説明

射出成形装置及び射出成形方法

【課題】形状および射出量が異なった一半部4、他半部5、一体化部6を射出機9の一回の樹脂材計量、金型7、8の1回の型締めで射出成形できるようにする。
【解決手段】射出機9は、一半部4、他半部5、一体化部6を射出成形するに必要な全射出量Mを計量し、該計量したもののうち一半部4、他半部5、一体化部6に相当する射出量を順次射出するものとし、金型には、射出機から分岐形成された各流路10〜15を開閉するバルブゲートピン10a〜15aが設けられ、前記射出量に対応する部位のバルブゲートピンを開放し他のバルブゲートピンは全て閉じるようにして各部位に順次射出するようにして1回の型締めで3射出を連続的にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出量や型面形状が異なった複数の射出成形を、金型は1回の型締め、射出機は1回の計量で射出成形するための射出成形装置及び射出成形方法の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂材(射出材)を射出成形して成形体を成形する場合、射出機から樹脂材を型締めされた金型の型面内に射出して行うが、このような場合において、成形体を一つずつ生産するのでは生産能率が悪く、そこで複数個の成形体を1回の射出で同時に射出成形することが試みられている。このとき、同じ成形体を同時に複数個を射出成形するものであれば、各成形体に対する樹脂材の射出量は同じであるから、射出機において計量される樹脂材量は、生産する成形体の数に準じた量となり、そして各成形体の型面形状も同じであるから射出機から射出された樹脂材は各型内に対して射出圧が同じ状態で等分に射出されることになって一度の射出で複数個を射出成形することができる。
これに対し、樹脂材量(射出量、射出容量)が大小異なる複数の型面に対して樹脂材を一度で射出した場合、樹脂材量が異なる故、最初に樹脂材量が大きく樹脂材が流れやすい金型に射出され、そしてある程度射出されて樹脂材の射出抵抗が大きくなると、樹脂材量が小さい金型に射出され、ここにある程度射出されて射出抵抗が大きくなると、再度大きい樹脂材量の金型に射出されるようなことを繰返す等のちぐはぐな射出がなされ、このため先行して射出された樹脂材の固化が始まったりして樹脂材の円滑な射出が阻害され、細かい形状の型面部分が未充填になったり、充填された樹脂材の固化が不均一になって縞状の成形体になったりするという問題がある。
この改善策として、射出機をターンテーブルにセットし、放射状に配した複数の金型に順次射出するようにしたものが提唱されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−129282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来のものは、各金型の射出量に対応する樹脂材の計量を、射出機が後退、旋回、前進の移動動作と並行していちいち各別に行うようにしているため、作業能率が悪く、生産性に劣るという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、型締めされた金型に形成された形状および/または射出量が異なる複数の型面内に、射出機から同一の射出材を射出して複数の射出成形を1回の型締めで行うように構成するにあたり、前記射出機は、複数の射出成形をするに相当する量の射出材を計量し、該計量した射出材から各型面に相当する量の射出材を順次射出するように設定され、前記射出機から各型面に至るべく前記金型に分岐形成された射出材の各流路には、前記射出機が射出材を射出する順序に合わせて対応する型面に射出材が充填されるよう流路開閉をする流路開閉手段が設けられていることを特徴とする射出成形装置である。
請求項2の発明は、型締めされた金型に形成された形状および/または射出量が異なる複数の型面内に、射出機から同一の射出材を射出して複数の射出成形を1回の型締めで行うように構成するにあたり、前記射出機は、複数の射出成形をするに相当する量の射出材を計量し、該計量した射出材から各型面に相当する量の射出材を順次射出するものであり、前記射出機から各型面に至るべく前記金型に分岐形成された射出材の各流路は、前記射出機が射出材を射出する順序に合わせて対応する型面に射出材が充填されるよう流路開閉手段により開閉するようにしたことを特徴とする射出成形方法である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1または2の発明とすることにより、射出機については1回の計量で、金型については1回の型締めで射出量や型面形状が異なった複数の型面に射出材を射出しての複数の射出成形が同時的にできることになって生産能率が向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】車両用ホーンの側面図である。
【図2】(A)(B)は金型の第一、第二姿勢の型締め状態を示す概略断面図である。
【図3】固定金型の樹脂材流路を示す概略断面図である。
【図4】(A)(B)(C)は金型の第一姿勢における一半部、他半部、一体下部の射出工程を示す概略断面図である。
