説明

封止用エポキシ樹脂組成物およびその製造方法

【課題】成形時の流れ性に優れると共に、長期保管時のブロッキングや、成形時の流れ性の経時的な低下が抑制され、保存安定性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を必須成分として含有する封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を必須成分として含有する粉状、顆粒状、またはシート状の樹脂組成物本体と、前記樹脂組成物本体の表面を被覆する(E)微細シリカ粉とを有するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用エポキシ樹脂組成物およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、成形時の粘度が低く流れ性が良好であると共に、長期保管時の耐ブロッキンク性、保存安定性に優れ、半導体素子の封止に好適に用いられる封止用エポキシ樹脂組成物、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子部品のプリント配線板への高密度実装化に伴い、半導体装置はピン挿入型のパッケージから、表面実装型のパッケージが主流になっている。さらに表面実装型のIC、LSI等は、実装密度を高くし実装高さを低くするために、薄型のパッケージになっており、同時に、素子のパッケージに対する占有体積が大きくなってきている。また、素子の多機能化、大容量化によって、チップ面積の増大、多ピン化が進み、さらにはパッド数の増大によって、パッドピッチの縮小化とパッド寸法の縮小化、いわゆる狭パッドピッチ化も進んでいる。
【0003】
このような薄型化、狭パッドピッチ化された半導体装置を製造するために、従来用いられていたO−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いた封止用エポキシ樹脂組成物に代えて、成形時の粘度が低く流れ性が良好な封止用エポキシ樹脂組成物を用いることが検討されている。例えば、結晶性エポキシ樹脂はその融点を超えると分子間の相互作用が著しく低下し低粘度となることから、このような溶融粘度の低い結晶性エポキシ樹脂を封止用エポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂として用いることで、無機充填剤を高充填化して耐熱性、耐湿性に優れたものとしつつ、薄型化、狭パッドピッチ化された半導体装置を製造することができる。また、エポキシ樹脂としてO−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いる場合であっても、より溶融粘度の低いものを用いることにより、上記要求をある程度満たすものを得ることができる。
【0004】
一方、このような溶融粘度の低いエポキシ樹脂を用いる封止用エポキシ樹脂組成物については、例えばエポキシ樹脂とその硬化剤との反応を抑制し、成形時の流れ性を維持するために100℃以下の温度で製造されるが、このような製造温度で溶融するエポキシ樹脂を用いた封止用エポキシ樹脂組成物については、長期保管時に塊状物が発生するブロッキングや、成形時の流れ性が経時的に低下する保存安定性の問題がある。このため、例えば特定の融解挙動を示す結晶性エポキシ樹脂を用いることで、製造時の作業性を維持しつつ、ブロッキングや保存安定性を改善することが検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平9−324031号公報
【特許文献2】特開2003−160715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
封止用エポキシ樹脂組成物については、薄型化、狭パッドピッチ化された半導体装置を製造するために、これまで以上に成形時の流れ性が要求されると共に、長期保管時のブロッキングや、成形時の流れ性の経時的な低下が抑制され、保存安定性に優れることが求められている。また、封止用エポキシ樹脂組成物については、半導体装置の生産性を向上させる観点から、硬化時間の短縮が求められると共に、作業性を向上させる観点から常温において長期保管しても成形時の硬化性の劣化が少ないことが求められている。
【0006】
特に、複数のチップを積み重ねてボンディングワイヤによって接続する積層型CSP(チップサイズパッケージ)については、必然的にボンディングワイヤが長くなることから成形時に損傷しやすく、また複数のチップを1キャビティで封止する一括モールド法については、キャビティ内に十分に封止用エポキシ樹脂組成物を行き渡らせる必要があり、これらに適用される封止用エポキシ樹脂組成物にはより一層優れた成形時の流れ性が求められる。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、成形時の流れ性に優れると共に、長期保管時のブロッキングや、成形時の流れ性の経時的な低下が抑制され、保存安定性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物、およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化促進剤、および無機充填剤を必須成分として含有する樹脂組成物本体の表面を微細シリカ粉で被覆することにより、成形時の流れ性に優れると共に、長期保管時のブロッキングや、成形時の流れ性の経時的な低下が抑制され、保存安定性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物を得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を必須成分として含有する封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を必須成分として含有する粉状、顆粒状、またはシート状の樹脂組成物本体と、前記樹脂組成物本体の表面を被覆する(E)微細シリカ粉とを有することを特徴とする。
