。シールヘッド72は、サークリップ70の使用といった、好適な保持機構によって保持される。
【0028】
マスターリザーバハウジング110は、マスターリザーバ90内にシステムの補給流体を収容することができる。高圧ガスチャンバー86が、分離壁すなわち膜112のキャプチャー内に形成されるが、これは、圧力チャンバー88にその圧力を加える。だが、以下で説明する実施形態を含む、その他の形態においては、ガスチャンバー(あるいはチャンバー群)86は、マスタープランジャ10およびスレーブピストン74の環状面23および66にそれぞれ直接作用することができる。圧力チャンバー88が、今度は、マスターリザーバハウジング110内に嵌め込まれかつその中で軸方向に移動可能なリダクションピストン106に対して圧力を加える。リダクションピストン106は、マスターリザーバ90から圧力チャンバー88を分離する。リダクションピストン106の周囲をシールするのは、シール98および108である。保持キャップ116はマスターリザーバハウジング110内に分離膜112を含み、かつ、マスターリザーバハウジング110内へと軸方向に嵌め込まれ、かつ、サークリップ120などの適当な保持機構によって適所において固定されている。高圧ガスチャンバー86は、好適な(たとえばワンウェイ)バルブ118(詳しくは図示していない)の採用によって加圧される。リダクションピストン106とマスターリザーバハウジング110との間に形成される環状チャンバー100は、好ましくは、ベントオリフィス102を介して、外部大気134へとつながっている。
【0029】
マスターリザーバ90は端部プラグ92によって閉塞されている。端部プラグ92は、Oリング96などの適当なシールによって外部大気134に対してシールされ、かつ、サークリップ94などの好適な保持機構によって保持されている。
【0030】
高圧ガスチャンバー86が圧力チャンバー88に対してその圧力を加えるので、それは、同時に、三つの領域を加圧する。第1の(やはり同時の)連通は、マスターリザーバ90に対する、リダクションピストン106に対してであり、これはオリフィス128を経てマスター高圧ライン130へと、そして、そのセンター132を通り、補給オリフィス38を通り、マスターチャンバー42内へと連通する。好ましくは、補給オリフィス38を経た流体連通は、カップシール28が補給オリフィス38を露出させるとき、マスタープランジャ10のスタートポジションにおいてのみ可能である。第二には(やはり同時に)、直接に、圧力チャンバー88からオリフィス122を経て一次高圧ライン124へと、そしてそのセンター126を経て、オリフィス36を経て、一次チャンバー22へであり、ここで、それは、マスターシリンダープランジャヘッド26の環状面23に対して最終的に圧力を加える。第三には(やはり同時に)、圧力チャンバー88から、オリフィス84を経て、二次高圧ライン80内へ、そのセンター82を通り、オリフィス78を通り、そして二次チャンバー58へであり、ここで、それはスレーブピストンヘッド64の環状面66に圧力を加える。
【0031】
環状面23および66に加えられる圧力は、システムのロスを無視して、同一あるいは実質的に同一である。マスタープランジャヘッド26を経て加えられる力は、作用面60に対してスレーブピストンヘッド64を経て生み出される出力圧力と好ましくは等しいか、あるいは実質的に等しい、作用面39に対する出力圧力を発生させる。これは、環状面23および環状面66の相対面積およびそのそれぞれのヘッド作用表面積によって実現される。したがって、マスターチャンバー42、スレーブチャンバー56およびブレーキライン46内の同一圧力を実現することができる。これら出力圧の僅かな不整合は、ある用途に関しては望ましく、そして、どちらかの環状面の面積変更およびそのそれぞれの作用表面積比によって変更可能である。
【0032】
リダクションピストン106に加えられる圧力は、リダクションピストン106の表面103に対してそれを行う。対向する側面104が表面103よりも大きな作用面積を有するので、圧力チャンバー88からマスターリザーバ90内の圧力低減が実現され、そしてマスターリザーバ90内の圧力はブレーキライン46の圧力と意図的に適合させられるか、あるいはスレーブピストン74のさらなるチューニングのための圧力の所望の不整合は展開の後、元に戻る。
【0033】
