説明

導管用緊急離脱装置

【課題】海上に建設された基地と陸上とにわたって敷設された導管を安全に切り離すことができる導管用緊急離脱装置を提供する。
【解決手段】それぞれ導管10が接続されるとともに開閉弁4が設けられた一対のカップラー2,2と、カップラー2,2どうしを連結する連結部3と、開閉弁4をそれぞれ閉弁させて連結部3によるカップラー2,2どうしの連結を解除する導管切り離し機構5と、導管10に取り付けられて導管10のxyz方向ごとの加速度を検出する加速度変換器6と、加速度変換器6が検出した導管3のxyz方向ごとの加速度を基に導管切り離し機構5を制御する制御部7とを備える。制御部7は、導管10のxyz方向方向の加速度の絶対値の平均値が所定値以上となる時間が所定時間以上となったと判断したときに、導管切り離し機構5を作動させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上に建設された基地と陸上との間にわたって敷設された導管において、地震などの緊急時に、基地側の導管と陸上側の導管とを切り離すための緊急離脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガスや石油などの流体の輸送において、タンカーと陸上との間の荷役には、ローディングアーム(流体荷役装置)が使用されている。
このローディングアームには、突風や潮流、また地震による津波などによってタンカーが急激に移動する場合や、火災などの発生によりタンカーを緊急に移動させる場合に備えて、タンカー側の管路と陸上側の管路とを安全に切り離すことができる緊急離脱装置が設置されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
この緊急離脱装置は、タンカー側の管路および陸上側の管路にそれぞれ遮断弁を備えており、各遮断弁を閉めた後に管路の切り離しを行うため、管路内部の流体がほとんど流出しないように構成されている。
緊急離脱装置の作動方法としては、オペレータの手動操作による作動方法や、ローディングアームの姿勢が予め設定された所定の姿勢となったときに自動に作動する作動方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−185881号公報
【特許文献2】特開2007−154962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、海上に建設された基地に、桟橋等を通して陸上と連続する導管を敷設することがある。このような基地では、地震による津波などが起きると陸上とは異なる振動が生じるため、導管が損傷して導管内の流体が外部に流出する虞がある。
このため、海上に建設された基地と陸上との間にわたって敷設された導管においても、基地側の導管と陸上側の導管とを切り離すことができる緊急離脱装置が設置されることが望まれている。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、海上に建設された基地と陸上との間にわたって敷設された導管を安全に切り離すことができる導管用緊急離脱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る導管用緊急離脱装置は、それぞれ導管が接続されるとともに開閉弁が設けられた一対のカップラーと、該一対のカップラーどうしを連結する連結部と、前記開閉弁をそれぞれ閉弁させて前記連結部による前記カップラーどうしの連結を解除する導管切り離し機構と、前記導管に取り付けられて該導管のxyz方向またはxy方向の加速度をそれぞれ検出する加速度変換器と、該加速度変換器が検出した前記導管の加速度を基に前記導管切り離し機構を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記導管のxyz方向それぞれの加速度の絶対値の平均値が所定値以上となる時間が所定時間以上継続したと判断したとき、または、前記導管のx方向の加速度による地震波形およびy方向の加速度による地震波形のいずれか1つ以上において加速度の最大値および最小値がそれぞれ所定値を超えたと判断したときに、前記導管切り離し機構を作動させることを特徴とする。
【0008】