【0010】
前記(E)微細シリカ粉は、1次粒子径が5nm以上100nm以下であり、かつ嵩密度が30g/L以上80g/L以下の乾式シリカであることが好ましい。また、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、前記樹脂組成物本体100質量部に対して、前記(E)微細シリカ粉を0.01質量部以上0.2質量部以下含有することが好ましい。
【0011】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を混練して粉状、顆粒状、またはシート状の樹脂組成物本体を得る工程と、前記樹脂組成物本体の表面に(E)微細シリカ粉を被覆する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を必須成分として含有する粉状、顆粒状、またはシート状の樹脂組成物本体と、この樹脂組成物本体の表面を被覆する(E)微細シリカ粉とを有するものとすることで、成形時の流れ性に優れると共に、長期保管時のブロッキングや、成形時の流れ性の経時的な低下が抑制され、保存安定性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物とすることができる。
【0013】
また、本発明によれば、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を混練して粉状、顆粒状、またはシート状の樹脂組成物本体を得る工程と、この樹脂組成物本体の表面に(E)微細シリカ粉を被覆する工程とを有するものとすることで、成形時の流れ性に優れると共に、長期保管時のブロッキングや、成形時の流れ性の経時的な低下が抑制され、保存安定性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物について説明する。
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を必須成分として含有する封止用エポキシ樹脂組成物であって、これら(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を必須成分として含有する粉状、顆粒状、またはシート状の樹脂組成物本体と、この樹脂組成物本体の表面を被覆する(E)微細シリカ粉とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物では、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を必須成分として含有する粉状、顆粒状、またはシート状の樹脂組成物本体の表面を(E)微細シリカ粉で被覆することによって、封止用エポキシ樹脂組成物の成形時の流れ性を良好なものとしつつ、長期保管時のブロッキングや、成形時の流れ性の経時的な低下を抑制し、保存安定性に優れたものとすることができる。
【0016】
(A)成分のエポキシ樹脂としては、1分子当たり2個以上のエポキシ基を有し、半導体素子の封止用材料として一般に用いられるものであれば特に制限されるものではない。このような(A)成分のエポキシ樹脂としては、例えばビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA、ビフェノールFまたはビフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、O−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有する多官能のエポキシ樹脂、トリまたはテトラ(ヒドロキシフェニル)アルカンのエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。本発明の効果は、特に充填性、流動性、耐リフロー性の向上を目的として使用される低分子量のO−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学株式会社製ESCN−90(軟化点65℃)等)、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製YX−4000HK等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の低粘度エポキシ樹脂を使用する場合に発揮される。
【0017】