図2は、マスタープランジャ10がマスターシリンダー50内へと押し込まれ、マスターチャンバー42内の容積を消費している作動状態でシステムを示している。カップシール28はその前縁40で補給オリフィス38をカバーしており、それゆえ、マスター高圧ライン130とマスターチャンバー42との間には、もはや連通は生じない。圧縮チャンバー42の流体は少なくとも実質的にハイドロリック固体であるので、低減された体積は、オリフィス44を通り、ブレーキラインセンター48を通り、オリフィス52を通り、スレーブシリンダー54内へと連通しており、スレーブチャンバー56内の流体をスレーブピストン74の作用面60に積極的に圧力を加えるために押しやり、これによってスレーブピストン74を移動させると共にブレーキパッド(図示せず)を押しやる。二次チャンバー58および一次チャンバー22の容積は、マスタープランジャ10およびスレーブピストン74の両方の動作が生じるとき動的に変化し、そして圧力チャンバー88とのその間接的連通によって、その流体要求に対応可能である。
【0034】
図3は、通常のブレーキ磨耗後のリロード/スタートポジションにおいてシステムを示しており、ここで、リターンスプリング32は、その突出ストッパー34がマスターシリンダー50に当接して、さらなる突出を制限するまで、マスタープランジャ10を引き込むために、保持プラグ30を押圧している。リターンスプリング32は保持プラグ30によって保持されるが、これは、マスタープランジャ10に対して取り付けられ、かつ、位置決めプレートによってマスターシリンダー50に対して配置される。補給オリフィス38は露出させられ、かつ、マスターチャンバー42とマスター高圧ライン130との間に連通が生じ得る。スレーブピストン74が、図示するように、通常のブレーキ磨耗によって突出するとき、作用面60と作用面39との間の容積は増大する。補給オリフィス38の露出は、流体がマスターチャンバー42を再び満たすことを可能とし、システムの流体体積要求を満足させる。
【0035】
マスターリザーバ90内の容積はシステム内の必要容積に比例して減少し、そしてリダクションピストン106はこの容積変化を可能とするために移動する。リダクションピストン106の移動量は、通常、リダクションピストン106の作用表面積104で割った、スレーブピストン74の作用面60の面積と、スレーブピストン74の移動距離(流体体積はブレーキの磨耗に伴って変化する)との積に等しい。リダクションピストン106が流体補給のために移動し、それに続くガス圧低下が生じるとき、高圧ガスチャンバー86内で容積の増大が生じる。だが、二次チャンバー58の容積減少は同時に起こり、そして流体としてのコンポーネントの体積は圧力チャンバー88に導入されて、高圧ガスチャンバー86のガス圧力低減の一部あるいは全部を埋め合わせ、そして、それは正確に計算可能であり、適当な面積および体積が分かる。
【0036】
図4は、一次チャンバー22およびマスターチャンバー42を収容する二つのマスターシリンダー50を備えた四輪車両のブロック図を示している。この図はまた、高圧チャンバー86、圧力チャンバー88およびマスターリザーバ90を含む二つのマスターリザーバハウジング110を示している。マスターシリンダー50は、一般的な車両構造に基づいて、完全に別体のハウジング110内に存在してもよく、あるいは単一ハウジング内に組み込まれてもよい(依然として機能的には分離状態である)。図4はまた、車両の各コーナーに一つずつの、そして、好ましくは、車両の各コーナーにおけるそれぞれのホイール(図示せず)に対応する、四つのスレーブシリンダー54を示している。高圧チャンバー86は圧力チャンバー88に対して圧力を加えるが、これは、今度は、一次高圧ライン124を介して一次チャンバーに対して、そして二次高圧ライン80を介して各ホイール(図示せず)におけるスレーブシリンダー54内の二次チャンバー58に対して、一定圧力を加える。好ましくは、マスターリザーバ90内の圧力は、ブレーキが操作されるまで、マスター高圧ライン130を介して、マスターチャンバー42と直に連通している(ブレーキ操作の際に、この連通は機械的に妨げられる)。ブレーキが使用されたとき、流体は、ブレーキライン46を介して、マスターチャンバー42からスレーブチャンバー56へと伝達され、これによって制動力が加えられる。マスタープランジャ10、スレーブピストン74およびリダクションピストン106の表面の面積は、二つのスレーブシリンダー54を作動させる各マスターシリンダー50に対応するために調整可能である。すなわち、好ましくは、スレーブピストン74(あるいはその他の重複コンポーネント)の累積的面積は、個々の表面積の比率のバランスに関して考慮される。
【0037】
図5は図4に示すシステムの変形例であり、これは、付加的な後輪(図示せず)と、必要となるであろう付加的なスレーブシリンダー54と、付加的スレーブシリンダー54と図4の既存のシステムとの間のルーティングとを含む。マスタープランジャ10、スレーブピストン74およびリダクションピストン106の表面の面積は、二つあるいは四つのスレーブシリンダー54を作動させる各マスターシリンダー50に由来する累積的面積に対応するために調整可能である。
【0038】
