説明

対象物を照らす照明装置

本発明は、対象物2を照明パターンと共に照明するための、特に装飾照明用の照明装置1に関する。当該装置は、第1の光線4を生成するための第1の照明デバイス3と、回折光学エレメント6を有する光媒体5と、を有し、回折光学エレメント6が第1の照明パターン11を生成するよう適応され、第1の照明パターン11を対象物2上に生成するための回折光学エレメント6へと第1の光線4が導かれるよう、第1の照明デバイス3及び光媒体5が配置されている。回折光学エレメントがサブミクロンの造作をもつよう同エレメントが光媒体上に書き込まれることができ、これによって、対象物を照明するためにLC-SLM又はLCoSを使用するのと比較して、対象物上の照明の空間分解能を増すことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を照明するための照明装置、照明方法、及び照明用コンピュータプログラムに関する。本発明は更に、光媒体に書き込む装置、光媒体に書き込む方法、及び光媒体書込み用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな照明効果を作り出す照明装置がホテル及びレストランのようなサービスアプリケーション用に、家、病院、博物館での雰囲気生成用に、また小売店の照明用に使われている。レーザによって作り出された光が、対象物を照明するための照明パターンを作り出すための回折光学エレメント(DOE)へと導かれる。液晶空間光変調器(LC-SLM)などのピクセル化されたマイクロ・ディスプレイ或いはシリコン上の液晶(LCoS)を用いてコンピュータ・データをリアルタイムでディスプレイに供給することによって、複数のDOEの実装が可能である。これは、コンピュータ生成ホログラフィと呼ばれている技術である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
LC-SLMは通常約20μm乃至40μmの画素サイズを有し、LCoSは通常約4μm乃至10μmの画素サイズを有する。これらの画素サイズでは、照明パターンの空間分解能は比較的低い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、対象物を照明パターンと共に照明するための照明装置、照明方法、及び照明用コンピュータプログラムを提供することであり、これらによって高い空間分解能をもつ照明パターンを生成することが可能になる。本発明の更なる目的は、光媒体書込み装置、光媒体書込み方法、及び光媒体書込み用コンピュータプログラムを提供することであり、これらが光媒体を作り出し、同媒体が高い空間分解能を有する照明パターンを生成するために使われることができる。
【0005】
本発明の第1の態様において、対象物を照明パターンで照らす照明装置が提示され、当該照明装置は、
第1の光線を生成するための第1の照明デバイスと、
回折光学エレメントを有する光媒体と、を有し、
回折光学エレメントは第1の照明パターンを生成するよう適応され、対象物に第1の照明パターンを生成するために、第1の照明デバイス及び光媒体は、第1の光線が前記回折光学エレメントへと向かわされるよう配置される。
【0006】
回折光学エレメントがサブミクロンの造作を有するよう、同エレメントが光媒体上に書き込まれることができる。この結果、LC-SLM又はLCoSを使用する代わりに回折光学エレメントを有する光媒体を使用することによって、回折光学エレメントの造作のサイズが減じられることが可能である。これは高い空間分解能をもつ照明パターンに至る。これゆえ本照明装置によって、対象物を高い空間分解能をもつ照明パターンと共に照明することが可能になる。
【0007】
照明装置は、特に家庭での装飾照明のために使用されるよう、好ましくは適応される。
【0008】
対象物とは、例えば建物の内壁又は外壁、スクリーン、広告目的で照明されねばならない商品、等々である。特に、対象物は例えば店のディスプレイであり、顧客を引きつけるために、及び販売用の商品を強調するために照明されることがある。対象物は、所望する雰囲気を作るためのホテル又はレストランの壁のこともある。対象物は、病院の待合室、診察室、又は手術室の天井若しくは壁のこともある。
【0009】
第1の照明デバイスは、好ましくはレーザ光線を生成するためのレーザを有する。
【0010】
好ましくは照明装置は、回折光学エレメントに入射する前に第1の光線を拡大するための拡大ユニットを有する。第1の光線が回折光学エレメントを有する光媒体の一部のみに入射するよう、第1の照明デバイス及び光媒体が好ましくは適応される。
【0011】
光媒体とは、好ましくは光ディスクである。当該光ディスクは、特に書込み目的のために回転軸の周りに回転可能であるよう適応される。光ディスクは、CD、DVD、又は、HD DVD、ブルーレイ・ディスク、等々のようなCD状の別の記憶媒体である。
【0012】
回折光学エレメントはミクロン以下のパターンを有することが好ましく、赤色光に対する最大回折角が10度よりも大きいよう、更には20度よりも大きいよう、第1の照明デバイス及び光媒体が適応される。斯様な回折光学エレメントは、小さくコンパクトな照明装置を得ることを可能にする。
【0013】
第1の照明パターンを対象物上に生成するために第1の光線が回折光学エレメントにより反射され、反射された第1の光線が対象物へと導かれることができるよう、第1の照明デバイス及び光媒体が構成されることができる。したがって、照明装置が反射モードで動作するよう適応されることができる。
【0014】
第1の照明パターンを対象物上に生成するために第1の光線が回折光学エレメントを横断し、回折光学エレメントを横断した後の光が当該対象物へと導かれることができるよう、第1の照明デバイス及び光媒体が適応されることもできる。このように、照明装置が透過モードで動作するよう適応されることができる。
【0015】
照明装置が、予め規定された第1の照明パターンに応じた回折光学エレメントを作るするための回折光学エレメント演算機を有することが更に好ましく、第1の照明デバイスが、回折光学エレメントを光媒体に書くよう適応される。特にこの場合、回折光学エレメントが実際に予め規定された、即ち実際に所望される第1の照明パターンへと調節されることができるよう、光媒体は再書込みが可能である。
【0016】
回折光学エレメント演算機は例えばパーソナル・コンピュータであり、回折光学エレメントとしてコンピュータ生成ホログラム(CGH)を生成するよう適応されることができる。回折光学エレメントを算出するための回折光学エレメント演算機は、予め規定された第1の照明パターンをフーリエ変換するよう適応されることができる。
【0017】
第1の照明デバイスは二つの光源、特に二つのレーザを有することができ、第1の照明パターンを生成するために、レーザの一つは回折光学エレメントを光媒体上に書き込むためであり、別の一つは光媒体を照らすためである。しかしながら、回折光学エレメントを書き込み、第1の照明パターンを生成するために、第1の照明デバイスは同じ光源、特に同じレーザを使用するよう適応されることもできる。
【0018】
既に上で記載したように光媒体は好ましくはCD又はDVDであり、回折光学エレメントを備えた光媒体を作り出すために既存のCD/DVDの書込み技術が好ましくは用いられる。光媒体は好ましくは相変化材料の層を有し、回折光学エレメントを書き込むために、書き込みの間、集束された書込み用のレーザ光線が相変化材料の相を変化させる。
