説明

射出成形機の射出成形サイクルをシーケンシャルプログラミングするための方法

本発明は、複数のシーケンスを含む、射出成形機の射出成形サイクルをシーケンシャルプログラミングする方法に関する。射出成形サイクルのシーケンスは調整モードにおいて手動で完全にまたは部分的に実行され、ティーチモードにおいて手動で完全にまたは部分的に実行される。先ず前記調整モードにおいて射出成形機の一部が操作され、操作された部分の機能について検査され、検査された部分が続けてティーチモードにおいて所望の移動シーケンスに応じて再度操作され、移動シーケンスが射出成形機の制御部に記憶される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載されている射出成形機の射出成形サイクルをシーケンシャルプログラミングするための方法に関する。
【0002】
従来技術より、自由にプログラミング可能な制御(SPS)により射出成形機の射出成形サイクル、すなわち射出成形機の動作のプログラミングを射出成形機自体において(オンラインで)行うか、射出成形機から切り離して別個の端末において(オフラインで)行うことが公知である。オンラインプログラミングでは、射出成形機は比較的長い期間にわたり生産を行うことができない。オフラインプログラミングでは通常の場合、プログラミングにおける最終的な微調整を行うために、射出成形機を僅かな時間停止させるだけでよい。
【0003】
そのような自由にプログラミング可能な制御は通常の場合、射出成形機の調整および動作のためのデータ処理プログラムである。各射出成形機製造業者は通常の場合、機械プログラム用にアレンジされている自由にプログラミング可能な制御を提供している。しかしながらそのような制御では射出成形サイクルのシーケンスを変更することができない、もしくは機械製造業者の支援の下でしか変更することができない。ユーザまたは加工業者はプログラミングを行うことができない。
【0004】
これに関する発展形態は自由にプログラミング可能なシーケンシャル制御である。加工業者またはユーザには制御においてツールが提供され、このツールにより加工業者またはユーザは射出成形サイクルのシーケンスを所定の要素(マクロ)から作成することができる。その種の自由にプログラミング可能なシーケンシャル制御は刊行物「Kunststoffe」2003年8月号の第46頁〜49頁に記載されている。
【0005】
異なる製造業者の射出成形機を使用する加工業者は、所定の製品を製造するために必要とされる全てのシーケンスおよび動作を正確にプログラミングできるようにするために、種々の自由にプログラミング可能なシーケンシャル制御に熟知していなければならない。
【0006】
単一の製造業者のプログラミング可能なシーケンシャル制御に精通することですら容易ではなく、また人間が規則的にプログラムに取り組んでおらず、(別の製品が製造されるべきという理由から)比較的長い時間が経過した後にようやく新たなシーケンスをプログラミングする場合には、改めてこのプログラムに習熟しなければならず、このことは著しく時間を要する。この状況は、異なる製造業者の複数の射出成形機をプログラミングしなければならず、したがって異なる自由にプログラミング可能なシーケンシャル制御に精通すべき場合には遥かに困難になる。
【0007】
機器メーカから提供されるフローチャートは射出成形機のシーケンスをプログラミングする際のある程度の助けとなる。その種のフローチャートには、最終的に成型品が適切に製造されており、また問題なく機器から取り外すことができるようにするためには機器のどの部分が何時どのように移動しなければならないかが詳細に記述および説明されている。もっともこのフローチャートも自由にプログラミング可能な制御(SPS)にさらに入力しなければならないか、「正確に」シーケンシャルプログラミングされなければならず、これはやはりこの制御に関するある程度の知識を前提としている。その他の点では、その種のシーケンシャルプログラムを全ての機器に使用することはできない。さらには、「前進」と「後退」または「突入」と「突出」のような位置の指示が一義的でない場合にはエラーが生じる可能性がある。操作者は射出成形機または機器に関する専門的な知識を有していないことが多いということを考慮しなければならない。
【0008】
全ての自由にプログラミング可能な制御(SPS)ならびに前述の自由にプログラミング可能なシーケンシャル制御の基本的な問題は、先ず全ての射出成形サイクルが制御部に入力され、続いてサイクルまたはサイクルの一部を安全にテストできなくても全体が実行されることである。エラーは多くの場合、機器の重大な損傷を引き起こす。
【0009】
