説明

射出装置

【課題】射出に伴う圧力を精度よく検出することができるようにする。
【解決手段】シリンダ部材と、射出部材と、シリンダ部材を支持する第1の支持体、第1の支持体より後方に配設された第2の支持体、及び連結部材を備えた射出枠17と、射出用の駆動部を駆動することによって発生させられた回転の回転運動を直進運動に変換する運動方向変換装置と、直進運動を射出部材に伝達する伝動部材と、射出工程時に、射出に伴う圧力を検出する圧力検出部と、伝動部材の回転を阻止する回止め部材とを有する。圧力検出部は、伝動部材と回止め部材との間に発生する摩擦力の閉鎖系の外側において、第2の支持体と運動方向変換装置とを連結して配設される。圧力検出部によって検出される射出に伴う圧力と、実際に伝達される射出に伴う圧力とが等しくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機、例えば、射出成形機においては、加熱シリンダ内において加熱され溶融させられた樹脂を、高圧で射出して金型装置のキャビティ空間に充填し、該キャビティ空間内において冷却して固化させることによって成形品を得ることができるようになっている。
【0003】
そのために、前記射出成形機は、型締装置、射出装置及び金型装置を有し、前記型締装置は、固定プラテン及び可動プラテンを備え、型締用シリンダが可動プラテンを進退させることによって金型装置の型閉じ、型締め及び型開きが行われる。
【0004】
一方、前記射出装置は、ホッパから供給された樹脂を加熱して溶融させる加熱シリンダ、及び溶融させられた樹脂を射出する射出ノズルを備え、前記加熱シリンダ内にスクリューが回転自在に、かつ、進退自在に配設される。そして、該スクリューを、後端に連結された駆動装置によって前進させることにより射出ノズルから樹脂が射出され、前記駆動装置によって後退させることにより樹脂の計量が行われる。
【0005】
図2は従来の射出装置の要部を示す断面図である。
【0006】
図において、11は加熱シリンダ、12は該加熱シリンダ11内に配設されたスクリューであり、前記加熱シリンダ11の後端は、前方射出サポート18に取り付けられ、該前方射出サポート18と所定の距離を置いて後方射出サポート19が配設される。そして、前記前方射出サポート18と後方射出サポート19との間に連結ロッド21が架設され、該連結ロッド21によって前記前方射出サポート18と後方射出サポート19との間に所定の距離が保持される。また、前方射出サポート18、後方射出サポート19及び連結ロッド21によって射出枠が構成される。
【0007】
そして、前記スクリュー12の後端には、カプラ59を介して円形の形状を有する連結体64が一体的に取り付けられ、該連結体64に筒状の支持体65が取り付けられる。なお、前記連結体64及び支持体65によって、スクリュー12と一体に回転する回転摺動部材68が構成される。前記支持体65は、軸方向においてスクリュー12のストローク分の長さを有し、外周面に雄スプライン67が形成される。
【0008】
前記前方射出サポート18の後端に隣接させて、前方射出サポート18と一体に、かつ、前記回転摺動部材68を包囲して、計量用モータ22が配設され、該計量用モータ22は、計量工程において第1の駆動状態に、射出工程において第2の駆動状態に置かれ、前記第1の駆動状態において前記回転摺動部材68を回転させ、第2の駆動状態において前記回転摺動部材68に伝達される回転を拘束する。
【0009】
前記計量用モータ22は、前方射出サポート18に取り付けられたステータ25、及び該ステータ25の径方向内方に配設された筒状のロータ26を備え、該ロータ26の後端にスプラインナット27が取り付けられる。
【0010】
該スプラインナット27は、前記計量用モータ22の第1の駆動状態において発生させられた回転を回転摺動部材68に伝達し、該回転摺動部材68を回転させ、前記計量用モータ22の第2の駆動状態において発生させられた拘束力を回転摺動部材68に伝達し、回転摺動部材68が回転するのを拘束する。そのために、該回転摺動部材68は、ロータ26に対して軸方向に移動自在に配設され、前記連結体64の前端において、該連結体64の外周面とロータ26の内周面とがシール30を介して摺動自在に接触させられ、前記支持体65の後端において、スプラインナット27の内周面に形成された図示されない雌スプラインと前記雄スプライン67とがスプライン係合させられる。
