説明

射出成形方法及び射出成形装置

【課題】プリプラ式射出成形装置を用いて、次ショットの際の樹脂混じりが殆どない二層構造の樹脂成形品を成形する射出成形方法を提供する。
【解決手段】樹脂原料30b,40bを可塑化溶融する可塑化装置3,4と、溶融樹脂3b,4bを金型6内に射出する射出装置IUが独立して設けられたプリプラ式射出成形装置IMDにおいて、第一の可塑化装置3の第一樹脂流路3aが射出シリンダ1の合流樹脂流路1aに接続されていると共に、第二の可塑化装置4の第二樹脂流路4aが、第一の可塑化装置3よりも射出ノズル5側に接続されており、規定量の第二の溶融樹脂4bを射出シリンダ1の合流樹脂流路1aに送り出して充填したのち、第一の溶融樹脂3bを射出シリンダ1の合流樹脂流路1aに送り出して充填し、射出シリンダ1内の第一の溶融樹脂3bと第二の溶融樹脂4bを、射出プランジャ2によって一度に金型6内に射出する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂原料を別に設けた可塑化装置で可塑化し、これを射出プランジャへと送り込んだのち、射出プランジャを前進させて射出するプリプラ式射出成形装置を用いて、二層構造の樹脂成形品を成形する射出成形方法及び射出成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、インラインスクリュー方式の第一射出ユニットと第二射出ユニットを有する射出成形装置を用いて、多層構造の樹脂成形品を成形する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、射出プランジャを有するプリプラ式射出成形装置においても、新たな射出ユニット(プランジャ方式、或いは、インラインスクリュー方式)を追加することで、上記インラインスクリュー方式の射出成形装置と同様に、多層構造の樹脂成形品を成形することができる。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のように、インラインスクリュー方式の第一射出ユニットとインラインスクリュー方式の第二射出ユニットを組み合わせた射出成形装置、或いは、インラインスクリュー方式の射出ユニットとプランジャ方式の射出プランジャを組み合わせた射出成形装置は、射出するタイミングや射出圧の制御などが複雑になってしまうと共に、機械が大型化してしまうという問題があった。また、インラインスクリュー方式の射出成形装置は、スクリュー先端部に取り付けられるチェック弁機能を有した逆流防止装置の構造的な要因により、精密成形には不利になるという問題もある。
【0005】
一方、射出プランジャを有する射出装置に、射出装置を持たない可塑化装置を接続したプリプラ式射出成形装置で、多層構造の樹脂成形品を成形する方法もある(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−276051号公報
【特許文献2】特開平08−281736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2のようなプリプラ式射出成形装置は、射出プランジャに射出装置を持たない可塑化装置を接続しているため、ノズルクリーニングができず、次ショットの際に可塑化装置から送り出される溶融樹脂と射出装置の樹脂流路内に残存している溶融樹脂とが混ざってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、射出プランジャを有する射出装置に、射出装置を持たない可塑化装置を接続したシンプル且つコンパクトな構造のプリプラ式射出成形装置を用いているにも拘わらず、次ショットの際の樹脂混じりが殆どない射出成形方法及び射出成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る射出成形方法は、樹脂原料を可塑化溶融する可塑化装置と、該装置で可塑化