説明

寿命管理機能付電圧調整器

【課題】 電圧調整器の電気的性能や機能に直接関連する項目について、簡便な手段により、的確な劣化診断を行う。
【解決手段】 配電線路の途中に設置され、複数タップのタップ切替器2を有する調整変圧器3を内蔵し、その調整変圧器3のタップ切替器2を絶縁油中で切り替えることにより配電線路の電圧変動を補償する電圧調整器1であって、タップ切替器2の切り替えによる接点劣化情報および油劣化情報、調整変圧器の温度上昇による絶縁紙劣化情報からなる調整変圧器3の寿命管理履歴の保存と書換えとが可能な温度センサ付ICタグ14を調整変圧器3の鉄心とコイル間あるいは一次コイルと二次コイル間に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線路の途中に設置され、その配電線路の電圧変動を補償する寿命管理機能付電圧調整器に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧調整器(Step Voltage Regulator:SVR)は、高圧配電線路の途中に設置され、複数タップのタップ切替器を有する調整変圧器を内蔵し、その調整変圧器のタップ切替器を絶縁油中で切り替えることにより配電線路の電圧変動を補償し、電圧調整器の設置以降の高圧配電線路の電圧を基準電圧の設定範囲内に収まるように調整するものである。
【0003】
この種の電圧調整器では、タップ切替時に発生するアークによりタップ切替器の接点(タップ)が摩耗する接点劣化、また、タップ切替器の接点が摩耗して発生する金属粉が絶縁油中に沈殿して堆積することにより油が汚れたり、あるいは経年的に油が酸化したりすることにより絶縁信頼性が低下する油劣化、さらに、調整変圧器の温度上昇によりその調整変圧器を構成するコイルと鉄心間あるいは一次コイルと二次コイル間に介在させた絶縁紙が劣化する絶縁紙劣化が発生する。
【0004】
これら接点劣化、油劣化あるいは絶縁紙劣化に基づく電圧調整器の電気的性能や機能の低下に対する信頼性確保などの面から、タップ切替動作回数が所定回数、例えば20万回を超えた電圧調整器についてはメーカにて内部点検を行い、電圧調整器に異常がなければ、例えば30万回まで使用するようにしている。また、電圧調整器に異常があった場合や30万回の使用を超える場合には、タップ切替器を取り替えるなどして故障箇所を修理するようにしている。また、絶縁紙劣化については、柱上設置機器に温度測定手段がないことから、寿命損失の管理がなされていないのが現状である。
【0005】
前述したタップ切替動作回数については、電圧調整器のケースに設けられたカウンタで表示するようにしているのが一般的である。また、この電圧調整器では、そのケースに設けられた覗き窓からタップ位置を確認できるようになっているが、タップ切替器の接点が摩耗して発生する金属粉が絶縁油中に沈殿して堆積することにより油が汚れることにより、覗き窓からタップ位置を確認することが困難となっている。この絶縁油の汚損によるタップ位置表示確認の困難性を解決すべく、そのタップ位置を簡便に判定表示し得る装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−179680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電圧調整器の電気的性能や機能の低下に対する保全としては、カウンタ表示によるタップ切替動作回数や設置期間のみに基づいて電圧調整器を点検および修理しているのが現状である。また、特許文献1で開示されているように、絶縁油の汚損によるタップ位置の確認を容易にするため、そのタップ位置を簡便に判定表示し得る装置が設けられているのみである。
【0007】
しかしながら、電圧調整器の電気的性能や機能に直接関連する項目、例えば、前述した接点劣化、油劣化あるいは絶縁紙劣化に関する保全の手段がないというのが現状であった。従って、電圧調整器の電気的性能や機能の低下に対する保全は、目視による外観点検や前述のタップ切替動作回数や設置期間のチェックのみで、的確な劣化診断が行われず、接点劣化、油劣化あるいは絶縁紙劣化による電気的な故障が発生する場合が多かった。