【0011】
そして、前記前方射出サポート18より後方に、互いに螺合させられたボールねじ軸81及びボールナット82から成るボールねじ83が配設される。前記ボールねじ軸81は、前端から後端にかけて順次形成された小径のシャフト部84、大径のねじ部85、及び射出用モータ23とボールねじ軸81とを連結するための図示されないスプライン部から成り、前端において、前記回転摺動部材68に対して回転自在に、かつ、軸方向に移動不能に支持され、中央において、ボールナット82に対して回転自在に螺合させられ、支持される。そして、該ボールナット82は、ロードセル96を介して後方射出サポート19に固定される。
【0012】
次に、前記構成の射出装置の動作について説明する。
【0013】
まず、計量工程時に、前記計量用モータ22を第1の駆動状態に置いて駆動すると、発生させられた回転は、スプラインナット27及び回転摺動部材68を介してスクリュー12に伝達され、該スクリュー12を正方向に回転させる。
【0014】
これに伴って、前記加熱シリンダ11に配設された図示されないホッパから落下した樹脂が溝内を前進させられ、スクリュー12が後退させられ、前記樹脂が、図示されないスクリューヘッドの前方に溜められる。
【0015】
また、射出工程時に、前記射出用モータ23を駆動すると、該射出用モータ23によって発生させられた回転は、ボールねじ軸81に伝達され、ボールねじ83によって回転運動が、回転を伴う直進運動、すなわち、回転直進運動に変換される。その結果、ボールねじ軸81が回転しながら前進させられる。このとき、前記計量用モータ22は第2の駆動状態に置かれ、ロータ26の回転速度が制御されて0〔rpm〕にされ、拘束力が発生させられる。そして、該拘束力が前記スプラインナット27を介して回転摺動部材68に伝達され、ボールねじ軸81を介して回転摺動部材68に伝達される回転が拘束される。その結果、回転摺動部材68に一体的に取り付けられたスクリュー12は回転しない状態で前進させられる。
【0016】
このようにして、該スクリュー12が前進させられると、スクリューヘッドの前方に溜められた樹脂は、所定の射出力で射出ノズルから射出され、図示されない金型装置のキャビティ空間に充填される。
【0017】
ところで、前述されたように、前記射出工程時に、射出用モータ23を駆動すると、ボールねじ軸81が回転しながら前進させられ、スクリュー12が前進させられる。これに伴って、前記スクリューヘッドの前方に溜められた樹脂の圧力が高くなり、射出に伴う圧力、この場合、射出力が発生させられる。
【0018】
このとき、ボールねじ軸81を前進させようとする荷重(力)が発生するのに伴って、ボールナット82を後退させようとする荷重が発生し、ボールねじ軸81を前進させようとする荷重は、スクリュー12に伝達され、スクリューヘッドの前方に溜められた樹脂の圧力を高くし、前記樹脂を介して前記加熱シリンダ11に伝達され、前方射出サポート18、連結ロッド21及び後方射出サポート19を介してロードセル96の外側環状部に伝達される。一方、ボールナット82を後退させようとする荷重は、ロードセル96の内側環状部に伝達される。
【0019】
したがって、荷重によってロードセル96において歪みが発生するのに伴って、射出成形機の図示されない制御部によって、前記ロードセル96のセンサ出力を読み込み、前記射出力を検出するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−159733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、前記従来の射出装置においては、射出力を精度良く検出することができない。
【0021】
すなわち、前記射出工程時に、ボールねじ軸81が回転しながら前進させられるのに伴って、支持体65が前進させられるが、このとき、計量用モータ22は第2の駆動状態に置かれ、ボールねじ軸81から回転摺動部材68に伝達される回転を拘束するようになっている。
【0022】