(B)成分のフェノール樹脂としては、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有し、上記(A)成分のエポキシ樹脂を硬化させることができるものであって、半導体素子の封止用材料として一般に用いられるものであれば特に制限されるものではない。このような(B)成分のフェノール樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、シクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。これらの中でも、流動注、難燃性の観点から、フェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製H−1等)やアラルキル型フェノール樹脂等が好適なものとして挙げられる。
【0018】
本発明の成形材料における(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分のフェノール樹脂の含有割合は、(A)成分のエポキシ樹脂中のエポキシ基1モルに対して、(B)成分のフェノール樹脂中のフェノール性水酸基が好ましくは0.5モル以上1.6モル以下、より好ましくは0.6モル以上1.4モル以下となるように選定される。(A)成分のエポキシ樹脂中のエポキシ基1モルに対して(B)成分のフェノール樹脂中のフェノール性水酸基が0.5モル以上であれば硬化物のガラス転移温度が良好となり、一方1.6モル以下であれば、反応性が良好となると共に、充分な架橋密度を有し、強度の高い硬化物を得ることができる。
【0019】
(C)成分の硬化促進剤としては、エポキシ基と反応してエポキシ樹脂を硬化させる化合物の硬化速度を促進させる化合物であって、トリフェニルホスフィン等のリン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が用いられる。アミン系化合物としては、硬化促進効果の観点から、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンが特に好ましい。また、イミダゾール系硬化促進剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0020】
(D)成分の無機充填剤としては、ボールミル等で粉砕した 溶融シリカ 、火炎溶融することで得られる球状シリカ 、ゾルゲル法などで製造される球状シリカ 、結晶シリカ 、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、マグネシア、マグネシウムシリケート等が挙げられる。半導体素子が発熱の大きいものの場合、熱伝導率ができるだけ大きく、かつ熱膨張係数の小さなもの、例えばアルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等を使用することが望ましい。また、これらを溶融シリカ等とブレンドして使用してもよい。なお、無機充填剤の形状は特に限定されるものではなく、例えばフレーク状、樹枝状、球状等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。これらの中でも、球状のものが、低粘度化、高充填化には最も望ましいものである。
【0021】
(D)成分の無機充填剤は、粒径が過度に大きいと狭部等への充填が困難になるだけでなく、分散性も低下して成形品が不均一になることから、最大粒径が150μmであることが好ましい。また、(D)成分の無機充填剤は、所望の粘度特性、流動特性とする観点から、平均粒径が1μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0022】
(D)成分の無機充填剤の含有量は、樹脂組成物本体全体中、好ましくは75質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上92質量%以下である。無機充填剤の含有量が75質量%以上であれば、硬化物の膨張係数を十分に低減させ、また吸水率も低減させることができ、半田リフローの際のクラックの発生を抑制することができる。一方、95質量%以下であれば適度の溶融粘度を有し、成形性が良好となる。
【0023】
(E)成分の微細シリカ粉は、上記した(A)成分〜(D)成分を必須成分として含有する粉状、顆粒状、またはシート状の樹脂組成物本体を被覆するものであり、封止用エポキシ樹脂組成物の成形時の流れ性を良好なものとしつつ、長期保管時のブロッキングや、成形時の流れ性の経時的な低下を抑制し、保存安定性に優れたものとするために用いられる。
【0024】
(E)成分の微細シリカ粉は、樹脂組成物本体に含有される(D)成分の無機充填剤に比べて十分に微細なものであり、具体的には1次粒子の平均粒径が1nm以上300nm以下の微細なシリカ粉である。1次粒子の平均粒径が1nm未満のものは製造が容易でなく、また300nmを超えると十分なブロッキング防止効果を得ることができない。(E)成分の微細シリカ粉は、ゾル・ゲル法、直接酸化法等、いずれの方法により製造されたものであってもよいが、気相反応によって得られる微細シリカ(乾式シリカ)が好ましい。
【0025】
(E)成分の微細シリカ粉は、好ましくは、1次粒子の平均粒径が5nm以上100nm以下、かつ嵩密度が30g/L以上80g/Lである。1次粒子の平均粒径が5nm未満では2次凝集しやすく、100nmを超えるとブロッキング防止効果が低下するおそれがある。また、嵩密度が30g/L未満ではブロッキング防止効果が低下するおそれがあり、80g/Lを超えると封止用エポキシ樹脂組成物のブロッキング防止効果が少なく、成形性が低下するおそれがある。
