導波路型フォトダイオードの製造方法
【課題】素子抵抗の大きさのばらつきを抑制することが可能な導波路型フォトダイオードの製造方法を提供する。
【解決手段】導波路型フォトダイオードの製造方法は、半導体積層23に第1方向に沿って延びるメサ部31を形成するメサ部形成工程と、一対の光導波路部41、51を形成することにより半導体構造物53を得る光導波路部形成工程と、第1方向と直交する第2方向に沿って延びる第2マスク67を用いて、下部コンタクト層5が露出するようにメサ部31をエッチングすると共に、一対の光導波路部41、51をエッチングする半導体構造物エッチング工程とを備える。半導体構造物エッチング工程においては、下部コンタクト層5をエッチングストップ層としてメサ部31及び一対の光導波路部41、51をエッチングする。
【解決手段】導波路型フォトダイオードの製造方法は、半導体積層23に第1方向に沿って延びるメサ部31を形成するメサ部形成工程と、一対の光導波路部41、51を形成することにより半導体構造物53を得る光導波路部形成工程と、第1方向と直交する第2方向に沿って延びる第2マスク67を用いて、下部コンタクト層5が露出するようにメサ部31をエッチングすると共に、一対の光導波路部41、51をエッチングする半導体構造物エッチング工程とを備える。半導体構造物エッチング工程においては、下部コンタクト層5をエッチングストップ層としてメサ部31及び一対の光導波路部41、51をエッチングする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路型フォトダイオードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、導波路型フォトダイオード及びその製造方法が記載されている。この製造方法においては、フォトダイオード部を形成した後に、Butt-Jointプロセスによりフォトダイオード部の光軸方向の両端部に光導波路部を形成する。続いて、フォトダイオード部と光導波路部をエッチングして、光軸方向に沿って延びるメサを形成する。そして、当該メサの両側面を半絶縁性半導体により埋め込む。
【0003】
当該製造方法によれば、へき開を行わなくてもフォトダイオード部の積層方向と垂直な断面積を小さくすることができるため、フォトダイオード部の静電容量を低下させて高速動作を可能とするために当該断面積を小さくしても、当該断面積のばらつきを低減させること、及び、これにより、フォトダイオード部の受光特性のばらつきを低減させることが可能であることが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−127333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の導波路型フォトダイオードの製造方法においては、半絶縁性基板が用いられ、半絶縁性基板の主面上にフォトダイオード部の下部電極を形成している。これにより、導電性基板を用いて、その裏面に下部電極を形成した導波路型フォトダイオードと比較して、フォトダイオードの部の静電容量を低下させることができる。その結果、高速動作が可能な導波路型フォトダイオードが得られる。
【0006】
このような導波路型フォトダイオードを製造する際には、まず、半絶縁性半導体基板の主面上にフォトダイオード部を形成した後に、Butt-Jointプロセスによりフォトダイオード部の光軸方向の両端部に光導波路部を形成する。続いて、フォトダイオード部と光導波路部とを一括してエッチングして、光軸方向に沿って延びるメサを形成する。このエッチングは、フォトダイオード部内のコンタクト層の表面を露出させるように行う。その後、当該コンタクト層の表面に下部電極を形成することにより、半絶縁性基板の主面上にフォトダイオード部の下部電極を形成することができる。
【0007】
しかしながら、上述のような導波路型フォトダイオードの製造方法においては、フォトダイオード部と光導波路部とを一括してエッチングしてメサを形成する工程においてフォトダイオード部のコンタクト層を露出させる必要があるため、当該コンタクト層の厚さ(残厚)を所望の厚さに制御することが困難な場合がある。そのため、コンタクト層の厚さ(残厚)がばらついてしまう場合がある。このようにコンタクト層の厚さがばらつくと、得られる導波路型フォトダイオードの素子抵抗の大きさがばらついてしまうため、導波路型フォトダイオードの特性がばらついてしまう。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、素子抵抗の大きさのばらつきを抑制することが可能な導波路型フォトダイオードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法は、半導体基板の主面上に、p型AlInAsからなるコンタクト層と、i型GaInAsからなる吸収層と、n型InPからなるクラッド層と、をこの順に堆積することにより、pin型フォトダイオード部のpin構造を有する半導体積層を形成する半導体積層形成工程と、半導体基板の主面における第1方向に沿って延びる第1マスクを半導体積層上に形成し、半導体積層の第1マスクによって覆われていない領域のコンタクト層が除去されるように半導体積層をエッチングすることにより、半導体積層に第1方向に沿って延びるストライプ状のメサ部を形成するメサ部形成工程と、メサ部の両側面と接するように半導体材料からなる一対の光導波路部を形成することにより、当該一対の光導波路部とメサ部とを含む半導体構造物を得る光導波路部形成工程と、半導体基板の主面における第1方向と直交する第2方向に沿って延びると共に一対の光導波路部の各々の一部及びメサ部の一部を覆う第2マスクを半導体構造物上に形成する第2マスク形成工程と、第2マスクを用いて、コンタクト層をエッチングストップ層としてメサ部及び一対の光導波路部をエッチングすることにより、コンタクト層を露出させると共に、一対の光導波路部を第2方向に沿って延びるストライプ状に加工する半導体構造物エッチング工程と、メサ部のクラッド層上にカソード電極を形成し、コンタクト層のうち、半導体構造物エッチング工程において露出した領域上にアノード電極を形成する、電極形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法においては、半導体構造物エッチング工程におけるメサ部及び一対の光導波路部のエッチングは、上記コンタクト層をエッチングストップ層として用いて行われる。これにより、当該コンタクト層の厚さ(残厚)を所望の厚さに制御し易くなるため、当該コンタクト層の厚さ(残厚)のばらつきを抑制することができる。その結果、本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法によれば、得られる導波路型フォトダイオードの素子抵抗の大きさのばらつきを抑制することができる。
【0011】
さらに、本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法においては、半導体積層形成工程において、i型GaInAsPからなる第1介在層をさらに堆積し、半導体積層において、第1介在層は前記コンタクト層と吸収層との間に設けられており、第1介在層のバンドギャップは、コンタクト層のバンドギャップよりも小さく、かつ、吸収層のバンドギャップよりも大きいことが好ましい。
【0012】
これにより、価電子帯の上端のエネルギーレベルは、吸収層の当該エネルギーレベル、第1介在層の当該エネルギーレベル、及び、下部コンタクト層の当該エネルギーレベルの順に、段階的に減少することになる。そのため、第1介在層が存在しない場合と比較して、導波路型フォトダイオードに逆バイアスが印加されると、吸収層で生じたホールはコンタクト層に移動し易くなる。その結果、導波路型フォトダイオードの動作周波数帯域(高速性)が向上する。
【0013】
さらに、本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法においては、半導体積層形成工程において、i型GaInAsPからなる第2介在層をさらに堆積し、半導体積層において、第2介在層は第1介在層と吸収層との間に設けられており、第2介在層のバンドギャップは、第1介在層のバンドギャップよりも小さく、かつ、吸収層のバンドギャップよりも大きいことが好ましい。
【0014】
これにより、価電子帯の上端のエネルギーレベルは、吸収層11の当該エネルギーレベル、第2介在層の当該エネルギーレベル、第1介在層の当該エネルギーレベル、及び、下部コンタクト層5の当該エネルギーレベルの順に、段階的に減少することになる。そのため、第2介在層が存在しない場合と比較して、導波路型フォトダイオードに逆バイアスが印加されると、吸収層で生じたホールはコンタクト層にさらに移動し易くなる。その結果、導波路型フォトダイオードの動作周波数帯域(高速性)がさらに向上する。
【0015】
さらに、本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法では、半導体構造物エッチング工程においては、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法によって、メサ部及び一対の光導波路部をエッチングすることが好ましい。
【0016】
これにより、半導体構造物エッチング工程におけるメサ部及び一対の光導波路部のエッチングの際、コンタクト層のエッチングレートを、他の層のエッチングレートよりも特に小さくすることができる。そのため、コンタクト層の厚さ(残厚)を所望の厚さに特に制御し易くなるため、当該コンタクト層の厚さ(残厚)のばらつきを特に抑制することができる。その結果、得られる導波路型フォトダイオードの素子抵抗の大きさのばらつきを特に抑制することができる。
【0017】
さらに、本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法では、光導波路部形成工程においては、第1マスクを選択成長マスクとして用いて一対の光導波路部を成長させ、当該製造方法は、光導波路部形成工程と第2マスク形成工程との間に、メサ部及び一対の光導波路部を覆うように、半導体材料からなるキャップ層を形成するキャップ層形成工程をさらに備えることが好ましい。
【0018】
これにより、光導波路部形成工程においては、第1マスクを選択成長マスクとして用いて一対の光導波路部を成長させるため、メサ部の両側面と接するように一対の光導波路部を形成することが容易となる。そして、光導波路部形成工程後において、一対の光導波路とメサ部との間に生じた窪みによって半導体構造物の表面の平坦性が悪くなった場合であっても、キャップ層によって平坦性を改善することができる。その結果、半導体構造物の表面の平坦性の悪さに起因して後の工程において不具合が生じることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、素子抵抗の大きさのばらつきを抑制することが可能な導波路型フォトダイオードの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】半導体積層堆積工程を説明するための斜視図である。
【図2】バッファー層からクラッド層までの各層のエネルギーバンド構造を示す図である。
【図3】メサ部形成工程を説明するための斜視図である。
【図4】メサ部形成工程を説明するための斜視図である。
【図5】光導波路部形成工程を説明するための斜視図である。
【図6】キャップ層形成工程を説明するための斜視図である。
【図7】第2マスク形成工程を説明するための斜視図である。
【図8】半導体構造物エッチング工程を説明するための斜視図である。
【図9】半導体構造物エッチング工程を説明するための斜視図である。
【図10】選択比のバイアスパワー依存性の実験結果を示す図である。
【図11】埋め込み部形成工程を説明するための斜視図である。
【図12】埋め込み部形成工程を説明するための斜視図である。
【図13】電極形成工程を説明するための斜視図である。
【図14】電極形成工程を説明するための部分切断斜視図である。
【図15】電極形成工程を説明するための部分切断斜視図である。