された溶融樹脂を射出シリンダ内に充填し、射出プランジャによって金型内に射出する射出装置とがそれぞれ独立して設けられたプリプラ式射出成形装置において、第一の樹脂原料を可塑化溶融する第一の可塑化装置の第一樹脂流路が射出シリンダの合流樹脂流路に接続されていると共に、第二の樹脂原料を可塑化溶融する第二の可塑化装置の第二樹脂流路が、第一の可塑化装置よりも射出ノズル側に接続されており、第二の可塑化装置で可塑化溶融された規定量の第二の溶融樹脂を射出シリンダの合流樹脂流路に送り出して充填したのち、第一の溶融樹脂を射出シリンダの合流樹脂流路に送り出して充填し、射出シリンダ内の第一の溶融樹脂と第二の溶融樹脂を、射出プランジャによって一度に金型内に射出することを特徴とするものである。
【0010】
次に、本発明の射出成形装置は、樹脂原料を可塑化溶融する可塑化装置と、該装置で可塑化された溶融樹脂を射出シリンダ内に充填し、射出プランジャによって金型内に射出する射出装置とがそれぞれ独立して設けられたプリプラ式射出成形装置であって、第一の樹脂原料を可塑化溶融する第一の可塑化装置の第一樹脂流路が射出シリンダの合流樹脂流路に接続されていると共に、第二の樹脂原料を可塑化溶融する第二の可塑化装置の第二樹脂流路が、第一の可塑化装置よりも射出ノズル側に接続されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の射出成形装置においては、第二の可塑化装置の第二樹脂流路の接続箇所が、射出ノズルの直近であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の射出成形方法は、可塑化装置と射出装置とが独立したシンプル且つコンパクトなプリプラ式射出成形装置を用いるので、装置の設置場所を選ばず、精密な二層構造の樹脂成形品を成形することができる。この射出成形方法に用いるプリプラ式射出成形装置は、第二の樹脂原料を可塑化溶融する第二の可塑化装置の第二樹脂流路が、第一の可塑化装置よりも射出ノズル側に接続されているので、第二の可塑化装置で可塑化溶融された第二の溶融樹脂を射出シリンダの合流樹脂流路に送り出すと、合流樹脂流路内に残っている第一の溶融樹脂が、その送り出された第二の溶融樹脂によって射出プランジャ側に押し戻されることになって、第二の溶融樹脂は射出シリンダ内の先端部(射出ノズル側)に充填されることになると共に、第一の溶融樹脂は射出シリンダ内の射出プランジャ側に充填されることになる。従って、第二の溶融樹脂と第一の溶融樹脂との境界が明確になって、合流樹脂流路内に残存している第一の溶融樹脂と第二の可塑化装置から送り出された第二の溶融樹脂とが混ざることが殆どなくなるので、その後、第一の溶融樹脂を合流樹脂流路に充填して金型内に射出しても、二種類の溶融樹脂の混じりが殆どない二層の樹脂成形品を得ることができる。このようにして樹脂成形品を成形すると、第二の溶融樹脂が樹脂成形品の表面層を形成し、第一の溶融樹脂が樹脂成形品のコア層を形成することになる。
【0013】
次に、本発明の射出成形装置は、第二の可塑化装置の第二樹脂流路を第一の可塑化装置よりも射出ノズル側に接続することで、シンプルでコンパクトな構造のプリプラ式射出成形装置であるにも拘わらず、次ショットの際の樹脂混じりが殆どない二層構造の樹脂成形品を成形することができる。また、射出装置を持たない第一の可塑化装置と第二の可塑化装置を用いているので、射出は一度だけで済み、射出するタイミングや射出圧などの複雑な制御も不要となる。更に、既存のプリプラ式射出成形装置が存在する場合には、その装置の合流樹脂流路に第二の可塑化装置の第二樹脂流路を接続するという簡単な改良で、上記のような樹脂混じりが殆どない二層構造の樹脂成形品を形成できる射出成形装置を得ることができる。
【0014】
