説明

導光シート及びこれを用いた可動接点体

【課題】主に各種電子機器の操作に使用される導光シート及びこれを用いた可動接点体に関し、光の混合や漏れを防ぎ、多様な照光が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】凹凸状の複数の発光部2の間の基材11内に、暗色の遮光部12を形成することによって、所定の発光部2Aや2B等の間を完全に遮光できるため、他の発光部への光の混合や漏れを防ぎ、見易く多様な照光が可能な導光シート13、及びこれを用いた可動接点体16を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に使用される導光シート及びこれを用いた可動接点体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器、特に携帯電話や電子カメラ等の携帯端末機器においては、周囲が暗い場合でも、押釦や表示シート等の識別や操作が容易に行えるように、発光ダイオードやEL素子等を発光させて操作部の照光を行うものが増えており、これらの機器に用いられる可動接点体やスイッチにも、使い易く多様な照光を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来の導光シートや可動接点体について、図8及び図9を用いて説明する。
【0004】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図8は従来のスイッチの断面図、図9は同平面図であり、同図において、1は光透過性でフィルム状の基材で、この基材1下面の所定箇所には、凹凸状の複数の発光部2が設けられている。
【0006】
そして、これらの発光部2の間には、例えば、発光部2Aの周囲には略コの字状の複数の切欠部1Aが、発光部2Bと2Cの間には略T字状の切欠部1Bが、各々設けられて導光シート3が形成されている。
【0007】
また、4は光透過性でフィルム状のベースシート、5は略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点で、ベースシート4外周の所定箇所が、接着剤(図示せず)によって導光シート3下面に貼付されると共に、複数の可動接点5が発光部2下方のベースシート4下面に貼付されて、可動接点体6が構成されている。
【0008】
さらに、7は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板で、上面には略円形状の中央固定接点8Aと、これを囲む略馬蹄状または略リング状の外側固定接点8Bから形成された、複数の固定接点8が設けられている。
【0009】
そして、この配線基板7上面に可動接点体6が、各々の可動接点5の外周が外側固定接点8B上に載置され、可動接点5の下面中央が中央固定接点8Aと所定の間隙を空けて、対向するように貼付されている。
【0010】
また、9は発光ダイオード等の発光素子で、複数の発光素子9Aや9Bが導光シート3側方の配線基板7上面に実装され、例えば、発光素子9Aが発光部2Aの右側方、発光素子9Bが発光部2Bの下側方に、基材1の端面に発光面を向けて配置されている。
【0011】
さらに、10は光透過性でフィルム状の表示シートで、下面に印刷等によって形成された塗装部10Aの所定箇所が、文字や記号等の形状にくり抜かれて複数の表示部10Bが形成され、この表示部10Bが導光シート3の発光部2上方に配置されて、スイッチが構成されている。
【0012】
そして、このように構成されたスイッチが、携帯電話等の電子機器の操作面に装着されると共に、複数の中央固定接点8Aや外側固定接点8B、複数の発光素子9が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0013】
以上の構成において、表示シート10の所定の表示部10Bを下方へ押圧操作すると、この下方の導光シート3やベースシート4が撓んで可動接点5の略ドーム状の中央部が押圧され、所定の押圧力が加わると、可動接点5がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、可動接点5の下面中央が中央固定接点8Aに接触することによって、中央固定接点8Aと外側固定接点8Bが、可動接点5を介して電気的に接続された状態となる。
【0014】
また、表示シート10への押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点5が上方へ弾性反転し、可動接点5の下面中央が中央固定接点8Aから離れて、中央固定接点8Aと外側固定接点8Bが電気的に切断された状態となる。
【0015】
そして、このような固定接点8の電気的接離に応じて、機器の様々な機能の切換えが行われると共に、機器の電子回路から発光素子9に電源が供給されると、複数の発光素子9Aや9Bが発光し、例えば、発光素子9Aの発光色が橙色、発光素子9Bが緑色であった場合には、橙色の光が右端面、緑色の光が下端面から導光シート3内に入射して、基材1内を反射しながら内方へ進む。
【0016】