そして、スプラインナット27の内周面に形成された雌スプラインと雄スプライン67とがスプライン係合させられているので、前記計量用モータ22が第2の駆動状態に置かれると、雄スプライン67の回転が雌スプラインによって阻止される。したがって、雄スプライン67は、スプラインナット27によって回転が阻止された状態で前進させられ、回転摺動部材68とスプラインナット27との間、すなわち、雄スプライン67と前記雌スプラインとの間に摩擦力Δfaが発生する。
【0023】
この場合、ボールねじ軸81を前進させようとする荷重をf1としたとき、該荷重f1から摩擦力Δfaを減算した値の荷重f2(=f1−Δfa)が、スクリュー12に伝達され、スクリューヘッドの前方に溜められた樹脂の圧力を高くし、樹脂を介して加熱シリンダ11に伝達され、更に前方射出サポート18、連結ロッド21及び後方射出サポート19を介してロードセル96の外側環状部に伝達され、該外側環状部を前進させようとする。
【0024】
一方、前記荷重f2が回転摺動部材68を介してスクリュー12に伝達されるときに、ボールナット82に反力が加わり、該反力はボールナット82を後退させようとする。前記反力は荷重f2で表すことができ、該荷重f2がロードセル96の内側環状部に伝達され、内側環状部を後退させようとする。
【0025】
ところが、前記摩擦力Δfaは、雄スプライン67、ボールねじ軸81及びボールナット82を介してロードセル96の内側環状部に伝達され、該内側環状部を後退させようとするとともに、スプラインナット27、前方射出サポート18、連結ロッド21及び後方射出サポート19を介してロードセル96の外側環状部に伝達され、該外側環状部を前進させようとする。
【0026】
すなわち、前記ロードセル96は摩擦力Δfaが伝達される閉鎖系の内側に配設されるので、荷重f2がロードセル96に伝達されるとともに、摩擦力Δfaがロードセル96に伝達され、該ロードセル96において、荷重f2と摩擦力Δfaとを加算した値が射出力として検出されるのに対して、実際に樹脂に伝達される射出力は荷重f2の値と等しくなる。したがって、射出力を精度よく検出することができない。
【0027】
本発明は、前記従来の射出装置の問題点を解決して、射出に伴う圧力を精度よく検出することができる射出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
そのために、本発明の射出装置においては、シリンダ部材と、該シリンダ部材内において、回転自在に、かつ、進退自在に配設された射出部材と、前記シリンダ部材を支持する第1の支持体、該第1の支持体より後方に配設された第2の支持体、及び前記第1、第2の支持体間を連結する連結部材を備えた射出枠と、射出用の駆動部を駆動することによって発生させられた回転の回転運動を直進運動に変換する運動方向変換装置と、該運動方向変換装置によって得られた直進運動を前記射出部材に伝達する伝動部材と、射出工程時に、射出に伴う圧力を検出する圧力検出部と、前記伝動部材の回転を阻止する回止め部材とを有する。
【0029】
そして、前記圧力検出部は、前記伝動部材と回止め部材との間に発生する摩擦力の閉鎖系の外側において、前記第2の支持体と運動方向変換装置とを連結して配設される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、射出装置においては、シリンダ部材と、該シリンダ部材内において、回転自在に、かつ、進退自在に配設された射出部材と、前記シリンダ部材を支持する第1の支持体、該第1の支持体より後方に配設された第2の支持体、及び前記第1、第2の支持体間を連結する連結部材を備えた射出枠と、射出用の駆動部を駆動することによって発生させられた回転の回転運動を直進運動に変換する運動方向変換装置と、該運動方向変換装置によって得られた直進運動を前記射出部材に伝達する伝動部材と、射出工程時に、射出に伴う圧力を検出する圧力検出部と、前記伝動部材の回転を阻止する回止め部材とを有する。
【0031】
そして、前記圧力検出部は、前記伝動部材と回止め部材との間に発生する摩擦力の閉鎖系の外側において、前記第2の支持体と運動方向変換装置とを連結して配設される。
【0032】
