説明

将棋対局開始の駒配置を乱数により決定するシステム

【課題】 対戦者同士の知識や情報量に左右されず独創力や直感力により勝敗が決する可能性を高めることにより、将棋の普遍性・娯楽性の向上を図るようにする。
【解決手段】 将棋を始める際の初期の駒配置を通常とは異なる任意に決定した配置とする。すなわち、将棋盤1において、三段目と七段目の歩兵の初期配置はそのままとして、二段目および八段目における飛車と角行の初期配置を1〜9の乱数を用いて出た数字に対応する筋に配し、また一段目および九段目の王将、金将、銀将、桂馬および香車についてもそれぞれ1〜9の乱数を用いて出た数字に対応する筋に配することにより、駒の新たな初期配置で対戦をスタートさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、将棋の駒の初期配置を任意に決定して対戦を行う将棋対戦システムに関する。
【背景技術】
【0002】
将棋盤上における将棋の駒の初期配置は、一段目および九段目の中央に王将を配し、その両側に金将、銀将、桂馬および香車を配し、二段目および八段目には飛車および角行を配し、三段目および七段目には歩兵を配するようになっており、一局の将棋はこれら駒を使ったさまざまな戦術の積み重ねによって構成される戦略により勝負するゲームである。そして長い将棋の歴史上、多くの戦略が開発され、なお研究は続いている。それらは複雑、多岐にわたり、それらを習得するには多大な努力と才覚を必要とする。そして、棋力の重要な要素として、どれだけ多くの戦略についての知識や情報を有するかということが挙げられる。
【0003】
また近年、パーソナルコンピュータや種々のゲーム機等の普及によって、将棋対戦のソフトウエアを用いて対戦者が対峙して画面上で将棋ゲームを行ったり、或いはインターネットを利用して遠隔の対戦者同士が将棋ゲームを行う場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−186786号公報
【特許文献2】特開2002−306847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したように、従前の将棋盤上で対戦する場合でもゲーム機等の画面上で対戦する場合でも、その勝敗は対戦相手との戦略についての知識や情報量によって決定的である。故に戦略の研究は重要で、日夜怠るべからずものとなっている。かくも、戦略の重要性とその研究が必要となる原因は、将棋の駒の初期配置が古来より恒に固定していることによるものである。戦略に関する各個人の知識、情報量の差は棋力に重大な格差を生じ、将棋の普遍性を阻害し娯楽性を低下させる。
【0006】
本発明の目的は、戦略にかかわる学習、研究を不要とし、対戦者同士の知識や情報量に左右されず独創力や直感力により勝敗が決する可能性を高めることにより、将棋の普遍性・娯楽性の向上を図ることができる将棋対戦システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明は、将棋の駒の初期配置を対戦の度に新規に決める将棋対戦プログラムであって、将棋盤における三段目と七段目の各筋には通常通り歩兵を配し、九段目の王将および各二枚の金将、銀将、桂馬および香車について、1〜9の乱数を各1回限り任意に選んで、それぞれ選んだ乱数に対応する筋に駒を配置するステップと、八段目の飛車および角行について、1〜9の乱数を各1回限り任意に選んで、それぞれの選んだ乱数に対応する筋に駒を配置するステップと、対戦相手の一段目については、前記九段目と対象の駒配置とするステップと、二段目については、前記八段目と対象の駒配置とするステップとを有する将棋対戦プログラムである。
【0008】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載の将棋対戦プログラムについて、九段目の各駒および/または八段目の各駒について、筋を決める駒をその都度、任意に選ぶステップを更に有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項3記載の本発明は、前記請求項1記載の将棋対戦プログラムについて、九段目の各駒および/または八段目の各駒について、筋を決める駒の順序を予め決めるステップを更に有することを特徴とするものである。
【0010】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載のプログラムにより実行される将棋対戦システムである。
【0011】
請求項5記載の本発明は、前記請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載のプログラムを記憶した記録媒体である。
【0012】
請求項6記載の本発明は、将棋盤情報が蓄積された将棋盤情報蓄積部と、将棋の駒の情報が格納された駒情報格納部と、駒の配置を決めるための乱数が格納された乱数情報格納部と、乱数情報格納部に格納されている乱数情報を選択する乱数選択手段および駒情報格納部に格納されている駒情報を選択する駒選択手段並びにこれら各選択手段で選択された乱数情報および駒情報に基づいて駒を将棋盤に配する駒配置手段を具備する初形配置形成部と、将棋盤情報蓄積部における将棋盤情報、駒情報格納部における駒情報および乱数情報格納部における乱数情報等を表示する将棋対戦情報表示部と、将棋ゲームを実行するための種々の入力を行う将棋対戦入力部とを有する将棋対戦ゲーム機である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、将棋の駒の初期配置を対戦の度に通常とは異なる新規な配置とするものであるため、対戦の前に戦略を立て対策を用意することは駒の初期配置の組み合わせ数が163万余通りで不可能であり、戦略や情報に精通する必要はなくなる。