【0019】
回折光学エレメント演算機は、算出された回折光学エレメントを光の強度の螺旋状のシーケンスへと変換するよう適応されており、第1の照明デバイスがこの螺旋シーケンスに従って光媒体に書き込んだ場合、結果として算出した回折光学エレメントを生じる。ここで回折光学エレメントを光媒体上へ書き込むために、螺旋シーケンスに従って螺旋トラックに沿って光媒体を照らすよう第1の照明デバイスが適応される。これは、回折光学エレメントを有する光媒体を作り出すために、既存のCD/DVDの書込み技術を単純な態様にて用いることを可能にする。
【0020】
照明装置が更に、対象物を第2の照明パターンで照らすための第2の光線を生成する第2の照明デバイスを有することが好ましい。第2の照明デバイスは、好ましくは発光ダイオード(LED)を有する。第1の照明パターン及び第2の照明パターンが、完結した照明パターンを対象物上に生成するために、お互いを補足するよう適応されることができる。例えば第1の照明パターンが、例えば鮮明な線及び/又は鮮明な点を有する輪郭を生成するために、レーザを用いて生成されることができ、一方、第2の照明パターンが、上記の輪郭を埋める色を提供するために、LEDのような他の光源によって生成されることができる。
【0021】
第1の照明パターン、第2の照明パターン、及び/又は補足された照明パターンは、「花」等のような対象物の画像を生成できる。
【0022】
第2の照明デバイス及び光媒体は、第2の光線が回折光学エレメントに当たることなく対象物を照らすよう配置されるのが更に好ましい。これによって第2の光線の、回折光学エレメントにより誘起された不必要な回折効果を回避できる。
【0023】
光媒体が、第1の光線に照らされるための回折光学エレメントを有する第1の部分と、第2の光線に照らされるための第2の部分とを有することが更に好ましい。第2の部分は、第2の光線が第2の部分のみを透過できるよう適応される。これによって、第2の光線が回折光学エレメントにより影響されることなく、対象物を照明する前に光媒体を透過するような光媒体及び第2の照明デバイスの配置が可能になる。特に、回折光学エレメントによる第2の光線の不必要な回折が回避されることができる。
【0024】
第2の部分が第2の光線に照らされる場合、第2の照明パターンとして画像を対象物上に生成するための画像パターンを第2の部分が有することが更に好ましい。特に、第2の光線を用いて光媒体の第2の部分を照らすことによって、投影像が対象物に生成されることができる。画像パターンは好ましくは透明エリア、散乱エリア、及び/又は回析エリアを有する。
【0025】
第2の光線が光媒体を横断した後に対象物上へ投影レンズによって結像され、投影レンズの受光角の外にある第2の光線の一部は対象物上に投影されることはないだろうが、しかし対象物の寸法によっては依然として対象物に到達することができ、これによって光の損失を回避する。この態様で、第2の光線の投影された部分と第2の光線の投影されなかった部分との間のコントラストが対象物上に生成されることができる。このコントラストは、光媒体を横断した後の第2の光線の発散の程度により決定されることができ、特に、光媒体中における第2の光線の散乱の程度により決定されることができ、また、映写レンズの受光角により決定されることができる。これは、所望する発散度及び所望する受光角を選択することによって、このコントラストが設定され得ることを意味する。
【0026】
照明装置が、予め規定された第2の照明パターンに応じた画像パターンを作るための画像パターン演算機を有することが更に好ましく、第1の照明デバイスが画像パターンを光媒体に書くよう適応される。また、この場合、画像パターンが実際に所望する第2の照明パターンへと調節されることができるよう、光媒体は好ましくは再書込みが可能である。更に既存のCD/DVD書込み技術も、画像パターンを光媒体上に書き込むために用いられる。
【0027】
第2の照明デバイスが種々異なる色をもつ複数の第2の光線を生成するよう適応されるのが更に好ましく、第2の照明パターンとして対象物の着色照明を生成するために、第2の光線が光媒体の第2の部分へと導かれる。一実施例において、第2の照明デバイスは赤色の第2の光線を発する赤色光源と、緑色の第2の光線を発する緑色光源と、青色の第2の光線を発する青色光源とを有し、対象物の着色照明を生成するために、赤色の第2の光線、緑色の第2の光線、及び青色の第2の光線が光媒体の第2の部分へと導かれる。
【0028】
光媒体の第2の部分が種々異なる色をもつ複数の第2の光線に対応する複数の散乱パターンを有することが更に好まれ、照明装置は複数の第2の光線に対応する複数の投影レンズを更に有し、各々の投影レンズが、対応する第2の光線を、対応する散乱パターンを越えた後に、対象物に投影するよう適応される。第1の照明デバイスがレーザデバイスであり、第2の照明デバイスがLEDデバイスである場合、レーザ光により生成された第1の照明パターンは好ましくは鮮明な線及び/又は鮮明な点を有し、LED光により生成された第2の照明パターンは、対象物の表面に投影される低解像度のコントラストをもつ画像を提供できる。
【0029】
所望する照明効果を対象物上に作り出すために、照明装置は照明パターンに影響を及ぼすための更なる光学素子、例えばレンズ及び反射器を有することができる。例えば、より大きな回折角が例えばレンズを用いて得られることが可能であるよう照明パターンが修正されることができる。さらに、鏡が、特に加工された鏡が、少なくとも照明パターンの一部を特定の方向へとリダイレクトするために用いられることができ、及び/又はパターン化された光学エレメントが、照明パターンを生成している特定の光線のみをリダイレクトするために用いられることができる。
【0030】
本発明の更なる態様において、光媒体に書く装置が提示され、当該装置は、
予め規定された第1の照明パターンに応じた回折光学エレメントを作るための回折光学エレメント演算機と、回折光学エレメントを光媒体に書くための照明デバイスと、を有し、回折光学エレメントは、回折光学エレメントが光線で照らされた場合、対象物を照らすための予め規定された第1の照明パターンを生成するよう適応されている

【0031】
本発明の更なる態様において、対象物を照明パターンで照らす照明方法が提示され、当該方法は、
第1の照明デバイスによって第1の光線を生成するステップと、
第1の照明パターンを生成するよう適応された回折光学エレメントを有する光媒体を提供するステップと、
第1の照明パターンを対象物に生成するための回折光学エレメントへと第1の光線を向かわせるステップと、を含む。
【0032】
本発明の更なる態様において、光媒体に書き込む方法が提示され、当該方法は、
予め規定された第1の照明パターンに応じた回折光学エレメントを作るステップと、照明デバイスによって回折光学エレメントを光媒体に書くステップと、を含み、回折光学エレメントが光線で照らされた場合、回折光学エレメント演算機によって、対象物を照らすための予め規定された第1の照明パターンを生成するよう、回折光学エレメントが適応されている

【0033】
本発明の更なる態様において、照明装置を制御するコンピュータ上で実行されたとき、請求項1に記載の照明装置に請求項11に記載の照明方法の複数のステップを実行させるためのプログラムコードを有する、対象物を照明パターンで照らすための照明用コンピュータプログラムが提示される。
