説明

対地静電容量測定装置および対地静電容量測定方法

【課題】ωCが小さく、対地間抵抗が小さい電力系統などでも使用することができるとともに使用者でも容易に対地静電容量を測定することができる対地静電容量測定装置および方法を提供する。
【解決手段】ωC測定部11は、残留電圧の電圧降下率と電力系統の零相等価回路の回路定数並びに零相等価回路に基づくωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解から算定したアドミッタンスの変化率から求まる残留電圧の電圧降下率とを比較し、ωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解のうち測定結果として採用すべき解を判別して対地静電容量Cを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地絡継電器の動作点決定用のデータである電力系統の対地静電容量を測定するのに好適な対地静電容量測定装置および対地静電容量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力系統に設置されている地絡継電器の整定は、整定すべき動作点を人工地絡試験によって確認することにより行っている。
しかしながら、人工地絡試験では、以下に示すような問題が生じていた。
(1)人工地絡試験は活線作業であるため、作業員の危険を伴う。
(2)人工地絡試験は大掛かりな作業であるため、費用が高い。
(3)人工地絡試験を行うと電力系統全体に地絡の影響が及ぶため、電力系統に接続された顧客に継電器のロックをしてもらう必要がある。
【0003】
そこで、人工地絡試験を行うことなく地絡継電器の動作点決定用のデータである対地静電容量を測定する手法として、下記の特許文献1には、非接地電力系統に接続された接地変圧器(本明細書でいう接地形計器用変圧器(GPT)であるため、以下では「接地形計器用変圧器」と称する。)の三次側に測定用アドミッタンス(本明細書でいう測定用抵抗R2であるため、以下では「測定用抵抗R2」と称する。)を接続して、測定用抵抗R2の接続前後の接地形計器用変圧器の三次電圧(残留零相電圧)から三相一括の対地静電容量C(以下、「対地静電容量C」と称する。)を求めるようにした、電力系統の対地静電容量の測定装置が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、検出すべき地絡抵抗値を整定しておくだけで、上述した電力系統の対地静電容量の測定装置における測定原理を用いた対地静電容量Cの測定から地絡継電器の動作電圧の最適化までを自動的に行えるようにした地絡保護装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平06−92997号公報
【特許文献2】特許第2904748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1,2に開示された電力系統の対地静電容量の測定手法では、電力系統に接続された接地形計器用変圧器の三次側に測定用抵抗R2を接続し、測定用抵抗R2の接続前後の接地形計器用変圧器の三次電圧の位相差θを計測し、アドミッタンスωCを変数として位相差θについて成立する(1)式に示すωC演算二次方程式の解を求めることにより、対地静電容量Cを算定しているため、以下に示すような問題がある。
ωC=[(R1−R2)±{(R1−R22−4×R1×R2×tan2θ}1/2]/(2×R1×R2×tanθ)
より、
1×R2×tanθ×(ωC)2−(R1−R2)×ωC+tanθ=0 (1)
ここで、R1:GPT三次制限抵抗(接地形計器用変圧器の3次巻線に接続された制限抵抗)
【0007】
上記のωC演算二次方程式からは、計測された位相差θに対して、重解となる場合を除いて、アドミッタンスωCの解として2つの解(すなわち、“±{(R1−R22−4×R1×R2×tan2θ}1/2”のうち“+{(R1−R22−4×R1×R2×tan2θ}1/2”の方で求めた解(以下、「+解」と称する。)および“−{(R1−R22−4×R1×R2×tan2θ}1/2”の方で求めた解(以下、「−解」と称する。))が求まるが、どちらの解を測定結果として採用すべきかの判定方法がない。
【0008】
このため、非接地電力系統では,測定するアドミッタンスωCは、一般的に、+解で与えられる範囲となる(概ね0.3mS〜20mSの範囲。これ以下では−解を採用しなければならない場合がある。)ため、対地静電容量測定装置(ωC測定装置)の適用を非接地電力系統に限定するとともに+解のみを採用していた。
【0009】
しかし、対地静電容量Cと並列な抵抗成分(以下,「対地間抵抗」と称する。)が小さい分散リアクトル接地系統、集中リアクトル接地系統および線路に中性点接地リアクトルのみを設置した電力系統などでは、
(1)一般的な非接地電力系統に比べてアドミッタンスωCが小さく、
(2)併設される接地用変圧器(GTR)の中性点接地抵抗(NGR)などにより対地間抵抗が小さい
ため、このような電力系統でのωC測定では、測定するωC値が−解で与えられる範囲となる場合があり(測定するアドミッタンスωCが小さいことに加え、−解のとるωC値の範囲が大きくなるため)、+解および−解のどちらの解を測定結果として採用するかを判定するとともに−解も使用する必要が生じるという問題があった。