【0008】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、電圧調整器の電気的性能や機能に直接関連する項目について、簡便な手段により、的確な劣化診断を行い得る寿命管理機能付電圧調整器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、配電線路の途中に設置され、複数タップのタップ切替器を有する調整変圧器を内蔵し、その調整変圧器のタップ切替器を絶縁油中で切り替えることにより配電線路の電圧変動を補償する電圧調整器であって、電圧調整器の劣化情報からなる寿命管理履歴の保存と書換えとが可能な記憶媒体を備えたことを特徴とする。なお、電圧調整器の劣化情報とは、タップ切替器および調整変圧器の両者の劣化情報を意味する。
【0010】
本発明では、電圧調整器の劣化情報からなる寿命管理履歴の保存と書換えとが可能な記憶媒体を備えたことにより、その記憶媒体に電圧調整器の劣化情報からなる寿命管理履歴を逐次蓄積することができる。この記憶媒体に累積された寿命管理履歴に基づく電圧調整器の劣化情報が保全基準に達した時点で、その劣化情報を、電圧調整器あるいはその周辺機器を子局とする遠方制御システムを利用して親局にデータ伝送することが可能となる。また、記憶媒体が電圧調整器と一体不可分であることから、移設などによる電圧調整器の取替えにも容易に対応可能である。
【0011】
前述の電圧調整器の劣化情報からなる寿命管理履歴は、タップ切替器の切り替えによる接点劣化情報および油劣化情報、あるいは、調整変圧器の温度上昇による絶縁紙劣化情報のうちの少なくともいずれか一方であることが望ましい。ここで、「接点劣化情報および油劣化情報、あるいは、絶縁紙劣化情報のうちの少なくともいずれか一方」とは、接点劣化情報および油劣化情報のみの場合、絶縁紙劣化情報のみの場合、接点劣化情報および油劣化情報と絶縁紙劣化情報との両方の場合からなる三つの態様を含むことを意味する。
【0012】
寿命管理履歴を、接点劣化情報および油劣化情報、あるいは、絶縁紙劣化情報のうちの少なくともいずれか一方とすれば、電圧調整器の電気的性能や機能に直接関連する項目について、的確な劣化診断を行うことが容易となる。接点劣化情報は、タップ切替時に発生するアークによりタップ切替器の接点(タップ)が摩耗している程度を示す。また、油劣化情報は、タップ切替器の接点が摩耗して発生する金属粉が絶縁油中に沈殿して堆積することにより油が汚れ、あるいは経年的に油が酸化したりすることにより絶縁信頼性が低下している程度を示す。さらに、絶縁紙劣化情報は、調整変圧器の温度上昇によりその調整変圧器を構成するコイルと鉄心間あるいは一次コイルと二次コイル間に介在させた絶縁紙が劣化している程度を示す。
【0013】
本発明における記憶媒体としては、調整変圧器の温度上昇部位に取り付けられた温度センサ付ICタグが好適である。ここで、調整変圧器の温度上昇部位としては、絶縁紙劣化情報を蓄積する点を考慮すれば、調整変圧器の絶縁紙部位に取り付けることが好ましい。但し、調整変圧器の絶縁紙部位に限らず、調整変圧器のコイル部位であってもよい。
【0014】
温度センサ付ICタグを記憶媒体として使用すれば、接点劣化情報、油劣化情報、絶縁紙劣化情報を含む電圧調整器の劣化情報からなる寿命管理履歴を逐次蓄積することが容易となる。また、この温度センサ付ICタグに累積された寿命管理履歴に基づく電圧調整器の劣化情報が保全基準に達した時点で、その劣化情報を、電圧調整器あるいはその周辺機器を子局とする遠方監視制御システムを利用して親局にデータ伝送することも容易となる。
【0015】
前述の温度センサ付ICタグは、調整変圧器からの漏れ磁束を検出する誘導コイルと、その誘導コイルから出力される誘導電流を整流する整流器と、その整流器から出力される直流電力を貯蔵して温度センサへ給電する電気二重層コンデンサとが内蔵されていることが望ましい。
【0016】
このように誘導コイル、整流器および電気二重層コンデンサを温度センサ付ICタグに内蔵させれば、調整変圧器からの漏れ磁束を利用することにより電気二重層コンデンサを温度センサ付ICタグの駆動電源とすることが可能となる。この温度センサ付ICタグの駆動電源として電気二重層コンデンサを用いることで、二次電池などのバッテリを設置する必要がないので、温度センサ付ICタグを調整変圧器に組み込むことが容易となり、移設などによる電圧調整器の取替えにも容易に対応できる。
【0017】
本発明における記憶媒体としては、調整変圧器の制御部に設けられたICタグを使用することも可能である。なお、調整変圧器の制御部は、その調整変圧器に付設されており、タップ切替器や変流器から検出された情報に基づいて所定のデータ処理を実行する。