図6は、マルチスレーブピストンシステムが採用可能であるので説明のために選び出された一つのホイールキャリパー142を備えた図4に示すシステムの変形例の一部と、ルーティングおよびコンポーネント部品間の関係を示している。スレーブシリンダー54は、連通ライン136によって直列に連結された複数のスレーブチャンバー56と、連通ライン138によって直列に連結された複数の二次チャンバー58とを収容する。マスタープランジャ10、スレーブピストン74およびリダクションピストン106の表面の面積は、複数のスレーブピストンに由来する累積的面積に対応するために調整可能である。
【0039】
図7は図6に示すシャフトの変形例を示している。図1ないし図6のシステムは、スレーブピストンがブレーキローターの一方側に設けられたフローティングキャリパーブレーキシステムに関連して示されている。図7は、ホイールキャリパー142内にマルチ対向ピストン(ピストンは図示せず)レイアウトを有するシステムを示している。付加的な高圧ライン80が一連の二次チャンバー58を供給するために採用されており、これはさらなる連通ライン138を使用することで連結されている。連結ライン140は、ブレーキが使用されたときスレーブチャンバー56を作動させるために連通ライン136を介して接続されたスレーブチャンバー56の第2の系列に付加されている。上述したように、マスタープランジャ10、スレーブピストン74およびリダクションピストン106の表面積は、複数のスレーブピストンに由来する累積的面積に対応するために調整可能である。
【0040】
図8ないし図10は、図1ないし図7のシステムの変形例を示している。図8ないし図10のシステムにおいては、複数の流体圧力源が設けられている。好ましくは、一つの圧力源がマスタープランジャ211に作用し、そして別な、別個の圧力源がスレーブピストン249に作用する。特に、図8は、マスターリザーバ218が取り付けられたマスターシリンダーボディ210を示している。マスターリザーバ218内に配置されているのが、高圧大気224を捕らえ、そしてマスターリザーバ218内のある体積のブレーキ流体225を押しやる可動仕切りすなわち壁あるいはフレキシブルな(たとえばゴム)マスターブラダー219である。マスターブラダー219の大きなリム220がマスターブラダーキャップ222の境界内で捕らえられており、そして、相対係合面に対してマスターブラダーの大きなリム220の内外周面をシールしている。マスターブラダーキャップ222は、サークリップ221などの、適当な保持機構によって適所にて保持される。マスターブラダー229の高圧大気224は、マスターブラダーキャップ222を経て、適切な(たとえばワンウェイ)バルブ223(図示せず)を利用して加圧される。マスターリザーバ218内の圧力下の流体225の体積は、それが可能であるときにはいつでも自然に移動するので、それは、オリフィス217を経てマスタープランジャヘッド214の後方に形成された一次チャンバー213に、そして同時に、好ましくは最小サイズの別なオリフィス2265を経てプランジャヘッド214の反対側においてマスターチャンバー227につながっている。
【0041】
一次チャンバー213からの流体の漏れ出しは、マスターチャンバー227に対する直接的な連通を最小限に抑えるかあるいはそれを阻止するために、マスタープランジャ211の周囲の外部大気に対するシール212、およびマスタープランジャヘッド214の周面周りのシール215の採用によって制御される。
【0042】
シール231を備えたマスターシリンダープラグ230がマスターチャンバー227内へと配置され、そして、たとえばサークリップ228などの適当な保持機構によって適所で保持されている。マスターチャンバー227内のブレーキ流体は、マスターシリンダーボディ210のオリフィス232を経て、ブレーキレインセンター235内につながっている。ブレーキライン236は、たとえば、雄ネジ234および雌ネジ233によってマスターシリンダーボディ210に対して、そして、たとえば雄ネジ手段238および雌ネジ手段237によってスレーブシリンダーボディ247に対して、取り付けられている。ブレーキ流体は、ブレーキラインセンター235から、オリフィス239を経て、スレーブチャンバー243内につながっている。シール241を備えたスレーブシリンダープラグ242がスレーブチャンバー243内へと配置され、そして、たとえばサークリップ240などの適切な保持機構を用いて適所にて保持される。
【0043】