なお、対地静電容量Cが極端に小さい小規模な非接地電力系統であれば、同様の問題が考えられる。
【0010】
また、+解および−解のとる範囲に入るそれぞれの電力系統で測定する場合には、予め電力系統を限定することができず、使用者が人手によってアドミッタンス値(ωC値)の予測および解の判別を行う必要があるが、使用者がこのような判別を行うことは非常に困難であるという問題があった。
【0011】
さらに、電力系統がどちらの解のとる範囲内に入るか予測するためには、測定原理について十分に理解するとともに電力系統に設置された線路延長などを把握する必要があるため、使用者では予測が困難であり、誰でもが容易に対地静電容量Cを測定することができないという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、ωCが小さく、対地間抵抗が小さい電力系統などでも使用することができるとともに使用者でも容易に対地静電容量を測定することができる対地静電容量測定装置および対地静電容量測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の対地静電容量測定装置は、電力系統の三相一括の対地静電容量(C)を測定する対地静電容量測定装置(10)であって、前記電力系統に接続された接地形計器用変圧器(3)のGPT三次制限抵抗(R1)と並列に接続された、かつ、直列接続された測定用抵抗(R2)および切替スイッチ(SW)と、該切替スイッチの切替前後の前記電力系統の残留電圧(V0,V0’)に基づいて前記対地静電容量を求めるためのωC測定部(11)とを具備し、前記ωC測定部が、前記残留電圧の電圧降下率と、前記電力系統の零相等価回路の回路定数並びに該零相等価回路に基づくωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解から算定したアドミッタンスの変化率から求まる残留電圧の電圧降下率とを比較し、該ωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解のうち測定結果として採用すべき解を判別して、前記対地静電容量を求めることを特徴とする。
ここで、前記電力系統が、非接地電力系統であり、前記ωC演算二次方程式が、前記接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗を“R1”、前記測定用抵抗を“R2”、前記切替スイッチの切替前後の前記零相電圧の位相差を“θ”とすると、
1×R2×tanθ×(ωC)2−(R1−R2)×ωC+tanθ=0
で表されてもよい。
前記電力系統が、対地間抵抗の小さい電力系統であり、前記ωC測定部が、前記電力系統に接続された接地用変圧器(1)の中性点接地抵抗の抵抗分(ngr)を前記GPT三次制限抵抗と前記零相等価回路上で別要素にするとともに、前記電力系統に接続された複数個の線路用リアクトル(21〜2n)の抵抗分の合成抵抗を前記GPT三次制限抵抗と該零相等価回路上で別要素にして、前記対地静電容量を求めてもよい。
前記接地形計器用変圧器以外の他の接地形計器用変圧器が前記電力系統に存在する場合には、前記ωC測定部が、該他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗も前記GPT三次制限抵抗と前記零相等価回路上で別要素にして、前記対地静電容量を求めてもよい。
前記ωC測定部が、前記零相等価回路の3線一括対地アドミッタンス(Y00)において前記複数個の線路用リアクトルの合成リアクトル分(L’)と該複数個の線路用リアクトルの合成抵抗分、前記中性点接地抵抗の抵抗分および前記他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗の合成抵抗(R3)とを前記対地静電容量と並列に接続して、前記対地静電容量を求めてもよい。
前記ωC測定部が、前記接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗を“R1”、前記測定用抵抗を“R2”、前記接地形計器用変圧器の零相内部インピーダンスを“R0+jωL”、前記複数個の線路用リアクトルの合成リアクトル分を“L’”、前記複数個の線路用リアクトルの合成抵抗分、前記中性点接地抵抗の抵抗分、前記他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗の合成抵抗を“R3”および前記切替スイッチの切替前後の前記零相電圧の位相差を“θ”とすると、以下のωC演算二次方程式を用いて、
tanθ・(ωC’)2+{A−B+(D+E)・tanθ}・ωC’+(A・B+D・E)・tanθ+A・E−B・D=0
ここで、ωC’=ωC−1/ωL’
A=(R01/α)+(1/R3
B=(R02/β)+(1/R3
D=−(ωL/α)
E=−(ωL/β)
α=R012+(ωL)2
β=R022+(ωL)2
01=R0+R1
02=R0+(R1・R2)/(R1+R2
前記対地静電容量を求めてもよい。
前記切替スイッチを切替制御するとともに、前記ωC測定部に前記対地静電容量を求めるように制御する制御部(13)をさらに具備してもよい。
前記対地静電容量測定装置をパーソナルコンピュータ(30)に接続して前記制御部の機能を該パーソナルコンピュータに行わせてもよい。
前記対地静電容量測定装置を持ち運び可能な対地静電容量測定装置(20)とし、該持ち運び可能な対地静電容量測定装置を変圧器盤に接続して前記対地静電容量を測定してもよい。
