説明

導波管スロットアレーアンテナ装置

【課題】可視領域内にグレーティングローブを発生せずに直交する2つの偏波の送受信を可能にする。
【解決手段】矩形状の中空導波管であり、略平行に配置された複数の第一の導波管11、および、第一の導波管11の一方の幅広面に管軸方向に沿って略1/2管内波長の間隔で千鳥配置されたシャント型の第一のスロット12を有する第一の導波管スロットアレーアンテナ1と、矩形状の中空導波管であり、略平行に配置された複数の第二の導波管21、および、第二の導波管21の両方の幅広面に管軸方向に沿って略1/2管内波長の間隔で、当該両幅広面で対向して千鳥配置されたシャント型の第二のスロット22a,22bを有する第二の導波管スロットアレーアンテナ2とを備え、各第二の導波管21の幅狭面が、各第一の導波管11の第一のスロット形成面上の当該各第一のスロット12間に、当該第一の導波管11の管軸方向に対して略直交に配置された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダや通信などの用途に供される導波管スロットアレーアンテナ装置に関し、特に、直交する2つの偏波の送受信を可能にする導波管スロットアレーアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波、ミリ波などの高周波帯でも低損失なアンテナとして、導波管スロットアレーアンテナが挙げられる。
一方、通信用途などにおいて、高速大容量化の要求を満たす方法の一つとして、偏波多重技術が挙げられる。この場合、アンテナには直交する2つの偏波を同時に送受信できることが求められる。
【0003】
そこで、直交する2つの偏波を同時に送受信できる導波管スロットアレーアンテナとして、特許文献1,2に開示されたものが挙げられる。特許文献1,2に開示された導波管スロットアレーアンテナでは、導波管の管軸方向に伸張するシャント型のスロットを複数有する導波管スロットアレーと、導波管の管幅方向に伸張するシリーズ型のスロットを複数有する導波管スロットアレーとを交互に隣接配置している。これにより、アンテナ全体として直交2偏波の送受信を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−48323号公報
【特許文献2】特開2003−318648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1,2に開示された導波管スロットアレーアンテナでは、シャント型のスロットが導波管の1管内波長間隔で配置されている。このアンテナを中空導波管で構成する場合、導波管の管内波長が自由空間波長よりも長くなるため、シャント型のスロットの配置間隔が1自由空間波長以上となってしまう。そのため、導波管の管軸を含む面の放射パターンはグレーティングローブを生じてしまう。
【0006】
そこで、特許文献1では、導波管の内部に誘電体材料を充填し、誘電体材料の波長短縮効果を利用して、スロット間隔を縮小することでグレーティングローブの発生を回避している。しかしながら、導波管の内部に誘電体材料を隈なく充填することは製造上困難であり、製造コストが増大するといった課題がある。
【0007】
また、特許文献2では、誘電体材料を充填することを特に前提としておらず、グレーティングローブの発生を許容し、限られた視野角内で使用することを想定している。しかしながら、グレーティングローブの発生は、アンテナ利得の低下を招き、他の電子機器への干渉などの問題が起こり得るため好ましくない。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、可視領域内にグレーティングローブを発生せずに直交する2つの偏波の送受信を可能にする導波管スロットアレーアンテナ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る導波管スロットアレーアンテナ装置は、矩形状の中空導波管であり、略平行に配置された複数の第一の導波管、および、第一の導波管の一方の幅広面に管軸方向に沿って略1/2管内波長の間隔で千鳥配置されたシャント型の第一のスロットを有する第一の導波管スロットアレーアンテナと、矩形状の中空導波管であり、略平行に配置された複数の第二の導波管、および、第二の導波管の両方の幅広面に管軸方向に沿って略1/2管内波長の間隔で