説明

射出成形金型装置

【課題】構成が簡易な射出成形金型装置を提供することを目的とする。
【解決手段】射出成形金型装置1は、内部にキャビティ4を形成する開閉可能な1対の型板50と、回転ピン10と、スライド部材22とを有する。回転ピン10は、その先端部にキャビティ4内に挿入されるネジ形状の型部材10aを有するとともに、一方の型板8を貫通しつつこの型板8に対して回転可能に構成されている。また、回転ピン10には、ネジ部10cが設けられている。スライド部材22は、一方の型板8に対して、回転ピン10の軸方向に移動可能に配設されており、駆動手段によって前記軸方向に駆動される。スライド部材22には、ネジ部10cと嵌合して、スライド部材22の前記軸方向移動を回転ピン10の回転に変換する複数の歯部22aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ形状を有する成形品を成形する射出成形金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形金型装置は、内部にキャビティを形成する開閉可能な1対の型板を有しており、このキャビティ内に溶融樹脂を射出充填して固化させて、キャビティの形状に対応する成形品を成形してから、型開きすることにより、成形品を取り出している。
【0003】
その中でも、ネジ形状を有する成形品を成形する場合には、成形品のネジ形状に対応する形状の型部材をキャビティ内に挿入して成形品を成形した後、そのまま型部材を成形品から引き抜くとネジ部が破損するおそれがあるため、型部材を回転させて成形品から抜き取っている。型部材を回転させるには、電動モータ等を用いて型部材を直接回転させてもよいが、油圧シリンダ等による直線運動を回転運動に変換して型部材を回転させることもできる。後者の場合、射出成形金型装置が、成形品を型板から突き出すための油圧シリンダ等からなる突き出し機構を備えている場合には、これを兼用できるというメリットがある。
【0004】
直線運動を回転運動に変換して型部材を回転させる射出成形金型装置としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。この射出成形金型装置は、先端部にネジ形状の型部材を有し、外周面に歯車が取り付けられた回転ピン(回転コア)と、この回転ピンの歯車に噛み合う歯車が取り付けられた筒状のカムリングと、カムリングの内側に配置された棒状のカムリング誘導部材とを備えている。回転ピン及びカムリングは、一方の型板に対して回転自在に配置されている。カムリングの内周面には、周方向に対して斜めに交差する楕円状のカム溝が形成されており、カムリング誘導部材の外周面にはこのカム溝に嵌合する突起部が形成されている。カムリング誘導部材を一方の型板に対して軸方向に移動させると、カム溝と突起部との摺動によりカムリングが回転し、それに伴って、回転ピンが回転して、型部材が成形品から抜き取られるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−201827号公報(図8及び図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の射出成形金型装置の場合、カムリング誘導部材の軸方向移動を一旦カムリングの回転に変換してから、このカムリングの回転により回転ピンを回転させているため、回転ピンを回転させるために用いる部品数が多く、装置が複雑である。
【0007】
そこで、本発明は、構成が簡易な射出成形金型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
請求項1の射出成形金型装置は、内部にキャビティを形成する開閉可能な1対の型板と、その先端部に前記キャビティ内に挿入されるネジ形状の型部材を有し、一方の型板を貫通しつつこの型板に対して回転可能な回転ピンと、前記回転ピンに設けられたネジ部と、前記一方の型板に対して前記回転ピンの軸方向に移動可能に配設されたスライド部材と、前記スライド部材を前記軸方向に駆動する駆動手段と、前記スライド部材に設けられ、前記ネジ部と嵌合して、前記スライド部材の前記軸方向の移動を、前記回転ピンの回転に変換する複数の歯部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
