説明

封止シート及びこれを用いた液体吐出ヘッド並びにインクジェット装置

【課題】液体の封止(シール)機能と検出機能とを両立させた封止シートを提供する。
【解決手段】液体の漏出及び外部からの液体の浸入のうち少なくとも一方を抑止するための封止シート(10)であって、被覆対象領域(40)を覆う液体不透過性のフィルム部材(12)の上に、液漏れや液体浸入を検知する手段としての電気配線(22,24,32,34)が形成されている。電気配線に液体が接触することによって電気抵抗が変化すると、その抵抗値の変化に応じた電気信号が電気配線を通じて得られる。フィルム部材(12)には、樹脂又は金属を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液漏れや外部からの液浸入等を抑止するための液体遮蔽(シール)用の封止シート及びこれを適用した液体吐出ヘッド並びにインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリー液などの酸性液の液漏れを検知するための液漏れセンサ及びこれに用いられる電気絶縁材が開示されている。同文献1の液漏れセンサはシート状のベース部材上に帯状の第1の導電体と第2の導電体とが間隔を開けて平行に配置され、その上を電気絶縁材の被覆層で被覆した構造からなる。この被覆層はバッテリー液に反応して電気絶縁性が低下する材料で構成されている。
【0003】
また、同文献1には、酸性液を透過できる第1の導電体層と第2の導電体層との間に電気絶縁材からなる接着層が配置され、この電気絶縁材が酸性液に反応して絶縁性が低下するように構成された液漏れセンサの形態が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−95224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、バッテリー液の外部漏出を電気的に検知するための回路構成を提案しているが、特許文献1の液漏れセンサは、液を透過できる部材によって構成され、被覆層にはバッテリー液と反応して溶解する材料が用いられており、当該センサ自体に液漏れを阻止する封止(シール)部材としての機能は無い。
【0006】
例えば、インクジェットヘッドにおいては、ヘッド構造における内部流路からの液体(インクや流路洗浄液)等の漏出を防止する必要がある。また、インク吐出によって汚れたノズル面(吐出面)に洗浄液を付与してノズル面をクリーニングする場合があるが、この洗浄液や既に吐出したインク等が外部からヘッド内部に浸入して、圧電素子や駆動回路配線上に付着すると、吐出回路系が故障するという問題がある。
【0007】
したがって、ヘッド内部からの液漏れや外部からの液浸入に対しては十分な対策が必要とされ、仮にこれら液漏れや液浸入が生じたとしても、かかる異常を早期に検知したり、漏出・浸入現象の進行を遅らせたりすることができる封止機構が求められる。このような課題は、インクジェットヘッドに限らず、液体を扱う様々な装置、液体を用いる環境下で使用される装置、電子機器等に関して共通するものである。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、液体の封止(シール)機能と封止の破れ(リーク)を検出する機能とを両立させた封止シートを提供することを目的とし、併せて、その封止シートを用いた液体吐出ヘッド並びにインクジェット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係る封止シートは、液体の漏出及び外部からの液体の浸入のうち少なくとも一方を抑止するための封止シートであって、被覆対象領域を覆う液体不透過性のフィルム部材と、前記フィルム部材上に形成され、液体との接触によって生じる電気抵抗の変化に応じた電気信号が得られる電気配線と、を備える。
【0010】
本発明によれば、封止すべき領域を覆うに足る被覆面積を有する液体不浸透性のフィルム部材の上に、液漏れ又は液浸入、若しくはその両方を検知するための電気配線が形成されている。本発明の封止シートは、フィルム部材自体が液体遮蔽の機能を持ち、封止すべき領域の界面を被覆することができる。また、仮に、シール効果が破られ、液漏れや液浸入が生じたときには、電気配線を通じてその異常を早期に検知することができる。
【0011】
他の発明態様については、明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液体遮蔽(シール)部材としての機能と、液漏れ又は液浸入、若しくはその両方を検知するリーク検出機能とを併せもつ封止シートが得られる。
【0013】
また、この封止シートを適用した液体吐出ヘッドによれば、液漏れや外部からの液浸入を防止でき、信頼性の高い液体吐出ヘッドを得ることができる。
【0014】
さらに、かかる液体吐出ヘッドを用いたインクジェト装置によれば、液漏れや液浸入などの異常が検知された場合に、警告を発したり、ヘッドの交換時期をユーザに知らせたりするなど、適切な制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る封止シートの構成例を模式的に示した図
【図2】封止シートを被覆対象物に貼り付ける様子を示した模式図
【図3】封止シートの配線部の周辺に接着剤の無い空間を形成する例を示した平面模式図
【図4】フィルム部材の上に接着剤を直接パターニングする製造プロセスの説明図
【図5】フィルム部材の上にフォトリソグラフィーによって壁部を形成し、その後接着剤を転写する製造プロセスの説明図
【図6】金属フィルムを用いる場合における電極の形成方法を示す説明図
【図7】第2実施形態に係る封止シートの構成例を模式的に示した図
【図8】第2実施形態に係る封止シートにおいて配線部の周辺に接着剤の無い空間を形成する例を示した平面模式図
【図9】第3実施形態に係る封止シートの構成を模式的に示した図
【図10】第3実施形態に係る封止シートの櫛型検知電極の構造を示す分解斜視図
【図11】図10のA−A’線に沿う断面図
【図12】図12(a)は図10に示した封止シートの最表面の平面図、図12(b)は最表面から2層目に繋がるビアが形成されている面の水平断面図、図12(c)は2層目に形成された配線パターンを示す図
【図13】本発明の実施形態に係る封止シートが適用されるインクジェットヘッドの斜視図
【図14】ヘッドモジュールをハウジングに取り付ける様子を示した拡大図
【図15】ヘッドモジュールにおけるノズル面の平面図
【図16】ヘッドモジュールの斜視図
【図17】ヘッドモジュールにおける吐出デバイス基板の内部構造を示す断面図
【図18】封止シートが貼着されたヘッドモジュールの外観図
【図19】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図
【図20】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係る封止シートの構成例を模式的に示した図である。この封止シート10は、図示せぬデバイスや機器等における内部からの液漏れと外部からの液の浸入を防ぐ必要のある部分に貼着される液体遮蔽(シール)用の部材であり、被覆対象物(不図示)の外表面に後付けで適用することができる。
【0018】
封止シート10は、液体を透過させない材料(液体不透過性の材料)で構成されたフィルム部材12の上に、内部からの液漏れを検知するための内部漏洩検知電極20としての電気配線22、24と、外部からの液浸入を検知するための外部浸入検知電極30としての電気配線32、34とが形成された構成を有する。
【0019】
図中破線で囲んだ矩形の領域(符号40)が封止すべき界面を覆う領域(以下、「封止領域」という。)である。ここでは説明の便宜上、矩形の封止領域40を例示しているが、封止すべき領域の形状は特に限定されず、様々な形態があり得る。フィルム部材12は、封止領域40を含む被覆対象領域を被覆するに足る大きさ及び形状となるように、封止領域40の形状に合わせて、適宜の大きさ及び形状に設計される。
【0020】
フィルム部材12としては、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂フィルム、或いは、ステンレス鋼(SUS)、アルミ(Al)に代表される延伸金属箔などの金属フィルムを用いることができる。ここに例示した材料以外の液体不透過性の材料を用いることも可能である。フィルム部材12の膜厚は数μm〜数十μmの範囲で適宜の膜厚とすることができる。また、フィルム部材12は、単一の材料による単層構造で構成されてもよいし、同一材料による多層構造、或いは、異種材料による多層構造で構成されてもよい。
