説明

封着用無鉛ガラス、封着材料、封着材料ペースト

【課題】本発明は、低融点での使用が可能で、かつ、耐水性を向上させた新規な封着用無鉛ガラスを提供する。
【解決手段】10〜55質量%のVと、1〜10質量%のPと、15〜70質量%のTeOと、0〜13質量%のZnOと、0〜13質量%のBaOと、を含有し、ZnOとBaOとはその合量ZnO+BaOが0〜13質量%の範囲であり、実質的にPbO及びFeを含有せずに、低融点での使用が可能で、かつ、耐水性を向上させた封着用無鉛ガラス、この封着用無鉛ガラスを用いた封着材料及び封着材料ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封着用無鉛ガラス、封着材料及び封着材料ペーストに係り、特に、軟化点が低く、耐水性を向上させたバナジウム系ガラスからなる封着用無鉛ガラス、それを用いた封着材料及び封着材料ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイパネルや半導体パッケージ等の電子製品、電気製品の封着部に用いる封着材料として、樹脂や低融点ガラスが用いられているが、低融点ガラスは樹脂に比べて気密性が高いという利点があるため多く用いられるようになってきている。このような低融点ガラスとしては、従来、主成分が酸化鉛を含有したものが使用されてきた(特許文献1参照)。
【0003】
ところが、近年、鉛化合物の人体や環境への有害性が問題視され、封着用ガラスにおいても酸化鉛を含有しない材料の開発が望まれ、様々な材料の検討がなされるようになってきている。
【0004】
酸化鉛を含有しない低融点ガラスとして、鉛系の封着用ガラスよりも軟化点が低いため、低温での施工が可能なバナジウム系ガラスが提案され、実用化が検討されている(例えば、特許文献2参照。)。また、軟化点(Ts)をさらに下げ、耐水性を向上させたバナジウム系ガラスも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−48430公報
【特許文献2】特開2009−221048号公報
【特許文献3】特開2010−52990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2及び3に記載されているようなバナジウム系の低融点ガラスであっても、耐水性が未だ十分ではなく、実用化するに当たっては、さらなる特性の向上が課題となっている。また、軟化点(Ts)もより低く、さらに低温域で使用できる封着用無鉛ガラスが求められている。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、低温域での使用が可能で、かつ、耐水性を向上させた新規な封着用無鉛ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解消するために、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の配合のバナジウム系ガラスが、封着用途として使用するのに十分な低融点でかつ耐水性に優れていることを見出した。すなわち、本発明の封着用無鉛ガラスは、10〜55質量%のVと、1〜10質量%のPと、15〜70質量%のTeOと、0〜13質量%のZnOと、0〜13質量%のBaOと、を含有し、ZnOとBaOとはその合量ZnO+BaOが0〜13質量%の範囲であり、実質的にPbO及びFeを含有しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の封着用無鉛ガラス、封着材料及び封着材料ペーストによれば、ガラス素材自体が低融点であって低温で封着作業ができるため、安全に封着できかつ取り扱いが容易で、さらに、封着操作時の加熱温度を十分に確保できるため、安定して封着操作が可能である。
【0010】
また、本発明の封着用無鉛ガラス、封着材料及び封着材料ペーストは、耐水性に優れているため、製品製造時の不具合の発生を抑制し、さらに、製品の経年劣化が抑制される。そのため、これらにより封着された電子製品及び電気製品は、信頼性が高く、長寿命とできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態による半導体デバイスの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態による半導体デバイスの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の封着用無鉛ガラスは、上記した通りVと、Pと、TeOと、を必須成分としたバナジウム系ガラスである。以下、この封着用無鉛ガラスの成分について詳細に説明する。