キャビティ内で成形品を成形した後、駆動手段によってスライド部材を回転ピンの軸方向に移動させると、スライド部材に設けられた複数の歯部が、回転ピンに設けられたネジ部と嵌合することにより、回転ピンが回転する。このとき、型部材(回転ピン)が成形品に対してネジ形状に沿って移動し、型部材が成形品から抜き取られる。このように、射出成形金型装置では、ネジ部と歯部という比較的簡易な構成の部材を用いて、スライド部材の直線方向の移動を直接回転ピンの回転に変換して型部材を回転させているため、装置の構成を簡易化できる。
【0010】
請求項2の射出成形金型装置は、請求項1において、前記回転ピンが、前記一方の型板に対して前記軸方向に移動可能に設けられ、前記回転ピンを先端側へ付勢する付勢手段と、前記回転ピンの前記一方の型板に対する前記先端側への移動を規制する規制手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
回転ピンは一方の型板に対して軸方向に移動可能に設けられているため、型部材から成形品を抜き取る際、回転ピンは一方の型板に対して回転しつつ後退する。後退した回転ピンは、付勢手段によって先端側へ押し戻され、型部材の抜き取りを行う前の位置まで移動した時点で、規制手段によって移動が規制される。このように、付勢手段と規制手段とによって、後退した回転ピンを元の位置に戻すことができる。そのため、駆動手段を別途設けて回転ピンを元の位置に戻す場合に比べて、射出成形金型装置を作動するためのコスト及び装置自体のコストを低減できる。
【0012】
請求項3の射出成形金型装置は、請求項1又は2において、前記スライド部材に連結されるとともに、その先端部が前記1対の型板を閉じた状態において他方の型板に当接する第1リターンピンを備えることを特徴とする。
【0013】
第1リターンピンとスライド部材とは連結されているため、型部材を成形品から抜き取る際、第1リターンピンも前記軸方向に移動する。成形品の離型後、1対の型板を閉じると、第1リターンピンが他方の型板に押圧されて移動し、これに伴って、スライド部材を元の位置まで移動させることができる。そのため、駆動手段を用いてスライド部材を元の位置に戻す場合に比べて、射出成形金型装置を作動するためのコストを低減できる。
【0014】
請求項4の射出成形金型装置は、請求項3において、前記第1リターンピンと前記スライド部材とを連結する第1連結部材と、前記第1連結部材の前記型部材側に配置された第2連結部材と、前記第2連結部材に固定され、その先端部が前記一方の型板を貫通して前記キャビティに達する突出ピンと、前記第2連結部材に固定され、その先端部が前記1対の型板を閉じた状態において他方の型板に当接する第2リターンピンと、を備えることを特徴とする。
【0015】
第2連結部材は、第1連結部材の型部材側に配置されているため、スライド部材を駆動する駆動手段によって第1連結部材を型部材側に移動させると、第2連結部材が第1連結部材に押圧されて、第1連結部材と同方向に移動する。これに伴って、第2連結部材に固定された突出ピン及び第2リターンピンも移動して、突出ピンによって成形品が一方の型板から突き出される。また、成形品を離型した後、1対の型板を閉じると、第2リターンピンが他方の型板に押圧されて移動し、これに伴って、突出ピンも移動する。そのため、1対の型板を閉じる際に、突出ピンが他方の型板と接触して、他方の型板が破損するのと防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の射出成形金型装置1は、図示しない射出成形機の一部を構成しており、図2に示す成形品100を成形するためのものである。成形品100は、U字型に形成された板状部101と、U字型の底面に設けられた円柱部102とを有する。円柱部102の先端面には、ネジ孔(雌ネジ)103が形成されている。
【0017】
図1に示すように、射出成形金型装置1は、固定側部2と可動側部3とから構成されている。可動側部3は、図1中の左右方向に移動可能に構成されており、固定側部2に対して離間・接近可能となっている。固定側部2と可動側部3とが突き合わされた状態において、固定側部2と可動側部3との間にはキャビティ4が形成されている。詳細には、固定側部2の後述する固定側型板6と、可動側部3の後述する可動側型板8とが1対の型板50を構成しており、この1対の型板50の内部にキャビティ4が形成されている。
【0018】