【0021】
フィルム部材12を用いて構成された封止シート10は、それ自体が液体の透過を阻止するシール(封止)部材として機能するシート状(フィルム状)の部材であり、封止領域40を覆ってこれを塞ぐように被覆対象物に貼り付けられるが、当該封止シート10の接着界面を通じて液の漏洩や外部からの液の浸入が起こった場合には、それらを電気的に検知することが可能なセンサ機能(検知用の回路構成)を備える。
【0022】
内部漏洩検知電極20は、プラス(+)極の電気配線22とマイナス(−)極の電気配線24とが並んで配置された電気配線対で構成されている。これら両極の電気配線22、24は、封止領域40の外側の周囲を囲い込むように環状にパターニングされている。電気配線22、24に液体が接触することによって回路の電気抵抗が低下し、この電気抵抗の変化に基づいて液漏れを検知することができる。
【0023】
また、封止領域40を囲むように形成される電気配線22、24の配線パターンは、封止領域40内からの液の漏れ出しによる流れ方向や、外部から封止領域40への液の浸入による流れ方向とは、概ね垂直に交差する配線形態であり、液の流れを電気配線22、24により堰き止める作用がある。このため、電気配線22、24自体にも液の漏れ出しや浸入を抑制する(漏出や浸入の進行を遅らせる)効果がある。
【0024】
これと同様に、外部浸入検知電極30は、プラス(+)極の電気配線32とマイナス(−)極の電気配線34とが並んで配置された電気配線対で構成されている。これら両極の電気配線32、34は、封止領域40を囲む内部漏洩検知電極20のさらに外側の周囲を囲むように、環状にパターニングされている。電気配線32、34に液体が接触することによって回路の電気抵抗が低下し、この電気抵抗の変化に基づいて外部からの液浸入を検知することができる。
【0025】
封止領域40を囲むように形成される電気配線32、34の配線パターンは、封止領域40内からの液の漏れ出しによる流れ方向や、外部から封止領域40への液の浸入による流れ方向とは、概ね垂直に交差する配線形態であり、液の流れを電気配線32、34により堰き止める作用がある。このため、電気配線32、34自体にも液の漏れ出しや浸入を抑制する(漏出や浸入の進行を遅らせる)効果がある。
【0026】
各電気配線22、24、32、34の接続端子は多端子のコネクタ46にまとめられ、コネクタ46を介して図示せぬ回路基板と電気的に接続される。具体的な電気接続の形態は特に限定されないが、例えば、コネクタ46を介して中継基板などを接続することによって配線経路を形成することができる。配線数が増加しても多端子のコネクタで一旦とりまとめ、配線端子を引き上げたあと、中継基板などを用いて所望の回路に接続することができる。
【0027】
図2は、本例の封止シート10を被覆対象物(封止するデバイス)50に貼り付ける様子を示した模式図である。封止シート10は接着剤52を介して被覆対象物50に接着される。封止シート10の片側面には接着剤52が予め塗布されていてもよいし、必要に応じて、接着剤52を付与してもよい。接着剤52は、液体の通過を抑止するシール剤としての機能を有するもの(接着兼シール剤)であることが好ましい。
【0028】
接着剤52を用いて封止シート10を被覆対象物50に貼着する場合、図2に示すように、検知電極としての電気配線22、24(又は32、34)が存在する部分には、接着剤52を施さないようにし、これら電気配線22、24(又は32、34)の配線部分の周囲に、中空の空間56を形成することが好ましい。
【0029】
図3は、配線部の周辺に形成する空間56の例を示した平面図である。図3のように、検知電極(20、30)の配線部分の周りに、接着剤52の無い中空の空間56が形成される。このような構成によれば、空間56内において両極の電気配線22、24、32、34の表面が露出した状態(むき出しの状態)となる。このため、当該空間56内に浸入した液体が電気配線22、24(32、34)に接触して、配線間の電気抵抗を低下させやすい。したがって、電気的な検出感度を高めることができる。
【0030】
また、図3の構成によれば、フィルム接着界面を伝わって液体が移動する方向(外部からの液の浸入方向、或いは内部からの液の漏れ出し方向)と略垂直方向に沿って検知電極20、30が配置されているため、その配線部の周囲に形成した空間56内に優先的に液体が浸入し、それよりも内側(若しくは外側)に液の移動が進行する時間を遅らせることができる。つまり、封止領域40の内部から液が漏洩した場合や、封止シート10の外部からフィルム接着界面を介して液が浸入した場合には、配線部の周りに形成されている空間56の流路抵抗が低いため、優先的にこの空間56に液が流入する。したがって、空間56の容積が受容できる範囲内で液が空間56内に保持され、それ以降の更なる内部への液の流入や、外部への漏出を時間的に遅らせることが可能である。
【0031】
また、この空間56には、液体の浸入が起こる危険性の低い部分に大気連通孔を設けることもできる。「液体の浸入が起こる危険性の低い部分」とは、封止シート10の使用態様によって決定される。例えば、図3に示す上下の向きを維持して被覆対象物50の鉛直面に貼付され、図3の下辺側が主として外部からの液に晒されるような使用態様の場合、図3において封止領域40の上辺よりもさらに高い位置にある空間56の上部が「液体の浸入が起こる危険性の低い部分」に相当する。
【0032】
空間56に大気連通孔を形成する形態に代えて、或いは、これと組み合わせて、空間56に窒素などのガスを充填したり、他の樹脂材料や多孔質の材料を充填しても良い。
【0033】
検知電極(20,30)を構成するプラス(+)/マイナス(−)極の配線の間隔は、適宜設計することが可能であるが、検出感度を上げるため、並びに接着剤52の無い領域を極力減らすため等の観点から、ライン(L)・アンド・スペース(S)は、例えば、L/S=10/10[μm]以上50/50[μm]以下の範囲とすることが好ましい。
【0034】
また、配線近傍における接着剤52の無いエリア(空間56)の幅(配線と直交する方向の幅)Waは、配線間隔(L/S)に応じて適宜の幅に設計することが可能である。例えば、Waは、50μm以上150μm以下の範囲で適宜設計することが好ましい。
【0035】
<<製造プロセスの例>>
上述のように、配線部分に空間56を残しながら接着剤(兼シール剤)を塗る方法の例を図4、図5に示す。図4は、スクリーン印刷或いはインクジェット法などにより、フィルム部材12上に直接、接着剤52をパターン形成するプロセス(ダイレクトパターニング)の例である。
【0036】
検知電極20(30)の配線パターンが形成されたフィルム部材12を準備し(図4(a))、当該フィルム部材12の検知電極20(30)が形成されている面と同じ面に、スクリーン印刷或いはインクジェット法によって、接着剤52をパターニングする(図4(b))。図4(b)に示した接着剤52で形成された部分が「接着層」に相当する。
【0037】
図5は、フォトリソグラフィーによる壁部の形成と接着剤の転写とを組み合わせたプロセスの例である。
【0038】
検知電極20(30)の配線パターンが形成されたフィルム部材12を準備し(図5(a))、当該フィルム部材12の検知電極20(30)が形成されている面と同じ面に、感光性材料によって壁53をパターニングする(図5(b))。感光性材料として、例えば、日本化薬社製SU8(商品名)を用いることができる。フィルム部材12上に感光性樹脂を塗布し、フォトリソグラフィーの技術によって、露光、現像の処理を行うことにより、所望のパターンを形成することができる。
【0039】
その後、このパターニングされた壁53の上面(頂面)に、接着剤52を転写する(図5(c))。例えば、ローラの表面に接着剤52を付与し、ローラ面から壁53に接着剤52を転写する。こうして、感光性材料からなる壁53の上に接着剤52が積層された積層構造からなる壁部(接着シール層)が形成される。図5(c)に示した壁53と接着剤52の積層構造からなる壁部が「接着層」に相当する。
【0040】
空間56を形成するための壁部の高さh1(図4の接着剤52の膜厚、或いは図5の感光性材料による壁53と接着剤52との積層体の厚み)と、検知電極(20又は30)の配線の高さ(厚み)h2の関係は、被覆対象物50の表面が絶縁体であれば、両者が同じ高さ(h1=h2)、若しくは配線部分の方が低い構成(h1>h2)のどちらでもよいが、被覆対象物50の表面が導体である場合は、配線部分の高さh2が壁の高さh1よりも低い方が望ましい。
【0041】