、当該両幅広面で対向して千鳥配置されたシャント型の第二のスロットを有する第二の導波管スロットアレーアンテナとを備え、各第二の導波管の幅狭面が、各第一の導波管の第一のスロット形成面上の当該各第一のスロット間に、当該第一の導波管の管軸方向に対して略直交に配置されたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、上記のように構成したので、可視領域内にグレーティングローブを発生せずに直交する2つの偏波の送受信を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【図2】この発明の実施の形態1における第一の導波管スロットアレーアンテナの構成を示す分解図である。
【図3】この発明の実施の形態1における第二の導波管スロットアレーアンテナの構成を示す分解図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置の構成を示す+y方向側より見た側面図である。
【図5】この発明の実施の形態1における第二の導波管スロットアレーアンテナによる偏波面方向を説明する長手方向から見た断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置の別の構成を示す模式図である。
【図7】この発明の実施の形態1における第一の導波管スロットアレーアンテナの別の構成を示す分解図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【図9】図8のA−A’線断面図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナ装置の別の構成を示す模式図である。
【図11】図10のB−B’線断面図である。
【図12】この発明の実施の形態3に係る導波管スロットアレーアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【図13】この発明の実施の形態3における第一の導波管スロットアレーアンテナの構成を示す分解図である。
【図14】この発明の実施の形態3における第二の導波管スロットアレーアンテナの構成を示す分解図である。
【図15】この発明の実施の形態3における第二の導波管スロットアレーアンテナの別の構成を示す分解図である。
【図16】この発明の実施の形態4に係る導波管スロットアレーアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【図17】図16のC−C’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置の構成を示す模式図であり、図2は第一の導波管スロットアレーアンテナ1の構成のみを示した分解図であり、図3は第二の導波管スロットアレーアンテナ2の構成のみを示した分解図である。
導波管スロットアレーアンテナ装置は、図1に示すように、第一の導波管スロットアレーアンテナ1および第二の導波管スロットアレーアンテナ2から構成されている。
【0013】
第一の導波管スロットアレーアンテナ1は、図1,2に示すように、矩形状の中空導波管であり、略平行に配置された複数の第一の導波管11を備えている。
この第一の導波管11の一方の幅広面(図1,2で示す上面)には、複数の第一のスロット12が形成されている。第一のスロット12は、長手方向が第一の導波管11の管軸方向と略同一方向であるシャント型のスロットである。また、第一のスロット12の配置間隔は第一の導波管11の管内波長の略1/2であり、また、管軸方向に隣接するスロット12同士は第一の導波管11の幅広面の中心線に対して交互に反対の位置、すなわち千鳥状に配置されている。
また、第一の導波管11の一端には、給電部13が設けられている。
【0014】
第二の導波管スロットアレーアンテナ2は、図1,3に示すように、矩形状の中空導波管であり、略平行に配置された複数の第二の導波管21を備えている。