【0034】
本発明の更なる態様において、光媒体に書く装置を制御するコンピュータ上で実行されたとき、請求項10に記載の光媒体書込み装置に請求項12に記載の光媒体書込み方法の複数のステップを実行させるためのプログラムコードを有する、コンピュータプログラムが提示される。
【0035】
請求項1に記載の照明装置、請求項10に記載の光媒体書込み装置、請求項11に記載の照明方法、請求項12に記載の光媒体に書き込む方法、請求項13に記載の照明用コンピュータプログラム、及び請求項14に記載の光媒体書込み用コンピュータプログラムは、特に従属請求項において規定されているような、類似の実施例及び/又は同一の実施例を好ましくは有することを理解されたい。
【0036】
本発明の好ましい実施例が、それぞれの独立請求項及び従属請求項の何らかの組合せの可能性もある点を理解されたい。
【0037】
本発明のこれらの態様及び他の態様が、これ以降説明されている実施例から明らかになり、当該実施例を引用して解明されることであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】対象物を照明する照明装置の実施例を典型例として概観的に示す。
【図2】透過モードである第1の照明パターンにて対象物を照明するための構成を、典型例として概観的に示す。
【図3】書込み手順を例示している構成を典型例として概観的に示す。
【図4】扇状の回折光学エレメントを有する光媒体の実施例を概観的に示す。
【図5】四角形の回折光学エレメントを有する光媒体の実施例を概観的に示す。
【図6】光媒体への書き込み及び第1の照明パターンの生成を一つの可動ユニットにて行う典型例を概観的に例示する。
【図7】光媒体への書き込み及び第1の照明パターンの生成を二つの可動ユニットにて行う典型例を概観的に例示する。
【図8】第2の照明のパターンとしての投影像の生成を、典型例として概観的に例示する。
【図9】有色の照明パターンを生成するための構成を、典型例として概観的に示す。
【図10】有色の照明パターンを生成するための別の構成を、典型例として概観的に示す。
【図11】反射モードにて対象物を照明する照明装置の更なる実施例を、典型例として概観的に示す。
【図12】反射モードにて対象物を第1の照明パターンと共に照明するための装置を、典型例として概観的に示す。
【図13】光媒体の層構造を典型例として概観的に示す。
【図14】商品ディスプレイにおける、ある照明パターンでの照明装置の使用例を示す。
【図15】商品ディスプレイにおける、別の照明パターンでの照明装置の使用例を示す。
【図16】生成された照明パターンのために透明な上面を有する製品展示台を典型例として概観的に示す。
【図17】商品を載置できる棚板を典型例として概観的に示す。
【図18】照明装置が内部に置かれている照明器具又はランプを例示する。
【図19】対象物を照明するための照明方法の実施例を例示しているフロー図を典型例として示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、対象物2を照明パターンと共に照明する照明装置1を典型例として概観的に示す。照明装置1は、第1の光線4を生成するための第1の照明デバイス3と、回折光学エレメント6を有する光媒体5とを有し、回折光学エレメント6は第1の照明パターン11を生成するよう適応されている。第1の光線4が第1の照明パターン11を対象物2上に生成するための回折光学エレメント6へと導かれるよう、第1の照明デバイス3及び光媒体5が構成される。照明装置1は特に家庭用の装飾照明のために使われるよう適応されている。対象物2は例えば建物の内壁若しくは外壁、スクリーン、広告目的で照明されねばならない商品、等々であり、照明装置は、この対象物を装飾的に照明するよう適応されている。
【0040】
第1の照明デバイス3は、第1の光線4であるレーザ光線を生成するためのレーザを有する。本実施例において光媒体はCDである。しかしながら他の実施例では、光媒体はCD状の別の記憶媒体、例えばDVD、HD DVD、ブルーレイ・ディスク、等々のような別の媒体のこともある。
【0041】
回折光学エレメント6はサブミクロンのパターン、即ちサブミクロンの寸法の造作をもつパターンを有し、第1の照明デバイス3及び光媒体5は、最大回折角が5度よりも大きいよう、好ましくは10度よりも大きく、更に好ましくは20度よりも大きいよう適応される。本実施例では第1の照明デバイス3及び光媒体5は、第1の光線4が回折光学エレメント6を透過し、透過した第1の光線17が第1の照明パターン11を対象物2上に生成するために対象物2へと導かれることができるよう適応されている。このように照明装置1は、本実施例においては透過モードで動作するよう適応されている。図1は非常におおまかな概観図である。透過モードにある照明装置の幾つかのエレメントの考え得る構成のより詳細が、図2に示されている。
【0042】
図2から見て取れるように、第1の光線4の発散性を用いることによって第1の光線4が好ましくは拡大され、リダイレクション・エレメント19を用いて回折光学エレメント6上へ導かれる前にレンズ18によって平行にされる。第1の照明デバイス3、レンズ18、リダイレクション・エレメント19、及び回折光学エレメント6を有する光媒体は、光媒体5の回折光学エレメント6を有する部分のみに拡大された第1の光線が当たるよう適応される。照明装置は、第1の光線が回折光学エレメント6上へと導かれるよう同光線を拡大するための拡大ユニットを有することもでき、また、この場合、光媒体5の回折光学エレメント6を有する部分のみに第1の光線が当たるよう、第1の光線が拡大される。
【0043】
照明装置1は更に、所望する第1の照明パターンに応じた回折光学エレメント6を算出するための回折光学エレメント演算機7を有し、回折光学エレメント6を光媒体5上に書き込むよう第1の照明デバイス3が適応されている。特にこの場合、回折光学エレメント6が実際に所望する第1の照明パターンへと調節されることができるよう、光媒体5は好ましくは再書込みが可能である。コンピュータ生成ホログラムを回折光学エレメントとして生成するために、所望する第1の照明パターンをフーリエ変換するよう回折光学エレメント演算機7が適応される。コンピュータ生成ホログラムを光媒体5上に書き込むために、コンピュータ生成ホログラムのデータが第1の照明デバイス3へと送信される。
【0044】
照明装置1は二つのモードで作動されることができる。一つは照明モードで、例えば図2に示される装置にて第1の照明パターンを生成するために、第1の照明デバイスは光媒体を照らす。もう一つは書込みモードで、第1の照明デバイスは回折光学エレメントを光媒体5上に書き込むことができる。照明装置1は、同照明装置1が照明モードで動作しなければならないか又は書き込みモードで動作しなければならないかどうかをユーザが指示できる入力ユニット23を好ましくは有する。入力ユニットは例えば押しボタン、スライド式コントローラ、キーボード、等々である。入力ユニット23は、照明装置1の種々異なるユニットを制御するための照明装置制御ユニット20に接続している。
【0045】