この場合、前記圧力検出部は、前記伝動部材と回止め部材との間に発生する摩擦力の閉鎖系の外側に配設されるので、圧力検出部によって検出される射出に伴う圧力と、実際に伝達される射出に伴う圧力とが等しくなる。したがって、射出に伴う圧力を精度よく検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、成形機としての射出成形機について説明する。
【0034】
図1は本発明の第1の実施の形態における射出成形機の概念図である。
【0035】
図において、10は射出装置であり、該射出装置10は、図示されないフレーム上に進退自在に配設される。また、該フレームには、図示されない金型装置及び型締装置が配設される。前記金型装置は、第1の金型としての固定金型及び第2の金型としての可動金型を備え、前記型締装置は、前記固定金型が取り付けられた固定プラテン、及び可動金型が取り付けられた可動プラテンを備え、型締用の駆動部としての図示されない型締用シリンダが可動プラテンを進退させることによって、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きが行われる。なお、射出成形機は、射出装置10、金型装置及び型締装置によって構成される。
【0036】
前記射出装置10において、11はシリンダ部材としての加熱シリンダであり、該加熱シリンダ11の前端に射出ノズル11aが取り付けられる。そして、前記加熱シリンダ11内において、射出部材としてのスクリュー12が回転自在に、かつ、進退自在に配設される。
【0037】
該スクリュー12は、前端にヘッド部としてのスクリューヘッド12aを備え、前記加熱シリンダ11内を後方に延び、後端において回転支持部材としてのベアリングボックス13に固定される。また、前記スクリュー12の外周面に、螺旋状のフライト12bが形成され、該フライト12bに沿って溝12cが形成される。
【0038】
そして、前記加熱シリンダ11における所定の箇所に図示されない樹脂供給口が形成され、該樹脂供給口に図示されないホッパが固定される。前記樹脂供給口は、スクリュー12を加熱シリンダ11内における最も前方に置いた状態において、前記溝12cの後端部に対応する箇所に形成される。
【0039】
したがって、計量工程時に、前記スクリュー12を回転させると、前記ホッパ内から成形材料としてのペレット状の図示されない樹脂が供給され、該樹脂は、加熱シリンダ11内に進入し、溝12c内を前進させられる。それに伴って、前記スクリュー12は後退させられる。
【0040】
また、前記加熱シリンダ11の周囲に加熱部材としての図示されないヒータが配設され、該ヒータによって加熱シリンダ11を加熱し、前記溝12c内の樹脂を溶融させるようになっている。したがって、樹脂の前進に伴って、スクリュー12が所定の量だけ後退させられると、前記スクリューヘッド12aの前方に1ショット分の溶融させられた樹脂が溜められる。なお、加熱シリンダ11の後端には、冷却装置としての水冷シリンダ195が一体に形成され、該水冷シリンダ195に冷却媒体としての図示されない水が、図示されない媒体供給源(温調装置)から供給されるようになっている。したがって、前記加熱シリンダ11の後端を冷却することができ、前記樹脂供給口の近傍の温度を安定させることができるので、樹脂供給口の近傍の樹脂が無用に加熱されるのを防止することができる。
【0041】
また、射出工程時に、前記スクリュー12を回転させることなく前進させると、前記スクリューヘッド12aの前方に溜められた樹脂は、射出ノズル11aから射出され、前記金型装置のキャビティ空間に充填される。
【0042】
ところで、前記加熱シリンダ11の後方には、前記スクリュー12を回転させたり進退させたりするための駆動装置91が配設される。該駆動装置91は、射出枠17、該射出枠17内に配設された計量用の駆動部としてのビルトイン型の計量用モータ22、射出枠17より後方に配設された射出用の駆動部としてのビルトイン型の図示されない射出用モータ、前記計量用モータ22の回転をスクリュー12に伝達するための前記ベアリングボックス13、該ベアリングボックス13を介してスクリュー12と連結された伝動軸としてのボールねじ軸81、圧力検出部としての、かつ、荷重検出部としての環状のロードセル46等を備え、スクリュー12、計量用モータ22及び射出用モータは同一軸線上に配設される。
