説明

射出成形体

【課題】 精密成形性と耐熱分解性に優れた樹脂を用いてなる射出成形体を提供する。
【解決手段】 (メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られる共重合体の構成単位において芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(Bモル)に対する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(Aモル)のモル比(A/B)が0.25〜4.0である共重合体の芳香環を水素化反応した樹脂を用いてなる射出成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂の射出成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形は熱可塑性樹脂の最も重要な成形法であり、我々の身の回りの樹脂製品の大量生産、低コスト化に大いに貢献してきた。近年ではより精密な射出成形が可能となり、それまで切削加工や注型法で作製されていたレンズやプリズムのような高精度を要求される物品においても射出成形による成形が可能になっている。一方で精密な射出成形が可能になるにしたがって、材料である樹脂自身にも高い流動性が要求されてきている。樹脂自身の溶融時の流動性を高めることによって金型細部にまで樹脂が到達し、精密転写が可能となるためである。
【0003】
溶融樹脂の流動性は樹脂の構造、分子量、成型時の温度によってある程度コントロールすることができる。樹脂の構造を変え、ガラス転移温度を低下させると溶融樹脂の流動性も低下するが、成形体実用時の耐熱性が得られない。分子量を小さくすることによっても溶融樹脂の流動性を低下させることができるが、機械物性が低下してしまう。成形温度は高いほど溶融樹脂の流動性が低下するが、熱劣化により機械物性が低下したり、着色したり、発生した揮発性のガスによって成形体の外観が不良となったりするいわゆるシルバーの発生のため、限定された範囲の中で選択する必要が生じている。
【0004】
実際に成形可能な温度領域であっても、特に光学用途においては着色による色調の悪化が最も重大な問題であり、わずかな着色でも色むらや輝度むら等の著しい性能低下を引き起こすため、注意が必要である。したがって、樹脂の耐熱分解性の向上が強く望まれている。また排出されるスプルー部分やランナー部分といった端材を回収、破砕し、再成形する等して再利用する試みが進んでいること点からも、高度な耐熱分解性が要求されている。
【0005】
スチレン系樹脂の芳香環を水素化(核水添ともいう。)する技術は以前から知られており、ポリスチレンから得られるポリビニルシクロヘキサンは、機械強度に劣るという欠点はあるものの、透明性と耐熱変形性に優れた樹脂である。その優れた透明性と耐熱変形性から、光ディスク基盤への応用が検討されてきた(特許文献1参照。)。メタクリル酸メチルとスチレンの共重合体であるMS樹脂を核水添した樹脂も、この光ディスク用途に応用した例として一部の組成で開示されている(特許文献2参照。)が、金属との密着性が不足すること、耐熱変形性が必ずしも十分でないことから、光ディスクの基盤としては十分にその性能を発揮することができないことがあった。またプラスチックレンズに適用された例も一部の組成で開示されている(特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開昭63−43910号公報
【特許文献2】特開平6−25326号公報
【特許文献3】特開平4−75001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上で述べた、溶融時の流動性と耐熱分解性に優れた樹脂を用いてなる射出成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み鋭意検討した結果、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーから選択したモノマー組成物を重合して得られる、特定の構成単位の組成からなる共重合体の芳香環を水素化反応することによって得られる樹脂を射出成形することで、微細なパターンが精密転写された射出成型品が歩留まりよく得られることを見出し、本発明に到った。すなわち本発明は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られる共重合体の構成単位において芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(Bモル)に対する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(Aモル)のモル比(A/B)が0.25〜4.0である共重合体の芳香環を水素化反応することによって得られる樹脂を用いてなる射出成形体に関するものである。なお、本発明における(メタ)アクリル酸とはメタクリル酸とアクリル酸とを指す表記である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により得られる射出成形体は、耐熱分解性が高く、溶融時の流動性に優れる樹脂を用いるため、金型の微細なパターンも精密に転写することができる。