さらに、この光が基材1下面の複数の発光部2Aや2B等で拡散され反射して、これらの上方の表示シート10の表示部10Bを下方から照光し、複数の表示部10Bが、例えば、発光部2A上方の表示部10Bは橙色に、発光部2B上方の表示部10Bは緑色に照光されることによって、周囲が暗い場合でも、これらの表示部10Bの文字や記号等の表示が識別でき、操作を容易に行うことが可能なようになっている。
【0017】
つまり、表示シート10を押圧操作することによって導光シート3上面を押圧し、可動接点5を弾性反転させて固定接点8の電気的接離を行うと共に、発光素子9の光を端面から導光シート3内に導入し、複数の発光部2を発光させることによって、表示シート10の複数の表示部10Bを照光するように構成されている。
【0018】
また、この時、例えば、発光素子9Aと9Bの発光色が異なり、上記のように発光部2Aと2Bが異なる色で発光している場合や、発光部2Aの箇所は消灯し、発光部2Bは点灯している場合等に、複数の発光部2の間に形成された切欠部1Aや1Bによって、これらの光が遮断され、発光色の異なる光が導光シート3内で混合され、混ざった発光色で照光されることや、消灯しているはずの箇所が他の箇所を照光している光によって、うっすらとではあるが照光されること等のないように形成されている。
【0019】
すなわち、複数の発光部2の間に切欠部1Aや1B等を設け、例えば、発光部2Aから上下方向や左方向へ漏出する橙色の光は、略コの字状の切欠部1Aの空隙で、発光部2Bから上方向や左方向へ漏出する緑色の光は、略T字状の切欠部1Bの空隙で各々遮断することによって、混ざった発光色での照光や、消灯している箇所の照光が行われることのないように構成されているものであった。
【0020】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2009−94036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、上記従来の可動接点体6やスイッチにおいては、所定の発光部2の間に、光を遮断するための切欠部1Aや1Bが設けられてはいるが、図9に示すように、発光部2Aや2Bの周囲には空隙が形成されず、基材1の繋がった桟部1Cや1Dが残っており、複数の発光部2間の完全な遮光を行うことは困難であるため、発光素子9を増やし明るく照光すればするほど、光の混合や漏れが生じ易くなってしまうという課題があった。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、光の混合や漏れを防ぎ、多様な照光が可能な導光シート及びこれを用いた可動接点体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0025】
本発明の請求項1に記載の発明は、凹凸状の複数の発光部が形成された基材内の所定箇所に、略帯状で暗色の遮光部を形成して導光シートを構成したものであり、基材内の暗色の遮光部によって、所定の発光部と発光部の間を遮光して、他の発光部への光の混合や漏れを防ぐことや、外方への光の漏れ等を防止することができるため、見易く多様な照光が可能な導光シートを得ることができるという作用を有する。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の導光シートの発光部下面に、略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点を装着して可動接点体を構成したものであり、光の混合や漏れを防ぎ、多様な照光が可能なスイッチを実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によれば、光の混合や漏れを防ぎ、多様な照光が可能な導光シート及びこれを用いた可動接点体を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態による可動接点体の断面図
【図2】同平面図
【図3】同スイッチの断面図
【図4】部分正面図
【図5】本発明の第2の実施の形態による可動接点体の断面図
【図6】同平面図
【図7】同平面図
【図8】従来のスイッチの断面図
【図9】同平面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図7を用いて説明する。
【0030】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0031】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0032】
(実施の形態1)
実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1及び2記載の発明について説明する。
【0033】
図1は本発明の第1の実施の形態による可動接点体の断面図、図2は同平面図であり、同図において、11はフィルム状でポリウレタンやシリコーン、スチレン、ポリカーボネート等の可撓性を有する光透過性の基材で、この基材11下面の所定箇所には、凹凸状でポリエステルやエポキシ等の白色や乳白色等の複数の発光部2が、印刷等によってドット状に形成されている。