特に、第二の可塑化装置の第二樹脂流路の接続箇所が、射出ノズルの直近である射出成形装置は、第二の溶融樹脂を送り出した際に、合流樹脂流路内に残存している第一の溶融樹脂の略全部が、第二の溶融樹脂によって射出プランジャ側に押し戻されるので、二種類の溶融樹脂が混ざることが殆どなくなる。これにより、第二の溶融樹脂によって形成される二層構造の樹脂成形品の表面層に第一の溶融樹脂が混ざることが殆どなくなり、高品質な二層構造の樹脂成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る射出成形方法に用いる射出成形装置を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る射出成形方法を示す説明図である。
【図3】同射出成形方法を示す説明図である。
【図4】同射出成形方法を示す説明図である。
【図5】同射出成形方法を示す説明図である。
【図6】同射出成形方法を示す説明図である。
【図7】同射出成形方法を示す説明図である。
【図8】同射出成形方法によって二層構造の樹脂成形品が成形される過程を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0017】
本発明の射出成形方法は、図1に示す射出成形装置IMD(Injection Molding Device)を用いて二層構造の樹脂成形品を成形するものである。この射出成形装置IMDは、第一の樹脂原料30bを可塑化溶融して第一の溶融樹脂3bにする可塑化装置3と、第二の樹脂原料40bを可塑化溶融して第二の溶融樹脂4bにする可塑化装置4と、該装置3,4で可塑化された溶融樹脂3b,4bを射出シリンダ1内に充填し、射出プランジャ2によって金型6内に射出する射出装置IU(Injection Unit)とがそれぞれ独立して設けられたプリプラ方式の射出成形装置IMDであって、第一の可塑化装置3の第一樹脂流路3aが射出シリンダ1の合流樹脂流路1aに接続されていると共に、第二の可塑化装置4の第二樹脂流路4aが、第一の可塑化装置3よりも射出ノズル5側の合流樹脂流路1aに接続されている。
尚、ここでいう「第一の樹脂原料30b」、「第二の樹脂原料40b」とは、粉状又は粒状の、直径が数mm〜数cm程度の固体を指し、主として熱可塑性樹脂(本実施形態ではポリプロピレン)が用いられる。
また、「第一の溶融樹脂3b」、「第二の溶融樹脂4b」とは、上記「第一の樹脂原料30b」、「第二の樹脂原料40b」を、ガラス転移温度以上又は融点以上に保持することにより流動性を有する状態にしたものをいう。
更に、「樹脂成形品」とは、上記「第一の溶融樹脂3b」、「第二の溶融樹脂4b」を金型6内で冷却して凝固させることにより所定の形状に成形された物品をいう。
【0018】
上記射出装置IUは、可塑化された溶融樹脂3b,4bを射出する装置であって、図1に示すように、射出シリンダ1、射出プランジャ2、シリンダピストン7を具備している。
【0019】
射出シリンダ1は略円筒形状の部材であり、図1に示すように、その内部には、可塑化装置3,4で可塑化された溶融樹脂3b,4bが送り込まれる合流樹脂流路1aが形成されている。また、その先端部には、射出シリンダ1に送り込まれた溶融樹脂3b,4bを射出するための射出口である射出ノズル5が形成されている。
【0020】
射出プランジャ2は、図1に示すように、射出シリンダ1の基端部から射出シリンダ1の内部空間1bに挿入される略円柱形状の部材であって、射出シリンダ1の合流樹脂流路1a及び内部空間1bに送り込まれた可塑化された溶融樹脂3b,4bを押し出して射出ノズル5から射出するためのものである。
【0021】
シリンダピストン7は、射出装置IUの動力源であって、このシリンダピストン7が前後方向に動くことによって射出プランジャ2を射出シリンダ1に沿って前後方向に摺動させて、溶融樹脂3b,4bを金型6内に射出するようになっている。
【0022】