【0018】
このICタグを使用する場合、前述の温度センサ付ICタグでは、温度センサによる温度情報のみを送信可能とし、接点劣化情報、油劣化情報、絶縁紙劣化情報を含む電圧調整器の劣化情報からなる寿命管理履歴を蓄積することは必ずしも必要ではない。その場合、接点劣化情報、油劣化情報、絶縁紙劣化情報を含む電圧調整器の劣化情報からなる寿命管理履歴については、調整変圧器の制御部に設けられたICタグに逐次蓄積すればよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電圧調整器の劣化情報からなる寿命管理履歴の保存と書換えとが可能な記憶媒体を備えたことにより、その記憶媒体に電圧調整器の劣化情報からなる寿命管理履歴を逐次蓄積することができ、その記憶媒体に累積された寿命管理履歴に基づく電圧調整器の劣化情報を、遠方監視制御システムなどを利用してデータ伝送することが可能となる。
【0020】
このようにして、電圧調整器の電気的性能や機能に直接関連する項目について、的確な劣化診断を行うことができ、電圧調整器の寿命管理が容易となって信頼性が大幅に向上する。また、電圧調整器の電気的性能や機能の低下に対する保全での点検および修理時期を延長でき、過剰な取替えや多頻度に亘る点検および修理を未然に防止することができる。さらに、記憶媒体が電圧調整器と一体不可分であることから、移設などによる電圧調整器の取替えにも容易に対応でき、電圧調整器の確実な寿命管理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る寿命管理機能付電圧調整器の実施形態として、その寿命管理機能付電圧調整器(以下、単に電圧調整器と称す)の遠方監視制御システムについて以下に詳述する。図1は本発明の電圧調整器およびその制御部の概略構成を示す。
【0022】
まず、電圧調整器1(SVR)は、同図に示すように複数タップのタップ切替器2を有する調整変圧器3を主要部とし、タップ切替器2および調整変圧器3をケース(図示せず)に収容した構造を具備する。そのケース内には絶縁油が充填され、タップ切替器2および調整変圧器3が絶縁油中に浸漬されている。前述のケースに付設された調整変圧器3の制御部4には、調整変圧器3の出力(二次)側に並列接続された計器用変圧器5を介して変流器6が接続され、その変流器6を調整変圧器3の出力(二次)側に設置している。電圧調整器1は、高圧配電線路の途中に設置され、その入力(一次)側端子7a,7bが高圧配電線路の電源側に接続され、出力(二次)側端子8a,8bが高圧配電線路の負荷側に接続される。
【0023】
この電圧調整器1では、計器用変圧器5の二次側に設けられた模擬インピーダンス9を介して接続され、調整変圧器3の出力(二次)側に設置された変流器6により、その調整変圧器3の出力電流を検出し、電圧調整継電器10からの昇降圧信号に基づいて調整変圧器3のタップ切替器2を降圧方向あるいは昇圧方向に切り替えるようにしている。絶縁油中でのタップ切替器2によるタップ切替でもって高圧配電線路の電圧変動を補償し、電圧調整器3の設置以降の高圧配電線路の電圧を基準電圧の設定範囲内に収まるように調整している。
【0024】
ここで、電圧調整器1では、タップ切替時に発生するアークによりタップ切替器2の接点(タップ)が摩耗する接点劣化、また、タップ切替器2の接点が摩耗して発生する金属粉が絶縁油中に沈殿して堆積することにより油が汚れたり、あるいは経年的に油が酸化したりすることにより絶縁信頼性が低下する油劣化、さらに、調整変圧器3の温度上昇によりその調整変圧器3を構成するコイル11と鉄心12間あるいは一次コイルと二次コイル間に介在させた絶縁紙13(図3参照)が劣化する絶縁紙劣化が発生する。
【0025】
そこで、この電圧調整器1の電気的性能や機能に直接関連する項目、つまり、接点劣化、油劣化および絶縁紙劣化に基づく劣化情報からなる寿命管理履歴の保存と書換えとが可能な記憶媒体としてのICタグ14,17を設ける。ICタグ14,17とは、情報の保存と書換えとが可能な微小ICチップを搭載したもので、搭載したアンテナを通じて情報の読み書きを無線で行うことができる。ICタグ14,17の形状としては、ラベル型、カード型、コイン型、スティック型など様々の形態のものを採用できる。
【0026】
