説明

射出成形用金型

【課題】溶融樹脂をキャビティに充填する際に内部のガスを外部へ放出することで、筒状の成形品の品質を高く保つこと。
【解決手段】固定側金型20と、可動側金型30と、これら固定側金型20及び可動側金型30により形成された筒状のキャビティと、このキャビティの軸方向の両端側にそれぞれ設けられ、溶融樹脂を導入するためのゲートと、キャビティの内部側を形成するとともにキャビティの軸方向に沿って接離する一対のコアピン42,52と、コアピン42に設けられ、キャビティの内側面と外部とを連通するガス抜き孔43とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティ内に溶融樹脂を充填して成形品を製造する射出成形用金型に関し、特にキャビティ内に残るガスを抜くための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材製の成形品を成形する装置として射出成形用金型が知られている。射出成形用金型は、成形品の型となる凹凸が可動型や固定型に予め構成され、これらの型を突き合わせることで、凹凸の表面からなる中空のキャビティをこれらの型間に形成させる。このキャビティには射出機から溶融樹脂が流し込まれ、キャビティ内にその樹脂が充填されると、この樹脂は冷却されて固化する。そして、可動型及び固定型が型開きして元の状態に戻ることにより、凹凸の形状が樹脂表面に転写された成形品が取り出される。
【0003】
なお、樹脂がキャビティ内に充填される際には、元々キャビティ内に残っていたガスが行き場を失うため、成形品と金型との隙間から外部に放出したり、ガス抜き孔が設けられた射出成形用金型が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−11170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した射出成形用金型では、次のような問題があった。すなわち、筒状の成形品を形成する場合には、さらに内壁面を形成するための一対のコアピンが用いられる。一対のコアピンは成形品の両開口端にあたる部分から内部に挿入され、成形品の中央部付近で互いの先端部が当接される。このため、成形品の外周側に残ったガスは外部に放出できるが、成形品の内周側に残ったガスは行き場を失い、樹脂の内部に入り込んでしわが生じたり、白化する等、品質が低下する虞があった。
【0005】
そこで本発明は、溶融樹脂をキャビティに充填する際に内部のガスを外部へ放出することで、筒状の成形品の品質を高く保つことができる射出成形用金型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の射出成形用金型は次のように構成されている。
【0007】
固定型と、可動型と、これら固定型と可動型とにより形成された筒状のキャビティと、上記キャビティの軸方向の両端側にそれぞれ設けられ、溶融樹脂を導入するためのゲートと、上記キャビティの内部側を形成するとともに上記キャビティの軸方向に沿って接離する一対のコアピンと、上記一対のコアピンのうち、少なくとも一方のコアピンに設けられ、上記キャビティの内側面と外部とを連通するガス抜き孔とを備えていることを特徴とする。
【0008】
固定型と、可動型と、これら固定型及び可動型の少なくとも一方に設けられ、その先端がキャビティに面する突部と、この突部の先端に設けられ、上記キャビティと外部とを連通するガス抜き孔とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、溶融樹脂をキャビティに充填する際に内部のガスを外部へ放出することで、筒状の成形品の品質を高く保つことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る射出成形用金型10を示す斜視図、図2は射出成形用金型10の要部を示す縦断面図、図3は同射出成形用金型10に組み込まれたコアピン42を示す斜視図、図4は同射出成形用金型10の型開きの状態を示す斜視図、図5は同射出成形用金型10によって成形された成形品Pを示す斜視図である。なお、図中Cはキャビティを示している。
【0011】
射出成形用金型10は、固定側金型20と、この固定側金型20に対向は位置されるとともに接離自在に配置された可動側金型30と、可動側金型30に設けられた第1スライド40及び第2スライド50とを備えている。
【0012】
固定側金型20には、成形品Pの外周側の型となる凹凸(不図示)が設けられている。また、可動側金型30には、成形品Pの外周側の型となる凹凸31と、第1スライド40及び第2スライド50を往復自在に支持するための溝部32と、キャビティCの軸方向両端側に溶融樹脂を流入させるためのゲート33とを備えている。
【0013】
第1スライド40は、溝部32に沿って往復動可能な基台41と、この基台41から第2スライド50側に向けて突設され、成形品Pの内周側を成形するための円柱状のコアピン42とを備えている。
【0014】
コアピン42には、その中心軸に沿ってガス抜き孔43が形成され、基台41を介して外部とコアピン42の先端部とを連通している。コアピン42の先端部は図3に示すようにガス抜き孔43の開口部44が形成されるとともに、この開口部44の周囲に形成された深さ0.5〜2mm程度のガス逃げ凹部45と、このガス逃げ凹部45から径方向に延びた深さ0.02〜0.04mm、幅5〜20mm程度のガス抜き溝46とが設けられている。
【0015】