本発明の対地静電容量測定方法は、本発明の対地静電容量測定装置を用いて電力系統の対地静電容量を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の対地静電容量測定装置および対地静電容量測定方法は、以下に示す効果を奏する。
(1)残留電圧の電圧降下率と電力系統の零相等価回路の回路定数並びに零相等価回路に基づくωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解から算定したアドミッタンスの変化率から求まる残留電圧の電圧降下率とを比較し、ωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解のうち測定結果として採用すべき解を判別することにより、ωCが小さく、対地間抵抗が小さい電力系統などでも使用することができるとともに使用者でも容易に対地静電容量を測定することができる。
(2)対地静電容量を測定する電力系統を予め予測して限定する必要がなくなり、どこでも対地静電容量を測定することができる。
(3)非接地電力系統および対地間抵抗が小さい電力系統の両方で使用することができるため、対地静電容量の測定作業の効率化が図れる。
(4)対地静電容量を予測し、測定結果として採用する解を判別するための知識や設備を把握する手間を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例による対地静電容量測定装置10について説明するための図であり、(a)は対地静電容量測定装置10の構成を示すブロック図であり、(b)はωC測定部11の構成を示すブロック図である。
【図2】図1(b)に示した+解/−解判定部11cにおける対地静電容量測定原理について説明するための図であり、(a)は非接地高圧電力系統の零相等価回路を示す図であり、(b)は(a)の電圧源を電流源に置換した零相等価回路を示す図である。
【図3】電圧源を電流源に置き換えたかつ直列接続された測定用抵抗R2および切替スイッチSWをGPT三次制限抵抗R1と並列に接続した零相等価回路を示す図である。
【図4】+解アドミッタンス変化および−解アドミッタンス変化を示す図である。
【図5】分散リアクトル接地系統における測定回路を説明するための図である。
【図6】上記の特許文献1,2に示された零相等価回路を示す図である。
【図7】改良したωC演算二次方程式を導くために使用した零相等価回路を示す図である。
【図8】図1に示した対地静電容量測定装置10を持ち運び可能な対地静電容量測定装置20としたときの対地静電容量測定時の接続状態を示す図である。
【図9】図1に示した対地静電容量測定装置10を持ち運び可能な対地静電容量測定装置20としたときの外形図の一例を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は蓋の上面図であり、(c)は正面図であり、(d)は側面図であり、(e)はパネル面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記の目的を、ωC測定部が、残留電圧の電圧降下率と電力系統の零相等価回路の回路定数並びに零相等価回路に基づくωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解から算定したアドミッタンスの変化率から求まる残留電圧の電圧降下率とを比較し、ωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解のうち測定結果として採用すべき解を判別して対地静電容量を測定することにより実現した。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の対地静電容量測定装置および対地静電容量測定方法の実施例について図面を参照して説明する。
なお、電力系統に地絡故障が発生していない健全状態において、常時、電力系統に存在している零相電圧を「残留電圧」と定義する。同様に、常時、電力系統に存在している零相電流を「残留電流」と定義する。
本発明の対地静電容量測定装置は、上記(1)式で示したようなωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解のうちどちらの解を採用するかの判定を、測定用抵抗R2をGPT三次制限抵抗R1に並列接続したときに生じる零相等価回路のアドミッタンスの変化率が−解で与えられるωC値である場合の方が+解で与えられるωC値である場合に比べて必ず大きくなるとともにωC値が小さくなるに従って大きくなり、これによって生じる残留電圧(三次電圧)の電圧降下率もωC値が小さくなるに従って大きくなることを利用して行うことを特徴とする。
具体的には、実測した残留電圧の電圧降下率と、測定する電力系統の零相等価回路の回路定数並びに測定したωC値の+解および−解から算定したアドミッタンスの変化率から求まる電圧降下率とを比較して、ωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解のうち測定結果として採用すべき解を判別する。
【0018】