【0013】
本発明に用いられるVは、ガラス内でネットワークフォーマーとしての働きを持ち、さらに、ガラスの軟化点を下げ、溶解時のガラスに流動性を与える成分である。このVは、ガラス中に10〜55質量%の範囲で含有させるもので、20〜45質量%であることが好ましい。Vが10質量%未満では軟化点が高くなってしまい、55質量%を超えるとガラスが結晶化しやすくなってしまう。
【0014】
本発明に用いられるPは、ガラス内でネットワークフォーマーとしての働きを有する成分である。このPは、ガラス中に1〜10質量%の範囲で含有させるもので、1.5〜9質量%であることが好ましい。Pが1質量%未満ではネットワークフォーマーとしての機能が発揮されずガラス化が困難になり、10質量%を超えると軟化点が高くなったり、耐水性が低下したり、してしまう。
【0015】
本発明に用いられるTeOは、ガラスの耐水性を向上させる成分である。このTeOは、ガラス中に15〜70質量%の範囲で含有させるもので、30〜60質量%であることが好ましい。TeOが15質量%未満では耐水性を向上させる効果が有効に発揮されず、70質量%を超えると、熱膨張係数が増大してしまう。
【0016】
本発明に用いられるZnOは、ガラスの失透を抑え、ガラスの軟化点と熱膨張係数を低下させる任意の成分である。このZnOは、ガラス中に0〜13質量%の範囲で含有させる。ZnOが13質量%を超えると封着用無鉛ガラスの熱膨張係数が増大し、被封着物と封着材料との界面や封着材料内にクラックやマイクロクラックが発生し、気密封着が得られないおそれがある。
【0017】
本発明に用いられるBaOは、ガラスの失透を抑え、また、ガラスの粘性を低下させる任意の成分である。このBaOは、ガラス中に0〜13質量%の範囲で含有させる。BaOが13質量%を超えると軟化点が高くなってしまい、低温での封着が困難になってしまう。また、封着用無鉛ガラスの熱膨張係数が増大することで、被封着物と封着材料との界面や封着材料内にクラックやマイクロクラックが発生し、気密封着が得られないおそれがある。
【0018】
また、任意成分であるZnOとBaOは、これらの合量ZnO+BaOが、ガラス中に0〜13質量%の範囲で含有させる。この合量が13質量%を超えると封着用無鉛ガラスの熱膨張係数が増大し、被封着物と封着材料との界面や封着材料内にクラックやマイクロクラックが発生し、気密封着が得られないおそれがある。
【0019】
その他の成分としては、CuO、MgO、CaO、SrO等が挙げられ、本発明の効果を阻害しない範囲で含有できる。特に、CuOは化学的耐久性を向上させる成分であり、1〜6質量%含有させることが好ましい。
また、封着用無鉛ガラスの所望とする平均熱膨張係数は、140×10−7/℃以下である。140×10−7/℃超では、無機充填材を添加しても封着材料としての平均熱膨張係数を充分に低下させることが困難となる。また、封着材料の封着時の流動性の低下も招くおそれがある。好ましくは、125×10−7/℃以下であり、さらに好ましくは115×10−7/℃以下である。平均熱膨張係数の下限値は特に限定する必要はないが、敢えて限定するならば、80×10−7/℃以上が好ましく、90×10−7/℃以上がさらに好ましい。
【0020】
また、本発明の封着用無鉛ガラスは、実質的にPbO及びFeを含有しないものである。PbOは、環境及び人体への負荷が大きく、製品自体への使用が好ましくない成分である。また、Feは、軟化点(Ts)を高くし封着時の焼成温度が高くなり、これを含有させると本発明の効果を発揮し得ない。ここで、実質的に含有しないとは、ガラス中に含まれる量が0.1質量%以下をいう。
【0021】
上記のような配合とすることによって、低融点で耐水性に優れた封着用無鉛ガラスが得られる。ここで、本発明における低融点とは、封着用無鉛ガラスの軟化点が375℃以下のことであり、365℃以下が好ましく、355℃以下が特に好ましい。軟化点が低いと封着時の温度を低くできるため、低温域での封着加工が可能で、それだけ被加工物に対する熱的影響を少なくし、かつ、熱エネルギー消費を低減できる。また、低温での作業が可能となるため、安全、確実に封着操作ができる。
【0022】
また、耐水性は、封着用無鉛ガラスを45℃のイオン交換水に72時間浸漬したときの質量減少量によって評価し、質量減少量が1.0%以下となるものが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることが特に好ましい。この耐水性が低下すると、水分との接触によるガラス成分の抜け出しが生じて質量減少量が大きくなり、ガラスが変質して封着材料としての機能が損なわれる場合がある。このような場合には、経時的に製品が不良化してしまい、短寿命となることも考えられる。なお、ここで用いられるイオン交換水の導電率は1〜2μS/cmである。