【図16】電極形成工程を説明するための部分切断斜視図である。
【図17】電極形成工程を説明するための部分切断斜視図である。
【図18】電極形成工程を説明するための部分切断斜視図である。
【図19】電極形成工程を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態に係る導波路型フォトダイオードの製造方法について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0022】
本実施形態の導波路型フォトダイオードの製造方法は、主として、半導体積層形成工程と、メサ部形成工程と、光導波路部形成工程と、第2マスク形成工程と、半導体構造物エッチング工程と、埋め込み部形成工程と、電極形成工程と、を備える。以下、これらの工程について、詳細に説明する。
【0023】
(半導体積層形成工程)
半導体積層堆積工程では、半導体基板の主面上に、半導体積層を堆積する。図1は、半導体積層堆積工程を説明するための斜視図である。本工程では、図1に示すように、半導体基板1の主面1S上に、例えば有機金属気相成長法等のエピタキシャル成長法によって、バッファー層3と、下部コンタクト層5と、第1介在層7と、第2介在層9と、吸収層11と、第3介在層13と、第4介在層15と、クラッド層17と、上部コンタクト層19と、をこの順に堆積する。このようにして、バッファー層3から上部コンタクト層19までの層からなる半導体積層23を半導体基板1の主面1S上に堆積する。なお、図1においては、直交座標系2を示しており、半導体基板1の主面1Sと平行な方向にX軸及びY軸を設定している。図2以降の各図においても、必要に応じて図1に対応した直交座標系2を示している。
【0024】
半導体基板1は、半絶縁性の半導体材料(例えば、Fe等がドープされたInP等のIII−V族化合物半導体)で構成されることが好ましい。何故なら、半絶縁性の半導体基板は導電性の半導体基板と比較して、低静電容量化に有利だからである。
【0025】
バッファー層3は、例えば、i型のInP等のIII−V族化合物半導体からなる。下部コンタクト層5は、p型のIII−V族化合物半導体であるAlInAsからなる。下部コンタクト層5の厚さは、例えば0.5μm以上、1.0μm以下とすることができる。
【0026】
第1介在層7及び第2介在層9は、下部コンタクト層5と吸収層11との間に介在する層である。第1介在層7及び第2介在層9は、それぞれ、i型のIII−V族化合物半導体であるGaInAsPからなる。ここで、i型のIII−V族化合物半導体とは、III−V族化合物半導体を形成する際に、n型不純物元素及びp型不純物元素を意図してドープしていないIII−V族化合物半導体をいい、一般に、その不純物濃度は、1×1016cm−3以下である。
【0027】
吸収層11は、i型のIII−V族化合物半導体であるGaInAsからなる。第3介在層13及び第4介在層15は、吸収層11とクラッド層17との間に介在する層である。第3介在層13及び第4介在層15は、それぞれ、例えばn型のIII−V族化合物半導体であるGaInAsPからなる。
【0028】
クラッド層17は、n型のIII−V族化合物半導体であるInPからなる。上部コンタクト層19は、例えば、n型のGaInAs等のIII−V族化合物半導体からなる。
【0029】
半導体積層23は、pin型フォトダイオード部のためのpin構造21を含んでいる。本実施形態では、下部コンタクト層5がpin構造21のp型層となり、第1介在層7、第2介在層9、及び、吸収層11がpin構造21のi型層12となり、第3介在層13、第4介在層15、及び、クラッド層17がpin構造21のn型層18となる。即ち、下部コンタクト層5、i型層12、及び、n型層18が本実施形態のpin構造21を構成する。バッファー層3、pin構造21、及び、上部コンタクト層19が本実施形態の半導体積層23を構成する。
【0030】
吸収層11は、光を吸収してキャリアである電子及び正孔を生成する光吸収部として機能する。下部コンタクト層5は、後述のアノード電極とオーミック接触する機能を有する他、下部クラッドとしての機能、及び、後述のようにエッチングストップ層としての機能を有する。クラッド層17は、上部クラッドとして機能する。
【0031】
また、下部コンタクト層5からクラッド層17までの各層のバンドギャップは、互いに所定の関係を有している。図2は、バッファー層からクラッド層までの各層のエネルギーバンド構造を示す図である。図2においては、電子のエネルギー値を縦軸に示している。
【0032】
図2に示すように、第1介在層7のバンドギャップE7は、下部コンタクト層5のバンドギャップE5よりも小さく、かつ、吸収層11のバンドギャップE11よりも大きい。また、第2介在層9のバンドギャップE9は、第1介在層7のバンドギャップE7よりも小さく、かつ、吸収層11のバンドギャップE11よりも大きい。
【0033】
上述のような第1介在層7及び第2介在層9の存在により、吸収層11から下部コンタクト層5に向かって伝導帯の下端のエネルギーレベルが段階的に上昇する。即ち、伝導帯の下端のエネルギーレベルは、吸収層11の当該エネルギーレベル、第2介在層9の当該エネルギーレベル、第1介在層7の当該エネルギーレベル、下部コンタクト層5の当該エネルギーレベルの順に段階的に上昇する。
【0034】
また、上述のような第1介在層7及び第2介在層9の存在により、吸収層11から下部コンタクト層5に向かって価電子帯の上端のエネルギーレベルが段階的に減少する。即ち、価電子帯の上端のエネルギーレベルは、吸収層11の当該エネルギーレベル、第2介在層9の当該エネルギーレベル、第1介在層7の当該エネルギーレベル、下部コンタクト層5の当該エネルギーレベルの順に段階的に減少する。
【0035】
下部コンタクト層5から吸収層11までの各層のバンドギャップが上述の関係を満たすようにするために、例えば下部コンタクト層5から吸収層11までの各層の化合物半導体の組成比を調整することができる。例えば、上述の関係を満たすようにするために、下部コンタクト層5のバンドギャップ波長が860nm、第1介在層7のバンドギャップ波長が1150nm、第2介在層9のバンドギャップ波長が1300nm、及び、吸収層11のバンドギャップ波長が1670nmとなるように、下部コンタクト層5、第1介在層7、第2介在層9、及び、吸収層11の化合物半導体の組成をそれぞれ調整することができる。
【0036】
また、AlInAsからなる層とGaInAsPからなる層とを接合させると、それらの間の価電子帯におけるバンドオフセットは、それらの間の伝導帯におけるバンドオフセットよりも小さくなることが知られている。そのため、図2に示すように、AlInAsからなる下部コンタクト層5と、GaInAsPからなる第1介在層7との間の価電子帯におけるバンドオフセットE5Vは、下部コンタクト層5と第1介在層7との間の伝導帯におけるバンドオフセットE5Cよりも小さくなる。
【0037】
また、下部コンタクト層5から吸収層11までの各層の屈折率の関係は、上述のバンドギャップの関係と逆になる。即ち、下部コンタクト層5から吸収層11までの各層のうち、吸収層11の屈折率が最も高く、吸収層11の屈折率、第2介在層9の屈折率、第1介在層7の屈折率、及び、下部コンタクト層5の屈折率の順に、段階的に屈折率は減少する。
【0038】
また、図2に示すように、第4介在層15のバンドギャップE15は、クラッド層17のバンドギャップE17よりも小さく、かつ、吸収層11のバンドギャップE11よりも大きい。また、第3介在層13のバンドギャップE13は、第4介在層15のバンドギャップE15よりも小さく、かつ、吸収層11のバンドギャップE11よりも大きい。
【0039】
上述のような第3介在層13及び第4介在層15の存在により、吸収層11からクラッド層17に向かって伝導帯の下端のエネルギーレベルが段階的に上昇する。即ち、伝導帯の下端のエネルギーレベルは、吸収層11の当該エネルギーレベル、第3介在層13の当該エネルギーレベル、第4介在層15の当該エネルギーレベル、クラッド層17の当該エネルギーレベルの順に段階的に上昇する。
【0040】
また、上述のような第3介在層13及び第4介在層15の存在により、吸収層11からクラッド層17に向かって価電子帯の上端のエネルギーレベルが段階的に減少する。即ち、価電子帯の上端のエネルギーレベルは、吸収層11の当該エネルギーレベル、第3介在層13の当該エネルギーレベル、第4介在層15の当該エネルギーレベル、クラッド層17の当該エネルギーレベルの順に段階的に減少する。
【0041】
吸収層11からクラッド層17までの各層のバンドギャップが上述の関係を満たすようにするために、例えば吸収層11からクラッド層17までの各層の化合物半導体の組成比を調整することができる。例えば、上述の関係を満たすようにするために、吸収層11のバンドギャップ波長が1670nm、第3介在層13のバンドギャップ波長が1300nm、第4介在層15のバンドギャップ波長が1150nm、及び、クラッド層17のバンドギャップ波長が920nmとなるように、吸収層11、第3介在層13、第4介在層15、及び、クラッド層17の化合物半導体の組成をそれぞれ調整することができる。
【0042】
また、吸収層11からクラッド層17までの各層の屈折率の関係は、上述のバンドギャップの関係と逆になる。即ち、吸収層11からクラッド層17までの各層のうち、吸収層11の屈折率が最も高く、吸収層11の屈折率、第3介在層13の屈折率、第4介在層15の屈折率、及び、クラッド層17の屈折率の順に、段階的に屈折率は減少する。
【0043】
(メサ部形成工程)
次に、メサ部形成工程が行われる。図3及び図4は、メサ部形成工程を説明するための斜視図である。本工程では、まず図3に示すように、半導体積層23上に、半導体基板1の主面1Sにおける第1方向(図3におけるY軸方向)に沿って延びる第1マスク27を形成する。第1マスク27は、半導体積層23の上面の一部を覆う。第1マスク27は、SiN等の絶縁材料からなり、第1マスク27の厚さは例えば200nmとすることができる。第1マスク27は、後述のように突合せ結合(butt-joint)用のマスクとなる。
【0044】
このような第1マスク27は、例えば、化学気相成長法(CVD法)等の堆積法によって、半導体積層23の上面全体にSiN等の絶縁材料からなる層を形成し、フォトリソグラフィー法によって、所定の形状にパターニングすることにより、形成することができる。
【0045】
続いて、図4に示すように、第1マスク27を用いて半導体積層23を、例えばウェットエッチング法によってエッチングする。この際、半導体積層23のうち第1マスク27に覆われていない領域の下部コンタクト層5が除去されるようにする。これにより、半導体積層23に、第1方向(Y軸方向)に沿って延びるストライプ状のメサ部31を形成する。本実施形態においては、pin構造21(下部コンタクト層5、i型層12、n型層18)、及び、上部コンタクト層19がメサ部31を構成する。
【0046】
上述の半導体積層23のエッチングの際、下部コンタクト層5の直下の層(本実施形態の場合、バッファー層3)をエッチングストップ層として用いることが好ましい。即ち、半導体積層23のエッチングは、下部コンタクト層5に対するエッチングレートが、下部コンタクト層5の直下の層に対するエッチングレートよりも大きくなるようなエッチング法を用いて行うことが好ましい。下部コンタクト層5のエッチングの際、直下のバッファー層3がエッチングストップ層として機能するエッチング液としては、H2SO4+H2O2系、あるいは、HCl+H2O2系のエッチング液を挙げることができる。
【0047】
(光導波路部形成工程)