また、原料樹脂の耐熱分解性が優れているので、排出される端材を回収し、再利用して成形しても、物性の劣化が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いる(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸アルキル類;(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)や(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)などの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類;(メタ)アクリル酸(2−メトキシエチル)、(メタ)アクリル酸(2−エトキシエチル)などの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類;(メタ)アクリル酸ベンジルや(メタ)アクリル酸フェニルなどの芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル類;および2−(メタ)アクロイルオキシエチルホスホリルコリンなどのリン脂質類似官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル類などをあげることができるが、物性面のバランスから、メタクリル酸アルキルを単独で用いるか、あるいはメタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルを併用することが好ましい。さらに、メタクリル酸メチル80〜100モル%およびアクリル酸アルキル0〜20モル%を用いることが好ましい。用いるアクリル酸アルキルのうち、特に好ましいものはアクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルである。
【0010】
本発明において用いる芳香族ビニルモノマーとは、具体的にスチレン、α―メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレン、およびクロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物があげられるが、スチレンが好適に用いられる。
【0011】
これらモノマーを重合する方法は、公知の方法を用いることができるが、工業的にはラジカル重合による方法が簡便でよい。ラジカル重合は塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法など公知の方法を適宜選択することができる。例えば、塊状重合法や溶液重合法の例としてはモノマーと連鎖移動剤、重合開始剤とを配合したモノマー組成物を完全混合槽に連続的にフィードし、100〜180℃で重合する連続重合法などがある。溶液重合法ではトルエンやキシレン、シクロヘキサンやメチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒やアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノールやイソプロパノールなどのアルコール系溶媒などの溶媒を、モノマー組成物と共にフィードする。重合後の反応液は重合槽から抜き出して脱揮押出機や減圧脱揮槽に導入することで揮発分を脱揮して樹脂を得ることができる。
【0012】
メタクリル酸エステル類の共重合体(メタクリル系樹脂ともいう。)のようなビニル重合体の場合、共重合体の構成単位の組成は仕込んだモノマーの組成とは必ずしも一致せず、重合反応によって実際にポリマーに取り込まれたモノマーの量によって決定される。共重合体の構成単位の比は、重合率が100%であれば仕込みモノマー組成比と一致するが、実際には50〜80%の重合率で製造する場合が多く、反応性の高いモノマーほどポリマーに取り込まれ易いため、モノマーの仕込み組成と共重合体の構成単位の組成にズレが生じるので、仕込みモノマーの組成比を適宜調整する必要がある。本発明で水素化反応に用いる、芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(Bモル)に対する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(Aモル)のモル比(A/B)としては、0.25以上4.0以下である。0.25未満になると機械強度が劣り実用性に耐えない場合がある。4.0を超えると、水素化される芳香環が少ないため、水素化反応によるガラス転移温度の向上などの性能向上効果が不足する場合がある。物性バランスの面からさらに好ましい範囲を例示するならば、1.0以上4.0.以下、特に好ましい範囲は1.0以上2.5以下である。
【0013】