【0043】
前記ボールねじ軸81は、前端に回転被支持部を構成するシャフト部84を、中央部において運動方向変換要素を構成するねじ部85を、後端において連結部を構成するスプライン部86を備え、前端において、ベアリングボックス13を介してスクリュー12と連結され、後端において射出用モータと連結される。前記シャフト部84は、ベアリングボックス13内の複数の、本実施の形態においては、2個のベアリング(スラストベアリング)br1によって回転自在に支持され、ねじ部85において、ボールねじ軸81とボールナット82とが螺合させられる。なお、前記ボールねじ軸81及びボールナット82によって運動方向変換装置としてのボールねじ83が構成され、前記ボールねじ軸81によって第1の変換要素が、ボールナット82によって第2の変換要素が構成される。また、184はベアリングbr1がボールねじ軸81から抜けるのを防止するための抜止部材としてのロックナットである。
【0044】
前記射出枠17は、加熱シリンダ11を支持し、射出枠17の前壁を構成する第1の支持体としての前方射出サポート18、該前方射出サポート18より後方において、前方射出サポート18と対向させて配設され、前記射出枠17の後壁を構成する第2の支持体としての後方射出サポート19、及び前記前方射出サポート18と後方射出サポート19との間に架設され、かつ、前方射出サポート18と後方射出サポート19とを連結し、前方射出サポート18と後方射出サポート19との間に所定の距離を置く複数の、本実施の形態においては、1対の連結部材としての連結ロッド21を備える。
【0045】
前記前方射出サポート18の下端は、ベースbs1に固定され、前記後方射出サポート19の下端は、ベアリング(ころがりベアリング)br2によって支持され、ベースbs1に対して摺動自在に配設される。また、前方射出サポート18の下端及び上端の近傍に連結ロッド21の前端がボルトbt1によって、後方射出サポート19の下端及び上端の近傍に連結ロッド21の後端がボルトbt2によって、それぞれ固定される。そして、前記後方射出サポート19は、射出枠17内の前方に配設された計量用モータ22、及び射出枠17外の後方に配設された前記射出用モータを支持する。
【0046】
また、前記前方射出サポート18の中央部には貫通穴h1が形成され、該貫通穴h1の内周縁に沿って環状のボス部225が形成され、該ボス部225に水冷シリンダ195を介して加熱シリンダ11が取り付けられる。そして、前記貫通穴h1を貫通して前記スクリュー12が後方に向けて延在させられる。
【0047】
また、前記後方射出サポート19の中央部には貫通穴h2が形成され、該貫通穴h2内に前記ロードセル46が配設される。そして、前記貫通穴h2及びロードセル46内を貫通して前記ボールねじ軸81が後方に向けて延在させられる。
【0048】
前記ロードセル46は、第1の受圧部としての外側環状部e1、及び第2の受圧部としての内側環状部e2を備え、後方射出サポート19に、前記外側環状部e1を介して射出用モータの筐体23のフランジ部123がボルトbt3によって固定され、前記内側環状部e2にボールナット82のフランジ部182がボルトbt4によって固定され、更に、前記フランジ部182に環状の支持部材としてのボールねじサポート131がボルトbt5によって固定される。
【0049】
そして、前記計量用モータ22は、後端において、前記ボールねじサポート131に固定された筒状の筐体20、該筐体20の内周面に取り付けられたステータ25、該ステータ25の径方向内方に配設された筒状のロータ26等を備え、計量工程において第1の駆動状態に、射出工程において第2の駆動状態に置かれ、第1の駆動状態において前記ベアリングボックス13を回転させ、第2の駆動状態において前記ベアリングボックス13に伝達される回転を拘束する。
【0050】
前記ロータ26は、筒状の回転体ra、及び該回転体raの外周面に取り付けられた永久磁石rbを備え、後端の径方向内方において、ボールねじサポート131に対してベアリングbr3によって回転自在に支持されるとともに、前端の径方向内方において、係合要素としての、かつ、回転伝達要素としてのスプラインナット133によってベアリングボックス13に対して回転自在に支持され、前端の径方向外方において、ベアリングbr4によって筐体20に対して回転自在に配設される。