【0026】
(E)成分の微細シリカ粉は、樹脂組成物本体100質量部に対して、0.01質量部以上0.2質量部以下であることが好ましい。微細シリカ粉の含有量が少なくとも0.01質量部あればブロッキング防止効果を得ることができ、また0.2質量部程度あれば十分なブロッキング防止効果を得ることができると共に、これを超えて含有させても効果が飽和し、かえって製造時の混練性や成形時の流れ性等の他の特性が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0027】
なお、樹脂組成物本体、すなわち(E)成分の微細シリカ粉による被覆前の樹脂組成物本体には、微細シリカ粉が含有されていないことが好ましい。樹脂組成物本体の内部に含有された微細シリカ粉はブロッキング防止効果に乏しく、かえって製造時の混練性や成形時の流れ性等の他の特性を低下させるおそれがある。このように樹脂組成物本体の内部には微細シリカ粉が含有されていないことが好ましいが、樹脂組成物本体の表面を被覆するために用いた(E)成分の微細シリカ粉の一部が樹脂組成物本体の内部に含有されていても構わない。
【0028】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物、より具体的には樹脂組成物本体については、上記した(A)成分〜(D)成分に加えて、必要に応じて、かつ本発明の趣旨に反しない限度において、カップリング剤を始めとする各種添加成分を含有させることができる。
【0029】
カップリング剤は、封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物と配線板等との接着強度を向上させる等の目的で添加される。カップリング剤としては、例えば1級アミノ基、2級アミノ基、または3級アミノ基を有するシラン化合物、具体的にはエポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、フェニルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン化合物、チタン系化合物、アルミニウキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等が挙げられる。
【0030】
上記カップリング剤の中でも、充填性の観点からは、例えばγ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルエチルジエトキシシラン等の2級アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0031】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物におけるカップリング剤の含有量は、封止用エポキシ樹脂組成物(樹脂組成物本体)中、好ましくは0.03質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.10質量%以上0.25質量%以下であることが好ましい。カップリング剤の含有量が0.03質量%以上であれば配線板等との接着強度が十分なものとなり、一方5質量%以下であれば揮発分が少なく、ボイド等の充填性に関する成形不良の発生を抑制できると共に、パッケージの成形性も良好となる。
【0032】
また、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物におけるカップリング剤以外の添加成分としては、例えばシリコーンゴムやシリコーンゲル等の粉末、シリコーン変性エポキシ樹脂やフェノール樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体のような熱可塑性樹脂等の低応力化剤;臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン等の難燃剤や難燃助剤;n−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジエポキシド、フェノール、クレゾール、t−ブチルフェノール等の粘度降下用希釈剤;カーボンブラック等の着色剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーンオイル等の濡れ向上剤や消泡剤;等を適宜含有させることができる。
【0033】
次に、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を混練して粉状、顆粒状、またはシート状の樹脂組成物本体を得る工程と、この樹脂組成物本体の表面に(E)微細シリカ粉を被覆する工程とを有することを特徴とする。
【0034】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法では、まず(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を混練して粉状、顆粒状、またはシート状の樹脂組成物本体を得た後、この樹脂組成物本体の表面に(E)微細シリカ粉を被覆するようにすることで、樹脂組成物本体の表面を(E)微細シリカ粉で適切に被覆することができ、成形時の流れ性に優れると共に、長期保管時のブロッキングや、成形時の流れ性の経時的な低下が抑制され、保存安定性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0035】