機械のプログラミングを簡略化するために、いわゆる「ティーチシステム(Teach-Systeme)」または「ティーチインシステム(Teach-In-Systeme)」が公知である。このシステムは、複雑な機械のプログラミングを容易にし、また通常の場合プログラミングに関する知識または機械の制御に関する知識を必要としない補助手段である。DE 199 00 117 A1からは研削機械または他の工作機械をプログラミングするためのティーチインシステムが公知である。このティーチインシステムは、未加工品、工作物および工具を視覚的に表すためのグラフィックユーザインタフェースを有する。図示すべき構成要素は相応の操作エレメントによって任意に相互に関連付けて移動させることができる。移動結果がティーチインモジュールによって記録され、機械制御プログラムに翻訳されるか、既存の制御プログラムがこの移動に基づき変更される。これはいわゆる仮想ティーチインシステムである。
【0010】
プログラム制御式の工業ロボットの分野においては、ロボットの制御部に工作物に関するマニプレータアームの移動を教える(ロボットのティーチ)ための別のティーチイン方法およびティーチインシステムが公知である。手動でロボットの所望の移動が入力装置に入力され、しかも数字または文字記号を用いて入力される。データ処理プログラムはこの入力値を工業ロボットのための「移動プログラム」に変換する。すなわち移動シーケンスが自動的にプログラミングされる。工業ロボット用のその種のティーチインシステムは例えばEP 0 792 726 B1およびUS 4,224,501から公知である。さらにEP 1 048 995 A2からは、射出成形機の型から射出成形品を取り出すためのロボット用の仮想ティーチインシステムが公知である。
【0011】
US 4,696,632からは射出成形機のティーチイン方法が公知であり、このティーチイン方法においては可動側金型が閉鎖位置から開放位置に移動され、可動側金型が移動方向に応じて加速または減速されるべき位置がティーチされ、これによりそれぞれの所望の最終位置に正確に到達することができる。
【0012】
本発明が基礎とする課題は、射出成形機の完全な射出成形サイクルのシーケンシャルプログラミングが簡略化され、製造業者固有のプログラムに依存せず、したがって汎用的にあらゆる射出成形機に使用することができる方法を提供することである。
【0013】
この課題は、請求項1の特徴を備えた方法によって解決される。有利な実施形態および発展形態は従属請求項に記載されている。
【0014】
射出成形サイクルのシーケンスが先ず調整モジュールにおいて手動で実行され、その機能について検査され、続けて検査された部分がティーチモジュールにおいて所望の移動シーケンスに応じて再び動作され、この移動シーケンスが射出成形機の制御部に記憶されることによって、一方では既にティーチの前に障害が識別および除去され、他方では操作者は射出成形機の部分がどこに移動されるかを確認するので、特定の方向または位置がどのように表されるかは重要ではない。例えば、「コア突入移動」または「コア突出移動」をどのように理解しなければならないかは重要ではない。したがって、「突入」と「突出」が取り違えられ、完全なプログラミングの終了後に全体の移動シーケンスが一度実行される場合における、自由ではあるが手動で行われるプログラミング可能な制御の際に生じる可能性があるようなエラーは回避される。さらには、操作者が制御に関する深い知識を有していなくても複雑なシーケンスを実現することができる。つまり射出成形機の一部のシーケンスを知るだけでよい。調整モードおよびティーチモードにおいては射出成形機の一部が移動する際に発生する力は著しく低減されているので、場合によってエラーが生じたとしても障害は発生しない、または僅かな障害が発生するに過ぎない。
【0015】
有利には、射出成形機によって実行される動作、例えば閉鎖力の形成または閉鎖力の開放、またはスクリュを用いる保持圧力の形成をティーチモードにおいて運動シーケンスのティーチ中に一緒にティーチすることができる。同様に、ティーチモードにおいては付加的な機能または補助的な機能を起動させるための開始条件をセットすることができる。例えば、射出ユニットの前方への移動、また射出ユニットと固定側金型との連結は最初のサイクルにのみ行われるべきことをティーチングすることができる。
【0016】
ティーチモードにおいて射出成形機の一部、例えば移動する機器または可塑化スクリュが到達する位置を手動で操作機器に入力することができる。しかしながらそれらの位置を、例えば位置センサを介して自動的に識別し、自動的に一緒にティーチすることができる。
【0017】
必要に応じて、射出成形機の一部によって実施されるべき動作に関して、この動作を表す物理的パラメータを動作のティーチ中にディスプレイに表示することができる。必要に応じて、この物理的パラメータに関する目標値および許容値も一緒にディスプレイ上に表示することができる。このようにして操作者は、物理パラメータがこの動作のティーチ時に所定の許容値内に留まっているか否かを追跡することができる。例えば、閉鎖圧力または閉鎖力Fの経過を時間tにわたり表示することができる。
【0018】
ティーチが終了すると、操作者が射出成形サイクルを一度自動的に実行させ、続けて最適化すべきパラメータを変更させることにより移動シーケンスを最適化させることができる。例えば、エジェクタまたはコアプルをより速く前進させることができ、このために例えば液圧式の射出成形器ではオイル量を相応に高めることができる。