スレーブリザーバ252が取り付けられたスレーブシリンダーボディ247は、高圧大気252を捕らえ、そしてスレーブリザーバ252内のある体積のブレーキ流体251を押しやる可動仕切りすなわち壁あるいはフレキシブルな(たとえばゴム)スレーブブラダー253を収容する。スレーブブラダー253の大きなリム255がスレーブブラダーキャップ257の境界内で捕らえられており、そして、相対係合面に対してスレーブブラダーの大きなリム255の内外周面をシールしている。スレーブブラダーキャップ257は、サークリップ256などの、適当な保持機構によって適所にて保持される。スレーブブラダー253の高圧大気254は、スレーブブラダーキャップ257を経て、適切な(たとえばワンウェイ)バルブ258(図示せず)を利用して加圧される。スレーブリザーバ流体の加圧された体積251は、スレーブピストンヘッド245の後方の二次チャンバー246とオリフィス250を経てつながっている。二次チャンバー246は、シール244によってスレーブチャンバー243から、そしてシール248によって外部大気に対してシールされる。
【0044】
ブレーキが作動している間、マスタープランジャ211はマスターチャンバー227内へと移動させられる。マスタープランジャカップシール216は、マスターリザーバ218およびマスターチャンバー227から小オリフィス226をカバーし、それゆえ、対象物間に連通はもはや生じ得ない。マスターチャンバー227内のマスタープランジャカップシール216の前方の(実質的なあるいは少なくとも理論的な)ハイドロリック固体は、マスターシリンダーボディ210のオリフィス232を通り、ブレーキラインセンター235、スレーブオリフィス239を通り、スレーブチャンバー243内へと押し込まれる。スレーブピストン249は、ブレーキパッド(図示せず)を押すために導入された体積によって移動させられる。二次チャンバー246内で捕らえられた体積の減少は、スレーブブラダー253を見合っただけ潰すために、スレーブリザーバ252内にオリフィス250を経て、その過剰な流体を押し込む。マスターブラダー219およびスレーブブラダー253内の圧力は、そのそれぞれのマスタープランジャ211およびスレーブピストン249に対して等しくかつ逆向きの力をそれらが加えるようなものである。両者内の圧力は、所望の対応力を得るために、選択された用途のために必要な機械的比率に依存して、変化し得る。たとえば、マスターブラダー219およびスレーブブラダー253内の圧力は、互いに異なっていてもよく、そして、好ましくは、その上に圧力が作用する個々のピストン211,249の表面に関連付けられる。圧力および/または表面積は、ピストン211および249に作用する等しくかつ逆向きの力が得られるように調整可能である。マスタープランジャ211へのブレーキ操作力の解放によって制動力は消失し、そしてマスタープランジャ211は、機械的ストッパー(図示せず)に当接する、その完全に突出したポジションへと復帰する。マスタープランジャ211は、リターンスプリング229の採用によって、その復帰が支援される。通常のブレーキパッド損耗の経過を通じて、マスタープランジャ211とスレーブピストン249との間のシステム内の体積は増大する。マスタープランジャ211の完全に突出したポジションによって、小オリフィス226を経た連通が再度実現され、これによって流体が高圧マスターリザーバ218とマスターチャンバー227との間で自由に移動することが可能となる。この連通によって、マスタープランジャ211とスレーブピストン249との間の減少した流体体積を、少量の流体225で満たすことが可能となる。
【0045】
図9は、雄ネジ265および雌ネジ264あるいはその他の好適な接続手段を用いて高圧ホース263に接続された遠隔リザーバ259を備えた実施形態を示している。ホース263は、雄ネジ261および雌ネジ260あるいはその他の好適な接続手段を用いてスレーブボディ247に対して同様に取り付けられる。加圧大気254は、遠隔スレーブリザーバ259内の流体251を加圧するためにスレーブブラダー253を押しやり、そして、オリフィス266を通り、ホースセンター262を通り、スレーブシリンダーボディ247のオリフィス250を通り、そして最終的に二次チャンバー246につながっている。
【0046】
図10は図8および図9に示す形態と類似のシステムの一実施形態を示しており、これは、やはり、高圧大気224とマスターリザーバ218内のある体積のブレーキ流体225とを分離するためのその周面の周りのシール275と共にマスターリザーバ218内に配置された動的マスターピストン272を使用する。好ましくは、動的マスターリザーバ272の周面の周りのガイドブッシュ276は、マスターリザーバ218内での整列状態を維持する。マスターリザーバキャップ273は、サークリップ221などの適当な保持機構によって保持され、かつ、高圧環境224からのガス漏れを実質的に阻止するかあるいは許容しないように、その周面の周りにシール274を有する。高圧環境224は、マスターリザーバキャップ273を経て、適切な(たとえばワンウェイ)バルブ223(図示せず)を利用して加圧される。
【0047】