本発明の一実施例による対地静電容量測定装置10は、図1(a)に示すように、非接地電力系統に接続された接地形計器用変圧器(GPT)3のオープンデルタ接続された三次巻線出力である三次電圧V3(後述する接続前および接続後残留電圧V0,V0’)に基づいて対地静電容量Cを求めるためのωC測定部11と、ωC測定部11によって求められた対地静電容量Cなどを表示するための表示部12と、ωC測定部11および表示部12を制御する制御部13とを具備する。
また、地絡継電器試験装置10は、図1(b)に示すように、直列接続された測定用抵抗R2および切替スイッチSWを内蔵する。測定用抵抗R2および切替スイッチSWは、接地形計器用変圧器3のGPT三次制限抵抗R1と並列に接続されている。切替スイッチSWは、制御部13によって切替制御される。
【0019】
ここで、ωC測定部11は、図1(b)に示すように、二次電圧V2の位相を基準として切替スイッチSWの切替前後の三次電圧V3(接続前および接続後残留電圧V0,V0’)の位相(後述する接続前および接続後位相φ,φ’)を求めてその差(位相差θ=φ−φ’)を算出する位相差算出部11aと、位相差算出部11aで算出された位相差θに基づいて上記(1)式で示したωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解を求めるωC算出部11bと、ωC算出部11bで求められたωC値の+解および−解と回路定数(GPT三次制限抵抗R1および測定用抵抗R2。他の接地形計器用変圧器がある場合にはその三次制限抵抗を含む。)とに基づいて切替スイッチSWの切替前後の+解アドミッタンス(後述する接続前および接続後+解アドミッタンスYa,Ya’)の変化率である+解アドミッタンス変化率(=Ya’/Ya)および−解アドミッタンス(後述する接続前および接続後−解アドミッタンスYb,Yb’)の変化率である−解アドミッタンス変化率(=Yb’/Yb)を算出し、切替スイッチSWの切替前後の三次電圧V3(残留電圧V0,V0’)の電圧降下率と算出した+解アドミッタンス変化率および−解アドミッタンス変化率から求まる電圧降下率とに基づいてωC値の+解および−解のどちらを測定結果として採用するかを判定して、ωC値の+解および−解のうち測定結果として採用すると判定した方を用いて対地静電容量Cを求める+解/−解判定部11cとを備える。
【0020】
次に、+解/−解判定部11cにおける対地静電容量測定原理について、図2乃至図4を参照して詳しく説明する。
図2(a)に示す非接地高圧電力系統の零相等価回路(斜体はベクトルを表す。)において、不平衡分対地静電容量C00は一般的に対地静電容量Cに比べ十分に小さいため、零相等価回路全体の合成アドミッタンス≒ωC00と考えることができる。そのため、電流Iは(2−1)式で表されるように一定となるので、図2(a)に示す電圧源を同図(b)に示す電流源として扱うことができる。
I=E×ωC00 (2−1)
ここで、E:相電圧
【0021】
図3に示す電圧源を電流源に置き換えたかつ直列接続された測定用抵抗R2および切替スイッチSWをGPT三次制限抵抗R1と並列に接続した零相等価回路(斜体はベクトルを表す。)において、切替スイッチSWの接続前の合成アドミッタンス(以下、「接続前アドミッタンスY」と称する。)は(2−2)式で表される。
Y=jωC+1/R (2−2)
ここで、R(=R1):切替スイッチSWの接続前のGPT三次制限抵抗R1と測定用抵抗R2との並列抵抗(以下、「接続前並列抵抗R」と称する。)
また、切替スイッチSWの接続前のGPT三次制限抵抗R1の両端の残留電圧(以下、「接続前残留電圧V0」と称する。)は(2−3)式で表される。
0=I/Y (2−3)
(2−3)式は、電流Iが定電流であるならば、接続前アドミッタンスYが大きいほど接続前残留電圧V0は小さくなることを表している。
【0022】
切替スイッチSWを閉じると、接続前並列抵抗Rは接続後並列抵抗R’に変化し、接続前アドミッタンスYは接続後アドミッタンスY’に変化し、接続前残留電圧V0は接続後残留電圧V0’に変化する。
また、接続後アドミッタンスY’は(2−4)式で表され、接続後残留電圧V0’ は(2−5)式で表される。
Y’=jωC+1/R’ (2−4)
0’=I/Y’ (2−5)
【0023】
図4は、+解アドミッタンス変化(Ya→Ya’)と−解アドミッタンス変化(Yb→Yb’)を示す図であり、それぞれのアドミッタンスの位相変化量θは同じである。なお、このアドミッタンスの位相変化量θは、接続前および接続後残留電圧V0,V0’の位相差φ’−φ=θとして計測される。
また、図4より、接続前および接続後+解アドミッタンスYa,Ya’の変化率である+解アドミッタンス変化率(=Ya’/Ya)および接続前および接続後−解アドミッタンスYb,Yb’の変化率である−解アドミッタンス変化率(=Yb’/Yb)の大小関係は、“接続後アドミッタンスY’の抵抗分a’>接続前アドミッタンスYの抵抗分a>0”かつ“ωC演算二次方程式から求まるωC値の+解b’≧ωC演算二次方程式から求まるωC値の−解b>0”であるならば、(2−6)式で表される(詳しい導出方法は後述する。)。
(Yb’/Yb)≧(Ya’/Ya)>1 (2−6)
(2−6)式より、電流Iが一定であるならば、切替スイッチSWの接続前後の+解残留電圧(以下、「接続前および接続後+解残留電圧V0a,V0a’」と称する。)は接続前および接続後+解アドミッタンスYa,Ya’に反比例し、切替スイッチSWの接続前後の−解残留電圧(以下、「接続前および接続後−解残留電圧V0b,V0b’ 」と称する。)は接続前および接続後−解アドミッタンスYb,Yb’に反比例するため、接続前および接続後+解残留電圧V0a,V0a’の変化率である+解残留電圧変化率(=V0a’/V0a)および接続前および接続後−解残留電圧V0b,V0b’の変化率である−解残留電圧変化率(=V0b’/V0b)の大小関係は(2−7)式で表される。