この第二の導波管21の一方の幅広面(図1,3で示す右側面)には、複数の第二のスロット22aが形成され、他方の幅広面(図1,3で示す左側面)には、複数の第二のスロット22bが形成されている。第二のスロット22a,22bは、長手方向が第二の導波管21の管軸方向と略同一方向であるシャント型のスロットである。また、第二のスロット22a,22bの配置間隔は第二の導波管21の管内波長の略1/2であり、また、管軸方向に隣接するスロット22a,22b同士は第二の導波管21の幅広面の中心線に対して交互に反対の位置、すなわち千鳥状に配置されている。さらに、第二の導波管21の管軸方向に同じ位置で面対する第二のスロット22aと第二のスロット22bは、図4に示すように、第二の導波管21の幅広面の中心線に対して同じ方向にシフトしている。
なお、第二のスロット22aと第二のスロット22bの位置は、図4に示すようにずらしてもよいし、ずらさなくてもよい。また、第二のスロット22aと第二のスロット22bの大きさについても同様に、図4に示すように変えてもよいし、同じでもよい。また、図4では、スロット配置に一般性を持たせるため、第一のスロット12を2本ではなく3本示している。
また、第二の導波管21の端部には、給電部23が設けられている。
【0015】
なお、第一,二の導波管スロットアレーアンテナ1,2において、隣接する第一のスロット12や第二のスロット22a,22bを千鳥配置とする理由は、隣接する2つのスロット12(22a,22b)の管幅方向における位置を異ならせることで、2つのスロット12(22a,22b)の管軸方向の距離が導波管11(21)の1管内波長より短くても同相で励振を行わせることができるようにするためである。
【0016】
そして、図1に示すように、各第二の導波管21の幅狭面(図1で示す底面)が、各第一の導波管11の第一のスロット形成面上(図1で示す上面)の各第一のスロット12間に、第一の導波管11の管軸方向に対して略直交して配置されている。また、第一の導波管11及び第二の導波管21は、アイソレーションを保って配置されている。
なお以下では、便宜上、第一の導波管11の管軸方向をx方向、第二の導波管21の管軸方向をy方向、第一の導波管11の第一のスロット形成面の法線方向をz方向とする。そして、z方向がアンテナの主放射方向となる。
【0017】
次に、上記のように構成された導波管スロットアレーアンテナ装置による効果について説明する。
導波管スロットアレーアンテナでは、スロットの幅方向に電界が立つので、アンテナの偏波面は管軸に直交する方向となる。すなわち、第一の導波管スロットアレーアンテナ1では、アンテナの偏波面がx軸方向となる。
【0018】
一方、第二の導波管スロットアレーアンテナ2では、図5に示すような電界が形成される。なお、図5は導波管スロットアレーアンテナ装置のyz断面図であり、点線矢印は第二の導波管21内を流れる電流の瞬時状態を、破線矢印はこのときの電界の様子を表している。なお、図5では、簡略化のため、第二のスロット22aと第二のスロット22bの位置や大きさを一致させている。
第二の導波管スロットアレーアンテナ2においても第二のスロット22a,22b近傍の電界は、第二のスロット22a,22bの幅方向となる。しかしながら、図5に示すように、隣接する第二の導波管21の幅広面が向き合う箇所においては互いに逆相の電界が形成される。そのため、これらの電界が合成されることで、第二の導波管スロットアレーアンテナ2では、アンテナの偏波面がy軸方向となる。
以上より、第一の導波管スロットアレーアンテナ1と第二の導波管スロットアレーアンテナ2とで、互いに直交した2つの偏波を送受信することが可能となる。
【0019】
また、前述のように、第一のスロット12および第二のスロット22a,22bの配置間隔を第一,二の導波管11,21の略1/2管内波長としているので、第一,二の導波管11,21を中空導波管とした場合であっても上記配置間隔は通常は自由空間波長以下となる。そのため、第一,二の導波管スロットアレーアンテナ1,2は共に放射パターンにグレーティングローブを生じることはない。よって、アンテナ利得の低下や、不要放射による他の電子機器への干渉の問題などを回避することができる。また、第一,二の導波管11,21に誘電体材料を充填するといったプロセスを用いる必要がないので、アンテナの製造コストを低く抑えることができるといった利点もある。
【0020】
なお、第一,二の導波管11,21の給電部13,23とは反対側の端部は、整合終端や短絡など、アンテナの設計要件に応じて任意に選択できる。特に、端部を短絡する場合は、短絡端と、それに隣接するスロット12(22a,22b)の中心との距離が略1/4管内波長の奇数倍となるように構成することで、スロット12(22a,22b)上を流れる電流を最大にするような定在波が立つ。これにより、スロット12(22a,22b)からの空間への放射量が最大となり、高いアンテナ効率を実現することができる。