(E)成分の微細シリカ粉が被覆される樹脂組成物本体の調製方法は、特に制限されるものではなく、公知の封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法を採用することができるが、例えば以下のような方法を用いることで効率よく調製することができる。
【0036】
すなわち、既に説明したような(A)成分〜(D)成分の必須成分、および必要に応じて加えられるカップリング剤やその他の各種添加剤を配合し、高速混合機等を用いて均一に混合した後、二本ロールや連続混練装置等を用いて十分に混練する。このときの混練温度は、混練作業を容易なものとしつつ特性低下を抑制する観点から、例えば50℃以上110℃以下とすることが好ましい。
【0037】
そして、得られた混練物をシート状に成形して冷却した後、所定の大きさに切断等することにより、シート状の樹脂組成物本体を得ることができる。また、混練物をシート状に成形して冷却した後、粉砕することにより粉状または顆粒状の樹脂組成物本体を得ることができる。
【0038】
その後、例えば冷却機付攪拌釜に樹脂組成物本体を入れると共に、この冷却機付攪拌釜に(E)成分の微細シリカ粉を所定量加えて攪拌混合することにより、樹脂組成物本体の表面に(E)成分の微細シリカ粉を被覆することができる。樹脂組成物本体への(E)成分の微細シリカ粉の被覆方法は、必ずしもこのような攪拌混合に限定されるものではなく、樹脂組成物本体の形状に応じて適宜選択することができ、例えば樹脂組成物本体がシート状の場合には、その表面に(E)成分の微細シリカ粉を噴霧することにより被覆してもよい。
【0039】
このようにして得られる本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、一般成形材料として用いることもできるが、薄型化、狭パッドピッチ化された半導体装置の製造に適用することで、また特に積層型CSPのように長いボンディングワイヤを有するものや、一括モールド法のようにキャビティ容積の大きいものに適用することで、ボンディングワイヤの損傷を抑制し、またキャビティ内に十分に行き渡らせることができ、従来の封止用エポキシ樹脂組成物に比べて顕著な効果を発揮する。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例を参照してさらに詳細に説明する。
なお、本発明は、これらの実施例によって制限されるものではない。
【0041】
(実施例1〜7)
表1に示すような配合割合で各成分を配合し、常温で混合(ドライブレンド)した後、80℃〜110℃で加熱混練し、冷却、粉砕して粉状の樹脂組成物本体を製造した。その後、冷却機能付混合釜に樹脂組成物本体を投入すると共に、所定の平均粒径(1次粒径)を有する微細シリカ粉を所定量投入して攪拌混合することにより、樹脂組成物本体の表面に微細シリカ粉を被覆(外添)した。なお、表1における微細シリカ粉(外添剤)の配合量は、樹脂組成物本体100質量部に対する配合量を示している。
【0042】
(比較例1〜5)
比較例1〜2、4〜5の封止用エポキシ樹脂組成物については、実施例1〜7と同様にして各成分を表1に示すような配合割合で配合し、混練、粉砕を行うことにより樹脂組成物本体を製造し、この樹脂組成物本体の表面に微細シリカ粉を被覆(外添)することなく、最終的な封止用エポキシ樹脂組成物とした。なお、比較例2の封止用エポキシ樹脂組成物については、微細シリカ粉を樹脂組成物本体に含有させるものとした。
【0043】
また、比較例3の封止用エポキシ樹脂組成物については、実施例1〜7と同様にして各成分を表1に示すような配合割合で配合し、混練、粉砕を行うことにより樹脂組成物本体を製造し、この樹脂組成物本体の表面に、微細シリカ粉を被覆(外添)する代わりに、従来の大きさの溶融球状シリカ粉を被覆(外添)させて封止用エポキシ樹脂組成物とした。
【0044】
なお、実施例および比較例の封止用エポキシ樹脂組成物の製造に用いた原材料の詳細は以下に示す通りである。
【0045】
(エポキシ樹脂)
OCN型エポキシ樹脂1:
O−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、住友化学工業株式会杜製、
商品名「ESCN−190」(エポキシ当量195、軟化点65℃)
OCN型エポキシ樹脂2:
O−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、住友化学工業株式会杜製、
商品名「ESCN−195」(エポキシ当量205、軟化点80℃)
ビフェニル型エポキシ樹脂:
ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「YX−4000H」
(エポキシ当量196、融点106℃)
臭素化エポキシ樹脂:
東都化成株式会社製、商品名「YDB−400」
(エポキシ当量375、軟化点80℃、臭素含有量48質量%)
【0046】
(硬化剤)
フェノールノボラック樹脂:明和化成株式会社製、
商品名「H−1」(軟化点80℃、水酸基当量106)
(硬化促進剤)
イミダゾール系:2−エチル−4−メチルイミダゾール、
四国化成工業株式会社製、商品名「キュアゾール2E4MZ」
【0047】
(充填剤)
結晶シリカ:龍森株式会社製、商品名「MCC−4」(平均粒径12μm)