【0023】
結晶化は示差熱分析装置(リガク社製TG−8110)で25℃(室温)〜500℃の範囲で測定を行った際に結晶化ピークが現れるか否かで判定する。
【0024】
次に、本発明の封着材料は、上記の配合割合となるように原料の粉末混合物を白金るつぼ等の容器に入れ、これを電気炉等の加熱炉内で所定時間加熱して溶融させてガラス化し、この溶融物を水冷ローラーでシート状に成型し、粉砕機によって適当な粒度まで粉砕して封着用無鉛ガラスとすればよい。その封着用無鉛ガラスの粒度は、0.05〜100μmの範囲が好適であり、上記粉砕による粗粒分は分級して除去すればよい。ただし、小型デバイス用の超薄型ディスプレイパネルのシール材に用いる封着用無鉛ガラスでは、上記粒度を10μm以下、より好適には6μm以下とすることが推奨される。
【0025】
上記の粉砕には、従来よりガラス粉末の製造に汎用されているボールミル等の各種乾式粉砕機を使用できるが、特に3μm以下といった細かい粒度にするには湿式粉砕を利用するのがよい。この湿式粉砕は、水やアルコール水溶液の如き水性溶媒中で、5mm径以下のアルミナやジルコニアからなる粉砕メディア(ボールもしくはビーズ)を用いて粉砕するものであり、乾式粉砕よりも更に細かく粉砕することが可能であるが、水性溶媒を用いた微粉砕であるため、被粉砕物であるガラス組成物が高い耐水性を備えている必要がある。
【0026】
本発明の封着材料は、上記のようにして得られた封着用無鉛ガラスのみで封着材料を構成することも可能であるが、一般には、この封着用無鉛ガラスに必要に応じて、低膨張充填材等の無機充填材を配合して構成される。無機充填材の配合量は目的に応じて適宜に設定されるものであるが、封着材料に対して40体積%以下が好ましい。無機充填材の配合量が40体積%を超えると、封着時における封着材料の流動性が低下して接着強度が低下するおそれがある。封着材料は封着用無鉛ガラスと0〜40体積%の無機充填材とを含有するものである。無機充填材の含有量の下限値は特に限定されるものではない。
【0027】
無機充填材の代表例としては低膨張充填材が挙げられる。低膨張充填材とは封着用無鉛ガラスより低い熱膨張係数を有するものである。封着材料は低膨張充填材以外の無機充填材を含有していてもよい。低膨張充填材の含有量は、上述したように40体積%以下が好ましい。低膨張充填材の含有量の下限値は特に限定されるものではなく、封着用無鉛ガラスと素子用半導体基板や封止用基板との熱膨張係数の差に応じて適宜に設定されるものであるが、実用的な配合効果(封着材料の熱膨張係数の調整や、封着強度の向上)を得るためには5体積%以上配合することが好ましい。
【0028】
低膨張充填材としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、珪酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、ムライト、コージェライト、ユークリプタイト、スポジュメン、リン酸ジルコニウム系化合物、酸化錫系化合物、および石英固溶体から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。リン酸ジルコニウム系化合物としては、(ZrO)、NaZr(PO、KZr(PO、Ca0.5Zr(PO、NbZr(PO、Zr(WO)(PO、これらの複合化合物が挙げられる。
【0029】
この実施形態の封着材料ペーストは、封着材料とビヒクルとの混合物からなるものである。ビヒクルとしては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、オキシエチルセルロース、ベンジルセルロース、プロピルセルロース、ニトロセルロース等のバインダ成分を、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等の溶剤に溶解したもの、あるいはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリテート、2−ヒドロオキシエチルメタアクリレート等のアクリル系樹脂(バインダ成分)を、メチルエチルケトン、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等の溶剤に溶解したものが用いられる。
【0030】