【0021】
さらに、図6,7に示すように、第一の導波管11の第一のスロット形成面上に、各第一の導波管11に跨って、各第一のスロット12との対向部分に略同型状の開口を有する金属板3を設置してもよい。
すなわち、アンテナの主放射方向は+z方向であるが、図1に示すような構造の場合、第一の導波管11間の隙間から電波が漏れてしまい、−z方向へも多少は放射がなされてしまうことが考えられる。そのため、アンテナの利得が減少してしまうことが懸念される。また、アンテナの後方(−z方向)には通常信号処理回路などのデバイスが設置されるため、これら電子機器への干渉を抑える必要がある。そこで、図6,7に示すように、第一のスロット12が形成された面上に金属板3を設置することで、遮蔽の効果が得られ、アンテナ後方側への電波の漏れを抑圧することができる。
【0022】
以上のように、この実施の形態1によれば、中空導波管である複数の第一の導波管11、および、各第一の導波管11の一方の幅広面に管軸方向に沿って略1/2管内波長の間隔で千鳥配置したシャント型の第一のスロット12を有する第一の導波管スロットアレーアンテナ1と、中空導波管である複数の第二の導波管21、および、各第二の導波管21の両方の幅広面に管軸方向に沿って略1/2管内波長の間隔で、当該両幅広面で対向して千鳥配置したシャント型の第二のスロット22a,22bを有する第二の導波管スロットアレーアンテナ2とを備え、各第二の導波管21の幅狭面を、各第一の導波管11の第一のスロット形成面の当該各第一のスロット12間に、当該第一の導波管11の管軸方向に対して略直交して配置するように構成したので、誘電体材料を充填することなく、可視領域内にグレーティングローブを発生せずに直交する2つの偏波の送受信を可能にすることができる。
【0023】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナ装置の構成を示す模式図であり、図9は図8のA−A’線断面図である。なお図9では、第二の導波管21を省略している。図8に示す実施の形態2に係る導波管スロットアレーアンテナ装置は、図6に示す実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置に金属ブロック4を追加したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0024】
金属ブロック4は、図8,9に示すように、金属板3上に、隣接する第一のスロット12間かつ隣接する第二のスロット22a(22b)間の隙間を埋めるように複数設置されたものである。
この金属ブロック4を設置することにより、第一のスロット12の電界面方向、および第二のスロット22a,22bの磁界面方向の空間を介した相互結合を抑圧することができる。素子間結合は、インピーダンスの劣化、パターン形状の歪などのアンテナ特性の劣化の要因となるので、できるだけ抑圧されることが望ましい。
【0025】
そして、隣接する第二の導波管21および金属ブロック4によって、素子アンテナ(スロット)の占有領域(+z方向から見た概矩形の領域)を形成することで、その形状に応じて素子アンテナの利得やビーム幅を調節することができる。
【0026】
また、図10,11に示すように、直方体形状の金属ブロック4に代えて、xz断面においてテーパを有する金属ブロック4bを用いてもよい。なお図11では、第二の導波管21を省略している。
この金属ブロック4bのテーパ形状を自由に選択することで、素子アンテナの利得やビーム幅の設計がより容易になるといった利点が得られる。なお、図10,11に示す金属ブロック4bでは、テーパが+z方向に向かって狭まる形状であるが、反対に+z方向に向かって広がる形状であってもよい。
【0027】
以上のように、この実施の形態2によれば、隣接する第一のスロット12間かつ隣接する第二のスロット22a(22b)間の隙間を埋めるように金属ブロック4,4bを設置するように構成したので、実施の形態1における効果に加えて、第一のスロット12の電界面方向および第二のスロット22a,22bの磁界面方向の空間を介した相互結合を抑圧することができる。
【0028】
実施の形態3.