【0019】
以下では、図1から図5を参照しながら、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】液圧駆動式の射出成形機の概略的な実施例を示す。
【図2】射出成形型の概略的な実施例を示す。
【図3】操作装置の概略的な実施例を示す。
【図4】シーケンシャルプログラミングの実施例を示す。
【図5】シーケンシャルプログラミングの別の実施例を示す。
【0021】
図1に概略的に示されているそれ自体公知の液圧駆動式の射出成形機は、閉鎖ユニット1および射出ユニット2を有し、これらは機台3によって支持されている。閉鎖ユニット1は固定側金型9aを備えた固定側ダイプレート4と、可動側金型9bを備えた可動側ダイプレート5と、支持板6と、トグル機構7と、このトグル機構7を動かすための液圧シリンダ8(閉鎖シリンダ)とを有する。液圧シリンダ8により可動側金型5は前進することができ、また必要な閉鎖圧力を形成することができる。一方では可動側ダイプレートを移動させるため、また他方では必要な閉鎖圧力を形成するために別個の液圧シリンダを設けることも考えられる。さらには、エジェクタを動かすための液圧シリンダ10およびコアプルを動かすための1つまたは複数の液圧シリンダ11が設けられている。射出ユニット2は、粒状のプラスチックを投入するためのホッパ13を備えた可塑化シリンダ12と、回転駆動および線形駆動する可塑化スクリュ14とを有する。回転駆動部として液圧モータ15が使用され、この液圧モータ15の回転運動は軸16、歯車17および歯車18を介して可塑化スクリュ14の駆動軸19に伝達される。線形駆動部として駆動軸19と連結されている液圧シリンダ20(噴射シリンダ)が使用される。別の液圧シリンダ21(送りシリンダ)を用いて射出ユニット2全体を機台3上で前進させることができる。射出成形された成形品を取り出すためのそれ自体公知のロボットは図示していない。
【0022】
図2には、2つのエジェクタロッドを備えたエジェクタと3つのコアプルとを有する射出成形型の概略的な実施例が示されている。固定側金型9aは固定側ダイプレート4上に固定されており、可動側金型9bは可動側ダイプレート5上に固定されている。可動側ダイプレート5には2つのエジェクタロッド23および24を備えたエジェクタプレート22が配置されており、このエジェクタプレート22は後退位置zと前進位置vとの間で往復移動することができる。さらに3つのコアプルK1,K2およびK3が設けられており、これらのコアプルは射出成形サイクルの異なる時点にキャビティ25内または固定側金型9aと可動側金型9bとの間に突入し、またそこから突出することができる。ここでは突出した位置がAで表されており、また突入した位置がEで表されている。この実施例においてキャビティ25は射出成形型9の固定側金型9a内に形成されている。左側に示されている図2aは射出成形機の閉鎖ユニットの長手方向断面図に対応し、右側に示されている図2bは矢印Pの方向から見た固定側金型の平面図に対応する。
【0023】
図3は、調整モードおよびティーチモードにおいて射出成形サイクルを実行するための操作装置30を示す。操作装置は線路31を介して射出成形機の制御部32と接続されている。別個の操作装置30から射出成形機の制御部32への無線によるデータ伝送も同様に考えられる。操作装置はコアK1,K2およびK3を操作するための3つのスイッチと、金型を突き出しおよび閉鎖させるためのスイッチと、エジェクタプレート22、可塑化スクリュ14および射出ユニット2全体を前進および後退させるための1つのスイッチを有する。到達した位置の確定および記憶を「ENTER」キーを介して行うことができる。さらに、動作の実行およびティーチ用のスイッチキーまたはボタンが設けられている。この実施例においてスイッチキーまたはスイッチボタンは閉鎖力の形成および開放、保持圧力の形成および開放、可塑化(可塑化スクリュの回転)、ロボットの選択のためのものである。さらに操作装置は所定の動作、例えば時間tにわたる閉鎖力Fの経過を表示することができるディスプレイを有する。別個の操作端末を使用する代わりに、シーケンシャルプログラミングを制御部32自体において行うこともできる。
【0024】
以下では図4に基づき射出成形機のシーケンシャルプログラミングを説明する。左側の列(列1=図4a)には、射出成形サイクルにおいて実施されるべきステップが示されており、複数のステップがシーケンスS1〜S4を形成する。中央の列(列2=図4b)には、射出成形機の調整モードにおいて手動で実行されるシーケンスまたはステップが示されている。右側の列(列3=図4c)には、射出成形機のティーチモードにおいて手動で実行されるシーケンスまたはステップが示されている。図4dのボックス内には図4bおよび4cのフローチャートにおいて使用されている記号の意味が説明されている。
【0025】