また、図4、図5で説明したような方法によって、フィルム部材12上に接着シール層を形成しておき、この接着シール層を形成した面を図示せぬ剥離シートで被覆するなどの構成を採用することができる。かかる態様によれば、必要に応じて剥離シートを分離して接着シール層を露出させ、被覆対象物に封止シートを貼り付けることができる。このような形態の封止シートは、後付の適用が可能なシール部材として、簡便な手段である。
【0042】
<金属フィルムが用いられる場合の構成>
フィルム部材12は、被覆対象物50であるデバイス内への水蒸気の流入も防ぐことができることが望ましく、アルミ箔やステンレス箔のような金属箔(金属フィルム)で構成することができる。フィルム部材12として、金属箔を用いる場合、図6に示すように、プラス(+)極又はマイナス(−)極のどちらか一方の電極は、金属箔から絶縁されているような構成にすることが望ましい。図6では、プラス(+)極の電気配線22(又は32)が絶縁体層54を介して金属箔のフィルム部材12から電気的に絶縁されている構成を例示した。ただし、図6の構成に代えて、マイナス(−)極の電気配線24(又は34)とフィルム部材12との間に絶縁体層を介在させる構成も可能である。
【0043】
また、フィルム部材12は、金属フィルム、樹脂フィルムをそれぞれ単独で用いる形態に限らず、金属フィルムと樹脂フィルムとを適宜組み合わせて(例えば、複数層に重ねた積層構造として)、フィルム部材12を構成してもよい。
【0044】
<第1実施形態の作用効果>
第1実施形態に係る封止シート10は、被覆対象物50の封止領域40を覆って、これを塞ぐように対象物に貼り付けられ、シールフィルムとして機能する。その一方、何らかの理由により、フィルム部材12を持ってしても封止領域40からの液体の漏洩を防げなかった場合には、接着界面を伝わる液体によって内部漏洩検知電極20の+/−両極の電気配線22、24がショートする。このため電気配線22、24の電気抵抗を測定することによって、漏洩を検知することができる。
【0045】
液が電気配線22、24間を跨ぐと、電気抵抗は小さくなる。電気配線22、24間に液が存在しなければ、電気抵抗はある高い値を示す(実質的にオープンの状態となる)。したがって、電気抵抗の差によって、液の有無を判別することができ、抵抗値が下がったら異常(内部からの漏れ)と判断できる。すなわち、電気配線22、24を通じて得られる電気信号から電気抵抗値を測定し、その測定結果が正常の範囲(予め設定された許容範囲)から外れた場合に、異常と判断してエラー信号を発することができる。
【0046】
また、接着界面を伝わって外部から液体が浸入し、外部浸入検知電極30の+/−両極の電気配線32、34がショートする。このため電気配線32、34の電気抵抗を測定することによって、外部からの液の浸入を検知することができる。
【0047】
液が電気配線32、34間を跨ぐと、電気抵抗は小さくなる。電気配線32、34間に液が存在しなければ、電気抵抗はある高い値を示す(実質的にオープンの状態となる)。したがって、電気抵抗の差によって、液の有無を判別することができ、抵抗値が下がったら異常(外部からの液浸入)と判断できる。すなわち、電気配線32、34を通じて得られる電気信号から電気抵抗値を測定し、その測定結果が正常の範囲(予め設定された許容範囲)から外れた場合に、異常と判断してエラー信号を発することができる。
【0048】
本実施形態によれば、液漏れや液浸入による異常を早期に検知することができる。
【0049】
<変形例1>
図1〜図6の例では、内部からの漏洩と外部からの浸入(流入)を個別に識別するために、内部からの液漏れを検知する+/-極の電気配線(22,24)の系統と、外部からの液侵入を検知する+/-極の電気配線(32,34)の系統と、を含んだ2系統の検知電極(検知回路)を搭載した例を述べたが、検知用の電極対の配線形態は、封止すべきデバイスの部位や封止すべき界面の形状等に応じて自由に設計することができる。
【0050】
また、内部漏洩を検知する検知電極と、外部浸入を検知する検知電極とのうち、いずれか一方を省略する形態も可能である。例えば、内部からの液漏れのみ検知できればよい場合には、外部浸入検知電極30を省略することができる。また、外部からの液侵入のみを検知できればよい場合には、内部漏洩検知電極20を省略することができる。
【0051】
或いは、内部漏洩検知電極20、外部浸入検知電極30の少なくとも一方について、漏洩箇所や浸入箇所を特定するために、複数の系統の+/-極の電気配線を形成する態様も可能である。
【0052】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係る封止シートの要部構成図である。図7中、図1〜図6で説明した第1実施形態と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0053】
図7に示した封止シート70は、外部からの浸入箇所を特定するために、外部浸入を検出するための回路として、複数の系統の電極対が設けられている。図7の例では、封止領域40に対し、図7における上部方向からの液体の浸入を検知するための電極対(符号32、34A)からなる検知電極30Aと、側面方向からの液の浸入を検知するための電極対(32、34B)からなる検知電極30Bと、下面方向からの液の浸入を検知するための電極対(32、34C)からなる検知電極30Cと、が左右対称的に設けられている。
【0054】
すなわち、図7に示した封止シート70は、外部浸入検知回路として6系統の電気配線を有しており、右上部方向からの浸入、右側面方向からの浸入、右下面方向からの浸入、左下面方向からの浸入、左側面方向からの浸入、左上部方向からの浸入、を区別して検知することが可能である。
【0055】
なお、図7ではコネクタ46の記載を省略したが、図1で説明した例と同様に、各電気配線22、24、32、34A〜34Cの端部は、図示せぬ多端子のコネクタ(ここでは12ピン以上のコネクタ)にまとめられ、外部に取り出す構成となっている。
【0056】
図7では、プラス(+)電極の電気配線32を各系統共通にして、マイナス(−)電極の電気配線34A、34B、34Cを分割したが、これとは逆に、マイナス(−)電極の電気配線を共通にして、プラス(+)電極の電気配線を系統毎に分割する形態も可能である。
【0057】
図8は、図7に示した第2実施形態の封止シート70において接着剤の無い空間56を形成する場合の構成例を示す図である。図8において、図3、図7で説明した例と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0058】
図8に示すとおり、複数の系統の検知電極30A、30B、30C毎に、それぞれ配線部の周りに空間56A、56B、56Cが形成されている。このように、各系統の配線対毎に、それぞれ検知電極の周囲に接着剤52の無い空間56A、56B、56Cを形成することにより、検出感度の向上、並びに液漏れ及び液浸入の時間遅れを実現できる。
【0059】
なお、図7及び図8では、外部浸入検知回路について、複数の系統を設けたが、内部からの液漏れについても、検知回路を複数系統化することによって、内部リーク箇所の特定が可能な構成とすることができる。
【0060】
<第3実施形態>
図9は第3実施形態に係る封止シート80の構成を模式的に示した図である。図9の例において、図1〜図6で説明した例と同一又は類似の構成については、同一の符号を付しその説明は省略する。図9ではコネクタ46の記載を省略しているが、電気配線の端部は図1と同様に、図示せぬ多端子のコネクタにまとめられて引き出される。
【0061】
図9の封止シート80は、プラス(+)極の電気配線82とマイナス(−)極の電気配線84とがそれぞれ櫛歯型に形成され、両極の電極がフィルム部材12の表面上で交互に並んで配置される形態となっている。これら電気配線82、84によって外部浸入検知電極30が構成される。
【0062】
なお、図9は検知電極の配線パターンの概念図を示しており、+極の櫛型電極(符号82)と、−極の櫛型電極(符号84)とが交差しているように描かれているが、実際には、これら両極の配線パターンは、フィルム面に垂直な方向(厚み方向)について層を異ならせて立体的に交差しているため、両者は接しておらず、両極の電極間には絶縁層が介在している。
【0063】
図10は図9に示した櫛型の検知電極の立体的な構成例を示す模式図である。図11は図10のA−A’線に沿う断面図である。図12(a)は図10の最表面(1層目)の平面図、図12(b)は最表面の電極と下層(2層目)の電極とを繋ぐビアの平面図、図12(c)は図10における2層目に形成された電極パターンの平面図である。