スレーブリザーバ252内には、動的スレーブピストン271が、高圧環境254とスレーブリザーバ252内のある体積のブレーキ流体251とを分離するためのその周面の周りのシール269と共に配置されている。好ましくは、動的スレーブピストン271の周面の周りのガイドブッシュ270は、スレーブリザーバ252内での整列状態を維持する。スレーブリザーバキャップ267は、サークリップ256によって保持され、かつ、高圧環境254からのガス漏れを実質的に阻止するかあるいは許容しないように、その周面の周りにシール268を有する。スレーブ高圧環境254は、スレーブリザーバキャップ267を経て、適切な(たとえばワンウェイ)バルブ258(図示せず)を利用して加圧される。
【0048】
図11ないし図13は、図1ないし図3のものと類似の、単一の圧力源を採用する制動システムの実施形態を示している。特に、図11は、マスタータンク293が取り付けられたマスターシリンダーボディ306を示している。マスタープランジャ311およびマスタースライドプランジャ317は、マスターシリンダーボディ306の好ましくは精密内腔内に直列に配置されており、マスタースライドプランジャ317は、自由スライド様式で、マスタープランジャ311内に挿入されている。一次チャンバー314と圧縮チャンバー298との間の流体連通をシールするのは高圧シール316およびカップシール303である。圧縮チャンバー298とマスターチャンバー227との間の流体連通をシールするのは、高圧シール296およびカップシール295である。マスタープランジャ311が高圧シール313の内周面内で往復変位している状態で、一次チャンバー314から外部環境への流体漏れ出しをシールするのは、マスターシリンダーボディ106内の高圧シール313である。マスタースライドプランジャ317が高圧シール302内で変位している状態で、圧力チャンバー298から外部環境への流体漏れ出しをシールするのはマスタープランジャヘッド315の内側端部上の高圧シール302である。マスターチャンバー227は、マスターシリンダープラグ230の端部内に配置されかつたとえばサークリップ228などの適当な保持機構によって保持されたマスターシリンダープラグ230の外周面の周りのシール231によって外部環境からシールされる。マスタープランジャ311は、好ましくは、リターンスプリング312などの付勢機構によって、マスターシリンダーボディ306に対して突出ストッパー305に当接した完全に突出したポジションで保持される。リターンスプリング312は、マスターシリンダーボディ306上に載置されたスプリングシート307上に位置し、そして、マスタープランジャ311の端部に対して取り付けられた保持プラグ308によって保持される。ベント孔309および310は、マスタースライドプランジャ317の非加圧側を外部環境に通気させる。
【0049】
遠隔リザーバ281は、可動仕切りあるいは壁あるいはフレキシブなブラダー283に存在場所を提供するが、それは、その可動あるいは膜タイプ特性によって、高圧ガス環境284を、遠隔リザーバ281内に同様に捕らえられたブレーキ流体体積282から分離する。ブラダーキャップ287はブラダー283を適所にて保持し、そして捕らえられた大きなブラダーリム285は、ブラダー283の外内周を外部環境からシールする。高圧ガス体積284は適切な(たとえばワンウェイ)バルブ288(図示せず)の使用によって加圧される。高圧ガス体積284はブラダー283を押しやり、続いて流体体積282を押しやると共にそれを加圧する。ブラダーキャップ287は、たとえばサークリップ286などの適当な保持機構によって保持される。加圧された流体体積282は、オリフィス280を通ってティー接続部324内の小チャンバー278内に至り、ホースセンター290を通ってマスタータンク容積294内に至り、オリフィス304を通りマスタープランジャヘッド315に圧力を加える一次チャンバー314へと、そして、補給オリフィス299を経てマスタースライドプランジャヘッド297へと圧力を加える圧縮チャンバー298へとつながっている。同時に加圧された流体は、小チャンバー278からホースセンター321を通りオリフィス250を通って二次チャンバー246へと移動し、スレーブプランジャヘッド245に対して圧力を加える。
【0050】
遠隔リザーバ281は、たとえばネジ付き雌ボス279によって、ティー接続部324につながっている(あるいは一体的に形成されてもよい)。ティー接続部324は、たとえば高圧ホース322の雄ネジ付きボス323によって高圧ホース322に接続される。高圧ホース322は、たとえば、ネジ付きボス320および雌ネジ付きボス319によって、スレーブシリンダーに接続される。ティー接続部324は、たとえば、高圧ホース291の雄ネジ付きボス289によって、高圧ホース291に接続される。高圧ホース291は、たとえば、高圧ホース291の端部の雄ネジ292によって、マスタータンク293に接続される。