以下の状況を前提とする。射出成形型が射出成形機に取り付けられている。すなわち金型9a,9bがダイプレート4および5に固定されている。閉鎖ユニット1は開かれた状態にある。エジェクタプレート22ならびにコアK1,K2およびK3はそれぞれ後方の位置、すなわちエジェクタプレート22は後退した位置zにあり、コアは突出した位置Aにある。同様に射出ユニット2は後退した位置にあり、この後退した位置において噴射ノズルは固定側金型から引き出されており、金型との間に距離を有している。可塑化スクリュ(以下では単にスクリュと記す)は後方の位置にあり、したがって噴射シリンダ20は空である。ロボットは閉鎖ユニットの外側の安全な位置にある。この位置ないし状態が射出成形機の制御部に出発位置として記憶される。
【0026】
この状況から出発して、操作装置30においては先ず射出成形機の調整モードが選択され、この選択のために前述のボタンが押される。調整モードにおいては、先ずエジェクタ、コアおよび閉鎖ユニットがその機能について検査される。このために先ずエジェクタプレート22が相応のスイッチの切り替えによって位置zと位置vの間を何度も往復移動する。同様にコアK1,K2およびK3が相応のスイッチの切り替えによって位置Aと位置Eの間を何度も往復する。続けて可動側ダイプレートが相応のスイッチの切り替えによって一度または何度か突き出しおよび閉鎖される。これらは移動方向および最終位置信号の制御に使用される(リミットスイッチ)。可動部が正常に機能する場合にはティーチモードに切り替えられる。このために操作装置30の前述のボタンが押される。
【0027】
ここで射出成形サイクルの第1のシーケンスS1のティーチを開始することができる。可動側金型用のスイッチは「停止」位置から「前進」位置に回され、これにより液圧シリンダ8に作動液が加えられる。その結果、可動側ダイプレート、またそれと共に可動側金型も固定側金型9aに向かって前進移動する。所定の位置P1に到達すると、この位置P1がENTERキーの操作によって射出成形機の制御部に読み込まれる。この位置P1においてコアK1は最終位置に到達するまで突入されるべきである。このためにコアK1に割り当てられているスイッチK1がE位置に回され、これにより所属の液圧シリンダが操作される。コアK1が突入され、この突入の終了がリミットスイッチによって識別され、自動的に制御部に記憶される。コアの機能を金型とは別個に(金型の移動無し)ティーチすることも、金型と並行して(コアと閉鎖キーが同時に操作される)ティーチすることもできる。択一的に、突入が終了した際に到達する位置になるとENTERキーを操作し、コアK1のこの位置を手動でティーチすることもできる。続けて、可動側ダイプレートは位置P2に到達するまでさらに前方に向かって前進され、この位置P2もENTERキーの操作によって制御部に読み込まれる。これに並行してコアK2が突入され、このためにスイッチK2が位置Eに回される。コアK2が進むべき区間を上記のようにリミットスイッチを介して識別し、自動的にティーチすることができる。しかしながらティーチをコアK1の駆動制御時間にわたり行うこともできる。すなわちスイッチが位置Eにある限り、所属の液圧シリンダには所定の圧力下で所定量のオイルが供給される。キーを介してオイル量および圧力を入力することができ、これらは必要に応じてシーケンシャルプログラミングを開始する前に入力することもできる。続けて、可動側ダイプレートは金型9aと9bが閉じられるまで、すなわちこれらの金型が分離面において接触するまでさらに前進される。この位置P3が同様にENTERキーの操作によって制御部に読み込まれる。それと同時に、この位置P3において動作「閉鎖力形成」がティーチされる。このティーチは、閉鎖力の値が所望の値に達するまで操作装置の所属のボタンが押されることによって行われる。このために操作装置または制御部のディスプレイには閉鎖力の時間にわたる経過を表示することができる。実際値の経過を表示する他に、目標値および/または許容値を同じ尺度で同一のディスプレイに表示することができる。このようにして操作者は閉鎖力が所定の限界値内で推移しているか否かを判別する。所望の閉鎖力に達するとボタン「閉鎖力形成」が放され、これによりこの動作のティーチは終了する。この最後のステップにより射出成形サイクルの第1のシーケンスS1のティーチは終了する。
【0028】
第2のシーケンスのティーチの前に、ティーチモードから調整モードに切り替えられる(図4bを参照されたい)。射出ユニット用のスイッチの操作によって液圧シリンダ21には作動液が加えられ、スイッチの位置に応じて射出ユニットを固定側金型9aに向かって前進させ、また固定側金型9aから離れるように後退させることができる。この工程を1回または複数回実施することができる。射出ユニットが再び後方の位置に戻ると、射出シリンダ20には所属のスイッチの操作によって作動液が加えられ、スクリュが前方に向かって移動し、場合によっては既に融解されたプラスチック材料が噴出される。続いて液圧モータ15が操作され、スクリュが回転移動する。粒状のプラスチックが公知のように投入され、融解され、スクリュ前方の空間に供給され、スクリュはそれと同時に後方に移動される。十分な量の溶融されたプラスチックがスクリュ前方の空間に蓄積されると、噴射シリンダ20が再び操作され、スクリュは前方に向かって移動され、融解物が噴出される。噴出された材料が検査される。検査結果が期待したものでない場合(材料合格=ノー)、ステップ「可塑化、材料準備、スクリュ前進、材料噴出」が繰り返され、しかも材料が設定に応じるまで(材料合格=イエス)何度も繰り返される。