本発明では、地震などによって導管が振動し、導管のxyz方向それぞれの加速度の絶対値の平均値が所定値以上となる時間が所定時間以上継続、または、導管のx方向の加速度による地震波形およびy方向の加速度による地震波形のいずれか1つ以上において加速度の最大値および最小値がそれぞれ所定値を超えると、導管切り離し機構が、一対のカップラーの開閉弁をそれぞれ閉弁させて、連結部によるカップラーどうしの連結を解除するため、一方のカップラーに接続された導管と他方のカップラーに接続された導管とを、それぞれ内部の流体をドレンさせる、または、ほとんど流出させずに安全に切り離すことができる。
また、導管のxyz方向またはxy方向の加速度をそれぞれ検出する加速度変換器を備えていることにより導管の振動を精度よく検知することができる。
なお、導管のx方向の加速度とは、導管の延在方向の加速度とし、y方向の加速度とは、導管の延在方向に直交する水平方向の加速度とし、z方向の加速度とは、導管の延在方向に直交する鉛直方向の加速度とする。
【0009】
また、本発明に係る導管用緊急離脱装置では、前記一対のカップラーにそれぞれ接続された前記導管を互いに離間させる方向に付勢可能な導管離間機構を備える構成としてもよい。
このように構成されることにより、導管切り離し機構によって切り離された導管どうしを離間させることができるため、切り離された後の導管が互いに接触して損傷することを防止することができる。
【0010】
また、本発明に係る導管用緊急離脱装置では、前記連結部は、前記一対のカップラー間に該一対のカップラーどうしを連通させる管体を介装した状態で前記一対のカップラーどうしを連結していて、前記管体は、前記導管切り離し機構が作動して前記一対のカップラーどうしの連結が解除されたときに、前記一対のカップラーの間から脱落する構成としてもよい。
このように構成されることにより、導管切り離し機構によって導管が切り離されたときに、一対のカップラー間に所定の間隔があるため、切り離された後の導管が互いに接触して損傷することを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地震などによって導管が振動し、導管のxyz方向それぞれの加速度の絶対値の平均値が所定値以上となる時間が所定時間以上継続、または、導管のx方向の加速度による地震波形およびy方向の加速度による地震波形のいずれか1つ以上において加速度の最大値および最小値がそれぞれ所定値を超えると、導管切り離し機構が、一対のカップラーの開閉弁をそれぞれ閉弁させて、連結部によるカップラーどうしの連結を解除するため、一方のカップラーに接続された導管と他方のカップラーに接続された導管とを、それぞれ内部の流体をドレンさせる、または、ほとんど流出させずに安全に切り離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態による導管を説明する図である。
【図2】(a)は第1実施形態による導管用緊急離脱装置の一例を示し通常時の様子を説明する図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
【図3】第1実施形態による導管用緊急離脱装置の緊急時の様子を説明する図である。
【図4】第1実施形態による導管切り離し機構の作動系統図である。
【図5】第1実施形態による導管用緊急離脱装置の動作を説明するフロー図である。
【図6】第2実施形態による導管用緊急離脱装置の一例を示し通常時の様子を説明する図である。
【図7】第2実施形態による導管用緊急離脱装置の緊急時の様子を説明する図である。
【図8】第3実施形態による導管用緊急離脱装置の一例を示し通常時の様子を説明する図である。
【図9】第3実施形態による導管用緊急離脱装置の緊急時の様子を説明する図である。
【図10】(a)はX方向の地震波形を示す図、(b)はY方向の地震波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態による導管用緊急離脱装置について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態では、海11上に建設された海上基地(不図示)と陸上12とにわたって敷設された導管10に設置されている。
海上基地と陸上12との間には桟橋13が架設されていて、海上基地と陸上12との間の導管10は、この桟橋13に敷設されている。この導管10の内部は、石油やガスなどの流体が流通している。
【0014】