【0051】
プラグ300および301は、アセンブリブリードおよび/または製造のために、マスタータンク293内に配置され、そして、さまざまな好適な連結機構のなかでも、ネジ式あるいは密着押し込み式プラグであってもよい。
【0052】
図12はシステムを作動状態で示しているが、ここで、マスタープランジャ311およびマスタースライドプランジャ317はマスターシリンダーボディ306内へと押し込まれ、マスターチャンバー227内の容積を消費している。カップシール303は補給オリフィス299をカバーしており、それゆえ、圧縮チャンバー298とマスタータンク容積294との間の連通は、少なくとも実質的にあるいは完全に阻止される。圧縮チャンバー298の流体は(少なくとも実質的にあるいは理論的に)ハイドロリック固体となり、それゆえマスタースライドプランジャ317を押しやる。マスタースライドプランジャ317の完全に押し込まれたポジションにおいては(ブレーキパッドの損耗がほとんどあるいは全く生じておらず、しかもマスタースライドプランジャ317がマスタープランジャ311内に完全に挿入されたとき)、二つの部分の間に物理的接触が存在するので、マスタープランジャ311はスライドプランジャ317を機械的に押しやる。マスターチャンバー227内の増大した占有体積を移動させる必要があるので、体積は、ブレーキパッド(図示せず)に当接するスレーブピストン249を押しやるために、オリフィス232を通り、ブレーキラインセンター235を通り、オリフィス239を通り、スレーブシリンダー容積243へとつながっている。
【0053】
一次チャンバー314内に形成される(そして突出ストッパー305はマスターシリンダーボディ306から離れるように移動させられる)増大体積は、必要に応じて、マスタータンク体積294内で利用可能な流体によって満たされるが、これは、同時に、ホースセンター290、ティー連結部324の小チャンバー278および遠隔リザーバ281内のブレーキ流体体積282からそれ自体を補充する。一次チャンバー314内でのスペース増大に適応するための流体のこの移動は、終局的には、ブラダー283の膨張(あるいは仕切りの移動)およびブレーキ流体体積282への高圧ガス体積284によって実現される。
【0054】
同時に、二次チャンバー246内のスペースにおける僅かな減少は、その変位を、高圧ホースセンター321へとスレーブシリンダーボディ247のオリフィス250を経て伝達する。マスタースライドプランジャヘッド297およびスレーブピストンヘッド245の後方の面積は、好ましくは、同じであり、それゆえ、加えられる圧力は同様に同じである。
【0055】
図13は、システムを、再充填/スタートポジションで示しているが、ここで、リターンスプリング312は、マスタープランジャ311に連結された保持プラグ308を押しやり、そして、好ましくは、その突出ストッパー305が当接状態となるようにマスタープランジャ311を引き戻している。この状況でブレーキの損耗が生じたとき、スレーブピストン249はスレーブシリンダーボディ247からさらに突出して、増大した内部容積を生み出す。マスタースライドプランジャ317はマスタープランジャ311内で自由にスライドでき、そしてカップシール303がマスタープランジャ311と共に後退させられているために補給オリフィス299は今や露出させられているので、圧縮チャンバー298は、新しい容積要求のために相応に拡張可能である。必要な流体は、ブレーキの損耗が生じたとき、圧縮チャンバー298へと補給オリフィス299を経て漸増的に供給される。
【0056】
本発明について、ある好ましい実施形態および例に関連付けて説明してきたが、本発明は、具体的に説明した実施形態を超えて、別な代替実施形態および/または本発明の利用法およびその明らかな変更および等価物に及ぶことは明白である。特に、本ブレーキシステムは特に好ましい実施形態と関連付けて説明したが、当業者にとって、本明細書に鑑みれば、本システムのある利点、特徴および態様をさまざまなその他の用途において実現できることは明らかである(その多くは先に説明した)。さらに、説明した本発明のさまざまな態様および特徴は、別個に、互いに組み合わせて、あるいは互いに置き換えて実施することができ、そして特徴および態様のさまざまな組み合わせおよび下位組み合わせが可能でありかつ本発明の範囲に依然として含まれる。したがって、本明細書中に開示する本発明の範囲は、上述した特に開示した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲の記載によって決定される。
【符号の説明】
【0057】
10 マスタープランジャ
12 マスタープランジャシール
14 円形スプリングシート
16 サークリップ