次に、光導波路部形成工程が行われる。図5は、光導波路部形成工程を説明するための斜視図である。本工程では、図5に示すように、上述のメサ部形成工程で形成した第1マスク27を突合せ結合(butt-joint)用のマスクとして用いて、メサ部31の両側面(半導体基板1の主面1Sにおける第1方向と直交する第2方向(X軸方向)のメサ部31の両側面)と接するように半導体材料からなる一対の光導波路部41、51を形成する。具体的には、第1マスク27を選択成長マスクとして用いた有機金属気相成長法等のエピタキシャル成長法によって、一対の光導波路部41、51を成長させる。これにより、メサ部31と一対の光導波路部41、51とを含む半導体構造物53が得られる。メサ部31を形成するために用いた第1マスク27を、本工程において選択成長マスクとして用いることにより、メサ部31の両側面と接するように一対の光導波路部41、51を形成することが容易となる。
【0048】
光導波路部41は、下部クラッド層35、コア層37、及び、上部クラッド層39を有する。コア層37は、下部クラッド層35と上部クラッド層39の間に介在する。下部クラッド層35及び上部クラッド層39は、それぞれ、例えば、i型のInP等のIII−V族化合物半導体からなる。コア層37は、例えばi型のGaInAsP等のIII−V族化合物半導体からなる。また、下部クラッド層35、コア層37、及び、上部クラッド層39は、Alを実質的に含まない、又は、組成比でのAl含有率が、下部コンタクト層5のAl含有率よりも低いことが好ましい。これにより、後述の下部コンタクト層5のエッチングストップ層としての機能が有効に発揮される。
【0049】
本実施形態においては、下部クラッド層35は下部コンタクト層5の第2方向の側面に接し、コア層37は吸収層11の第2方向の側面に接し、上部クラッド層39は上部コンタクト層19の第2方向の側面に接する。
【0050】
同様に、光導波路部51は、下部クラッド層45、コア層47、及び、上部クラッド層49を有する。コア層47は、下部クラッド層45と上部クラッド層49の間に介在する。下部クラッド層45及び上部クラッド層49は、それぞれ、例えば、i型のInP等のIII−V族化合物半導体からなる。コア層47は、例えばi型のGaInAsP等のIII−V族化合物半導体からなる。また、下部クラッド層45、コア層47、及び、上部クラッド層49は、Alを実質的に含まない、又は、組成比でのAl含有率が、下部コンタクト層5のAl含有率よりも低いことが好ましい。これにより、後述の下部コンタクト層5のエッチングストップ層としての機能が有効に発揮される。
【0051】
本実施形態においては、下部クラッド層45は下部コンタクト層5の第2方向の側面に接し、コア層47は吸収層11の第2方向の側面に接し、上部クラッド層49は上部コンタクト層19の第2方向の側面に接する。
【0052】
上述のように第1マスク27を選択成長マスクとして用いた成長法によって一対の光導波路部41、51を成長させる際、第1マスク27に近い領域においては一対の光導波路部41、51の成長速度が遅くなる。そのため、一対の光導波路部41、51の第1マスク27近傍には、窪み41D、51Dが形成される場合がある。このような窪み41D、51Dが存在すると、半導体構造物53の表面の平坦性が悪化する。半導体構造物53の表面の平坦性が悪いと、後の工程において不具合が生じる場合がある。(例えば、後の第2マスク形成工程において、第2マスク67をフォトリソグラフィーで形成するためのレジストパターンに不良が生じたり、第2マスク67が剥がれたりする場合がある。)
【0053】
そのため、光導波路部形成工程後であって、第2マスク形成工程を行う前に、キャップ層形成工程を行うことが好ましい。図6は、キャップ層形成工程を説明するための斜視図である。本工程では、図6に示すように、まず第1マスク27を除去する。その後、メサ部31及び一対の光導波路部41、51を覆うように、例えば有機金属気相成長法等のエピタキシャル成長法によって、半導体構造物53上に半導体材料からなるキャップ層55を形成する。キャップ層55は、例えば、i型のInP等のIII−V族化合物半導体からなる。
【0054】
このようなキャップ層55によって窪み41D、51Dは埋め込まれるため、平坦性が改善される。即ち、キャップ層55の表面の平坦性は、半導体構造物53の表面の平坦性よりも良くなる。その結果、半導体構造物53の表面の平坦性の悪さに起因して後の工程において不具合が生じることを抑制することができる。
【0055】
(第2マスク形成工程)
次に、第2マスク形成工程が行われる。図7は、第2マスク形成工程を説明するための斜視図である。本工程においては、図7に示すように、半導体構造物53上に第2方向に沿って延びる第2マスク67を形成する。第2マスク67は、SiN等の絶縁材料からなる。また、第2マスク67は、光導波路部41の一部を覆うマスク部61と、メサ部31の一部を覆うマスク部63と、光導波路部51の一部を覆うマスク部65と、を有する。マスク部61、マスク部63、マスク部65は、一体的に形成されている。本実施形態においては、マスク部63の第1方向に沿った幅は、マスク部61及びマスク部65の第1方向に沿った幅よりも広くなっている。第2マスク67の厚さは例えば300nmとすることができる。
【0056】
このような第2マスク67は、例えば、化学気相成長法(CVD法)等の堆積法によって、半導体構造物53上(本実施形態においてはキャップ層55の直上)にSiN等の絶縁材料からなる層を形成し、フォトリソグラフィー法によって、所定の形状にパターニングすることにより、形成することができる。
【0057】
(半導体構造物エッチング工程)
次に、半導体構造物エッチング工程が行われる。図8及び図9は、半導体構造物エッチング工程を説明するための斜視図である。本工程では、第2マスク67を用いて、下部コンタクト層5をエッチングストップ層としてメサ部31及び一対の光導波路部41、51を一括してエッチングする。
【0058】
具体的には、図8に示すように、第2マスク67を用いて下部コンタクト層5が露出するようにメサ部31をエッチングする。これにより、マスク部63の下に、下部コンタクト層5の一部の領域5Sが露出すると共に、メサ部31のうちの下部コンタクト層5よりも上部の各層及びキャップ層55からなる矩形メサ部73を形成する。
【0059】
また、第2マスク67を用いて一対の光導波路部41、51をエッチングすることにより、マスク部61及びマスク部63の下の一対の光導波路部41、51及びキャップ層55を第2方向に沿って延びるストライプ状に加工する。本実施形態では、一対の光導波路部41、51のエッチングは、一対の光導波路部41、51のうち第2マスク67によって覆われていない領域が全て除去されるように(即ち、バッファー層3が露出するように)行われる。
【0060】
そして、このようなメサ部31及び光導波路部41、51のエッチングは、下部コンタクト層5をエッチングストップ層として用いたエッチングによって行われる。即ち、メサ部31のエッチングと一対の光導波路部41、51のエッチングとは、下部コンタクト層5に対するエッチングレートが、メサ部31のうちの下部コンタクト層5よりも上部の各層(本実施形態では、i型層12及びn型層18を形成する各層、図1参照)、及び、一対の光導波路部41、51を構成する各層に対するエッチングレートよりも小さくなるようなエッチング法を用いて行う。
【0061】
これにより、下部コンタクト層5の厚さの減少を抑制することができるため、下部コンタクト層5の厚さ(残厚)を所望の厚さに制御し易くなる。そのため、下部コンタクト層5の厚さ(残厚)のばらつきを抑制することができる。その結果、本実施形態に係る導波路型フォトダイオードの製造方法によれば、得られる導波路型フォトダイオード100(図19参照)の素子抵抗の大きさのばらつきを抑制することができる。
【0062】
上述のエッチング法としては、例えば、平行平板型プラズマ反応性イオンエッチング法や誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法等の反応性イオンエッチング法(RIE法)を挙げることができる。
【0063】
上述のエッチング法として誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法を採用することは、以下の理由により特に好ましい。即ち、平行平板型プラズマ反応性イオンエッチング法等と比較して、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法は、エッチングの際のバイアスパワーを低くできる。バイアスパワーが低い程、Alを含有する半導体層はエッチングされ難くなる。そのため、下部コンタクト層5のエッチングレートを他の各層のエッチングレートよりも特に小さくすることができる。即ち、下部コンタクト層5の選択比(下部コンタクト層5のエッチングレートと他の各層のエッチングレートの比であり、下部コンタクト層5のエッチングのされ難さを示す比)を大きくすることができる。これにより、下部コンタクト層5の厚さ(残厚)を所望の厚さに特に制御し易くなるため、下部コンタクト層5の厚さ(残厚)のばらつきを特に抑制することができる。その結果、得られる導波路型フォトダイオード100(図19参照)の素子抵抗の大きさのばらつきを特に抑制することができる。
【0064】
上述のエッチング法として誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法を採用した場合、エッチングガスとしては、例えば、CH4とH2の混合ガスを用いることができ、CH4とH2の混合比は例えば1:3、エッチング圧力は例えば2Paとすることができる。また、バイアスパワーは、0W/cm2以上、1W/cm2であることが好ましく、0.3W/cm2以上、0.6W/cm2以下であることがさらに好ましい。また、ICPパワーは、例えば4.4W/cm2とすることができる。
【0065】
また、上述のエッチング法として、反応性イオンエッチング法を用いた場合、下部コンタクト層5のAl含有率は、組成比で50%以上、70%以下であることが好ましい。下部コンタクト層5のAl含有率が組成比で50%以上であると、下部コンタクト層5に対するエッチングレートを、メサ部31のうちの下部コンタクト層5よりも上部の各層、及び、一対の光導波路部41、51を構成する各層に対するエッチングレートよりも、特に小さくすることができるため、得られる導波路型フォトダイオード100(図19参照)の素子抵抗の大きさのばらつきを特に抑制することができる。また、下部コンタクト層5のAl含有率が組成比で70%以下であると、下部コンタクト層5の上部の各層の結晶性を十分に高くすることができる。
【0066】
続いて、図9に示すように、バッファードフッ酸(BHF)等によるウェットエッチング等によって、第2マスク67を除去する。このようにして、メサ部31の下部コンタクト層5の一部を露出させ、メサ部31に矩形メサ部73を形成すると共に、一対の光導波路部41、51を第2方向に沿って延びるストライプ状に加工する。
【0067】
また、発明者らは、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法によってAlInAs及びInPをエッチングする際の、AlInAsの選択比とバイアスパワーの関係について、実験を行った。図10は、選択比のバイアスパワー依存性の実験結果を示す図である。本実験においては、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法によって同一条件でAlInAsのエッチングレートと、InPのエッチングレートを測定し、InPのエッチングレートをAlInAsのエッチングレートで除することにより、AlInAsの選択比を求めた。エッチングの際のエッチングガスCH4/H2の混合比、エッチング圧力、ICPパワーは全て固定とし、バイアスパワーのみ変化させ、それぞれのバイアスパワーごとに、AlInAsの選択比を求めた。
【0068】
図10では、縦軸に選択比の逆数を示しており、横軸にバイアスパワーを示している。図10に示すAlInAsの選択比のバイアスパワー依存性の結果より、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法によってAlInAsをエッチングする際のInPに対するAlInAsの選択比は、バイアスパワーが低いほど大きくなる(AlInAsがエッチングされ難くなる)ことがわかった。
【0069】