【0064】
図10〜図12に示したように、封止シート80のフィルム部材12は、第1フィルム86と第2フィルム87とが貼り合わされた2層構造を有し、第1フィルム86の最表面に+極の電気配線82と−極の電気配線84とが露出する。−極の電気配線84は、第1フィルム86の最表面において櫛歯状のパターンに形成されている。また、第1フィルム86の最表面には、+極の電気配線82としての複数本のライン状電極82Aが形成されている。
【0065】
第1フィルム86には、各ライン状電極82Aに繋がるビア82Bが形成されており、2層目の第2フィルム87上にはビア82Bを介して各ライン状電極82Aが共通に接続される+極の配線パターン82Cが形成されている。第1フィルム86の最表面に形成された各ライン状電極82Aはそれぞれ第1フィルム86を貫くビア82Bを介して2層目の配線パターン82Cに接続されている。この2層目の配線パターン82Cを介して接続端子(不図示)へと配線を引き出す構成となっている。ライン状電極82A、ビア82B、配線パターン82Cの組み合わせによって+極の電気配線82が構成される。
【0066】
図9〜図12に示した第3実施形態に係る封止シート80は、櫛歯状に構成された複数本の+/−極の電極が最表面において交互に並んで配置された構成となっている。このように微細配線化することで、検出感度は一層向上させることができる。また、このように多数の配線が平行に並んだ配線形態は、フィルム面(接着界面)に沿って液体が浸入する方向と配線の方向とが概ね一致するため、配線に沿って液が移動しやすい(液体を呼び込みやすい)。したがって、封止シート80の形態は、外部からの液浸入に対して配線部分に液を導きやすく、外部からの液浸入に対して早期に異常を検知することが可能である。
【0067】
なお、図9では、内部漏洩検知電極20を省略したが、第1実施形態の封止シート10と同様に、内部漏洩検知電極20を備えることができる。
【0068】
<変形例2>
フィルム部材上に内部漏洩検知電極と外部浸入検知電極とを設ける場合、これらの検知電極は必ずしもフィルム部材の同じ側の面に設ける形態に限定されない。例えば、フィルム部材12の片側面(接着面側)に内部漏洩検知電極を形成し、反対側の面に外部浸入検知電極を形成する態様も可能である。封止シートのさらに外側を被覆するように別途、カバー部材などが設けられる場合など、封止シートの外表面が直接的に液に晒される可能性が低い使用形態においては、フィルム部材の接着面と反対側に検知電極を設ける構成を採用することができる。
【0069】
<変形例3>
上述の実施形態では、フィルム部材12の片側面に接着剤52による接着層を備えた封止シートを例示したが、接着剤52を有していない封止シートの形態も可能である。接着剤52による接着層が予め形成されていない封止シートを使用する場合には、必要に応じて接着面に接着剤を塗布すればよい。
【0070】
<インクジェットヘッドの構成例>
次に、本実施形態に係る封止シートが適用されるインクジェットヘッドの構成例について説明する。図13は本発明の実施形態に係る封止シートが適用されるインクジェットヘッドの斜視図である。図13では、インクジェットヘッド110の下方(斜め下方向)から吐出面を見上げた様子が図示されている。このインクジェットヘッド110は、インクジェット印刷機の描画部に設置されるプリントヘッドであり、複数個のヘッドモジュール112を用紙幅方向に並べて繋ぎ合わせて長尺化したフルライン型のバーヘッド(シングルパス印字方式のページワイドヘッド)となっている。ここでは17個のヘッドモジュール112を繋ぎ合わせた例を示しているが、モジュールの構成、モジュールの個数及び配列形態については、図示の例に限定されない。符号114は、複数のヘッドモジュール112を固定するための枠体となるハウジング(バー状のラインヘッドを構成するためのハウジング)、符号116は、各ヘッドモジュール112に接続されたフレキシブル基板である。
【0071】
図14はヘッドモジュール112をハウジング114に取り付ける様子を示した拡大図である。ヘッドモジュール112は、インク滴の吐出口となる複数のノズル122が形成された吐出面(ノズル面ともいう。)124を有する吐出デバイス基板130と、この吐出デバイス基板130を保持するハウジング140とを備える。ハウジング140の底部には、吐出デバイス基板130の両側に広がるウイング部142、142が延設されており、これらウイング部142、142の間に吐出デバイス基板130が挟まれる形で吐出デバイス基板130が配置される。両ウイング部142、142の底面には、それぞれプレート状のウイングカバー144、144が重ねられ、ウイングカバー144、144とともにウイング部142、142がハウジング114に固定されることにより、ヘッドモジュール112がバーヘッドのハウジング114に連結される。
【0072】
なお、ウイング部142の底面は、吐出デバイス基板130の吐出面124に対して、ウイングカバー144、144の厚み以上の段差を有しており、ウイングカバー144の底面と吐出面124とが同一面又は吐出面124の方が僅かに下となるように構成される。
【0073】
図14では図示が省略されているが、ヘッドモジュール112の側面のうち、バーヘッド長手方向(複数のヘッドモジュール112が並ぶ方向)の両側の側面部分に、液漏れ及び液浸入検知センサ付きの封止シート(図18の符号410参照)が貼着される。
【0074】
ヘッドモジュール112の吐出面124に形成されるノズル122の個数及びその配列形態については、特に限定されないが、図15にその一例を示す。
【0075】
図15はヘッドモジュール112におけるノズル面の平面図(吐出側から見た図)である。図15ではノズル数を省略して描いているが、1個のヘッドモジュール112のインク吐出面には、例えば、32×64個のノズル122が2次元配列されている。図15においてY方向が記録媒体(用紙)の送り方向(副走査方向)であり、X方向は記録媒体の幅方向(主走査方向)である。このヘッドモジュール112は、X方向に対して角度γの傾きを有するv方向に沿った長辺側の端面と、Y方向に対して角度αの傾きを持つw方向に沿った短辺側の端面とを有する平行四辺形の平面形状となっている。このようなヘッドモジュール112を図13のように、X方向(用紙幅方向)に複数個繋ぎ合わせることにより、用紙幅について全描画範囲をカバーするノズル列が形成され、1回の描画走査で所定の記録解像度(例えば、1200dpi)による画像記録が可能なフルライン型のヘッドが構成される。
【0076】
図16はヘッドモジュール112の斜視図(一部に断面図を含む図)である。ヘッドモジュール112は、吐出デバイス基板130における吐出面124と反対側(図16において上側)にインク供給室152とインク循環室156等からなるインク供給/循環ユニットを有している。インク供給室152は、供給管路154を介してインクタンク(不図示)に接続され、インク循環室156は、循環管路158を介して回収タンク(不図示)に接続される。
【0077】
ヘッドモジュール112のハウジング140は、内部ハウジング160と、その外側を覆う外部ハウジング162の二重構造から成る。内部ハウジング160の略中央には、インク供給室152とインク循環室156とを隔てる隔壁部材164が配置されており、当該隔壁部材164を挟んで両室の空間が分離されている。図16では図示が省略されているが、内部ハウジング160と外部ハウジング162の間にフレキシブル基板116が挟まれて、図16の上方に引き出される(図13参照)。
【0078】
図17は、ヘッドモジュール112における吐出デバイス基板130の内部構造を示す断面図である。符号314はインク供給路(供給側共通流路)、318は圧力室、316は各圧力室318とインク供給路314とを繋ぐ個別供給路(供給絞り流路)、320は圧力室318からノズル380(図15の符号122と同等)に繋がるノズル連通路、326はノズル連通路320と循環流路328(循環側共通流路)とを繋ぐ循環絞り流路(個別循環路)である。これら流路部(314,316,318,320,326,328)を構成する流路構造体310の上に、振動板366が設けられる。振動板366の上には接着層367を介して、下部電極(共通電極)365、圧電体層331及び上部電極(個別電極)364の積層構造から成る圧電素子330が配設されている。上部電極364は、各圧力室318の形状に対応してパターニングされた個別電極となっており、圧力室318毎に、それぞれ圧電素子330(「吐出エネルギー発生素子」に相当)が設けられている。
【0079】