【図5】(A)(B)(C)は金型の第二姿勢における一半部、他半部、一体下部の射出工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次ぎに、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図中、1は車両用ホーンであって、該ホーン1は、電源供給に伴い音を発生する発音部2と、該発音部2で発音された音を共鳴した状態で外部に出す共鳴部3とを用いて構成されているが、共鳴部3の生産に本発明が実施されており、以下、この共鳴部3について詳述する。
【0009】
共鳴部3は、発音部2に固定支持される一半部(裏面部)4と、該一半部4に突き合わせ対向する状態で固定される他半部(表面部)5と、突き合わせ部に射出して両半部4、5を一体化するための一体化材6とを用いて形成されたものであるが、これら一半部4、他半部5、そして一体化材6は何れも同じ樹脂材を用いて構成されている。
【0010】
7、8は前記共鳴部3を形成するための金型であって、これら金型7、8のうち、一方の金型7は固定金型であり、他方の金型8は可動金型に設定されているが、可動金型8は、固定金型7に対し、型締め、型開きをする離接移動と、型面に対して平行に移動する平行移動とをすることができるように構成されているが、移動構成を逆にしても、あるいはこれら金型7、8の両者を相対移動できるようにしても実施できることは言うまでもない。
【0011】
前記固定金型7には、一半部4の内面を形成するための一対の凸型面7a、7dが両端に、他半部5の外面を形成するための一対の凹型面7b、7cが前記両凸型面7a、7dに挟まれるようにして形成されている。一方、可動金型8には、他半部5の内面を形成するための凸型面8bの両側に、一半部4の外面を形成するための一対の凹型面8a、8cが形成されている。
さらに一体化材6の射出スペースを形成するため、固定金型7の両凹型面7b、7cに凹型面7e、7fがそれぞれ形成され、可動金型8の凸型面8bに凸型面8dが形成されている。これら一半部4、他半部5、そして一体化材6は何れも型面形状が異なるとともに射出量も異なっている。
【0012】
そして図2(A)に示すように、可動金型8が左側に位置する第一姿勢では、固定金型7の第一凸型面7a、第一凹型面7b、第二凹型面7cと、可動金型の第一凹型面8a、凸型面8b、第二凹型面8cとがそれぞれ型合わせされる状態で型締めされ、第一凸型面7aと第一凹型面8aとの型合わせ部位では一半部4が射出成形され、第一凹型面7bと凸型面8bとの型合わせ部位では他半部5が射出成形され、第二凹型面7cと第二凹型面8cとの型合わせ部位では一半部4と他半部5との突き合わせ部に形成の射出スペースに一体化材6が射出成形されるようになっている。
これに対し、図2(B)に示すように、可動金型8が右側に位置する第二姿勢では、固定金型8の第一凹型面7b、第二凹型面7c、第二凸型面7dと、可動金型8の第一凹型面8a、凸型面8b、第二凹型面8cとがそれぞれ型合わせされる状態で型締めされ、第一凹型面7bと第一凹型面8aとの型合わせ部位では一般部4と他半部5との突き合わせ部に一体化材6が射出成形され、第二凹型面7cと凸型面8bとの型合わせ部位では他半部5が射出成形され、第二凸型面7dと第二凹型面8cとの型合わせ部位に形成の射出スペースに一体化材6が射出成形され、これら工程を順次繰返すことで成形体である共鳴部3を各射出工程で連続的に成形できるようになっている。
因みに、この射出成形手法は、特開2008−126498号公報に記載されているものと同じである。
【0013】
固定金型7には、射出機9が設けられるが、該射出機9は、前記一種類の樹脂材を計量して射出するものであるが、該樹脂材の計量は、一半部4、他半部5、そして一体化材6の各射出量(ランナー、スプルー等が必要な場合、これらの樹脂量も合せた量)M1、M2、M3を合計したものに相当した量M(=M1+M2+M3)の樹脂量を一度に計量する設定になっている。そして射出機9は、プランジャの移動量が、前記各樹脂量M1、M2、M3の三段階になるよう順次制御される。このような移動量制御には高い移動位置精度が要求され、そこで本実施の形態ではプランジャの移動を、ピストンではなくサーボモータを用いて行って高い移動位置制御を行っている。
【0014】
前記固定金型7には、射出機9から射出された樹脂材を各型面7a〜7fに供給するための流路10〜15が分岐形成されている。流路10は第一凸型面7aに、流路11は第一凹型面7bに、流路12は第二凹型面7cに、流路13は第二凸型面7dに、流路14は第一一体化材用凹型面7eに、流路15は第二一体化材用凹型面7fにそれぞれ樹脂材を供給するように形成されている。そしてこれら流路10〜15のバルブゲート部位には、バルブゲートピン10a〜15aが設けられていて対応するバルブゲートの開閉ができる、つまり対応する各型面への樹脂材射出をする、しないの切換えができるようになっていて、本発明の開閉手段を構成している。
【0015】