図3は、書き込みモードで用いられる装置を典型例として概観的に示す。第1の照明デバイス3は、光媒体5の相変化層8に焦束される第1の光線4を、レンズ24、同27を用いて生成する。他の実施例においては、第1の光線4を相変化層8上に焦束させるための他の集束手段も使うことができる。光媒体の相変化層8及び/又は反射層によって反射された光が、レンズ26を介してフォトダイオード25へとリダイレクション・エレメント28を用いてリダイレクトされる。フォトダイオード25は、フィードバック制御のために反射光の強度を測定する。算出されたコンピュータ生成ホログラムに従って書込みプロセスを制御するために、第1の照明デバイス3及びフォトダイオード25が照明装置制御ユニット20へと接続されている。照明装置1は、選択された動作モード、即ち書込みモード又は照明モードに応じて照明装置の構成を変更するために、再編成ユニットと可動ユニットとを好ましくは有する。
【0046】
回折光学エレメント演算機7は、算出された回折光学エレメントを光の強度の螺旋シーケンスに変換するよう適応されており、この螺旋シーケンスに従って第1の照明デバイス3が光媒体5に書き込んだ場合、算出された回折光学エレメントを結果として生じる。回折光学エレメント6を有する光媒体5を作り出すために、既存のCD/DVD用の書込み技術を用いて光媒体5上へ回折光学エレメント6を書き込むための螺旋シーケンスに従って螺旋トラックに沿って光媒体5を照らすよう、照明装置が適応される。
【0047】
光媒体は好ましくは相変化材料を有し、書き込みの間、第1の照明デバイスの集束された書込みレーザ光線が相変化材料のエリアを、これらのエリアの原子が液体状態で急速に動くことができるよう、融解温度を上回って選択的に加熱する。次に、十分に急速に冷やされた場合、ランダムな液体状態が「凍結」され、所謂アモルファス状態が得られる。材料のアモルファス転位が収縮し、レーザが書き込んだピットが残り、結果として光媒体の判別可能な表面が得られる。第1の照明デバイスの書込みレーザ光線又は別のレーザ光線が、少なくとも最小の結晶化時間よりも長い充分な時間の間、相変化材料を融解温度以下で且つ結晶化温度よりも高い温度まで加熱するために使われることができ、これによって回折光学エレメントを消去するために原子を通常の状態、即ち結晶状態に戻す。書き込みは、好ましくは集束レーザ光線の一回の通過で行われ、これは時には「直接重ね書き」と呼ばれ、このプロセスが一光媒体当たり数千回繰り返されることができる。相変化材料の屈折率の変化に基づいた相変化材料を使用することも可能である。さらに、光媒体が1回のみ書き込み可能であるよう適応されることもでき、この場合、情報が書き込まれる層(記録層)が好ましくは使用され、書込み用に使われるレーザ光の波長を同層が吸収できる。斯様な層を書込み用のレーザ光にて加熱すると、回折光学エレメントを生成するための隆起部及びピットが形成されることができる。また、他の周知のCD/DVD用の書込み技術を、回折光学エレメントを備えた光媒体を作成するために使うことができる。回折光学エレメントが書き込まれた光媒体の層は、レーザ光に対しては低い吸収性を有し、このレーザ光が、回折光学エレメントに実質的に影響することなく第1の照明パターンを生成するよう使用される。
【0048】
光ディスクは所謂プリグルーブを含み、これが光ディスクに書き込む際に書込み用のトラックを追随するために使われる。このプリグルーブは、螺旋トラックを追随する本照明装置にても使用されることができる。しかしながら、また、これらのプリグルーブを有さない光媒体が使われることもできる。
【0049】
光ディスクが反射モードで用いられる場合、光ディスクは好ましくは反射層を有し、また、光ディスクが透過モードで用いられる場合、光ディスクが反射層を有することはない。
【0050】
図4は、湾曲した端部をもつエリア70に書き込まれた回折光学エレメントを有する光媒体5の実施例を典型例として概観的に示す。図5は、回折光学エレメントが四角形の領域71に書かれた光媒体5の実施例を典型例として概観的に示す。
【0051】
照明装置は第1の照明パターンを生成する一方で、第1の光線が常に回折光学エレメントを横断するのを確実にするために、好ましくは光ディスクである光媒体を回転させぬよう適応される。しかしながら、動きのある第1の照明パターンを生成するために種々異なる回折光学エレメントを第1の光線が横断するのを可能にするために、照明装置は、第1の照明パターンを生成するために光媒体を照らす際に光媒体を回転させるよう適応されることもできる。
【0052】
回折光学エレメント6を書き込むため、及び第1の照明パターンを生成するために、第1の照明デバイス3が同じ第1の光源を使用するよう適応されることができる。又は第1の照明デバイス3は二つ以上の光源、特に二つ以上のレーザを有することができ、少なくとも一つの第1の光源が回折光学エレメントを光媒体上に書き込むよう適応され、少なくとも一つの他の第1の光源が第1の照明パターンを生成するために光媒体を照らすよう適応される。これらの第1の光源のうちの少なくとも一つが回折光学エレメントを消去するよう適応されることもでき、及び/又は第1の照明デバイス3は、回折光学エレメントを消去するための少なくとも一つの更なる第1の光源を有することができる。
【0053】
図6は、二つのレーザが用いられた場合、即ち回折光学エレメントを書き込むための第1のレーザと、第1の照明パターンを生成するための第2のレーザとが用いられた場合、光媒体の書込み及び第1の照明パターンの生成を典型例として概観的に例示する。図6では、ドット32は回折光学エレメントを書き込むためのレーザによる照明を示し、ドット33は第1の照明パターンを生成するために使用するレーザ光を示す。書込みの間、光媒体5は回転され、レーザ・ドット32は螺旋トラックに沿って書き込むために半径方向に移動する。レーザ・ドット32を半径方向に移動させるために可動ユニット36が用いられることができ、同ユニットは半径方向のトラック30に沿って移動可能である。第1の照明パターンを生成するために、光媒体5を回転させることによって、及び/又は可動ユニット36を用いてレーザ・ドット33を半径方向に移動させることによって、回折光学エレメントがレーザ・ドット33の下にもたらされる。光媒体5が複数の回折光学エレメントを有する場合、第1の照明パターンである画像を対象物上に投影するための光学部品が備えられることができ、第1の照明パターンを生成するために使用するレーザ光が、第1の回折光学エレメントを照らすために使われることから第2の回折光学エレメントを照らすために使われることへと変更される場合、生成された第1の照明パターンの位置を一定に保つために、適切な投影レンズ装置が設けられることができる。一実施例においては、種々異なる回折光学エレメント間を切替えるために、第1の照明パターンを生成するために使用するレーザ光が変更されるのではなく、光媒体の方が移動する。この事例では、切替えが種々異なる回折光学エレメント間で実行される際、第1の照明パターンの位置は一定のままである。所望する回折光学エレメントがレーザ光によって照らされるよう光媒体を移動させるために、光媒体を回転させることもあり、又は光媒体をx-yステージ上に配置することもある。
【0054】