溶融球状シリカ:電気化学工業株式会社製、商品名「FB−105」
(平均粒径10μm)
(カップリング剤)
エポキシシラン系カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、品名「Y−9669」
(ワックス)
カルナバワックス:株式会杜セラリカNODA、
商品名「精製カルナバワックスNo−1」
【0048】
(その他)
芳香族隣化合物:大塚化学株式会杜製、商品名「SPE−100」
カーボンブラック:三菱化学株式会社製、商品名「MA−600」
シリコーンオイル:信越シリコーン株式会社、商品名「X22−163C」
難燃助剤:三酸化アンチモン、日本精鉱株式会社製
【0049】
(微細シリカ粉)
平均粒径15nm品:トクヤマ株式会杜製、商品名「レオロシールQS−102」、
嵩密度50g/L、乾式シリカ
平均粒径15nm品:トクヤマ株式会杜製、商品名「レオロシールCP−102」
嵩密度100g/L、乾式シリカ
平均粒径50nm品:日本アエロジル株式会杜製、商品名「OX−50」
嵩密度130g/L、乾式シリカ
【0050】
また、無機充填剤(結晶シリカ、溶融球状シリカ)、微細シリカ粉の平均粒径の測定方法、および微細シリカ粉の嵩密度の測定方法は以下に示す通りである。
【0051】
(平均粒径)
レーザー回折粒度分布測定装置、堀場製作所製「シーラスレーザータイプ920」を用いて平均粒径を求めた。
(嵩密度)
微細シリカ粉10gを200ccのメスシリンダーに流し込み、体積を測定することにより嵩密度を算出した。
【0052】
その後、得られた実施例1〜7、および比較例1〜5の封止用エポキシ樹脂組成物について、製造時作業性、ブロッキング性、スパイラルフロー、およびワイヤー流れの評価を行った。結果を表1に示す。なお、各評価の評価方法、評価基準は以下に示す通りである。
【0053】
(ブロッキング性)
封止用エポキシ樹脂組成物を室温(25℃)、相対湿度40%または85%の環境下で24時間保管した後に取り出し、塊状物の質量を測定し、封止用エポキシ樹脂組成物全体の質量に対する塊状物の質量の割合で示した。
(製造作業性)
封止用エポキシ樹脂組成物を製造する際の混練作業性を評価した。
○:流動性に優れ混練性が良好。
△:流動性が劣るために、混練時間がやや長め。
×:流動性がさらに劣るために、混練時間が非常に長め。
(スパイラルフロー)
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー 金型を用い、封止用エポキシ樹脂組成物を175℃、成形圧力9.8MPaでトランスファー成形したときのスパイラルフロー長さを測定した。
(ワイヤー流れ)
25℃で168時間保管後の封止用エポキシ樹脂組成物を用いて評価を実施した。すなわち、2連のQFPマトリックスフレーム(試料数:20)を用い、成形温度175℃、成形圧力6.9MPaでマルチプランジャー装置を使用してトランスファー成形し、得られたQFPパッケージについてワイヤー変形の有無をX線装置により確認した。
○:ワイヤーの変形なし。
△:ワイヤーの変形あり。
×:ワイヤー切れあり。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から明らかなように、実施例1〜7の封止用エポキシ樹脂組成物については、ブロッキングが抑制されると共に、製造時作業性に優れ、ワイヤー流れも抑制されていることが認められる。これに対して、比較例1〜5の封止用エポキシ樹脂組成物については、全体的にブロッキング性が高く、ブロッキング性が低いものについては製造時作業性に劣ることが認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を必須成分として含有する封止用エポキシ樹脂組成物であって、
前記(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を必須成分として含有する粉状、顆粒状、またはシート状の樹脂組成物本体と、前記樹脂組成物本体の表面を被覆する(E)微細シリカ粉とを有することを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(E)微細シリカ粉は、1次粒子径が5nm以上100nm以下であり、かつ嵩密度が30g/L以上80g/L以下の乾式シリカであることを特徴とする請求項1記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物本体100質量部に対して、前記(E)微細シリカ粉を0.01質量部以上0.2質量部以下含有することを特徴とする請求項1または2記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填剤を混練して粉状、顆粒状、またはシート状の樹脂組成物本体を得る工程と、
前記樹脂組成物本体の表面に(E)微細シリカ粉を被覆する工程と
を有することを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−298961(P2009−298961A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156753(P2008−156753)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】