(埋め込み部形成工程)
次に、埋め込み部形成工程を行う。図11及び図12は、埋め込み部形成工程を説明するための斜視図である。本工程では、まず、図11に示すように、各層の露出面(即ち、バッファー層3、光導波路部41、光導波路部51、矩形メサ部73、下部コンタクト層5、及び、キャップ層55の露出面)に、酸化シリコン(SiO2)等の酸化物材料からなる保護層79を、CVD法等によって形成する。
【0070】
続いて、図12に示すように、保護層79上に、埋め込み部81を形成する。これにより、メサ部31(矩形メサ部73及び下部コンタクト層5)と一対の光導波路部41、51を、埋め込み部81によって埋め込む。埋め込み部81は、例えば、ベンゾシクロブテン(BCB)等の樹脂からなる。
【0071】
(電極形成工程)
次に、電極形成工程を行う。図13及び図19は、電極形成工程を説明するための斜視図であり、図14〜図18は、電極形成工程を説明するための部分切断斜視図である。
【0072】
本工程では、まず、図13に示すように、埋め込み部81上にレジスト層83を形成した後、フォトリソグラフィーにより、レジスト層83に開口83Hを形成する。図14(A)は、図13において、光導波路部41を第2方向(X軸方向)と垂直な面で切断した部分切断斜視図であり、図14(B)は、図13において、矩形メサ部73を第2方向(X軸方向)と垂直な面で切断した部分切断斜視図である。後述の図14(A)、図15(A)、図16(A)、図17(A)、図18(A)、及び、図19(A)は、図14(A)に対応しており、図14(B)、図15(B)、図16(B)、図17(B)、図18(B)、及び、図19(B)は、図14(B)に対応している。
【0073】
図14に示すように、開口83Hは、矩形メサ部73の上方に形成されており、光導波路部41上(及び光導波路部51上)には形成されていない。
【0074】
続いて、図15(B)に示すように、レジスト層83を用いて、例えば、CF4とO2の混合ガスを用いたRIE法等によって、レジスト層83を用いて埋め込み部81をエッチングすることにより、レジスト層83の表面から矩形メサ部73上の保護層79の表面79Sに至る深さを有するように開口81Hを深くする。このエッチングの際、図15(A)に示すように、光導波路部41(及び光導波路部51)はレジスト層83によって保護されており、光導波路部41(及び光導波路部51)上の埋め込み部81はエッチングされない。
【0075】
次に、図16に示すように、レジスト層83を除去した後に、矩形メサ部73及び埋め込み部81上にレジスト層85を形成する。そして、フォトリソグラフィーによって、レジスト層85のうち、上述のメサ部エッチング工程において露出した下部コンタクト層5の領域5S上の領域に開口を形成するようにレジスト層85をパターニングする。そして、パターニングされたレジスト層85を用いて、例えば、CF4とO2の混合ガスを用いたRIE法等によって、埋め込み部81をエッチングすることにより、埋め込み部81に開口81Hを形成する。この開口81Hにより下部コンタクト層5の領域5S上の保護層79を露出させる。
【0076】
続いて、レジスト層85を除去した後、図17に示すように、矩形メサ部73上の保護層79、及び、下部コンタクト層5の領域5S上の保護層79を、例えば、CF4ガスを用いたRIE法等によって、エッチングする。これにより、矩形メサ部73のキャップ層55、及び、下部コンタクト層5の領域5Sを露出させる。上述の保護層79のエッチングの際、埋め込み部81はエッチングマスクとして機能する。
【0077】
続いて、図18に示すように、矩形メサ部73のキャップ層55をエッチングすることにより、矩形メサ部73の上部コンタクト層19を露出させる。この際、矩形メサ部73のキャップ層55のエッチングレートが、下部コンタクト層5のエッチングレートよりも大きくなるようなエッチング法を用いる。これにより、下部コンタクト層5の領域5Sの厚さの減少は抑制される。このようなエッチング法としては、例えば、HCl及びCH3COOHをエッチング液として用いたウェットエッチングを挙げることができる。このような矩形メサ部73のキャップ層55のエッチングにおいて、キャップ層55と埋め込み部81とは異なる材料で形成されているため、キャップ層55を埋め込み部81よりも早いエッチングレートでエッチングすることができる。これにより、キャップ層55を厚くしても、矩形メサ部73のキャップ層55のエッチングの際に、埋め込み部81はマスクとして機能させることができる。
【0078】
次に、図19に示すように、矩形メサ部73のクラッド層17上に上部コンタクト層19を介してカソード電極91を形成し、下部コンタクト層5の領域5S上にアノード電極93を形成する。このようにして、導波路型フォトダイオード100が製造される。
【0079】
光導波路部41の端面(又は光導波路部51の端面)から光が入射すると、当該光は光導波路部41(又は光導波路部51)内を伝搬し、吸収層11に入射する。吸収層11に光が入射すると、当該光の強度に対応した量の電子及び正孔が吸収層11に生じる。そして、pin構造21に逆バイアスが印加されるようにカソード電極91及びアノード電極93間に電圧が印加されると、正孔は下部コンタクト層5を経由してアノード電極93に移動し、電子は上部コンタクト層19を経由してカソード電極91に移動するため、カソード電極91及びアノード電極93に接続された外部機器に電流が流れる。この電流の大きさを測定することにより、導波路型フォトダイオード100に入射した光の強度を測定することができる。
【0080】
また、上述のように第1介在層7及び第2介在層9の存在により、吸収層11から下部コンタクト層5に向かって価電子帯の上端のエネルギーレベルが段階的に減少する(図2参照)。そのため、第1介在層7及び第2介在層9が存在しない場合と比較して、導波路型フォトダイオード100に逆バイアスが印加されると、吸収層11で生じたホールは下部コンタクト層5に移動し易くなる。そのため、導波路型フォトダイオード100の動作周波数帯域が向上する。
【0081】
さらに、本実施形態においては、上述のように下部コンタクト層5と第1介在層7との間の価電子帯におけるバンドオフセットE5Vが、下部コンタクト層5と第1介在層7との間の伝導帯におけるバンドオフセットE5Cよりも小さくなるように、下部コンタクト層5を構成する材料と第1介在層7を構成する材料を選択している(図2参照)。そのため、吸収層11で生じたホールは下部コンタクト層5に特に移動し易くなる。そのため、導波路型フォトダイオード100の動作周波数帯域が特に向上する。
【0082】
また、上述のように第3介在層13及び第4介在層15の存在により、吸収層11からクラッド層17に向かって伝導帯の下端のエネルギーレベルが段階的に上昇する(図2参照)。そのため、第3介在層13及び第4介在層15が存在しない場合と比較して、導波路型フォトダイオード100に逆バイアスが印加されると、吸収層11で生じた電子は上部コンタクト層19に移動し易くなる。そのため、導波路型フォトダイオード100の動作周波数帯域が向上する。
【0083】
本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。
【0084】
例えば、上述の実施形態においては、光導波路部形成工程と前記第2マスク形成工程との間にキャップ層形成工程を行っているが(図6参照)、キャップ層形成工程を省略することもできる。
【0085】
また、上述の実施形態においては、半導体積層23は、第2介在層9を有しているが(図1参照)、半導体積層23は第2介在層9を有していなくてもよい。その場合であっても、価電子帯の上端のエネルギーレベルは、吸収層11の当該エネルギーレベル、第1介在層7の当該エネルギーレベル、及び、下部コンタクト層5の当該エネルギーレベルの順に、段階的に減少することになる。そのため、第1介在層7が存在しない場合と比較して、導波路型フォトダイオードに逆バイアスが印加されると、吸収層11で生じたホールは下部コンタクト層5に移動し易くなる。その結果、導波路型フォトダイオードの動作周波数帯域が向上する。また、半導体積層23は、第1介在層7及び第2介在層9の双方を有していなくてもよい。
【0086】
また、上述の実施形態においては、半導体積層23は、第4介在層15を有しているが(図1参照)、半導体積層23は第4介在層15を有していなくてもよい。また、半導体積層23は、第3介在層13と第4介在層15の双方を有していなくてもよい。
【0087】
また、半導体積層23は、上部コンタクト層19を有していなくてもよい。この場合、クラッド層17をコンタクト層として用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1・・・半導体基板、5・・・(下部)コンタクト層、11・・・吸収層、17・・・クラッド層、21・・・pin構造、23・・・半導体積層、27・・・第1マスク、31・・・メサ部、41、51・・・一対の光導波路部、53・・・半導体構造物、67・・・第2マスク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路型フォトダイオードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、導波路型フォトダイオード及びその製造方法が記載されている。この製造方法においては、フォトダイオード部を形成した後に、Butt-Jointプロセスによりフォトダイオード部の光軸方向の両端部に光導波路部を形成する。続いて、フォトダイオード部と光導波路部をエッチングして、光軸方向に沿って延びるメサを形成する。そして、当該メサの両側面を半絶縁性半導体により埋め込む。
【0003】
当該製造方法によれば、へき開を行わなくてもフォトダイオード部の積層方向と垂直な断面積を小さくすることができるため、フォトダイオード部の静電容量を低下させて高速動作を可能とするために当該断面積を小さくしても、当該断面積のばらつきを低減させること、及び、これにより、フォトダイオード部の受光特性のばらつきを低減させることが可能であることが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−127333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の導波路型フォトダイオードの製造方法においては、半絶縁性基板が用いられ、半絶縁性基板の主面上にフォトダイオード部の下部電極を形成している。これにより、導電性基板を用いて、その裏面に下部電極を形成した導波路型フォトダイオードと比較して、フォトダイオードの部の静電容量を低下させることができる。その結果、高速動作が可能な導波路型フォトダイオードが得られる。
【0006】
このような導波路型フォトダイオードを製造する際には、まず、半絶縁性半導体基板の主面上にフォトダイオード部を形成した後に、Butt-Jointプロセスによりフォトダイオード部の光軸方向の両端部に光導波路部を形成する。続いて、フォトダイオード部と光導波路部とを一括してエッチングして、光軸方向に沿って延びるメサを形成する。このエッチングは、フォトダイオード部内のコンタクト層の表面を露出させるように行う。その後、当該コンタクト層の表面に下部電極を形成することにより、半絶縁性基板の主面上にフォトダイオード部の下部電極を形成することができる。
【0007】