第2スライド50は、溝部32に沿って往復動可能な基台51と、この基台51から第1スライド40側に向けて突設され、成形品の内周側を成形するための円柱状のコアピン52とを備えている。
【0016】
このように構成された射出成形用金型10では、次のようにして成形品Pを成形する。すなわち、図1に示すように固定側金型20及び可動側金型30、第1スライド40及び第2スライド50をセットする。次に、ゲート(不図示)を介して溶融樹脂をキャビティ内に充填する。このとき、溶融樹脂は図2に示す第1スライド40の基台41側及び第2スライド50の基台51側から充填されるため、キャビティ内のガスは中央部に集まってくる。そして、ガス抜き溝46、ガス逃げ凹部45を介してガス抜き孔43に入り、外部へ放出される。したがって、行き場を失った空気やガスが溶融樹脂内に入り込むことで生じる不具合、すなわち、しわや白化を防止することができる。
【0017】
また、コアピン42とコアピン52を離間させ、固定側金型20から可動側金型30を外す際、ガス抜き孔43から外気が取り入れられるため、内部に負圧が生じることがなく、容易に型開きを行うことができる。
【0018】
なお、図4に示す成形品Pにおいては、ゲートに充填された図5に示す樹脂Rが残っているため、製品とする前に除去が行われる。
【0019】
上述したように本実施の形態に係る射出成形用金型10によれば、筒状のキャビティに溶融樹脂が充填される際に、キャビティ内の空気や溶融樹脂から発生したガスを円滑に外部に排出することができるため、しわの発生や白化を防止することができ、成形品Pの品質を維持することができる。
【0020】
図6は本発明の第2の実施の形態に係る射出成形用金型60の一方の固定側金型61を示す斜視図、図7は同射出成形用金型60によって成形された成形品Qを示す斜視図である。
【0021】
固定側金型61は、金型本体62と、成形品Qの型となる凹凸63が設けられている。凹凸63のうち、成形品Qの肉逃げ部Q1に相当する突部64には、ガス抜き孔65が設けられ、外部に連通している。ガス抜き孔65の周囲には深さ0.03〜0.05mm、幅2〜5mm程度のガス抜き溝66が形成されている。
【0022】
このように構成された射出成形用金型60においては、キャビティ内に残ったキャビティ内の空気や溶融樹脂から発生したガスを円滑に外部に排出することができるため、しわの発生や白化を防止することができ、成形品Pの品質を維持することができる。
【0023】
上述したように本実施の形態に係る射出成形用金型60によれば、上述した射出成形用金型10と同様の効果を得ることができる。
【0024】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る射出成形用金型を示す斜視図。
【図2】同射出成形用金型の要部を示す縦断面図。
【図3】同射出成形用金型に組み込まれたコアピンを示す斜視図。
【図4】同射出成形用金型の型開きの状態を示す斜視図。
【図5】同射出成形用金型によって成形された成形品を示す斜視図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る射出成形用金型のうち固定側金型を示す斜視図。
【図7】同射出成形用金型によって成形された成形品を示す斜視図。
【符号の説明】
【0026】
10…射出成形用金型,20…固定側金型,30…可動側金型,40…第1スライド,42…コアピン,43…ガス抜き孔,45…ガス逃げ凹部,46…ガス抜き溝,50…第2スライド,52…コアピン,60…射出成形用金型,61…固定側金型,64…突部,65…ガス抜き孔,66…ガス抜き溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と、
可動型と、
これら固定型と可動型とにより形成された筒状のキャビティと、
上記キャビティの軸方向の両端側にそれぞれ設けられ、溶融樹脂を導入するためのゲートと、
上記キャビティの内部側を形成するとともに上記キャビティの軸方向に沿って接離する一対のコアピンと、
上記一対のコアピンのうち、少なくとも一方のコアピンに設けられ、上記キャビティの内側面と外部とを連通するガス抜き孔とを備えていることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
上記ガス抜き孔が設けられたコアピンは、その先端部に形成され、上記ガス抜き孔と連通するとともに、上記コアピンの径方向に沿って形成されたガス抜き溝をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
固定型と、
可動型と、
これら固定型及び可動型の少なくとも一方に設けられ、その先端がキャビティに面する突部と、
この突部の先端に設けられ、上記キャビティと外部とを連通するガス抜き孔とを備えていることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項4】
上記突部は、その先端部に形成され、上記ガス抜き孔と連通するとともに、上記突部の径方向に沿って形成されたガス抜き溝をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載の射出成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−196639(P2007−196639A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21190(P2006−21190)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】