固定側部2は、固定側取付板5と、この固定側取付板5に固定された固定側型板6とを備える。固定側取付板5には、開口部5aが形成されており、この開口部5a内に、成形品100の原料である溶融樹脂を供給するためのノズル51が配置されている。固定側型板6には、凹状のキャビティ面6aと、原料供給路6bとが形成されている。原料供給路6bは、ノズル51から注入された溶融樹脂をキャビティ4に流入させるための流路である。
【0019】
可動側部3は、可動側取付板7と、可動側型板8と、可動側取付板7と可動側型板8とを連結する2つのスペーサブロック9と、可動側取付板7に連結された回転ピン10と、ロッド20と、第1板部(第1連結部材)21と、スライドピン22と、第1リターンピン23と、第2板部(第2連結部材)30と、2本の突出ピン31と、第2リターンピン32とを備える。
【0020】
可動側取付板7は、図示しない駆動手段に連結されており、この駆動手段によって可動側部3全体が図1の左右方向に移動するようになっている。可動側取付板7には、2つのスペーサブロック9、回転ピン10に連結された後述する支持筒11、及び、後述するストップピン7aが固定されている。また、可動側取付板7には、ロッド20が貫通している。
【0021】
可動側型板8には、略凸状のキャビティ面8aが形成されている。キャビティ面8aと固定側型板6のキャビティ面6aとによって、キャビティ4が形成されている。キャビティ面8aの突出先端には、成形品100の円柱部102に対応する形状の凹部8bが形成されている。凹部8bには、後述する型部材10aが挿入されている。
【0022】
また、可動側型板8の内部には、左右方向に延びた収納空間8cが形成されている。収納空間8cの左端は、2つの連通孔8d、8eによって外部と連通している。収納空間8cの右端は、貫通孔8fによって凹部8bと連通している。連通孔8d及び貫通孔8fの径は、回転ピン10の径と同じである。
【0023】
また、可動側型板8には、第1リターンピン23、第2リターンピン32、突出ピン31が摺動可能に貫通される貫通孔8g、8h、8iが形成されている。
【0024】
2つのスペーサブロック9は、可動側取付板7と可動側型板8とを連結している。これにより、可動側取付板7と可動側型板8との間には、回転ピン10や第1板部21等を配置するための空間が形成されている。
【0025】
回転ピン10は、左右方向に延びる円柱状の部材である。回転ピン10は、支持筒11の内周面に軸方向(図1中の左右方向)に移動可能に連結されている。この支持筒11は、可動側取付板7に回転自在に取り付けられている。そのため、回転ピン10は、可動側取付板7(及び可動側型板8)に対して回転可能で且つ軸方向に移動可能となっている。
【0026】
また、支持筒11内の、回転ピン10の左端部と可動側取付板7との間の空間には、コイルバネ12が圧縮状態で配置されている。そのため、回転ピン10は、コイルバネ12によって右方向に付勢されている。
【0027】
回転ピン10は、その先端部(右端部)に、ネジ形状が形成された型部材10aを有している。型部材10aは、成形品100のネジ孔103を形成するためのものである。
【0028】
支持筒11は、第1板部21を貫通しており、回転ピン10は、第2板部30を貫通している。また、回転ピン10の右側部分は、可動側型板8の連通孔8dを貫通して、収納空間8c内に収納されている。回転ピン10の右端部は、貫通孔8fを貫通し、凹部8b内に型部材10aが挿入されている。
【0029】
また、回転ピン10の右端付近には、鍔部10bが取り付けられている。鍔部10bは、収納空間8cと貫通孔8fとの段差面に当接している。これにより、回転ピン10がコイルバネ12により付勢されて右方向に移動するのを規制している。
【0030】
また、回転ピン10には、筒状のネジ部10cが一体的に取り付けられている。詳細には、ネジ部10cは、回転ピン10の収納空間8cに配置されている部分に取り付けられている。図3に示すように、ネジ部10cの外周面には、螺旋状の凸部が形成されている。
【0031】
ロッド20は、可動側取付板7を貫通し、左右方向に延在している。ロッド20は、可動側取付板7の左側に配置された図示しない油圧シリンダに連結されており、この油圧シリンダによって図1中の右方向に駆動される。ロッド20を駆動する手段は、油圧シリンダに限定されるものではなく、電動モータで駆動してもよい。なお、成形品100を型から突き出すための突き出し機構を備えた既存の射出成形機に、本実施形態の射出成形金型装置1を適用する場合、既存の突き出し機構の駆動手段(例えば油圧シリンダ)を、ロッド20の駆動手段に用いてもよいが、突き出し機構の駆動手段とは別に駆動手段を設けてロッド20を駆動してもよい。