しかしながら、上述のような導波路型フォトダイオードの製造方法においては、フォトダイオード部と光導波路部とを一括してエッチングしてメサを形成する工程においてフォトダイオード部のコンタクト層を露出させる必要があるため、当該コンタクト層の厚さ(残厚)を所望の厚さに制御することが困難な場合がある。そのため、コンタクト層の厚さ(残厚)がばらついてしまう場合がある。このようにコンタクト層の厚さがばらつくと、得られる導波路型フォトダイオードの素子抵抗の大きさがばらついてしまうため、導波路型フォトダイオードの特性がばらついてしまう。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、素子抵抗の大きさのばらつきを抑制することが可能な導波路型フォトダイオードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法は、半導体基板の主面上に、p型AlInAsからなるコンタクト層と、i型GaInAsからなる吸収層と、n型InPからなるクラッド層と、をこの順に堆積することにより、pin型フォトダイオード部のpin構造を有する半導体積層を形成する半導体積層形成工程と、半導体基板の主面における第1方向に沿って延びる第1マスクを半導体積層上に形成し、半導体積層の第1マスクによって覆われていない領域のコンタクト層が除去されるように半導体積層をエッチングすることにより、半導体積層に第1方向に沿って延びるストライプ状のメサ部を形成するメサ部形成工程と、メサ部の両側面と接するように半導体材料からなる一対の光導波路部を形成することにより、当該一対の光導波路部とメサ部とを含む半導体構造物を得る光導波路部形成工程と、半導体基板の主面における第1方向と直交する第2方向に沿って延びると共に一対の光導波路部の各々の一部及びメサ部の一部を覆う第2マスクを半導体構造物上に形成する第2マスク形成工程と、第2マスクを用いて、コンタクト層をエッチングストップ層としてメサ部及び一対の光導波路部をエッチングすることにより、コンタクト層を露出させると共に、一対の光導波路部を第2方向に沿って延びるストライプ状に加工する半導体構造物エッチング工程と、メサ部のクラッド層上にカソード電極を形成し、コンタクト層のうち、半導体構造物エッチング工程において露出した領域上にアノード電極を形成する、電極形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法においては、半導体構造物エッチング工程におけるメサ部及び一対の光導波路部のエッチングは、上記コンタクト層をエッチングストップ層として用いて行われる。これにより、当該コンタクト層の厚さ(残厚)を所望の厚さに制御し易くなるため、当該コンタクト層の厚さ(残厚)のばらつきを抑制することができる。その結果、本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法によれば、得られる導波路型フォトダイオードの素子抵抗の大きさのばらつきを抑制することができる。
【0011】
さらに、本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法においては、半導体積層形成工程において、i型GaInAsPからなる第1介在層をさらに堆積し、半導体積層において、第1介在層は前記コンタクト層と吸収層との間に設けられており、第1介在層のバンドギャップは、コンタクト層のバンドギャップよりも小さく、かつ、吸収層のバンドギャップよりも大きいことが好ましい。
【0012】
これにより、価電子帯の上端のエネルギーレベルは、吸収層の当該エネルギーレベル、第1介在層の当該エネルギーレベル、及び、下部コンタクト層の当該エネルギーレベルの順に、段階的に減少することになる。そのため、第1介在層が存在しない場合と比較して、導波路型フォトダイオードに逆バイアスが印加されると、吸収層で生じたホールはコンタクト層に移動し易くなる。その結果、導波路型フォトダイオードの動作周波数帯域(高速性)が向上する。
【0013】
さらに、本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法においては、半導体積層形成工程において、i型GaInAsPからなる第2介在層をさらに堆積し、半導体積層において、第2介在層は第1介在層と吸収層との間に設けられており、第2介在層のバンドギャップは、第1介在層のバンドギャップよりも小さく、かつ、吸収層のバンドギャップよりも大きいことが好ましい。
【0014】
これにより、価電子帯の上端のエネルギーレベルは、吸収層11の当該エネルギーレベル、第2介在層の当該エネルギーレベル、第1介在層の当該エネルギーレベル、及び、下部コンタクト層5の当該エネルギーレベルの順に、段階的に減少することになる。そのため、第2介在層が存在しない場合と比較して、導波路型フォトダイオードに逆バイアスが印加されると、吸収層で生じたホールはコンタクト層にさらに移動し易くなる。その結果、導波路型フォトダイオードの動作周波数帯域(高速性)がさらに向上する。
【0015】
さらに、本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法では、半導体構造物エッチング工程においては、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法によって、メサ部及び一対の光導波路部をエッチングすることが好ましい。
【0016】
これにより、半導体構造物エッチング工程におけるメサ部及び一対の光導波路部のエッチングの際、コンタクト層のエッチングレートを、他の層のエッチングレートよりも特に小さくすることができる。そのため、コンタクト層の厚さ(残厚)を所望の厚さに特に制御し易くなるため、当該コンタクト層の厚さ(残厚)のばらつきを特に抑制することができる。その結果、得られる導波路型フォトダイオードの素子抵抗の大きさのばらつきを特に抑制することができる。
【0017】
さらに、本発明に係る導波路型フォトダイオードの製造方法では、光導波路部形成工程においては、第1マスクを選択成長マスクとして用いて一対の光導波路部を成長させ、当該製造方法は、光導波路部形成工程と第2マスク形成工程との間に、メサ部及び一対の光導波路部を覆うように、半導体材料からなるキャップ層を形成するキャップ層形成工程をさらに備えることが好ましい。
【0018】
これにより、光導波路部形成工程においては、第1マスクを選択成長マスクとして用いて一対の光導波路部を成長させるため、メサ部の両側面と接するように一対の光導波路部を形成することが容易となる。そして、光導波路部形成工程後において、一対の光導波路とメサ部との間に生じた窪みによって半導体構造物の表面の平坦性が悪くなった場合であっても、キャップ層によって平坦性を改善することができる。その結果、半導体構造物の表面の平坦性の悪さに起因して後の工程において不具合が生じることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、素子抵抗の大きさのばらつきを抑制することが可能な導波路型フォトダイオードの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】半導体積層堆積工程を説明するための斜視図である。
【図2】バッファー層からクラッド層までの各層のエネルギーバンド構造を示す図である。
【図3】メサ部形成工程を説明するための斜視図である。
【図4】メサ部形成工程を説明するための斜視図である。
【図5】光導波路部形成工程を説明するための斜視図である。
【図6】キャップ層形成工程を説明するための斜視図である。
【図7】第2マスク形成工程を説明するための斜視図である。
【図8】半導体構造物エッチング工程を説明するための斜視図である。
【図9】半導体構造物エッチング工程を説明するための斜視図である。
【図10】選択比のバイアスパワー依存性の実験結果を示す図である。
【図11】埋め込み部形成工程を説明するための斜視図である。
【図12】埋め込み部形成工程を説明するための斜視図である。
【図13】電極形成工程を説明するための斜視図である。
【図14】電極形成工程を説明するための部分切断斜視図である。
【図15】電極形成工程を説明するための部分切断斜視図である。
【図16】電極形成工程を説明するための部分切断斜視図である。
【図17】電極形成工程を説明するための部分切断斜視図である。
【図18】電極形成工程を説明するための部分切断斜視図である。
【図19】電極形成工程を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態に係る導波路型フォトダイオードの製造方法について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0022】
本実施形態の導波路型フォトダイオードの製造方法は、主として、半導体積層形成工程と、メサ部形成工程と、光導波路部形成工程と、第2マスク形成工程と、半導体構造物エッチング工程と、埋め込み部形成工程と、電極形成工程と、を備える。以下、これらの工程について、詳細に説明する。
【0023】
(半導体積層形成工程)
半導体積層堆積工程では、半導体基板の主面上に、半導体積層を堆積する。図1は、半導体積層堆積工程を説明するための斜視図である。本工程では、図1に示すように、半導体基板1の主面1S上に、例えば有機金属気相成長法等のエピタキシャル成長法によって、バッファー層3と、下部コンタクト層5と、第1介在層7と、第2介在層9と、吸収層11と、第3介在層13と、第4介在層15と、クラッド層17と、上部コンタクト層19と、をこの順に堆積する。このようにして、バッファー層3から上部コンタクト層19までの層からなる半導体積層23を半導体基板1の主面1S上に堆積する。なお、図1においては、直交座標系2を示しており、半導体基板1の主面1Sと平行な方向にX軸及びY軸を設定している。図2以降の各図においても、必要に応じて図1に対応した直交座標系2を示している。
【0024】
半導体基板1は、半絶縁性の半導体材料(例えば、Fe等がドープされたInP等のIII−V族化合物半導体)で構成されることが好ましい。何故なら、半絶縁性の半導体基板は導電性の半導体基板と比較して、低静電容量化に有利だからである。
【0025】
バッファー層3は、例えば、i型のInP等のIII−V族化合物半導体からなる。下部コンタクト層5は、p型のIII−V族化合物半導体であるAlInAsからなる。下部コンタクト層5の厚さは、例えば0.5μm以上、1.0μm以下とすることができる。
【0026】
第1介在層7及び第2介在層9は、下部コンタクト層5と吸収層11との間に介在する層である。第1介在層7及び第2介在層9は、それぞれ、i型のIII−V族化合物半導体であるGaInAsPからなる。ここで、i型のIII−V族化合物半導体とは、III−V族化合物半導体を形成する際に、n型不純物元素及びp型不純物元素を意図してドープしていないIII−V族化合物半導体をいい、一般に、その不純物濃度は、1×1016cm−3以下である。
【0027】
吸収層11は、i型のIII−V族化合物半導体であるGaInAsからなる。第3介在層13及び第4介在層15は、吸収層11とクラッド層17との間に介在する層である。第3介在層13及び第4介在層15は、それぞれ、例えばn型のIII−V族化合物半導体であるGaInAsPからなる。
【0028】
クラッド層17は、n型のIII−V族化合物半導体であるInPからなる。上部コンタクト層19は、例えば、n型のGaInAs等のIII−V族化合物半導体からなる。
【0029】
半導体積層23は、pin型フォトダイオード部のためのpin構造21を含んでいる。本実施形態では、下部コンタクト層5がpin構造21のp型層となり、第1介在層7、第2介在層9、及び、吸収層11がpin構造21のi型層12となり、第3介在層13、第4介在層15、及び、クラッド層17がpin構造21のn型層18となる。即ち、下部コンタクト層5、i型層12、及び、n型層18が本実施形態のpin構造21を構成する。バッファー層3、pin構造21、及び、上部コンタクト層19が本実施形態の半導体積層23を構成する。
【0030】
吸収層11は、光を吸収してキャリアである電子及び正孔を生成する光吸収部として機能する。下部コンタクト層5は、後述のアノード電極とオーミック接触する機能を有する他、下部クラッドとしての機能、及び、後述のようにエッチングストップ層としての機能を有する。クラッド層17は、上部クラッドとして機能する。
【0031】
また、下部コンタクト層5からクラッド層17までの各層のバンドギャップは、互いに所定の関係を有している。図2は、バッファー層からクラッド層までの各層のエネルギーバンド構造を示す図である。図2においては、電子のエネルギー値を縦軸に示している。
【0032】