上記手法などで得られた共重合体は、適当な溶媒にて溶解して水素化反応を行うが、重合の際と同じ溶媒を用いても良いし、異なる溶媒を用いても良い。水素化反応で用いる溶媒は、水素化反応前後の共重合体の溶解性や水素の溶解性が良好なもののうち、水素化される部位を持たないものが好ましい。例えば、シクロヘキサンやメチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒やアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノールやイソプロパノールなどのアルコール系溶媒が用いられる。
【0014】
水素化反応は、触媒存在下、バッチ式反応や連続流通式反応など、公知の手法を用いることができるが、好ましい条件として、水素圧は3から30MPa、反応温度は60から250℃の範囲内で行われる。反応温度が低すぎると反応が進行しにくく、反応温度が高すぎると分子鎖の切断による分子量の低下が起こったり、エステル部位の水素化反応までもが進行しやすくなる。分子鎖の切断による分子量低下を防ぎかつ円滑に反応を進行させるには、用いる触媒の種類および濃度、共重合体の溶液濃度、分子量などにより適宜決定される適切な温度、水素圧により水素化反応を行うことが好ましい。
【0015】
触媒には公知の触媒を使用することができる。具体的にはニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ルテニウム、ロジウムなどの金属、または該金属の酸化物、塩、錯体などの化合物をカーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土等の多孔性担体に担持した固体触媒が挙げられる。これらのなかでもニッケル、パラジウム、白金などの金属をカーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土に担持したものが好ましく用いられる。担持量としては0.1〜30wt%が好ましい。
【0016】
また水素化反応率は芳香環に対して70%以上であることが好ましく、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。70%未満の場合には樹脂が白濁して透明性が低下する場合があり、好ましくない。
【0017】
本発明では射出圧縮成形や、超高速射出成形や共射出成形、ガスアシスト射出成形など様々な射出成形が可能である。金型構造も公知のものを用いることができる。射出成形時の温度条件は、幅広く設定することができるが、通常200℃以上300℃未満の範囲が好ましい。200℃未満では十分に可塑化が行われず、精密に金型のパターンを転写できないおそれがあり、好ましくない。また300℃を超えると、主鎖のランダム分解が進行して揮発性の成分を発生し、成形体の外観が損なわれ、好ましくない。さらに好ましい範囲は210℃から280℃、特に好ましい範囲は220℃から270℃の範囲である。
【0018】
本発明の射出成形体は耐熱分解性に優れていることから、射出成形時に排出されるスプルー部分および/またはランナー部分といった端材を破砕し、原料の樹脂に混合して用いることができるため、製品の歩留まりが大きく向上する。通常、熱可塑性樹脂は熱成形を繰り返すと熱履歴により劣化して着色したりするが、本発明の射出成形体ではそれを最小限度にとどめることができる。もちろん端材のみから成形体を製造することも可能ではあるが、製品の品質を安定させるため、原料の樹脂に混合して用いると良い。端材を配合する割合は、前記樹脂ならびに該スプルー部分および/またはランナー部分の合計に対し該スプルー部分および/またはランナー部分を20重量%以下混合することが好ましく、さらに好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
【0019】
本発明の射出成形体を得る上で、樹脂に酸化防止剤などを配合しない状態であっても、良好な成形体を得ることができるが、適当な酸化防止剤を配合することにより、その効果を高めることができる。酸化防止剤としては公知のものを使用することができるが、具体的にはヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤などが挙げられ、これを単独または併用して用いると良い。添加量は樹脂に対して50〜10000ppm程度が好ましい。
【0020】
また、必要に応じて本発明の射出成形体のバランスを損なわない程度に他の添加剤たとえば離型剤、帯電防止剤、顔料や染料などの着色剤、UV吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、防菌剤、光拡散剤などを配合しても良い。離型性を向上させるために金型に離型剤を吹き付けておくことも有効であるが、量が多いと成形体表面の外観が損なわれるので、最小量にとどめるようにするか、あらかじめ内添しておくことが好ましい。
【0021】
本発明の射出成形体は熱劣化などによる成形不良の少ない、色調に優れた物品である。具体的な用途としては、雑貨や日用品、電子電気製品部品、医療器具部品、自動車部品、航空機部品などを挙げることができるが、各種導光板や導光体、光ファイバー用接続カプラ、光導波路、ディスプレイ前面パネル、プラスチックレンズ、プリズム、プラスチックレンズ基板、光学フィルター、光学フィルム、光記録媒体基盤などの精密転写性を要求される光学物品に最も好適である。