そして前述した図2(A)の状態で型締めされた場合では、図4(A)に示すように、バルブゲートピン10aのみが開状態となって他のバルブゲートピン11aから15aは閉じた状態にして射出機9からは全計量された樹脂量Mのなかから一半部4に相当する樹脂量M1が射出され(射出状態を黒塗りして示す。以下同じ。)て、型締め状態になっている第一凸型面7a、第一凹型面8aの型内に樹脂材が射出されて一半部4が成形され、ついで図4(B)に示すようにバルブゲートピン11aのみが開状態となって射出機9からは他半部5に相当する樹脂量M2が射出されて型締め状態になっている第一凹型面7b、凸型面8bの型内に樹脂材が射出されて他半部5が形成され、その後、図4(C)に示すようにバルブゲートピン15aのみが開状態となって射出機9からは一体化材6に相当する樹脂量M3が射出されて一体化材6の射出スペースに樹脂材が射出され、このようにして3種類射出成形が射出機9では1回の計量、金型7、8では1回の型締めで同時的に実行される。
【0016】
次に図2(B)の状態で型締めされた場合では、図5(A)に示すように、バルブゲートピン13aのみが開状態となって射出機9からは全計量された樹脂量Mから一半部4に相当する樹脂量M1が射出されて、型締め状態になっている第二凸型面7d、第二凹型面8cの型内に樹脂材が射出されて一半部4が成形され、ついで図5(B)に示すようにバルブゲートピン12aのみが開状態となって射出機9からは他半部5に相当する樹脂量M2が射出されて型締め状態になっている第二凹型面7c、凸型面8bの型内に樹脂材が射出されて他半部5が形成され、その後、図5(C)に示すようにバルブゲートピン14aのみが開状態となって射出機9からは一体化材6に相当する樹脂量M3が射出されて一体化材6の射出スペースに射出され、このようにして3種類射出成形が射出機9では1回の計量、金型7、8では1回の型締めで同時的に実行される。
【0017】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態においては、一半部4、他半部5、そして一体化材6の射出が、射出機9については、これらの全射出量Mの樹脂材の1回の計量とし、そして各射出成形に対応した樹脂材量を順次射出することで、また金型7、8については、1回の型締め工程において、一半部4、他半部5、そして一体化材6の各射出型面に至る対応した樹脂材流路の開閉を順次制御して対応した樹脂材が各射出型面内に射出されることになる。
【0018】
このように本発明が実施されたものにおいては、射出成形される一半部4、他半部6、そして一体化材6の各型面形状、射出量が何れも異なったものであるが、射出機9については一回の計量で、金型7、8については1回の型締めでこれら型面形状や射出量が異なったものの射出成形ができることになって、生産性が向上し、コストダウンを図ることができる。
【0019】
尚、本発明は、前記実施の形態に限定されないものであること、明らかであって、型面の数としては、3個に限定されず、2個、或いは4個以上のものにおいても実施することができる。そしてこの場合に、型面形状、射出量のどちらかが異なったものに実施できることは言うまでもない。このとき、例えば3個の成形体を本発明を用いて製造する場合に、2個は同一形状同一射出量で、1個が異なっているものも含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0020】
車両用ホーンや燈体等の射出成形体を製造するための射出成形装置の技術分野での利用可能性がある。
【符号の説明】
【0021】
1 車両用ホーン
3 共鳴部
4 一半部
5 他半部
6 一体化部
7 固定金型
8 可動金型
9 射出機
10〜15 流路
10a〜15a バルブゲートピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締めされた金型に形成された形状および/または射出量が異なる複数の型面内に、射出機から同一の射出材を射出して複数の射出成形を1回の型締めで行うように構成するにあたり、前記射出機は、複数の射出成形をするに相当する量の射出材を計量し、該計量した射出材から各型面に相当する量の射出材を順次射出するように設定され、前記射出機から各型面に至るべく前記金型に分岐形成された射出材の各流路には、前記射出機が射出材を射出する順序に合わせて対応する型面に射出材が充填されるよう流路開閉をする流路開閉手段が設けられていることを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
型締めされた金型に形成された形状および/または射出量が異なる複数の型面内に、射出機から同一の射出材を射出して複数の射出成形を1回の型締めで行うように構成するにあたり、前記射出機は、複数の射出成形をするに相当する量の射出材を計量し、該計量した射出材から各型面に相当する量の射出材を順次射出するものであり、前記射出機から各型面に至るべく前記金型に分岐形成された射出材の各流路は、前記射出機が射出材を射出する順序に合わせて対応する型面に射出材が充填されるよう流路開閉手段により開閉するようにしたことを特徴とする射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−179520(P2010−179520A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23797(P2009−23797)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】