図2に示すように、第1介在層7のバンドギャップE7は、下部コンタクト層5のバンドギャップE5よりも小さく、かつ、吸収層11のバンドギャップE11よりも大きい。また、第2介在層9のバンドギャップE9は、第1介在層7のバンドギャップE7よりも小さく、かつ、吸収層11のバンドギャップE11よりも大きい。
【0033】
上述のような第1介在層7及び第2介在層9の存在により、吸収層11から下部コンタクト層5に向かって伝導帯の下端のエネルギーレベルが段階的に上昇する。即ち、伝導帯の下端のエネルギーレベルは、吸収層11の当該エネルギーレベル、第2介在層9の当該エネルギーレベル、第1介在層7の当該エネルギーレベル、下部コンタクト層5の当該エネルギーレベルの順に段階的に上昇する。
【0034】
また、上述のような第1介在層7及び第2介在層9の存在により、吸収層11から下部コンタクト層5に向かって価電子帯の上端のエネルギーレベルが段階的に減少する。即ち、価電子帯の上端のエネルギーレベルは、吸収層11の当該エネルギーレベル、第2介在層9の当該エネルギーレベル、第1介在層7の当該エネルギーレベル、下部コンタクト層5の当該エネルギーレベルの順に段階的に減少する。
【0035】
下部コンタクト層5から吸収層11までの各層のバンドギャップが上述の関係を満たすようにするために、例えば下部コンタクト層5から吸収層11までの各層の化合物半導体の組成比を調整することができる。例えば、上述の関係を満たすようにするために、下部コンタクト層5のバンドギャップ波長が860nm、第1介在層7のバンドギャップ波長が1150nm、第2介在層9のバンドギャップ波長が1300nm、及び、吸収層11のバンドギャップ波長が1670nmとなるように、下部コンタクト層5、第1介在層7、第2介在層9、及び、吸収層11の化合物半導体の組成をそれぞれ調整することができる。
【0036】
また、AlInAsからなる層とGaInAsPからなる層とを接合させると、それらの間の価電子帯におけるバンドオフセットは、それらの間の伝導帯におけるバンドオフセットよりも小さくなることが知られている。そのため、図2に示すように、AlInAsからなる下部コンタクト層5と、GaInAsPからなる第1介在層7との間の価電子帯におけるバンドオフセットE5Vは、下部コンタクト層5と第1介在層7との間の伝導帯におけるバンドオフセットE5Cよりも小さくなる。
【0037】
また、下部コンタクト層5から吸収層11までの各層の屈折率の関係は、上述のバンドギャップの関係と逆になる。即ち、下部コンタクト層5から吸収層11までの各層のうち、吸収層11の屈折率が最も高く、吸収層11の屈折率、第2介在層9の屈折率、第1介在層7の屈折率、及び、下部コンタクト層5の屈折率の順に、段階的に屈折率は減少する。
【0038】
また、図2に示すように、第4介在層15のバンドギャップE15は、クラッド層17のバンドギャップE17よりも小さく、かつ、吸収層11のバンドギャップE11よりも大きい。また、第3介在層13のバンドギャップE13は、第4介在層15のバンドギャップE15よりも小さく、かつ、吸収層11のバンドギャップE11よりも大きい。
【0039】
上述のような第3介在層13及び第4介在層15の存在により、吸収層11からクラッド層17に向かって伝導帯の下端のエネルギーレベルが段階的に上昇する。即ち、伝導帯の下端のエネルギーレベルは、吸収層11の当該エネルギーレベル、第3介在層13の当該エネルギーレベル、第4介在層15の当該エネルギーレベル、クラッド層17の当該エネルギーレベルの順に段階的に上昇する。
【0040】
また、上述のような第3介在層13及び第4介在層15の存在により、吸収層11からクラッド層17に向かって価電子帯の上端のエネルギーレベルが段階的に減少する。即ち、価電子帯の上端のエネルギーレベルは、吸収層11の当該エネルギーレベル、第3介在層13の当該エネルギーレベル、第4介在層15の当該エネルギーレベル、クラッド層17の当該エネルギーレベルの順に段階的に減少する。
【0041】
吸収層11からクラッド層17までの各層のバンドギャップが上述の関係を満たすようにするために、例えば吸収層11からクラッド層17までの各層の化合物半導体の組成比を調整することができる。例えば、上述の関係を満たすようにするために、吸収層11のバンドギャップ波長が1670nm、第3介在層13のバンドギャップ波長が1300nm、第4介在層15のバンドギャップ波長が1150nm、及び、クラッド層17のバンドギャップ波長が920nmとなるように、吸収層11、第3介在層13、第4介在層15、及び、クラッド層17の化合物半導体の組成をそれぞれ調整することができる。
【0042】
また、吸収層11からクラッド層17までの各層の屈折率の関係は、上述のバンドギャップの関係と逆になる。即ち、吸収層11からクラッド層17までの各層のうち、吸収層11の屈折率が最も高く、吸収層11の屈折率、第3介在層13の屈折率、第4介在層15の屈折率、及び、クラッド層17の屈折率の順に、段階的に屈折率は減少する。
【0043】
(メサ部形成工程)
次に、メサ部形成工程が行われる。図3及び図4は、メサ部形成工程を説明するための斜視図である。本工程では、まず図3に示すように、半導体積層23上に、半導体基板1の主面1Sにおける第1方向(図3におけるY軸方向)に沿って延びる第1マスク27を形成する。第1マスク27は、半導体積層23の上面の一部を覆う。第1マスク27は、SiN等の絶縁材料からなり、第1マスク27の厚さは例えば200nmとすることができる。第1マスク27は、後述のように突合せ結合(butt-joint)用のマスクとなる。
【0044】
このような第1マスク27は、例えば、化学気相成長法(CVD法)等の堆積法によって、半導体積層23の上面全体にSiN等の絶縁材料からなる層を形成し、フォトリソグラフィー法によって、所定の形状にパターニングすることにより、形成することができる。
【0045】
続いて、図4に示すように、第1マスク27を用いて半導体積層23を、例えばウェットエッチング法によってエッチングする。この際、半導体積層23のうち第1マスク27に覆われていない領域の下部コンタクト層5が除去されるようにする。これにより、半導体積層23に、第1方向(Y軸方向)に沿って延びるストライプ状のメサ部31を形成する。本実施形態においては、pin構造21(下部コンタクト層5、i型層12、n型層18)、及び、上部コンタクト層19がメサ部31を構成する。
【0046】
上述の半導体積層23のエッチングの際、下部コンタクト層5の直下の層(本実施形態の場合、バッファー層3)をエッチングストップ層として用いることが好ましい。即ち、半導体積層23のエッチングは、下部コンタクト層5に対するエッチングレートが、下部コンタクト層5の直下の層に対するエッチングレートよりも大きくなるようなエッチング法を用いて行うことが好ましい。下部コンタクト層5のエッチングの際、直下のバッファー層3がエッチングストップ層として機能するエッチング液としては、H2SO4+H2O2系、あるいは、HCl+H2O2系のエッチング液を挙げることができる。
【0047】
(光導波路部形成工程)
次に、光導波路部形成工程が行われる。図5は、光導波路部形成工程を説明するための斜視図である。本工程では、図5に示すように、上述のメサ部形成工程で形成した第1マスク27を突合せ結合(butt-joint)用のマスクとして用いて、メサ部31の両側面(半導体基板1の主面1Sにおける第1方向と直交する第2方向(X軸方向)のメサ部31の両側面)と接するように半導体材料からなる一対の光導波路部41、51を形成する。具体的には、第1マスク27を選択成長マスクとして用いた有機金属気相成長法等のエピタキシャル成長法によって、一対の光導波路部41、51を成長させる。これにより、メサ部31と一対の光導波路部41、51とを含む半導体構造物53が得られる。メサ部31を形成するために用いた第1マスク27を、本工程において選択成長マスクとして用いることにより、メサ部31の両側面と接するように一対の光導波路部41、51を形成することが容易となる。
【0048】
光導波路部41は、下部クラッド層35、コア層37、及び、上部クラッド層39を有する。コア層37は、下部クラッド層35と上部クラッド層39の間に介在する。下部クラッド層35及び上部クラッド層39は、それぞれ、例えば、i型のInP等のIII−V族化合物半導体からなる。コア層37は、例えばi型のGaInAsP等のIII−V族化合物半導体からなる。また、下部クラッド層35、コア層37、及び、上部クラッド層39は、Alを実質的に含まない、又は、組成比でのAl含有率が、下部コンタクト層5のAl含有率よりも低いことが好ましい。これにより、後述の下部コンタクト層5のエッチングストップ層としての機能が有効に発揮される。
【0049】
本実施形態においては、下部クラッド層35は下部コンタクト層5の第2方向の側面に接し、コア層37は吸収層11の第2方向の側面に接し、上部クラッド層39は上部コンタクト層19の第2方向の側面に接する。
【0050】
同様に、光導波路部51は、下部クラッド層45、コア層47、及び、上部クラッド層49を有する。コア層47は、下部クラッド層45と上部クラッド層49の間に介在する。下部クラッド層45及び上部クラッド層49は、それぞれ、例えば、i型のInP等のIII−V族化合物半導体からなる。コア層47は、例えばi型のGaInAsP等のIII−V族化合物半導体からなる。また、下部クラッド層45、コア層47、及び、上部クラッド層49は、Alを実質的に含まない、又は、組成比でのAl含有率が、下部コンタクト層5のAl含有率よりも低いことが好ましい。これにより、後述の下部コンタクト層5のエッチングストップ層としての機能が有効に発揮される。
【0051】
本実施形態においては、下部クラッド層45は下部コンタクト層5の第2方向の側面に接し、コア層47は吸収層11の第2方向の側面に接し、上部クラッド層49は上部コンタクト層19の第2方向の側面に接する。
【0052】
上述のように第1マスク27を選択成長マスクとして用いた成長法によって一対の光導波路部41、51を成長させる際、第1マスク27に近い領域においては一対の光導波路部41、51の成長速度が遅くなる。そのため、一対の光導波路部41、51の第1マスク27近傍には、窪み41D、51Dが形成される場合がある。このような窪み41D、51Dが存在すると、半導体構造物53の表面の平坦性が悪化する。半導体構造物53の表面の平坦性が悪いと、後の工程において不具合が生じる場合がある。(例えば、後の第2マスク形成工程において、第2マスク67をフォトリソグラフィーで形成するためのレジストパターンに不良が生じたり、第2マスク67が剥がれたりする場合がある。)
【0053】
そのため、光導波路部形成工程後であって、第2マスク形成工程を行う前に、キャップ層形成工程を行うことが好ましい。図6は、キャップ層形成工程を説明するための斜視図である。本工程では、図6に示すように、まず第1マスク27を除去する。その後、メサ部31及び一対の光導波路部41、51を覆うように、例えば有機金属気相成長法等のエピタキシャル成長法によって、半導体構造物53上に半導体材料からなるキャップ層55を形成する。キャップ層55は、例えば、i型のInP等のIII−V族化合物半導体からなる。
【0054】
このようなキャップ層55によって窪み41D、51Dは埋め込まれるため、平坦性が改善される。即ち、キャップ層55の表面の平坦性は、半導体構造物53の表面の平坦性よりも良くなる。その結果、半導体構造物53の表面の平坦性の悪さに起因して後の工程において不具合が生じることを抑制することができる。
【0055】
(第2マスク形成工程)
次に、第2マスク形成工程が行われる。図7は、第2マスク形成工程を説明するための斜視図である。本工程においては、図7に示すように、半導体構造物53上に第2方向に沿って延びる第2マスク67を形成する。第2マスク67は、SiN等の絶縁材料からなる。また、第2マスク67は、光導波路部41の一部を覆うマスク部61と、メサ部31の一部を覆うマスク部63と、光導波路部51の一部を覆うマスク部65と、を有する。マスク部61、マスク部63、マスク部65は、一体的に形成されている。本実施形態においては、マスク部63の第1方向に沿った幅は、マスク部61及びマスク部65の第1方向に沿った幅よりも広くなっている。第2マスク67の厚さは例えば300nmとすることができる。