上記射出シリンダ1の合流樹脂流路1aに接続される第一の可塑化装置3は、図1に示すように、粉状又は粒状の第一の樹脂原料30bを可塑化して溶融樹脂3bとし、射出シリンダ1の合流樹脂流路1aに送り出すための装置であって、スクリュー3c、ホッパー3dを具備している。その内部には、第一の可塑化装置3で可塑化された第一の溶融樹脂3bを合流樹脂流路1aに供給するための第一樹脂流路3aが形成されており、この第一樹脂流路3aは、射出シリンダ1の合流樹脂流路1aの基端部(射出プランジャ2の直近)に接続されている。
【0023】
スクリュー3cは、図1に示すように、第一の可塑化装置3の基端部からその内部空間に挿入される部材であって、その外周面には、第一の可塑化装置3の内部空間の内周面に略当接する螺旋状の羽根が形成されている。
【0024】
また、ホッパー3dは、図1に示すように、第一の可塑化装置3の内部空間に粉状又は粒状の第一の樹脂原料30bを供給するための漏斗状の部材であって、その上面には開口部が形成されていると共に、ホッパー3dの下端部は、第一の可塑化装置3の内部空間に連通接続されている。このホッパー3d上面の開口部から粉状又は粒状の第一の樹脂原料30bを投入すると、第一の樹脂原料30bは第一の可塑化装置3の内部空間へと移動する。第一の可塑化装置3の内部空間は、第一の樹脂原料30bが可塑化溶融する温度に設定されており、更にスクリュー3cを回転させることで、第一の可塑化装置3の内部空間に移動した第一の樹脂原料30bに熱エネルギーと機械的なエネルギー(摩擦力、剪断力)が付与されて、第一の樹脂原料30bの温度が上昇して溶融(可塑化)すると共に、均一な材料となるように練られながら第一の溶融樹脂3bとなる。
【0025】
第二の可塑化装置4も、図1に示すように、粉状又は粒状の第二の樹脂原料40bを可塑化して溶融樹脂4bとし、射出シリンダ1の合流樹脂流路1aに送り出すための装置であって、上記第一の可塑化装置3と同様の、スクリュー4c、ホッパー4dを具備している。そして、その内部には、第二の可塑化装置4で可塑化された第二の溶融樹脂4bを射出シリンダ1の合流樹脂流路1aに供給するための第二樹脂流路4aが形成されており、この第二樹脂流路4aは、合流樹脂流路1aの先端部(射出ノズル5の直近)に接続されている。
【0026】
本発明の射出成形方法は、上記構成の射出成形装置IMDを用いて二層構造の樹脂成形品を成形するものである。即ち、まず、第二の可塑化装置4に連通接続されているホッパー4dに第二の樹脂原料40bを投入すると共に、第一の可塑化装置3に連通接続されているホッパー3dにも第一樹脂原料30bを投入し、スクリュー3c,4cを回転させることで、樹脂原料30b,40bを可塑化して溶融樹脂3b,4bとする。
尚、ここでは図示していないが、射出シリンダ1の先端部に形成された射出ノズル5には、金型6が嵌合されている。
【0027】
次いで、射出シリンダ1の合流樹脂流路1aと第二の可塑化装置4の第二樹脂流路4aの接続箇所に設けられた開閉弁4eを開放し、図2に示すように、規定量の第二の溶融樹脂4bを射出シリンダ1の合流樹脂流路1aに送り出す。この際、射出プランジャ2で背圧(射出ノズル5側へ向かって所定の圧力を負荷する)をかけながら送り出すことで、射出シリンダ1に充填される溶融樹脂4bの密度が均一なものとなり、それによって品質の安定した樹脂成形品が得られる。このように、規定量の第二の溶融樹脂4bの充填作業が完了したら、開閉弁4eを閉じて、第二樹脂流路4aと合流樹脂流路1aとの連絡流路を遮断する。
【0028】
上記のように、規定量の第二の溶融樹脂4bを充填すると、射出シリンダ1の合流樹脂流路1aと第一の可塑化装置3の第一樹脂流路3aの接続箇所に設けた開閉弁3eを開放して、図3に示すように、第一の溶融樹脂3bを射出シリンダ1の合流樹脂流路1aに送り出す。この際も、上記と同様に、射出プランジャ2で背圧(射出ノズル5側へ向かって所定の圧力を負荷する)をかけながら溶融樹脂3bを送り出すようにする。合流樹脂流路1aには、既に規定量の第二の溶融樹脂4bが充填されているので、第一の溶融樹脂3bが第二の溶融樹脂4bの端部よりも射出ノズル5側に充填されることなく、第二の溶融樹脂4bの端部を境目に第一の溶融樹脂3bの流れが射出シリンダ1の基端部側へと変わり、射出シリンダ1の内部空間1bに充填されていく。