このICタグ14は温度センサ付(以下、温度センサ付ICタグと称す)で、タップ切替器2の切り替えによる接点劣化情報および油劣化情報、調整変圧器3の温度上昇による絶縁紙劣化情報からなる寿命管理履歴を逐次蓄積する。つまり、タップ切替器2の接点消耗量と所定の相関関係にあるタップ切替動作時の負荷電流値とタップ切替器2によるタップ切替動作回数とに基づく情報を接点劣化情報とする。なお、タップ切替器2の接点が摩耗して発生する金属粉が絶縁油中に沈殿して堆積することにより油が汚れることから、タップ切替動作時の負荷電流値とタップ切替器2によるタップ切替動作回数とに基づく情報を油劣化情報とする。また、定常時の負荷電流値により算出された発熱量と調整変圧器3の絶縁紙13またはコイル11の温度上昇とに基づく熱的ストレスの履歴を絶縁紙劣化情報とする。
【0027】
前述したタップ切替動作時の負荷電流値は、調整変圧器3の出力電流を変流器6で検出することにより得られる。また、タップ切替器2によるタップ切替動作回数は、そのタップ切替器2に設けられたカウンタ(図示せず)の出力により得られる。調整変圧器3の制御部4では、タップ切替動作時の負荷電流値とタップ切替器2によるタップ切替動作回数とに基づいて、接点劣化情報および油劣化情報をA/D変換部15,16でデジタル化し、温度センサ付ICタグ14に保存する。
【0028】
一方、定常時の負荷電流値により算出された発熱量は、変流器6により検出されたタップ切替動作時の負荷電流値に基づいて調整変圧器3の制御部4で演算することにより得られる。また、調整変圧器3の絶縁紙13またはコイル11の温度上昇は、図3(a)に示すように調整変圧器3の鉄心12とコイル11間あるいは一次コイルと二次コイル間に介在する絶縁紙13の一部に取り付けられた温度センサ付ICタグ14により検出される。なお、絶縁紙劣化情報を得るためには、温度センサ付ICタグ14を絶縁紙13に直接的に取り付けることが好ましいが、調整変圧器3の構造上、温度センサ付ICタグ14を絶縁紙13に取り付けることが困難であれば、図3(b)に示すようにその温度センサ付ICタグ14をコイル11の外周面などの温度上昇部位に取り付けるようにしてもよい。この温度センサ付ICタグ14に保存された温度情報を無線で調整変圧器3の制御部4に送信する。
【0029】
接点劣化情報と油劣化情報は、タップ切替器2の接点消耗量とタップ切替時の負荷電流値とが所定の相関関係にあり、かつ、そのタップ切替時の負荷電流値が切替時の負荷状態によって異なることから、所定の電流値を基準として実際のタップ切替動作回数を劣化判定上のタップ切替動作回数に換算する必要がある。そこで、調整変圧器3の制御部4では、演算部18で、所定の電流値を基準として実際のタップ切替動作回数を劣化判定上のタップ切替動作回数に換算する処理を実行する。
【0030】
また、絶縁紙劣化情報についても、調整変圧器3の絶縁紙13またはコイル11の温度上昇の程度に応じて劣化状態が異なることから、所定の温度を基準として実際の使用年数を劣化判定上の使用年数に換算する必要がある。そこで、調整変圧器3の制御部4では、演算部19で、所定の温度を基準として実際の耐用年数を劣化判定上の耐用年数に換算する処理を実行する。
【0031】
以上のようにして得られた接点劣化情報、油劣化情報および絶縁紙劣化情報からなる寿命管理履歴を温度センサ付ICタグ14に保存する。調整変圧器3の制御部4では、この温度センサ付ICタグ14に蓄積された寿命管理履歴から、接点劣化情報および油劣化情報に基づくタップ切替動作回数が限界値に達したか否かを判定部20で判定し、また、絶縁紙劣化情報に基づく温度上昇による耐用年数が限界値に達したか否かを判定する。そして、温度センサ付ICタグ14に累積された寿命管理履歴に基づく電圧調整器1の劣化情報が保全基準に達した時点で、その劣化情報を、送信部21により、調整変圧器3の制御部4あるいは電圧調整器1の周辺機器を子局とする遠方監視制御システムの親局にデータ伝送する。その親局では、電圧調整器1の電気的性能や機能に直接関連する項目について的確な劣化診断を行うことが可能となる。なお、温度センサ付ICタグ14は電圧調整器1と一体不可分であることから、移設などによる電圧調整器1の取替えにも容易に対応可能である。
【0032】
また、前述の温度センサ付ICタグ14は、図4に示すように調整変圧器3からの漏れ磁束を検出する誘導コイル31と、その誘導コイル31から出力される誘導電流を整流する整流器32と、その整流器32から出力される直流電力を貯蔵して温度センサへ給電する電気二重層コンデンサ33とが内蔵されたものを使用することが可能である。