【0056】
このような第2マスク67は、例えば、化学気相成長法(CVD法)等の堆積法によって、半導体構造物53上(本実施形態においてはキャップ層55の直上)にSiN等の絶縁材料からなる層を形成し、フォトリソグラフィー法によって、所定の形状にパターニングすることにより、形成することができる。
【0057】
(半導体構造物エッチング工程)
次に、半導体構造物エッチング工程が行われる。図8及び図9は、半導体構造物エッチング工程を説明するための斜視図である。本工程では、第2マスク67を用いて、下部コンタクト層5をエッチングストップ層としてメサ部31及び一対の光導波路部41、51を一括してエッチングする。
【0058】
具体的には、図8に示すように、第2マスク67を用いて下部コンタクト層5が露出するようにメサ部31をエッチングする。これにより、マスク部63の下に、下部コンタクト層5の一部の領域5Sが露出すると共に、メサ部31のうちの下部コンタクト層5よりも上部の各層及びキャップ層55からなる矩形メサ部73を形成する。
【0059】
また、第2マスク67を用いて一対の光導波路部41、51をエッチングすることにより、マスク部61及びマスク部63の下の一対の光導波路部41、51及びキャップ層55を第2方向に沿って延びるストライプ状に加工する。本実施形態では、一対の光導波路部41、51のエッチングは、一対の光導波路部41、51のうち第2マスク67によって覆われていない領域が全て除去されるように(即ち、バッファー層3が露出するように)行われる。
【0060】
そして、このようなメサ部31及び光導波路部41、51のエッチングは、下部コンタクト層5をエッチングストップ層として用いたエッチングによって行われる。即ち、メサ部31のエッチングと一対の光導波路部41、51のエッチングとは、下部コンタクト層5に対するエッチングレートが、メサ部31のうちの下部コンタクト層5よりも上部の各層(本実施形態では、i型層12及びn型層18を形成する各層、図1参照)、及び、一対の光導波路部41、51を構成する各層に対するエッチングレートよりも小さくなるようなエッチング法を用いて行う。
【0061】
これにより、下部コンタクト層5の厚さの減少を抑制することができるため、下部コンタクト層5の厚さ(残厚)を所望の厚さに制御し易くなる。そのため、下部コンタクト層5の厚さ(残厚)のばらつきを抑制することができる。その結果、本実施形態に係る導波路型フォトダイオードの製造方法によれば、得られる導波路型フォトダイオード100(図19参照)の素子抵抗の大きさのばらつきを抑制することができる。
【0062】
上述のエッチング法としては、例えば、平行平板型プラズマ反応性イオンエッチング法や誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法等の反応性イオンエッチング法(RIE法)を挙げることができる。
【0063】
上述のエッチング法として誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法を採用することは、以下の理由により特に好ましい。即ち、平行平板型プラズマ反応性イオンエッチング法等と比較して、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法は、エッチングの際のバイアスパワーを低くできる。バイアスパワーが低い程、Alを含有する半導体層はエッチングされ難くなる。そのため、下部コンタクト層5のエッチングレートを他の各層のエッチングレートよりも特に小さくすることができる。即ち、下部コンタクト層5の選択比(下部コンタクト層5のエッチングレートと他の各層のエッチングレートの比であり、下部コンタクト層5のエッチングのされ難さを示す比)を大きくすることができる。これにより、下部コンタクト層5の厚さ(残厚)を所望の厚さに特に制御し易くなるため、下部コンタクト層5の厚さ(残厚)のばらつきを特に抑制することができる。その結果、得られる導波路型フォトダイオード100(図19参照)の素子抵抗の大きさのばらつきを特に抑制することができる。
【0064】
上述のエッチング法として誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法を採用した場合、エッチングガスとしては、例えば、CH4とH2の混合ガスを用いることができ、CH4とH2の混合比は例えば1:3、エッチング圧力は例えば2Paとすることができる。また、バイアスパワーは、0W/cm2以上、1W/cm2であることが好ましく、0.3W/cm2以上、0.6W/cm2以下であることがさらに好ましい。また、ICPパワーは、例えば4.4W/cm2とすることができる。
【0065】
また、上述のエッチング法として、反応性イオンエッチング法を用いた場合、下部コンタクト層5のAl含有率は、組成比で50%以上、70%以下であることが好ましい。下部コンタクト層5のAl含有率が組成比で50%以上であると、下部コンタクト層5に対するエッチングレートを、メサ部31のうちの下部コンタクト層5よりも上部の各層、及び、一対の光導波路部41、51を構成する各層に対するエッチングレートよりも、特に小さくすることができるため、得られる導波路型フォトダイオード100(図19参照)の素子抵抗の大きさのばらつきを特に抑制することができる。また、下部コンタクト層5のAl含有率が組成比で70%以下であると、下部コンタクト層5の上部の各層の結晶性を十分に高くすることができる。
【0066】
続いて、図9に示すように、バッファードフッ酸(BHF)等によるウェットエッチング等によって、第2マスク67を除去する。このようにして、メサ部31の下部コンタクト層5の一部を露出させ、メサ部31に矩形メサ部73を形成すると共に、一対の光導波路部41、51を第2方向に沿って延びるストライプ状に加工する。
【0067】
また、発明者らは、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法によってAlInAs及びInPをエッチングする際の、AlInAsの選択比とバイアスパワーの関係について、実験を行った。図10は、選択比のバイアスパワー依存性の実験結果を示す図である。本実験においては、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法によって同一条件でAlInAsのエッチングレートと、InPのエッチングレートを測定し、InPのエッチングレートをAlInAsのエッチングレートで除することにより、AlInAsの選択比を求めた。エッチングの際のエッチングガスCH4/H2の混合比、エッチング圧力、ICPパワーは全て固定とし、バイアスパワーのみ変化させ、それぞれのバイアスパワーごとに、AlInAsの選択比を求めた。
【0068】
図10では、縦軸に選択比の逆数を示しており、横軸にバイアスパワーを示している。図10に示すAlInAsの選択比のバイアスパワー依存性の結果より、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法によってAlInAsをエッチングする際のInPに対するAlInAsの選択比は、バイアスパワーが低いほど大きくなる(AlInAsがエッチングされ難くなる)ことがわかった。
【0069】
(埋め込み部形成工程)
次に、埋め込み部形成工程を行う。図11及び図12は、埋め込み部形成工程を説明するための斜視図である。本工程では、まず、図11に示すように、各層の露出面(即ち、バッファー層3、光導波路部41、光導波路部51、矩形メサ部73、下部コンタクト層5、及び、キャップ層55の露出面)に、酸化シリコン(SiO2)等の酸化物材料からなる保護層79を、CVD法等によって形成する。
【0070】
続いて、図12に示すように、保護層79上に、埋め込み部81を形成する。これにより、メサ部31(矩形メサ部73及び下部コンタクト層5)と一対の光導波路部41、51を、埋め込み部81によって埋め込む。埋め込み部81は、例えば、ベンゾシクロブテン(BCB)等の樹脂からなる。
【0071】
(電極形成工程)
次に、電極形成工程を行う。図13及び図19は、電極形成工程を説明するための斜視図であり、図14〜図18は、電極形成工程を説明するための部分切断斜視図である。
【0072】
本工程では、まず、図13に示すように、埋め込み部81上にレジスト層83を形成した後、フォトリソグラフィーにより、レジスト層83に開口83Hを形成する。図14(A)は、図13において、光導波路部41を第2方向(X軸方向)と垂直な面で切断した部分切断斜視図であり、図14(B)は、図13において、矩形メサ部73を第2方向(X軸方向)と垂直な面で切断した部分切断斜視図である。後述の図14(A)、図15(A)、図16(A)、図17(A)、図18(A)、及び、図19(A)は、図14(A)に対応しており、図14(B)、図15(B)、図16(B)、図17(B)、図18(B)、及び、図19(B)は、図14(B)に対応している。
【0073】
図14に示すように、開口83Hは、矩形メサ部73の上方に形成されており、光導波路部41上(及び光導波路部51上)には形成されていない。
【0074】
続いて、図15(B)に示すように、レジスト層83を用いて、例えば、CF4とO2の混合ガスを用いたRIE法等によって、レジスト層83を用いて埋め込み部81をエッチングすることにより、レジスト層83の表面から矩形メサ部73上の保護層79の表面79Sに至る深さを有するように開口81Hを深くする。このエッチングの際、図15(A)に示すように、光導波路部41(及び光導波路部51)はレジスト層83によって保護されており、光導波路部41(及び光導波路部51)上の埋め込み部81はエッチングされない。
【0075】
次に、図16に示すように、レジスト層83を除去した後に、矩形メサ部73及び埋め込み部81上にレジスト層85を形成する。そして、フォトリソグラフィーによって、レジスト層85のうち、上述のメサ部エッチング工程において露出した下部コンタクト層5の領域5S上の領域に開口を形成するようにレジスト層85をパターニングする。そして、パターニングされたレジスト層85を用いて、例えば、CF4とO2の混合ガスを用いたRIE法等によって、埋め込み部81をエッチングすることにより、埋め込み部81に開口81Hを形成する。この開口81Hにより下部コンタクト層5の領域5S上の保護層79を露出させる。
【0076】
続いて、レジスト層85を除去した後、図17に示すように、矩形メサ部73上の保護層79、及び、下部コンタクト層5の領域5S上の保護層79を、例えば、CF4ガスを用いたRIE法等によって、エッチングする。これにより、矩形メサ部73のキャップ層55、及び、下部コンタクト層5の領域5Sを露出させる。上述の保護層79のエッチングの際、埋め込み部81はエッチングマスクとして機能する。
【0077】
続いて、図18に示すように、矩形メサ部73のキャップ層55をエッチングすることにより、矩形メサ部73の上部コンタクト層19を露出させる。この際、矩形メサ部73のキャップ層55のエッチングレートが、下部コンタクト層5のエッチングレートよりも大きくなるようなエッチング法を用いる。これにより、下部コンタクト層5の領域5Sの厚さの減少は抑制される。このようなエッチング法としては、例えば、HCl及びCH3COOHをエッチング液として用いたウェットエッチングを挙げることができる。このような矩形メサ部73のキャップ層55のエッチングにおいて、キャップ層55と埋め込み部81とは異なる材料で形成されているため、キャップ層55を埋め込み部81よりも早いエッチングレートでエッチングすることができる。これにより、キャップ層55を厚くしても、矩形メサ部73のキャップ層55のエッチングの際に、埋め込み部81はマスクとして機能させることができる。
【0078】