インク供給路314は、図16で説明したインク供給室152に繋がっており、インク供給路から供給絞り流路316を介して圧力室318にインクが供給される。描画すべき画像の画像信号に応じて、対応する圧力室318(ノズル380)に設けられた圧電素子330の上部電極364に駆動電圧を印加することによって、該圧電素子330及び振動板366が変形して圧力室318の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル連通路320を介してノズル380からインクが吐出される。
【0080】
ノズル近傍には循環絞り流路326が設けられ、吐出に使用されないインクは、循環絞り流路326を介して循環流路328へ回収される。循環流路328は、図16で説明したインク循環室156につながっており、循環絞り流路326を通って常時インクが循環流路328へ回収されることにより、非吐出時におけるノズル近傍のインクの増粘を防止する。
【0081】
ノズル380が形成されたノズルプレート384、流路構造体310、振動板366、圧電素子330を含んだ積層構造体によって基板化された部分(吐出デバイス構造体)が「吐出デバイス基板130」に相当する。なお、圧電素子330の上部には、圧電素子330の変位を許容する空間355を確保しつつ、圧電素子330の上部を覆う中間プレート356(ピエゾカバープレートともいう。)が配置される。
【0082】
図18は、ヘッドモジュール112の側面部分に封止シート410が貼着された様子を示す図である。図18に示すようにヘッドモジュール112の側面部分に、封止シート410が貼着される。封止シート410としては、図1〜12で説明した封止シート10、70、80のいずれの構成を採用してもよい。
【0083】
図18では、ヘッドモジュール112の片側の側面部のみを図示したが、同図に現れていない反対側の側面部分にも同様に封止シート410が貼着されている。図16及び図17で説明したとおり、ヘッドモジュール112の吐出デバイス基板130は積層構造を有している。このような吐出デバイス基板130は、積層構造体の端面部分から液が漏れ出し易く、また、この端面部分から液が浸入しやすい傾向がある。したがって、積層構造体の端面を被覆するように封止シート410を適用することが好ましい。本実施形態によれば、ヘッドモジュール112における吐出デバイス基板130の端面部分を封止すべき界面の領域(封止領域)とし、当該封止領域を覆うように封止シート410が貼着される。
【0084】
このような構成により、内部からの液漏れ並びに外部からの液浸入を抑止できるとともに、液漏れや液浸入が発生した際には、これを電気的に検知することができ、その検知信号を利用して、警告を発したり、装置を停止させたりするなど、適切な制御を行うことが可能になる。
【0085】
<インクジェット記録装置の構成例>
上述した本発明の実施形態によるインクジェットヘッド110を適用したインクジェット記録装置の例を説明する。
【0086】
図19は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置600の構成図である。このインクジェット記録装置600は、描画部616のドラム(描画ドラム)670に保持された記録媒体624(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する直接描画方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体624上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体624上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたドロップオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0087】
図示のように、インクジェット記録装置600は、主として、給紙部612、処理液付与部614、描画部616、乾燥部618、定着部620、及び排紙部622を備えて構成される。
【0088】
(給紙部)
給紙部612には、給紙トレイ650が設けられ、この給紙トレイ650から記録媒体624が一枚ずつ処理液付与部614に給紙される。本例では、記録媒体624として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0089】
(処理液付与部)
処理液付与部614は、記録媒体624の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部616で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0090】
処理液付与部614は、給紙胴652、処理液ドラム654、及び処理液塗布装置656を備えている。処理液ドラム654は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)655を備え、記録媒体624の先端を保持できるようになっている。
【0091】
処理液塗布装置656は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム654上の記録媒体624に処理液を転写するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置656によれば、処理液を計量しながら記録媒体624に塗布することができる。ローラによる塗布方式に代えて、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
【0092】
処理液付与部614で処理液が付与された記録媒体624は、処理液ドラム654から中間搬送部626を介して描画部616の描画ドラム670へ受け渡される。
【0093】
(描画部)
描画部616は、描画ドラム670、用紙抑えローラ674、及びインクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yを備えている。描画ドラム670は、処理液ドラム654と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)671を備える。描画ドラム670に固定された記録媒体624にインクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yからインクが付与される。
【0094】
インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yは、それぞれ、記録媒体624における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッドであり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各ヘッド(672M,672K,672C,672Y)の構成については、図13乃至図18で説明したとおりである。各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yは、ヘッドモジュール112を複数個つなぎ合わせて長尺化したものであり、それぞれのヘッドモジュール112の両端面には封止シート410が貼着されている(図18参照)。
【0095】
各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yは、記録媒体624の搬送方向(描画ドラム670の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0096】
描画ドラム670上に密着保持された記録媒体624の記録面に向かって各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体624上での色材流れなどが防止され、記録媒体624の記録面に画像が形成される。
【0097】
描画部616で画像が形成された記録媒体624は、描画ドラム670から中間搬送部628を介して乾燥部618の乾燥ドラム676へ受け渡される。
【0098】
本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定は無い。
【0099】
(乾燥部)
乾燥部618は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、乾燥ドラム676、及び溶媒乾燥装置678を備えている。
【0100】