封着材料とビヒクルとの混合比は、所望のペースト粘度等に応じて適宜に設定されるものであり、特に限定されるものではない。封着材料ペーストの粘度は、封止用基板もしくは素子用半導体基板に塗布する装置に対応した粘度に合わせればよく、有機樹脂(バインダ成分)と溶剤との混合割合、また封着材料とビヒクルとの混合割合により調整できる。封着材料ペーストは、消泡剤や分散剤のようにガラスペーストで公知の添加物を含有していてもよい。封着材料ペーストの調製には、攪拌翼を備えた回転式の混合機やロールミル等を用いた公知の方法を適用できる。
【0031】
上述した封着用無鉛ガラス、封着材料および封着材料ペーストは、半導体デバイス等の封着工程(例えば、素子用半導体基板と封止用基板との接合工程)に使用される。図1はこの実施形態の封着用無鉛ガラス、封着材料および封着材料ペーストを使用した半導体デバイスの構成例を示している。図1に示す半導体デバイス1としては、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、マイクロミラー、光変調器等のMEMS、CCD素子やCMOS素子を適用した光デバイス等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
半導体デバイス1は素子用半導体基板2と封止用基板3とを具備している。素子用半導体基板2には、Si基板に代表される各種の半導体基板が適用される。封止用基板3としては、半導体基板(Si基板等)、ガラス基板、セラミックス基板等が使用される。素子用半導体基板2の表面2aには、半導体デバイス1に応じた素子部4が設けられている。素子部4はセンサ素子、ミラー素子、光変調素子、光検出素子等を備えており、各種公知の構造を有している。半導体デバイス1は素子部4の構造に限定されるものではない。
【0033】
素子用半導体基板2の表面2aには、素子部4の外周に沿って第1の封止領域5が設けられている。第1の封止領域5は素子部4を囲うように設けられている。封止用基板3の表面3aには、第1の封止領域5に対応する第2の封止領域6が設けられている。素子用半導体基板2と封止用基板3とは、素子部4や第1の封止領域5を有する表面2aと第2の封止領域6を有する表面3aとが対向するように、所定の間隙を持って配置されている。素子用半導体基板2と封止用基板3との間の間隙は封着層7で封止されている。
【0034】
封着層7は素子部4を封止するように、素子用半導体基板2の封止領域5と封止用基板3の封止領域6との間に形成されている。素子部4は素子用半導体基板2と封止用基板3と封着層7とで構成されたパッケージで気密封止されている。封着層7はこの実施形態の封着材料の溶融固着層からなるものである。パッケージ内は半導体デバイス1に応じた状態で気密封止されている。例えば、半導体デバイス1がMEMSである場合には、パッケージ内は真空状態で気密封止されることが一般的である。
【0035】
次に、この実施形態の半導体デバイス1の製造工程について、図2を参照して説明する。まず、図2(a)に示すように、封止用基板3の封止領域6に封着材料層(封着材料の焼成層)8を形成する。封着材料層8の形成にあたっては、まず封止領域6に封着材料ペーストを塗布し、これを乾燥させて封着材料ペーストの塗布層を形成する。封着材料や封着材料ペーストの具体的な構成は前述した通りである。
【0036】
封着材料ペーストは、例えばスクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法を適用して封止領域6上に塗布したり、あるいはディスペンサ等を用いて封止領域6に沿って塗布したりする。封着材料ペーストの塗布層は、例えば120℃以上の温度で10分以上乾燥させる。乾燥工程は塗布層内の溶剤を除去するために実施するものである。塗布層内に溶剤が残留していると、その後の焼成工程でバインダ成分を十分に除去できないおそれがある。
【0037】
上記した封着材料ペーストの塗布層を焼成して封着材料層8を形成する。焼成工程は、まず塗布層を封着材料の主成分である封着用無鉛ガラスのガラス転移点以下の温度に加熱し、塗布層内のバインダ成分を除去した後、封着用無鉛ガラスの軟化点以上の温度に加熱し、封着用無鉛ガラスを溶融して封止用基板3に焼き付ける。このようにして、封着材料の焼成層からなる封着材料層8を形成する。
【0038】
次に、図2(b)に示すように、封着材料層8を有する封止用基板3と、それとは別に作製した素子部4を有する素子用半導体基板2とを、表面2aと表面3aとが対向するように封着材料層8を介して積層する。素子用半導体基板2の素子部4上には、封着材料層8の厚さに基づいて間隙が形成される。この後、封止用基板3と素子用半導体基板2との積層物を封着材料層8中の封着用無鉛ガラスの軟化点以上の温度に加熱し、封着用無鉛ガラスを溶融・固化させることによって、素子用半導体基板2と封止用基板3との間の間隙を気密封止する封着層7を形成する(図2(c))。