【0032】
ロッド20の右端部は、第1板部21に固定されている。第1板部21は、可動側取付板7と可動側型板8との間に配置された、左右方向に直交する板状部材である。第1板部21には支持筒11が貫通している。また、第1板部21は、ロッド20を介して図示しない油圧シリンダによって駆動される。第1板部21には、スライドピン22及び第1リターンピン23が固定されている。
【0033】
スライドピン22は、第1板部21に固定されており、第1板部21から右方向に延在して、可動側型板8の連通孔8eを貫通し、収納空間8c内に挿入されている。スライドピン22の先端部(右端部)は、1対の型板50を閉じた状態(ロッド20を駆動する前の状態)において、回転ピン10に設けられたネジ部10cの左側に位置している。
【0034】
図3に示すように、スライドピン22の先端部(右端部)には、複数の歯部22aが形成されている。歯部22aは、回転ピン10に設けられたネジ部10cに嵌合するように、スライドピン22の軸方向(左右方向)に対して斜めに形成されている。複数の歯部22aとネジ部10cとを嵌合させつつ、スライドピン22を左右方向に移動させると、回転ピン10が回転する。つまり、歯部22aとネジ部10cによって、スライドピン22の左右方向の移動を、回転ピン10の回転に変換することができる。
【0035】
第1リターンピン23は、第1板部21に固定されており、第1板部21から右方向に延在して、可動側型板8の貫通孔8gを貫通している。第1リターンピン23は、第1板部21を介してスライドピン22に連結されている。第1リターンピン23の先端部(右端部)は、1対の型板50を閉じた状態では、固定側型板6に当接している。
【0036】
第2板部30は、第1板部21と可動側型板8との間に配置されている。即ち、第2板部30は、第1板部21の型部材10a側に配置されている。第2板部30は、第1板部21に平行な板状部材である。第2板部30には、回転ピン10及びスライドピン22が貫通している。また、第2板部30には、2本の突出ピン31及び第2リターンピン32が固定されている。
【0037】
2本の突出ピン31は、第2板部30に固定されており、第2板部30から右方向に延在して、可動側型板8の2つの貫通孔8iをそれぞれ貫通している。突出ピン31の先端部(右端部)は、キャビティ4に達している。突出ピン31は、可動側型板8から成形品100を突き出すためのものである。
【0038】
第2リターンピン32は、第2板部30に固定されており、第2板部30から右方向に延在して、可動側型板8の貫通孔8hを貫通している。第2リターンピン32は、第2板部30を介して突出ピン31に連結されている。第2リターンピン32の先端部(右端部)は、1対の型板50を閉じた状態では、固定側型板6に当接している。
【0039】
また、可動側取付板7にはストップピン7aが設けられている。1対の型板50を閉じた状態では、ストップピン7aには第2板部30が当接している。
【0040】
次に、射出成形金型装置1の作用について説明する。
図1に示す固定側型板6と可動側型板8とを密着させた型閉じ状態で、ノズル51から原料供給路6bを介してキャビティ4内に溶融樹脂を射出充填して、固化させて、キャビティ4の形状に対応する成形品100を成形する。
【0041】
次に、図4に示すように、可動側部3を固定側部2から離間させて型開きを行ない、固定側型板6を成形品100から取り外す。その後、ロッド20を右方向に駆動して、第1板部21及びスライドピン22及び第1リターンピン23を右方向に移動させ、図5に示すように、第1板部21を第2板部30に当接させる。このとき、第1リターンピン23は可動側型板8に形成された貫通孔8gの内面と摺動しつつ移動しており、第1板部21は第1リターンピン23に案内されて右方向に移動する。
【0042】
図4の状態から図5の状態に移行するとき、スライドピン22に設けられた複数の歯部22aが、回転ピン10に設けられたネジ部10cと嵌合して、スライドピン22の右方向移動により、回転ピン10が回転する。このとき、回転ピンは可動側型板8に対して軸方向に移動可能であるため、型部材10aは、可動側型板8及び成形品100に対してネジ形状に沿って移動する。即ち、回転ピン10は、可動側型板8に対して回転しつつ、コイルバネ12の付勢力に抗して後退(左方向に移動)する。これにより、型部材10aを成形品100から抜き取ることができる。