(V0b’/V0b)≦(V0a’/V0a)<1 (2−7)
【0024】
したがって、接続前および接続後残留電圧V0,V0’(すなわち、残留電圧の電圧降下率=V0’/V0)は切替スイッチSWの接続前後の残留電圧を実測することにより算出することができ、また、+解アドミッタンス変化率および−解アドミッタンス変化率とは回路定数と算定したωC値の+解および−解とから算出することができるため、切替スイッチSWの接続前後の実測した残留電圧の電圧降下率と切替スイッチSWの接続前後のアドミッタンス変化率(+解アドミッタンス変化率および−解アドミッタンス変化率)から求めた電圧降下率とを比較することにより、解の判別を行うことができる。
【0025】
次に、上記(2−6)式の導出について詳しく説明する。
図4より、接続前および接続後+解アドミッタンスYa,Ya’と接続前および接続後−解アドミッタンスYb,Yb’とは(3−1)式から(3−4)式でそれぞれ表される。
Ya=(a2+b’21/2 (3−1)
Ya’=(a’2+b’21/2 (3−2)
Yb=(a2+b21/2 (3−3)
Yb’=(a’2+b21/2 (3−4)
したがって、+解アドミッタンス変化率および−解アドミッタンスの変化率は(3−5)式および(3−6)式でそれぞれ表される。
Ya’/Ya=(a’2+b’21/2/(a2+b’21/2 (3−5)
Yb’/Yb=(a’2+b21/2/(a2+b21/2 (3−6)
その結果、(3−7)式が成立する。
(Yb’/Yb)/(Ya’/Ya)={(a’2+b21/2/(a2+b21/2}/{(a’2+b’21/2/(a2+b’21/2
=[{(a2+b’2)×(a’2+b2)}/{(a’2+b’2)×(a2+b2)}]1/2
={(a2×a’2+a2×b2+a’2×b’2+b2×b’2)/(a2×a’2+a2×b’2+a’2×b2+b2×b’2)}1/2 (3−7)
よって、(3−7)式の平方根内の分子を“P”(=a2×a’2+a2×b2+a’2×b’2+b2×b’2)および平方根内の分母を“Q”(=a2×a’2+a2×b’2+a’2×b2+b2×b’2)とすると、(3−8)式が成立する。
P−Q=(a2×a’2+a2×b2+a’2×b’2+b2×b’2)−(a2×a’2+a2×b’2+a’2×b2+b2×b’2
=a2×b2+a’2×b’2−a2×b’2−a’2×b2
=−b2×(a’2−a2)+b’2(a’2−a2
=(a’2−a2)×(b’2−b2) (3−8)
(3−8)式より、“接続後アドミッタンスの抵抗分a’>接続前アドミッタンスの抵抗分a”かつ“ωC演算二次方程式から求まるωC値の+解b’≧ωC演算二次方程式から求まるωC値の−解b”とすると、P−Q≧0となるため、
(Yb’/Yb)≧(Ya’/Ya)>1
となり、上記(2−6)式が成立する。
【0026】
以上の説明では、非接地高圧電力系統に対して対地静電容量測定器10を使用する場合について説明したが、たとえば図5に示すような分散リアクトル接地系統に対して対地静電容量測定器10を使用する場合には、ωC測定部11bおよび+解/−解判定部11cは以下のように動作する。
【0027】
分散リアクトル接地系統における測定回路は、図5に示すように、非接地高圧電力系統における測定回路に、分散リアクトル接地系統特有の設備である接地用変圧器(GTR)1(発変電所などに設置され、中性点接地抵抗を備える。)および第1乃至第nの線路用リアクトル21〜2nを加えたものとなる。
したがって、上記の特許文献1に開示された測定原理を応用して分散リアクトル接地系統での対地静電容量Cの測定を行う場合には、測定原理上影響する諸元として、接地用変圧器1の中性点接地抵抗の抵抗分ngrと第1乃至第nの線路用リアクトル21〜2nの抵抗分rとがある。
【0028】
そこで、中性点接地抵抗の抵抗分ngrは零相回路の抵抗分であるため、接地形計器用変圧器3のGPT三次制限抵抗R1に並列に接続されるものとして、従来のωC演算二次方程式にGPT三次制限抵抗R1と中性点接地抵抗の抵抗分ngrとの合成抵抗を求めて代入して計算してみた。具体的には、上記の特許文献1,2に示された図6に示す零相等価回路においてGPT三次制限抵抗R1に中性点接地抵抗の抵抗分ngrが並列に接続されるものとして、対地静電容量CのアドミッタンスωCを計算してみた。
また、第1乃至第nの線路用リアクトル21〜2nの抵抗分rについては、ωC測定を行う場合以外には通常取り扱う必要がないため、認識がなく単にリアクタンス分のみ(リアクタンス分については、静電容量分と相殺されて電力系統の対地静電容量となるため、計算上特に取り扱う必要はない)として考えて、アドミッタンスωCを計算してみた。
しかし、この計算方法では、アドミッタンスωCの誤差が大きくなり、ωC測定できなかった。
【0029】
そのため、この計算方法ではωC測定できなかった原因を計算結果に基づいて検討したところ、中性点接地抵抗の抵抗分ngrの抵抗値が小さく、また、ωC測定中の接地形計器用変圧器3の内部インピーダンス(抵抗分およびリアクタンス分)の影響から、単にGPT三次制限抵抗R1と中性点接地抵抗の抵抗分ngrとを並列として合成して取り扱うことができなくなっていることが原因であると判明した。