上記実施の形態1,2では、第一の導波管11および第二の導波管21の具体的な給電構造について明示せず、独立に給電構造(給電部13,23)を設けることを前提として説明を行った。それに対して、実施の形態3では、各導波管11,21の給電部13,23を全てまたは部分的に合成/分配するように構成したものついて示す。
【0029】
図12は、第一の導波管スロットアレーアンテナ1において、第一の導波管11の一端側(給電側)に、磁界面ベンド構造と磁界面分岐構造からなり、端部に給電部13を有する分配構造5を設けたものである。これにより、1つの給電部13から各第一の導波管11に給電を行うことができ、よりコンパクトなアンテナを実現することができる。
【0030】
また、図13は、第一の導波管スロットアレーアンテナ1の給電方法の別形態を示す図であり、第一の導波管スロットアレーアンテナ1のみを示した分解図である。図13では、第一の導波管11の両端を短絡し、アンテナの後方側(−z方向)に給電用導波管6を設けている。この給電用導波管6には、結合スロット61が設けられている。そして、第一の導波管11の管軸方向と給電用導波管6の管軸方向は互いに略直交し、互いの幅広面で結合スロット61を介して接続される。
このように、アンテナの背面に給電構造を構成することで、よりコンパクトなアンテナを実現することができる。なお、図13では第一の導波管11と給電用導波管6の接続構造として結合スロット61を用いたが、概矩形開口などの結合孔を用いて接続してもよい。
【0031】
一方、図14は、第二の導波管スロットアレーアンテナ2において、第二の導波管21の一端側(給電側)に、電界面ベンド構造と電界面分岐構造からなり、端部に給電部23を有する分配構造7を設けたものである。これにより、1つの給電部23から各第二の導波管21に給電を行うことができ、よりコンパクトなアンテナを実現することができる。
【0032】
また、図15は、第二の導波管スロットアレーアンテナ2の給電方法の別形態を示す図である。図15では、第二の導波管21の一端側(給電側)に、電界面ベンド構造と磁界面分岐構造からなり、端部に給電部23を有する分配構造8を設けている。また、磁界面分岐構造は、アンテナ放射方向とは反対側に折り曲げられている。これにより、アンテナ背面に設けられる信号処理回路との接続を容易に行うことができる。
【0033】
以上のように、この実施の形態3によれば、各導波管11,21の給電部13,23を全てまたは部分的に合成/分配するように構成したので、実施の形態1における効果に加えて、よりコンパクトなアンテナを実現することができる。
【0034】
実施の形態4.
図16はこの発明の実施の形態4に係る導波管スロットアレーアンテナ装置の構成を示す模式図であり、図17は図16のC−C’線断面図である。なお図17では、第二の導波管21を省略している。図16に示す実施の形態4に係る導波管スロットアレーアンテナ装置は、図6に示す実施の形態1に係る導波管スロットアレーアンテナ装置に、複数の金属体からなる金属グリッド9を追加したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0035】
金属グリッド9は、図16に示すように、隣接する第二の導波管21間の、第一のスロット12と第二のスロット22a,22b間の位置に設けられたものである。なお、金属グリッド9は、第一の導波管11の幅広面と略水平に配置されている。さらに、金属グリッド9を構成する各金属体は、その長手方向が第一の導波管11の管軸方向に沿い、アンテナの使用周波数の波長に対して十分小さい間隔で配置されている。
【0036】
次に、上記のように構成された導波管スロットアレーアンテナ装置による効果について説明する。
上記実施の形態1〜3において、第二の導波管スロットアレーアンテナ2は、第一の導波管11の第一のスロット形成面を反射板として用いることによって、+z方向のみへの放射を実現している。このとき、第二のスロット22a,22bと第一の導波管11の第一スロット形成面との距離が離れている場合(例えば距離が自由空間波長の約1/2の場合)には、+z方向への直接波と−z方向からの反射波とが逆相で重畳してしまい、アンテナのメインローブにヌルが形成されてしまうことが起こり得る。ゆえに、上記距離をできるだけ近接させた方がよいが、第二の導波管21の幅広面の寸法によっては困難な場合があることが考えられる。
【0037】
そこで、金属グリッド9を第二のスロット22a,22bに近接した位置に設置することにより、+z方向への直接波と−z方向からの反射波との位相差を少なくし、上述の問題を回避することができる。一方、金属グリッド9を形成する金属体の長手方向(y方向)は、第一の導波管スロットアレーアンテナ1の偏波方向(x方向)と直交するため、第一の導波管スロットアレーアンテナ1に対する影響はほとんどない。
【0038】
以上のように、この実施の形態4によれば、隣接する第二の導波管21間の、第一のスロット12と第二のスロット22a,22b間の位置に、第一の導波管11の幅広面と略水平な金属グリッド9を設けるように構成したので、実施の形態1における効果に加えて、第二のスロット22a,22bと、第一の導波管11の第一のスロット形成面との距離が離れていることによるメインローブのヌル形成を回避できる。
【0039】
実施の形態5.