そして、導管10には、陸上12で桟橋13近傍の位置に、本実施形態による導管用緊急離脱装置1Aが設置されている。
この導管用緊急離脱装置1Aは、地震による津波などが発生し、陸上12の導管10が、予め設定された所定値以上の加速度で予め設定された所定時間以上振動し続けたときに、導管用緊急離脱装置1Aを境として導管10を海上基地側と陸上12側とに切り離すように構成されている。
【0015】
ここで、導管10のうち、導管用緊急離脱装置1Aよりも陸上12側にある導管10を第1導管10Aとし、海上基地側にある導管10を第2導管10Bとして以下説明する。
また、地震による津波などが発生し、導管10が、所定値以上の加速度で所定時間以上振動し続けたときを緊急時とし、この緊急時以外を通常時として以下説明する。
【0016】
図2(a)に示すように、導管用緊急離脱装置1Aは、それぞれ導管10が接続された一対のカップラー2,2と、一対のカップラー2を分離可能に連結する連結部3と、一対のカップラー2の流路をそれぞれ開閉する開閉弁4,4と、開閉弁4,4をそれぞれ閉弁させて連結部3による一対のカップラー2,2の連結を解除する導管切り離し機構5と、導管10のxyz方向それぞれの振動の加速度を検出する加速度変換器6と、導管切り離し機構5を制御する制御部7と、第1導管10Aおよび第2導管10Bを互いに離間させる方向に付勢する導管離間機構8とを備えている。
【0017】
カップラー2,2は、内部に流体の流路21cが形成されたカップラー本体21と、カップラー本体21の一方の端部21aに形成され導管10が接続される導管接続部22と、カップラー本体21の他方の端部21bに形成された円環状の接続フランジ23とを備えている。
一対のカップラー2のうち、一方のカップラー2には導管接続部22に第1導管10Aが接続され、他方のカップラー2には導管接続部22に第2導管10Bが接続されている。
一対のカップラー2,2は、互いの接続フランジ23,23を突き合わせた状態で連結部3によって分離可能に連結されている。
一対のカップラー2,2は、互いに連結されると、その流路21c,21cが連通し、これにより第1導管10Aおよび第2導管10Bが連通させる構成されている。
【0018】
連結部3は、突き合わされた状態の接続フランジ23,23を挟持し接続フランジ23の周方向に互いに間隔をあけて配列された複数のクランプ部材31と、隣り合うクランプ部材31を連結する連結部材(不図示)とを備えている。
図2(b)に示すように、クランプ部材31は、導管切り離し機構5と接続されていて、導管切り離し機構5が作動すると、接続フランジ23,23から離れ、接続フランジ23,23の挟持を停止するように構成されている。
そして、クランプ部材31が接続フランジ23,23の挟持を停止すると、一対のカップラー2,2の連結が解除される。
連結部材は、複数のクランプ部材31の接続フランジ23,23の挟持および接続フランジ23,23からの離間を連動させている。
なお、連結部3は、連結部材を備えずに、複数のクランプ部材31が個別に作動するように構成されていてもよい。
【0019】
図2(a)に戻り、開閉弁4,4は、カップラー本体21に設けられた、例えば、ダブルボールバルブなどで、開弁状態(図2(a)に示す状態)と閉弁状態(図3に示す状態)との間で90°回転可能に構成されている。そして、開閉弁4は、開弁状態においてカップラー本体21の流路を連通させ、閉弁状態においてカップラー本体21の流路を遮断している。
【0020】
この開閉弁4,4は、通常時においては開弁状態となり、緊急時には閉弁状態となるように構成されている。
そして開閉弁4,4は、導管切り離し機構5と接続されていて、導管切り離し機構5の作動によって、緊急時に閉弁状態となるように構成されている。
なお、本実施形態では、一対の開閉弁4,4は、連動して回転するように構成されている。
【0021】
導管切り離し機構5は、開弁状態の開閉弁4,4を閉弁させるとともにカップラー2,2の接続フランジ23,23を連結するクランプ部材31を接続フランジ23,23から外す動作をするもので、開閉弁4,4の開閉を行う開閉弁用油圧シリンダ51と、クランプ部材の接続フランジ23,23への着脱を行う連結部用シリンダ57(図2(b)参照)とを備えている。