この解決策として、接地形計器用変圧器3を介して電力系統に存在する零相回路の抵抗分(すなわち、中性点接地抵抗の抵抗分ngr)をGPT三次制限抵抗R1とアドミッタンスωCを計算する零相等価回路上で別の要素にして計算する方法を開発した。
【0030】
また、第1乃至第nの線路用リアクトル21〜2nの抵抗分rについては、当初計算上取り扱っていなかったが、実電力系統で測定した結果、ωC測定値に実用上無視できない程度大きな誤差を生じた。そこで、測定した電力系統の電気回路の構成機器と計算条件の整合を再確認・照合して、ωC測定結果に影響を与えるものを検証した結果、第1乃至第nの線路用リアクトル21〜2nの抵抗分rが影響していることが判明した。
これは、第1乃至第nの線路用リアクトル21〜2nの抵抗分rの影響は1台当たりではωC測定における計算に影響を与えない程度に十分小さいが、実電力系統では多数の線路用リアクトルが分散して並列接地されているため、これが合成されると想定以上に影響が大きくなり計算に影響を与えていることが原因であった。
このため、使用されている線路用リアクトルの1台当りの抵抗分の値を調査し、これを並列接地された台数分だけ合成し、上述した中性点接地抵抗の抵抗分ngrの場合と同様にGPT三次制限抵抗R1とアドミッタンスωCを計算する零相等価回路上で別の要素にして計算するように改良した。
【0031】
さらに、たとえば変電所構内の測定する電力系統に接地形計器用変圧器が複数台存在する場合は、ωC測定時に零相電圧を計測する接地形計器用変圧器3以外の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗も上述した中性点接地抵抗の抵抗分ngrおよび第1乃至第nの線路用リアクトル21〜2nの合成抵抗分と同様に計算するように改良した。
【0032】
図7に、改良したωC演算二次方程式を導くために使用した零相等価回路を示す。
この零相等価回路は、図6に示した零相等価回路の3線一括対地アドミッタンスY00において、第1乃至第nの線路用リアクトル21〜2nの合成リアクトル分L’と、第1乃至第nの線路用リアクトル21〜2nの合成抵抗分、中性点接地抵抗の抵抗分ngrおよび他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗の合成抵抗R3とを追加(対地静電容量Cと並列に接続)したものである。
この零相等価回路を用いて導出した3線一括対地アドミッタンスY00(接続前アドミッタンス)と切替スイッチSWをオンすることにより並列接続される既知のアドミッタンスY01(測定用抵抗R2)を3線一括対地アドミッタンスY00に加えたときの合成アドミッタンスY02(接続後アドミッタンス)とは、(4−1)式および(4−2)式でそれぞれ表される。
00=j(ωC−1/ωL’)+1/R3+1/(jωL+R0+R1) (4−1)
02=j(ωC−1/ωL’)+1/R3+1/{jωL+R0+(R1・R2)/(R1+R2)} (4−2)
したがって、相電圧を“E”とし、Y00’を3線一括対地アドミッタンスの不平衡分とすると、切替スイッチSWをオフしているときの接続前残留電圧V0と切替スイッチSWをオンしたときの接続後残留電圧V0’とは(4−3)式および(4−4)式でそれぞれ表される。
0=−E・Y00’/Y00 (4−3)
0’=−E・Y00’/Y02 (4−4)
(4−3)式および(4−4)式より、3線一括対地アドミッタンスY00は、合成アドミッタンスY02、接続前残留電圧V0および接続後残留電圧V0’を用いて(4−5)式で表される。
00=(V0’/V0)Y02 (4−5)
その結果、切替スイッチSWをオンすることによって接地形計器用変圧器3に接続されるアドミッタンスを3線一括対地アドミッタンスY00から合成アドミッタンスY02に切り換えたときに接地形計器用変圧器3の三次側に生じる残留電圧の位相差θはこのアドミッタンスの切換前後のアドミッタンスの位相角の差と一致する(すなわち、θ=φ’−φ)ため、ωC測定部11のωC算出部11bは(4−6)式に示す方程式を用いてアドミッタンスωCの解(ωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解)を求める。
tanθ・(ωC’)2+{A−B+(D+E)・tanθ}・ωC’+(A・B+D・E)・tanθ+A・E−B・D=0 (4−6)
ここで、ωC’=ωC−1/ωL’
A=(R01/α)+(1/R3
B=(R02/β)+(1/R3
D=−(ωL/α)
E=−(ωL/β)
α=R012+(ωL)2
β=R022+(ωL)2
01=R0+R1
02=R0+(R1・R2)/(R1+R2
【0033】
なお、この場合の零相等価回路の回路定数は、接地形計器用変圧器3の零相内部インピーダンスの抵抗分R0およびリアクトル分Lと、GPT三次制限抵抗R1と、測定用抵抗R2と、第1乃至第nの線路用リアクトル21〜2nの合成抵抗分、中性点接地抵抗の抵抗分ngrおよび他のGPT三次制限抵抗の合成抵抗R3となる。
【0034】
線路用リアクトル抵抗分の補正による効果の一例を以下に示す。