【0043】
型部材10aを成形品100から抜き取った後は、型部材10aに作用していた抵抗がなくなるため、歯部22aとネジ部10cとが嵌合した状態で、スライドピン22を右方向に移動させると、回転ピン10の動作は回転のみとなる。なお、ネジ部20cに形成された螺旋状の突部の巻き数と歯部22aの歯数を、成形品100のネジ形状の巻き数に応じて設定しておき、型部材10aの抜き取りが完了すると同時に、スライドピン22が図5の状態まで移動してネジ部20cと歯部22aとが嵌合しなくなるようにしてもよい。
【0044】
図6に示すように、さらにロッド20を右方向に駆動すると、第2板部30が第1板部21に押圧されて右方向に移動し、これに伴って、突出ピン31及び第2リターンピン26も右方向に移動する。このとき、第2リターンピン32及び突出ピン31は可動側型板8に形成された貫通孔8h、8iの内面と摺動しつつ移動し、第2板部30は第2リターンピン26及び突出ピン31に案内されて右方向に移動する。
【0045】
右方向に移動した突出ピン31によって、成形品100が可動側型板8から突き出される。第2板部30が第1板部21に連結されておらず、第1板部21の右側に隙間を空けて配置されていることにより、第1板部21を所定距離移動させた後に、第2板部30を移動させることができる。そのため、型部材10aを成形品100から抜き取った後に、成形品100を可動側型板8から突き出す工程を行うことができる。
【0046】
ここで、図5の状態からスライドピン22が右方向に移動すると、複数の歯部22aとネジ部10cとが嵌合しなくなる。すると、回転ピン10はコイルバネ12によって押圧されて右方向に移動し、鍔部10bが貫通孔8fと収納空間8cとの段差面に当接した時点で停止する。このように、コイルバネ12と鍔部10bとによって、後退した回転ピン10を元の位置に戻すことができる。そのため、駆動手段を別途設けて回転ピン10を元の位置に戻す場合に比べて、射出成形金型装置1を作動するためのコスト及び装置自体のコストを低減できる。
【0047】
次に、成形品100を取り外した後、可動側部3を右方向に移動させて型閉じを開始する。図7に示すように、可動側部3が固定側部2に対して所定距離まで接近すると、第1リターンピン23が固定側型板6に当接する。
【0048】
さらに可動側部3を移動させると、第1リターンピン23が固定側型板6によって押圧されて、第1板部21、スライドピン22及びロッド20が可動側型板8に対して左方向に相対移動する。このように、第1リターンピン23によって、離型後にスライドピン22及びロッド20を元の位置に戻すことができる。そのため、油圧シリンダによりロッド20を左方向に駆動させて、ロッド20及びスライドピン22を元の位置に戻す場合に比べて、射出成形金型装置1を作動するためのコストを低減できる。
【0049】
なお、図8に示すように、複数の歯部22aがネジ部10cの横を通過する際、複数の歯部22aとネジ部10cとが嵌合して、回転ピン10が図3に示す矢印方向と反対方向に回転する。
【0050】
また、図8に示すように、可動側部3が固定側部2に対して所定距離まで接近し、ロッド20がある程度押し戻された時点で、第2リターンピン32が固定側型板6に当接して押圧され、第2板部30及び突出ピン31が可動側型板8に対して左方向に相対移動する。このように、第2リターンピン32を設けることにより、型閉じの際に、突出ピン31が固定側型板6と接触して、固定側型板6及び突出ピン31が破損するのと防止することができる。
【0051】
そして、第2板部30がストップピン7aに当接することにより型閉じが完了し、図7と同じ状態となる。
【0052】
以上説明したように、射出成形金型装置1では、ネジ部10cと歯部22aという比較的簡易な構成の部材を用いて、スライドピン22の左右方向の移動を直接回転ピン10の回転に変換して型部材10aを回転させているため、装置の構成を簡易化することができる。
【0053】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0054】