そして、図4に示すように、導管切り離し機構5は、開閉弁用油圧シリンダ51および連結部用シリンダ57に圧油を供給する油圧ポンプ52と、開閉弁用油圧シリンダ51および連結部用シリンダ57からの圧油を収容するタンク53と、開閉弁用油圧シリンダ51に流入する圧油の流れを切り替える開閉弁用電磁切換弁54と、連結部用油圧シリンダ57に流入する圧油の流れを切り替える連結部用電磁切換弁58と、油圧ポンプ52と開閉弁用油圧シリンダ51および連結部用シリンダ57との間に接続され開閉弁用油圧シリンダ51および連結部用シリンダ57を作動させるための油圧力を蓄圧するアキュムレータ55とをさらに備えている。
【0022】
開閉弁用油圧シリンダ51は、配管56a,56bによって開閉弁用電磁切換弁54と接続されている。
そして、この2つの配管56a,56bのうち、一方の配管56aが開閉弁用油圧シリンダ51のロッド側シリンダ室51aに接続され、他方の配管56bが開閉弁用油圧シリンダ51のヘッド側シリンダ室51bに接続されている。
このため、一方の配管56aからロッド側シリンダ室51aに圧油が流入し、ヘッド側シリンダ室51bから他方の配管56bに圧油が流出すると、開閉弁用油圧シリンダ51のピストンがヘッド側に移動するように構成されている。
【0023】
また、他方の配管56bからヘッド側シリンダ室51bに圧油が流入し、ロッド側シリンダ室51aから一方の配管56aに圧油が流出すると、開閉弁用油圧シリンダ51のピストンがロッド側に移動するように構成されている。
そして、本実施形態では、開閉弁用油圧シリンダ51のピストンがヘッド側に移動すると、開弁状態の開閉弁4,4を閉弁させるように構成されている。
【0024】
開閉弁用電磁切換弁54は、第1電磁弁54aと第2電磁弁54bに切換可能で、第1電磁弁54aが励磁状態となり第2電磁弁54bが非励磁状態となった場合に、一方の配管56aからロッド側シリンダ室51aに圧油が流入し、ヘッド側シリンダ室51bから他方の配管56bに圧油が流出するように構成されている。
また、開閉弁用電磁切換弁54は、第1電磁弁54aが非励磁状態となり第2電磁弁54bが励磁状態となった場合に、他方の配管56bからヘッド側シリンダ室51bに圧油が流入し、ロッド側シリンダ室51aから一方の配管56aに圧油が流出する用に構成されている。
なお、第1電磁弁54aおよび第2電磁弁54bがともに励磁状態、または非励磁状態の場合は、圧油の流通が停止されるように構成されている。
【0025】
連結部用油圧シリンダ57は、配管59a,59bによって連結部用電磁切換弁58と接続されている。
そして、この2つの配管59a,59bのうち、一方の配管59aが連結部用油圧シリンダ57のロッド側シリンダ室57aに接続され、他方の配管59bが連結部用油圧シリンダ57のヘッド側シリンダ室57bに接続されている。
このため、一方の配管59aからロッド側シリンダ室57aに圧油が流入し、ヘッド側シリンダ室57bから他方の配管59bに圧油が流出すると、連結部用油圧シリンダ57のピストンがヘッド側に移動するように構成されている。
【0026】
また、他方の配管59bからヘッド側シリンダ室57bに圧油が流入し、ロッド側シリンダ室57aから一方の配管59aに圧油が流出すると、連結部用油圧シリンダ57のピストンがロッド側に移動するように構成されている。
そして、本実施形態では、連結部用油圧シリンダ57のピストンがヘッド側に移動すると、カップラー2,2の接続フランジ23,23を連結するクランプ部材31を接続フランジ23,23から外すように構成されている。
【0027】
連結部用電磁切換弁58は、開閉弁用電磁切換弁54と同様に第1電磁弁58aと第2電磁弁58bに切換可能で、第1電磁弁58aが励磁状態となり第2電磁弁58bが非励磁状態となった場合に、一方の配管59aからロッド側シリンダ室57aに圧油が流入し、ヘッド側シリンダ室57bから他方の配管59bに圧油が流出するように構成されている。
また、連結部用電磁切換弁58は、第1電磁弁58aが非励磁状態となり第2電磁弁58bが励磁状態となった場合に、他方の配管59bからヘッド側シリンダ室57bに圧油が流入し、ロッド側シリンダ室57aから一方の配管59aに圧油が流出する用に構成されている。
なお、連結部用電磁切換弁58においても第1電磁弁58aおよび第2電磁弁58bがともに励磁状態、または非励磁状態の場合は、圧油の流通が停止されるように構成されている。
【0028】