18 シールヘッド
20 シールヘッドシール
22 一次チャンバー
23 環状面
24 シール
26 マスタープランジャヘッド
28 カップシール
30 保持プラグ
32 リターンスプリング
38 補給オリフィス
42 マスターチャンバー
44 オリフィス
46 ブレーキライン
48 ブレーキラインセンター
50 マスターシリンダー
52 オリフィス
54 スレーブシリンダー
56 スレーブチャンバー
58 二次チャンバー
62 シール
64 スレーブピストンヘッド
66 環状面
68 Oリング
70 サークリップ
72 シールヘッド
74 スレーブピストン
76 シール
78 オリフィス
80 二次高圧ライン
82 センター
84 オリフィス
86 ガスチャンバー
88 圧力チャンバー
90 マスターリザーバ
92 端部プラグ
94 サークリップ
96 Oリング
98 シール
100 環状チャンバー
102 オリフィス
106 リダクションピストン
108 シール
110 マスターリザーバハウジング
112 分離膜
116 保持キャップ
118 バルブ
120 サークリップ
122 オリフィス
124 一次高圧ライン
126 センター
128 オリフィス
130 マスター高圧ライン
132 センター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
与圧ブレーキシステムであって、
マスターチャンバーを少なくとも部分的に画定するマスターシリンダーと、
前記マスターシリンダー内でスライドするマスタープランジャであって、このマスタープランジャは、前記マスターチャンバーに面する作用面と、この作用面と対向する圧力面とを有するマスタープランジャと、
スレーブチャンバーを少なくとも部分的に画定するスレーブシリンダーと、
前記スレーブシリンダー内でスライドするスレーブピストンであって、このスレーブピストンは、前記スレーブチャンバーに面する作用面と、この作用面と対向する圧力面と、を有し、前記マスターチャンバーは、前記マスタープランジャの動作が前記スレーブピストンの液圧的動作を生じるように前記スレーブチャンバーと流体連通状態にあるスレーブピストンと、
少なくとも一つの圧力チャンバーであって、この少なくとも一つの圧力チャンバーからの流体圧力が前記マスタープランジャの前記圧力面および前記スレーブピストンの前記圧力面に作用するようになっている少なくとも一つの圧力チャンバーと、
を具備してなることを特徴とする与圧ブレーキシステム。
【請求項2】
前記少なくとも一つの圧力チャンバーは、単一の圧力チャンバーからなることを特徴とする請求項1に記載の与圧ブレーキシステム。
【請求項3】
前記少なくとも一つの圧力チャンバーは、第1の圧力チャンバーおよび第2の圧力チャンバーからなり、前記第1の圧力チャンバーからの圧力は前記マスタープランジャの前記圧力面に作用し、かつ、前記第2の圧力チャンバーからの圧力は前記スレーブピストンの前記圧力面に作用するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の与圧ブレーキシステム。
【請求項4】
マスターリザーバチャンバーを少なくとも部分的に画定するマスターリザーバハウジングをさらに備え、前記マスターリザーバチャンバーは、前記マスターチャンバーと選択的に流体連通状態に置かれることを特徴とする請求項1に記載の与圧ブレーキシステム。
【請求項5】
前記少なくとも一つの圧力チャンバーからの圧力が前記マスターリザーバチャンバーに作用するように、前記少なくとも一つの圧力チャンバーと前記マスターリザーバチャンバーとの間に可動壁をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の与圧ブレーキシステム。
【請求項6】
前記マスタープランジャは、互いに対して移動可能な第1の部分および第2の部分を備え、前記第1の部分と前記第2の部分との間に画定される補償チャンバーが前記少なくとも一つの圧力チャンバーと流体連通状態であることを特徴とする請求項1に記載の与圧ブレーキシステム。
【請求項7】
加圧ガスを収容する少なくとも一つのガスチャンバーをさらに備え、前記少なくとも一つのガスチャンバーからの圧力は前記少なくとも一つの圧力チャンバーに作用するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の与圧ブレーキシステム。
【請求項8】
前記加圧ガスの圧力を調整することを可能とする前記少なくとも一つのガスチャンバーと連通するバルブをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の与圧ブレーキシステム。
【請求項9】
車両であって、
車体と、
地面に沿って前記車両を推進させるよう構成された少なくとも一つの地面接触要素と、