【0051】
なお、251はベアリングbr3を回転体raに対して取り付けるための、252はベアリングbr3をボールねじサポート131に対して取り付けるための、253はベアリングbr4を回転体raに対して取り付けるための、254はベアリングbr4を筐体20に対して取り付けるための、押え部材としてのベアリング押えであり、前記ベアリング押え251はボルトbt5によって回転体raに、ベアリング押え252はボルトbt6によってボールねじサポート131に、ベアリング押え253はボルトbt7によって回転体raに、ベアリング押え254はボルトbt8によって筐体20に固定される。
【0052】
そして、前記ベアリングbr1〜br4によって支持部材が、ボルトbt1〜bt8によって固定部材が構成される。
【0053】
次に、前記構成の射出装置10の動作について説明する。
【0054】
まず、計量工程時に、前記計量用モータ22を第1の駆動状態に置いて駆動すると、発生させられた回転は、スプラインナット133及びベアリングボックス13を介してスクリュー12に伝達され、該スクリュー12を正方向に回転させる。
【0055】
これに伴って、前記ホッパから落下した樹脂が溝12c内を前進させられ、スクリュー12が後退させられ、前記樹脂がスクリューヘッド12aの前方に溜められる。
【0056】
また、射出工程時に、前記射出用モータを駆動すると、該射出用モータによって発生させられた回転は、ボールねじ軸81に伝達され、ボールねじ83によって回転運動が回転直進運動に変換される。その結果、ボールねじ軸81が回転しながら前進させられる。
【0057】
このとき、ボールねじ軸81の回転は、ベアリングbr1を介してベアリングボックス13に伝達され、ベアリングボックス13を回転させようとするが、計量用モータ22が第2の駆動状態に置かれることによって、回転が拘束される。その場合、回転体raは、回止め部材として機能し、ベアリングボックス13が回転するのを阻止する。そして、ベアリングボックス13は、前記回転直進運動を直進運動に変換し、スクリュー12を前進させる。なお、前記ベアリングボックス13によって伝動部材が構成される。
【0058】
ところで、前述されたように、前記射出工程時に、射出用モータを駆動すると、ボールねじ軸81が前進させられ、それに伴ってスクリュー12が前進させられ、スクリューヘッド12aの前方に溜められた樹脂の圧力が高くなり、射出に伴う圧力、この場合、射出力が発生させられる。
【0059】
このとき、ボールねじ軸81を前進させようとする荷重(力)が発生するのに伴って、ボールナット82を後退させようとする荷重が発生し、ボールねじ軸81を前進させようとする荷重は、ベアリングボックス13を介してスクリュー12に伝達され、スクリューヘッド12aの前方に溜められた樹脂の圧力を高くし、樹脂を介して加熱シリンダ11に伝達され、前方射出サポート18、連結ロッド21及び後方射出サポート19を介してロードセル46の外側環状部e1に伝達される。一方、ボールナット82を後退させようとする荷重はロードセル46の内側環状部e2に伝達される。
【0060】
したがって、荷重によってロードセル46において歪みが発生するのに伴って、射出成形機の図示されない制御部は、前記ロードセル46のセンサ出力を読み込み、前記射出力を検出するようにしている。また、前記制御部は、射出に伴う圧力として、保圧工程時の保圧力を検出することもできる。
【0061】
ところで、前記射出工程時に、ボールねじ軸81が回転しながら前進させられるのに伴って、ベアリングボックス13が前進させられるが、このとき、計量用モータ22は第2の駆動状態に置かれ、ボールねじ軸81からベアリングボックス13に伝達される回転が拘束されるようになっている。
【0062】
そして、回転体raの内周面に形成された雌スプラインとスプラインナット133の外周面に形成された雄スプラインとがスプライン係合させられているので、前記計量用モータ22が第2の駆動状態に置かれると、ベアリングボックス13の回転が雌スプラインによって阻止される。したがって、ベアリングボックス13は、回転体raによって回転が阻止された状態で前進させられ、前記雌スプラインと雄スプラインとの間の摩擦力発生部に摩擦力Δfbが発生する。