上記実施の形態1〜4では、第一の導波管11および第二の導波管21の内部の材料構成について明示せず、中空構造を前提として説明を行った。それに対して、第一の導波管11内および/または第二の導波管21内の全体または一部分に誘電体材料を充填してもよい。導波管11,21内に誘電体材料を充填することで、誘電体材料が持つ比誘電率に応じて導波管11,21の管内波長を短縮させる効果が得られる。これにより、第一のスロット12や第二のスロット22a,22bの素子間隔を調整することができ、アレーアンテナの設計の自由度を増すことができる。
【0040】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 第一の導波管スロットアレーアンテナ、2 第二の導波管スロットアレーアンテナ、3 金属板、4,4b 金属ブロック、5,7,8 分配構造、6 給電用導波管、9 金属グリッド、11 第一の導波管、12 第一のスロット、13 給電部、21 第二の導波管、22a,22b 第二のスロット、23 給電部、61 結合スロット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の中空導波管であり、略平行に配置された複数の第一の導波管、および、前記第一の導波管の一方の幅広面に管軸方向に沿って略1/2管内波長の間隔で千鳥配置されたシャント型の第一のスロットを有する第一の導波管スロットアレーアンテナと、
矩形状の中空導波管であり、略平行に配置された複数の第二の導波管、および、前記第二の導波管の両方の幅広面に管軸方向に沿って略1/2管内波長の間隔で、当該両幅広面で対向して千鳥配置されたシャント型の第二のスロットを有する第二の導波管スロットアレーアンテナとを備え、
前記各第二の導波管の幅狭面が、前記各第一の導波管の第一のスロット形成面上の当該各第一のスロット間に、当該第一の導波管の管軸方向に対して略直交に配置された
ことを特徴とする導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項2】
前記第一の導波管および/または前記第二の導波管の端部が短絡された
ことを特徴とする請求項1記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項3】
前記第一の導波管および/または前記第二の導波管の端部が整合終端された
ことを特徴とする請求項1記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項4】
前記第一の導波管および/または第二の導波管の短絡端と、当該短絡端に隣接する前記第一のスロットおよび/または第二のスロットの中心との距離が、略1/4管内波長の奇数倍である
ことを特徴とする請求項2記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項5】
前記各第一の導波管の第一のスロット形成面上に、当該各第一の導波管に跨って、当該各第一のスロットとの対向部分に開口を有する金属板が設置された
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項6】
隣接する前記第一のスロット間かつ隣接する前記第二のスロット間の隙間を埋める金属ブロックが設けられた
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項7】
前記金属ブロックはテーパを有する
ことを特徴とする請求項6記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項8】
前記各第一の導波管の一端に、磁界面ベンド構造および磁界面分岐構造からなり、端部に給電部を有する分配構造が設けられた
ことを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項9】
前記第一の導波管の第一のスロット非形成面上に、管軸方向に略直交して結合スロットまたは結合孔を介して接続され、一端に給電部を有する給電用導波管が設けられた
ことを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項10】
前記第二の矩形導波管の一端に、電界面ベンド構造および電界面分岐構造からなり、端部に給電部を有する分配構造が設けられた
ことを特徴とする請求項1から請求項9のうちのいずれか1項記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項11】
前記第二の矩形導波管の一端に、電界面ベンド構造および磁界面分岐構造からなり、端部に給電部を有する分配構造が設けられ、
前記磁界面分岐構造はアンテナ放射方向と反対側に折り曲げられた
ことを特徴とする請求項1から請求項9のうちのいずれか1項記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項12】
隣接する前記第二の導波管間の、前記第一のスロットと前記第二のスロット間の位置に、前記第一の導波管の幅広面と略水平な金属グリッドが設けられ、
前記金属グリッドを構成する各金属体は、長手方向が前記第一の導波管の管軸方向に沿い、使用周波数の波長に対して小さい間隔で配置された
ことを特徴とする請求項1から請求項11のうちのいずれか1項記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。
【請求項13】
前記第一の導波管内および/または第二の導波管内の全体または一部分に誘電体材料が充填された
ことを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載の導波管スロットアレーアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−106301(P2013−106301A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250669(P2011−250669)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】