図7は、光媒体に書き込むため、及び第1の照明パターンを生成するための別の装置を例示する。図7ではドット41は、回折光学エレメントを書き込むために使用するレーザ・ドットを示し、ドット42は、回折光学エレメントを照らすことによって第1の照明パターンを生成するために使用するレーザのドットを示す。可動ユニット40、同39は、レーザ・ドット41、同42を半径方向のトラック37に沿って移動させるよう適応されている。螺旋トラックに沿って回折光学エレメントを書き込むために、光媒体5は好ましくは回転され、レーザ・ドット41は半径方向トラック37に沿って動かされる。第1の照明パターンを生成するために光媒体5を回転させることによって、及び/又は可動ユニット39を用いてレーザ・ドット42を半径方向に移動させることによって、書き込まれた回折光学エレメントがレーザ・ドット42の下にもたらされる。第1の照明パターンを所望する対象物に投影するための更なる光学部品が備えられることが可能である。光媒体5が複数の回折光学エレメントを有し、第1の照明パターンを生成するために使用するレーザ光が第1の回折光学エレメントを照らすために使われることから第2の回折光学エレメントを照らすために使われることへと変更される場合、生成された第1の照明パターンの位置を一定に保つために、適切な投影レンズ装置が設けられることができる。一実施例では、第1の照明パターンを生成するために使用するレーザ光が、種々異なる回折光学エレメント間を切替える毎に変更されるのではなく、光媒体の方が移動する。この事例では、種々異なる回折光学エレメント間で切替えが実行される際、第1の照明パターンの位置は一定のままである。所望する回折光学エレメントがレーザ光によって照らされるよう光媒体を移動させるために、光媒体を回転させることができるか、又は光媒体をx-yステージ上に配置できる。
【0055】
再び図1を参照すると、照明装置1は更に、対象物2を第2の照明パターン12と共に照らすための第2の光線10を生成する第2の照明デバイス9を有する。第2の照明デバイス9はLEDを有する。第1の照明パターン11及び第2の照明パターン12は、完結した照明パターンを対象物2上に生成するために、互いを補足するよう適応されることができる。例えば第1の照明パターン11が、例えば鮮明な線及び鮮明な点を有する輪郭を生成するためのレーザを好ましくは有する第1の照明デバイスを用いて生成されることができ、LEDにより生成された第2の照明パターンは、当該輪郭を埋める色を提供できる。
【0056】
第2の光線10が回折光学エレメント6に当たることなく対象物2を照明するよう、第2の照明デバイス9及び光媒体5が配置されてもよい。これによって、回折光学エレメント6により誘起される、第2の光線10の不必要な回折効果を回避できる。
【0057】
光媒体5は、第1の光線4によって照らされるための回折光学エレメント6を有する第1の部分13と、第2の光線10によって照らされるための第2の部分14とを有する。第2の部分14は、第2の光線10が第2の部分14のみを透過できるよう適応される。当該第2の部分は空白部分のことがある。即ち回析構造又は散乱構造を有しない部分のことがある。これによって、対象物を照明する前に第2の光線が光媒体によって実質的に影響されることなく、光媒体を透過するような光媒体及び第2の照明デバイスの配置ができる。特に、第2の光線の、回折光学エレメントに起因する不必要な回折が回避されることができる。しかしながら本実施例においては、第2の部分14は、当該第2の部分14が第2の光線10によって照らされた場合、画像を対象物2上に第2の照明パターン12として生成するための画像パターン15を有する。特に、第2の光線10を用いて光媒体5の第2の部分14を照らすことによって、投影像が対象物2上に生成されることができる。画像パターン15は、当該画像パターン15が第2の光線10にて照らされた場合に第2の照明パターン12を生成するための透明エリア、散乱エリア、及び/又は回折エリアを有する。
【0058】
光媒体を横断し透過した第2の光線43は、投影レンズ44によって好ましくは結像される。説明を明瞭にするために、これは図1には示されず、図8で示されている。図8は、第2の照明パターンの生成を典型例として概観的に例示している。第2の光線10は拡大レンズシステムのような拡大ユニットにより拡大されることができ、同光線10は、画像パターン15を有する光媒体の第2の部分へと導かれる。光は画像パターン15により散乱され、及び/又は回析され、投影レンズ44の受光角内にある回析光及び/又は散乱光の一部が、本実施例においては投影画像である第2の照明パターン12を生成するための対象物上に投影される。投影レンズ44の受光角の外にある散乱され及び/又は回析された第2の光線の一部が対象物上に投影されることはないであろう。しかし、対象物の寸法によっては対象物に依然として到達することができ、これによって光の損失を回避する。この態様で、第2の光線の投影された部分と第2の光線の投影されなかった部分との間のコントラストが対象物上に生成されることができる。このコントラストは、光媒体を横断した後の第2の光線の発散の程度により決定されることができ、特に光媒体における第2の光線の散乱の程度により決定されることができ、及び投影レンズ44の受光角により決定されることができる。これは、所望する発散度と受光角とを選択することによって、このコントラストが設定され得ることを意味する。
【0059】
照明装置1は更に、予め規定された第2の照明パターンに応じた画像パターンを算出するための画像パターン生成機16を有し、第1の照明デバイス3が画像パターン15を光媒体5上に書き込むよう適応される。これまでに既に記したように、画像パターン15が実際に所望する、即ち予め規定された第2の照明パターン12へと調節されることができるよう、光媒体5は再書込みが可能である。更に好ましくは、既存のCD/DVDの書込み技術も画像パターン15を光媒体5上に書き込むために用いられる。
【0060】
また、画像パターン15を算出するために、対象物2上に生成される予め規定された第2の照明パターンが、好ましくはフーリエ変換される。
【0061】
画像パターン15を算出するため、またコンピュータ生成ホログラムとして回折光学エレメントを生成するために、周知の技術を使うことができる。これらの技術は、第1の照明パターン及び第2の照明パターンをそれぞれフーリエ変換することに基づいている。例えば、S. Tresterによる論文「Computer Simulated Holography及びComputer Generated Holograms」Journal of Physics, USA 64、頁472乃至478(1996年4月)で開示された方法が、コンピュータ生成ホログラムを生成するために使われることができ、同論文が本願明細書に参照されて組込まれる。
【0062】
図9に典型例として概観的に示されるように、一実施例において第2の照明デバイスが異なる色をもつ複数の第2の光線を生成するよう適応されることができる。図9では、第2の照明デバイス209は赤色の第2の光線250を発する赤色光源247と、緑色の第2の光線251を発する緑色光源248と、青色の第2の光線252を発する青色光源248とを有し、着色照明を対象物上に生成するために、赤色の第2の光線250、緑色の第2の光線251、及び青色の第2の光線252が光媒体205の第2の部分へと導かれる。
【0063】