【0034】
また、これらの発光部2の間の基材11内には、例えば、発光部2Aの周囲や発光部2Bと2Cの間等の基材11内には、連結された略帯状で黒色や濃青色等の暗色の遮光部12が、これらの発光部2Aや2B、2C等を囲むように設けられて、導光シート13が構成されている。
【0035】
なお、これらの遮光部12は基材11が膨潤可能であると共に、暗色の染料が溶解する溶剤、例えば、基材11にポリウレタンを用いた場合には、アセトンやシクロヘキサノン等の溶剤にアゾ系染料を、シリコーンを用いた場合には、ガソリンやベンゼン等に油溶性含金染料を、ポリカーボネートを用いた場合には、トルエンやキシレン等にアゾ系染料を分散したインキを、各々インキジェット等によって基材11表面に噴き付け、所定温度で所定時間加熱することで比較的簡易に形成することができる。
【0036】
あるいは、これらの溶剤にアクリルやフェノキシ等の樹脂を加えたインキを、スクリーン印刷等によって基材11表面に印刷して加熱し、基材11内に暗色の染料を浸透させて、黒色や濃青色等の暗色に着色された遮光部12を形成することも可能である。
【0037】
そして、4はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等の可撓性を有するフィルム状のベースシート、5は略ドーム状で銅合金や鋼等の導電金属薄板製の可動接点で、ベースシート4外周の所定箇所が、アクリルやシリコーン等の接着剤14によって、導光シート13下面に貼付されると共に、複数の可動接点5が発光部2下方のベースシート4下面に貼付されている。
【0038】
さらに、15はポリエチレンテレフタレート等のフィルム状のセパレータで、このセパレータ15がベースシート4下面全面を覆うように貼付され、保管・搬送時に可動接点5下面に塵埃等が付着しないようにして、可動接点体16が構成されている。
【0039】
また、図3はこのような可動接点体16を用いたスイッチの断面図であり、同図において、7はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム状、または紙フェノールやガラス入りエポキシ等の板状の配線基板で、上下面には銅等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、上面には銅やカーボン等によって、略円形状の中央固定接点8Aと、これを囲む略馬蹄状または略リング状の外側固定接点8Bから形成された、複数の固定接点8が設けられている。
【0040】
そして、この配線基板7上面にセパレータ15を剥離した可動接点体16が、各々の可動接点5の外周が外側固定接点8B上に載置され、可動接点5の下面中央が中央固定接点8Aと所定の間隙を空けて、対向するように貼付されている。
【0041】
また、9は発光ダイオード等の発光素子で、複数の発光素子9が導光シート13側方の配線基板7上面に実装され、例えば図2に示すように、発光素子9Aが発光部2Aの右側方、発光素子9Bが発光部2Bの下側方に、基材11端面に発光面を向けて配置されている。
【0042】
さらに、10は光透過性でフィルム状の表示シートで、下面に印刷等によって形成された塗装部10Aの所定箇所が、文字や記号等の形状にくり抜かれて複数の表示部10Bが形成され、この表示部10Bが導光シート13の発光部2上方に配置されて、スイッチが構成されている。
【0043】
そして、このように構成されたスイッチが、携帯電話等の電子機器の操作面に装着されると共に、複数の中央固定接点8Aや外側固定接点8B、複数の発光素子9が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0044】
以上の構成において、表示シート10の所定の表示部10Bを下方へ押圧操作すると、この下方の導光シート13やベースシート4が撓んで可動接点5の略ドーム状の中央部が押圧され、所定の押圧力が加わると、可動接点5がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、可動接点5の下面中央が中央固定接点8Aに接触することによって、中央固定接点8Aと外側固定接点8Bが、可動接点5を介して電気的に接続された状態となる。
【0045】
また、表示シート10への押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点5が上方へ弾性反転し、可動接点5の下面中央が中央固定接点8Aから離れて、中央固定接点8Aと外側固定接点8Bが電気的に切断された状態となる。
【0046】
そして、このような固定接点8の電気的接離に応じて、機器の様々な機能の切換えが行われると共に、機器の電子回路から発光素子9に電源が供給されると、複数の発光素子9Aや9Bが発光し、例えば、発光素子9Aの発光色が橙色、発光素子9Bが緑色であった場合には、橙色の光が右端面、緑色の光が下端面から導光シート13内に入射して、基材11内を反射しながら内方へ進む。