【0039】
この際、封着用無鉛ガラスは半導体基板2と封着層7との接着性が良好で、封着層7による気密封止性を高められる。さらに、封着用無鉛ガラスは耐水性に優れているため、それ自体に空気中の水分が吸着することがなく、封着加工時の加熱溶融に伴ってアウトガスとして水蒸気が発生することがないため、半導体デバイスの機能を低下させることがない。従って、気密封止性に加えてデバイス特性や信頼性に優れる半導体デバイス1を再現性よく提供できる。
【0040】
なお、上記には半導体デバイスを例に説明したが、本発明の封着用無鉛ガラスによる封着加工対象は、特に制約はなく、例えば、電子管、蛍光表示管、蛍光表示パネル、プラズマディスプレイパネル、有機ELディスプレイパネル、液晶ディスプレイ用バックライトパネル、半導体パッケージ等の各種電子部品・電気製品の開口部や接合部が挙げられる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。なお、以下の説明は本発明を限定するものではく、本発明の趣旨に沿った形での改変が可能である。
【0042】
[封着用無鉛ガラスの作成]
(実施例1)
まず、質量割合でVを39.0%、Pを3.0%、TeOを51.0%、ZnOを4.0%、BaOを2.0%、CuOを1.0%となるように原料粉末を混合し、封着用無鉛ガラスを得た。得られた封着用無鉛ガラスの転移点(Tg)、軟化点(Ts)、30〜250℃における熱膨張係数(平均熱膨張係数(α))を測定し、さらに耐水性について評価した。その結果を表1に示した。
【0043】
(実施例2〜13)
封着用無鉛ガラスの組成を表1及び表2に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして封着用無鉛ガラスを調製した。そのとき得られた封着用無鉛ガラスの転移点、軟化点、熱膨張係数、耐水性評価について、表1及び表2に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
〔転移点、軟化点〕
示差熱分析装置(リガク社製TG−8110)により、リファレンス(標準サンプル)としてα−アルミナを用い、加熱速度10℃/分、温度範囲25℃(室温)〜500℃の測定条件でサンプルのガラス転移点〔Tg〕、軟化点〔Ts〕を測定した。
【0047】
〔平均熱膨張係数(α)〕
熱機械分析装置(リガク社製TMA8310)により、平均熱膨張係数(α)を測定した。この測定は、封着用無鉛ガラス(30g)を型内で溶融・硬化させて5mmΦ×20mm(試料径×高さ)の円柱に成形し、上底面が平行に成形されたものを測定試料として用い、25℃(室温)〜250℃まで10℃/分で昇温させ、平均熱膨張係数(α)を求めた。また、標準サンプルには石英ガラスを用いた。上記表1および2に記載に記載した封着用無鉛ガラスのものであるが、無機充填材を配合した封着材料の平均熱膨張係数(α)としては70〜100×10−7/℃が好ましい。
【0048】
〔ガラス結晶化〕
結晶化は示差熱分析装置(リガク社製TG−8110)で25℃(室温)〜500℃の範囲で測定を行った際に結晶化ピークが現れるか否かで判定した。
【0049】
〔耐水性評価〕
各封着用無鉛ガラス(30g)を型内で溶融・硬化させて5mmΦ×20mm(試料径×高さ)の円柱に成形し、この円柱状試料をそれぞれ20mLのイオン交換水が入った容器内の水中に浸漬し、この容器を45℃に設定した恒温槽に収容し、72時間経過後に試料を取り出し、60℃にて2時間乾燥し、自然冷却後の試料の質量を測定し、初期質量に対する質量減少率を算出した。なお、耐水性の評価は質量減少率が、◎…0〜0.3%以下、○…0.3%超〜1.0%、×…1.0%超を基準とし評価した。
【0050】
(比較例1〜6)
封着用無鉛ガラスの組成を表3、表4に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして封着用無鉛ガラスを調製した。そのとき得られた封着用無鉛ガラスの転移点(Tg)、軟化点(Ts)、平均熱膨張係数(α)、耐水性評価について、表3及び表4に示した。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
[封着材料ペーストの作成]
(実施例14)
実施例1で得られた封着用無鉛ガラスと、低膨張充填材としてコージェライト粉末とを用意した。さらに、バインダ成分としてのエチルセルロース10質量%を、ブチルカルビトールアセテートからなる溶剤90質量%に溶解してビヒクルを作製した。