光媒体205の第2の部分は、異なる色をもつ複数の第2の光線250、同251、同252に対応する複数の散乱パターン253、同254、同255を有する。複数の第2の光線250、同251、同252に対応する複数の投影レンズ244、同245、同246が、対応する散乱パターン253、同254、同255を横断した後に、対応する第2の光線250、同251、同252を対象物2上に投影するよう適応されている。第2の光源247、同248、同249は好ましくはLEDであり、第1の照明デバイス3は、第1の光線204であるレーザ光線を好ましくは生成する。当該レーザ光は、第1の照明パターン211を生成するための回折光学エレメント206を照らす。第1の照明パターン211は本実施例では「花」を形成している鮮明な線を有し、第2の照明パターン212は低い空間分解能をもち、第1の照明パターンの鮮明な線により規定された輪郭を色で埋める。
【0064】
図1を再び参照すると、照明装置1は、所望する第1の照明パターン及び/又は第2の照明パターンを入力するための入力ユニット60を有する。照明パターン入力ユニット60は、予めデザインされた照明パターンを例えばUSBスティック、インターネット接続、別のコンピュータ、データベース、等々から受信するための受信ユニットのことがある。照明パターン入力ユニット60は、ユーザが第1の照明パターン及び/又は第2の照明パターンを、一群の予めデザインされた照明パターンから、例えばコンピュータ又はリモコンなどの別のユーザ・インターフェースを介して選択できるよう適応されることもできる。さらに照明パターン入力ユニット60は、所望する第1の照明パターン及び/又は第2の照明パターンをユーザが設計できる電子書き込みボードなどのグラフィカル・ユーザ・インタフェースを有することができる。
【0065】
典型例として概観的に図10に示されるように、更なる実施例において、第2の照明デバイス及び光媒体は、第2の照明デバイスが対象物と光媒体との間に位置するよう構成されることができる。図10において、第2の照明デバイスは、異なる色をもつ第2の光線343を発する複数の第2の光源347、同348、同349を有する。第2の光源347は好ましくは赤色を発し、第2の光源348は好ましくは青色を発し、及び第2の光源349は好ましくは緑色を発する。第2の光源347、同348、同349は好ましくはLEDである。第2の光源347、同348、同349を有する第2の照明デバイスは、第2の光線343が回折光学エレメント306に当たらずに対象物を照らすよう、光媒体305と対象物との間に配置される。第1の照明デバイスは、第1の光線としてレーザ光を発するレーザである第1の光源3を有している。第1の照明パターン311を生成するために、当該レーザ光はレンズ318によって平行にされ、平行なレーザ光304が光媒体305の回折光学エレメント306上へと導かれる。第2の光源347、同348、同349を有する第2の照明デバイスが第2の照明パターン312を生成する。回析されたレーザ光317は、鮮明な線を有する輪郭を書き込み、当該輪郭は「花」のような対象物を描写している。第2の照明パターン312は輪郭を埋める色を提供する。第1の照明パターン311及び第2の照明パターン312は、これ故互いを補足して完全な画像を形成する。
【0066】
図10では、レーザ光は光媒体を横断するが、第2の光源は光媒体の前に配置される。即ち、レーザ光源及び第2の照明デバイスが光媒体の対向する側に配置され、これによって第2の光源により生成された光が光媒体を通り過ぎるのを回避する。しかしながら、対象物を照明するために、回折光学エレメントから反射された光が第1の照明パターンを生成するために使われるよう第1の照明デバイス及び光媒体が配置された場合、第2の照明デバイスによって作られた光が光媒体を通り過ぎることも回避されることができる。斯様な反射モードにおいては、第1の照明デバイス及び第2の照明デバイスが光媒体の同じ側に配置されることができ、第2の照明デバイスの光は対象物を直接照らし、一方で、第1の照明デバイスの光は光媒体へと導かれ、光媒体の回折光学エレメントにより反射された光が、対象物を照明するための第1の照明パターンを生成する。
【0067】
以下では、反射モード、即ち回折光学エレメントにより反射され、反射された第1の光線によって第1の照明パターンが生成されるモードで作動される照明装置401の実施例が、図11を参照して説明されることであろう。図1及び図11において、同じユニット及び同じエレメントが、同じ参照符号によって示されている。第1の照明デバイス3により生成された第1の光線の光4は、リダイレクション・エレメント119を介して回折光学エレメント6へとリダイレクトされる。第1の光線が回折光学エレメント6により反射され、反射された第1の光線117は、第1の照明パターン11を対象物2上に生成するために対象物2へと導かれる。第2の照明パターン12の生成は、図1を参照して以前に説明された第2の照明パターンの生成と同様である。しかしながら、他の実施例においては、第1の光線に対する反射モードが、図9及び図10を参照して上で説明されたタイプのような第2の照明パターンを生成する他のタイプと組み合わされることもできる。
【0068】
反射モードで使われる照明装置の幾つかのエレメントの配置が、図12において更に詳細に典型例として概観的に示されている。図12から見て取れるように、第1の照明デバイス3により生成された第1の光線4がレンズ118によって平行にされ、リダイレクション・エレメント119によって反射性の回折光学エレメント6上へとリダイレクトされる。反射され回析された光線117は、リダイレクション・エレメント119を横断して第1の照明パターン11を対象物2上に生成する。
【0069】
照明装置が透過モードで使用されるよう適応されている場合、光媒体がアルミニウム層のような反射層を有することはない。しかしながら、照明装置が反射モードで使用されるよう適応されている場合、光媒体は反射層を有する。図13は、光媒体5の横断面を典型例として概観的に示す。図13から見て取れるように、光媒体5は、保護層80、反射層81、誘電層82、記録層83、更なる誘電層84、及びポリカーボネートのディスク基板85の順で、複数の層を含有している。また、プリグルーブ86が図13に示されている。照明装置が透過モードで使用される場合、光媒体5が反射層81を有することはない。プリグルーブ86はオプションである。即ち、光媒体がプリグルーブ86を有さないこともある。
【0070】
図14乃至図18は、本照明装置の好ましい使用例を示す。図14は、商品ディスプレイ90における照明装置の使用を典型例として概観的に示し、照明パターン91が商品ディスプレイ90の内部に生成される。図14では照明パターン91が示されており、これは同じ商品ディスプレイ90を示している図15に示される照明パターン92とは異なる。これらの異なる照明パターン91、同92は、例えば照明パターンを生成するために使われる回折光学エレメントを交換することにより実現されることができる。図16は、生成される照明パターン用に透明な上面97を有する製品展示台96を典型例として概観的に示す。照明装置は製品展示台96の内部にあり、第1の照明パターンが透明表面97の内側に生成される。図17は、例えば商品を載置できる棚板93を典型例として概観的に示す。照明装置が棚板93の内部に配置され、図17に示される上面94は、棚板の内部で生成された照明パターンを棚板の外側で見ることができるよう透明である。照明装置は棚板93の端にある部分95に好ましくは配置される。図18は、照明器具又はランプ98を典型例として概観的に示し、この照明器具又はランプ98の内部に照明装置が置かれている。また、この照明器具又はランプ98は、生成された照明パターンが照明器具又はランプ98を出射できるよう透明な表面99を有する。
【0071】