線路用リアクトルによる補償電流の合計が2.5Aタップ×1箇所および2.0Aタップ×2箇所の計6.5Aで、2.0Aタップの一次抵抗および一次リアクタンスが156Ωおよび1899Ωであり、2.5Aタップの一次抵抗および一次リアクタンスが142Ωおよび1470Ωであるとする。
2.0Aタップの一次抵抗=156Ωを直並列変換(RL直列回路をRL並列回路に変換)すると、約23.3kΩ(=18992/156+156=23273Ω)となり、2.5Aタップの一次抵抗=142Ωを直並列変換すると、約15.4kΩ(=14702/142+142=15360Ω)となる。
したがって、線路用リアクトルの抵抗分の合成抵抗は、約23.3kΩと約23.3kΩと約15.4kΩとの並列抵抗となるため、約6.63kΩとなる。
接地用変圧器3の一次−三次変圧比をnとし、n2=109.3{=(6900/31/2/381)2}とすると、線路用リアクトルの抵抗分の合成抵抗の三次換算値は60.66Ω(=6630/109.3(Ω))となる。
線路用リアクトルの抵抗分の合成抵抗は、中性点接地抵抗の抵抗分ngrと並列になるので、中性点接地抵抗の抵抗分ngr=5.53Ωとすると、その合成抵抗値は5.07Ωとなる。
この合成抵抗値(=5.07Ω)をR3に代入してアドミッタンスωCを計算すると、2.578mSとなり、人工地絡試験の算定値=2.523mSに対する誤差が0.055mS(誤差率=2.2%)となった。一方、線路用リアクトル抵抗分の補正をしない場合のωCの計算値は2.761mSとなり、人工地絡試験の算定値=2.523mSに対する誤差が0.238mS(誤差率=9.4%)となった。
このように、線路用リアクトル抵抗分の補正を行うことにより誤差が大幅に改善した。
【0035】
なお、対地静電容量測定装置10をパーソナルコンピュータ(パソコン)に接続して制御部13の機能をパーソナルコンピュータに行わせるようにしてもよい。
【0036】
また、対地静電容量測定装置10を持ち運び可能な対地静電容量測定装置20とすることにより、図8に示すように、持ち運び可能な対地静電容量測定装置20を変圧器盤に接続するとともに、持ち運び可能な対地静電容量測定装置20をパーソナルコンピュータ30に接続して制御部13の機能をパーソナルコンピュータ30に行わせるようにすれば、操作性の向上を図ることができるとともに、多量の測定条件などのデータの保存・管理を可能とすることができる。
【0037】
図9(a)〜(e)に、対地静電容量測定装置10を持ち運び可能な対地静電容量測定装置20としたときの外形図の一例を示す。
この例に示すように、持ち運び可能な対地静電容量測定装置20の外形の寸法は横422.5mm、縦370.5mmおよび高さ216.5mm(蓋の高さが45mm)であり、小型にすることができる。
【0038】
以上に非接地高圧電力系統および分散リアクトル接地系統において本発明を実施するための形態について説明したが、前述の集中リアクトル接地系統の場合には、分散リアクトルの抵抗分rが1台のみであるとして取り扱うことで、分散リアクトル接地系統の場合と同様に実施することができる。
また、線路に中性点接地リアクトルのみを複数台設置した電力系統の場合には、接地用変圧器の中性点接地抵抗nrgがないため、中性点接地抵抗ngrが無限大であるとして取り扱うことで、分散リアクトル接地系統の場合と同様に実施することができる。
【0039】
また、接続前および接続後残留電圧V0,V0’の測定は、図1(b)に示したように測定用抵抗R2を接続する接地形計器用変圧器3の三次電圧V3を測定することにより行ったが、同じ測定回路の他の接地形計器用変圧器の三次電圧を測定することにより行ってもよいし、測定用抵抗R2を接続する接地形計器用変圧器3の二次電圧V2を合成することにより行ってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 接地用変圧器(GTR)
1〜2n 第1乃至第nの線路用リアクトル
3 接地形計器用変圧器
10 対地静電容量測定装置
11 ωC測定部
11a 位相差算出部
11b ωC算出部
11c +解/−解判定部
12 表示部
13 制御部
20 持ち運び可能な対地静電容量測定装置
30 パーソナルコンピュータ
SW 切替スイッチ
C 対地静電容量
00 不平衡分対地静電容量
R,R’ 接続前および接続後並列抵抗
1 GPT三次制限抵抗
2 測定用抵抗
3 合成抵抗
Y,Y’ 接続前および接続後アドミッタンス
Ya,Ya’ 接続前および接続後+解アドミッタンス
Yb,Yb’ 接続前および接続後−解アドミッタンス
00 3線一括対地アドミッタンス
00’ 3線一括対地アドミッタンスの不平衡分
01 既知のアドミッタンス
02 合成アドミッタンス
L’ 合成リアクトル分
E 相電圧
n 残留電圧
I 電流
0,V0’ 接続前および接続後残留電圧
0a,V0a’ 接続前および接続後+解残留電圧
0b,V0b’ 接続前および接続後−解残留電圧
2 二次電圧
3 三次電圧
φ,φ’ 接続前および接続後位相
θ 位相差
a,a’ 接続前および接続後アドミッタンスY,Y’の抵抗分
b,b’ ωC演算二次方程式から求まるωC値の−解および+解
ngr,r 抵抗分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の三相一括の対地静電容量(C)を測定する対地静電容量測定装置(10)であって、
前記電力系統に接続された接地形計器用変圧器(3)のGPT三次制限抵抗(R1)と並列に接続された、かつ、直列接続された測定用抵抗(R2)および切替スイッチ(SW)と、