【0047】
さらに、この光が基材11下面の複数の発光部2Aや2B等で拡散され反射して、これらの上方の表示シート10の表示部10Bを下方から照光し、複数の表示部10Bが、例えば、発光部2A上方の表示部10Bは橙色に、発光部2B上方の表示部10Bは緑色に照光されることによって、周囲が暗い場合でも、これらの表示部10Bの文字や記号等の表示が識別でき、操作を容易に行うことが可能なようになっている。
【0048】
つまり、表示シート10を押圧操作することによって導光シート13上面を押圧し、可動接点5を弾性反転させて固定接点8の電気的接離を行うと共に、発光素子9の光を端面から導光シート13内に導入し、複数の発光部2を発光させることによって、表示シート10の複数の表示部10Bを照光するように構成されている。
【0049】
そして、このように例えば、発光部2Aを橙色に、発光部2Bを緑色に発光させ、これらの上方の表示部10Bを異なる色で照光した際、発光部2Aの周囲や発光部2Bと2Cの間等の基材11内には、帯状で黒色や濃青色等の暗色に着色された遮光部12が、これらを囲むように形成されているため、この橙色の光と緑色の光が導光シート13内で混合されることがないようになっている。
【0050】
つまり、図2に示すように、例えば発光部2Aは略コの字状の遮光部12Aによって、発光部2Bは同じく略コの字状の遮光部12Bによって、各々周囲が完全に囲まれているため、発光部2Aの橙色の光や発光部2Bの緑色の光はこれらによって遮光され、他の発光部2へ漏出することはなく、したがって、この上方の表示部10Bが橙色や緑色の光が混ざった発光色で照光されることのないように構成されている。
【0051】
また、例えば発光素子9Bは消灯し、発光素子9Aのみが点灯している場合にも、発光素子9Aによって発光部2Aは発光するが、この光は周囲の遮光部12Aによって完全に遮光されるため、この発光素子9Aの光によって、消灯している発光部2Bや2Cが薄明るく発光することのないようになっている。
【0052】
すなわち、複数の発光部2の間の基材11内に、発光部2Aや2Bを各々囲むように形成された暗色に着色された遮光部12によって、発光部2Aや2B、2C等の間を遮光できるため、他の発光部への光の混合や漏れを防止し、見易く多様な照光が行えるように構成されている。
【0053】
このように本実施の形態によれば、凹凸状の複数の発光部2の間の基材11内に、略帯状で暗色の遮光部12を形成することによって、所定の発光部2Aや2B等の間を遮光できるため、他の発光部への光の混合や漏れを防ぎ、見易く多様な照光が可能な導光シート13、及びこれを用いた可動接点体16を得ることができるものである。
【0054】
そして、このような遮光部12は、上述したように、基材11に浸透可能である暗色の染料を溶解させたインキを用い、これをインキジェットやスクリーン印刷等によって基材11表面に塗布することで、比較的簡易に形成することが可能なようになっている。
【0055】
なお、インキを基材11表面に塗布した後、通常は所定の温度で加熱が行われ、この間に基材11内に染料が浸透して遮光部12が形成されるが、基材11が例えば0.2mm前後と厚いものであった場合、図4(a)の部分正面図に示すように、片面にのみインキ17を塗布したのでは、基材11に染料が浸透して暗色に着色される速さは、上面の浅い部分よりも下方の深い部分になるほど遅くなるため、遮光部12を形成するには100〜160度前後の温度で、10〜40分前後の時間がかかってしまう。
【0056】
これに対し、図4(b)に示すように、基材11の両面にインキ17を塗布することで、短時間の加熱で遮光部12の形成が可能になると共に、遮光部12の幅寸法も、片面にのみインキ17を塗布した場合には0.5mm以上となるのに対し、0.3mm前後とより狭い幅寸法に形成することができる。
【0057】
あるいは、図4(c)に示すように、レーザ加工等によって基材11の片面または両面に溝部11Aを形成し、インキ17が浸透する基材11の厚さを少なくしても、同様に、短時間で幅寸法の狭い遮光部12を形成することができる。
【0058】
(実施の形態2)
実施の形態2を用いて、本発明の他の実施の形態について説明する。
【0059】
なお、実施の形態1の構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0060】
図5は本発明の第2の実施の形態による可動接点体の断面図、図6は同平面図であり、同図において、光透過性の基材11下面に、ドット状で白色や乳白色等の複数の発光部2が形成されていることは、実施の形態1の場合と同様であるが、基材11外周には略帯状で暗色の遮光部12Cが、複数の発光部2を囲むように設けられている。
【0061】
また、基材11に形成された孔部11B外周にも、これを囲むように遮光部12Dが設けられると共に、基材11中間部には発光部2Bの中央を通る遮光部12Eが形成されて、導光シート13Aが構成されている。
【0062】
なお、これらの遮光部12Cや12D、12Eは、実施の形態1の場合と同様に、基材11に浸透可能である暗色の染料を溶解させたインキを、インキジェットやスクリーン印刷等によって基材11表面に塗布し、これを加熱乾燥して形成されている。