加速度変換器6は、図2(a)、(c)に示すように、第2導管10Bのカップラー2近傍に、第2導管10Bの周方向に互いに間隔をあけて取り付けられた3つの加速度変換器本体61x,61y,61zを備え、各加速度変換器本体61x,61y,61zが検出した第2導管10Bの振動の加速度を制御部7に通信するように構成されている。
3つの加速度変換器本体61x,61y,61zは、それぞれ異なる方向の加速度を測定するように設定されている。
【0029】
3つのうち1つの加速度変換器本体61xは、第2導管10Bの延在方向(これをx方向とする)の加速度を検出可能に構成され、他の1つの加速度変換器本体61yは、第2導管10Bの延在方向に直交する水平方向(これをy方向とする)の加速度を検出可能に構成され、さらに他の加速度変換器本体61zは、第2導管10Bの延在方向に直交する鉛直方向(これをz方向とする)の加速度を検出可能に構成されている。
なお、加速度変換器6は、第1導管10Aに取り付けられてもよい。また、加速度変換器6は、3つの加速度変換器本体61x,61y,61zを備えずに、1つの加速度変換器本体でx方向、y方向、z方向の加速度をそれぞれ検出可能に構成されていてもよい。
【0030】
制御部7は、加速度変換器6から受信した第2導管10Bのx方向、y方向、z方向の加速度の絶対値の平均値を算出し、xyz方向それぞれの加速度の絶対値の平均値が予め設定された所定値を継続して超える継続時間tを測定し、この継続時間tが予め設定された所定時間t1を超えたとき(緊急時)に、導管切り離し機構5を作動させる制御を行っている。
【0031】
導管離間機構8は、第1導管10Aおよび第2導管10Bのカップラー2側端部10aの近傍に取り付けられた一対のベローズ81,81を備えている。
この一対のベローズ81,81は、第1導管10Aおよび第2導管10Bと同じ延在方向となるようにそれぞれ設けられているとともに、それぞれ延在方向に縮小する方向に付勢力が働いている。
このため、一対のベローズ81,81は、一対のカップラー2,2を互いに離間する方向に付勢している。
【0032】
なお、ベローズ81の付勢力は、連結部3による一対のカップラー2,2を連結する連結力よりも小さく設定されている。このため、導管離間機構8は、連結部3によって一対のカップラー2,2が連結されているときに、一対のカップラー2,2を離間させることはなく、連結部3による一対のカップラー2,2の連結が解除されたときに、一対のカップラー2,2を付勢力によってを離間するように構成されている。
【0033】
次に、上述した導管用緊急離脱装置1Aの動作について図5に示すフローチャートを基に説明する。
まず、導管用緊急離脱装置1Aの電源をオンとし、加速度変換器6を駆動させる(S1)。
ここで、導管用緊急離脱装置1Aの電源をオンとしたときに、アキュムレータ55の油圧力が所定値以下の場合は、アキュムレータ55の油圧力が所定値以上となるように油圧ポンプ52が作動する。
【0034】
続いて、加速度変換器6が、導管10の振動のxyz方向の加速度を測定し(S2〜S4)、この3方向の加速度を制御部7に通信する。
続いて、制御部7において、導管10のxyz方向の加速度の絶対値の平均値(以下、加速度平均値と示す)を算出し(S5)、この加速度平均値が所定値を超えているかを判断する(S6)。
そして、加速度平均値が所定値を超えている場合(yes)は、加速度平均値が所定値を継続して超える継続時間tを測定し(S7)する。また、加速度平均値が所定値を超えていない場合(no)は、再度加速度を測定する(S2〜S4)。
【0035】
続いて、加速度平均値が所定値を継続して超える継続時間tが予め設定された所定時間t1を超えたかどうかを判断する(S8)。
そして、継続時間tが所定時間t1を超えた場合(yes)は、制御部7が緊急時と判断し、導管切り離し機構5を作動させる(S9)。また、継続時間tが所定時間t1を超えない場合(no)は、再度加速度を測定する(S2〜S4)。
【0036】
導管切り離し機構5が作動すると(S9)、まず、電磁切換弁54の第1電磁弁54aが励磁状態となり、第2電磁弁54bが非励磁状態となる。そして、油圧シリンダ51が作動し、開閉弁4を閉弁状態とする(S10)。
そして、開閉弁4が閉弁状態となった後に、カップラー2,2の接続フランジ23,23を連結するクランプ部材31が接続フランジ23,23から外れ、連結部3によるカップラー2,2どうしの連結が解除される(S11)。