【0029】
上記のように、射出シリンダ1の合流樹脂流路1a内及び内部空間1bに、第一の溶融樹脂3b及び第二の溶融樹脂4bを充填すると、射出ノズル5に設けられた開閉弁5eを開放すると共に、射出プランジャ2を射出シリンダ1の先端部に向かって押し込むことにより可塑化された溶融樹脂3b,4bを金型6内に射出し、金型6内の内部空間に充填する。このとき、図8の(a)に示すように、まず、射出シリンダ1の先端側に充填された第二の溶融樹脂3bが金型6内に充填されていく。次いで、図8の(b)に示すように、射出シリンダ1の基端部(射出プランジャ2側)に充填された第一の溶融樹脂3bが金型6内に射出されて、先に金型6内に充填されている第二の溶融樹脂4bを金型6の内周面に向って押し広げながら金型6の中心に充填される。このようにして射出が完了すると、開閉弁5eを閉じて金型6を射出シリンダ1から取り外す。そして、溶融樹脂3b,4bが凝固すれば、第二の溶融樹脂4bが表面層を形成すると共に第一の溶融樹脂3bがコア層を形成した、樹脂混じりが殆どない二層構造の樹脂成形品が成形される。
【0030】
上記のように、1回目の射出(ファーストショット)が完了すると、図4に示すように、射出シリンダ1の合流樹脂流路1a及び射出シリンダ1の内部空間1bには第一の溶融樹脂3bが残存している。ここで、本発明の射出成形方法に用いる射出成形装置IMDは、第二の可塑化装置4の第二樹脂流路4aが、第一の可塑化装置3よりも射出ノズル5側の合流樹脂流路1aに接続されているので、図4に示す合流樹脂流路1a内及び射出シリンダ1の内部空間1bに第一の溶融樹脂3bが残存している状態からでも、第二の溶融樹脂4bを送り出すと、図5に示すように、合流樹脂流路1a内及び射出シリンダ1の内部空間1bに残っている第一の溶融樹脂3bを第二の溶融樹脂4bが射出プランジャ2側(射出シリンダ1の内部空間1b側)に押し戻しながら充填されていく(射出プランジャ2は送り出された第二の溶融樹脂4bの容積分だけ後退する)。しかしながら、本発明の射出成形方法に用いる射出成形装置IMDは、シンプル且つコンパクトなプリプラ式射出成形装置であるので、第一の溶融樹脂3bと第二の溶融樹脂4bをそれぞれ独立して射出することができない。このため、ノズルクリーニングができず、合流樹脂流路1a内に第一の溶融樹脂3bが残存している状態から第二の溶融樹脂4bを送り出したとしても、合流樹脂流路1aと第二樹脂流路4aとの接続箇所から射出ノズル5までの間の合流樹脂流路1a内には第一の溶融樹脂3bが残されてしまう。このように、合流樹脂流路1a内に第一の溶融樹脂3bが残されてしまうと、次ショットの際に、金型6内で表面層を形成する第二の溶融樹脂4bと混ざってしまい、第一と第二の溶融樹脂3b,4bが混ざった表面層を有する二層構造の樹脂成形品が得られてしまうことになる。この二種類の樹脂3b,4b混じりを最小限に抑えるため、本発明の射出成形装置IMDは、図1等に示すように、合流樹脂流路1aと第二樹脂流路4aとの接続箇所を、射出ノズル5の直近としている。
【0031】
そして、図6に示すように、規定量の第二の溶融樹脂4bを合流樹脂流路1aに送り出すと、射出プランジャ2はその送り出された第二の溶融樹脂4bの容積分だけ更に後退し、その後、射出シリンダ1の合流樹脂流路1aと第二の可塑化装置4の第二樹脂流路4aの接続箇所に設けた開閉弁4eを閉じると共に、射出シリンダ1の合流樹脂流路1aと第一の可塑化装置3の第一樹脂流路3aの接続箇所に設けられた開閉弁3eを開放し、第一の溶融樹脂3bを射出シリンダ1に送り出す。