【0063】
そして、4はフィルム状のベースシート、5は略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点で、複数の可動接点5が発光部2下方のベースシート4下面に貼付されると共に、ベースシート4外周の所定箇所が接着剤14Aによって、導光シート13A下面に貼付されていることは、実施の形態1の場合と同様であるが、接着剤14Aは黒色や濃青色等の暗色に形成されている。
【0064】
さらに、実施の形態1の場合と同様に、セパレータ15がベースシート4下面全面を覆うように貼付され、保管・搬送時に可動接点5下面に塵埃等が付着しないようにして、可動接点体16Aが構成されている。
【0065】
そして、このような可動接点体16Aが、図3に示したように、複数の固定接点8が形成された配線基板7上面に貼付され、表示シート10の表示部10Bが導光シート13Aの発光部2上方に配置されると共に、例えば図6に示すように、発光素子9Aが発光部2Cの上側方、発光素子9Bが発光部2Bの下側方に配置されて、スイッチが構成される。
【0066】
また、このように構成されたスイッチが、実施の形態1の場合と同様に、携帯電話等の電子機器の操作面に装着されると共に、複数の固定接点8や発光素子9が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0067】
以上の構成において、表示シート10の所定の表示部10Bを下方へ押圧操作すると、この下方の導光シート13Aやベースシート4が撓んで可動接点5が押圧されて、固定接点8の電気的接離が行われ、これに応じて機器の様々な機能の切換えが行われることは、実施の形態1の場合と同様である。
【0068】
また、機器の電子回路から複数の発光素子9に電源が供給されると、発光素子9Aや9Bが発光し、この光が基材11下面の複数の発光部2Cや2D等で拡散され反射し、例えば、発光素子9Aの発光色が橙色、発光素子9Bが緑色であった場合には、発光部2Cや2Dの上方の表示シート10の表示部10Bが、橙色や緑色に照光されることも実施の形態1の場合と同様である。
【0069】
ただし、この時、図6に示すように、基材11中間部には遮光部12Eが形成されているため、上端面から導光シート13A内に入射した橙色の光と、下端面から入射した緑色の光はこれによって遮光され、これらの光が混合されることがないようになっている。
【0070】
そして、この遮光部12Eは発光部2Bの中央を通って形成されているため、発光部2Bは発光部2Cや2Dとは異なり、上半分と下半分が異なった色で発光する。
【0071】
すなわち、基材11上方の発光部2C等は橙色に、下方の発光部2D等は緑色に各々全体が発光するが、中央に略帯状の遮光部12Eが形成された発光部2Bは、上半分が橙色に、下半分が緑色に異なった色で発光するように構成されている。
【0072】
また、基材11外周には複数の発光部2を囲む遮光部12Cが設けられると共に、孔部11B外周にはこれを囲む遮光部12Dが設けられ、基材11に入射した光が、基材11外方や孔部11B内に漏出しないようになっている。
【0073】
つまり、基材11外周の遮光部12Cや、孔部11B外周の遮光部12Dによって、基材11内に入射した光を遮光し、この光が外に漏れ機器内の不要な箇所を照らすことがないように形成されている。
【0074】
さらに、これらの遮光部12Cや12Dを青味がかった黒色に形成し、基材11の黄色味を吸収するようにすれば、特に発光素子9から離れた箇所に配置された発光部2が、黄色味を帯びて発光することを防ぎ、複数の発光部2をばらつきのない均一な明るさで発光させることも可能となる。
【0075】
また、ベースシート4外周の所定箇所を導光シート13A下面に貼付する、接着剤14Aを暗色に形成することによって、発光素子9の光が接着剤14Aの箇所から外に漏れることを防止することもできる。
【0076】
さらに、図7(a)の平面図に示すように、複数の発光部2の中央を通る略帯状で暗色の複数の遮光部12Fや、基材11外周や複数の発光部2の間に複数の遮光部12Gを設けることで、表示シート10の表示部10Bのより多様な照光を行うことができる。
【0077】
すなわち、同図において、基材11右側方に配置された発光素子9Cや9Dが発光し、例えば、発光素子9Cの発光色が橙色、発光素子9Dが緑色であった場合、中央に遮光部12Fが形成された発光部2Bや2Dの上半分は橙色に、下半分は緑色に、各々異なった色で発光する。
【0078】
そして、この時、例えば発光部2B上方の表示部10Bが、図7(b)に示すように、上半分に数字、下半分に文字が表示されたものであった場合には、上半分の数字が橙色、下半分の文字が緑色に照光される。
【0079】
あるいは、発光素子9Cと9Dの発光色を同色、例えば白色とし、発光素子9Cのみを発光させた場合には、発光部2Bの上半分のみが発光して、この上方の表示部10Bの上半分の数字のみが照光され、発光素子9Dのみを発光させた場合には、発光部2Bの下半分のみが発光して下半分の文字のみが照光される。