【実施例】
【0022】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によりその範囲を限定されるものではない。なお、射出成形体およびその原料となる樹脂の評価方法は次の通りである。
【0023】
(1)共重合体中の構成単位のモル比の算出はH―NMR測定(400MHz)により行った。
(2)樹脂の水素化反応率は水素化反応前後のUVスペクトル測定における260nmの吸収の減少率で評価した。
(3)樹脂のガラス転移温度(Tg)の評価はセイコー電子工業(株)製DSC220型示差走査熱量測定(DSC)装置を用いた。樹脂10mgを10℃/min.で測定し、中点法で算出した。
(4)成形体の転写性は、計量条件、保圧条件を種々変更し、安定した成形体が得られるようになった後に、20個の成形体を作製して評価し、全ての成形体にシボパターンが隅々まできちんと賦形されているものは○、シボパターンに1カ所でも転写ムラがあるものは△、成形体の全てに転写ムラが認められるものを×とした。
(5)成形体の外観は、計量条件、保圧条件を種々変更し、安定した成形体が得られるようになった後に、20個の成形体を作製して評価し、シルバーの発生が全くないものを○、シルバーが発生したものを△とした。成形体の全てにシルバーが認められるものを×とした。
(6)成形体のリサイクル性は、射出成形時に排出されるスプルー部分および/またはランナー部分を破砕し、原料の樹脂に所定の量を混合して用いてリサイクル成形体を成形し、元の成形体とリサイクル成形体の二つの成形体のYI値を測定し、その差をリサイクル性として評価した。YI値の測定は、日本電色工業製色度・濁度測定機COH−300Aを用いて、3.2mm厚の円盤を透過法で測定した。一般的に樹脂は熱履歴を受けることによって、黄色に着色するため、この値が小さいほどリサイクル性に優れていると言える。
【0024】
[樹脂の製造]
<製造例1>
モノマー成分としてメタクリル酸メチル59.9モル%とスチレン39.9モル%を、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタンを0.17モル%、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを4.2×10-3モル%の濃度となるように配合したモノマー組成物をヘリカルリボン翼付き10リットル完全混合槽に1kg/時間で連続的にフィードし、平均滞留時間2.5時間、重合温度150℃で連続重合を行った。
【0025】
重合槽液面が一定となるように、底部から反応液をギヤポンプで抜き出し、重合液を150℃に維持しながら、ベント口を備えた脱揮押出機に導入して揮発分を脱揮し、ストランドを切断してペレットとした(樹脂A1)。このとき共重合体中の構成モノマー単位のモル比(A/B)は1.5であった。
【0026】
上記、樹脂A1をジオキサンに溶解し、10wt%ジオキサン溶液を調製した。1000mLオートクレーブ装置に10wt%ジオキサン溶液を500重量部、10wt%Pd/C(NEケムキャット社製)を1重量部仕込み、水素圧10MPaで200℃、15時間保持して水素化反応した。フィルターにより触媒を除去した後、ジオキサンを加熱留去して反応液を50wt%まで濃縮、トルエンで再び10wt%まで希釈することを繰り返して溶媒置換し、50wt%トルエン溶液を得た。これを再びベント口を備えた脱揮押出機に導入して揮発分を脱揮、ストランドを切断してペレットを得た(樹脂A2)。水素化反応率は96%であった。樹脂A1およびA2のガラス転移温度を評価した。結果を表1に示す。
【0027】
<製造例2>
モノマー成分としてメタクリル酸メチル80.0モル%とスチレン19.8モル%を用いた以外は製造例1と同様にして樹脂を合成した(樹脂B1)。共重合体中の構成モノマー単位のモル比(A/B)は4.0であった。
【0028】
樹脂A1の代わりに樹脂B1を用いた以外は製造例1と同様にして、水素化反応してペレットを得た(樹脂B2)。水素化反応率は100%であった。樹脂B1および樹脂B2のガラス転移温度を評価した。結果を表1に示す。
【0029】
<製造例3>
モノマー成分としてメタクリル酸メチル20.4モル%とスチレン79.4モル%を用いた以外は製造例1と同様にして樹脂を合成した(樹脂C1)。共重合体中の構成モノマー単位のモル比(A/B)は0.25であった。
【0030】
樹脂A1の代わりに樹脂C1を用いた以外は製造例1と同様にして、水素化反応してペレットを得た(樹脂C2)。水素化反応率は94%であった。樹脂C1および樹脂C2のガラス転移温度を評価した。結果を表1に示す。
【0031】
[成形体の作製]
<実施例1>
樹脂A2を用いて電動射出成形機(ファナック製AUTOSHOT−100B)により、シリンダ温度は260℃、金型温度は(ガラス転移温度−30)℃として設定し、冷却時間は40秒として、50mmx50mm、厚さ3.2mmの平板試験片(金型の片面にシボパターン有り)を作製し、成形体の転写性と外観(シルバーの発生の有無)を目視で評価した。結果を表1に示す。
【0032】
<実施例2>