このように、第一の溶融樹脂3bを合流樹脂流路1aに送り出すと、第一の溶融樹脂3bが、既に充填されている第二の溶融樹脂4bを射出ノズル5側に押し出そうとする力が働くが、合流樹脂流路1aと第二樹脂流路4aの接続箇所の開閉弁4e及び射出ノズル5側の開閉弁5eは閉じられているので、第二の溶融樹脂4bが逆流することはなく、第二の溶融樹脂4bが壁のような役割を果たして、第一の溶融樹脂3bがそれより先に充填されるのが防止され、図7に示すように、第一の溶融樹脂3bは射出シリンダ1の合流樹脂流路1aの先端側に充填されることなく、射出シリンダ1の内部空間1bに充填されることになる(射出プランジャ2は、その送り出された第一の溶融樹脂3bの容積分だけ射出プランジャ2は更に後退する)。このように、合流樹脂流路1a内に残存している第一の溶融樹脂3bを、第二の溶融樹脂4bを送り出すことで射出プランジャ2側に押し戻したのち第一の溶融樹脂3bを充填することで、第二の溶融樹脂4bと第一の溶融樹脂3bの境界が明確となると共に、溶融樹脂3b,4bが合流樹脂流路1a内及び射出シリンダ1の内部空間1bに常に充填されている状態となるので、その後、前述したように射出シリンダ1内の第一の溶融樹脂3bと第二の溶融樹脂4bを一度に金型6内に射出しても、射出プランジャ2によって背圧をかけながら溶融樹脂3b,4bが送り出されるので、溶融樹脂3b,4bの樹脂密度が一定に保たれて、樹脂混じりが殆どない安定した品質の二層構造の樹脂成形品を成形することができる。
【0032】
尚、本実施形態では、射出シリンダ1内に溶融樹脂3b,4bが一切充填されていないまっさらな状態で、第二の溶融樹脂4bから先に充填して、一回目の射出(ファーストショット)を行う態様を詳述したが、射出シリンダ1内に第一の溶融樹脂3bを充填させてからスタートする態様もある。即ち、射出ノズル5に金型6を取り付けない状態で、第一の溶融樹脂3bを合流樹脂流路1aに送り出して充填し、その状態で射出プランジャ2を前進させて射出する(フリーショット)。フリーショットが完了すると、前述した図4に示す状態、即ち、合流樹脂流路1a内に第一の溶融樹脂3bが残存している状態となり、その後は、前述したように、第二の溶融樹脂4bを送り出して合流樹脂流路1a内に残存している第一の溶融樹脂3bを射出シリンダ1側に押し戻して(図5)、次いで第一の溶融樹脂3bを送り出して射出シリンダ1内に充填し(図6、図7)、最後に射出プランジャ2を前進させて射出することで、前述した実施形態と同様に、樹脂混じりが殆どない二層構造の樹脂成形品を成形することができる。特に、この実施形態は、フリーショットで第一の溶融樹脂3bを合流樹脂流路1a内に充填してからスタートするものであり、常に溶融樹脂3b,4bが合流樹脂流路1aや射出シリンダ1の内部空間1bに充填された状態で、射出プランジャ2によって背圧をかけながら溶融樹脂3b,4bを送り出すことができるので、合流樹脂流路1a内が空っぽの状態からスタートするよりも、溶融樹脂3b,4bの密度を一定に保つことができ、最初から安定して品質の良い樹脂成形品を得ることができる好ましい形態といえる。
【0033】
以上の説明から明らかなように、本発明の射出成形方法及び射出成形装置IMDは、可塑化装置3,4と射出装置IUとが独立したシンプル且つコンパクトなプリプラ式の射出成形装置IMDを用いるので、設置場所の確保が容易で、精密な二層構造の樹脂成形品を成形することができる。また、射出装置IUを持たない第一の可塑化装置3と第二の可塑化装置4を用いることで、射出は一度だけで済み、射出するタイミングや射出圧などの複雑な制御も不要となる。しかも、この際に用いる射出成形装置IMDは、第二の可塑化装置4の第二樹脂流路4aが、第一の可塑化装置3よりも射出ノズル5側(射出ノズル5の直近)に接続されているので、第二の溶融樹脂4bを射出シリンダ1の合流樹脂流路1aに送り出すと、合流樹脂流路1a内に残っている第一の溶融樹脂3bが、その送り出された第二の溶融樹脂4bによって射出プランジャ2側に押し戻されて、合流樹脂流路1a内に残存している第一の溶融樹脂3bと第二の溶融樹脂4bとが混ざることが殆どなくなるので、二種類の溶融樹脂3b,4bの混じりが殆どない二層の樹脂成形品を得ることができる。このような優れた作用効果を奏する射出成形装置IMDは、可塑化装置を1つ有する既存のプリプラ式射出成形装置に、別の可塑化装置を、既存の可塑化装置よりも射出ノズル側に接続するという簡単な改良で得ることができる。