【0080】
つまり、略帯状で暗色の遮光部12Fを、発光部2Bや2D等の中央を通るように設け、発光部2Bや2D等の上半分と下半分を異なった色で発光させたり、あるいは上半分と下半分の一方のみを発光させたりすることで、表示部10Bのより多様な照光を行うことが可能なようになっている。
【0081】
そして、このような複数の発光部2の中央を通る遮光部12Fを、基材11内に染料を浸透させて形成することによって、背景技術の項で説明したような切欠部とは異なり、可動接点5の弾性反転を損なうことなく、良好な操作感触が得られるように構成されている。
【0082】
また、基材11外周や複数の発光部2の間に、複数の遮光部12Gを設けることで、例えば発光部2Bや2Dの光が外に漏れることや、発光部2Aや2Cとの光の混合が生じることを防ぐことができる。
【0083】
さらに、このような複数の遮光部12Fや12G、あるいは上述したような遮光部12Cや12D、12E等は、導光シートを製作する際、インキジェットやスクリーン印刷等によって、同時に形成することができるため、これらの数が増えたとしても、製作にも時間がかからず、安価な可動接点体やスイッチを実現することが可能なようになっている。
【0084】
なお、発光素子9の発光色としては、波長420〜480nm前後の青色光や波長520〜600nm前後の黄色光、波長650〜800nm前後の赤色光、あるいは青色光と黄色光を混合させた白色光等があるが、遮光部12等を暗色に形成すると共に、これらの光を吸収する材料を染料として選択することで、より確実に光の漏れや混合を防ぐことができる。
【0085】
つまり、発光素子9の発光色に応じて、例えば青色光を吸収するカロテノイド系やアゾ系の染料、黄色光を吸収するフタロシアニン系の染料、赤色光を吸収するアントラキノン系の染料、あるいはこれらを混合した染料を、基材11内に浸透させて暗色の遮光部12等を形成することによって、各発光色の遮光をより確実に行うことが可能となる。
【0086】
このように本実施の形態によれば、基材11外周や孔部11B外周の基材11内に、略帯状で暗色の遮光部12Cや12Dを設けることによって、基材11内から外方への光の漏れを防ぐことができると共に、所定の発光部2の基材11内に、略帯状で暗色の遮光部12Eや12F、12Gを形成することによって、一つの発光部2の半分ずつを異なる色やタイミングで発光させるといった、多様な照光が可能な導光シート13A、及びこれを用いた可動接点体16Aを得ることができるものである。
【0087】
なお、以上の説明では、基材11下面に印刷によって、凹凸状の複数の発光部2を形成した構成について説明したが、基材11上面に複数の発光部2を設けた構成としても、本発明の実施は可能であり、また、印刷以外にも貼付やインクジェット、レーザ加工、プレス加工、成形加工等、様々な方法によっても発光部2の形成は可能である。
【0088】
また、以上の説明では、下面に複数の可動接点5が貼付されたベースシート4を、導光シート13や13Aの下面に貼付した構成について説明したが、ベースシート4をなくし、導光シート13や13Aの下面に複数の可動接点5を直接貼付した構成とすれば、全体の構成部品数を減らし、可動接点体16や16A、スイッチをより簡易で安価に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明による導光シート及びこれを用いた可動接点体は、光の混合や漏れを防ぎ、多様な照光が可能なものが得られ、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0090】
2、2A、2B、2C、2D 発光部
4 ベースシート
5 可動接点
7 配線基板
8 固定接点
8A 中央固定接点
8B 外側固定接点
9、9A、9B、9C、9D 発光素子
10 表示シート
10A 塗装部
10B 表示部
11 基材
11A 溝部
12、12A、12B、12C、12D、12E、12F、12G 遮光部
13、13A 導光シート
14、14A 接着剤
15 セパレータ
16、16A 可動接点体
17 インキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の基材と、この基材に形成された凹凸状の複数の発光部からなり、上記基材内の所定箇所に略帯状で暗色の遮光部を形成した導光シート。
【請求項2】
請求項1記載の導光シートの発光部下面に、略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点を装着した可動接点体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−29156(P2011−29156A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108870(P2010−108870)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】