1]成形品100の形状(キャビティ4の形状)は、ネジ形状を有するものであれば、図2に示す形状に限定されるものではない。例えば、成形品は、U字状の板状部101の外側の面に円柱部102が設けられた形状であってもよい。つまり、固定側型板6に凸状のキャビティ面6aが形成されており、可動側型板8に凹状のキャビティ面8aが形成されていてもよい。また、例えば、成形品は、円柱部102のみで構成されていてもよい。
【0055】
2]前記実施形態では、複数の歯部22aは、スライドピン22の先端部に形成されているが、スライドピン22の軸方向の途中部分に形成されていてもよい。また、ネジ部10cの取付位置も、回転ピン10の収納空間8cに配置されている部分に限定されるものではなく、例えば、回転ピン10の左側端部付近に取り付けられていてもよい。
【0056】
3]回転ピン10を先端側に付勢する手段は、コイルバネ12に限定されるものではなく、例えば、ゴム等を用いてもよい。
【0057】
4]型部材10aを抜き取る際に後退した回転ピン10を元の位置に戻す手段は、付勢手段(コイルバネ12)に限定されるものではない。例えば、駆動手段を別途設けて、回転ピン10を元の位置に戻してもよい。
【0058】
5]前記実施形態では、回転ピン10に設けられた鍔部10bを、収納空間8cと貫通孔8fとの段差面に当接させることにより、回転ピン10の先端側への移動を規制しているが、回転ピン10の移動を規制する手段はこれに限定されるものではない。例えば、可動側型板8の左側面に当接する鍔部を回転ピン10に設けてもよい。
【0059】
6]スライドピン22と第1リターンピン23とを連結する第1板部21、及び、突出ピン31と第2リターンピン32とを連結する第2板部30は、必ずしも板状の部材でなくてもよい。例えば、第1板部21及び第2板部30の代わりに、上下方向に延在する棒状の第1連結部材及び第2連結部材を設けてもよい。この場合、第1連結部材及び第2連結部材の対向する位置にそれぞれ突出部を設けて、この突出部を介して第2連結部材が第1連結部材に押圧(又は第1連結部材が第2連結部材に押圧)されるようにしてもよい。
【0060】
7]前記実施形態では、第2板部30は、第1板部21を介してロッド20により駆動されているが、第2板部30を駆動するための駆動手段を別途設けて、第1板部21と第2板部30とを独立して駆動してもよい。
【0061】
8]前記実施形態では、回転ピン10が可動側取付板7に左右方向に移動可能に連結され、これにより、型部材10aを成形品100から抜き取る際、回転ピン10を成形品100に対して左方向に相対移動させているが、回転ピン10を成形品100に対して左方向に相対移動させる構成はこれに限定されるものではない。例えば、回転ピン10が可動側取付板7に左右方向に移動不能に連結され、可動側型板8が可動側取付板7に対して左右方向に移動可能に構成されていてもよい。これにより、型部材10aを成形品100から抜き取る際、回転ピン10を回転させつつ、可動側型板8を右方向に移動させることにより、型部材10aを成形品100に対して左方向に相対移動させることができる。
【0062】
また、例えば、回転ピン10が可動側取付板7に左右方向に移動不能に連結され、型部材10aを成形品100から抜き取る際に、成形品100を可動側型板8から突き出して、回転ピン10を成形品100に対して左方向に相対移動させてもよい。具体的には、例えば、第1板部21と第2板部30とを一体化して、型部材10aを抜き取る工程と、突出ピン31により突き出す工程とを同時に行ってよい。但し、この場合、突出ピン31によって突き出す距離と、回転ピン10の回転角度とを、成形品100のネジ形状に応じて設定する必要がある。つまり、ネジ部10cの螺旋形状の角度を、成形品100のネジ形状に応じて設定する必要がある。一方、前記実施形態では、型部材10aを抜き取る工程と、突出ピン31により突き出す工程とを別々に行うため、ネジ部10cの形状に関して上述したような厳密な設定が不要となる。この点においては、前記実施形態の方が好ましい。
【0063】
また、成形品100が、例えば円柱部102のみで構成され、可動側型板8から離型しやすい場合、可動側型板8が可動側取付板7に対して移動不能であって、回転ピン10も可動側取付板7に対して左右方向に移動不能に連結されていてもよい。この場合、型部材10aを成形品100から抜き取る際、回転ピン10を回転させることによって、成形品100が可動側型板8及び回転ピン10に対して右方向に移動し、回転ピン10が成形品100に対して左方向に相対移動することとなる。
【0064】