【0063】
ここで、ボールねじ軸81を前進させようとする荷重をf11としたとき、該荷重f11から摩擦力Δfbを減算した値の荷重f12(=f11−Δfb)が、ベアリングボックス13を介してスクリュー12に伝達され、スクリューヘッド12aの前方に溜められた樹脂の圧力を高くし、樹脂を介して加熱シリンダ11に伝達され、更に、前方射出サポート18、連結ロッド21及び後方射出サポート19を介してロードセル46の外側環状部e1に伝達され、該外側環状部e1を前進させようとする。
【0064】
一方、前記荷重f12がベアリングボックス13を介してスクリュー12に伝達されるときに、ボールナット82に反力が加わり、該反力はボールナット82を後退させようとする。前記反力は荷重f12で表すことができ、該荷重f12がロードセル46の内側環状部e2に伝達され、該内側環状部e2を後退させようとする。
【0065】
この場合、前記ベアリングボックス13が前進するのに伴って、前記摩擦力Δfbは、回転体raを前進させようとし、前記ベアリングボックス13が前進するのを阻止しようとする。
【0066】
ところで、前記回転体raは、ベアリングbr3及びボールねじサポート131を介してボールナット82に連結され、前記ベアリングボックス13は、ベアリングbr1及びボールねじ軸81を介して前記ボールナット82に連結されるので、ロータ26、ベアリングボックス13及びボールねじ83から成る系によって、摩擦力Δfbの閉鎖系が形成される。すなわち、前記摩擦力Δfbは、前記回転体raを介してベアリング押え251に伝達され、該ベアリング押え251を介してベアリングbr3に伝達され、更にベアリング押え252及びボールねじサポート131を介してボールナット82に伝達される。
【0067】
したがって、前記ロードセル46は、摩擦力Δfbの閉鎖系の外側に配設されるので、前記ロードセル46において、荷重f11及び摩擦力Δfbに基づいて算出される値である荷重f12が、射出力として検出されるが、実際に樹脂に伝達される射出力も、荷重f11から摩擦力Δfbを減算した値になるので、射出力を精度よく検出することができる。
【0068】
なお、前記後方射出サポート19は、下端がベアリングbr2によって支持され、ベースbs1に対して摺動自在に配設されるので、後方射出サポート19を後退させようとする荷重が発生したときに、後方射出サポート19とベースbs1との間に摩擦力が発生するのを抑制することができる。したがって、ロードセル46に伝達される荷重に摩擦力がノイズとなって加わることがないので、更に射出力を精度よく検出することができる。
【0069】
このように、本実施の形態においては、摩擦力発生部で発生させられた摩擦力Δfbがロードセル46を介することなく相殺されるので、該ロードセル46によって検出される射出力と実際に樹脂に伝達される射出力とが等しくなる。したがって、射出力を精度よく検出することができる。また、保圧力も精度よく検出することができる。
【0070】
なお、本実施の形態においては、ステータ25がボールねじサポート131に固定されているので、摩擦力Δfbをベアリング押え253、254を介してステータ25に伝達することもできる。
【0071】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0072】
図3は本発明の第2の実施の形態における射出成形機の要部を示す概念図である。
【0073】
この場合、計量用の駆動部としての計量用モータ22は、筒状の筐体20、該筐体20の内周面に取り付けられたステータ25、該ステータ25の径方向内方に配設された筒状のロータ26等を備え、前記筐体20は、後端において、ボルトbt3によって第2の支持体としての後方射出サポート19に固定される。
【0074】