該切替スイッチの切替前後の前記電力系統の残留電圧(V0,V0’)に基づいて前記対地静電容量を求めるためのωC測定部(11)とを具備し、
前記ωC測定部が、前記残留電圧の電圧降下率と、前記電力系統の零相等価回路の回路定数並びに該零相等価回路に基づくωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解から算定したアドミッタンスの変化率から求まる残留電圧の電圧降下率とを比較し、該ωC演算二次方程式から求まるωC値の+解および−解のうち測定結果として採用すべき解を判別して、前記対地静電容量を求める、
ことを特徴とする、対地静電容量測定装置。
【請求項2】
前記電力系統が、非接地電力系統であり、
前記ωC演算二次方程式が、前記接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗を“R1”、前記測定用抵抗を“R2”、前記切替スイッチの切替前後の前記零相電圧の位相差を“θ”とすると、
1×R2×tanθ×(ωC)2−(R1−R2)×ωC+tanθ=0
で表される、
ことを特徴とする、請求項1記載の対地静電容量測定装置。
【請求項3】
前記電力系統が、対地間抵抗の小さい電力系統であり、
前記ωC測定部が、前記電力系統に接続された接地用変圧器(1)の中性点接地抵抗の抵抗分(ngr)を前記GPT三次制限抵抗と前記零相等価回路上で別要素にするとともに、前記電力系統に接続された複数個の線路用リアクトル(21〜2n)の抵抗分の合成抵抗を前記GPT三次制限抵抗と該零相等価回路上で別要素にして、前記対地静電容量を求める、
ことを特徴とする、請求項1記載の対地静電容量測定装置。
【請求項4】
前記接地形計器用変圧器以外の他の接地形計器用変圧器が前記電力系統に存在する場合には、前記ωC測定部が、該他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗も前記GPT三次制限抵抗と前記零相等価回路上で別要素にして、前記対地静電容量を求めることを特徴とする、請求項3記載の対地静電容量測定装置。
【請求項5】
前記ωC測定部が、前記零相等価回路の3線一括対地アドミッタンス(Y00)において前記複数個の線路用リアクトルの合成リアクトル分(L’)と該複数個の線路用リアクトルの合成抵抗分、前記中性点接地抵抗の抵抗分および前記他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗の合成抵抗(R3)とを前記対地静電容量と並列に接続して、前記対地静電容量を求めることを特徴とする、請求項3または4記載の対地静電容量測定装置。
【請求項6】
前記ωC測定部が、前記接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗を“R1”、前記測定用抵抗を“R2”、前記接地形計器用変圧器の零相内部インピーダンスを“R0+jωL”、前記複数個の線路用リアクトルの合成リアクトル分を“L’”、前記複数個の線路用リアクトルの合成抵抗分、前記中性点接地抵抗の抵抗分、前記他の接地形計器用変圧器のGPT三次制限抵抗の合成抵抗を“R3”および前記切替スイッチの切替前後の前記零相電圧の位相差を“θ”とすると、以下のωC演算二次方程式を用いて、
tanθ・(ωC’)2+{A−B+(D+E)・tanθ}・ωC’+(A・B+D・E)・tanθ+A・E−B・D=0
ここで、ωC’=ωC−1/ωL’
A=(R01/α)+(1/R3
B=(R02/β)+(1/R3
D=−(ωL/α)
E=−(ωL/β)
α=R012+(ωL)2
β=R022+(ωL)2
01=R0+R1
02=R0+(R1・R2)/(R1+R2
前記対地静電容量を求めることを特徴とする、請求項5記載の対地静電容量測定装置。
【請求項7】
前記切替スイッチを切替制御するとともに、前記ωC測定部に前記対地静電容量を求めるように制御する制御部(13)をさらに具備することを特徴とする、請求項1乃至6いずれかに記載の対地静電容量測定装置。
【請求項8】
前記対地静電容量測定装置をパーソナルコンピュータ(30)に接続して前記制御部の機能を該パーソナルコンピュータに行わせることを特徴とする、請求項7記載の対地静電容量測定装置。
【請求項9】
前記対地静電容量測定装置を持ち運び可能な対地静電容量測定装置(20)とし、該持ち運び可能な対地静電容量測定装置を変圧器盤に接続して前記対地静電容量を測定することを特徴とする、請求項8記載の対地静電容量測定装置。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれかに記載の対地静電容量測定装置を用いてを用いて電力系統の対地静電容量を求めることを特徴とする、対地静電容量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−209029(P2011−209029A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75539(P2010−75539)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000214560)長谷川電機工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】