9]前記実施形態では、突出ピン31によって可動側型板8から成形品100を突き出しているが、成形品100の形状(キャビティ4の形状)によっては、突出ピン31で突き出さなくても成形品100を離型できる場合がある。このような場合には、突出ピン31及び第2板部30及び第2リターンピン32は設けなくてもよい。
【0065】
10]前記実施形態では、型開き後に、型部材10aを成形品100から抜き取っているが、型閉じ状態のまま、スライドピン22を駆動して、型部材10aを成形品100から抜き取ってもよい。但し、この場合、第1リターンピン23によってスライドピン22を駆動前の位置に戻すことができないため、ロッド20又は別の駆動手段によって、スライドピン22を元の位置に戻す必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係る射出形成金型装置の断面図である。
【図2】射出形成金型装置により成形される成形品の斜視図である。
【図3】(a)は射出形成金型装置の部分拡大図であり、(b)は(a)のI‐I線断面図である。
【図4】射出形成金型装置の型開き時を示す図である。
【図5】射出形成金型装置において型部材を成形品から抜き出した状態を示す図である。
【図6】射出形成金型装置において成形品を突き出した状態を示す図である。
【図7】射出形成金型装置において型閉じを行なっている途中の状態を示す図である。
【図8】射出形成金型装置において型閉じを行なっている途中の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 射出成形金型装置
2 固定側部
3 可動側部
4 キャビティ
6 固定側型板
8 可動側型板
10 回転ピン
10a 型部材
10b 鍔部(規制手段)
10c ネジ部
11 支持筒
12 コイルバネ(付勢手段)
20 ロッド
21 第1板部(第1連結部材)
22 スライドピン(スライド部材)
22a 歯部
23 第1リターンピン
30 第2板部(第2連結部材)
31 突出ピン
32 第2リターンピン
50 1対の型板
100 成形品
103 ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にキャビティを形成する開閉可能な1対の型板と、
その先端部に前記キャビティ内に挿入されるネジ形状の型部材を有し、一方の型板を貫通しつつこの型板に対して回転可能な回転ピンと、
前記回転ピンに設けられたネジ部と、
前記一方の型板に対して前記回転ピンの軸方向に移動可能に配設されたスライド部材と、
前記スライド部材を前記軸方向に駆動する駆動手段と、
前記スライド部材に設けられ、前記ネジ部と嵌合して、前記スライド部材の前記軸方向の移動を、前記回転ピンの回転に変換する複数の歯部と、
を備えることを特徴とする射出成形金型装置。
【請求項2】
前記回転ピンが、前記一方の型板に対して前記軸方向に移動可能に設けられ、
前記回転ピンを先端側へ付勢する付勢手段と、
前記回転ピンの前記一方の型板に対する前記先端側への移動を規制する規制手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の射出成形金型装置。
【請求項3】
前記スライド部材に連結されるとともに、その先端部が前記1対の型板を閉じた状態において他方の型板に当接する第1リターンピンを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形金型装置。
【請求項4】
前記第1リターンピンと前記スライド部材とを連結する第1連結部材と、
前記第1連結部材の前記型部材側に配置された第2連結部材と、
前記第2連結部材に固定され、その先端部が前記一方の型板を貫通して前記キャビティに達する突出ピンと、
前記第2連結部材に固定され、その先端部が前記1対の型板を閉じた状態において他方の型板に当接する第2リターンピンと、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の射出成形金型装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−94904(P2010−94904A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267843(P2008−267843)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】