図14乃至図18を参照して、照明装置が、それぞれ商品ディスプレイ、棚板、製品展示台、及び照明器具又はランプ内の場所にあるものとして説明されたものの、照明装置がこれらの造作物を有するものとして考えられることもでき、第1の照明デバイス及び光媒体のような照明装置の更なるエレメントが、これらの造作物内に、即ち商品ディスプレイ内に、棚板内に、製品展示台の中に、及び照明器具又はランプ内にそれぞれ置かれることができる。
【0072】
以下において、対象物を照明パターンと共に照明する照明方法が、図19に示されるフロー図を参照して、典型例として説明されることであろう。
【0073】
ステップ401において、予め規定された第1の照明パターンに応じた回折光学エレメントが算出される。回折光学エレメントが光線にて照らされた場合、対象物を照明するための予め規定された第1の照明パターンを生成するよう回折光学エレメントが適応される。好ましくは回折光学エレメント演算機7は、コンピュータ生成ホログラムを回折光学エレメントとして算出し、予め規定された第1の照明パターンがフーリエ変換される。
【0074】
ステップ402において、予め規定された第2の照明パターンに応じた画像パターンが算出され、画像パターンが第2の照明デバイスの第2の光線によって照らされたときに、第2の照明パターンが生成されるよう画像パターンが適応される。画像パターン演算機16が画像パターンを算出し、予め規定された第2の照明パターンがフーリエ変換される。
【0075】
ステップ403において、算出された回折光学エレメント及び算出された画像パターンが、照明装置の第1の照明デバイスを用いて光媒体上に書き込まれる。書込み手順が完了した後、第1の照明デバイスの第1の光線が、第1の照明パターンを対象物上に生成するための回折光学エレメントへと導かれ、第2の照明デバイスの第2の光線が、第2の照明パターンを対象物上に生成するための画像パターンへと導かれる。
【0076】
照明装置が第2の照明デバイスの第2の光線によって直接対象物を照明するよう適応されていて、第2の光線が光媒体を横断しないか、又は光媒体の空白部分を横断するのみである場合、ステップ402が省略されることができ、ステップ403においては回折光学エレメントのみが書き込まれ、ステップ404において、第2の照明デバイスの第2の光線が光媒体の画像パターンを横断することはない。
【0077】
上に記した実施例では、光を光媒体へと導くことによって照明装置及び照明方法が光媒体に書き込んで照明パターンを生成できるものの、書込み機能及び照明機能が別の装置及び別の方法を通じて提供されることもできる。特に、対象物を照明パターンにて照明するための照明装置及び照明方法が提供されることができ、当該照明装置及び照明方法は、対象物を第1の照明パターン及び/又は第2の照明パターンにて照明する機能を提供するが、しかし光媒体に書き込むことは出来ない。斯様な照明装置は、例えば上述の回折光学エレメント演算機7、画像パターン生成機16、照明パターン入力ユニット60、及び入力ユニット23を有することはない。そのうえ、対応する照明方法のステップ401乃至ステップ403が省略され、少なくとも回折光学エレメントを既に有している光媒体が、代わりに提供される。少なくとも回折光学エレメントを光媒体上に書き込む機能は備えるが、対象物を少なくとも第1の照明パターンで照明することが出来ない光媒体書込み装置が第2の照明デバイスを有することはない。これに対応する光媒体に書き込む方法は、第1の光線及びオプションで第2の光線を、対象物を照明するための第1の照明パターン及びオプションで第2の照明パターンを生成するための光媒体へと導くステップを含むことはない。即ち、斯様な方法がステップ404を含むことはない。
【0078】
図1及び図11を参照して上で説明された実施例において、照明装置は第1の照明デバイスと第2の照明デバイスとを有するものの、当該照明装置が第2の照明パターンを生成せずに、第1の照明パターンのみを生成するよう適応されることができる。即ち、一実施例において、照明装置が第2の照明デバイスと画像パターン生成機とを有することはない。
【0079】
上で説明した実施例において、照明装置の光と光媒体書込み装置とに影響を及ぼす特定の光学エレメントが説明されたものの、照明装置及び/又は光媒体書込み装置は光に影響を及ぼす更なる光学エレメント、例えば、所望する照明効果を対象物上に生成するための更なるレンズ及び反射器を有することができる。
【0080】
本照明装置が、ホテル及びレストランのようなサービスアプリケーション用に、家、病院、博物館での雰囲気作成用に、また、好ましくは相互作用のある小売店の照明用に使われている様々な照明効果を作り出すよう適応されることができる。特にこれらのアプリケーション用に、第1の照明デバイスの一つあるいは複数のレーザ光源を背景照明に重畳して用いることによって強い光のパターンを生じるよう、照明装置が適応されることができる。背景照明は、固定された場面や変化する場面のことがあるパターン及び画像を作り出すために、好ましくは一つあるいは複数のLEDを有する第2の照明デバイスによって生成できる。レーザ光源は極めて高いエネルギ密度を有し、回折光学エレメントを使用して可視パターン及び可視形状を作り出すのに非常に適している。一方でLEDは高い光出力を有し、背景照明用に使うことができる。
【0081】
本照明装置がゴボ(Gobo)プロジェクタの一部であることもでき、家電又は玩具に使うことができる。同プロジェクタは、半透明の椅子、テーブル、収納戸棚、等々などの家具において使われることもできる。本照明装置が娯楽目的のために、例えばディスコで用いられるよう適応されることができる。
【0082】
上で説明した実施例においては、光媒体は一つの回折光学エレメントのみ、及びオプションで一つの画像パターンも有しているものの、光媒体は、複数の回折光学エレメント及び/又は複数の画像パターンを有することもできる。
【0083】
上で説明した実施例においては光媒体は光ディスクであるが、光媒体が別の形状を有することもできる。さらに上述の実施例において、書込み目的のため、及び第1の照明パターンを生成するための回折光学エレメントを光線中に配置するために光媒体が回転されるものの、光媒体がx-yステージ上に配置されることもできる。同ステージは、書込みの間、又は第1の照明パターンを生成する間に光媒体を要望通り動かすために、二次元平面内の直交する方向に移動可能である。光媒体が移動されるのではなく、第1の照明パターンを書き込むため、及び/又は生成するために使われる光の位置のみが、第1の照明パターンを生成する目的で光媒体上の種々異なるエリアに書込むため、及び/又は光媒体の種々異なる部分を照らすために変更されることも可能である。
【0084】
開示された実施例に対する他のバリエーションが、図面、開示物、及び添付の請求項の学習から、請求された本発明を実施する際に当業者により理解されることができ且つ遂行されることができる。
【0085】
請求項において、単語「有する」が他のエレメント又はステップを除外することはなく、不定冠詞「a」又は「an」が複数を除外することはない。
【0086】
単一のユニット又は単一のデバイスが、請求項に詳述されている複数の項目の機能を実現してもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項において再引用されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有効に使われることができないことを示してはいない。