樹脂A2の代わりに樹脂B2を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、成形体の転写性と外観(シルバーの発生の有無)を目視で評価した。結果を表1に示す。
【0033】
<実施例3>
樹脂A2の代わりに樹脂C2を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、成形体の転写性と外観(シルバーの発生の有無)を目視で評価した。結果を表1に示す。
【0034】
<比較例1>
樹脂A2の代わりに樹脂A1を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、成形体の転写性と外観(シルバーの発生の有無)を目視で評価した。結果を表1に示す。
【0035】
<比較例2>
樹脂A2の代わりに樹脂B1を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、成形体の転写性と外観(シルバーの発生の有無)を目視で評価した。結果を表1に示す。
【0036】
<比較例3>
樹脂A2の代わりに樹脂C1を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、成形体の転写性と外観(シルバーの発生の有無)を目視で評価した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
[リサイクル性の評価]
<実施例4>
実施例1と同様にして、樹脂A2を用いて50φ、3.2mm厚の円盤を成形した。成形体の射出成形時に排出されるスプルー部分およびランナー部分を破砕しフレーク状にした後、樹脂A2ならびにスプルー部分およびランナー部分の合計に対し10重量%のスプルー部分およびランナー部分を混合(ドライブレンド)して用いて、3.2mm厚の円盤(リサイクル成形体)を成形した。リサイクル性とリサイクル成形体の外観を評価した。結果を表2に示す。
【0039】
<実施例5>
樹脂A2の代わりに樹脂B2を用いた以外は実施例4と同様にして円盤を作製しリサイクル性、リサイクル成形体の外観(シルバーの発生の有無)を評価した。結果を表2に示す。
【0040】
<実施例6>
樹脂A2の代わりに樹脂C2を用いた以外は実施例4と同様にして円盤を作製しリサイクル性、リサイクル成形体の外観(シルバーの発生の有無)を評価した。結果を表2に示す。
【0041】
<比較例4>
樹脂A2の代わりに樹脂A1を用いた以外は実施例4と同様にして円盤を作製しリサイクル性、リサイクル成形体の外観(シルバーの発生の有無)を評価した。結果を表2に示す。
【0042】
<比較例5>
樹脂A2の代わりに樹脂B1を用いた以外は実施例4と同様にして円盤を作製しリサイクル性、リサイクル成形体の外観(シルバーの発生の有無)を評価した。結果を表2に示す。
【0043】
<比較例6>
樹脂A2の代わりに樹脂C1を用いた以外は実施例4と同様にして円盤を作製しリサイクル性、リサイクル成形体の外観(シルバーの発生の有無)を評価した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られる共重合体の構成単位において芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(Bモル)に対する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(Aモル)のモル比(A/B)が0.25〜4.0である共重合体の芳香環を水素化反応した樹脂を用いてなる射出成形体。
【請求項2】
前記芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(Bモル)に対する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(Aモル)のモル比(A/B)が1.0〜4.0である共重合体の芳香環を水素化反応した樹脂を用いてなる請求項1記載の射出成形体。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーがメタクリル酸メチル80〜100モル%およびアクリル酸アルキル0〜20モル%からなり、前記芳香族ビニルモノマーがスチレンである共重合体の芳香環を水素化反応した樹脂を用いてなる請求項1または2に記載の射出成形体。
【請求項4】
水素化反応率が芳香環に対して70%以上である樹脂を用いてなる請求項1ないし3のいずれかに記載の射出成形体。
【請求項5】
射出成形時に排出されるスプルー部分および/またはランナー部分を破砕し、前記樹脂ならびに該スプルー部分および/またはランナー部分の合計に対し該スプルー部分および/またはランナー部分を20重量%以下混合して用いてなる請求項1ないし4のいずれかに記載の射出成形体。

【公開番号】特開2006−63126(P2006−63126A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244917(P2004−244917)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】