前記地面接触要素を減速させるかあるいは停止させるよう構成された少なくとも一つの制動機構を備えたブレーキシステムと、を備え、このブレーキシステムは、
マスターチャンバーを少なくとも部分的に画定するマスターシリンダーと、
前記マスターシリンダー内でスライドするマスタープランジャであって、このマスタープランジャは、前記マスターチャンバーに面する作用面と、この作用面と対向する圧力面とを有するマスタープランジャと、
スレーブチャンバーを少なくとも部分的に画定する少なくとも一つのスレーブシリンダーと、
前記少なくとも一つのスレーブシリンダー内でスライドする少なくとも一つのスレーブピストンであって、このスレーブピストンは、前記スレーブチャンバーに面する作用面と、この作用面と対向する圧力面と、を有し、前記マスターチャンバーは、前記マスタープランジャの動作が前記少なくとも一つのスレーブピストンの液圧的動作を生じるように前記スレーブチャンバーと流体連通状態にある少なくとも一つのスレーブピストンと、
少なくとも一つの圧力チャンバーであって、この少なくとも一つの圧力チャンバーからの流体圧力が前記マスタープランジャの前記圧力面および前記少なくとも一つのスレーブピストンの前記圧力面に作用するようになっている少なくとも一つの圧力チャンバーと、を具備してなることを特徴とする車両。
【請求項10】
前記少なくとも一つの圧力チャンバーは、単一の圧力チャンバーからなることを特徴とする請求項9に記載の車両。
【請求項11】
前記少なくとも一つの圧力チャンバーは、第1の圧力チャンバーおよび第2の圧力チャンバーからなり、前記第1の圧力チャンバーからの圧力は前記マスタープランジャの前記圧力面に作用し、かつ、前記第2の圧力チャンバーからの圧力は前記少なくとも一つのスレーブピストンの前記圧力面に作用するようになっていることを特徴とする請求項9に記載の車両。
【請求項12】
マスターリザーバチャンバーを少なくとも部分的に画定するマスターリザーバハウジングをさらに備え、前記マスターリザーバチャンバーは、前記マスターチャンバーと選択的に流体連通状態に置かれることを特徴とする請求項9に記載の車両。
【請求項13】
前記少なくとも一つの圧力チャンバーからの圧力が前記マスターリザーバチャンバーに作用するように、前記少なくとも一つの圧力チャンバーと前記マスターリザーバチャンバーとの間に可動壁をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の車両。
【請求項14】
前記マスタープランジャは、互いに対して移動可能な第1の部分および第2の部分を備え、前記第1の部分と前記第2の部分との間に画定される補償チャンバーが前記少なくとも一つの圧力チャンバーと流体連通状態であることを特徴とする請求項9に記載の車両。
【請求項15】
加圧ガスを収容する少なくとも一つのガスチャンバーをさらに備え、前記少なくとも一つのガスチャンバーからの圧力は前記少なくとも一つの圧力チャンバーに作用するようになっていることを特徴とする請求項9に記載の車両。
【請求項16】
前記加圧ガスの圧力を調整することを可能とする前記少なくとも一つのガスチャンバーと連通するバルブをさらに備えることを特徴とする請求項15に記載の車両。
【請求項17】
車両を制動する方法であって、
加圧流体源が作動ハイドロリック流体の対向する側におけるマスタープランジャおよびスレーブピストンの表面に対して圧力を加える間、前記作動ハイドロリック流体を介した力の伝達によってスレーブシリンダー内で前記スレーブピストンが動作するように、前記マスターシリンダー内で前記マスタープランジャを動作させるために、このマスタープランジャに対してユーザー発揮力を加えることと、
前記加圧流体源が、前記作動ハイドロリック流体の対向する側における前記マスタープランジャおよびスレーブピストンの表面への圧力を維持している間に、前記ユーザー発揮力を解放し、これによって、前記マスタープランジャおよびスレーブピストンの復帰動作を可能とすることと、を備えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−509330(P2013−509330A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537081(P2012−537081)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/054580
【国際公開番号】WO2011/059778
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(312012564)アールジー3・インプロップ・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】