【0087】
一つあるいは複数のユニット若しくはデバイスにより実行される回折光学エレメントの算出及び画像パターンの算出のような演算が、他のいかなる数のユニット若しくはデバイスによっても実行されることができる。例えば、ステップ401及びステップ402が単一ユニットによって、又は他のいかなる数の異なるユニットによっても実行されることができる。照明方法に従う照明装置の演算及び/若しくは制御、並びに/又は光媒体書込み方法に従う光媒体書込み装置の制御が、コンピュータプログラムのプログラムコードとして、及び/又は専用のハードウェアにより実行されることができる。
【0088】
コンピュータプログラムが、他のハードウェアと共に又は他のハードウェアの一部として光記憶媒体又は固体媒体などの適切な媒体に記憶/配布されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線の通信システムなどを介して他の形態にて配布されてもよい。
【0089】
請求項中のいかなる参照符号も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
【0090】
本発明は、対象物を照明パターンと共に照明する、特に装飾照明用の照明装置に関する。本装置は、第1の光線を生成するための第1の照明デバイスと、回折光学エレメントを有する光媒体とを有する。当該回折光学エレメントは第1の照明パターンを生成するよう適応され、第1の照明デバイス及び光媒体は、第1の照明パターンを対象物上に生成するための回折光学エレメントへと第1の光線が導かれるよう配置される。回折光学エレメントがサブミクロンの造作をもつよう、当該回折光学エレメントが光媒体上に書き込まれることができ、これにより、対象物を照明するためにLC-SLM又はLCoSを使用するのと比較して、対象物上の照明の空間分解能を増すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

第1の光線を生成するための第1の照明デバイスと、
回折光学エレメントを有する光媒体と、
を有し、
前記回折光学エレメントは第1の照明パターンを生成するよう適応され、
対象物に前記第1の照明パターンを生成するために、前記第1の照明デバイス及び前記光媒体は、前記第1の光線が前記回折光学エレメントへと向かわされるよう配置される、対象物を照明パターンで照らす照明装置。
【請求項2】
前記照明装置が、予め規定された第1の照明パターンに応じた前記回折光学エレメントを作るための回折光学エレメント演算機を有し、前記第1の照明デバイスが前記回折光学エレメントを前記光媒体に書くよう適応されている、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記照明装置が更に、前記対象物を第2の照明パターンで照らすための第2の光線を生成する第2の照明デバイスを有する、請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第2の光線が前記回折光学エレメントに当たることなく前記対象物を照らすよう、前記第2の照明デバイス及び前記光媒体が配置されている、請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記光媒体が、前記第1の光線に照らされるための前記回折光学エレメントを有する第1の部分と、前記第2の光線に照らされるための第2の部分と、を有する、請求項3に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第2の部分が前記第2の光線に照らされた場合、当該第2の部分が、前記第2の照明パターンとして画像を前記対象物上に生成するための画像パターンを有する、請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記照明装置が、予め規定された第2の照明パターンに応じた画像パターンを作るための画像パターン演算機を有し、前記第1の照明デバイスが、前記画像パターンを前記光媒体に書くよう適応されている、請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記第2の照明デバイスが様々な色を有する複数の第2の光線を生成するよう適応され、当該光線が前記第2の照明パターンとして前記対象物の着色照明を生成するために前記光媒体の前記第2の部分へと向かわされる、請求項5に記載の照明装置。
【請求項9】
前記光媒体の第2の部分が前記様々な色を有する複数の第2の光線に対応する複数の散乱パターンを有し、前記照明装置が更に前記複数の第2の光線に対応する複数の投影レンズを有し、各々の前記投影レンズが、対応する前記第2の光線を、対応する前記散乱パターンを越えた後に、前記対象物に投影するよう適応されている、請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】

予め規定された第1の照明パターンに応じた回折光学エレメントを作るための回折光学エレメント演算機と、
前記回折光学エレメントを光媒体に書くための照明デバイスと、を有し、
前記回折光学エレメント
は、当該回折光学エレメントが光線で照らされた場合、対象物を照らすための予め規定された第1の照明パターンを生成するよう適応されている、
光媒体に書く装置。
【請求項11】

第1の照明デバイスによって第1の光線を生成するステップと、
第1の照明パターンを生成するよう適応された回折光学エレメントを有する光媒体を提供するステップと、
前記第1の照明パターンを対象物に生成するための前記回折光学エレメントへと前記第1の光線を向かわせるステップと、
を含む、対象物を照明パターンで照らす照明方法。
【請求項12】

予め規定された第1の照明パターンに応じた回折光学エレメントを作るステップと、
照明デバイスによって前記回折光学エレメントを光媒体に書くステップと、を含み、
前記回折光学エレメントが光線で照らされた場合、回折光学エレメント演算機によって、前記対象物を照らすための予め規定された第1の照明パターンを生成するよう、当該回折光学エレメントが適応された、光媒体に書く方法。
【請求項13】
照明装置を制御するコンピュータ上で実行されたとき、請求項1に記載の照明装置に請求項11に記載の照明方法の複数のステップを実行させるためのプログラムコードを有する、対象物を照明パターンで照らすための照明用コンピュータプログラム。
【請求項14】
光媒体に書く装置を制御するコンピュータ上で実行されたとき、請求項10に記載の光媒体書込み装置に請求項12に記載の光媒体書込み方法の複数のステップを実行させるためのプログラムコードを有する、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−519112(P2013−519112A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551717(P2012−551717)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050416
【国際公開番号】WO2011/095929
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】