【0029】
結果が「材料合格=イエス」の場合には、射出ユニット2に関係する射出成型サイクルの第2のシーケンスがティーチされる。操作装置30におけるボタン「ティーチモード」の操作によって、調整モードからティーチモードに切り替えられる。シーケンスS2の第1のステップにおいては射出ユニット2の前方への移動がティーチされる。このために所属のスイッチが位置「前進」に回され、これにより液圧シリンダ21が操作される。すなわち射出ユニットが前方に向かって移動される。噴射ノズルが金型9aと連結され、所定のノズル押し付け力に達すると、そこで到達した位置および液圧シリンダ21内において達した圧力が制御部に記憶される。ENTERキーを介してこの位置を入力することができる。つまり達した圧力を必要に応じて自動的に制御部に記憶することができる。同時に、射出ユニット2の前進は最初の射出サイクルにおいてのみ実施されるべきであるというスタート条件がセットされる。次のステップとしてスクリュの前方への移動がティーチされる。噴射圧力の所望の経過に応じてスクリュの種々の位置をティーチすることができる。このティーチを可動側金型の位置のティーチと同様に行うことができる。スクリュの一番先の位置がティーチされると、この位置において実施すべき動作「保持圧力の形成」をティーチし、この位置にこの動作を対応付けることができる。保持圧力が維持されるべき時間をティーチすることができる。保持圧力の高さを直接的に制御部に入力することができるか、事前に設定することができる。保持圧力フェーズの終了後には可塑化を開始し、スクリュを後退させなければならない。この時点が保持圧力に関する時間の経過としてティーチされ、一方では液圧モータ15を始動させるために使用され、他方では噴射シリンダ20を可制御で後退させるために使用される。スクリュの後退がティーチされると、ティーチモードにおける射出成型サイクルの完全なシーケンスS2は実行されており、所属の移動および動作が制御部においてティーチおよび記憶される。
【0030】
続けてシーケンスS3およびS4が同様に、必要に応じて先ず調整モードにおいて手動で実行され、機能検査が行われた後に続けてティーチモードにおいて実行される。
【0031】
シーケンシャルプログラミングの終了時には全てのシーケンスS1〜S4がティーチされている。すなわち完全な射出成型サイクルのシーケンシャルプログラミングが終了している。
【0032】
拡張形態として、ティーチされた個々のシーケンスを適切なエディタにおいて新たに組み合わせることができ、ファンクションの順序また場合によっては行われる反復を自由に構成することができる。これを図5に基づき説明する。先ずシーケンスS1〜S5が本発明にしたがいティーチされる。続けてこれらのティーチされたシーケンスが適用事例に応じて任意の順序で編成される。シーケンスを繰り返し行ってもよい。一例としてエジェクタ振動ストロークを使用することができる。エジェクタの前進および後退が一度ティーチされ、例えばシーケンスS5として記憶される。つまりこのシーケンスはエディタにおいて繰り返し挿入される。
【0033】
調整モードにおいてもティーチモードにおいても、射出成形器の一部を低減された力(すなわち液圧式の射出成形器の場合には低減された液圧)または実際のプロセス値(高圧力且つ高速)を選択して操作することができる。
【0034】
最後に、方法に関するパラメータ、例えば前進速度、待機時間(例えば冷却時間)、監視時間、圧力などを直接的に機械制御部に入力することができるか、シーケンスをティーチする際の問合せに基づき機械制御部に入力することができる。操作者による移動シーケンスの最適化を容易にするための補助プログラムを設けることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 閉鎖ユニット、 2 噴射ユニット、 3 機台、 4 固定側ダイプレート、 5 可動側ダイプレート、 6 支持板、 7 トグル機構、 8 閉鎖シリンダ、 9a 固定側金型、 9b 可動側金型、 10 エジェクタ液圧シリンダ、 11 コアプル液圧シリンダ、 12 可塑化シリンダ、 13 ホッパ、 14 可塑化スクリュ、 15 液圧モータ、 16 モータ軸、 17,18 歯車、 19 スクリュ軸、 20 噴射シリンダ、 21 送りシリンダ、 22 エジェクタプレート、 23,24 エジェクタロッド、 25 キャビティ、 30 操作装置、 31 接続線路、 32 射出成形機の制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシーケンスを含む、射出成形機の射出成形サイクルをシーケンシャルプログラミングする方法であって、