乾燥ドラム676は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)677を備え、この保持手段677によって記録媒体624の先端を保持できるようになっている。
【0101】
溶媒乾燥装置678は、複数のハロゲンヒータ680と、各ハロゲンヒータ680の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル682とで構成される。乾燥部618で乾燥処理が行われた記録媒体624は、乾燥ドラム676から中間搬送部630を介して定着部620の定着ドラム684へ受け渡される。
【0102】
(定着部)
定着部620は、定着ドラム684、ハロゲンヒータ686、定着ローラ688、及びインラインセンサ690で構成される。定着ドラム684は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)685を備え、この保持手段685によって記録媒体624の先端を保持できるようになっている。
【0103】
定着ドラム684の回転により、記録媒体624の記録面に対して、ハロゲンヒータ686による予備加熱と、定着ローラ688による定着処理と、インラインセンサ690による検査が行われる。
【0104】
定着ローラ688は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体624を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ688は、定着ドラム684に対して圧接するように配置されており、定着ドラム684との間でニップローラを構成するようになっている。
【0105】
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、紫外線(UV)露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット記録装置600は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ688)の代わりに、記録媒体624上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。このように、UV硬化性樹脂などの活性光線硬化性樹脂を含んだインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ688に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
【0106】
インラインセンサ690は、記録媒体624に記録された画像(テストパターンなども含む)について、吐出不良チェックパターンや画像の濃度、画像の欠陥などを計測するための読取手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
【0107】
(排紙部)
排紙部622は、排出トレイ692を備えており、この排出トレイ692と定着部620の定着ドラム684との間に、これらに対接するように渡し胴694、搬送ベルト696、張架ローラ698が設けられている。記録媒体624は、渡し胴694により搬送ベルト696に送られ、排出トレイ692に排出される。搬送ベルト696による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体624は無端状の搬送ベルト696間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト696の回転によって排出トレイ692の上方に運ばれてくる。
【0108】
また、図には示されていないが、本例のインクジェット記録装置600には、上記構成の他、各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部614に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体624の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。ヘッドメンテナンス部においては、ノズル面に洗浄液を付与する手段と、ノズル面を拭き取る払拭手段としてのウエブと、が設けられている。
【0109】
<制御系の説明>
図20は、インクジェット記録装置600のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置600は、通信インターフェース770、システムコントローラ772、メモリ774、モータドライバ776、ヒータドライバ778、プリント制御部780、画像バッファメモリ782、ヘッドドライバ784等を備えている。
【0110】
通信インターフェース770は、ホストコンピュータ786から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース770にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ786から送出された画像データは通信インターフェース770を介してインクジェット記録装置600に取り込まれ、一旦メモリ774に記憶される。
【0111】
メモリ774は、通信インターフェース770を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ772を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ774は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0112】
システムコントローラ772は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置600の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。ROM790には各種制御プログラムや各種のパラメータ等が格納されており、システムコントローラ772の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。
【0113】
メモリ774は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0114】
モータドライバ776は、システムコントローラ772からの指示に従ってモータ788を駆動するドライバである。図20では、装置内の各部に配置される様々なモータを代表して符号788で図示している。
【0115】
ヒータドライバ778は、システムコントローラ772からの指示に従って、ヒータ789を駆動するドライバである。図20では、装置内の各部に配置される様々なヒータを代表して符号789で図示している。
【0116】
プリント制御部780は、システムコントローラ772の制御に従い、メモリ774内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドット画像データ)をヘッドドライバ784に供給する制御部である。
【0117】
ドット画像データは、入力された多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(例えばRGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置600で使用するインクの各色の色データ(本例では、KCMYの色データ)に変換する処理である。
【0118】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法で各色のドットデータ(本例では、KCMYのドットデータ)に変換する処理である。
【0119】
プリント制御部780において所要の信号処理が施され、得られたドットデータに基づいて、ヘッドドライバ784を介してヘッド750(図20のインクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yを代表して符号750とした)のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0120】
プリント制御部780には画像バッファメモリ782が備えられており、プリント制御部780における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ782に一時的に格納される。また、プリント制御部780とシステムコントローラ772とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0121】