【0054】
上述した封着用無鉛ガラス90体積%とコージェライト粉末10体積%とを混合して封着材料を作製した。この封着材料80質量%をビヒクル20質量%と混合して封着材料ペーストを調製した。
【0055】
次いで、ガラス基板からなる封止用基板の外周領域に、封着材料ペーストをスクリーン印刷法で塗布(線幅:750μm)した後、120℃×10分の条件で乾燥させた。この塗布層を加熱炉にて400℃×10分の条件で焼成することによって、ガラス基板上に封着材料層を形成した。
【0056】
次に、封着材料層を有する封止用基板と同材質のガラス基板とを積層した。この封止用基板とガラス基板との積層物を加熱炉内に配置し、400℃×10分の条件で熱処理することによって、封止用基板とガラス基板とを封着した。次に、このようにして作製した半導体デバイスの封着性を評価し、その結果を表5に示した。
【0057】
(実施例15〜19)
使用する封着用無鉛ガラスの種類と、コージェライトとの配合割合を表5に示す条件に変更した以外は、実施例14と同様にして封着材料ペーストを調製した。さらに、これらの封着材料ペーストを用いた以外は実施例14と同様にして、封止用基板に対する封着材料層の形成工程、および封止用基板と同材質のガラス基板との封着工程(加熱工程)を実施した。次に、このようにして作製したガラス基板の封着性を評価し、その結果を表5に示した。
【0058】
【表5】

【0059】
〔封着性〕
実施例14〜19のガラス基板積層物について、封止用基板と同材質のガラス基板が封着できているものを○、封着できていないものを×とした。
【0060】
表1〜4で明らかなように、実施例1〜13により得られた封着用無鉛ガラスは、融点が375℃以下と低く、かつ、耐水性に非常に優れたものである。また、この封着用無鉛ガラスを用いて得られた封着材料ペーストは、封着性も良好で、十分に実用に耐えるものであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の封着用無鉛ガラス、封着材料及び封着ペーストは、低温域での使用が可能で、耐水性に優れており、封着性も良好であるため、種々の電子製品、電気製品の封着に広く使用できる。
【符号の説明】
【0062】
1…半導体デバイス、2…素子用半導体基板、2a,3a…表面、3…封止用基板、4…素子部、5…第1の封止領域、6…第2の封止領域、7…封着層、8…封着材料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜55質量%のVと、1〜10質量%のPと、15〜70質量%のTeO2 と、0〜13質量%のZnOと、0〜13質量%のBaOと、を含有し、ZnOとBaOとはその合量ZnO+BaOが0〜13質量%の範囲であり、実質的にPbO及びFeを含有しないことを特徴とする封着用無鉛ガラス。
【請求項2】
前記Vの配合量が15〜50質量%であり、前記TeOの配合量が25〜65質量%である請求項1記載の封着用無鉛ガラス。
【請求項3】
500℃以下の温度において結晶化しない請求項1又は2記載の封着用無鉛ガラス。
【請求項4】
軟化点が375℃以下である請求項1乃至3のいずれか1項記載の封着用無鉛ガラス。
【請求項5】
45℃のイオン交換水に72時間浸漬した時の質量減少率が、0.3%以下である請求項1乃至4のいずれか1項記載の封着用無鉛ガラス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の封着用無鉛ガラスと、体積割合で0〜40質量%の範囲の無機充填剤とを含有することを特徴とする封着材料。
【請求項7】
前記無機充填剤が、シリカ、アルミナ、ジルコニア、珪酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、ムライト、コージェライト、ユークリプタイト、スポジュメン、リン酸ジルコニウム系化合物、酸化錫系化合物、および石英固溶体から選ばれる少なくとも1種からなる低膨張充填剤である請求項6記載の封着材料。
【請求項8】
請求項6又は7記載の封着材料とビヒクルとの混合物からなることを特徴とする封着材料ペースト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−106891(P2012−106891A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257970(P2010−257970)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】