【0034】
更に、本発明の射出成形装置IMDは、上記実施形態のように、第二の可塑化装置4の第二樹脂流路4aが第一の可塑化装置3よりも射出ノズル5側に接続されていれば図1に示すような形状に限定されるものではなく、例えば、第二樹脂流路4aを合流樹脂流路1aの中心に挿入して、第二樹脂流路4aの先端開口を射出ノズル5直近(開閉弁5e直近)まで延設した射出成形装置IMDでもよい。この場合、第二樹脂流路4aの先端開口から送り出される第二の溶融樹脂4bは、第二樹脂流路4aの中心軸を中心として放射状に逆流するため、第二樹脂流路4aの先端開口形状を先窄まりの台形状にすると、スムーズに第一の溶融樹脂3bを射出シリンダ1内に押し戻すことができる。また、射出ノズル5直近の開閉弁5eをニードル弁とすることもでき、その場合は、ニードル弁の周囲に第二樹脂流路4aを円環状に形成し、その先端開口を射出ノズル5直近まで延設することで対応することができる。
【符号の説明】
【0035】
IMD 射出成形装置
IU 射出装置
1 射出シリンダ
1a 合流樹脂流路
1b 射出シリンダの内部空間
2 射出プランジャ
3 第一の可塑化装置
3a 第一樹脂流路
3b 第一の溶融樹脂
30b 第一の樹脂原料
3c スクリュー
3d ホッパー
3e 開閉弁
4 第二の可塑化装置
4a 第二樹脂流路
4b 第二の溶融樹脂
40b 第二の樹脂原料
4c スクリュー
4d ホッパー
4e 開閉弁
5 射出ノズル
5e 開閉弁
6 金型
7 シリンダピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂原料を可塑化溶融する可塑化装置と、該装置で可塑化された溶融樹脂を射出シリンダ内に充填し、射出プランジャによって金型内に射出する射出装置とがそれぞれ独立して設けられたプリプラ式射出成形装置において、
第一の樹脂原料を可塑化溶融する第一の可塑化装置の第一樹脂流路が射出シリンダの合流樹脂流路に接続されていると共に、第二の樹脂原料を可塑化溶融する第二の可塑化装置の第二樹脂流路が、第一の可塑化装置よりも射出ノズル側に接続されており、
第二の可塑化装置で可塑化溶融された規定量の第二の溶融樹脂を射出シリンダの合流樹脂流路に送り出して充填したのち、第一の溶融樹脂を射出シリンダの合流樹脂流路に送り出して充填し、射出シリンダ内の第一の溶融樹脂と第二の溶融樹脂を、射出プランジャによって一度に金型内に射出することを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
樹脂原料を可塑化溶融する可塑化装置と、該装置で可塑化された溶融樹脂を射出シリンダ内に充填し、射出プランジャによって金型内に射出する射出装置とがそれぞれ独立して設けられたプリプラ式射出成形装置であって、
第一の樹脂原料を可塑化溶融する第一の可塑化装置の第一樹脂流路が射出シリンダの合流樹脂流路に接続されていると共に、第二の樹脂原料を可塑化溶融する第二の可塑化装置の第二樹脂流路が、第一の可塑化装置よりも射出ノズル側に接続されていることを特徴とする射出成形装置。
【請求項3】
第二の可塑化装置の第二樹脂流路の接続箇所が、射出ノズルの直近であることを特徴とする請求項2に記載の射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−116047(P2012−116047A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266458(P2010−266458)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】