ヘッドドライバ784には、ヘッド750の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0122】
本例に示すインクジェット記録装置600は、ヘッド750の各ピエゾアクチュエータ(圧電素子330)に対して、共通の駆動電力波形信号を印加し、各ピエゾアクチュエータの吐出タイミングに応じて各ピエゾアクチュエータの個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、各ピエゾアクチュエータに対応するノズル380からインクを吐出させる駆動方式が採用されている。
【0123】
また、ユーザインターフェースとしての操作部792は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置793と表示部(ディスプレイ)794を含んで構成される。入力装置793には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置793を操作することにより、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集、情報の検索、各種指令の入力などを行うことができ、入力内容や検索結果などの各種情報は表示部794の表示を通じて確認することができる。
【0124】
各ヘッド750を構成するヘッドモジュール112にはそれぞれ封止シート410が貼り付けられている(図18参照)。各封止シート410に形成された検知電極(20、30)によって構成されるセンサ部を代表して、図20では符号810として記載した。
【0125】
センサ部810はシステムコントローラ772と接続されており、システムコントローラ772はセンサ部810からの電気信号を基に電気抵抗値の変化を判別し、ヘッドモジュール112の内部からの液漏れ(インク漏れ)、又は外部からの液浸入(インクや洗浄液の浸入)、若しくは、その両方を判断する。システムコントローラ772は、センサ部810から得られる情報を基に、複数のヘッドモジュール112のうち、どのモジュールについて液漏れ、液浸入が発生したかを識別することが可能である。
【0126】
システムコントローラ772は、センサ部810からの情報に基づき、異常を検出した場合には、表示部794に警告を表示するなど所定の制御を行う。例えば、液漏れや外部からの液浸入が検出されたヘッドモジュール112について、その場所を特定する情報が表示部794に表示され、当該ヘッドモジュール112の交換を促す警告メッセージが表される。或いはまた、液漏れや液浸入が検出された場合に、上記の警告表示に代えて、又はれと組み合わせて、印刷動作を停止させたり、電源を強制的にオフしたりするなどの制御を行うことが可能である。
【0127】
なお、本実施形態におけるシステムコントローラ772と表示部794の組み合わせが「警告手段」に相当する。本実施形態における各ヘッドモジュール112又はこれらをつなげて構成されたインクジェットヘッド110が「液体吐出ヘッド」に相当する。システムコントローラ772及びプリント制御部780の組み合わせは、液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する吐出制御手段に相当する。
【0128】
<記録媒体について>
「記録媒体」は、インクジェットヘッドから吐出された液滴によってドットが記録される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フィルム、布、不織布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
【0129】
<ヘッドと用紙を相対移動させる手段について>
上述の実施形態では、停止したヘッドに対して記録媒体を搬送する構成を例示したが、本発明の実施に際しては、停止した記録媒体(被描画媒体)に対してヘッドを移動させる構成も可能である。なお、シングルパス方式のフルライン型の記録ヘッドは、通常、記録媒体の送り方向(搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってヘッドを配置する態様もあり得る。
【0130】
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによるシングルパス印字方式に限定されず、記録媒体の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録媒体の幅方向に走査させて印字を行う方式を適用してもよい。
【0131】
<吐出方式について>
なお、インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、ピエゾアクチュエータ(圧電素子)に限らない。圧電素子の他、静電アクチュエータ、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や他の方式による各種アクチュエータなど様々な圧力発生素子(吐出エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
【0132】
<装置応用例>
上述の実施形態では、インクジェット印刷機に分類されるインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。本発明は、グラフフィック印刷用途のインクジェットシステムに限らず、電子回路基板の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体(「インク」に相当)として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルター製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを描画する装置(これらを総称して「インクジェット装置」という。)に広く適用できる。
【0133】
また、本発明の封止シートは、液体吐出ヘッドに限らず、携帯電話機、カメラ、オーディオ機器、携帯ゲーム機、パソコンその他の各種の電子機器、装置、デバイスに適用できる。
【0134】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
【0135】
<開示する発明の各種態様>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0136】
(第1態様):液体の漏出及び外部からの液体の浸入のうち少なくとも一方を抑止するための封止シートであって、被覆対象領域を覆う液体不透過性のフィルム部材と、前記フィルム部材上に形成され、液体との接触によって生じる電気抵抗の変化に応じた電気信号が得られる電気配線と、を備えることを特徴とする封止シート。
【0137】
電気配線は、液体の漏出を検知する手段として用いてもよいし、外部からの液体の浸入を検知する手段として用いてもよい。
【0138】
また、内部からの液体の漏出(漏洩)を検知する手段としての電気配線と、外部からの液体の浸入を検知する手段としての電気配線とを両方備える態様も可能である。
【0139】
(第2態様):第1態様に記載の封止シートにおいて、前記フィルム部材は、樹脂又は金属、若しくはこれらの組み合わせで構成されることが好ましい。
【0140】
(第3態様):第1態様又は第2態様に記載の封止シートにおいて、前記電気配線として、プラス極の電気配線と、マイナス極の電気配線とを有し、これら両極の電気配線対によって検知用回路が構成される態様が好ましい。
【0141】
プラス極の電極配線とマイナス極の電気配線の配線対に液が接触することにより、液を介して配線間に電流が流れ、電気抵抗が低下する。
【0142】
(第4態様):第1態様から第3態様のいずれか1項に記載の封止シートにおいて、前記フィルム部材は、封止すべき領域を有する被覆対象物に対して接着剤を介して貼着される構成とすることが好ましい。
【0143】
この態様によれば、封止シートを被覆対象物に密着させることができ、封止すべき領域を被覆することができる。また、接着面を伝って液体が浸入したり、液体が外部に漏れ出たりした場合でも、電気配線から得られる電気信号により、その異常を検知することができる。
【0144】
(第5態様):第4態様に記載の封止シートにおいて、前記フィルム部材には、封止すべき領域を有する被覆対象物に対して当該封止シートを貼着するための前記接着剤を含んだ接着層が設けられている構成とすることができる。
【0145】
予め封止シート上に接着層を設けておくことにより、後付け適用に便利な、手軽なシール手段を実現することができる。