そして対戦者同士の知識や情報量に左右されず独創力や直感力により勝敗が決する可能性が高くなり、将棋の普遍性・娯楽性の向上を図ることができ、これに伴って将棋の幅広い普及が期待できる。
【0014】
また、本発明によれば、将棋戦略の習得やその努力は不要となり趣味、娯楽として将棋をより発展させる可能性を高められるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】将棋盤における通常の駒の初期配置を示す正面図である。
【図2】将棋盤における本発明による駒の初期配置前の状態を示す正面図である。
【図3】乱数カードの全体正面図である。
【図4】実施形態1に係る駒の初期配置を示す正面図である。
【図5】同じく他の初期配置を示す正面図である。
【図6】実施形態2に係る駒の初期配置を示す正面図である。
【図7】本発明に係る将棋対戦ゲーム機の機能ブロック図である。
【図8】同ゲーム機における初期の一例を示すフローチャートである。
【図9】遠隔対戦の一例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1に示すように、先ず通常の駒の初期配置について説明すると、将棋盤1上における一段目および九段目の中央に王将を配し、その両側に金将、銀将、桂馬および香車を配し、二段目および八段目の2筋および8筋に飛車と角行を配し、三段目と七段目の各筋に歩兵を配する。
【0018】
これに対して、本発明の将棋対戦システムでは、図2に示すように、三段目と七段目の各筋に歩兵を配する以外は、任意に決定した駒配置によって対戦をスタートさせるのである。また各駒の動き自体は通常通りとする。
【0019】
本発明に係る対戦システムの具体的な例を以下の実施形態で説明する。
【0020】
(実施形態1)
【0021】
図3に示すように、例えば1〜9の数字を乱数としてそれらが個別に書かれた9枚のカードを用い、次に位置を決める駒を選んで前記カードを繰り、一度選ばれたカードは排除してゆく。
【0022】
例えば、九段目における王将の位置を決める場合、前記カードを適当に繰って出た数字が「3」であった場合、九段目の3筋に王将を配し、次に例えば桂馬の位置を決めるとして、次のカードをあけて出た数字が「1」であった場合、九段目の1筋に桂馬を配する。更に、金将について次のカードをあけて出た数字が「8」であった場合、九段目の8筋に金将を配する。そして、銀将、香車について次々とカードをあけて、「2」、「4」が出た場合、それぞれ九段目の2筋、4筋にそれぞれ駒を配し、更に残りの桂馬、金将、銀将および香車について、順に「6」「9」「7」「5」の数字が出た場合には、九段目における6筋に桂馬、9筋に金将、7筋に銀将および5筋に香車を配する。
【0023】
次に、八段目についても、前記カードを繰って、例えば飛車について「5」、角行について「1」の数字が出た場合、飛車を5筋、角行を1筋に配する。
【0024】
そして、相手方の駒も同様となるように対称に配する。図4は以上のようにして任意に選んだ駒の初期配置である。
【0025】
図5に位置を選ぶ駒の順番を前記と同様として新たにカードを繰って選んだ各駒の別の初期配置を示す。
【0026】
(実施形態2)
【0027】
前記実施形態1では、八段目と九段目において、位置を決める駒をその都度、任意に選んで順次、筋を決めていったが、予め位置を決める駒の順番を定めておき、その上で数字を選んでいくようにしても良い。
【0028】
例えば、駒を決める順番としては、王将→金将(1)→銀将(1)→桂馬(1)→香車(1)→金将(2)→銀将(2)→桂馬(2)→香車(2)とするか、或いは王将→金将(1)→金将(2)→銀将(1)→銀将(2)→桂馬(1)→桂馬(2)→香車(1)→香車(2)しても良い。
【0029】
そして、例えば後者の順番で出た乱数が、5→4→6→1→7→3→8→2→9であり、次に八段目についても、飛車を1番目、角行を2番目として出た乱数が5→4であった場合、駒の全体配置は図6に示すものとなる。
【0030】
次に、前述した各実施形態における将棋の初期配置を行う将棋ゲーム機並びにそのプログラムについて説明する。
【0031】
図7に示すように、将棋対戦ゲーム機(0001)は、将棋盤情報が蓄積された将棋盤情報蓄積部(0002)と、将棋の駒の情報が格納された駒情報格納部(0003)と、駒の配置を決めるための乱数が格納された乱数情報格納部(0004)と、乱数情報格納部(0004)に格納されている乱数情報を選択する乱数選択手段(0005)および駒情報格納部(0003)に格納されている駒情報を選択する駒選択手段(0006)並びにこれら各選択手段(0005)(0006)で選択された乱数情報および駒情報に基づいて駒を将棋盤に配する駒配置手段(0007)を具備する初形配置形成部(0008)と、将棋盤情報蓄積部(0002)における将棋盤情報、駒情報格納部(0003)における駒情報および乱数情報格納部(0004)における乱数情報等を表示する将棋対戦情報表示部(0009)と、将棋ゲームを実行するための種々の入力を行う将棋対戦入力部(0010)とを有する。
【0032】
将棋盤情報蓄積部(0002)は、将棋盤の画像と該将棋盤に配置された駒の画像等が記憶されたものであって、HDDやDVD等の記録媒体と記録するソフトウエアにより実現される。
【0033】
駒情報格納部(0003)は、将棋対戦に使用される全ての駒の画像が記憶されたものであって、HDDやDVD等の記録媒体と記録するソフトウエアにより実現される。
【0034】