そして、導管離間機構8のベローズ81,81が収縮し、その付勢力によってカップラー2,2どうしが離間し(S12)、第1導管10Aおよび第2導管10Bが切り離される(S13)。
【0037】
なお、第1実施形態による導管用緊急離脱装置1Aでは、導管切り離し機構5を手動でも作動可能に構成されている。このため、例えば、津波予報が発令され、この津波予報発令から津波が到達するまでに時間がある場合は、加速度の値が所定値以上となる継続時間tにかかわらず、津波が到達する前に手動で導管切り離し機構5を作動させ、導管10を切り離すことができる。
【0038】
次に、上述した第1実施形態による導管用緊急離脱装置1Aの作用効果について図面を用いて説明する。
本実施形態による導管用緊急離脱装置1Aによれば、地震などによって導管10が振動し、加速度平均値が所定値以上となる継続時間tが所定時間t1以上となると、導管切り離し機構5が、一対のカップラー2,2の開閉弁4,4をそれぞれ閉弁させて、連結部3によるカップラー2,2どうしの連結を解除するため、第1導管10Aと第2導管10Bを、それぞれ内部の流体をほとんど流出させずに安全に切り離すことができる。
また、導管10のxyz方向の加速度をそれぞれ検出する加速度変換器6を備えていることにより導管10の振動を精度よく検知することができる。
【0039】
次に、第2、第3実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0040】
(第2実施形態)
図6に示すように、第2実施形態による導管用緊急離脱装置1Bは、図2に示す第1実施形態の導管離間機構8に代わって、延在方向に付勢力を備えておらず外力により伸縮自在に構成されたベローズ87,87と、このベローズ87,87をそれぞれ延在方向に伸縮させるベローズ用油圧シリンダ88,88を備える導管離間機構86が設けられている。
【0041】
第2実施形態による導管用緊急離脱装置1Bでは、制御部7は、図7に示すように、緊急時に開閉弁4を閉弁させて連結部3(図6参照)による一対のカップラー2,2の連結を解除した後に、ベローズ用油圧シリンダ88,88を作動させてベローズ87,87を縮小させる制御を行っている。
そして、ベローズ用油圧シリンダ88,88がベローズ87,87を縮小させると一対のカップラー2,2が離間し、第1導管10Aと第2導管10Bとが離間するように構成されている。
【0042】
第2実施形態による導管用緊急離脱装置1Bでは、第1実施形態による導管用緊急離脱装置1Aと同様の効果を奏する。
そして、第2実施形態による導管用緊急離脱装置1Bでは、通常時に、導管10が導管離間機構86から付勢されることがないため、第1実施形態よりも導管10やカップラー2,2、また連結部3の強度を小さくすることができ、導管用緊急離脱装置1Bのコンパクト化やコストダウンを図ることができる。
【0043】
(第3実施形態)
図8に示すように、第3実施形態による導管用緊急離脱装置1Cは、第1実施形態および第2実施形態のように導管離間機構8,86を備えず、一対のカップラー2,2間に管体91が介装されて、管体91とカップラー2,2とが連結部材92で連結されている。
そして、図9に示すように、第3実施形態による導管用緊急離脱装置1Cでは、導管切り離し機構(不図示)は、緊急時に開閉弁4を閉弁させ、連結部材92(図8参照)による管体91とカップラー2,2との連結を解除する。これにより、管体91がカップラー2,2間から脱落し、一対のカップラー2,2は、管体91の長さ分だけ離間した状態となる。
【0044】
第3実施形態による導管用緊急離脱装置1Cによれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
そして、緊急時に、カップラー2,2間から管体91が脱落することで、カップラー2,2どうしが離間した状態となるため、第1実施形態や第2実施形態のように、導管離間機構8,86を設置する必要がなく簡便な構成とすることができる。
【0045】