そして、前記ロータ26は、筒状の回転体ra、及び該回転体raの外周面に取り付けられた永久磁石rbを備え、後端の径方向内方において、支持部材としてのボールねじサポート131に対してベアリングbr3によって回転自在に支持されるとともに、前端の径方向内方において、係合要素としての、かつ、回転伝達要素としてのスプラインナット133(図1)によって回転支持部材としてのベアリングボックス13に対して回転自在に支持され、前端の径方向外方において、ベアリングbr4によって筐体20に対して回転自在に配設される。
【0075】
本実施の形態においては、前記筐体20が後方射出サポート19に固定されるので、ベアリングbr4を筐体20に対して取り付けるためのベアリング押え、ボルト等は不要になる。
【0076】
ところで、第1の実施の形態と同様に、前記回転体raは、ベアリングbr3及びボールねじサポート131を介して、第2の変換要素を構成するボールナット82に連結され、前記ベアリングボックス13は、ベアリングbr1及び伝動軸としてのボールねじ軸81を介して前記ボールナット82に連結されるので、ロータ26、ベアリングボックス13及び運動方向変換装置としてのボールねじ83から成る系によって、摩擦力Δfbの閉鎖系が形成される。すなわち、前記摩擦力Δfbは、前記回転体raを介してベアリング押え251に伝達され、該ベアリング押え251を介してベアリングbr3に伝達され、更にベアリング押え252及びボールねじサポート131を介してボールナット82に伝達される。
【0077】
したがって、圧力検出部としての、かつ、荷重検出部としてのロードセル46は、摩擦力Δfbの閉鎖系の外側に配設されるので、前記ロードセル46において、荷重f11及び摩擦力Δfbに基づいて算出される値である荷重f12が、射出力として検出されるが、実際に樹脂に伝達される射出力も、荷重f11から摩擦力Δfbを減算した値になるので、射出力を精度よく検出することができる。
【0078】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態における射出成形機の概念図である。
【図2】従来の射出装置の要部を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態における射出成形機の要部を示す概念図である。
【符号の説明】
【0080】
10 射出装置
11 加熱シリンダ
12 スクリュー
13 ベアリングボックス
17 射出枠
18 前方射出サポート
19 後方射出サポート
21 連結ロッド
26 ロータ
46 ロードセル
81 ボールねじ軸
82 ボールナット
83 ボールねじ
ra 回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シリンダ部材と、
(b)該シリンダ部材内において、回転自在に、かつ、進退自在に配設された射出部材と、
(c)前記シリンダ部材を支持する第1の支持体、該第1の支持体より後方に配設された第2の支持体、及び前記第1、第2の支持体間を連結する連結部材を備えた射出枠と、
(d)射出用の駆動部を駆動することによって発生させられた回転の回転運動を直進運動に変換する運動方向変換装置と、
(e)該運動方向変換装置によって得られた直進運動を前記射出部材に伝達する伝動部材と、
(f)射出工程時に、射出に伴う圧力を検出する圧力検出部と、
(g)前記伝動部材の回転を阻止する回止め部材とを有するとともに、
(h)前記圧力検出部は、前記伝動部材と回止め部材との間に発生する摩擦力の閉鎖系の外側において、前記第2の支持体と運動方向変換装置とを連結して配設されることを特徴とする射出装置。
【請求項2】
前記閉鎖系は、計量用の駆動部のロータ、伝動部材及び運動方向変換装置によって形成される請求項1に記載の射出装置。
【請求項3】
前記運動方向変換装置は、前記射出用の駆動部を駆動することによって発生させられた回転が伝達される伝動軸に形成されたボールねじ軸、及び前記圧力検出部に連結されたボールナットを備える請求項1に記載の射出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−119662(P2009−119662A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294574(P2007−294574)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】