前記射出成形サイクルの前記シーケンスを調整モードにおいて手動で完全にまたは部分的に実行し、ティーチモードにおいて手動で完全にまたは部分的に実行する、射出成形機の射出成形サイクルをシーケンシャルプログラミングする方法において、
先ず前記調整モードにおいて前記射出成形機の一部を操作し、該操作された部分の機能について検査し、検査された部分を続けて前記ティーチモードにおいて所望の移動シーケンスに応じて再度操作し、該移動シーケンスを前記射出成形機の制御部に記憶することを特徴とする、射出成形機の射出成形サイクルをシーケンシャルプログラミングする方法。
【請求項2】
前記射出成形機が実行すべき動作、例えば閉鎖力の形成または閉鎖力の開放を前記ティーチモードにおいて、前記移動シーケンスのティーチ中に一緒にティーチする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ティーチモードにおいて、付加的な機能または補助的な機能を起動させるための開始条件をセットする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
閉鎖ユニットの部分の機能を検査し、該部分の移動シーケンスをティーチする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
噴射ユニットの部分の機能を検査し、該部分の移動シーケンスをティーチする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記調整モードにおいて、溶融されたプラスチックを射出ユニットから噴射し、該溶融されたプラスチックを検査し、該溶融されたプラスチックが所定の判定基準を満たすと、前記調整モードから前記ティーチモードに切り替える、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ティーチモードにおいて到達した位置を自動的に識別し、前記制御部に記憶する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ティーチモードにおいて、前記射出成形機の部分に関する駆動制御時間を前記制御部に入力する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
実行すべき前記動作を時間の入力によりティーチする、請求項2から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記動作を表す物理的なパラメータを該動作のティーチ中にディスプレイに表示する、請求項2から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記物理的なパラメータに関する目標値および許容値を前記ディスプレイに表示する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
個々のシーケンスを完全にまたは部分的に前記ティーチモードにおいて手動で実行し、移動シーケンスを前記射出成形機の制御部に記憶する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記射出成形サイクルに組み込まれる周辺機器、例えばロボットが設けられており、該周辺機器の部分を同様に手動で前記調整モードにおいて操作し、続けて前記ティーチモードにおいて操作し、該周辺機器の移動シーケンスを前記制御部に記憶する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
ティーチされた個々のシーケンスをエディタにより自由に組み合わせ、繰り返し実行し、個々の移動ステップから完全な機能シーケンスを作成する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−510105(P2010−510105A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537600(P2009−537600)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062230
【国際公開番号】WO2008/061910
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(508050211)クラウスマッファイ テヒノロギース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (17)
【氏名又は名称原語表記】KraussMaffei Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Krauss−Maffei Strasse 2, D−80997 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】