以上、本発明による導管用緊急離脱装置1A〜1Cの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、制御部7は、加速度変換器6から受信した第2導管10Bのxyz方向それぞれの加速度の絶対値の平均値を算出し、xyz方向それぞれの加速度の絶対値の平均値が予め設定された所定値を継続して超える継続時間tを測定して、この継続時間tが予め設定された所定時間t1を超えたとき(緊急時)に、導管切り離し機構5を作動させる制御を行っているが、この制御に代わって、加速度変換器6から受信した第2導管10Bのx方向、y方向の加速度による地震波形のいずれか1つ以上において、加速度の最大値および最小値がそれぞれ予め設定された所定値を超えたと判断したときに、導管切り離し機構5を作動させる制御を行ってもよい。
例えば、図10(a)、(b)に示すように、第2導管10Bのx方向、y方向の加速度による地震波形において、上述した所定値を±4m/Sec と設定し、x方向、y方向の加速度のいずれか1つ以上において加速度の最大値が4m/Sec を上回るとともに、加速度の最小値が−4m/Sec を下回る場合に、導管切り離し機構5を作動させる制御を行ってもよい。
なお、この場合は、加速度変換器6は、導管10のx方向およびy方向のみの加速度を検出可能に構成されていてもよい。
【0046】
また、上述した第2実施形態では、導管離間機構86はベローズ用油圧シリンダ88,88を備えているが、ベローズ用油圧シリンダ88,88に代わって機械式スプリングを備える構成とし、機械式スプリングでベローズ87,87を収縮させてもよい。
また、上述した第1実施形態および第2実施形態では、導管離間機構8,86を備えていて、導管10が切り離されたときに互いに離間するように構成されているが、第1実施形態および第2実施形態において、一対のカップラー2,2間に第3実施形態による管体91を設置して、導管離間機構8,86および管体91がカップラー2,2間から脱落することによって導管10をより離間させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1A,1B,1C 導管用緊急離脱装置
2 カップラー
3 連結部
4 開閉弁
5 導管切り離し機構
6 加速度変換器
7 制御部
8,86 導管離間機構
91 管体
10 導管
10A 第1導管(導管)
10B 第2導管(導管)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ導管が接続されるとともに開閉弁が設けられた一対のカップラーと、
該一対のカップラーどうしを連結する連結部と、
前記開閉弁をそれぞれ閉弁させて前記連結部による前記カップラーどうしの連結を解除する導管切り離し機構と、
前記導管に取り付けられて該導管のxyz方向またはxy方向の加速度をそれぞれ検出する加速度変換器と、
該加速度変換器が検出した前記導管の加速度を基に前記導管切り離し機構を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記導管のxyz方向それぞれの加速度の絶対値の平均値が所定値以上となる時間が所定時間以上継続したと判断したとき、または、前記導管のx方向の加速度による地震波形およびy方向の加速度による地震波形のいずれか1つ以上において加速度の最大値および最小値がそれぞれ所定値を超えたと判断したときに、前記導管切り離し機構を作動させることを特徴とする導管用緊急離脱装置。
【請求項2】
前記一対のカップラーにそれぞれ接続された前記導管を互いに離間させる方向に付勢可能な導管離間機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の導管用緊急離脱装置。
【請求項3】
前記連結部は、前記一対のカップラー間に該一対のカップラーどうしを連通させる管体を介装した状態で前記一対のカップラーどうしを連結していて、
前記管体は、前記導管切り離し機構が作動して前記一対のカップラーどうしの連結が解除されたときに、前記一対のカップラーの間から脱落することを特徴とする請求項1又は2に記載の導管用緊急離脱装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−184837(P2012−184837A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50269(P2011−50269)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(303046602)ニイガタ・ローディング・システムズ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】