次に、図19に示すように、矩形メサ部73のクラッド層17上に上部コンタクト層19を介してカソード電極91を形成し、下部コンタクト層5の領域5S上にアノード電極93を形成する。このようにして、導波路型フォトダイオード100が製造される。
【0079】
光導波路部41の端面(又は光導波路部51の端面)から光が入射すると、当該光は光導波路部41(又は光導波路部51)内を伝搬し、吸収層11に入射する。吸収層11に光が入射すると、当該光の強度に対応した量の電子及び正孔が吸収層11に生じる。そして、pin構造21に逆バイアスが印加されるようにカソード電極91及びアノード電極93間に電圧が印加されると、正孔は下部コンタクト層5を経由してアノード電極93に移動し、電子は上部コンタクト層19を経由してカソード電極91に移動するため、カソード電極91及びアノード電極93に接続された外部機器に電流が流れる。この電流の大きさを測定することにより、導波路型フォトダイオード100に入射した光の強度を測定することができる。
【0080】
また、上述のように第1介在層7及び第2介在層9の存在により、吸収層11から下部コンタクト層5に向かって価電子帯の上端のエネルギーレベルが段階的に減少する(図2参照)。そのため、第1介在層7及び第2介在層9が存在しない場合と比較して、導波路型フォトダイオード100に逆バイアスが印加されると、吸収層11で生じたホールは下部コンタクト層5に移動し易くなる。そのため、導波路型フォトダイオード100の動作周波数帯域が向上する。
【0081】
さらに、本実施形態においては、上述のように下部コンタクト層5と第1介在層7との間の価電子帯におけるバンドオフセットE5Vが、下部コンタクト層5と第1介在層7との間の伝導帯におけるバンドオフセットE5Cよりも小さくなるように、下部コンタクト層5を構成する材料と第1介在層7を構成する材料を選択している(図2参照)。そのため、吸収層11で生じたホールは下部コンタクト層5に特に移動し易くなる。そのため、導波路型フォトダイオード100の動作周波数帯域が特に向上する。
【0082】
また、上述のように第3介在層13及び第4介在層15の存在により、吸収層11からクラッド層17に向かって伝導帯の下端のエネルギーレベルが段階的に上昇する(図2参照)。そのため、第3介在層13及び第4介在層15が存在しない場合と比較して、導波路型フォトダイオード100に逆バイアスが印加されると、吸収層11で生じた電子は上部コンタクト層19に移動し易くなる。そのため、導波路型フォトダイオード100の動作周波数帯域が向上する。
【0083】
本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。
【0084】
例えば、上述の実施形態においては、光導波路部形成工程と前記第2マスク形成工程との間にキャップ層形成工程を行っているが(図6参照)、キャップ層形成工程を省略することもできる。
【0085】
また、上述の実施形態においては、半導体積層23は、第2介在層9を有しているが(図1参照)、半導体積層23は第2介在層9を有していなくてもよい。その場合であっても、価電子帯の上端のエネルギーレベルは、吸収層11の当該エネルギーレベル、第1介在層7の当該エネルギーレベル、及び、下部コンタクト層5の当該エネルギーレベルの順に、段階的に減少することになる。そのため、第1介在層7が存在しない場合と比較して、導波路型フォトダイオードに逆バイアスが印加されると、吸収層11で生じたホールは下部コンタクト層5に移動し易くなる。その結果、導波路型フォトダイオードの動作周波数帯域が向上する。また、半導体積層23は、第1介在層7及び第2介在層9の双方を有していなくてもよい。
【0086】
また、上述の実施形態においては、半導体積層23は、第4介在層15を有しているが(図1参照)、半導体積層23は第4介在層15を有していなくてもよい。また、半導体積層23は、第3介在層13と第4介在層15の双方を有していなくてもよい。
【0087】
また、半導体積層23は、上部コンタクト層19を有していなくてもよい。この場合、クラッド層17をコンタクト層として用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1・・・半導体基板、5・・・(下部)コンタクト層、11・・・吸収層、17・・・クラッド層、21・・・pin構造、23・・・半導体積層、27・・・第1マスク、31・・・メサ部、41、51・・・一対の光導波路部、53・・・半導体構造物、67・・・第2マスク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主面上に、p型AlInAsからなるコンタクト層と、i型GaInAsからなる吸収層と、n型InPからなるクラッド層と、をこの順に堆積することにより、pin型フォトダイオード部のpin構造を有する半導体積層を形成する半導体積層形成工程と、
前記半導体基板の前記主面における第1方向に沿って延びる第1マスクを前記半導体積層上に形成し、前記半導体積層の前記第1マスクによって覆われていない領域の前記コンタクト層が除去されるように前記半導体積層をエッチングすることにより、前記半導体積層に前記第1方向に沿って延びるストライプ状のメサ部を形成するメサ部形成工程と、
前記メサ部の両側面と接するように半導体材料からなる一対の光導波路部を形成することにより、当該一対の光導波路部と前記メサ部とを含む半導体構造物を得る光導波路部形成工程と、
前記半導体基板の前記主面における第1方向と直交する第2方向に沿って延びると共に前記一対の光導波路部の各々の一部及び前記メサ部の一部を覆う第2マスクを前記半導体構造物上に形成する第2マスク形成工程と、
前記第2マスクを用いて、前記コンタクト層をエッチングストップ層として前記メサ部及び前記一対の光導波路部をエッチングすることにより、前記コンタクト層を露出させると共に、前記一対の光導波路部を前記第2方向に沿って延びるストライプ状に加工する半導体構造物エッチング工程と、
前記メサ部の前記クラッド層上にカソード電極を形成し、前記コンタクト層のうち、前記半導体構造物エッチング工程において露出した領域上にアノード電極を形成する、電極形成工程と、
を備えることを特徴とする導波路型フォトダイオードの製造方法。
【請求項2】
前記半導体積層形成工程において、i型GaInAsPからなる第1介在層をさらに堆積し、
前記半導体積層において、前記第1介在層は前記コンタクト層と前記吸収層との間に設けられており、
前記第1介在層のバンドギャップは、前記コンタクト層のバンドギャップよりも小さく、かつ、前記吸収層のバンドギャップよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の導波路型フォトダイオードの製造方法。
【請求項3】
前記半導体積層形成工程において、i型GaInAsPからなる第2介在層をさらに堆積し、
前記半導体積層において、前記第2介在層は前記第1介在層と前記吸収層との間に設けられており、
前記第2介在層のバンドギャップは、前記第1介在層のバンドギャップよりも小さく、かつ、前記吸収層のバンドギャップよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の導波路型フォトダイオードの製造方法。
【請求項4】
前記半導体構造物エッチング工程においては、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法によって、前記メサ部及び前記一対の光導波路部をエッチングすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の導波路型フォトダイオードの製造方法。
【請求項5】
前記光導波路部形成工程においては、前記第1マスクを選択成長マスクとして用いて前記一対の光導波路部を成長させ、
前記光導波路部形成工程と前記第2マスク形成工程との間に、前記メサ部及び前記一対の光導波路部を覆うように、半導体材料からなるキャップ層を形成するキャップ層形成工程をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の導波路型フォトダイオードの製造方法。
【請求項1】
半導体基板の主面上に、p型AlInAsからなるコンタクト層と、i型GaInAsからなる吸収層と、n型InPからなるクラッド層と、をこの順に堆積することにより、pin型フォトダイオード部のpin構造を有する半導体積層を形成する半導体積層形成工程と、
前記半導体基板の前記主面における第1方向に沿って延びる第1マスクを前記半導体積層上に形成し、前記半導体積層の前記第1マスクによって覆われていない領域の前記コンタクト層が除去されるように前記半導体積層をエッチングすることにより、前記半導体積層に前記第1方向に沿って延びるストライプ状のメサ部を形成するメサ部形成工程と、
前記メサ部の両側面と接するように半導体材料からなる一対の光導波路部を形成することにより、当該一対の光導波路部と前記メサ部とを含む半導体構造物を得る光導波路部形成工程と、
前記半導体基板の前記主面における第1方向と直交する第2方向に沿って延びると共に前記一対の光導波路部の各々の一部及び前記メサ部の一部を覆う第2マスクを前記半導体構造物上に形成する第2マスク形成工程と、
前記第2マスクを用いて、前記コンタクト層をエッチングストップ層として前記メサ部及び前記一対の光導波路部をエッチングすることにより、前記コンタクト層を露出させると共に、前記一対の光導波路部を前記第2方向に沿って延びるストライプ状に加工する半導体構造物エッチング工程と、
前記メサ部の前記クラッド層上にカソード電極を形成し、前記コンタクト層のうち、前記半導体構造物エッチング工程において露出した領域上にアノード電極を形成する、電極形成工程と、
を備えることを特徴とする導波路型フォトダイオードの製造方法。
【請求項2】
前記半導体積層形成工程において、i型GaInAsPからなる第1介在層をさらに堆積し、
前記半導体積層において、前記第1介在層は前記コンタクト層と前記吸収層との間に設けられており、
前記第1介在層のバンドギャップは、前記コンタクト層のバンドギャップよりも小さく、かつ、前記吸収層のバンドギャップよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の導波路型フォトダイオードの製造方法。
【請求項3】
前記半導体積層形成工程において、i型GaInAsPからなる第2介在層をさらに堆積し、
前記半導体積層において、前記第2介在層は前記第1介在層と前記吸収層との間に設けられており、
前記第2介在層のバンドギャップは、前記第1介在層のバンドギャップよりも小さく、かつ、前記吸収層のバンドギャップよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の導波路型フォトダイオードの製造方法。
【請求項4】
前記半導体構造物エッチング工程においては、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング法によって、前記メサ部及び前記一対の光導波路部をエッチングすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の導波路型フォトダイオードの製造方法。
【請求項5】
前記光導波路部形成工程においては、前記第1マスクを選択成長マスクとして用いて前記一対の光導波路部を成長させ、
前記光導波路部形成工程と前記第2マスク形成工程との間に、前記メサ部及び前記一対の光導波路部を覆うように、半導体材料からなるキャップ層を形成するキャップ層形成工程をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の導波路型フォトダイオードの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−16601(P2013−16601A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147654(P2011−147654)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]