【0033】
このように誘導コイル31、整流器32および電気二重層コンデンサ33を温度センサ付ICタグ14に内蔵させれば、調整変圧器3からの漏れ磁束を利用することにより電気二重層コンデンサ33を温度センサ付ICタグ14の駆動電源とすることが可能となる。この温度センサ付ICタグ14の駆動電源として電気二重層コンデンサ33を用いることで、二次電池などのバッテリを設置する必要がないので、温度センサ付ICタグ14を調整変圧器3に組み込むことが容易となり、移設などによる電圧調整器1の取替えにも容易に対応できる。
【0034】
以上の実施形態では、調整変圧器3の絶縁紙13またはコイル11に取り付けられた温度センサ付ICタグ14に、接点劣化情報、油劣化情報、絶縁紙劣化情報を含む電圧調整器の劣化情報からなる寿命管理履歴を逐次蓄積するようにした場合について説明したが、温度センサ付ICタグ14に温度情報のみを蓄積する場合には、図2に示すように調整変圧器3の絶縁紙13またはコイル11に温度センサ付ICタグ14を取り付けると共に、接点劣化情報、油劣化情報、絶縁紙劣化情報を含む電圧調整器1の劣化情報からなる寿命管理履歴を蓄積するICタグ17を、前述の温度センサ付ICタグ14とは別に調整変圧器3の制御部4に設けるようにしてもよい。なお、このICタグ17における電圧調整器1の劣化情報蓄積機能は、前述の温度センサ付ICタグと同様であるため、重複説明は省略する。
【0035】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る寿命管理機能付電圧調整器の実施形態で、電圧調整器およびその制御部の概略構成図である。
【図2】本発明に係る寿命管理機能付電圧調整器の他の実施形態で、電圧調整器およびその制御部の概略構成図である。
【図3】図1および図2の電圧調整器の調整変圧器で、(a)(b)は温度センサ付ICタグの取り付け二例を示す概略構成図である。
【図4】図1および図2の温度センサ付ICタグの給電回路を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
1 電圧調整器
2 タップ切替器
3 調整変圧器
4 制御部
11 温度上昇部位(コイル)
13 温度上昇部位(絶縁紙)
14 記憶媒体(温度センサ付ICタグ)
17 記憶媒体(ICタグ)
31 誘導コイル
32 整流器
33 電気二重層コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線路の途中に設置され、複数タップのタップ切替器を有する調整変圧器を内蔵し、その調整変圧器のタップ切替器を絶縁油中で切り替えることにより前記配電線路の電圧変動を補償する電圧調整器であって、前記電圧調整器の劣化情報からなる寿命管理履歴の保存と書換えとが可能な記憶媒体を備えたことを特徴とする寿命管理機能付電圧調整器。
【請求項2】
前記電圧調整器の劣化情報からなる寿命管理履歴は、タップ切替器の切り替えによる接点劣化情報および油劣化情報、あるいは、調整変圧器の温度上昇による絶縁紙劣化情報のうちの少なくともいずれか一方である請求項1に記載の寿命管理機能付電圧調整器。
【請求項3】
前記記憶媒体は、調整変圧器の温度上昇部位に取り付けられた温度センサ付ICタグである請求項1又は2に記載の寿命管理機能付電圧調整器。
【請求項4】
前記温度センサ付ICタグは、調整変圧器からの漏れ磁束を検出する誘導コイルと、その誘導コイルから出力される誘導電流を整流する整流器と、その整流器から出力される直流電力を貯蔵して温度センサへ給電する電気二重層コンデンサとが内蔵されている請求項3に記載の寿命管理機能付電圧調整器。
【請求項5】
前記記憶媒体は、調整変圧器の制御部に設けられたICタグである請求項1又は2に記載の寿命管理機能付電圧調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−236867(P2008−236867A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70881(P2007−70881)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】