乱数情報格納部(0004)は、将棋盤の筋に対応する1〜9までの数字が記憶されたものであって、HDD等の記録媒体と記録するソフトウエアにより実現される。
【0035】
初形配置形成部(0008)は、前述したように、乱数情報格納部(0004)に格納されている乱数情報を選択する乱数選択手段(0005)および駒情報格納部(0003)に格納されている駒情報を選択する駒選択手段(0006)並びにこれら各選択手段(0005)(0006)で選択された乱数情報および駒情報に基づいて駒を将棋盤に配する駒配置手段(0007)を具備するものであって、ソフトウエアにより実現される。
【0036】
将棋対戦情報表示部(0009)は、前述したように、将棋盤情報蓄積部(0002)における将棋盤情報、駒情報格納部(0003)における駒情報および乱数情報格納部(0004)における乱数情報等を表示する機能を有するものであって、CRTやPDP等により実現される。
【0037】
将棋対戦入力部(0010)は、初形配置形成部(0008)の乱数選択手段(0005)における乱数の選択や駒選択手段(0006)における駒の選択、或いは将棋対戦ゲームの開始等を実行するためのものであり、キーボード、マウス、ボタン等によって実現される。
【0038】
次に、前記将棋ゲーム機(0001)における処理の一例について説明すると、図8に示すように、先ず、ゲーム開始の入力を受け付け(S2001)、入力があった場合には、段数と駒の選択を受け付け(S2002)、その後、乱数の選択を受け付ける(S2003)。そして、前記各選択があった場合には、これに基づいて将棋盤において、選択された駒を選択された段数の筋へ配置し(S2004)、その後、全ての駒の配置完了を検知する(S2005)。そして、駒の配置が完了した時にはこれと同一の配置を相手方についても行う
【0039】
(S2006)。これによって、通常とは異なる初期配置での将棋対戦が始まることとなる。
【0040】
以上述べてきた将棋ゲーム機(0001)は、将棋の対戦者が本ゲーム機を挟んで直接対戦する形態であったが、本発明はこれに限らず、図9に示すように、インターネットを通じてセンターに置かれたゲームサーバー(3001)を介して互いに離れた対戦者同士が専用のゲーム機や或いは携帯電話(3002)(3003)を操作して対戦するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の将棋対戦システムによれば、通常とは異なる初期配置によって、対局がスタートするため、より普遍性・娯楽性に富んだ将棋が実現され、幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0042】
(0001) 将棋ゲーム機
(0002) 将棋盤情報蓄積部
(0003) 駒情報格納部
(0004) 乱数情報格納部
(0005) 乱数選択手段
(0006) 駒選択手段
(0007) 駒配置手段
(0008) 初形配置形成部
(0009) 将棋対戦情報表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
将棋の駒の初期配置を新規に決める将棋対戦プログラムであって、将棋盤における三段目と七段目の各筋には通常通り歩兵を配し、九段目の王将および各二枚の金将、銀将、桂馬および香車の各駒について、1〜9の乱数を各1回限り任意に選んで、それぞれ選んだ乱数に対応する筋に駒を配置するステップと、八段目の飛車および角行の各駒について、1〜9の乱数を各1回限り任意に選んで、それぞれの選んだ乱数に対応する筋に駒を配置するステップと、対戦相手の一段目については、前記九段目と対象の駒配置とするステップと、二段目については、前記八段目と対象の駒配置とするステップとを有する将棋対戦プログラム。
【請求項2】
九段目の各駒および/または八段目の各駒について、筋を決める駒をその都度、任意に選ぶステップを更に有することを特徴とする、請求項1記載の将棋対戦プログラム。
【請求項3】
九段目の各駒および/または八段目の各駒について、筋を決める駒の順序を予め決めるステップを更に有することを特徴とする、請求項1記載の将棋対戦プログラム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載のプログラムにより実行される将棋対戦システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載のプログラムを記憶した記録媒体。
【請求項6】
将棋盤情報が蓄積された将棋盤情報蓄積部と、将棋の駒の情報が格納された駒情報格納部と、駒の配置を決めるための乱数が格納された乱数情報格納部と、乱数情報格納部に格納されている乱数情報を選択する乱数選択手段および駒情報格納部に格納されている駒情報を選択する駒選択手段並びにこれら各選択手段で選択された乱数情報および駒情報に基づいて駒を将棋盤に配する駒配置手段を具備する初形配置形成部と、将棋盤情報蓄積部における将棋盤情報、駒情報格納部における駒情報および乱数情報格納部における乱数情報等を表示する将棋対戦情報表示部と、将棋ゲームを実行するための種々の入力を行う将棋対戦入力部とを有する将棋対戦ゲーム機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−19593(P2011−19593A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165570(P2009−165570)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(509199030)
【出願人】(509199041)
【Fターム(参考)】