【0146】
(第6態様):第4態様又は第5態様に記載の封止シートにおいて、前記電気配線は、前記接着剤を介して前記被覆対象物に貼着される前記フィルム部材の接着面側に形成されている構成とすることができる。
【0147】
かかる態様によれば、内部からの液漏れを効果的に検知することができる。また、封止すべき領域の界面への外部からの液浸入を効果的に検知することができる。
【0148】
(第7態様):第6態様に記載の封止シートにおいて、前記電気配線の周辺に、前記接着剤の無い空間が形成される構成とすることが好ましい。
【0149】
かかる態様によれば、液漏れ、或いは液浸入が発生した場合に、当該空間に液が優先的に流入する。これにより、検出感度を向上させることができる。また、外部への液漏れ、や内部への液浸入の時間を遅らせることができる。
【0150】
(第8態様):第1態様から第7態様のいずれか1項に記載の封止シートにおいて、前記フィルム部材には、前記電気配線として、プラス極の電気配線と、マイナス極の電気配線とが対をなす複数の系統の検知用回路が設けられている構成とすることができる。
【0151】
例えば、内部漏洩検知用の電気配線と、外部浸入検知用の電気配線と、設ける態様がある。また、内部漏洩検知用の電気配線として複数系統の配線対を設けたり、外部浸入検知用の電気配線として複数系統の配線対を設けたりする態様も可能である。
【0152】
このような態様によれば、内部漏洩と外部浸入を区別して検知したり、漏洩箇所や浸入箇所を区別して検知することが可能である。
【0153】
(第9態様):第1態様から第8態様のいずれか1項に記載の封止シートにおいて、前記電気配線は、櫛型の検知電極であり、前記フィルム部材の最表面にプラス極の電極とマイナス極の電極とが交互に並んだ配線形態となっている構成とすることができる。
【0154】
多数の電極対が並んだ櫛型の微細配線とすることにより、検出感度を向上させることができる。
【0155】
(第10態様):第1態様から第9態様のいずれか1項に記載の封止シートにおいて、前記フィルム部材に、前記電気配線の端部と接続された多端子のコネクタが設けられている構成とすることができる。
【0156】
複数本の電気配線の接続端子をコネクタにまとめ、配線を引き出す形態とすることが好ましい。
【0157】
(第11態様):液体の吐出口となるノズルと、前記ノズルに液体を導く流路と、前記ノズルから液体を吐出させるための吐出エネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、を備える液体吐出ヘッドであって、第1態様から第10態様のいずれか1項に記載の封止シートが貼着されている液体吐出ヘッド。
【0158】
この態様によれば、信頼性の高い液体吐出ヘッドを実現することができる。また、液漏れや液侵入などの異常を電気的に検知して、適切な制御を行うシステムを構築することができる。
【0159】
(第12態様):第11態様に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記液体吐出ヘッドは、複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせて構成されており、各ヘッドモジュールの側面部に前記封止シートが貼着されている構成とすることができる。
【0160】
この態様によれば、信頼性の高い長尺のラインヘッドを得ることができる。また、ヘッドモジュール単位で液漏れや液浸入の異常を早期に検知することが可能であるため、異常箇所を特定してモジュール単位での交換、修理などの対応も容易である。
【0161】
(第13態様):第11態様又は第12態様に記載の液体吐出ヘッドと、前記電気配線を通じて得られる電気信号に基づき、異常を知らせる警告手段と、を備えたインクジェット装置。
【0162】
この態様によれば、信頼性の高いインクジェット装置を実現できる。また、液漏れや液浸入による異常を早期に検知して、被害を最小限に抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0163】
10…封止シート、12…フィルム部材、20…内部漏洩検知電極、22,24…電気配線、30…外部浸入検知電極、32,34…電気配線、40…封止領域、46…コネクタ、50…被覆対象物、52…接着剤、56…空間、70…封止シート、80…封止シート、110…インクジェットヘッド、112…ヘッドモジュール、130…吐出デバイス基板、600…インクジェット記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の漏出及び外部からの液体の浸入のうち少なくとも一方を抑止するための封止シートであって、
被覆対象領域を覆う液体不透過性のフィルム部材と、
前記フィルム部材上に形成され、液体との接触によって生じる電気抵抗の変化に応じた電気信号が得られる電気配線と、
を備えることを特徴とする封止シート。
【請求項2】
前記フィルム部材は、樹脂又は金属、若しくはこれらの組み合わせで構成されることを特徴とする請求項1の封止シート。
【請求項3】
前記電気配線として、プラス極の電気配線と、マイナス極の電気配線とを有し、これら両極の電気配線対によって検知用回路が構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の封止シート。
【請求項4】
前記フィルム部材は、封止すべき領域を有する被覆対象物に対して接着剤を介して貼着されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の封止シート。
【請求項5】
前記フィルム部材には、封止すべき領域を有する被覆対象物に対して当該封止シートを貼着するための前記接着剤を含んだ接着層が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の封止シート。
【請求項6】
前記電気配線は、前記接着剤を介して前記被覆対象物に貼着される前記フィルム部材の接着面側に形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の封止シート。
【請求項7】
前記電気配線の周辺に、前記接着剤のない空間が形成されることを特徴とする請求項6に記載の封止シート。
【請求項8】
前記フィルム部材には、前記電気配線として、プラス極の電気配線と、マイナス極の電気配線とが対をなす複数の系統の検知用回路が設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の封止シート。
【請求項9】
前記電気配線は、櫛型の検知電極であり、前記フィルム部材の最表面にプラス極の電極とマイナス極の電極とが交互に並んだ配線形態となっていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の封止シート。
【請求項10】
前記フィルム部材に、前記電気配線の端部と接続された多端子のコネクタが設けられていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の封止シート。
【請求項11】
液体の吐出口となるノズルと、前記ノズルに液体を導く流路と、前記ノズルから液体を吐出させるための吐出エネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、を備える液体吐出ヘッドであって、
請求項1から10のいずれか1項に記載の封止シートが貼着されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記液体吐出ヘッドは、複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせて構成されており、各ヘッドモジュールの側面部に前記封止シートが貼着されていることを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の液体吐出ヘッドと、
前記電気配線を通じて得られる電気信号に基づき、異常を知らせる警告手段と、を備えたことを特徴とするインクジェット装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−68420(P2013−68420A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205076(P2011−205076)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】